1999(平成11)年 5月


1日■旧加悦鉄道で活躍した「DB20 1」号 修理終え27年ぶり”発車” 加悦の広場 「森ブタ」雄姿再び(京都)
  ■京都市電への思い 写真集を自費出版 京のアマ写真家 品川文男さん(京都)
  ■GW 1000円極楽作戦(京都)
  ■鉄道計画、実現性再調査へ サウジ石油相 通産相と合意(朝日)
  ■南紀方面特急 関空も人の波 GW混雑ピーク(朝日)
2日■深夜の改札に女性駅員登場 法改正で規制撤廃に JR天王寺駅(朝日)
3日■GW日和、行楽 スポーツ弾む 加悦「SLまつり」始まる ミニ列車運行 子供ら大喜び(京都)
  ■整備新幹線 新枠組み策定本格化 連休明けから自民、自由両党 財源の確保や着工区間 見通しは立たず(京都)
4日■時速525` 世界最速リニア 実用化に山あり谷あり長い”不況”トンネルも 環境対策や建設コスト 課題山積(京都)
5日■「東京スカパラ」ドラマーが鉄道自殺か(朝日)
6日■市営バスにひかれ死亡 神戸で71歳男性(朝日)
7日■JR西日本 3年ぶり増 利用まとめ(京都)
  ■JR客3年ぶりに戻った! 「黄金週間」前年上回る(朝日)
  ■六地蔵駅に快速停車 10日から、JR奈良線(朝日)
  ■JR山陰線止まる トラックが警報器倒す(京都)
8日■KTR乗客 3年ぶり増加 GW期間中(京都)
  ■乗り換え急いでゴッツンコ ”ダッシュ乗車”で正面衝突 大阪のJR・私鉄駅(朝日)
  ■「フリーゲージ車」200`で走った 実用化へ開発着々(朝日)
9日■駅のことは何でも聞いて JRが専門の案内係(京都)
  ■停電で19本が遅れ 新幹線、豊橋−新大阪(京都)
10日■「名所なし」を逆手にPR 体験ツアーで勝負だ 山形新幹線延伸地域(京都)
  ■ランドセルのころ レールウェーライター 種村直樹さん(63) 電車ごっこでも車掌部門(京都)
11日■窓 バスの車内風景(京都)
12日■「リニア」早期建設を 期成同盟会、実現へ決議 東京で総会(京都)
  ■近畿運輸局 障害者はねた連続事故 阪神出な鉄に厳重注意(朝日)
13日■路線バスにチャイルドシート JR長岡京−阪急東向日間 着用義務化へPR 警察の依頼で試験的に導入 全国でも珍しく(京都)
  ■信楽高原鉄道事故から8年 あす追悼式や法要(京都)
  ■JR東日本株 2次売却、100万株軸に 運輸省検討 6000−7000億円の利益(朝日)
  ■女性はねられ死亡 綾部のJR踏切(京都)
14日■近鉄車内で痴漢行為 容疑の会社員逮捕(京都)
  ■京都市バス3両 10日間使用停止 近畿運輸局、異例処分(京都)
  ■信楽高原鉄道事故から8年 九回忌法要 尽きぬ鎮魂の涙 慰霊碑前、勝訴を報告(京都)
  ■レジャー 歩くスキーで初夏の銀世界 立山・黒部 転ぶ人続出、笑い声もいっぱい(京都)
  ■視覚障害者が亡くなった踏切 足元の線沿いに進むと壁 西宮の阪神 交差角変えたが舗装部分は残す 運輸省など改善要求へ(朝日)
15日■空の値下げ競争にも”参戦” 新幹線も割引切符 来月から新大阪−博多間(京都)
  ■バス専用レーン確保へ160人”出動” 京都市交通局など 17日から4日間 街頭啓発 四条通で違去駐車防止作戦(京都)
  ■京都市バス 3台を使用停止10日 近畿運輸局 事故相次ぎ処分(朝日)
  ■阪急電鉄社長に大橋氏(朝日)
  ■アジア交通渋滞 改称へ一石 マレーシアに地下鉄 来月開通 採算に疑問の声も(朝日)
  ■新大阪−博多「ひかり」 格安航空運賃に3割引で対抗 8月末まで(朝日)
16日■関西線乱れる 笠置で信号故障(京都)
17日■進入用信号が故障 ダイヤ一時乱れる JR木津駅(京都)
  ■運行開始から50年 まきで走った東京はとバス 乗客の満足が誇り 後輩にエール送る(京都)
18日■シャトルこだま導入 通勤に便利 短区間運転 山陽新幹線に3月 JR西日本(京都)
  ■700系、5往復に 6社、夏の増発発表(京都)
  ■京都経済 再生 オムロン社長 立石義雄氏 「大企業病」を対退治 変化こそチャンス、今こそ起業家育てよ(京都)
  ■新幹線 整備計画の前倒し 自自・JRが一致 4社長意見 負担増は強く拒否(朝日)
19日■スルッと関西好調 新たに京阪など鉄道3社加入 売り上げ増加(京都)
  ■ひかりにも700系導入 来春から山陽新幹線(京都)
  ■最新700系「ウエストひかり」に JR西日本 来春から 「速い」「快適」で空の便に対抗(朝日)
20日■四条地下通路閉鎖し清掃(京都)
  ■郷愁誘う京都市電の写真集 喜寿記念に自費出版 アマカメラマン 下京の品川さん 購入希望続き増刷(朝日)
21日■JR西日本は当期損益赤字 旧国鉄債務負担で(京都)
  ■窓 JRに求めるサービス向上 綾部市・藤原 直子(会社員・45)(京都)
  ■デゴイチに勝った 保育園児200人が 綱引きで勝負(京都)
  ■窓 お答えします 掲示は必要最小限に(京都)
  ■JR3社、大幅減収 当期 航空値下げ競争響く(朝日)
  ■4人の取締役9人に減らす JR西日本(朝日)
  ■新幹線貸し切り 障害者がツアー 23日に岡山出発、大阪へ(朝日)
22日■市バス自転車に接触 左京、小1けが(京都)
  ■ポイントやブレーキ故障 電車立ち往生 東海道線の足乱れる(京都)
  ■ブレーキ故障 赤信号無視も JR大阪駅トラブル続出(朝日)
23日■地下鉄東西線 京阪電車の乗り入れ区間 二条駅まで延長 実現、道のり遠く 京都市が本格検討入り 財源、人員課題多く 観光振興に欠かせぬが…(京都)
  ■0系新幹線 9月で引退 東京、名古屋で式典(京都)
  ■トロッコで新緑満喫 阪神大震災被災児35人 「嵯峨野鉄道」など招く(朝日)
25日■時を拓く オムロン 立石義雄さん(59) (上) 先駆け自負 逆境くぐる(朝日)
  ■ドア故障で特急遅れ JR京都駅(京都)
  ■洛中洛外(京都)
26日■窓 席譲り合う心園児も学んだ 右京区・塩田勢津子(保育者・44)(京都)
  ■国労組合員不採用 政府と与党が解決へ前向き(朝日)
  ■整備新幹線の工期短縮 学年度事業費9倍に 運輸省試算(朝日)
  ■運輸省 都市鉄道10事業を調査へ(朝日)
27日■兼業部門堅調 4社が増収 関西の私鉄大手5社(京都)
  ■市バス、事故の確認怠る 交差点でバイクが接触(朝日)
  ■関西私鉄、3社増収増益 関連事業で伸びる 3月期決算(朝日)
  ■京福電鉄がバス部門分社 丸岡バスに譲渡(朝日)
  ■嵐、暴れる(朝日)
  ■強風・大雨、近畿大荒れ 大阪のゴルフ場 鉄柱倒れ民家被害(朝日)
28日■伏見で民家火災、1人重体 京阪沿線 列車影響(京都)
  ■JR未上場全社が減収 輪送量落ち込む 3月期決算(朝日)
  ■サリン被害者保護費「返還請求は不適切だ」 厚生省局長(朝日)
29日■北陸新幹線 「米原経由」が急浮上 琵琶湖環状線 構想実現へ懸念(京都)
30日■100年前の旧関西鉄道大仏線跡 ゆかりの駅など軌道たどる 加茂で見学会(京都)
31日■完成、大幅前倒しへ 自自の促進協が確認 財源、裏付けなく夢物語? 整備新幹線(京都)
  ■「若狭ルート」より「湖西線」が現実的 北陸新幹線で森幹事長(京都)
  ■創造力生かしSLスケッチ 上京の親子800人が参加 梅小路蒸気機関車館 写生大会(京都)
  ■列島新景 静岡県 大井川鉄道 夢ものせて SL、茶どころを疾走(京都)
  ■「鉄道員」心のしん じんわり 200本以上映画やって こんなに幸せに気分になれたのは初めてです 高倉健さん(朝日)



1日■旧加悦鉄道で活躍した「DB20 1」号 修理終え27年ぶり”発車” 加悦の広場 「森ブタ」雄姿再び
 旧加悦鉄道で活躍した国内最古クラスのディーゼル機関車で、現在加悦町滝の加悦SL広場(運営・カヤ興産)に展示されている「DB20 1」号がこのほど、半年間の修理を終え、引退から27年ぶりに同広場内で走りだした。蒸気機関車の台車を持つユニークな形で、関係者は「鉄道史を語る貴重な資料」と復活した姿に目を細めている。
 DB20 1号は、蒸気機関車からディーゼル機関車への過渡期の中で、昭和28(1953)年、堺市の森製作所が、廃車になったSLを再利用して製造。同47年に引退するまで20年間、旧加悦鉄道で客車を引っ張っていた。
 SLのように、前後の車輪がロッドで結合していろのが特徴。現在の一般的なディーゼル機関車と比べ約5分の1のスケール。森製作所ではこのような車両が10両ほど造られ、ずんぐりとした形から鉄道愛好家の間で「森ブタ」と呼ばれ愛されてきた。かつて北丹鉄道でも走っていた。
 引退後は解体をまぬがれ、同広場で展示されていたが、昨年秋、同広場の職員らが修理に着手。傷んだエンジンやはがれ落ちた塗装を半年間かけ、こつこつと手作業で直した。現存する森ブタはこの1台だけ。
 ゴロゴロと力強いエンジン音をたてながら同広場内の全長約100bの線路を元気に走る姿は、現役時代をほう沸させる。
 カヤ興産の篠崎隆管理部長は「今は新幹線などスピード化の時代だが、鉄道史の1ページとして子どもたちに見せてあげたい」と喜んでいる。
 ゴールデンウイーク中の2−4日は、同広場で走る姿が見られる。(京都新聞)
■京都市電への思い 写真集を自費出版 京のアマ写真家 品川文男さん
 かつての京都の市電をこよなく愛する京都市下京区のアマチュア写真家がこのほど、これまでに撮りためた写真から特に愛着ある作品をピックアップし、写真集「回想のアルバム 京都市電」を自費出版した。市電と溶け込んだ市街地の町並みや人々の生活風景は、今では様変りしているが、写真集のやさしい視線の中でよみがえっている。
 下京区花屋町通壬生川西入ルの品川文男さん(76)で、今年8月に迎える「喜寿」を記念して出版した。
 品川さんは、幼いころから蒸気機関車や電車が大好きだった。本格的にカメラで電車を写し始めたのは1961(昭和36)年、国鉄京都駅と北野天満宮を結ぶ市電の北野線が廃止されたころから。
 写真集には、京都の街から市電が姿を消す78年までの20年間に絞り、カラー7枚、白黒111枚を収録している。
 祇園石段下や五山の送り火を背景に市電が走る作品や、「万国博会場ゆき」の看板が立つ阪急大宮駅、長刀鉾の組み立てなど、風景に溶け込む市電の姿、70年代になって車が増え走りにくそうな市電など、特色ある作品ばかり。
 品川さんは「京都の街の変遷も感じられる1冊にしたかった。欧州では路面電車が活躍しているというが、京都でも市電の復活を考えてもいいのではないか」と話している。
 町づくりに詳しい横山俊夫京都大人文科学研究所教授(文化史)は「チンチン、がたがたという音が聞こえてくるような1冊だ。市内の公共交通をめぐる議論の輪が広がるきっかけになれば」と出版の意義を話している。
 写真集は127n、室町書房刊。2000円で希望者に販売する。問い合わせは品川さん方075(361)9687へ。(京都新聞)
■GW 1000円極楽作戦
 JRで京都駅から大津駅に行くことにした。まっすぐ行けば約10`、10分ほどで着く。今回は、大都市近郊区間の運賃特例を利用して琵琶湖を時計回りに1周するコースを楽しんだ。
 午前10時半すぎ、京都駅で大津駅までの190円の切符とお弁当を買い、湖西線の快速に乗り込んだ。 
旅の前半は、新緑の比叡山と春の湖が車窓を彩る。堅田駅を過ぎたころから湖岸沿いを電車が走るため、特に景色がいい。
 近江今津駅で乗り換えると、ぐっとお客が減った。親子連れに声をかけると、同じく大回り乗車の人たちだった。思わず会話が弾む。乗務員さんが切符の確認に回ってきたが、「大回り乗車ですか」の一言だけ。
 北端の近江塩津駅からは、寝台列車を改装した列車に乗り換えた。小さめの窓も、かえって旅情を誘う。青々とした麦畑やレンゲ畑、田植え間近の水が張られた田んぼなど、のどかな里山の風景が続く。
出 費
電車賃(京都−大津)190円
お 茶140円
駅 弁480円
合 計810円
 長浜駅で乗り換えた後、駅弁を広げた。車内で食べるお弁当は格別だ。食べ終わると、電車の心地良い揺れで、いつの間にか眠りの中。気がつけば大津駅、あっという間の3時間19分、170`の旅だった。
 夫と一緒に大津駅で降りた森方百里子さん(66)=福知山市=は、「山科から乗りました。座席も昔に比べて乗りやすいから疲れないし、全然退屈しなかった」と満足した様子だった。
 大都市近郊区間特例は、路線が複雑で目的地までいく通りもの行き方がある大都市圏で、区間内に限りどの経路で到着しても最も安い料金に統一されている制度だ。同じ駅や路線を通ることはできない。
 JR西日本は「この特例は大回りするためではなく、乗客の利便性を考えた制度」といい、意外な人気ぶりには複雑な様子だ。
 特例区間や乗り方などを間違わなければ、認められている大回り乗車は、安い運賃でちょつとした旅行気分が味わえ、魅力的だ。(石田真由美)(京都新聞)
■鉄道計画、実現性再調査へ サウジ石油相 通産相と合意
 【リヤド30日=武石英史郎】サウジアラビアを訪問中の与謝野馨通産相は30日、同国のヌアイミ石油鉱物資源相と会談した。ヌアイミ石油鉱物資源相は、アラビア石油(本社・東京)の採掘権延長の前提条件としている鉱物運搬用鉄道計画に対する日本の投資を改めて要求。与謝野通産相が採算性に疑問を投げかけたことから、実現可能性調査(FS)を再び実施することで合意し、結論を事実上、先送りした。
 また、サウジからの原油輸入量を拡大するための民間の議論の場を設けることでも合意したが、採掘権延長問題について進展はなかった。
 会談では、まず与謝野通産相が「アラビア石油は両国関係のかけ橋として重要だ。アラビア石油との円滑な交渉を期待している」と採掘権延長を求めた。
 これに対し、ヌアイミ石油鉱物資源相は「確かに両国のかけ橋だ。現在鋭意交渉している」と述べる一方、「産業の多角化に努力しているが、鉱業開発のため、鉄道が必要だ」と鉄道計画への協力を求めた。しかし、与謝野通産相は「経済性がないと鉄道は実現しない」と難色を示し、採算性などを調査することで折り合った。(朝日新聞 夕刊)
■南紀方面特急 関空も人の波 GW混雑ピーク
 ゴールデンウイークでふるさとや行楽地を目指す人の混雑が1日、ピークを迎えた。午前10時半までのJR乗車率は、大阪から南紀方面に向かう特急「スーパーくろしお1号」の160%を最高に、博多行きの山陽新幹線や北陸方面に向かう特急でも100%を超えた。JR西日本によると、連休後半の混雑は4、5両日になるという。
 関西空港も出国ラッシュのピークを迎えた。この日だけで約2万3000人が出国し、空港内は早朝から若い女性や家族連れなどでにぎわった。帰国者が最も多いのは5日で、2万3000人を超えるとみられる。(朝日新聞 夕刊)
2日■深夜の改札に女性駅員登場 法改正で規制撤廃に JR天王寺駅
 深夜のJR天王寺駅(大阪市天王寺区)の改札口に1日、女性駅員が登場した。労働基準法と男女雇用機会均等法が改正され、女性の深夜勤務の規制が撤廃されたため。JR西日本は新大阪、新神戸駅などでも順次進めていく計画で、味気なかった深夜の駅の風景もちょっぴり変わりそうだ。
 JR西日本の運転現場で働く女性社員は現在、駅員や車掌ら計約160人。これまでの労基法では深夜帯の午後10時から午前5時まで女性は勤務できないと定められており、深夜勤務はしていなかった。法改正に伴って主要駅を中心に仮眠施設などを整備、女性駅員の深夜勤務を始めることにした。
 この日、天王寺駅の深夜の改札口に立った清水香織さん(18)は「お客様に喜んでいただけるように男性駅員にはない明るさとさわやかな笑顔で、柔らかい対応を心がけたい」と張り切っていた。
 関西の主要私鉄や大阪市営地下鉄では、女性駅員の深夜勤務はまだない。JR東海はすでに4月初めから名古屋駅などで始めており、首都圏でもJR東日本が今秋から始める予定。(朝日新聞)
3日■GW日和、行楽 スポーツ弾む 加悦「SLまつり」始まる ミニ列車運行 子供ら大喜び
 蒸気機関車や古い客車を展示している与謝郡加悦町滝の加悦SL広場で2日、恒例の「SLまつり」が始まった。石炭で動くミニSLの運行や鉄道グッズの販売、修復された国内最古級のディーゼル機関車の運転などが行われ、家族連れらでにぎわった。4日まで。
 京阪神や東京などの鉄道愛好家でつくる「加悦SL広場友の会」の主催で、今年で3回目。
 まつりでは、ミニSLが運行されたり、鉄道関連用品の販売なども。特に、今回は約30年前まで旧加悦鉄道で使われていたミニディーゼル機関車「DB20 1」が実際に場内を運行。漁船のようなエンジン音を響かせて走る姿に子どもたちが熱心に見入っていた。
 3日午後1時半からは、SL広場関係者が「鉄道車両の修復について」と題して講演する。まつりは午前10時から午後6時まで。(京都新聞)
■整備新幹線 新枠組み策定本格化 連休明けから自民、自由両党 財源の確保や着工区間 見通しは立たず
 自民、自由両党による整備新幹線建設の新たな枠組み策定作業が5月の連休明けから本格化する。13日に沿線の13道県知事、17日にはJR4社からそれぞれヒアリングし、8月末までに新枠組みをまとめる。しかし新たな財源確保の見通しはなく、既着工区間の完成時期の前倒しや未着工区間の事業着手がどこまで盛り込まれるか未知数だ。
 新枠組み策定については3月末、自由党が同党の考え方を自民党に伝えた。
 その柱は@2004年度までに東北、北海道新幹線の盛岡−新函館と北陸新幹線の長野−金沢、九州新幹線鹿児島ルートの博多−西鹿児島をフル規格で開通A北海道新幹線の新函館−札幌、九州新幹線長崎ルートの新鳥栖−長崎を新規着工区間に位置付けB建設財源の地元負担の在り方を再検討−などだ。
 これまで整備新幹線の枠組み策定は自民党主導で行われてきた。
 自由党の二見伸明衆院議員は「早期整備を目指す基本的なスタンスは一緒」と強調、今回の枠組みづくりを通じて同党の存在意義のアピールを狙っている。「各沿線の地元で党勢拡大につながる」(自由党幹部)という読みがあるためだ。
 だが自民党議員の一部からは「これまで自民党が建設促進の流れを進めてきた。いいところだけを取られて、自由党の手柄となるようなことはさせない」とけん制する声も出ている。
 一方、両党が期待を寄せているのが、1999年度予算に計上され、使途が限定されていない5000億円の公共事業予備費。
 自民党整備新幹線建設促進特別委員会の小里貞利委員長は「98年12月の予算編成時に整備新幹線に大きく予算を付けようとしたが、予算編成方針が固まっており間に合わなかった。予備費は整備新幹線のために生まれた意味合いがある」と舞台裏を打ち明ける。自民党幹部の一人も「予備費から3分の1を整備新幹線に持ってくる」と豪語する。
 運輸省の試算では未着工区間の建設費は総額5兆3700億円にも上り、全区間を一度に着工させることはとても不可能。これからの枠組み策定作業では東北、北陸、九州3線の未着工区間のうちどの区間を優先するかという着工順位の選定も同時に進められる。
 沿線の自治体、国会議員、運輸省を巻き込んだ水面下の駆け引きが活発化しそうだ。(京都新聞)
4日■時速525` 世界最速リニア 実用化に山あり谷あり長い”不況”トンネルも 環境対策や建設コスト 課題山積
 時速552`。山梨県で実験が行われている超電導磁気浮上式リニアモーターカーが、世界最高スピードを達成した。時速500`の営業運転で東京−大阪間を1時間で結ぶ「夢の超特急」。開発に取り組むJR東海は「実用化に向け弾みがついた」と意気込む。しかし環境対策、建設費用など解決しなければならない課題は多く、不況で旅客が伸び悩む中、実用化までの道のりは険しい。
 「高速走行での安定性は実証された」。世界最速を記録した4月14日、山梨実験センターの関秋生所長は笑顔で語った。
 山梨実験線(山梨県大月市−都留市)で、それまで行っていた宮崎での試験を引き継いだのは1997年4月。3両から5両に編成車両数を増やしての走行試験を実施、2編成のすれ違いによって相対速度966`を達成した。関所長は「技術的にはおおむね完成の域に近づいた」と自信をみせる。
 山梨での試験は3年計画で、本年度が最後の年。運輸省は当初「1999年度高までに実用化にめどを立てる」という目標を立てていた。しかし同省は4月9日、地元国会議員らでつくる「リニア中央エクスプレス建設促進議員連盟」の会合で「2000年度以降も5年間程度試験を継続する必要がある」との考えを示し、実験は延長される見通しになった。
 JRとは対照的に、運輸省が「今の段階で実用化の自信はない」と慎重なのは、技術面や建設コストに懸念を持っているからだ。
 実験線沿線の都留市中谷地区。走行試験が行われると障子や戸が小刻みに揺れ「ゴーン」とうなるような音が響く。トンネルの出入り口付近で高速スピードが生み出す低周波の空気振動。リニア特有の現象で、メカニズムは詳しく分かっていない。
 JRは空気抵抗を和らげるため、トンネルの出入り口にカバーを取り付けるなど対策を取っているが、場所によっては設置前より振動値が上がるなど解決策は見いだせないのが実情。
 線路にあたる「ガイドウエー」の両壁には、車体を浮上、推進させるための鋼線コイルをびっしりと設置しなければならないが、東京−大阪間に路線を敷くとなると、コイルの量も膨大になり、それだけ費用がかかる。
 実験線全線(総延長42.8`)の早期建設も大きな課題。当初は94年の開通を目指していたが、完成しているのは先行区間(18.4`)だけ。残りは着工のめどすらついていない。
 JR東海によると、日本と同じように海外でリニアの開発を進めているのはドイツのトランスラピッドぐらい。2005年の開業を目指しているが、膨大な建設費用がかかることから開発を続けるか先行きは不透明な状態という。
 JRは東海道新幹線を補完する「中央新幹線」としてリニアを走らせる計画だが、東海道新幹線の利用客は不況で頭打ちの状態。
 藤井弥太郎慶大教授(交通経済論)は「今の東海道新幹線の状況からみると、中央新幹線が必要なほど交通量が増えるか疑問。実際の建設費用もJR東海だけでは無理で、国が金を出さなければならないが、この苦しい財政状況では難しい」と話している。(京都新聞)
5日■「東京スカパラ」ドラマーが鉄道自殺か
 東京都世田谷区豪徳寺一丁目の小田急線豪徳寺駅構内で2日午後11時15分ごろ、人気バンド「東京スカパラダイスオーケストラ」のドラム奏者、青木達之さん(32)が、相模大野発新宿行き急行電車にひかれ、全身を強く打ってまもなく死亡した。警視庁北沢署の調べでは、青木さんは電車がホームに入ってきたとき、線路上にうつぶせになっていたといい、自殺の可能性もあるとみて調べている。(朝日新聞)
6日■市営バスにひかれ死亡 神戸で71歳男性
 5日午後3時28分ごろ、神戸市垂水区狩口台四丁目の県道で、近くの無職田中勉さん(71)がJR朝霧駅行きの神戸市営バスにはねられた。田中さんは頭などを強く打ち、間もなく死亡した。
 垂水署の調べによると、現場は南北に走る片側2車線の、ほぼ直線の道路。事故現場の約40b南に、信号機と横断歩道があった。同署は業務上過失致死の疑いで、市営バスの運転手から任意で事情を聴いている。(朝日新聞 夕刊)
7日■JR西日本 3年ぶり増 利用まとめ
 JR西日本と関西の大手私鉄5社は6日、ゴールデンウイーク期間中(4月28日−5月5日)の利用状況をまとめた。JRは、新幹線と在来線の特急・急行合わせて前年同期比8%増、私鉄も5社全体で同1%増となり、利用者数は、いずれも3年ぶりに前年を上回った。
 JR西日本の期間中の利用者数は、新幹線(新大阪−博多間)が約103万人(同7%増)、在来線も同じく103万人(同9%増)だった。
 新幹線では、3月にデビューした「700系のぞみ」の平均乗車率が77%で、従来型の300系の同69%を上回る好調さをみせた。在来線では、和歌山県内で4月29日に始まった南紀熊野体験博によって、紀勢線の乗客が前年比13%増と大幅に伸びた。
 ゴールデンウイークでの増加は、阪神大震災の翌年の1996年以来、3年ぶり。同社では「長期休暇の取りやすい曜日配列が利用増につながった」とみている。
 また、JR旅客6社合計の輸送実績は、主要50区間の新幹線、特急、急行の利用客は前年比8%増の858万6000人で、3年ぶりに前年を上回った。
 私鉄5社(近鉄、京阪、阪急、南海、阪神)の期間中の利用者総数は、約1900万人で、前年比1%増。各社別では、京阪が同0.8%、阪急が同1.6%それぞれ増加。阪神は、甲子園球場でプロ野球の阪神戦が期間中に前年より4試合増の5試合あり、同13%増となった。一方、近鉄は同0.6%、南海は同4.3%それぞれ減少した。(京都新聞)
■JR客3年ぶりに戻った! 「黄金週間」前年上回る
 JR西日本は6日、ゴールデンウイーク期間中(4月28日−5月5日)の特急、急行の輸送実績をまとめた。新幹線と在来線の主要11線区、12区間の利用者数は昨年より15万人増の計206万人(前年比108%)。全国のJR各社でも利用者は伸びており、長引く景気低迷で落ち込んでいた利用者数は3年ぶりに前年を上回った。
 JR西日本などによると、新大阪−博多間の山陽新幹線の利用者数は計103万人(同107%)。新大阪−東京間の東海道新幹線も前年比107%だった。北陸、南紀方面などの在来線は計103万人(同109%)。和歌山県内を走る紀勢線が南紀熊野体験博の開催もあって前年比113%と大幅に伸びるなど全線区で前年を上回った。
 京阪神近郊地区ではほぼ前年並み。近距離切符の発売枚数では、NHK大河ドラマの舞台となった兵庫県赤穂市の播州赤穂駅や京都市の嵯峨嵐山駅などでは前年比120%を超えた。南海、阪急、阪神、京阪、近鉄の関西大手私鉄5社の利用者数は、計1914万5000人(同101%)。(朝日新聞)
■六地蔵駅に快速停車 10日から、JR奈良線
 JR西日本はダイヤ改定により、10日から奈良線六地蔵駅(宇治市)に快速電車を停車させる。宇治市や地元にとって1992年10月の同駅開設以来の悲願で、10日午前10時ごろには最初の奈良行き快速電車を迎え、記念式典を催す。
 奈良線では快速電車はこれまで京都−宇治間はノンストップだった。それが近畿の都市圏路線の利便性アップにより、午前10時台から午後5時台までに上下線とも各8本が六地蔵駅に停車する。これにより六地蔵−京都間は現在(普通)の17分から10分に短縮される。(朝日新聞)
■JR山陰線止まる トラックが警報器倒す
 7日午前9時45分ごろ、兵庫県朝来郡和田山町上前田のJR山陰線糸井踏切で、踏切警報器が倒れて架線にひっかかリショートした。
 JR福知山支社が福知山−城崎間の最寄りの駅で各列車をストップさせ、和田山−養父間の送電を止めて復旧作業を急いでいるが、京都行き特急「きのさき4号」など各列車に遅れが出ている。
 同支社によると、踏切を横断しようとしたトラックが警報器と接触、倒したらしいという。(京都新聞 夕刊)
8日■KTR乗客 3年ぶり増加 GW期間中
 北近畿タンゴ鉄道(KTR)は7日、ゴールデンウイーク中(4月28日−5月5日)の輸送実績を発表した。昨年同期比2%増の3万9700人となり、3年ぶりに前年を上回った。
 中でも京都、大阪を直結する特急や急行列車の乗車人員は、昨年同期比で10%増の1万7100人。2日の新大阪発久美浜行特急「タンゴ・ディスカバリー11号」が乗車率149%を記録したのをはじめ、100%を超えた列車が上下あわせて16本にのぼるなど、昨年(9本)を上回る実績だった。
 また、天橋立駅だけで見ると、降り立った客は6650人を数え、昨年同期に比べ15%増えた。KTRでは「今年は連休の曜日が好条件で、都会からの帰省客が増えたのが大きい」と分析。連休前半は天橋立を中心に観光客が目立ったが、後半は4日の雨の影響で客数も落ち込んだ、という。(京都新聞)
■乗り換え急いでゴッツンコ ”ダッシュ乗車”で正面衝突 大阪のJR・私鉄駅
 「駆け込み乗車はおやめくださいっ」。最近、大阪を中心としたJRや私鉄の駅で、こんなアナウンスを耳にする機会が増えた。そういえば、新幹線の乗務員用の窓に頭から飛び乗った会社員も出現したほか、ラッシュ時は転倒事故も目立つ。大阪では整列乗車をしないと言われていたけれど、駆け込み乗車まで名物になったのか。電車はすぐ来るのに、なぜそんなに急ぐの?!
 JR大阪環状線鶴橋駅は、1日の利用者が約27万3000人。近鉄大阪、奈良両線と接続し、乗り換え客が多い。近鉄ホームから階段を上るとJRとの連絡口。環状線のホームへは直線距離で22b、ゆっくり歩いても1分程度にすぎない。
 通勤・通学客が集中し始める午前7時半。スピーカーから、「危険ですから、駆け込み乗車はおやめ下さい」という駅員の声が響く。近鉄の乗客は環状線電車を目がけて走る。
 環状線の乗客も近鉄電車に乗り換えようとダッシュ。狭いホームで交錯し、肩をぶつけたり、つまずいて転んだり。午前8時半ごろまでこうした状態が続き、連絡口やホームにいるJR、近鉄駅員計15人が注意を呼びかけても、トラブルは後を絶たないという。
 昨年3月から自動改札機が置かれ、切符が改札機を通るのに2秒程度かかるようになったため、走る勢いも少しはそがれた。近鉄からJRに急ぐ客はホームに入る環状線の電車が見え、JRから近鉄に乗り換える客は近鉄電車の発車時刻を示す掲示板が見えることも、駆け込みを促すらしい。
 4月3日には、環状線から降りた大阪府寝屋川市の主婦(61)と、連絡口付近から電車へ駆け込む男性が正面衝突した。男性はそのまま走って環状線に乗ったが、主婦は救急車で病院に運ばれ、右足ひざの粉砕骨折で入院した。一緒にいた次女(30)は「こちらが歩いていても、前後左右から走ってくる人がいて、いつぶつかるかと思うと怖い。何げなく使っている交通機関に大きな危険が潜んでいる」と訴える。
 鶴橋駅に限らず近畿圏のJRでは、私鉄との接続駅やターミナル駅で駆け込み乗車が目立つ。JRは今回の事故を機に鶴橋駅ホームの柱に「駆け込み禁止」を訴える張り紙をするほか、ホームの自動放送でも注意を呼びかける方向で検討を始めた。JR西日本大阪支社は「環状線は3−4分間隔で走っている。急いでなくても電車が見えるとつい走ってしまうのだろうか。周りが走るから、つられるという集団心理があるのかもしれない。せっかちな大阪人気質の表れだろうが、危険であることも分かってほしい」と話す。
 私鉄でも駆け込み乗車は多く、阪神電鉄では2、3ヵ月に1回、ホームの階段を走って転んだり、電車とホームとの間につまずいて打撲したりするなどの事故がある。南海電鉄でも、駆け込んできた客が閉まりかけた電車のドアに無理やり腕を突っ込むなどして腕にけがをする事故が年に数件あるという。
 一方、JR東日本によると、首都圏では整列乗車の徹底もあり、駆け込み乗車そのものが少なく、けがをするなどのトラブルもほとんどないという。(朝日新聞)
■「フリーゲージ車」200`で走った 実用化へ開発着々
 車輪の幅を自由に変えることで、線路幅の異なる新幹線とJR在来線を行き来できる「フリーゲージ(軌間可変)電車」の開発が、実用化へ向けて動き出した。運輸省は5月中にも、JR各社や学識経験者などで構成する調査委員会を発足させ、具体的な導入路線などについての検討を始める。技術開発も順調に進んでおり、4月上旬には、米国での走行試験で初めて新幹線並みの時速225`を記録した。フリーゲージ電車が実用化されれば、新幹線と在来線の相互乗り入れで需要増加が見込めるほか、整備新幹線の建設費を節約できるなどの利点がある。
 国内の鉄道には主に、狭軌(在来線の1067_)と標準軌(新幹線などの1435_)の2種類の線路幅がある。新幹線と在来線を同じ車両で走るには、山形新幹線のように在来線の線路を新幹線の幅に広げるなどの方法をとっているが、費用がかかるのが難点だ。フリーゲージ電車には、車輪の幅が自由に動く台車が付いている。狭軌と標準軌の間にある「軌間変換装置」を通過する際に、調整する仕組みで、線路を作り替えずに済む。
 フリーゲージ電車は、鉄道総合技術研究所(JR総研)と日本鉄道建設公団が1994年から技術開発を進めている。今年3月から、米コロラド州の試験線で、走行試験を始めた。年末には時速300`での耐久性確認試験を行う計画だ。(朝日新聞)
9日■駅のことは何でも聞いて JRが専門の案内係
 慣れない旅行者やお年寄りが券売機の使い方や乗り換えの方法などで困らないようにと、JR東日本は駅の案内を専門にする係員「サービスマネジャー」をこのほど、東京、仙台、長野など16駅に配置した。
 最近の駅は、複雑な機能を持った券売機や自動改札機の増加などで便利になる一方で、利用者からは「使い方が分からず、すぐ聞ける人もいないので不便だ」との不満が寄せられていた。JRによると、案内専門の係員を置くのは国内の鉄道で初めて。案内員は計約50人で、JR東日本のシンボルカラーである緑色の制服を着用しており「何でも聞いてほしい」としている。(京都新聞)
■停電で19本が遅れ 新幹線、豊橋−新大阪
 8日午後5時半ごろ、JR東海道新幹線の豊橋駅と新大阪駅の間で、停電のため上下線計19本が一時運転を見合わせ、12分後に再開した。
 JR東海によると、岐阜県根尾村にある地震検知警報システム(ユレダス)が作動したため、運転を見合わせたという。当時、現場周辺では地震が発生しておらず、ユレダスが誤作動した原因を調べている。
 この停電で約1万4000人の乗客に影響が出た。(京都新聞)
10日■「名所なし」を逆手にPR 体験ツアーで勝負だ 山形新幹線延伸地域
 山形新幹線が今年12月に延伸する山形県新庄市周辺の8市町村などでつくる最上エコポリス観光振興委員会(会長・高橋栄一郎新庄市長)は、有名な観光地がないのを逆手に取った「名所はないが名人はいる」と書いたユニークな宣伝ポスターを1000枚作り、今月から首都圏のJR駅などに張り出しPRを始めた。
 山形県内陸北部の最上地方と呼ばれるこの地域は、温泉が多く民話の宝庫として知られるものの、全国的な知名度のある観光地がないのが関係者の悩みの種。
 同委員会では新幹線延伸に合わせ、どう観光客を引き寄せるか検討していたが、あえて「名所はない」と言い切ることで、インパクトのある宣伝効果を狙うことにした。
 宣伝文句を決めるまでには、委員会メンバーの市町村長らから「名所がないなんて言い過ぎだ」「いや、かえって注意を引くだろう」などさまざまな意見が出たという。
 観光振興委員会は、民話の語り部名人や客の病気に合わせ入浴スケジュールを作る温泉入浴相談人ら約50人を観光案内人などとして登録。
 同委員会は今後、名人を活用した各種体験ツアーなどを企画する予定で「魅力的な最上地方の名人らと触れ合い、それぞれの心の名所をつくってほしい」と話している。(京都新聞)
■ランドセルのころ レールウェーライター 種村直樹さん(63) 電車ごっこでも車掌部門
 26年前に新聞記者を辞めて以来、レールウェーライターという肩書だ。紀行や交通問題の評論、旅行のハウツーものを手掛ける「鉄道記者」。著書には鉄路を舞台にしたミステリーも加わる。
 鉄道好きは子どものころから。大津市の生家の目の前を京阪電鉄のチンチン電車が走り、少し歩けば、特急列車が東海道線を駆け抜けるのを眺めることができた。
 「一本の縄を使った電車ごっこ、よくやりましたね」。みんな争って運転士になりたがるものだが、種村少年はいつも車掌。小学校の高学年になると、仲良くなった京阪の車掌さんに、電車のベルを鳴らすなど「車掌のまね事」もさせてもらうようになった。
 「当時から運転士より車掌の方がよかったなあ。だから今でもメカに弱い…」。若い人とゲームセンターに行って、電車を運転するシミュレーションゲームをやっても「全然ダメ」なのだそうだ。
 父の実家が新潟県にあり、北陸線の列車の旅にも子ども心に胸をときめかせた。「夜行列車で目が覚めると、親不知の辺りを通過、なんてね」。汽車が好きになるわけだ。
 鉄道の旅を本格的に楽しむようになったのは大学生になってから。「夏休みに友達と1ヵ月ほどかけて北海道を旅行しました。汽車の中で会った人に『うちにおいで』と言われて訪ねたり、次に行く場所に住む知り合いを紹介されたり…。これが旅なるものかと思いましたね」
 いま取り組んでいるのは日本列島外周の旅。手段は鉄道、バス、船、そして歩き。東京を出発、できるだけ海岸線の近くをたどって北海道まで北上。今度は日本海側を南下、九州の西海岸から沖縄に渡り、島々を巡って、現在、九州の東海岸を進んでいる。
 「離島を訪れて、島ごとに表情がこれほど違うのかと驚きました。人の顔まで違うんですね」。5、6日間の旅行を終えたら東京にとんぼ返り、数ヵ月して前回の終了地点に戻り、旅行を再開する。乗り物一辺倒の旅とは違うが「歩けるうちに、そう、75歳ぐらいまでには終えたいと思っています」。
 ちなみに旅行はいつも一人?
 それとも連れがいる?
 「二人で、というのが多いかな。もともと寂しがり屋なんでしょうね」(京都新聞)
11日■窓 バスの車内風景
・見知らぬ人が幼い孫ひざに 右京区・葛本 美代(主婦・58)
 先月17日の午後、幼い3人の孫を連れて四条大宮から市バスに乗った。タクシーを使えばよかったのだが、孫たちに辛抱することも教えようと「座るとこ、なかっても我慢せんとあかんよ」と言い聞かせて乗り込んだものの、とても込んでいた。
 一番後ろに立たせようと思っていたら、一人の女性が席を譲ってくださり、5歳の女児を座らせた。すると、その奥に座っておられた年配のつえを持っておられた男の方が2歳の女児を抱いて、そのひざに座らせてくださった。3歳の男児は立ったままだった。降りるバス停に近づいて、慌てて2歳の子を抱きとった。
 後の2人に「ついておいでや」と必死で前の方へ行き、やっとの思いで降りた。降りてから「どうしよう。あのおじさんに、ありがとうて言えへんかった」と孫たちと話しながら帰りました。2歳児をひざに乗せてくれた年配の方、ありがとうございました。おとなしく乗ってくれた孫たちといい、うれしい1日でした。
・張り紙だらけ無神経な車窓 左京区・永田 孝(大学講師・62)
 京都市営バスに乗る楽しみの一つは、日本の歴史の濃密に漂うこの町と間近に触れ合い、見物しながら移動できることであろう。ところが、張り紙がべタベタと窓ガラスに張られていて視界を遮断している。無神経極まりない。
 経営難を伝えられている現状は理解する。だから、収入に直結しているらしい広告の類は、おおむね透明なシールにしてあることもあって、我慢もしよう。だが、不透明な紙質で視界を遮っている張り紙は、交通局ニュースというお知らせである。「運賃箱が新しくなりました」という張り紙は、必要なのか。交通局にとっては大金をかけて取り換えた点でニュースかもしれない。けれども、いつも利用している乗客なら、見れば分かる。初めて乗る人は、以前の運賃箱の形を知らないのだから知らせてもらっても仕方がない。
 どっちにしても、使い方が分からなければ、運転手さんに尋ねるしかないのだから、どんな点からみても無意味なお知らせである。「停留所が工事のため変更」という期限切れの張り紙が、はがされないままになっていることもあった。乗客の立場でバスの運行を見つめる人が、交通局に不在だというほかはない。批判や要望の尽きない市営バスであるが、マイカーやタクシーを利用しない市民にとって、最も大切な公共交通機関である。乗る人の身になっての運営を心がけてほしいものである。
・席譲る心配りなぜ教えない 吹田市・明石 俊弘(会社員・57)
 4月のある日、京都の知人を訪ねた時のこと。小学生のいる家族連れとバスに乗り合わせた。車内は、その家族連れのおしゃべりでにぎやか。私も同じように明るい気持ちになっていた。
 途中のバス停で足が悪いらしく、つえをついた初老の男性が乗ってこられた時、私の心は一挙に暗くなった。その人は車内を見渡しておられたが、席が空いていないことを確かめ、あきらめたように車内の中ほどの手すりをつかんで立たれた。私も立っていたので、どうすることもできず、座席の子どもが座席を譲ることを期待したが、そんな気配はなく、相変わらず家族連れはおしやべりに夢中。次のバス停でその人の近くの座席が空き、私もやっと胸をなでおろした。
 私は座席を譲ろうとしない子どもより、その時の親の態度に憤りを感じた。発育盛りの子どもを座らせ、足が悪い人が立たれている姿を見ながら平然とした態度で子どもと談笑している。なぜ、ひとこと子どもに指示しないのか。その無神経さ、気配りのなさにあきれるとともに、その子どもがかわいそうにも思えた。(京都新聞)
12日■「リニア」早期建設を 期成同盟会、実現へ決議 東京で総会
 リニアモーターカーによる中央新幹線の建設を求める沿線9都府県などで構成する「リニア中央エクスプレス建設促進期成同盟会」(会長・神田真秋愛知県知事)の総会が11日、東京都内で開かれ、同新幹線の早期建設実現を求める決議をした。
 総会には奈良、大阪など沿線9都府県の自治体の関係者ら約300人が出席。神田会長が「21世紀の日本経済を支え、分散型国土形成に多大な貢献を果たすリニア中央新幹線をぜひとも整備しなければならない」とあいさつ。来賓として出席した「リニア中央エクスプレス建設促進国会議員連盟」の奥野誠亮会長は「大改革の時代にリニア新幹線は21世紀の新日本建設のスローガンになりうる」と気勢を上げた。
 総会では@営業線の着工に向けて整備計画の決定に必要な調査を早急に実施するA山梨リニア実験線の未着工区間を完成し、早期にリニア技術の実用化を達成するB同新幹線建設を円滑に進めるため、大深度地下利用の早期法制化を図るなどを決議。大蔵、運輸両省など関係機関に要望書を提出した。
 中央新幹線は1973年、全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画路線に決定、甲府、名古屋、奈良の各市付近を主な経由地とする東京−大阪間のルートを設定。想定ルート上に建設された山梨県大月市−都留市間のリニアモーターカー実験線(18.4`)では、先月14日、時速552`の有人走行世界最速記録を達成した。(京都新聞)
■近畿運輸局 障害者はねた連続事故 阪神出な鉄に厳重注意
 兵庫県西宮市内の阪神電鉄踏切で障害者が電車にはねられる事故が相次いだことに対し、運輸省近畿運輸局は11日、同社から事情を聴き、厳重注意した。同運輸局は「立て続けに障害者の亡くなる事故が起きたことは遺憾だ。再発防止に十分注意してほしい」として、早急な原因究明とともに事故対策も求めた。
 同運輸局によると、西宮市内の阪神電鉄踏切で3月28日、車いすの女性(80)が遮断機に進路を阻まれ電車にはねられて死亡した。さらに今月9日夜、現場から西へ約200b離れた踏切を目の不自由な男性(54)が横断中、電車にはねられ死亡した。
 同社は、作動しなかった踏切の障害物検知装置は、検知の主な対象が自動車であり、設備上、問題点はなかったと主張している。しかし運輸省は、同種の事故が相次いだことを重くみて、ソフト、ハード両面からの再発防止策を求めた。(朝日新聞)
13日■路線バスにチャイルドシート JR長岡京−阪急東向日間 着用義務化へPR 警察の依頼で試験的に導入 全国でも珍しく
 チャイルドシートを装着した路線バスが登場−。JR長岡京駅と阪急東向日駅を結ぶ定期バス路線で、子どもを交通事故から守るチャイルドシートを装着したバスがこのほど、運行を開始した。
 チャイルドシートはバス、タクシーなど営業用車両を除いて来春から着用が義務化される予定だが、こうしたチャイルドシートを広くPRしようと、向日町署がバス会社の協力を得て取り組んだ。全国的にも珍しい試みとして注目されそうだ。
 チャイルドシートバスの導入を始めたのは、向日市や長岡京市を中心に路線バスを運行している阪急バス向日支社(森正基支社長)。バスには、幼児用のチャイルドシート1台が2人掛けの席の前から3列目に取り付けられており、シートの隣に親が座れるようになっている。この日、長岡京市内からバスを利用した京都市伏見区の主婦江口千文さん(30)は息子の和亮君(2つ)を連れて乗車、「急停止した時などに心強く思いますね」と話していた。
 現在は試験導入中で1車両のみだが、森支社長は「今後利用状況などを調査し、好評であれば増車も検討したい」と話している。同署によると「観光バスでは一部でチャイルドシートの導入を検討しているところもあるが、路線バスでは全国初めてではないか」という。(京都新聞)
■信楽高原鉄道事故から8年 あす追悼式や法要
 死者42人、負傷者614人を出した信楽高原鉄道列車事故から丸8年を迎えるあす14日、滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬の事故現場では同鉄道主催の追悼式と遺族の会によ9回目の法要、裁判結果報告会が行われる。
 午前10時からの追悼式には高原鉄道の北川啓一社長をはじめ杉森一夫信楽町長らが出席。続いて、遺族の会(吉崎俊三世話人)の法要にも参列し、遺族らとともに慰霊碑前で献花、焼香してめい福を祈る。
 午前11時半からは同町開発センターホールで遺族の会が裁判結果報告会を開く。遺族23人が訴えていた民事訴訟裁判で、今年3月、信楽高原鉄道とJR西日本両社に総額約5億円の損害賠償を命じる原告勝訴の判決が出たことなどを報告する予定。このあと、遺族の会、鉄道安全推進会議(TASK)の各総会もそれぞれ開かれる。
 同事故は1991年5月14日午前10時半ごろ、信楽町黄瀬の同鉄道単線区で、「世界陶芸祭」に向かうJR西日本下り臨時快速列車と同高原鉄道上り普通列車が正面衝突し、大惨事となった。(京都新聞)
■JR東日本株 2次売却、100万株軸に 運輸省検討 6000−7000億円の利益
 運輸省は12日、今夏に予定しているJR東日本株の第2次売却の規模を、政府(日本鉄道建設公団)が保有する残り株数の3分の2にあたる100万株を軸に検討していることを明らかにした。JR東日本は「政府保有の150万株すべてを売って、早期に完全民営化してほしい」と求めているが、政府は完全民営化に伴う法改正には与党との調整に時間がかかることなどを理由に消極的だ。
 昨年秋に成立した旧国鉄債務処理法に基づき、JR株の売却益は、年金などの負担金4兆3000億円のうち日本鉄道建設公団が引き継いだ4兆1200百億円の支払いにあてられる。東日本株は現在、1株当たり70万円前後の水準で推移している。2次売却によって株価が下がったとしても、100万株程度の売却によって6000億円から7000億円の売却益が得られると政府は見込んでいる。今後の株式相場の動向などによって、売却数が変動する可能性もある。
 政府は1993年度にJR東日本株の第1次売却(250万株)を実施。97年度までに西日本、東海を含め本州旅客3社の第1次売却を終えた。運輸省は97年度から98年度にかけて東日本株の第2次売却を検討していたが、株式相場の低迷などを理由に見送っていた。(朝日新聞)
■女性はねられ死亡 綾部のJR踏切
 13日午前4時50分ごろ、綾部市川糸町のJR山陰本線・市役所踏切(遮断機付き)で、踏切内にいた同市内の無職女性(71)が、京都行きの普通電車にはねられ、まもなく死亡した。乗客にけがはなかった。
 同電車が34分遅れで運転を再開したほか、出雲市行きの寝台特急など計4本が最高55分遅れ、約300人に影響が出た。(京都新聞 夕刊)
14日■近鉄車内で痴漢行為 容疑の会社員逮捕
 京都府警鉄道警察隊と伏見署は13日、強制わいせつの疑いで、城陽市寺田今堀、会社員中島秀和音疑者(30)を逮捕した。
 調べによると、中島容疑者は同日午前8時すぎ、近鉄京都線の大久保−丹波橋間の電車内で、通学途中の京都府相楽郡内の中学3年の女子生徒(14)にわいせつな行為をした疑い。府警によると、中島容疑者は1年半ほど前から、この生徒が乗車車両を変えるなどしても執ように付きまとい、痴漢行為を繰り返していた。
 生徒からの被害相談を受けて、鉄道警察隊員が今月7日から電車に同乗して警戒し、この日、犯行を目撃して現行犯逮捕した。(京都新聞)
■京都市バス3両 10日間使用停止 近畿運輸局、異例処分
 近畿運輸局は13日までに、今年の2月と3月に事故を起こした京都市バスを管理運営する市交通局に対し、バス3両を10日間にわたって使用停止とする処分を決定した。
 市バスは、2月20日に京都市右京区で歩道の電柱などに激突、乗客5人に軽いけがを負わせた暴走事故と、3月1日に左京区で横断中の高齢者をはねる死亡事故を起こした。運輸局は、交通局の営業所を特別監査し、乗務員の指導監督などが不適切として、処分に踏み切った。同様の処分は、近畿管内では近年、例がないという。
 市交通局では処分について、「厳粛に受け止め、今後は安全管理をさらに徹底する」としている。車両の使用停止で、市バスのダイヤに影響は出ない見込み。(京都新聞)
■信楽高原鉄道事故から8年 九回忌法要 尽きぬ鎮魂の涙 慰霊碑前、勝訴を報告
 42人の死者を出した信楽高原鉄道列車衝突事故から丸8年が経過した14日、滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬の事故現場で、同高原鉄道の追悼式と、遺族の会による九回忌法要がしめやかに営まれ、関係者らが悲しみを新たにした。
 午前10時から始まった同高原鉄道の追悼式には約20人が参列。読経が流れるなか、犠牲者の名前が刻まれた慰霊碑前で、北川啓一同鉄道社長や杉森一夫信楽町長はじめ参列者が献花、焼香を行った。
 続いて行われた遺族の会の法要では遺族ら約30人が参列し、慰霊碑前に献花のあと、遺族の会の吉崎俊三世話人が原告団長として大阪地裁の民事裁判で勝訴した判決文を供えるとともに、全員が事故発生時の同10時35分に1分間の黙とうを捧げた。吉崎会長は「犠牲者の方々には長い間、お待たせしたが、一区切りついたことを報告します」と霊前に勝訴を報告した。
 このあと、午前11時半から同町開発センターホールで、遺族の会による裁判結果報告会が行われ、弁護団が裁判経過を踏まえ、裁判結果を遺族や関係者らに説明。午後からは鉄道安全推進会議総会も開かれた。
 同事故をめぐっては、遺族23人を原告とする民事訴訟裁判が大阪地裁で行われ、3月29日にJR西日本と同高原鉄道に総額約5億円の損害賠償を命じる原告勝訴の判決が出た。これに対し、JR西日本は判決を不服として大阪高裁に控訴し現在、係争中。(京都新聞 夕刊)
■レジャー 歩くスキーで初夏の銀世界 立山・黒部 転ぶ人続出、笑い声もいっぱい
 冬の間、多い所で9bを越える積雪で閉ざされていた長野、富山両県を結ぶ立山黒部アルペンルートが、今年も春の訪れに合わせて動き始めた。アルペンルー卜開通に合わせて詰めかけた観光客。その中にスキー板を抱える人たちが交じっていた。立山は初夏までスキーが楽しめる。ゲレンデを豪快に滑り下りるのもいいが、クロスカントリースキーで銀世界をじっくりと堪能するのも気持ちがいいものだ。歩くスキーツアーに同行した。
 富山市内から車で約40分、「立山ケーブルカー」立山駅から500bの標高差を3割に登りきると、そこから立山登山のベース・室堂までのなだらかな高原を、全長23`の道路が貫いている。目指す弥陀ケ原までバスで約30分。屋根まで届きそうな雪の壁を、縫うように走った。
 用具の心配は要らない。到着後、アルペンルート開通に合わせて営業再開した「弥陀ケ原ホテル」で、歩くスキー用具を借りた。防寒着さえ用意すれば初心者が手ぶらで来ても楽しめる。
 まずはホテル前のなだらかな斜面で足慣らし。靴で歩くと、ひざまで沈むが、スキーを履けば大丈夫。すり足のようにスキーを滑らせてみる。アルペンスキーとは要領が全く違うので転ぶ人が続出するが、スピードはあまり出ない。転んでも雪とたわむれる人の笑い声がそこかしこから聞こえる。クロスカントリー競技の「苦しい、つらい」といったイメージが先行していただけに、明るい雰囲気に少々拍子抜けした。
心地よく上り下り
 すべてを包み込むようにひっそりと静まりかえった雪原を、スキーの滑る音だけが心地よく響く。滑り下りれば当然上りもあるが、見渡すかぎりの雪原は遮るものが何もないせいか、不思議なことに、気が付くと急な斜面を苦もなく登りきっている。
 雪原を案内する人の中元立山町のガイドでナチュラリスト(自然解説員)の佐藤武彦さん(55)がいた。「自然への接触頻度が高ければ、自然と共生していこうという気も高まる。スキーはそのきっかけになればいい」と話す佐藤さんのガイドは、自然に親しむことが一番の目的。休憩をたっぷりとりながら、山の名前や動植物のエピソードが次から次へと披露される。
 この日はあいにくの強風。立山カルデラを望む松尾峠まで往複5時間のツアーを予定していたが、途中で引き返さざるを得なかった。それでも「自然にマニュアルはないから、状況に合わせた楽しみ方をすればいい。ロスと感じる時間が長いほど、自然はいろんなことを語り掛けてきてくれる」と佐藤さんは穏やかに笑う。今年は積雪にも恵まれ、6月初旬ごろまでスキーが楽しめそうだという。
●メモ● 立山・黒部へは、各旅行社がバスパック、JR利用のパックを組んでおり、交通費などを考えると、割安。出発日、宿舎によって価格差はあるが、京都発2泊3日のバスツアーで4万2000円から4万7000円。JR利用のパックは2泊3日で5万5000円から7万円台まである。泊まりは立山、富山、宇奈月などがあり、選ぶ場合は注意。スキーガイド(レンタル料込み)は、佐藤さんの場合1日5000円。詳細は弥陀ヶ原ホテル 0764(42)2222。(京都新聞 夕刊)
■視覚障害者が亡くなった踏切 足元の線沿いに進むと壁 西宮の阪神 交差角変えたが舗装部分は残す 運輸省など改善要求へ
 目の不自由な男性が電車にはねられ死亡する事故が起きた兵庫県西宮市池田町の阪神電鉄本線の踏切に、障害者への配慮を欠いた「欠陥」があることがわかった。この踏切は高架化工事にともなって4年前に道路と線路が交差する角度を変えたが、西側には元の舗装部分が残っており、踏切の端を示す黄色い線もそのままだった。目の不自由な人が気付かずに北から南に西側の端を歩いていくと線路わきのフェンスにぶつかり、立ち往生してしまう可能性がある。西宮市と運輸省近畿運輸局は改めて調査し阪神電鉄に改善を求める方針で、阪神側はとりあえず古い黄線を消すことにした。
 事故が起きたのは9日夜。
 視野が狭くなる障害のある市内の会社員(54)が、白いつえをついて同電鉄の西宮東口駅踏切を北から南に横断中、電車にはねられて亡くなった。
 市高架対策課によると、もともとこの踏切は、道路が線路と斜めに交差する形だったが、1995年5月に高架の橋脚を立てるために線路と直角になるように変更された。
 このとき車道との境界を示す白線は引き直されたが、西端の道路面と黄線はそのまま残されたという。
 障害者の交通問題に取り組んでいる「福祉ウォッチングの会」(東京都)が事故後に現場の写真などを調べ、この「欠陥」を見つけた。
 今回の事故は目撃者がほとんどおらず、会社員がなぜ踏切の中にいたのかは不明だが、同会の前島賢三副会長は「視力の弱い人は足元の黄色い線などに頼りがち。フェンスに行き当たって戸惑い、踏切から出られなくなった可能性もある」と指摘する。
 近畿運輸局鉄道部運転保安課は「踏切の保安基準に違反しているとまではいえないが、紛らわしい点については早急に改善を求めたい」という。
 阪神電鉄は舗装部分を残したことについて「車の脱輪を防ぐ意味で、踏切の幅を狭めることは通常しない。今回事故が起きた場所は踏切の中央寄りであり、路面の形状は関係ないのではないか」と話している。(朝日新聞 夕刊)
15日■空の値下げ競争にも”参戦” 新幹線も割引切符 来月から新大阪−博多間
 JR西日本は14日、大阪−福岡線で激化する空の値下げ競争に対抗するため、山陽新幹線新大阪−博多駅間のひかりの運賃を1万100円と、通常の指定席運賃(1万4590円)を30%割り引く回数券「ひかり号カルテットきっぷ」を6月1日から、導入する、と発表した。18日から発売する。
 両駅間の割引切符としては、これまでで最高の割引率。
 山陽新幹線と直接競合する大阪−福岡線では、低額運賃を売り物にしたスカイマークエアラインズが4月、1万円という破格の運賃で新規参入。これに対し既存大手3社も6月、出発前日までに予約すると通常運賃の30%引きの1万1000円になる運賃割引で迎え撃つ構えで、JR西日本も利用客の流出を食い止めるため値下げ競争に”参戦”せざるを得なくなった格好だ。
 新発売する割引切符は片道4枚つづりの回数券で、1冊4万400円。1枚当たりでは通常運賃より4490円割安になるが、使用できる期間は購入した日の翌月1日から月末までに限られる。
 発売期間は8月末まで。繁忙期のお盆も使用可能で、同社は「好評ならば、9月以降の販売も検討する」としている。(京都新聞)
■バス専用レーン確保へ160人”出動” 京都市交通局など 17日から4日間 街頭啓発 四条通で違去駐車防止作戦
 交通混雑でダイヤの遅れが目立つ市バスの運行に協力を−と、京都市交通局と京都交通労働組合は、17日から20日までの4日間、京都市右京区の四条通(西大路−天神川間、約1.3`)で、バス専用走行レーンの確保を市民に呼びかけるキャンペーン「都大路作戦」を展開する。
 期間中、午後5時から7時まで職員ら約160人が毎日、四条通の南北の歩道に10b間隔で立つ。京都府警とも協力し、専用レーンに違法駐車がないか目を光らせるとともに、バス停で啓発用ポケットティッシュを配る。
 昨年秋に続き2回目の取り組み。今回、都大路作戦を展開する四条通にはバス専用レーンが設けられているが、違法駐車が絶えないため交通渋滞が起きやすく、市バスの運行に支障が出ているという。(京都新聞)
■京都市バス 3台を使用停止10日 近畿運輸局 事故相次ぎ処分
 京都市バスの事故が相次いでいることから、運行状況などを調べていた近畿運輸局は市交通局に対して、市バス3台を10日間の使用停止にする処分を、12日出した。乗務員の指導、監督が十分でないことが分かったという。
 今年3月の特別監査の結果、居眠り運転で事故が起きるなど乗務員の指導監督が不適切だった▽始業、終業時の点呼が確実に実施されていなかった−として、処分を決めた。バス3台は今月17日から26日まで使えなくなる。
 近畿運輸局によると、バスの使用停止処分を出したのは少なくともこの20年はないという。
 市バスがからむ事故に関しては、1997年6月、乗客の腕をドアにはさんだまま発車しけがをさせ、運輸局が警告を出した。その後も、今年2月、右京区の市道で居眠り運転が原因と見られる人身事故が起きるなど事故が頼発。特別監査に踏み切った経緯がある。
 下薗俊喜・市交通局長は「処分を厳粛に受け止め、安全管理を徹底し、乗客に安心して利用してもらえる市バスを目指したい」とコメントした。(朝日新聞)
■阪急電鉄社長に大橋氏
 阪急電鉄は14日、菅井基裕社長(69)が副会長になり、後任に大橋太朗専務(59)が昇格する人事を発表した。1993年に就任した菅井社長は、「鉄道依存からの脱却」を前面に打ち出した「新生阪急3ヵ年計画」を掲げ、都市開発、流通、レジャーの各部門で事業、財務などの構造改革を進めてきたが、この計画も98年度で終了したのを機に、経営トップの若返りを図ることにした。6月下旬の株主総会後の取締役会で、正式決定する。
 小林公平会長(71)は今月下旬、日本民営鉄道協会長に就任する予定で、諸団体の役職が多いことから会長職にとどまり、菅井氏が副会長として阪急グループ全体の経営を補佐する。
 本業の鉄道を中心にかじ取りを任される大橋氏は、経理畑の経験が長く、大規模な地域間発事業の資金調達などを担当してきた。「徹底した財務体質の強化に取り組む」と抱負を述べ、グループ全体で約8300億円の有利子負債を、3年以内に約8000億円まで減らすため、「資産の売却、不採算事業からの撤退も果敢に行う」と述べた。
 大橋 太朗氏(おおはし・たろう)関西学院大卒、62年に京阪神急行電鉄(現阪急電鉄)に入り、常務、専務を経て、98年6月から代表取締役専務。(朝日新聞)
■アジア交通渋滞 改称へ一石 マレーシアに地下鉄 来月開通 採算に疑問の声も
 【クアラルンプール14日=岡野直】クアラルンプールで来月1日、マレーシア初の地下鉄が開業する。首都郊外の住宅地と都心を結ぶ通勤の足として活躍しそうだ。交通渋滞を解消する切り札として期待される一方、投資規模が大きく、採算に疑問を投げかける声もある。
 クアラルンプールでは昨年9月、西と東の住宅地区からそれぞれ都心の手前まで延びる2本の高架路線が開通した。未完成だった都心部の5駅(延長約14`)が地下路線で、高架路線と結ばれて約29`の1本の鉄道となる。車両は運転手のいない無人車で、コンピューターで制御する。
 運営するプトラ社は今年初め、ラッシュ時以外の運賃を5割引き下げる割引制度を始めた。料金の安いバスと競合するなどし、利相客が当初見込んだ6分の1の1日約1万5000人にとどまったためだ。
 東南アジアでは、シンガポールの地下鉄が有名だ。バンコクでも2002年の開業を目指し、地下鉄工事が始まっている。
 クアラルンプールでの地下鉄経営について、マラヤ大学のナイド教授(経済学)は「300万人以上の人口が密集しているシンガポールと比較して、クアラルンプールは、人口約130万人で居住地区も分散している。採算が取れるのか疑問だ」と懸念する。総工費は地上部分を含めて45億リンギ(約1400億円)かかった。プトラ社側は「地下部分が開通すれば、乗客は伸びる」としている。(朝日新聞)
■新大阪−博多「ひかり」 格安航空運賃に3割引で対抗 8月末まで
 JR西日本は14日、山陽新幹線新大阪−博多間を走る「ひかり」の割引切符を18日から新発売する、と発表した。1冊4枚つづりの回数券で、通常料金(片道1万4590円)の3割引き。お盆期間中も利用できるが、8月末までの限定発売になる。
 新発売するのは「ひかり号カルテットきっぷ」。ひかりとこだまの普通指定席用で、4枚つづりで1冊4万400円。1枚当たり1万100円で、4人同時に利用することもできる。有効期間は購入月の翌月1ヵ月間に限られる。
 同区間の「のぞみ」については、昨年7月から同じタイプの割引回数券を発売、のぞみの全乗客のうち25%が利用している。
 大阪−福岡間では、片道1万円の格安料金を設定したスカイマークエアラインズが4月末から参入したのをきっかけに、航空会社間で値下げ競争が激化。JRは対折策を迫られていた。(朝日新聞)
16日■関西線乱れる 笠置で信号故障
 15日午後4時15分ごろ、京都府相楽郡笠置町笠置、JR関西線の笠置駅で、構内の信号機が赤信号のまま変わらなくなった。
 亀山発加茂行き普通列車が同駅を発車できなくなるなど、笠置−加茂駅間が約3時間にわたって不通となり、上下計8本の列車が運休、約550人に影響が出た。
 JR西日本によると、笠置−加茂駅間に設置されている落石警報装置の通信ケーブルに損傷があり、損傷が信号機の誤作動を招いたとみて詳しく調べている。(京都新聞)
17日■進入用信号が故障 ダイヤ一時乱れる JR木津駅
 16日午前8時10分ごろ、京都府相楽郡木津町木津、JR木津駅の列車進入用信号が「赤」のまま変わらなくなった。約20分後、信号は自然に回復し、止まっていた奈良行き普通電車が遅れて構内に入った。この影響で後続の奈良線の電車上下2本が運休。同線と関西線の計4本が22−12分遅れ、約300人の足が乱れた。ダイヤは約2時間後、平常に戻った。
 JR西日本で信号故障の詳しい原因を調べている。(京都新聞)
■運行開始から50年 まきで走った東京はとバス 乗客の満足が誇り 後輩にエール送る
 東京は日本最大の観光都市。年間に延べ1億6000万人もが訪れる。東京タワー、皇居、銀座、浅草、六本木、新宿にお台場、アミューズメント、ミュージアム、見どころ、遊びどころ、食べどころも多い。その大都会の”見せどころ”に案内してくれるのが、おなじみのはとバスだ。
 このはとバスが、定期観光バスとして「東京半日Aコース」の運行を始めたのが、ちょうど50年前。1949年3月、今は自動車販売会社社長の田島元宣さん(70)が、1号車「富士号」のハンドルを握った。
 田島さんは、その前年にメカニックとして入社した。戦後間もないころでガソリンも少なく、「まきで走らせる木炭車が車庫を出ると、昼間は、まき作りが仕事だった」と振り返る。
 「エンジンをかけるにも、車庫内の傾斜を利用して”押しがけ”で始動させることも多かった。今考えると、当時は、車を走らせることに必死だった」と話す。田島さんの利き腕には、真っ赤に焼けたエンジンを調整する時に負ったやけどの跡がくっきりと残っている。
 翌年に運転手になった。バスは、上野から皇居前、赤坂離宮、浅草公園、そして上野までわずか3時間で回った。「当時は交通量が少なかったからね。東京見物のお客さんも景気が良くなるにつれて増え、上野駅に帰ってくると、次のお客が行列を作って待っていた。午前と午後と回り、もう一巡りと言われて3回目。後半になると日も暮れて、外の景色はやみの中というような状況。でも、お客さんは満足して帰られた」と、懐かしがる。
 お年寄りからは「めい土の土産ができました」と感謝されたこともあったという。
 一方、バスガイド1期生の細野澄江さん(70)は、「東京は初めてというお客さんが多くて、私たちの案内を一生懸命聞いてくれました。”楽しかった。よかった”と喜んでもらい、忙しかったけれどやりがいがありました」と話した。
 1952年に結成された「はとバスOB会」の発起人の田島さんは、「いかにお客さんに楽しんでもらえるか。私たちの経験が今に引き絶がれていることを誇りに思っています」と、後輩たちにエールを送っていた。(京都新聞)
18日■シャトルこだま導入 通勤に便利 短区間運転 山陽新幹線に3月 JR西日本
 JR西日本は17日、来年3月のダイヤ改正に合わせ、運転区間が短く通勤に便利なシャトル的な「こだま」を山陽新幹線に導入する方針を明らかにした。同時に主に「のぞみ」で使われている300系車両を「ひかり」に転用してスピードアップする。
 あまり離れていない大きな都市と都市との輸送に力を入れて、年間約1000億円の黒字を生むドル箱の山陽新幹線の利用率を高め、売り上げ増に結び付けたい考えだ。
 「こだま」の運転区間は、姫路−岡山、岡山−福山、新下関−博多など現在よりも短い区間を結んでシャトルのように往復運転する。姫路、福山、新下関などの駅は在来線との乗り換えが簡単で通勤客などの利用者が期待できる。
 「こだま」は現在、新大阪−博多、新大阪−広島という長距離運転がほとんど。
 また、現在「のぞみ」に使われている500系や700系などの新型高速車両を「のぞみ」で大幅に増やす一方で、余った300系車両を「ひかり」に用いる。この結果、「ひかり」の最高速度が現在主流の100系に比べて10−20%速くなる。
 JR西日本は「岡山と神戸間の通勤客の中には在来線との乗り換えが容易な姫路で下車する人が多く、新神戸駅での利用は少ない。大きな都市と都市を結ぶ輸送に積極的に対応し、乗客を増やしたい」と話している。(京都新聞)
■700系、5往復に 6社、夏の増発発表
 JR旅客6社は17日、夏(7月1日−9月30日の3ヵ月間)の列車増発計画を発表した。新幹線や特急、急行の増発は計9006本で、定期列車と合わせた総運転本数は前年比1%減の20万6261本となる。
 東海道・山陽新幹線は、今年3月に東京−博多間で1日3往復の運転を始めた新型車両「700系のぞみ」が、7月1日から2往復増発。同区間ののぞみは下り14本、上り13本のうち、5往復が700系になる。
 また夏休みを中心に東京−新大阪間で臨時のぞみが1日最大12本、東京−博多間でも臨時ひかりが最大10本運転される。(京都新聞)
■京都経済 再生 オムロン社長 立石義雄氏 「大企業病」を対退治 変化こそチャンス、今こそ起業家育てよ
 「今年、新たに農業分野に進出した。これも、今後のオートメーション市場と考えている。フルに自動化技術を取り入れた新しい農業が始まる。オートメーション市場というのは、工場分野から金融、交通などの社会情報システム、流通分野へと歴史的にシフトしながら拡大しており、先を読んで技術、事業を備えていけば、ビジネスチャンスはいくらでもある」
 オートメーション市場の未来をこう見通す。今年1月、北海道の農業生産法人と提携して大型ガラス温室によるトマト栽培に乗り出したのも、その一環だ。今や物流サービスから情報システム、人材派遣まで広げた事業も、市場予測とオートメーション技術の応用の観点で貫かれている。多角化の一方で、4月からは、京都企業で初めてカンパニー制(社内分社)を導入し、制御機器や金融、駅務システムなど6つの事業分野の徹底した独立採算に踏み出した。
 「企業の規模が大きくなると、どうしても組織を管理、統制でコントロールしようという過ちを犯してしまい、各部門が持たれ合う構造、いわば”大企業病”になってしまう。顧客の視点や市場から近いところで柔軟かつスピーディーに意思決定して動かないと、競争に勝ち残れない時代になっている。各カンパニーがオムロンを再創業する決意と努力が必要だ」
 「大企業病」という言葉を、初めて提唱したのも実は創業者の一真氏。創業者の言葉を肝に銘じている。
 80年代初め、順調な業績拡大の中に顧客への対応や製品開発、組織の意思決定の遅れを感じ取った一真氏は「大企業病を退治し、ベンチャー精神に立ち戻れ」と叱咤(しった)した。当時83歳の創業者の鬼気迫る訴えは、高度成長後の曲がり角にあった日本企業に衝撃を与え、大きな反響を呼んだ。
 「オートメーション事業を始めたのは、創業者が55歳の時。他人より何倍も志や執念、気概が高かった。単なる技術者でなく、本当の意味でのアントレプレナー(起業家)だったと思う。事業家として市場の先を予測し、変化を読み、24時間、いかに技術をビジネスチャンスに生かすかを考えていた。戦後の京都で成功した企業も、現在の米国のハイテク業界でも同じだが、ひと握りの真のアントレプレナーが成長企業を引っ張ってきている」
 新たなカンパニー制の導入は、21世紀にふさわしいベンチャー精神を持った事業経営者を育てる試み、という。それは、大量生産時代から、市場、顧客のニーズに即応した仕組みづくりへの移行でもある。
 「旧来の古い資本と雇用が崩れていく過程で、新たな経済のタイナミズムが生まれる。戦後のベンチャー企業が育った時代とこれからの時代は、未知の世界という意味で同じかも知れない。変化こそチャンスの時であり、京都産業も今こそアントレプレナーを育成する時だ。起業家学校を作り、実際の事業成功者が直接教えることが大切なのではないか。現在はベンチャーの支援制度や資金がたくさんあるが、求められているのは人材の発掘であり、育成だろう」
 オムロン 電気技師だった故立石一重氏が京都の配電盤メーカーから独立して1933年、大阪で立石電機を創業。戦時中に京都に工場疎開し、以来京都の草分け的ベンチャーに。55年、日本で初めてオートメーション分野に進出し、現金自動支払機や交通管制システムなど次々に事業を拡大。現在、国内外でグループ123社、従業員2万3000人にのぼる。制御システム機器の最大手メーカーであると同時に、68年にサリドマイド児のための電動義肢を開発、72年に身体障害者の福祉工場「オムロン太陽」を開設するなど、福祉事業にも積極的に取り組んでいる。(京都新聞)
■新幹線 整備計画の前倒し 自自・JRが一致 4社長意見 負担増は強く拒否
 新幹線の整備計画前倒しを求め、与党が動き出した。自民、自由両党で作る整備新幹線協議会(座長・小里貞利衆院議員)は17日、関連するJR4社の社長を招き、現行の計画を見直すことへの考え方などをヒアリングした。公共事業による景気刺激を「錦の御旗」に掲げる与党と、思惑を一致させる形でJRも工期の短縮や未着工区間の早期着工を求める一方で、財源に占めるJR負担分が現行の計画を上回ることなどには強い拒否の姿勢を示した。同協議会は今週後半から論議を本格化し、8月末をめどに整備計画の見直し案を取りまとめる予定だ。
 現行の計画では1997年以前に着工した既着工区間(3線4区間)が着工から10年後、98年3月に着工した新規着工区間(3線3区間)は着工の20年後をそれぞれ完成のめどにしている。さらに、73年に決定した新幹線整備計画には盛り込まれているが、まだ着工していない北海道新幹線なども残されている。
 17日のヒアリングには、JR北海道、東日本、西日本、九州の社長が出席。未着工区間が残っていない東日本と、まったく手つかずのままの北海道などそれぞれ立場は異なるものの、「新幹線という重要な社会資本整備に、20年も30年も時間がかかるのは問題だ」(小里座長)という与党側と、各社の考えはおおむね一致した。(朝日新聞)
19日■スルッと関西好調 新たに京阪など鉄道3社加入 売り上げ増加
 カードを改札機に入れるだけで、切符を買わずに地下鉄や私鉄に乗れる共通乗車カード「スルッとKANSAI」に南海電気鉄道、京阪電気鉄道など3社が4月から新たに加わり、売り上げを好調に伸ばしている。
 4月の発売枚数は南海が18万3000枚、京阪が19万6000枚で「予想以上に好調な滑り出し」と話す。また1996年3月の共通カード導入時から加入している阪急電鉄も、4月は前年同月に比べて10.9%増の78万7000枚。「ネットワーク拡大の効果が表れた」と強調する。
 これで大阪市営地下鉄や阪急電鉄などと合わせて9社の鉄道網がつながり、路線の合計距離は約560`。私鉄で最も長い路線を持つ近畿日本鉄道の約600`に匹敵し、大阪市内を中心に京都、神戸、和歌山までが1枚のカードで乗り降りできるようになった。
 来年3月までには神戸電鉄や京都市、神戸市の地下鉄など、さらに8路線が共通カードに加入し、合計距離は約800`になる見通し。(京都新聞)
■ひかりにも700系導入 来春から山陽新幹線
 JR西日本は18日、新大阪−博多駅間の山陽新幹線のひかりに、来春から最高時速285`の新型車両「700系」車両を導入する、と発表した。
 700系車両は3月から、東海道・山陽新幹線ののぞみで使用されているが、ひかりへの導入は初めて。
 ひかりもスピードアップさせることで、航空各社が激しい値引き競争を展開している大阪−福岡路線の空の便に対抗するのが狙いだ。
 新大阪−博多駅間のひかりの所要時間は平均3時間18分で、最高時速300`の500系のぞみの2時間17分に比べて1時間以上も時間がかかる。JR西日本は「700系の導入で3時間弱での走行を目指したい」と話している。(京都新聞)
■最新700系「ウエストひかり」に JR西日本 来春から 「速い」「快適」で空の便に対抗
 JR西日本は18日、山陽新幹線の新大阪−博多間を往復する「ウエストひかり」について、初代車両といわれる丸い鼻先の「0系」で運行するのをやめ、快適性を高めた最新車両の「700系」に置き換える、と発表した。700系のぞみは、すでに同区間を走っているが、来年春からは「700系ひかり」もお目見えする。
 JR西日本は、大阪−福岡間で値下げ競争に入った航空各社に対折するため、18日から新大阪−博多間の「ひかり」で通常料金の3割引きの切符を回数券で売り出したばかり。「価格だけでなく速度と快適性の面でも、旅客を航空機に奪われないようにする」(南谷昌二郎社長)と、対折心を隠さない。
 JR西日本は現在、新大阪−博多間のひかりについて、12両ずつで6編成の「0系」を使っているが、これに代え700系を8両ずつで12編成走らせ全体の輸送能力を高める。
 700系は、車体の揺れや騒音が少なく、空間が広いなど乗り心地に配慮している。この車両の中に、グループでの旅行に適した個室や、パソコン用の電源つき座席などを備え、さらに快適性を高める。速度も、新大阪−博多間は、0系ひかりより30分程度短縮される見込み。(朝日新聞)
20日■四条地下通路閉鎖し清掃
 京都市下京区の四条通地下通路が、このほど3日間にわたって閉鎖され、通りがかった買い物客らを驚かせた。昨秋ごろから、段ボールを敷いて通路で生活する野宿生活者(ホームレス)が多くなり、管理している阪急電車河原町駅は「市民からも苦情が寄せられており、20日から通路内で始まる芸大生の作品展を前に地下通路を清掃した」と説明している。
 閉鎖された通路は、阪急電車の烏丸駅と河原町駅の間約400b。ふだんは午後10時半から午前4時半までの間は閉鎖しているが、17日から19日までは昼間も閉鎖し、床や壁面のタイルの掃除、段ボールの除去などを行った。
 昨年10月ごろから、寒さを避けて同通路で過ごす野宿生活者が増え、多いときで30人ほどがいた、という。同駅の長谷川種夫駅長は「3日も閉鎖するのは初めて。不況のあおりで通路に来た人もいるはずで、同情を感じるが、こちらも管理責任があり、京都市と相談のうえ清掃に踏み切った」と話している。(京都新聞)
■郷愁誘う京都市電の写真集 喜寿記念に自費出版 アマカメラマン 下京の品川さん 購入希望続き増刷
 多くの市民に愛されながら姿を消した京都市電の写真集「−回想のアルバム−京都市電」が出版され、反響を呼んでいる。下京区のアマチュアカメラマン品川文男さん(76)が喜寿の記念にと自費出版したところ、購入を希望する問い合わせが予想外に相次いだ。知人やお世話になった人に配るつもりだった150部だけではとても足りず、急きょ150部を増刷。品川さんは「これほどまでとは」と驚きを隠さない。
 1961年の春ごろ、市電が廃止されると聞いたのがきっかけで、日曜日ごとに市電の写真を撮り始めた。背景には人や自然、史跡などを入れて、時代、風俗がうかがえるように気を付けたという。撮りためた市電のフィルムは約60本になった。
 自費出版なので、刷れば刷るほど経費がかさむ。初めは150部だけにするつもりだった。しかし、新聞や口コミで写真集を知った人たちから購入の依頼が相次いだ。発行から1ヵ月ほどの問に、電話が約100件、直接家に買いに来たり、はがきで購入を求めてきたりした人が約60人もいた。インターネットのホームページで紹介したいという依頼もあった。仕方なくあと150部増刷することにした。発行所からは「一般に出版すれば、売れる」と言われているが、今のところその予定はないという。
 購入者の一人、右京区の橘潔さん(73)は元京都市交通局の職員。「父と祖父も交通関係の仕事をしていた。市電には小さいころから親しみがある」と話す。北区の会社員竹山忠志さん(31)は「懐かしさが込み上げてきた。写真には京都市民ならではの着眼点がある」。
 最後の市電が廃止されて、20年たつ。品川さんは「向かい合って座る市電には独特のぬくもりがあった」と言う。環境や都市政策の面から路面電車を見直す動きは、日本だけではなく欧米にも見られる。「これからはマイカーから市電の時代に戻っていくと思う。京都駅から西大路七条を通り、金閣寺から北大路通を銀閣寺まで進む線なら観光にとってもプラスに働くと思う」と品川さんは目を輝かせた。
 写真集はA5判、128n。カラー8枚、モノクロ111枚を収録。問い合わせは品川さん(075・361・9687)まで。(朝日新聞)
21日■JR西日本は当期損益赤字 旧国鉄債務負担で
 東日本、西日本、東海のJR3社は20日、1999年3月期決算を発表した。
 長引く景気低迷で3社そろって減収となったほか、旧国鉄長期債務の追加負担分を特別損失として計上したため当期損益は西日本が初の赤字に転落、他の2社も大幅減益となる厳しい決算となった。
 ビジネス客の伸び悩みなどを反映し「鉄道運輸収入が過去最大の落ち込み幅」(東日本)を記録、売上高は東日本が前期比1.9%減の1兆9093億円、西日本と東海もそれぞれ減収となった。(京都新聞)
■窓 JRに求めるサービス向上 綾部市・藤原 直子(会社員・45)
 19日朝のJR山陰線綾部駅でのこと。特急列車が到着、車内に入ると、いつもの自由席が指定席となっていた。「あれ?間違いじゃないかな」と思っていると、周りの人から「昨日もそうやったわ」との声。修学旅行生の指定席となっているようだった。
 列車は6両編成で、いつもは前3両が自由席。その自由席が2両しかなかった。通勤で利用するこの列車は満員となり、二条駅までの1時間10分、立ちっ放しだった。修学旅行生が来るなら、あらかじめ分かっているはず。何のお知らせもなく、構内放送でも「前3両が自由席」などと間違えた案内をしていた。車掌いわく「私たちも知らなかったんです」と−。あぜんとした。乗客の側に立って、真のサービス向上を目指してほしい、と思う。(京都新聞)
■デゴイチに勝った 保育園児200人が 綱引きで勝負
 保育園児が蒸気機関車(SL)と遊ぶ「こどもSLフェスタ」(京都市日本保育協会主催)が20日、京都市下京区の梅小路蒸気機関車館で開かれ、園児200人がSLと綱引きした。SLにふれて園児らに楽しい思い出を、と毎年企画しており、今回で10回目。京都市内26の私立保育園が参加し、1500人余の園児が楽しんだ。
 園児らは、全員で風船を大空へ飛ばしたり、コンサートや大道芸を見た後、SLに乗り込み、汽笛を鳴らし煙をはいて走るSLの迫力を実感した。
 綱引きでは、蒸気機関車「D51(デゴイチ)」の前面と結んだ太い綱を、園児らが「ヨイショ、ヨイショ」と力いっぱい引いた。125dもあるD51がずるずると引っ張られると、「バンザーイ、勝った」と歓声を上げていた。(京都新聞)
■窓 お答えします 掲示は必要最小限に
 京都市交通局自動車部 営業課長・前田 文男 去る11日付の当欄に、市バス内の掲示物へのご意見をいただき、ありがとうございます。
 ご指摘いただきました後、当局では市バス全車につきまして、掲示物の一斉点検を実施するとともに、管理の徹底を図りました。「交通局ニュース」などの張り紙につきましては、お客さまに市バスをご利用いただく上で、どうしても必要な情報を厳選してお知らせしており、やむを得ないものと考えておりますが、一方でお客さまの視界を遮ることも事実です。
 今後とも期限が過ぎたものの取り忘れがないようにいたします。お知らせの内容、掲示期間などについて十分に検討し、必要最小限のものに限定します。掲示位置もお客さまの視界をできるだけ防げないよう工夫してまいりたいと考えています。今後も市バスをご利用いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。(京都新聞)
■JR3社、大幅減収 当期 航空値下げ競争響く
 JRで上場している東日本、東海、西日本の3社は20日、1999年3月期連結決算を発表した。昨年秋に成立した旧国鉄債務処理法にもとづく追加負担を一括して支払ったことで特別損失が膨らみ、3社とも当期損益は大幅な減益。ホテル開発子会社なども赤字を計上した西日本は、初の当期赤字に転落した。本業の鉄道運輸収入も景気低迷に加え、航空会社の値下げ競争のあおりで各社が減収。これが響いて、3社とも減収となった。
 大幅な減益で、東日本と西日本が役員賞与の一部カットを決めた。ただ、赤字転落の西日本を含め、配当は3社とも現状維持の方針。
 2000年3月期の予想は、子会社の業績が比較的好調な東日本だけが増収を見込んでいる。当期損益は、3社とも増益予想。西日本も 234億円の当期利益を見込んでいる。(朝日新聞)
■JR上場3社の決算■
 売上高当期損益
東日本24835(▼1.2)219(▼66.9)
東 海12342(▼3.4)108(▼66.6)
西日本12050(▼2.0)▼ 90( − )
(連結ベース。単位は億円、カッコ内は
前期比伸び率、▼はマイナスまたは赤字)
■4人の取締役9人に減らす JR西日本
 JR西日本が20日に発表した1999年3月期の単独決算は、売上高が9094億円(前期比3.9%減)、経常利益が505億円(同4.7%増)と、減収増益になった。だが、今回は財務諸表の規則改正に合わせて、事業税の計上方法を変更したことに救われており、この要因を除くと、経常利益は前期に比べて7.8%減少する。実質的には減収減益となり、輸送人員の落ち込みを反映した決算となった。
 山陽新幹線で最高速車両といわれる「500系のぞみ」を増やしたり、在来線で観光、イベントと連携した旅行商品を企画したりするなど、増収に努めたが、新幹線、在来線の両方で長距離旅客を中心に輸送人員が減った。売上高の大半を占める運輸収入も7900億円と、前期比で4.1%減少した。
 2000年3月期の業績予想についても、関西圏の不況が全国的な水準より深刻なことから、輸送人員がさらに落ち込むとみており、売上高が8900億円、経常利益が480億円と、減収減益を見込んでいる。
 また同社は、6月25日の株主総会後から執行役員制度を取り入れる。現在29人の取締役は9人に絞り、残る20人のうちで4人が退任し、16人が業務執行に専念する「執行役員」に切り替わる。執行役員は、新任を含めて計19人。経営判断と業務執行の責任を分離し、両方の迅速化を目指すという。(朝日新聞)
■新幹線貸し切り 障害者がツアー 23日に岡山出発、大阪へ
 障害のある人たちが列車の旅を楽しむ「ひまわり号」が23日、岡山県倉敷市から大阪市まで走る。岡山−新大阪間は新幹線の列車16両全部を貸し切りにし、車いすの人や介助のボランティアら約770人が参加。大阪では地元ボランティア約300人が案内する。JR西日本によると、障害者の旅で新幹線を貸し切るのは例がないという。
 1人の障害者に2人が付き添い、移動やトイレの世話をすることで「ともに生きる」体験をしようと、市民でつくる実行委員会(池田連三会長)が企画した。
 これまで広島市や兵庫県姫路市などに在来線で旅行してきたが、今年は15回目の節目を記念して新幹線を利用することにした。
 参加する障害者は243人で、7歳の子どもから80歳を超えるお年寄りまで。家族や医師も同行する。(朝日新聞)
22日■市バス自転車に接触 左京、小1けが
 21日午後3時20分ころ、京都市左京区東大路通東鞍馬口の交差点で、四条大宮行きの市バス=高宮昭男運転手(48)=と、自転車に乗っていた近くの大学院生田中亨さん(36)の長男竜太郎君(6つ)=養徳小1年=が接触した。竜太郎君は弾みで転倒し、ひざなどに1週間のけがをした。市バスの乗客26人にけがはなかった。
 下鴨署によると、竜太郎君は東大路通の自転車横断帯を渡ろうとして、左折してきた市バスの前輪付近と接触したといい、同署は、高宮運転手が周りをよく見ていなかったとみて調べている。市交通局によると、市バスの人身事故は今年に入って10件目という。(京都新聞)
■ポイントやブレーキ故障 電車立ち往生 東海道線の足乱れる
 21日午後8時ごろ、大阪市北区梅田三丁目のJR東海道線大阪駅構内の上り線で、西明石発高槻行き普通電車が駅に入る手前で非常ブレーキが掛かり、緩まなくなった。電車は約40分間立ち往生し、後続の電車に連結し大阪駅に到着した。
 さらに午後10時ごろ、同じ大阪駅上り線で、姫路発野洲行き新快速電車が赤信号にもかかわらずホームに入ったため、ポイントが故障、電車は現場で45分間停車した後、運転を再開した。
 2つの事故で、東海道線の後続電車のダイヤが大幅に乱れ、22日午前零時20分現在、後続の上り電車が最大1時間40分、計55本が遅れたほか、上下線21本が運休した。JR京都駅でも、帰りを急ぐ通勤客らに大きな影響が出た。
 JR西日本はこの問、大阪駅から乗る予定だった客を阪急電車などで代替輸送した。(京都新聞)
■ブレーキ故障 赤信号無視も JR大阪駅トラブル続出
 21日午後8時ごろ、大阪市北区梅田三丁目のJR東海道線大阪駅構内で、西明石発高槻行き上り普通電車(7両編成)が、ホームに入る手前で非常ブレーキがかかり急停止した。その後もブレーキがきいたままの状態が続き、乗客約400人を乗せて40分間にわたり立ち往生。このあと、後続の電車と連結して同駅に到着した。
 約1時間20分後の午後10時ごろ、同じ大阪駅上り線で、約15分遅れて運転していた姫路発野洲行き上り新快速電車(12両編成)の運転士が、大阪駅に入る手前で赤信号を無視。同電車は信号機を越えて停止した。線路のポイントが一部故障したため、同電車は乗客約700人を乗せたまま約45分にわたって立ち往生した。
 JR西日本によると、この2つのトラブルで、東海道線のダイヤは上下線とも大きく乱れ、大阪駅では帰宅客らが一時ホームであふれるなど混乱した。(朝日新聞)
23日■地下鉄東西線 京阪電車の乗り入れ区間 二条駅まで延長 実現、道のり遠く 京都市が本格検討入り 財源、人員課題多く 観光振興に欠かせぬが…
 京都市交通局は、地下鉄東西線のうち京阪電鉄の乗り入れ区間(御陵−京都市役所前)を、終点の二条駅まで延長するための本格的な検討に入った。市民や京都商工会議所から、乗り入れの実現に向けて強い要望を受けたためだ。しかし、乗り入れ区間を延長しても大幅な乗客増が期待できないうえ、施設の改善に新たな財源をねん出しなければならないことなど、解決すべき課題が多く、実現への道のりは平たんではなさそうだ。(政経部 吉岡 清)
 現在、東西線の御陵−市役所前間は、京阪が4両編成で浜大津から1日83往復乗り入れている。同区間はかつて京阪京津線(浜大津−三条間)が走っていたが、東西線と競合するため京津線が廃止された。
 当初の計画では、乗り入れ区間は御陵駅から三条京阪駅までの京津線区間とする予定だった。しかし、地形の問題が障害となり、一つ西の駅である市役所前まで延びた。三条以西の路線は、急なS字カーブ区間で地上には鴨川が流れ、折り返し施設を地下に整備するには不適当だったからだ。
 このため、市役所前駅まで京阪が乗り入れたが、地下鉄烏丸線に乗り継ぎできる烏丸御池駅の一つ手前の駅で折り返すことになる。
・待ち時間長い
 利用者からは「市役所前駅から二条方面の運行本数が極端に減る。乗り換えの待ち時間が長い」「JRと接続する二条駅まで乗り入れ区間が延びれば便利になるのに」など、乗り入れ区間の延長を求める声が、交通局に寄せられているという。
 また、京都商工会議所は先月、市内の観光拠点間の移動手段を充実させるための緊急課題として、この問題を取り上げ、市に要望した。「利用者から不満の声が出ている。観光振興には乗り入れが欠かせない」と話している。
 こうした声が上がる背景の一つに、沿線の浜大津地区や山科駅前が大型商業集積地として発展していることが挙げられる。かつて東西線開業前の92年、二条駅までの乗り入れを交通局に申し入れた大津市も「浜大津と二条が直通区間となれば山陰地方をはじめ京都南部、奈良方面からも来やすくなる。観光客の誘致にもプラスだ」(総務部)と期待する。
 だが、区間延長は容易ではない。
 交通局は年間約2億4000万円(98年度)の車両使用料を京阪に支払い、乗り入れ区間の営業は交通局が運営している。両者の車掌や運転士は御陵駅で交代する。近鉄との間で乗務員が入れ代わらずに「相互乗り入れ」する烏丸線とは異なり、人員体制を見直さなければならない。
 車両編成の問題もある。4両編成の京阪に対し、地下鉄は6両編成。現行ダイヤで乗り入れ区間を延ばすには、車両が駅に到着するたびに開閉する「ホームドア」を、4両編成に対応できるタイプに改善する必要がある。さらに、終点の二条駅には、新たな折り返し路線を、地下に設けなければならない。
 これら施設整備に加え、京阪への車両使用料、さらに人件費や電気使用料を含めて、高速鉄道部は「試算しないと分からないが、全体の費用はかなりの額になる」とみる。
 検討作業に当たる職員からは「便利になることは確かだが、果たして経費に見合う需要増につながるのか」「建設費の巨額債務を抱えており営業収支も厳しい。東西線の延伸など優先すべき課題はほかにある」という意見も出ている。
・長期的視点で
 一方、京阪電鉄も「前向きに検討したい」としたうえで、「現行ダイヤを基本に必要な列車を確保している。運転区間の延伸となれば、車両の増強が必要になる」(大津運輸部)としている。
 東西線は、二条−西大路間(約1`)が運輸政策審議会の答申で「2005年までに整備が適当区間」と位置づけられ、京都市も洛西まで延ばす構想だ。乗客数が予想を下回る経営状況の中、乗り入れ区間の延長は一時的な利便性だけでなく、事業の優先順位に基づき、長期的、総合的に検討する必要があるようだ。(京都新聞)
■0系新幹線 9月で引退 東京、名古屋で式典
 JR東海は22日までに、東海道新幹線の開業から走り続けている初代「0系」車両が、今年9月18日の運転を最後に同新幹線から引退すると発表した。
 最後の列車は同日午後4時31分東京発名古屋行きの「こだま473号」。当日は東京駅でさよなら出発式、名古屋駅で引退式を行う。
 丸い顔の先頭車両で知られる0系は1964年の開業とともに登場、85年に少しスマートな「100系」が導入されるまで長く東海道新幹線の主役だった。
 しかし90年代に入り「300系」「700系」など新型車両が次々に登場。老朽化が進んだ0系車両は現在、こだまとして東京−名古屋間、東京−新大阪間を各1往復するだけになっている。
 一方、JR西日本は0系を約280両所有しており、山陽新幹線では2006年ごろまで走る予定という。(京都新聞)
■トロッコで新緑満喫 阪神大震災被災児35人 「嵯峨野鉄道」など招く
 阪神大震災で被災した神戸市灘区の学童保育所の児童35人が22日、嵯峨野トロッコ列車に乗って新緑を満喫した。嵯峨野観光鉄道と天台宗「一隅を照らす運動」総本部が招待した。一昨年に続き、2度目になる。
 招待を受けたのは「たつのこ学童保育所」の小学校1年生から6年生までの児童と指導員ら合計41人。木造2階建てだった同保育所は震災で全壊した。幸い学童たちにけが人はなかったが、親類を失った子もいるという。指導員の守恵一さん(51)は「トロッコ列車がどんなものなのかを教え合い、とても楽しみにしていた。子どもたちに開放感を与えられて、うれしい」と話していた。
 晴天にも恵まれ、列車に乗り込んだ子どもたちは大はしゃぎ。保津川下りの丹に向かって手を振ったり、渓谷の風景を食い入るように見つめたりして、初夏の1日を楽しんでいた。嵯峨野トロッコジェンヌの3人も同乗し、子どもたちの案内役を務めた。神戸市灘区の山田竜志くん(11)は「乗るのは2度目。川や山がきれいで、面白い」と笑顔で話していた。(朝日新聞)
25日■時を拓く オムロン 立石義雄さん(59) (上) 先駆け自負 逆境くぐる
 幼なじみは俳優の津川雅彦さん。右京区にある御室小学校の同級生だ。子役で活躍し、太秦の撮影所にいることが多かった津川さんに、授業のノートを届けた。「彼が卒業できたのは私のおかげ」と笑う。
 制御機器の最大手、オムロンの3代目社長。前身・立石電機を創業した父・一真の三男。長兄の故孝雄から1987年に社長を引き継いだ。
 わんぱくだった。他人の家に上がり込んで仏壇のお供えを盗んだりした。父からは「勉強しろ」と言われたことがない。「子供の遊びは大人の仕事」が父の持論だった。ただ、マナーにはうるさかった。公園の植え込みに入り込み、ひどくしかられたのを覚えている。
 兄が2人、弟と妹が2人ずつ。よく兄弟げんかした。上の2人と下の4人がもめる。「真ん中で両方に気を使った。人を見る目ができた」と笑う。
・卒論で認識 米学者の評価
 同志社大経済学部を1962年に卒業。卒論で父の会社を取り上げた。ベンチャー企業の草分け的存在だった立石電機は当時、「東のソニー、西の立石」と呼ばれていた。
 「おやじの会社は、どこがそんなにいいのか」。そんな思いで調べてみると、事業ごとに一人の担当者にすべての権限を持たせるネオ・プロデューサー・システムを取り入れていた。「分権による社内起業など、現在流行している手法を先取りしていた。米国の経済学者に高い評価をされていたことも、そのとき初めて知った」という。
 それでも、違う会社で力を試したいという思いは残った。父に相談すると「『立石のボン』扱いされるのがオチ」と一喝された。「同じ苦労するなら、みんなと一緒に」と腹を決めた。
 立石電機の背骨はベンチャー精神。未来の社会が求めるものを他に先駆けて生み出す。それが公器のゆえんと自負する。
 開発陣だけでなく、営業の苦労も並大抵ではない。顧客の要求を正しく把握し、ニーズを引き出す。やりとりを開発陣に伝える。
・自動券売機導入をと日参
 義雄が営業課長として最初に担当したのは駅の自動券売機。国鉄に採用してもらえば、ほかの私鉄も話が早かろう、と当時の大阪鉄道管理局に日参し、大阪環状線での導入にこぎ着けた。
 だが、機械の開発は思うように進まない。当時の国鉄は予算執行時期に厳しく、頑として納期を延ばしてくれない。工場で完成させる時間がなく、駅に部品を持ち込んで組み立てた。深夜の大阪環状線の各駅が「工場」と化した。
 設置後も動作が安定するまで1ヵ月かかった。その間、社員が券売機の裏に待機し、機械が不調の時はそっと切符を差し入れた。「『機械の中に手が見えた』と客に驚かれました」という。
 オイルショック後の1976年、創業以来初めて2期連続の赤字決算になった。経営改革委の委員長に抜てきされた。37歳。一番若い役員だった。失敗だった電卓事業からの撤退の指揮をとった。当時、コンサルタントとして招いた大前研一氏とは長い友人になった。
 「新事業開発と、逆境での構造転換。この二つをくぐり抜けた。それが自分の強みになっている」と強調する。
 47歳のある日、京都・嵐山のうなぎ屋で、父から「社長をやってくれ」と切り出された。当時、長兄の孝雄が社長を継ぎ、父は会長だった。父は言った。「会社は今、大企業病にかかりつつある。おまえ、なんとかできんか」(敬称略)
 オムロン1933年、日本初の継電器(リレー)工場として、故立石一真氏が「立石電機製作所」を創業。オートメーション機器のトップメーカー。自動券売機や紙幣両替機を初めて開発し、家庭用血圧計などの健康機器や医療事業機器も展開する。1990年から現社名に。下京区烏丸通七条下ルの京都本社と東京都港区虎ノ門の東京本社の2本社制。社員約7000人。(朝日新聞)
■ドア故障で特急遅れ JR京都駅
 25日午前9時半ごろ、京都市下京区のJR京都駅で、発車しようとした京都発新宮行き特急くろしお9号(6両編成、乗客約50人)の2両目ドアが完全に閉まらないことに車掌らが気づいた。手動でドアを閉め、特急は21分遅れで発車した。ほかの列車には影響はなかった。
 JR西日本が原因を調べている。(京都新聞 夕刊)
■洛中洛外
 阪急電鉄は、沿線の京阪神の主な駅周辺を歩いて散策する際の手助けとなるパンフレット「悠遊一日紀行」づくりを進めている。これまでに33種類ができ、利用者の人気を集めている。
 冊子は駅別に編者集され、駅周辺の名所や観光スポットを地図入りで紹介している。京都線沿線では河原町、大宮、嵐山、長岡天神などの駅編ができた。駅を起点に名所を歩いて巡る所要時間も添えてある。
 駅ごとに駅を印象付ける1行コピーを付けた工夫もあり、大宮駅には「信長、勇、慶喜の夢破れ」としてある。京都市内では河原町と桂両駅構内のサービスセンターで無料で手に取れる。A4判、3つ折り。(京都新聞 夕刊)
26日■窓 席譲り合う心園児も学んだ 右京区・塩田勢津子(保育者・44)
 中京区の保育所に勤めています。町中ですので子どもたちにもっと自然に触れさせたい、足腰も鍛えてあげたい、ということで園外保育に行きます。その際、市バスを利用することも多いのですが、バスの中でのマナーは保育者もかなり気を使うところです。
 バスの中では、いつも座れるとは限りません。先日は3歳児21人を保育者3人で引率して、双ケ丘からの帰りに市バスに乗りました。
 座席は、あまり空いていませんでした。ところが、年配のご婦人のお一人が「ここにおいで」と自分の座席の端を少し空けて、子ども一人を座らせてくださいました。そのあと同様に、ご自分の横に座らせてくださる方、ヒザに座らせてくださる方など、皆さんに親切にしていただきました。
 それを見ていた一番年上の一人の子が「(自分は)もうだいぶ座ったし、○○ちゃんに代わって上げる」という場面もありました。
 本当に親切にしていただいて、子どもたちもほっこり優しい表情で帰ることができました。同乗された皆さん、ありがとうございました。(京都新聞)
■国労組合員不採用 政府と与党が解決へ前向き
 国鉄の分割民営化の際に国労組合員ら1047人がJRに採用されなかった問題で、自民、民主・新緑風会など参院7会派の代表が25日、野中広務官房長官と会い、「国労が3月の臨時大会で国鉄改革の趣旨を認めたことを評価して、具体的解決に向けた話し合いを始めてほしい」と申し入れた。野中氏は「与党と十分連絡を取りながら、JR各社や当該労働組合に解決への努力を促すと同時に、運輸大臣にも申し入れを踏まえて対応するように指示したい」と答えた。また、自民、自由両党の幹事長も早期解決に努力する見解を発表。政府・与党がそろって解決に向けて関係省庁に協議を促す方針を示したことで、解決に向けて大きく動き出すことになった。(朝日新聞)
■整備新幹線の工期短縮 学年度事業費9倍に 運輸省試算
 整備新幹線の工期を7年に短縮するという自民、自由両党の方針を受け、運輸省は25日、未着工区間を含む全路線を7年以内で完成させる場合に、単年度で必要な事業費は今年度予算の約9倍にあたる1兆4900億円に達するという試算を明らかにした。
 このうち、国の公共事業費は今年度予算の約30倍の9600億円にのぼる。整備新幹線に関係する自治体やJRは工期短縮には前向きだが、新たな資金負担は避けたい考えだけに、与党の工期前倒し計画は国の予算がよほど増えない限り、実現の見込みはなさそうだ。
 現行の計画では、1997年以前に着工した既着工区間は着工から10年、98年3月に着工した新規着工区間は着工の20年後を、それぞれ完成のめどにしている。これに対し、連立与党が作る整備新幹線協議会は先週までの協議で、新規着工区間を含めて7年以内の完成を求める方針を確認していた。(朝日新聞)
■運輸省 都市鉄道10事業を調査へ
 運輸省は25日、地下鉄の新設や既存の鉄道同士を直通化させる工事など、都市部の鉄道網の利便性を高めるために計画された10の事業について、必要性や建設した場合の経済効果などの調査を始めると発表した。さらに、車輪の幅を自由に変えることで、線路幅の異なる新幹線とJR在来線を行き来できる「フリーゲージ(軌間可変)電車」の導入路線などについての調査も始める。ともに学識経験者らが構成する委員会を設置し、今年度からの2年間で調査する計画だ。
 都市鉄道計画の調査対象は、@営団13号線と東急東横線、東急目蒲線と京急空港線の接続A都営浅草線の東京駅乗り入れBJR東北・高崎・常磐線の東京駅乗り入れC東海道貨物支線の旅客線化D中部国際空港アクセス鉄道の乗り継ぎ利便性向上E阪神西大阪線延長Fなにわ筋線整備G京阪中之島新線整備H西鉄宮地岳線と福岡市交通局の相互直通I洞海湾横断鉄道整備、の10プロジェクト。
 それぞれの事業について工事に必要な金額と投資効果などを調査し、不必要と判断した事業については取りやめる可能性もある。(朝日新聞)
27日■兼業部門堅調 4社が増収 関西の私鉄大手5社
 関西の私鉄大手5社の1999年3月期決算が出そろった。本業の鉄道部門は不振ながら、不動産販売などの兼業部門が堅調だったことから近畿日本鉄道を除く4社が増収となった。阪急電鉄、京阪電気鉄道、阪神電気鉄道の3社は経常利益も伸びた。
 鉄道部門は近鉄が3.7%の売り上げ減となったのをはじめ、関連会社の合併による増収効果があった南海電気鉄道、大型娯楽施設が営業を始めた京阪も軒並み減収となった。
 しかし、マンション販売やテナント・土地賃貸の不動産など兼業部門は各社とも好調だった。阪急は流通事業の積極的な店舗展開もあって、兼業部門の売上高が初めて鉄道部門を上回った。
 経常増益だった阪急、京阪、阪神の3社は建物の減価償却方法を定額法に変更したことに加え、金融収支の改善で2けた以上の増益を確保した。ホテル事業再編に伴う損失を計上した近鉄、有価証券の売却損がかさんだ南海は減益だった。(京都新聞)
関西私鉄大手5社の3月期決算
 売上高経常利益当期利益
近畿日本鉄道2466(▼2.4)133(▼ 3.2)96(▼13.5)
阪急電鉄2359( 10.2)159( 32.4)60(  3.0)
京阪電気鉄道1215( 4.7)74( 35.0)31( 13.7)
南海電気鉄道1180( 3.7)27(▼47.8)29(  4.0)
阪神電気鉄道832( 5.8)30( 2.1倍)23(  7.6)
単位は億円。カッコ内は前期比伸び率(%)。▼はマイナス。
■市バス、事故の確認怠る 交差点でバイクが接触
 京都市交通局の市バスが交差点でのバイクとの事故で、運転手(58)が現場を確認せずにそのまま運行していたことが26日、分かった。太秦署では、運転手に過失があったかどうか、事情を聴いている。同局は市バスの関係した事故が相次いでいることから、幹部ら10人の処分を決めたばかりで、事故時の対応にさらに慎重さを求められそうだ。
 太秦署の調べでは、24日午前10時15分ごろ、京都市右京区の交差点で、直進していた市バスの左側最後部に同区の大学生(31)がぶつかった。運転手は「何かが接触したようなにぶい音」がしたため、交差点を過ぎて停車。車体を見て回ったが、接触した跡がないとして出発した。
 大学生が交差点に入る際、赤信号に気づくのが遅れ、急ブレーキをかけたが間に合わず、バスにぶつかったらしい。大学生は転倒し、鼻の骨を折るけがをしていた。運転手は「交差点のほうも見たが、後続の車が並び、雨も降っていたため、よく見えなかった」などと話しているという。
 市交通局は「事故かどうかの確認が不十分であったとすれば、残念なことだ。今後、事故時の対応を運転手に指導していく」としている。(朝日新聞)
■関西私鉄、3社増収増益 関連事業で伸びる 3月期決算
 関西の大手私鉄5社の1999年3月期決算が、26日出そろった。不況による旅行控えや少子化の影響を受け、全社で輸送人員が減ったが、阪急電鉄、京阪電気鉄道、阪神電気鉄道の3社は住宅・土地の販売や流通、レジャーなどの関連事業で売上高を伸ばし、増収増益となった。
 関西地区の鉄道輸送人員は91年度をピークに減り続けており、98年度は、各社とも2−5%ずつ輸送人員を減らした。
 最大手の近畿日本鉄道は、売上高の約8割を鉄道収入に依存しているため、2期連続の減収減益。今年度、役員の賞与カットに踏み切るという。南海電気鉄道は、分譲マンションの販売などで増収としたが、有価証券売却益の減少などが響き、大幅な減益となった。
 一方、経営の多角化を進めた阪急では初めて、関連事業が鉄道事業の売上高を上回った。新しく開業した商業施設や店舗での売り上げが上積みされたうえ、宝塚歌劇団による劇場収入も好調で増収増益を確保した。京阪と阪神も分譲住宅などを積極的に売った。
 2000年3月期は、各社とも鉄道事業の不振を見込んでいるが、阪急、南海は関連事業の伸びが大きく、増収増益を予想する。阪神は減収増益としたものの、阪神タイガースの好成績で、阪神甲子園球場の入場者数が当初予想の200万人を大きく上回りそうで、「今の調子なら六億円近い上乗せが期待できそうだ」(藤井純専務)という。(朝日新聞)
■関西私鉄5社の決算■
 売上高経常利益輸送人員
近畿日本鉄道2466(▼2.4)133(▼ 3.2)7億1822万人(▼3.3)
阪急電鉄2359( 10.2)159( 32.4)6億9064万人(▼2.8)
京阪電気鉄道1215( 4.7)74( 35.0)3億4268万人(▼5.0)
南海電気鉄道1180( 3.7)27(▼47.8)2億7312万人(▼3.4)
阪神電気鉄道832( 5.8)30( 105.7)1億9474万人(▼2.8)
単独ベース、単位・億円。カッコ内は前期比伸び率(%)、▼はマイナス
■京福電鉄がバス部門分社 丸岡バスに譲渡
 京阪電気鉄道グループの京福電気鉄道(本社・京都市)は26日、不採算のバス部門を切り離し、100%出資の子会社である丸岡バス(同・福井県丸岡町)に統合する計画を発表した。来年4月をめどに、京福電鉄が丸岡バスに対して営業権を譲渡し、同社は「京福バス」と名前を変える。(朝日新聞)
■嵐、暴れる
 青葉を激しく揺らす嵐が27日朝、豪雨を伴って列島を通り過ぎた。吹き付ける風は、最大瞬間風速が40bを超える地域も出るなど、台風並み。大阪市内では工事中のクレーンが倒れ、阪神電鉄の架線を直撃するなど、各地につめ跡を残した。(朝日新聞 夕刊)
■強風・大雨、近畿大荒れ 大阪のゴルフ場 鉄柱倒れ民家被害
 前線を伴った低気圧の影響で西日本は27日朝、台風並みの激しい風雨に見舞われた。各地で大雨洪水警報などが出され、和歌山市で最大瞬間風速42.1b、大阪府南部で1時間当たり80_の雨量を記録。関西空港と対岸を結ぶ連絡橋の鉄道と、対岸へ向かう道路が一時閉鎖されたのをはじめ、東海道新幹線も一部運行を見合わせたほか、各地で交通網が混乱し、通勤・通学の足を直撃した。また、突風にあおられ、大阪空港で駐機中の航空機「YS11」が車両に接触したほか、クレーンの倒壊やフェリーの接触、土砂崩れなど突風と大雨による事故も相次いだ。
 27日午前6時5分ごろ、大阪市東淀川区井高野四丁目のゴルフ練習場「井高野ゴルフセンター」で、防護ネットと鉄製の支柱13本が強風で倒れ、近くの民家など8戸の屋根や壁の一部を壊した。東淀川署の調べでは、支柱は高さ20−45b、直径25a。長さが約200bあるネットが強風にあおられ、支えきれなくなった支柱が根元付近から曲がったらしい。けが人はなかった。
 この練習場の東側にある摂津市別府三丁目、会社員嶋田達郎さん(51)宅の屋根に支柱の1本が直撃、縦5b、横2bの穴が開いた。当時、3階に寝ていた嶋田さんの長男達彦さん(22)は「バリバリと大きな音がして、気がつくと屋根から空が見えた」と驚いた様子だった。
 大阪市此花区西九条五丁目のビル建設現場では、午前6時ごろ、大型クレーン2基が倒れ、東側の阪神電鉄西大阪線の架線にもたれかかった。尼崎−西九条間で全線運行を停止、正午前に復旧した。此花署の調べでは、1基は地上に設置され、支柱の高さが27bで、アームが25b。もう1基はビルの7階(高さ30b)に据え置かれ、アームの長さが24b。いずれも強風のため、アームの根元付近から折れたらしい。
 現場は阪神西九条駅から北へ約200b。近くの大阪市立北市民病院にも、倒壊する大音響が響いた。入院患者らは「火花が散るようなすごい音がした」と不安そう。
 また、空と海でも事故が相次いだ。大阪空港では午前六時すぎ、駐機していた日本エアコミユーターのYS11型機が、強風にあおられ、約20b動いて近くに駐車していた電源車に接触し、前脚付近の扉が損傷した。大阪・南港のフェリーターミナルF5岸壁では、着岸中の名門大洋フェリー所有の「フェリーふくおか」が岸壁に接触し、船首付近が長さ1bにわたってさけた。乗客81人にけがはなかった。また大阪港沖の海上で、パナマ船籍とロシア船籍の貨物船が接触した。
 一方、京都市では、東山区泉涌寺山内町の民家裏手の土手が、高さ6b、幅3bにわたって崩れ、民家のガラス窓にひびが入った。
 大阪管区気象台によると、滋賀県彦根市で38.2b、大阪市内で31.7bの最大瞬間風速を記録したほか、高知県室戸市の室戸岬でも39.5bの風が吹き荒れた。いわゆる「メイストーム」は、この季節に日本海で低気圧が発達して南からの突風を呼び起こす場合を指す。今回は日本海側で比較的風雨が弱く、メイストームとは少し違うという。
・臨時休校も
 大阪市内では市立の幼稚園と小、中学校の全487校が臨時休校になった。また、大阪府立高校では池田北、南寝屋川の2校も休校となったほか、高専を含む154校が始業時間を遅らせた。養護学校では病院・施設の併設校を除き20校が臨時休校になった。和歌山県でも県内の小、中学校や高校で臨時休校にしたり、授業の開始を遅らせたりした。
・阪和線、最大2時間遅れ
 JR天王寺駅では阪和線が一部徐行運転し、電車は最大約2時間遅れで到着した。ホームには午前10時を過ぎても通勤客があふれ、会社員やOLがあわただしく改札口を走り抜けた。
 駅カウンターでは、遅延証明書を求める列ができ、「300枚以上があっという間にはけた。普段より1時間半遅れて到着したという大阪府和泉市の女性会社員(27)は「因りますが天候には勝てませんね」と話した。
 JR西日本などのまとめによると、近畿では午前7時ごろから約3時間、阪和線上野芝−和歌山間と関西線三郷−高井田間などで、上下線とも時速30`の徐行運転をした。阪和線では快速電車がすべて運休となったため、並行する南海本線などで振り替え輸送するなど混乱した。また、東海道新幹線も午前8時半すぎ、熱海−新富士間や東京−新横浜間で一時、運転中止など混乱した。関西空港と対岸のりんくうタウンを結ぶ関西空海連絡橋でも、風のためJRと南海が一時運転を見合わせた。
 空の便で緑、関西空港に到着する早朝の国際線の便が、強風のため相次いで着陸できなくなった。日本航空では、シンガポール、ジャカルタ、ホーチミンからの3機が下りられず、急きょ成田、福岡空港へ着陸した。関空発の便の飛行機の確保が一部できなくなり、午前10時発の香港行きが欠航した。(朝日新聞 夕刊)
28日■伏見で民家火災、1人重体 京阪沿線 列車影響
 27日午後1時5分ごろ、京都市伏見区深草キトロ町、飲食店経営河野洋一郎さん(55)方から出火、木造2階建て延べ約150平方bのうち、約85平万bを焼いて、1時間15分後に消した。市消防局の救助隊員が玄関シャッターをこじ開け、玄関の奥で倒れていた二男の無職芳一さん(25)を救出したが、煙を吸って意識不明の重体。伏見署と市消防局によると、河野さん方は4人家族で、出火時は芳一さんが1人で家にいたといい、28日朝から現場検証をする。
 現場は、京阪藤森駅の北約30bの住宅地。すぐ西を京阪本線が走っており、淀屋橋行き特急電車が通過駅の深草駅に11分間停車したのをはじめ、後続の下り列車3本が最大で13分遅れ、計約500人に影響が出た。上り列車も現場付近で徐行運転した。(京都新聞)
■JR未上場全社が減収 輪送量落ち込む 3月期決算
 JRで未上場の北海道、九州、四国、貨物の4社の1999年3月期決算が27日出そろい、全社が減収という厳しい結果になった。不況の影響で、輸送量が落ち込んだことが響いた。しかし、人件費などのコスト削減の効果が出て、九州は前期の3倍を超える増益。北海道も経常黒字に転換した。逆に、四国は経常赤字に転落した。貨物は6期連続の経常赤字。取締役の数を16人から9人に減らす。(朝日新聞)
■JR未上場4社の決算■
 売上高経常損益
九 州1590(▼ 5.8)34(230.0)
貨 物1737(▼ 7.1)▼72( − )
北海道991(▼ 3.2)19( − )
四 国427(▼11.1)▼12( − )
単独ベース。単位は億円、カッコ内は前期比伸び率。▼はマイナスか赤字
■サリン被害者保護費「返還請求は不適切だ」 厚生省局長
 地下鉄サリン事件で被害に遭い、失職して生活保護を受けるようになった東京都内の元会社員の女性に対し、区の福祉事務所が「損害賠償金(教団の破産手続きの中で受け取る配当金)を受け取った場合は既に支払われた保護費を返還するように」と通知していた問題が27日、参院法務委員会で取り上げられ、厚生省社会・援護局の炭谷茂局長は「不適切な通知だった」と認めた。
 司法制度改革審議会設置法案をめぐる質疑で、橋本教委員(共産)が、犯罪被害者の救済について質問した中で取り上げた。
 炭谷局長は「事務所の通知で不快な思いをしたことはあろうかと思うが、配当金から返還を求めることにはならない」と述べた。(朝日新聞)
29日■北陸新幹線 「米原経由」が急浮上 琵琶湖環状線 構想実現へ懸念
 北陸新幹線の敦賀以西ルートの計画をめぐり、今月に入って「米原経由」の考え方が急浮上している。JR側や与党の自民党幹部が、これまで有力だった若狭経由より建設費が安いことなどを理由に「米原経由が現実的」と発言したためだ。一方で、米原経由になれば、並行する在来線の北陸本線米原−敦賀間が、収支悪化を理由にJRから経営分離される懸念があり、琵琶湖環状線構想の実現をめざす滋賀県にとっては「頭の痛い問題」(県幹部)となっている。
 北陸新幹線の敦賀以西のルートは、国の新幹線整備計画の中で唯一ルートが決まっておらず、これまで福井県や若狭地方の市町村が「若狭ルート」を要望し、同ルート採用が有力視されていた。
 しかし今月5日、自民党全国整備新幹線建設促進議員連盟会長の森喜朗党幹事長は、財源確保の困難性を理由に若狭ルートを断念する方向を表明。さらに、建設促進をめざす自民、自由両党の与党整備新幹線協議会(小里貞利座長)は今月20日、敦賀以西のルートについて「原則フル規格で、10年程度で完成させる」と確認。
8月末までに策定する新たな枠組みに、同ルート設定を盛り込むことを決めた。
 また、同協議会のJR4社の意見ヒアリングで、南谷昌二郎JR西日本社長が「在来線を活用したスーパー特急方式は、湖西線などの在来線を活用した低コストで整備できる。(新たに路線を開設する)フル規格での整備ならば、収支的にも長野−大阪間の全線同時開業が必要。建設費や工事の難易度から、米原経由が現実的ではないか」と発言。ここにきて、米原経由の注目度が高まっている。
 これに対して、滋賀県は北陸本線長浜−湖西線永原駅間を直流化して、湖北・湖西地区を直通電車で結ぶ「琵琶湖環状線」の実現をめざしている。県と地元1市17町1村は、同環状線を県北部の活性化の切り札に位置づけ、直流化事業費約40億円を全額地元負担として約37億円の基金を積み立て。また、本年度からの観光キャンペーンで、JR利用者の実績づくりを展開している。
 それだけに「米原ルートを国から正式に打診されたこともなく、これまで想定したこともない」(県交通対策課)と表面的には静観の構え。しかし、JR側はこれまで「新幹線と並行する一部在来線は、基本的に収支が悪化するため経営分離が必要」としており、県は「米原経由になれば、並行する敦賀−米原間も経営分離される懸念がある」と警戒する。(京都新聞)
30日■100年前の旧関西鉄道大仏線跡 ゆかりの駅など軌道たどる 加茂で見学会
 約100年前に、9年間だけ加茂町と奈良市を結んで営業していた旧関西鉄道大仏線の跡を訪ねる見学会(交通科学博物館主催)が29日、ゆかりのJR加茂駅舎(同町里)や木津町鹿背山の水路トンネルなどで行われた。鉄道ファンや近隣の住民らが、幻の軌道をたどって、初夏の緑の中を歩いた。
 見学会には、同博物館がある大阪市内や加茂町などの近隣市町、奈良県内などから約50人が参加した。JR加茂駅から、奈良市の東大寺大仏殿前の旧大仏駅跡まで、線路跡約10`を徒歩とバスで巡った。
 途中で、れんが造りのランプ小屋や水路トンネル、急なこう配をやわらげるための築堤など、当時の面影を残す遺構を見学した。参加者は、学芸員の説明を聞きながら熱心にメモをとり、今も残る大仏線の遺構を写真に収めた。
 城陽市から参加した会社員西田栄美子さんは「大仏線は田んぼや森の間を通っていて、景色がとてもいい。便利になる一方で、れんが積みの小屋が鉄道の周りから少なくなったのは、少し寂しいですね」と、資料を手に明治時代の建物に見入っていた。(京都新聞)
31日■完成、大幅前倒しへ 自自の促進協が確認 財源、裏付けなく夢物語? 整備新幹線
 整備新幹線の建設促進と新しい建設計画の枠組みを検討している自民、自由両党の整備新幹線建設促進協議会の議論が本格化している。25日の協議会では既着工区間の東北新幹線盛岡−八戸間は2002年まで、九州新幹線西鹿児島−八代間は2003年までの完成を、東北新幹線八戸−新青森など新規着工の3区間は7年以内の完成をそれぞれ目指すことなどを確認した。
 大規模な公共事業による景気てこ入れを追い風にして、協議会では工事期間の大幅な短縮がとんとん拍子にまとまった。ただ、これらの議論の前提になる財源の裏付けとなると見通しは立っておらず「夢物語」という声も聞こえ出している。
 現在進められている自自協議会について、ある運輸省幹部は「われわれにはとてもうれしい話。ただ、今の議論での開業目標は財源の根拠がない。財源の見通しが示されない限り、地質調査や設計計画など手続き上から見て大幅な工期短縮などはあり得ない。政治は夢物語を語っている」と半信半疑の表情だ。
 財源対策で当面、協議会が熱いまなざしを送るのが本年度予算に盛り込まれた5000億円の公共事業予備費の使い道。協議会の二見伸明副座長は「3000億円から2500億円は欲しいという線で話し合いをしている」と意気込みをみせる。
 協議会は6月1日の会合でこれまでの協議内容を中間報告として両党執行部側のお墨付きをもらうため、幹事長らの出席について調整をしている。
 自民、自由両党協議会は8月末までに新しい枠組みをつくる方針だが、ルート選定が遅れている未着工区間や、整備新幹線に並行する在来線の取り扱いなど、財源問題以外でも課題が山積している。協議会の論議はまだまだこれからと言うのが実態だ。(京都新聞)
■「若狭ルート」より「湖西線」が現実的 北陸新幹線で森幹事長
 自民党の森喜朗幹事長は29日、金沢市内で開かれた地元経済団体との懇談後、記者団の質問に答え、福井県が主張している北陸新幹線の若狭ルートについて「現状では極めて難しい。そろそろ現実問題として結論を出さないといけない」とした上で、「調整ができるまで(着工が)後回しにされかねない」と、結論を先送りしている福井県の姿勢をけん制した。
 在来線のJR湖西線を使用したルートについては「(新幹線車両が狭軌の在来線に乗り入れできる)フリーゲージが技術的に問題なければ、ほとんど高架、直線でかなりのスピードが出せるので現実的だ」と排べ、候補のひとつとの考えを示した。(京都新聞)
■創造力生かしSLスケッチ 上京の親子800人が参加 梅小路蒸気機関車館 写生大会
 青少年の健全育成に取り組む上京子ども会育成連絡協議会(池崎照夫会長)は30日、下京区の梅小路蒸気機関車館で写生大会を催した。親子約800人が参加し、SLの写生を通じて親子のふれあいを深めた。
 同協議会の写生大会は今回で21回目。子どもたちは、機関車館の思い思いの場所で、友だちや家族と車座になり、絵の具やクレパスで写生した。機関車の正面を人の顔に見立てて描いたり、真っ黒な機関車を青や赤で塗ったりと、子どもらしい想像力を発揮していた。
 参加した親子は写生の後、展示されている鉄道の模型やビデオを見学したり、SLに体験乗車し、休日を楽しんでいた。
 同協議会はこの日の作品から200点を選び、7月23日から北野天満宮(上京区)で展示するほか、同区内の小学校教諭の審査で優秀作品を選び、表彰する。(京都新聞)
■列島新景 静岡県 大井川鉄道 夢ものせて SL、茶どころを疾走
 煙中毒症−。
 「仲間うちでは、そう呼び合うんですよ。」大井川鉄道の蒸気機関車(SL)を20年以上も追い続けているアマチュアカメラマンの真城恒康さん(59)=千葉県八千代市=は、電話の向こうでこう言って笑った。
 真城さんは、沿線で顔見知りになった同好の士が昭和59年に結成した「川根路号写友会」の発起人の1人。「1ヵ月もごぶさたすると夢にSLが出てくる」のが中毒症の典型的な症状とか。「上り坂では苦しげな煙と音をたて、下りは軽快に滑走する。最も生き物に近い機械」。機械の設計技術者でもある真城さんは、SLを愛してやまない理由をそう語る。
 「SLだけでなく大自然も満喫できるのが大井川鉄道の魅力。中でも今が一番いい季節。紅葉に勝る新緑が楽しめますよ」。年に30回は沿線に通うという真城さんの言葉に誘われて、5月初旬の連休に足を運んだ。
 江戸時代に箱根をしのぐ東海道の難所とうたわれた大井川。南アルプスを源とする川筋に沿い静岡県のほぼ中央を南北に走る大井川鉄道沿線は、川霧の恵みを受けた良質な茶の産地としても名高い。新茶シーズンとあって窓の外は茶摘みの風景が続く。
 もえぎ色の茶の新芽は逆光に照らされると淡い輝きを放ち、優しさを増す。半円形に刈りならされた茶畑が光の加減で織りなすグラデーション。背後の山はスギの深い緑。初夏の息吹を主張する自然の表情は思いのほか豊かだ。
 「紅葉に勝る」を実感した。 途中下車し、振影ポイントの一つと聞いた場所に出向く。10人近くが三脚を立てて汽笛が近づくの待っていた。
 「年に60回は来る。煙の昇り方は天候、湿度、機関車と運転する機関士の調子にも左右される。二度と同じ写真は撮れない」とビデオとカメラの両方を撮っていた池谷孝雄さん(55)=静岡県焼津市=。並んでシャッターを切っていた山本和慶さん(28)=静岡市=は「2年前に県内に転勤してきてからは、天気さえ良ければ休みのたびに煙のにおいをかいでいる」と言い、「まさに中毒」と2人で顔を見合わせた。
 下りの一番列車を収めると。2人は写友会員たちの作品が飾ってあるという近くの食堂に誘ってくれた。四季折々SLを写したパネルが壁に30点余り。おかみさんが差し出した大学ノートの「SL日記」には、つい最近の真城さんのコメントもあった。沿線にはこんな店が幾つかある。
 「振影場所に置き忘れた荷物が自宅に送り届けられたこともある。人情に厚い地元の人との触れ合いも足しげく通う理由の一つ」。そう真城さんが言っていたのを思い出した。
 スピード化の波に洗われ、いったんは国内から姿を消したSL。観光の起爆剤にとの期待を背負い、今また各地で雄姿を見せ始めている。この四月にも磐越西線(福島県)で「貴婦人」C57が復活。北海道では朝の連続テレビ小説をきっかけに「すずらん号」が運行を始めた。先駆けが、23年前にSLを復活させた大井川鉄道だったことに疑いはない。
 「SLが走る風景を21世紀も見られたら」。大井川鉄道での復活当時、真城さんが祈るような気持ちで抱いたという夢は、現実になろうとしている。静岡新聞社 文・荻田 雅宏 写真・塩津 治久
メモ
 大井川鉄道(おおいがわてつどう) 大井川上流部の森林資源の輸送などを目的に昭和6年に全線開通した本線(金谷−千頭間39.5`)とダム建設の専用軌道が前身の井川線千頭−井川間25.5`)からなる。SL急行「川根路号」は本線を1日1−2往復する。(冬場は週一日休み)。SL復活は昭和51年7月。延べ輸送距離は67万`。運んだ乗客は370万人を超える。現在、定期運行に使われている機関車は「C10」1台、「C11」2台、日本ナショナルトラスト所有の「C12」1台の計4台。ほかに戦中、タイ−ビルマ間で活躍していた「C56」が修理中。井川線には国内唯一のアブト式鉄道区間がある。(京都新聞)
■「鉄道員」心のしん じんわり 200本以上映画やって こんなに幸せに気分になれたのは初めてです 高倉健さん
 映画「鉄道員」が6月5日に全国で公開される。作家浅田次郎さんの直木賞受賞作を、高倉健さんが4年ぶりの仕事に選んだ。北の国で、愚直で融通のきかない一人暮らしの男に、人生の最後の最後に贈り物が届く。健さんが育った東映で、19年ぶりに撮った作品でもある。迷った末に引き受けた、その1本を、健さんはいま、こう、いとおしむ。「200本以上の映画をやってきて、こんなに幸せな気分になれたのは初めてです」(学芸部・山本 克哉)
 健さん演じる乙松は単線の終着駅、幌舞の駅長だ。映画は乙松が、いよいよ定年になる年の正月を独りで迎えたあたりから始まる。一人娘を生後間もなく失い、妻にも2年前に先立たれた。守ってきたローカル線は廃線が決まった。鉄道員一筋の乙松は、辞めたあとのことなど、考えようともしていない−。
 この仕事、初めは断ったそうですが。
 「そう。終局、いっしょにやりましょう、となったのは、東映東京撮影所のスタッフの存在が大きかったですね。冬の北海道の厳しい寒さのなかや、照明係の人がバタバタ倒れた暑い沖縄で、何年もいっしょにやってきた『網走番外地』のスタッフ。彼らが定年で、あと2年でだれもいなくなる。1本撮らなきゃならないと思いました。しばらくぶりで会ったみんなは、頭が白くなっていて。私もだんだん、よし、いっしょにやろうという気持ちになりました」
 舞台の幌舞は、活気を失った町だ。炭鉱が閉じて町の人々は去った。1両だけの朱色のディーゼル車は、ほとんど客を乗せることがない。乙松はホームで吹雪を受けながら、空の車両を待ち、また送り出す。雪の中、世界を独りで背負ったような乙松の姿は、健さんそのものだ、という声がある。
 乙松の妻、静枝(大竹しのぶ)が劇中で何度か「テネシー・ワルツ」を口ずさむ。健さんの元妻、故江刺チエミさんの持ち歌だ。このメロディーがまた、古くからのファンをいろいろな思いに誘う。
 「プライベートフィルムとか、これは地だとか、言われますが、抵折があります。これまでの芝居の延長線上にあると言われれは、うれしいんですが。大竹さんと一緒のシーンが少ないから、決まって口ずさむ歌があれば、芝居がしやすいし、だれが歌っても、どきっとする歌があるといい。で、ぼくの場合は…と、ひょんなことから『テネシー・ワルツ』になった。ちょっと後悔しています」
 乙松と健さんは、だぶるようで、だぶらない。だが、乙松のような、何かを貫こうとする生き方には、共感するという。一人で駅を守り、妻も娘も、その死に際をみとれなかった乙松。健さん自身も、これまで、映画撮影のさなかで、親兄弟の死に間に合わなかった。
 「父を亡くしたのは『君よ慣怒の河を捗れ』のときです。お願いすれば帰ることはできたけれど、ちょうどゼネストで交通機関が止まっていた。ぼくはひきょうなもんですから、肉親の死に顔を見たくない気持ちが、どっかに強くある。乙松とはちょっと違う。でも、そのことでスタッフのスケジュールを変えて迷惑をかけるような俳優にはなりたくないという意志も、確かにありました。それが、緊張感を失いがちな自分の気持ちに活力を入れる、一つの材料になっているのかもしれません」
 「鉄道員」の撮影を終えて2ヵ月余り。気持ちは高ぶったままだ。「心を吸い取られたようだ」と言う。何度も、撮影中の自分を振り返って、「何なんですかねえ」「魔法にかけられたよう」と繰り返す。
 劇中のクライマックス。死んだはずの娘と出会い、やさしい言葉をかけられて、乙松は泣く。この場面、脚本でそうとは決められていなかった。健さんは不覚にも、涙を抑えきれなかった。
 「泣いてしまったのは最後に撮ったシーンです。我を忘れてはいけない、芝居をしなくちゃいけない、しっかりブレーキかけとかなくちゃいけない、と思ってたんですが。いつもならバチッと拍車を入れて奮い立たせる。それが今回は反対でした。肉体って不思議だと思いました。心に激しい感情がよぎると悲鳴をあげて出てくる。涙ってそういうことなんでしょうね」
・まじりっけのない日本映画。懐かしかった 原作者・浅田次郎さん
 「ああ、まじりっけのない日本映画だ」と思いました。けれんが、まったくない。血は出ないし裸もないし、暴力だって、せいぜい酒場でのけんかぐらい。あっと驚かす場面は何もない。けれど、じっくり味わわせてくれる。
 戦後の日本はすべてアメリカをまねて、文化もまねようとし、日本映画はハリウッドに追随して、お客さんが入らなくなった。娯楽の分野でアメリカのダイナミスムをまねたってかないません。
 今のアメリカの繁栄を作ったのは、歴史の浅さというコンプレックス。そのパワーをぶつけたのがハリウッドなのだから、その迫力にはかないっこない。
 「鉄道員」には、精密で繊細で、心を映し込むような、本来の日本映画のかたちがある。見終わって、懐かしかったです。こんな映画を、あと100年かかっても、ハリウッドは作れないでしょう。
 冒頭のSLの雄姿。あれで、もう胸いっばい。熱くなりました。男はたいてい鉄道オタク。鋼のにおいというのは男のロマンだから。
 主人公の乙松は、寡黙で一途な男。寡黙さの演技といったら、健さんしかいませんよ。映画では、健さん、せりふではなくて間で演技してる。ふっと言葉が止まって、そのあと、ほかの役者では絶対にあり得ない余白がある。あの余白で見せるし、泣かせる。
 健さんの映画はほとんど見ています。ぼくも含めて40代半はから50代半はの世代にとって、健さんは時代そのもの。ヒーローであり、シンボルであり、当然、見るものだったんです。
 小説では、最後だけで泣かせる「一発泣き」は難しいんです。布石を敷いて、少しずつ涙腺を緩めて、けっこう緩んだところで、ブスッとやる。
 映画でも、乙松の親友の息子が、世話になった乙松に電話をかけてくる。そういうところから、泣けてくる。乙松の妻を演じた大竹しのぶさんが、病院に行くために乙松と別れる場面も、せりふのない別れが素晴らしかった。
 小説を映画化した作品は、ぼくも過去に見ているけれど、その映像で納得できたかといえは、たいていできない。しかしこの映画は、読んだ後で見に行く人が「もう一回、体験させてもらえた」と思うんじゃないでしょうか。(談)(朝日新聞 夕刊)