1998(平成10)年 5月


1日■社説 許されない新幹線の列車妨害(京都)
  ■東海道新幹線 ボルト引き抜き 保守状況熟知し計画 始発前の発覚想定?(京都)
  ■市バスと車接触 乗客4人がけが 河原町四条交差点(京都)
  ■JR西大路駅周辺の放置自転車なくそう 今月から活動本格化 昨秋結成の「美しくする会」 ビラを配り早朝パトも(京都)
  ■「チンチン電車のある風景」 京の思い出語る写真集出版 津市の高橋さん 60年代から熱写 懐かしい350枚(京都)
  ■新幹線線路ボルト外し 計画的な嫌がらせ?(朝日)
  ■声 心なごませる市電復活して 京都市 新木 邦生(中学生 12歳)(朝日)
  ■列車妨害予告の郵便物 JR京都駅などに届く ボルト引き抜き事件前の消印(京都)
2日■新幹線妨害予告の手紙 筆跡酷似の工員浮かぶ 投かん先の富山 窃盗容疑で逮捕(京都)
  ■窃盗の疑いで逮捕の男聴取 新幹線ボルト外し(朝日)
  ■声 車両が変わり障害者不便に 大阪市 藤野 高明(教員 59裁)(朝日)
  ■駅や空港は大混雑 GW きょうから4連休(京都)
  ■JR東海など巡回を強める 新幹線ボルト外し(朝日)
  ■市バスに当て逃げ 神戸、乗客2人けが(朝日)
3日■事件前日に不審者 ボルト引き抜き JRが徒歩点検指示(京都)
  ■現場近くにレンチ 犯行用? 鑑定急ぐ(京都)
  ■新幹線ボルト外し 発見は緊急見回り中 前日の線路侵入事件で(朝日)
  ■現場近くで工具類発見(朝日)
4日■新富士駅 こだま、通過線に 指令ミスで乗降できず(京都)
  ■雨で関西線一時運休(京都)
  ■新富士駅停車せず こだま、150人に影響(朝日)
5日■レンチの使用濃厚 新幹線線路抜き取り ボルトの傷と一致(京都)
  ■JR片町線に置き石 京田辺 電車はね、3分停車(京都)
6日■新幹線ボルト引き抜き 前日深夜に不審車(京都)
  ■東西線延伸で鉄道事業免許 来秋にも本格着手(京都)
  ■21世紀まで971日 五新鉄道 銀幕が映す夢・挫折(朝日)
7日■旧国鉄債務、林野で衆院に特別委設置 委員長に大原氏内定(京都)
  ■えっ市バスにムカデが出た 中京・児童刺され軽傷(京都)
  ■携帯電話自粛の社内放送にムッ 駅長脅し列車止める 恐喝未遂容疑で逮捕(朝日)
8日■乗車人員3%減(昨年比)G・W KTRの輸送状況(京都)
  ■旧国鉄債務処理 法案審議 前途険しく JR各社なお反対 継続審議なら資金綱渡りに(朝日)
  ■遺留品の製造 奈良と東京 新幹線ボルト抜き事件(京都)
9日■JR7社、なお協力拒む(朝日)
11日■京都市営地下鉄2駅 証明書発行コーナー きょうから業務(朝日)
  ■台車設計した社員書類送検 広島・作業台車暴走(朝日)
12日■地下鉄の2駅でも開設 四条・竹田 市証明書の発行コーナー(京都)
  ■鉄道に自転車も”同乗”OK 地球温暖化対策に一役 まず2社で半年間試行 7月から運輸省がモデル事業(京都)
13日■オピニオン解説 事故の「予兆」なぜ生かせなかった… 「異常」報告されず 将来のため真相に光を 信楽鉄道、惨事から7年(京都)
14日■JR西大路駅周辺 放置自転車なくそう 美しくする会 チラシ配りアピール(京都)
  ■京都市バス また人心事故 対応迫られる交通局 先月からはや4件 事故の運転手を再教育(朝日)
  ■信楽鉄道事故法要 7年目の祈り 真相見えずなお歯がゆさ(京都)
  ■信楽鉄道事故 7周年で法要(朝日)
15日■市バス・地下鉄、利用調査へ 京都市交通局 東西線開業後の乗客動向探る 来月、全路線で実施(京都)
  ■鉄道事故 独立調査機関設置を 信楽で安全推進会議 法制化向け方針(京都)
  ■新型寝台特急公開へ 23日にJR大阪駅で(京都)
  ■ポイント部分に小石 新幹線が4本遅れる 明石(朝日)
16日■”夏族”旅行へ JR6社が臨時列車 1万1570本増発しまーす 日本海の海水浴に「マリン」 新宮へは全席指定「スーパーくろしお」(京都)
  ■窓 バスの特別席広めてほしい 大津市・小川 正雄(公務員・50)(京都)
17日■地下鉄東西線 沿線住民の不満あらわ 京大ゼミ生ら調査 154人回答もとに冊子 市中心部への移動時間3割「長くなった」 市バス統廃合 7割「不便に」(京都)
  ■釣りざおで感電死 線路上の架線に接触(京都)
  ■旧国鉄債務処理、組織犯罪対策 衆院で継続審議方針 政府・自民(読売)
  ■夏の臨時列車261本 JR福知山線など(読売)
  ■福井地震50年 語り継ぐ教訓(抜粋)(読売)
18日■リニア初試乗 最高速は450` 山梨実験線で藤井運輸相ら(京都)
  ■イライラ京都市バス 2−10分前後、中には46分も やっと来たら2台「だんご」 遅れる到着、進ます改善 リストラ先行 交通、運行事情あるが(京都)
  ■線路上に布団のぞみ止める 新大阪駅近く 強風でマンション9階から(朝日)
  ■尼崎の東海道線内 自転車3台を放置(京都)
  ■大阪市交通局 幹部ら19人処分(京都)
  ■駅員らの覚せい剤事件 幹部19人処分 大阪市交通局(朝日)
  ■自転車3台線路に放置 尼崎、貨物止まる 東海道線(朝日)
19日■特急など4割滅、261本 夏のJR臨時列車 全車指定を増やす(朝日)
  ■日テレ元プロデューサー 電車内で痴漢行為 執行猶予付き判決(朝日)
20日■市バス、バイクと接触 右京、転倒の男性けが(京都)
  ■全国発明表彰 今年度受賞者決まる(抜粋)(朝日)
  ■21世紀まで957日 淡路島の電車 車の便利さに敗れ(朝日)
21日■長野新幹線のトイレに銃弾 壁を貫通、県警が捜査(京都)
  ■窓 京津線乗り入れ二条まで延長を 中京区・渡辺 啓史(会社員・30)(京都)
  ■市バス接客態度 34%が不満持つ 京都交通労組の市民アンケート 「予想以上に多い」 労狙 運転手らに改善訴えへ 「時刻表通り道行」も上位(朝日)
  ■市バスが接触事故 バイクの男性けが 右京の府道(朝日)
  ■地下鉄東西線乱れる 300人に影響 始発など4本 作業車の故障で 早朝に一時(京都)
  ■市バス運転手 停職6ヵ月に バス離れ口論問題(京都)
22日■乗客放置の京都市バス運転手 6ヵ月間の停職処分 交通局(朝日)
23日■わーい! SLと綱引きだ 梅小路蒸気機関車館 「フェスタ」に園児ら1500人 100人の力で巨体「D51」スルスル(京都)
  ■新型寝台列車を公開 JR(朝日)
25日■JR訴訟 28日判決 東京地裁 中労委命令どう判断 国労組合員の「不採用救済」 中労委敗訴なら権威失墜危ぶむ 「責任ない」JR側強気(京都)
  ■清掃作業中の男性 電車にはねられ死亡 精華町(京都)
  ■SLかっこいい 親子写生大会に600人 梅小路蒸気機関車館(京都)
  ■京都市バスとワゴン車衝突 南区、6人重軽傷(京都)
  ■軽ワゴン車と市バスが衝突 5人重軽傷(朝日)
26日■林郁夫被告に無期懲役 地下鉄サリン実行犯で初判決 非人道的だが「自首」 松本被告の首謀人体東京地裁(京都)
  ■無期懲役判決 林郁夫被告の公判語録 殺人「おぞましい」(京都)
  ■林郁夫被告の判決要旨(京都)
  ■傍聴100回 真の悔悟確信 「死刑覚悟感じた」許すことできないが 地下鉄サリン犠牲者の妻(京都)
  ■「無期」に深々と一礼 林被告判決公判 目を伏せ涙ぬぐう 被害者は怒り新た(京都)
  ■林郁夫被告に無期懲役 「地下鉄サリン」など6事件 「自首」・証言を評価 東京地裁判決(朝日)
  ■林郁夫被告の判決理由(要旨)(朝日)
  ■教団なお不気味な動き 「施設」に強い警戒感 山科 住民不安 ビデオ監視(朝日)
  ■悔悟…償いきれぬ罪 林被告に無期懲役 「生きてちゃいけない」 判決理由に泊まらぬ涙(朝日)
  ■大阪空港−奈良線 リムジンバス申請(朝日)
27日■保津峡に転落 女性助かった JR待合室から24b(京都)
  ■奈良−大阪空港間バス路線を申請(京都)
  ■ニュートラム 非常ブレーキ作動し急停止(朝日)
  ■京阪奈新線 三セク設立 近鉄や奈良県合意(朝日)
28日■大阪の地下鉄また線路出火 2万4000人影響(京都)
  ■トイレ付き車両困難 JR紀勢・阪和線(京都)
  ■海水浴客向けきっぷ2種発売 KTRとJR西日本(京都)
  ■地元企業の決算(単位100万円)(京都)
  ■旅客数滅で赤字続く(京都)
  ■中労委の救済命令取り消す JR不採用2訴訟で当期用地裁判決 「選考責任なし」北海道・九州 本州・中労委権限を逸脱(京都)
  ■JR不採用訴訟判決要旨(京都)
  ■懐かしい「120形」「1800形」の機関車だ 真ちゅう製の鉄道模型1000点展示 梅小路蒸気機関車館 元京大名誉教授で愛好家の故宍戸さんの遺品 実物の80分の1 アイデア駆使手作りの品 遺族が寄贈(京都)
  ■JR不採用訴訟判決 無念さらに深く 「国労というだけで」 遺志継ぎ闘う家族(京都)
  ■中労委命令取り消し 国労差別訴訟「不採用救済誤り」 東京地裁2判決 JR責任、判断異なる(朝日)
  ■解説 解雇救済、政治の出番 JR採用差別訴訟(朝日)
29日■社説 JR訴訟で政治出番の道探れ(京都)
  ■関西私鉄大手5社の決算 本業不振で4社減収 3月期 近鉄、京阪は20%減益(京都)
  ■京阪奈新線 三セク会社7月設立 近鉄と3自治体 136億円出資(京都)
  ■バイクが歩道占拠 車いすなど通行に支障も 昨春開業のJR藤森駅前(京都)
  ■関西私鉄 輸送人員滅止まらず 3月期決算 阪神だけ増収増益(朝日)
30日■精神障害者手帳制度 来年から市バス・地下鉄無料に でも申請ためらう声も 「周囲の目か気に」(京都)
  ■奔流底流 リニアモーターカー、走行実験本格化 速い でも 高い ”実用線浮上”メド立たず 膨大建設費がネック(京都)
  ■新幹線駅設置へ要望活動を継続 湖東駅推進協が総会(京都)
  ■叡電「きらら」ローレル賞に 鉄道友の会 パノラマカー 楽しんで乗る設計評価(京都)
  ■大阪モノレール 営業`世界一に ギネスに登録(京都)
  ■車内でわいせつ行為容疑の会社員を逮捕 近鉄京都線(朝日)
  ■山陽新幹線 ランプ故障で「のぞみ」遅れ(朝日)
  ■新幹線基地でポイント故障 東北など16本運休(京都)
  ■阪神本線の高架化 下り線の工事完了(朝日)
  ■北海道 ふるさと銀河線 岡女堂駅 赤字線に甘い助っ人 工場移転きっかけに神戸の甘納豆屋さん建設 知恵絞って緩行客増(朝日)
31日■接客態度など理由に停職処分 「事実誤認」と提訴 京都市バス運転手(朝日)
  ■JR西労組米子 自民現職を支持 参院選(朝日)



1日■社説 許されない新幹線の列車妨害
 東海道新幹線でレールをまくら木に固定しているボルトが大量に外されるという前代未聞の事件が起きた。きのうのことだ。幸い始発通過の約2時間前に発見され、事なきを得たが、何とも不気味で、黄金週間の利用客らの不安をかき立てる悪質極まりない事件である。
 現場は滋賀・岐阜県境からわずかに岐阜県側に入った山間部で、外されたのは下り線の外側レールを固定しているボルトのうち外側の24本と内側1本の計25本。外側24本は十数bにわたり連続して抜かれていた。
 JR東海によると、現場のレールは1本の長さが1`b以上ある。このため、ボルトが抜かれたままの状態で列車が走っても、レールが浮き上がったり、ずれたりすることはなく、ただちに大事故につながる心配はないという。
 とはいえ、現場の状況からは周到に準備した犯行とみられる。また5年前には現場近くと彦根市内でレールにチェーンなどを巻きつけた事件が連続してあり、今回との関連も気になる。捜査当局には一日も早い犯人検挙を望みたい。
 犯人が列車転覆など大惨事を起こそうとした確信犯なのか、それともJRへのいやがらせか、あるいは世間が騒ぐのをみて満足する愉快犯なのか。また単独犯か複数犯かを含め、現段階では不明な点が多いが、新幹線の線路について専門的な知識を持つ者による計画的な犯行であることは間違いなかろう。
 そのことを裏付けるひとつは、ボルトが直径3.5a、長さ18aもあり、専門の工具を使わないと容易には外せない点だ。また、新幹線の保線作業は終電後の深夜から未明にかけ、ほぼ毎日行われているため、作業のない場所、時間帯を狙って犯行に及んだとみられる。
 さらに、線路わきに設置されている有刺鉄線付き防護フェンスを切断し、侵入したことも明らかだ。
 こうした点からは、犯人の十分な下見や入念な準備ぶりがうかがえる。取り外したボルトをこれみよがしにその場に放置していたことにも、何らかの意図が感じられるようで、気味が悪い。
 今回の事件ですぐに思い起こされるのが、5年前の連続防害事件だ。1993年6月、今回の現場から西へ数百bの地点でレールにワイヤロープが巻かれ、次いで同年8月には彦根市内でもレールにチェーンが巻かれていた。いずれも列車の通過後に切断されて見つかった。
 両事件とも乗客などに影響はなかったものの、JR総研の分析では「転覆の危険があった」とされる。現場には犯行声明も残され、同一犯の疑いが強いとみられたが、未解決のままになっている。
 今回の事件とは、現場の地理をよく知り、新幹線の線路状況などに熟知した者の犯行とみられる点で共通する。一方、今回はボルトを外すというまったく初めての手口だ。果たして関連があるのかどうか。いたずらに不安を高めないためにも、捜査には全力を注いでほしい。
 JRに十分な点検作業やさまざまなセンサー設置など、安全確保へ万全の対策を望むのは、言うまでもない。(京都新聞)
■東海道新幹線 ボルト引き抜き 保守状況熟知し計画 始発前の発覚想定?
 岐阜県関ケ原町の東海道新幹線岐阜羽島−米原間下り線で30日、ボルト25本が引き抜かれた列車防害事件で、岐阜県警垂井署の捜査本部は、事前に現場の下見をしたり必要な工具をそろえたりするなど、周到に準備した計画的なもので、犯人はJRの保守点検状況なども把握している可能性があるとみて捜査。5年前には、今回の現場付近で類似事件が発生し未解決となっていることから関連についても調べている。
 捜査本部は30日、160人態勢で現場付近の遺留品の捜索や不審者の目撃者捜しなどをしたが、有力な情報は得られなかった。5月1日は捜査範囲を拡大するとともに、ボルト引き抜きなどに使った工具類の特定を急ぐ。
 調べでは、現場付近は地元の人も普段あまり通らない場所。きつく締められたボルトを抜くには、専用の大型レンチやスパナなどが必要なことから、十分に調べた上での計画的犯行の可能性が高い。
 1週間に1回程度、不定期に行われる保線作業員による点検の日にボルトを引き抜き、線路内の見えるところに放置していたことなどから、捜査本部は、始発前に見つかるようにしていた可能性もあるとみている。
 1993年6月にレールにワイヤロープが巻き付けられた事件があったが、その場所は今回の現場から東へ約300b。同年8月には滋賀県彦根市でも類似の防害事件が起きている。
 両事件では、現場付近から特定政党などを批判する犯行声明とみられる新聞紙片が見つかったが、今回は発見されていないという。
 JR東海はボルトを引き抜くというかつてない防害事件に衝撃を受け、点検作業などを強化したいとしている。
・西日本も点検強化へ
 東海道新幹線の岐阜羽島−米原間で線路のボルト25本が外されていた事件を受け、JR西日本は30日、山陽新幹線についても当面の間、警戒のため線路の点検作業を強化する方針を決めた。
 同社では、石の上にまくら木を敷いた線路は月2回、コンクリート上の線路の場合は月1回の割合で保線作業員が深夜、歩いて保守点検をしている。作業員を増やして点検頻度を高める方向で検討している。
・滋賀県警が沿線を警戒
 滋賀県警では30日、県内を走る東海道新幹線の全沿線を警戒実施区間とし、彦根署など沿線各署と鉄道警察隊、機動警察隊など計45人、パトカーなど車両20台を動員して路線の警戒に当たった。当面、この態勢で警戒を続ける。
 県警は、93年8月、彦根市内で新幹線のレールに鉄製チェーンが巻き付けられた事件との関連にも注目し、岐阜県警との情報交換をすすめる方針。(京都新聞)
■市バスと車接触 乗客4人がけが 河原町四条交差点
 30日午後零時35分ごろ、京都市下京区河原町通四条の交差点で、南進中の京都駅行き市バス=舟本一弘運転手(43)=と、北から来て右折しようとした兵庫県出石郡出石町弘原、会社員小野健次さん(28)の乗用車が接触した。市バスが直前に急ブレーキをかけた弾みなどで、乗客約20人のうち下京区の主婦下(80)ら4人が転倒するなどし、腰や顔を打つ軽いけがをした。
 五条署によると、現場の交差点は午前8時−午後9時の間、路線バス以外は右折禁止で、1人で観光に来ていた小野さんは「標識が分からなかった」と話しているといい、原因を詳しく調べている。
 けがをした伏見区の主婦(76)は「突然、急ブレーキがかかって、前の座席にたたきつけられ、眼鏡が壊れた」と青ざめていた。(京都新聞)
■JR西大路駅周辺の放置自転車なくそう 今月から活動本格化 昨秋結成の「美しくする会」 ビラを配り早朝パトも
 JR西大路駅(京都市南区)周辺の放置自転車をなくそうと、昨年秋に初のまちづくり組織「西大路駅周辺を美しくする会」を発足させた地元住民らは、5月から本格的な活動に乗り出す。啓発ビラを配ったり、早朝パトロールなどを通して、駅周辺の環境整備を図る。
 同駅周辺には、駅の高架下に、1978年に設置された440台分の市営駐輪場(無料)があるだけ。年々、放置自転車が増え続け、90年代から、南側の駅改札口をはじめ、歩道沿いに700台前後の自転車があふれる状態が続いている。
 地元住民は「駐輪場を新設してほしい」との要望を京都市に出してきたが、市側は「駅周辺の開発が進み、新しい駐輪場をつくる土地を確保できない」と言い、整備できないままになっている。
 しかし、早期に放置自転車の撤去を願う地元住民らは、同駅周辺のワコールや日本電池など6企業にも呼びかけ、昨年10月に、「西大路駅周辺を美しくする会」を結成。駐輪場の早期建設と放置自転車ゼロを目指していくことになった。
 こうした動きを受けて、市は5月から、同駅北側に160台分の暫定駐輪揚を設置する。合わせて、同会のメンバーは、土日を除く5月13日から22日まで、同駅前で早朝パトと啓発ビラの配布を展開していくことにした。
 地元の祥豊自治連合会の愛下正道会長(84)は「JR以南は、市バスの本数も少なく、乗降客には自転車も必要と思う。しかし、このままでは、車いすも通りにくく、危険。何とか、自転車と共存できるまちづくりを目指していきたい」と話している。(京都新聞)
■「チンチン電車のある風景」 京の思い出語る写真集出版 津市の高橋さん 60年代から熱写 懐かしい350枚
 幼いころを京都で過ごした三重県に住む男性がこのほど、1960年代から70年代にかけて撮影した京都の路面竜車の写真集を出版した。「いつか京都に戻る」との思いを胸に、京都に出向いて撮り続けた「チンチン電車のある風景」。写真の1枚1枚からは、市電などが日常に溶け込んでいた時代の京都が伝わってくる。
 「京都の電車」(トンボ出版・2800円)。自営業高橋裕さん(62)=三重県津市=が撮影した市電、京福電鉄、京津電車などの写真約350枚を掲載している。
 高橋さんは11歳まで京都市上京区で過ごしたあと、家庭の事情で三重県に移住した。物心のついたときから、街中を走る市電などを見て育ったことで、鉄道ファンになったという。
 「昔の思い出であふれる京都が大好き」と、60年にカメラを購入し、仕事の合間に京都を訪れ、市電が廃止される78年まで、路面電車を撮り続けた。
 写真集の大半は白黒写真で、車の少ない繁華街をのんびりと進む市電、三条通を走る京福電鉄の旧型車両などを収めている。周囲の建物や車、通行人らの格好も、読者に懐かしさを感じさせる。
 また、繁華街の四条通を走る市電の写真に「『大丸行った』は、少年時代の自慢話の一つだった」などと、ユーモアのある説明を付けたり、名所案内を記すなど、見るだけでなく読んでも楽しいように工夫している。
 高橋さんは「車社会のせわしなさがなく、路面電車がゴトゴトと走っていた昔の静かな京都に思いをはせてもらえれば」と話している。(京都新聞)
■新幹線線路ボルト外し 計画的な嫌がらせ?
 岐阜県関ケ原町藤下の東海道新幹線下り線でレールの固定ボルト25本が外されていた事件で、同県警垂井署の捜査本部は、線路に侵入するのに工具などを準備しているとみられることや、ボルトの抜き取りが直ちに脱線などの大事故につながらない本数にとどまっていたこと、犯行が前日の深夜から線路の点検が始まるまでの数時間に行われたとみられることなどから、計画的で悪質な嫌がらせの可能性が高いとみて、不審な人物や車両の目撃者を捜すなど捜査を続けている。
 調べによると、29日午後11時10分ごろに現場を通過した最終列車は、線路に異状を感じておらず、30日午前4時半ごろに徒歩で点検をした保線作業員がボルトが外されているのを見つけていることから、捜査本部はこの間の犯行とみている。(朝日新聞)
■声 心なごませる市電復活して 京都市 新木 邦生(中学生 12歳)
 この2月の中学入試の社会の問題で、「各地で最近、市電が後々に復活していますが、それはなぜですか?」という問題があった。僕はそのとき、環境がどうのこうのと思わなかったので、「人々の心をなごませるから」と訳の分からない答えを書いた。あとで思い出してもやっはり訳が分からなかった。
 そして、しばらくたってから、またそのことを思い出し、父に市電についてたずねてみた。すると父は「僕が京都に来てからすぐに市電が廃止されたので残念だった」と言った。そして、祖父や祖母にも聞いてみた。祖父は「車の邪魔にはなるが、排ガスが出ないので、とても良い」と言った。祖母は「とてもなつかしい」と言う。
 僕の考えはこうだ。市電は市バスなどの自動車とちがって、排ガスが出なくて、今、問題になっている地球温暖化のもとの二酸化炭素を少しだけだが減少できるのでとても良い。少しだけやないか、と言われるかもしれないが、その「少しだけ」の積み重ねが、いろいろな問題を解消していくのだと、僕は思う。
 そして、やはり「人々の心をなごませるから」市電を復活して欲しいと思う。(朝日新聞)
■列車妨害予告の郵便物 JR京都駅などに届く ボルト引き抜き事件前の消印
 東京、名古屋、京都、大阪、金沢、新潟などの各駅長あてに「ゴールデンウイーク後半に乗客を巻き込む列車防害をやる」などという内容の手紙が届いていたことがJRの調べで1日までに分かった。
 これに類似した手紙は私鉄の一部にも届いていたという情報もあり、新幹線列車防害事件の岐阜県警捜査本部(垂井署)は広範囲に出されている点を重視し、ボルト引き抜き事件と関連があるかどうかを調べている。
 捜査本部は1日午前、引き続き160人態勢で、前日より範囲を広げて現場付近での遺留品の捜索、不審者の目撃者捜しなどを進めている。
 JRによると、郵送された手紙には差出人名はなく、各駅とも同じような内容だったという。このうち30日昼前、東京駅に届いた文書はあて名が「東京駅長殿」となっており「ゴールデンウイーク中に列車破壊工作を行う」という内容だった。
 JR側から連絡を受けた京都府警によると、JR西日本京都駅に30日に届いた郵便物は「JR京都駅長」あてで、富山県高岡市の高岡郵便局の消印があり、岐阜の事件より前の28日付だった。
 B5判の白紙に手書きで「5月3、4、5日の連休に新幹線や在来線、私鉄の列車を転覆させてやる。2000−3000人の死者が出る。毎月1回やる。1万人になるまでやめない。甘く見るな。必ず決行する」などと記され、差出人の名前はなかった。
 また、JR京都駅などに届いた郵便物と同じ高岡郵便局の消印で、高岡市内の「瑞龍寺」などの放火を予告する文書が4月下旬に同寺や地元新聞に届いていた。
 府警によると、瑞龍寺などに4月下旬に届いた文書も手書きの封書で、同寺などの放火を予告する内容。差出人は「赤いキバ」と名乗っている、という。
 府警など警察当局は、消印の郵便局が同じで、投かん時期も近接しているほか、筆跡が似ている点などに関心を寄せており、関連を調べることにしている。(京都新聞 夕刊)
2日■新幹線妨害予告の手紙 筆跡酷似の工員浮かぶ 投かん先の富山 窃盗容疑で逮捕
 岐阜県関ケ原町の東海道新幹線でレールの固定ボルト25本が外され、東京、大阪、京都などJRの主要駅に脅迫状が送り付けられた事件で、脅迫状の字体が富山県警に窃盗の現行犯で逮捕された工員(49)の筆跡と酷似していることが1日までの同県警などの調べで分かった。
 脅迫状は工員が逮捕された同県高岡市内で投かんされていることから、脅迫状を調べている警視庁や大阪府警などは関心を寄せている。
 富山県警の調べによると、工員は4月29日に高岡市内で駐車中の覆面パトカーから自動車電話を盗んだところを、窃盗の現行犯で逮捕された。地元新聞社に届いた国宝に指定されている同市の寺院の放火予告文やJRに送られてきた脅迫状と工員の筆跡が似ており、同県警は筆跡の鑑定を進めている。
 ただ、工員は東海道新幹線のレールの固定ボルト25本が29日深夜から30日未明にかけて外された事件よりも前に逮捕されていることから、この事件を調べている岐阜県警の捜査本部は、工員が新幹線防害事件に関与している可能性は薄いとみている。(京都新聞)
■窃盗の疑いで逮捕の男聴取 新幹線ボルト外し
 東海道新幹線のレールを固定するボルトが岐阜県内で外されていた事件を示唆すると受け取れる手紙が、JRの東京、大阪、京都など7つの駅に郵送され、富山県警が脅迫などの疑いもあるとして、富山県高岡市の男性工員(49)について関連を調べていることが分かった。工員はボルト事件が発覚する前日の4月29日に窃盗の疑いで逮捕されていた。
 この工員は29日午前、捜査のため高岡市内の空き地に停車中だった県警パトカーから、自動車電話(3万5000円相当)を盗んだ疑いで現行犯逮捕された。JRの駅に届いた手紙の消印が高岡郵便局であり、工員の字体が手紙のものと似ているという。しかし、ボルト事件の実行行為が不可能だったと見られることから、手紙と事件が相前後したことについて、富山県警は「偶然の可能性が強い」としている。(朝日新聞)
■声 車両が変わり障害者不便に 大阪市 藤野 高明(教員 59裁)
 私は、全盲で両手をなくしている障害者ですが、新幹線を利用して一人で旅行することが度々あります。上着を着ているとそでが邪魔になり、何かと不自由なので、席に着くとまず上着を脱ぎ、窓際の帽子掛け(洋服掛け)にかけます。
 ところが、最近乗った列車で、いくら壁を探っても洋服掛けが見つからず、とうとうあきらめて自分のひざの上に置いて過ごしました。後で分かったのですが、服掛けは壁の中に引っ込んでおり、指で引き出して使うようになっていました。
 一般の乗客にとっては、何でもないささいなことが、手の不自由な障害者には、全く使いにくい「不便さ」をつくりだしてしまうのです。設計した人は、壁から突起物をなくし「よかれ」と思ってつくられたと思いますが、私にとっては、またあらたなバリア(垣根)ができてしまったわけです。
 「バリアフリー」に逆行するこのような新型車両の、ちょっとした設計替えにも、障害者への心配りがあればありがたいと思います。私が声を出さなければ、ほとんどだれも気がつかないようなささいなことかもしれません。しかし、そういうささいなことの積み重ねが、生活を快適にもまた不便にもするので、あえて筆をとりました。ご一考いただけれは幸いです。(朝日新聞)
■駅や空港は大混雑 GW きょうから4連休
 ゴールデンウイークの3連休を控えた2日、JR東京駅や羽田空港では朝からふるさとや行楽地などへ向かう家族連れらで混雑した。
 今年の連休は暦の上では4月25日から始まったが、曜日配列の関係で実質的には2日から5日までの4日間という人が多い。
 JR東京駅では早朝から大きなかばんを抱えた家族連れや若者らが次々と新幹線に乗り込んだ。
 福島県白河市の実家に家族4人で帰るという横浜市の会社員有賀徳郎さん(28)は「今年の休みはカレンダー通り。車で帰ることも多いが、今回は渋滞を避けるため新幹線にした。両親も楽しみにしているのでゆっくりして、子供たちを自然の中で遊ばせたい」と話していた。
 JR各社は岐阜県関ケ原町で起きた新幹線レールのボルト引き抜き事件を受け、1日夜から新幹線沿線での警戒を続けた。休みの職員も出勤して、見通しが悪く不審者が発見しにくい場所で監視に当たった。
 羽田空港から各地へ向かう飛行機は、午前中はほぼ満席に近いものの、午後は空席の便も。全日空の担当者によると「今日が混雑のピークだが、例年に比べると少ない」という。(京都新聞 夕刊)
■JR東海など巡回を強める 新幹線ボルト外し
 岐阜県関ケ原町の東海道新幹線でレールを固定するボルトが抜かれた事件で、JR西日本やJR東海などは1日までに巡回を強化するなどの対策を打ち出した。運輸省も同日、鉄道事業者に警戒を強めるように求める通達を出した。
 事件のあった東海道新幹線は、大型連休中は1日に約40万人が利用すると見込まれる。JR東海は1993年、ワイヤロープやチェーンを使った3件の妨害事件が相次いだ後、「要警戒地域」を拾い上げ、重点的な警戒を続けてきたという。(朝日新聞 夕刊)
■市バスに当て逃げ 神戸、乗客2人けが
 2日午前8時35分ごろ、神戸市兵庫区水木通一丁目の市道交差点で、直進中の神戸市バス(乗客約20人)と、右側の車線から左折しようとした乗用車が接触し、乗用車はそのまま逃げた。バスは急ブレーキをかけ、乗客の女性2人が転倒して腰などを打ち、同市内の病院に運ばれた。兵庫署が道交法違反(あて逃げ)の容疑で逃げた車の行方を追っている。(朝日新聞 夕刊)
3日■事件前日に不審者 ボルト引き抜き JRが徒歩点検指示
 岐阜県関ケ原町の東海道新幹線でボルト25本が引き抜かれた列車防害事件で、発見された4月30日の前日の昼ごろ、名古屋駅周辺の新幹線施設内に不審な男性が侵入したため、JR東海が急きょ各保線所に徒歩による全線一斉点検を指示していたことが2日、JR関係者などの話で分かった。
 今回のボルト引き抜きは、この一斉徒歩点検の中で見つかった。通常は全線を徒歩で点検するのに数日間かかり、ボルト引き抜き現場については本来30日の徒歩点検の対象区間に含まれていなかったという。
 安全管理では、徒歩点検とは別に確認車が毎日始発列車までに全線を走行するなどして異常の有無を調べているが、JR東海は徒歩点検の強化の検討などを迫られそうだ。
 不審男性の侵入は岐阜県警垂井署捜査本部も把握、防害事件との関連があるかどうか調べている。
 侵入したのは若い男性で走行中の新幹線の運転士が発見し作業員らが駆け付けたが、さくを乗り越えてそのまま逃げた。施設内から工具などが盗まれるような被害はなかったという。
 徒歩による点検は毎日実施されているものの、通常は点検対象は各保線所管内のうちの一定区間。その日ごとに点検の対象を変えながら数日間で全線を点検するという。
 しかしJR東海は、ゴールデンウイークで安全管理を特に強化していた時期に不審者が施設内に侵入したことを重視、徒歩による全線一斉点検を指示したとみられる。(京都新聞)
■現場近くにレンチ 犯行用? 鑑定急ぐ
 新幹線のボルトが引き抜かれた事件で、同県警垂井署捜査本部は2日までに、現場近くの山中で工具の一種、レンチとジャッキを発見、犯行に使われた可能性が高いとしてボルトの頭についたきずと照合するなどの鑑定作業を進めた。
 調べでは、レンチは長さ約40a。線路を挟んで南北500bの範囲の捜索で見つかったという。
 関係者によると、新幹線のまくら木はコンクリート製で、使われているボルトの山の間隔が広いため、大きめのレンチなら1分ほどでボルトを外せる、という。
 事件は保線作業員の通らない時間帯を狙い「高速カーブ」の外側のボルトを連続して抜くなど、新幹線の運行システムや線路の保線状況などに詳しい者の計画的犯行の可能性が高いとみられることから、JR関係者からも事情を聴いている。(京都新聞)
■新幹線ボルト外し 発見は緊急見回り中 前日の線路侵入事件で
 岐阜県関ケ原町で4月30日にあった東海道新幹線の往来妨害事件で、線路のボルト25本が外されているのを見つけたJR東海による見回り点検は、前日に現場から約40`東の線路内に不審な男が立ち入り、保線所員らに追われて逃走する事件があったことから、緊急に指示して行ったことがわかった。始発前に発見したため、当日の運行への影響は、最大5分程度の遅れだったが、発見されないまま列車が走り続けた場合、レールにゆがみが生じるなど、さらに大きな影響が出る恐れがあった。
 関係者によると、不審者が線路内に立ち入ったのは、名古屋−岐阜羽島間の愛知県稲沢市内。4月29日正午過ぎ、東京方面に向けて通過した「ひかり」の運転士が、線路わきの作業用の小道を歩いている若い男を見かけ、指令室を通じて愛知県警や保線所に連絡した。
 すぐに保線所員らが現場に駆けつけ、いったん20歳代ぐらいの男を捕まえたが、男はすきをみて逃げ出し、線路わきのフェンスによじ登り、有刺鉄線を越えて逃げたという。
 JR東海はその日のうちに、関ケ原町の現場のような人目につかず線路内に侵入される恐れのある場所を中心に、毎日始発前に行っている確認車による安全点検に加えて、何日かおきに行っている徒歩での見回り回数を増やすことにした。事件当日の30日朝の見回りは、この指示によって追加されたものだったという。
 関ケ原町のボルト外し事件を捜査している岐阜県警の捜査本部でも、この情報を分析したが、男の様子などから今回の事件との関連性は薄いとみている。(朝日新聞)
■現場近くで工具類発見
 岐阜県関ケ原町の東海道新幹線下り線でレールを固定するボルト25本が抜き取られていた事件で、同県警垂井署の捜査本部が現場南側の山林からパイプレンチや油圧式ジャッキを発見していたことが2日、わかった。外されたボルトの頭の部分に、JRが使う工具では付かない傷が付いていたことなどから、捜査本部は発見された工具と傷との関連を調べている。
 現場付近の線路は切り通しとなった部分を通り、斜面の上に侵入を防ぐためのフェンスが設置してある。レンチなどが見つかったのはそのすぐ外側の山林。付近に民家などはないが、山林の下までは車で入れる。
 これまでの調べなどによると、抜き取られたボルト25本はすべて同じサイズで、直径25_の頭の部分に傷が付いていた。捜査本部は抜き取る際に付いた傷とみている。(朝日新聞)
4日■新富士駅 こだま、通過線に 指令ミスで乗降できず
 3日午前11時45分ごろ、静岡県富士市の東海道新幹線新富士駅構内で、停車予定の名古屋発東京行きこだま460号が、ホームがない通過列車のための上り本線に進入し停止した。列車は乗客の乗降の扱いをせずに再び発車。同駅で降りる予定だった乗客51人は次の三島駅で降り、名古屋行きに乗り換えて新富士駅に戻った。
 JR東海によると、東海道新幹線は、同日午前11時前後に発生した伊豆半島を中心とする震度4の地震のためダイヤが乱れていた。復旧作業中、運行を管理する総合指令室(東京)の指令員が、コンピューター画面上に示された列車の順序を見誤り、新富士駅を通過するひかりとこだま460号とを混同した。
 制御装置に、「こだまが同駅を通過する」との間違った指示を出したため、この指示に従ってこだま460号が通過列車用の線路に入って停車した。地震で新横浜−静岡間で約20分間運転が停止された影響で、こだま460号は運行再開後に約15分遅れで新富士駅に差し掛かった。(京都新聞)
■雨で関西線一時運休
 JR西日本は3日午前8時42分、関西線月ケ瀬口駅(京都府相楽郡南山城村)の雨量計で1時間当たり降雨量が30_に達したため、大河原−島ヶ原で運転を見合わせた。同10時1分に解除したが、この間の加茂−伊賀上野など上下列車計4本を運休。後続も正午過ぎまで徐行運転したため上下計13本が最高1時間43分遅れ、約1000人が影響を受けた。(京都新聞)
■新富士駅停車せず こだま、150人に影響
 3日午前11時40分ごろ、静岡県内の東海道新幹線新富士駅構内で、停車するはずだった名古屋発東京行き「こだま460号」が、通過列車用の本線に入り、非常停止した。
 JR東海によると、直前にあった地震後に運転を再開する際、指令員が通過の「ひかり」と勘違いして、運行管理のコンピューターに指示を出したためで、こだまは次の三島駅まで向かい、51人が下り列車に乗り換えた。新富士駅で乗車を予定していた人も約100人いたという。(朝日新聞)
5日■レンチの使用濃厚 新幹線線路抜き取り ボルトの傷と一致
 岐阜県関ケ原町の東海道新幹線下り線でボルト25本が引き抜かれた列車防害事件で、ボルトには現場付近で見つかったパイプレンチで挟んだとみられる傷が付いていたことが4日、同県警垂井署の捜査本部の調べで分かった。
 通常の保線作業では、見つかった型のレンチを使用することはなく、こうした傷も付かないことなどから、捜査本部は見つかったパイプレンチが犯行に使用された可能性が強いとみて、レンチに付着した金属片の鑑定を進めるなど最終的な確認を急いでいる。
 調べでは、レンチは長さが約40a。ボルトを挟む部分は可変式ですべり止めのため山形の溝が刻んである。すべり止め部分の形状が引き抜かれたボルト頭部の傷とほぼ一致した。(京都新聞)
■JR片町線に置き石 京田辺 電車はね、3分停車
 4日午後7時ごろ、京田辺市南田、JR片町線南田踏切の北約10bの線路上に、約8a大の石1個が置かれているのを走行中の同志社前発新三田行き電車の運転士が発見、緊急停止した。乗客15人らにけがはなかった。電車はその場に3分間停車、レールや車体に損傷がなかったことなどから運転を再開した。京田辺駅ですれ違い待ちをしていた対向電車も約3分遅れた。田辺署では、悪質ないたずらとみて調べている。(京都新聞)
6日■新幹線ボルト引き抜き 前日深夜に不審車
 岐阜県関ケ原町の東海道新幹線下り線でボルト25本が引き抜かれた列車防害事件で、事件が発覚した4月30日の前日の深夜に、現場付近で不審な乗用車が付近の複数の住民に目撃されていたことが6日までに、岐阜県警垂井署の捜査本部の調べで分かった。また、現場近くの線路をまたぐ陸橋や線路沿いなどで採取された足跡の中に、保線作業員以外の不審な足跡が含まれていたことも分かった。
作業員以外の足跡も
 4月25日に現場付近で雨が降っており、足跡は雨がやんだ後に付いたとみられる。捜査本部は実行犯の足跡の可能性もあるとみて、靴の特定を急いでいる。
 調べによると、29日の深夜、現場北側を走る国道21号沿いの駐車スペースに、付近の住民が普段は見かけない白っぽい乗用車が止まっているのを、複数の人が目撃した。
 目撃場所はボルトが引き抜かれた現場から半径500b以内の所だったという。
 捜査本部は、不審な車や人物を目撃した人がほかにいないか、現場周辺の聞き込みを強めている。
 また、近くを走る名神高速道路のインターの通行券や、通行車両を写したビデオのテープなどを回収し、不審車両の絞り込みを急いでいる。
 不審な車や人物の目撃情報は、これまでに20件近くが捜査本部に寄せられている。(京都新聞 夕刊)
■東西線延伸で鉄道事業免許 来秋にも本格着手
 京都市の地下鉄東西線の六地蔵−醍醐間(2.4`)延伸について、運輸大臣の鉄道事業免許が6日午前、下りた。今後、京都市は都市計画決定や用地買収を進め、来秋にも本格工事に着手、2004年10月の開通を目指す。
 東西線は昨年10月に醍醐−二条間(12.7`)が開業。六地蔵(宇治市)への延伸が完成すれば、宅地開発が進む京都市東部とJR奈良線、京阪宇治線を結ぶ鉄道ネットワークが形成され、洛東地域の公共輸送力がアップする。
 建設費は712億円を見込む。ルートには、六地蔵と石田(伏見区)の2駅が設置される予定。
 京都市は3月に東西線延伸の免許を運輸省へ申請。4月28日に運輸審議会から認可を適当とする答申を得ていた。(京都新聞 夕刊)
■21世紀まで971日 五新鉄道 銀幕が映す夢・挫折
 「阪本線、もめとるみたいやな」
 「うん。村の人ら同士でも思うこと、違うみたいで」
 薄暗い台所に、嫁と姑(しゆうとめ)の交わす言葉が重く響く−仙頭(河浦)直美監督の映画「萌の朱雀(もえのすざく)」の一場面だ。
 五新鉄道(阪本線)は、「幻の鉄道」といわれる。大正時代、紀伊半島(奈良県五条市−和歌山県新宮市)を縦断する形で計画され、1939年(昭和14年)に工事が始まった。路盤やトンネル、橋りょうなど、奈良県側の一部が出来上がったが、列車は一度も走ったことがない。
 「萌の朱雀」は、五新鉄道に重ね合わせて、鉄路に託した夢が破れ、挫折した人たちの姿を描いている。
 この映画で仙頭さんは昨年、カンヌ国際映画祭の新人監督賞(カメラドール)を受賞した。舞台になった西吉野村は、ビッグニュースに沸き返った。なにしろ、人口4300人の村あげて撮影に協力し、村の人たちも出演しているのだから無理もない。
 姑役で出演した和泉幸子さん(72)は、ずっと村で暮らしてきた。
 「10代の終わりごろ、村は工事の人たちで活気にあふれていた。それがいまじゃ、若い人はみんな村を出ていってしまってねぇ。戦争で工事が中断しなけりゃ、きっと変わっていたね」
 長年抱き続けた思いが、村の人たちの演技に、プロの役者にはない陰影をつけた。
 3年前の夏、仙頭さんはロケハンで村を訪ねている。ほぼ同じころ、国鉄清算事業団から鉄道用地の移管、いわば五新鉄道の「死亡通知」が、村に伝えられた。
 「ひとつの夢が消え、ひとつの夢が花咲こうとしていたんですね」。仙頭さんを案内した村企画財政課係長の山本修二さん(40)は、運命のいたずらを振り返る。
 路盤は65年から、バス専用線として利用され、JR五条駅と村役場のある城戸の間に西日本ジェイアールバスが走る。1日16.5往復、平均乗降客は250人。そのバスにも廃止の話が持ち上がり、姿を消す日は遠くない。
 仙頭さんは「暗いトンネルの向こうに、きっと何かがある。現実を受け止め、そこから始める。それが人間の素晴らしさじゃないですか」と話している。(喜田 洋)
 五新鉄道 1922年、鉄道敷設法により「敷設スヘキ予定鉄道線路」とされ、39年に五条−阪本間着工。44年、太平洋戦争で工事中断。60年、五条−城戸間約11`の路盤が完成、65年7月から国鉄バスが運行開始。90年2月、五新鉄道期成同盟会解散。(朝日新聞 夕刊)
7日■旧国鉄債務、林野で衆院に特別委設置 委員長に大原氏内定
 衆院議院運営委員会は6日午後の理事会で、旧国鉄債務処理法案と国有林野事業改革法案を審議する「日本国有鉄道清算事業団債務処理および国有林野事業改革等特別委員会」を設置することで合意した。7日の本会議で正式に決める。委員長には大原一三元農相が内定した。
 民主党など野党側が「債務処理の一括審議が適当」として特別委設置を要求したのに対し、審議促進を図りたい自民党が折り合った。両法案は7日の本会議で趣旨説明と質疑を行い、審議入りする。
 大原一三氏(おおはら・いちぞう)東大卒。国土政務次官、衆院農水委員長、農相。73歳。比例九州、衆院当選6回(旧小渕派)(京都新聞)
■えっ市バスにムカデが出た 中京・児童刺され軽傷
 7日午前7時50分ごろ、京都市中京区千本通御池を走行中の市バス=立命館大学行き、竹川寿次運転手(50)=の中で、通学途中の西京区の小学1年の男児( 6つ)が首筋付近をムカデに刺された。竹川運転手はすぐにバスをとめ、近くのJR二条駅の駅員を通じて119番通報した。男児は、救急車で近くの病院に運ばれて、手当てを受けた。軽傷だという。
 市交通局によると、竹川運転手は、救急車の到着まで男児に付き添っていた。車内でムカデが見つからなかったため、乗客約25人には後続のバスに乗り換えてもらった、という。
 市青少年科学センターによると、変温動物のムカデは冬場はじっとしていて、春先からエサを求めて動きが活発になるといい、「つかんだり、踏んだりして刺激しない限り刺さないが、刺された時は冷やして、早めに専門医にみてもらうように」と話している。(京都新聞 夕刊)
■携帯電話自粛の社内放送にムッ 駅長脅し列車止める 恐喝未遂容疑で逮捕
 携帯電話の使用自粛を求める放送が流れたことに腹を立てて駅長を脅し、列車を止めたとして、広島北署は7日、広島市安佐南区古市四丁目、無職広野昌人容疑者(51)を恐喝未遂、威力業務妨害などの疑いで逮捕した。
 調べでは、広野容疑者は3月26日正午ごろ、JR可部線の車内で携帯電話を使っていて「列車内での携帯電話の使用はほかのお客様の迷惑になるのでご遠慮ください」との放送が流れたことに腹をたて、同区の古市橋駅で下車。近くの飲食店まで可部駅の駅長(48)を呼び出し「頭にきた。誠意を見せろ」などと脅した。さらに「誠意を見せんのなら、列車を止めてやる」と再び、古市橋駅に戻り、午後2時45分ごろ、ホームから線路内に飛び降り、可部発広島駅行き普通列車(2両編成)を約3分間停車させた疑い。(朝日新聞 夕刊)
8日■乗車人員3%減(昨年比)G・W KTRの輸送状況
 北近畿タンゴ鉄道(KTR)=事業本部・宮津市は7日、ゴールデンウイーク中(4月24日−5月5日)の輸送状況を発表した。乗車人員は昨年同期比で3%減の5万4600人と伸び悩んだ。先月25日に弥栄町鳥取にオープンした農村型リゾート公園「丹後あじわいの郷(さと)」が入園者5万人を超えるなど、沿線の行楽地への人出はまずまずだったが、マイカー利用が多かったのが響いた。
 今年の連休はほぼ好天に恵まれたものの、前半(24日−30日)は飛び石連休の影響から、2万7300人と昨年比で5%減少、後半(1日−5日)も同様の人数で、1%及ばなかった。昨年の同期間の乗客人員は一昨年に比べて18%減ったが、今年はそれをばん回することが出来なかった。
 天橋立駅の入り込み客数は7400人で、昨年と同数だった。4日、5日は、Uターン客が集中したが、5日の新大阪行き特急「タンゴ・ディスカバリー16号」が乗車率185%を記録したほか、大きな混雑は無かった。(京都新聞)
■旧国鉄債務処理 法案審議 前途険しく JR各社なお反対 継続審議なら資金綱渡りに
 約28兆円にのぼる旧国鉄の債務処理法案の国会審議が7日、ようやく始まったが、重要法案が目白押しなうえ、JR各社が処理策への協力を拒否し続けており、今国会での法案成立は難しい情勢だ。今年度予算は法案に沿って10月1日に国鉄清算事業団が解散、政府が債務を引き継ぐことを前提に編成されている。このため法案が継続審議になれば、10月以降、清算事業団は綱渡り的な資金繰りを迫られそうだ。
 債務処理法案などには、財源確保のために郵便貯金特別会計から一般会計へ5年間で計1兆円を繰り入れることや、たばこ特別税の創設、旧国鉄からJRに移籍した職員の旧国鉄在籍時の年金積み立て不足分としてJR側に約3600億円を追加負担させることが盛り込まれている。
 これに対しJR側は「民間企業となったJRに負担を強いるのは国鉄改革の理念に反する」として、反対の姿勢を変えていない。
 国会でも野党が反対、自民党内の一部からも法案修正を求める声が出ている。
 審議日程も厳しい。残された会期1ヵ月の間に、補正予算案、財政構造改革法改正案、中央省庁等改革基本法案、金融システム改革関連法案など重要法案が並ぶ。「反対の声がある債務処理法案を、無理して審議する必要はないという空気が自民党内にある」と運輸省幹部も認める。
 債務の引き純ぎ作業には1ヵ月かかるため、予定通り10月1日に清算事業団を解散するためには、9月1日までに法案が成立しなければならない。法案成立がこれに間に合わなければ、清算事業団が借金を重ねるか税金を投入するしかない。(朝日新聞)
■遺留品の製造 奈良と東京 新幹線ボルト抜き事件
 岐阜県関ケ原町の東海道新幹線でレールを固定するボルト25本が引き抜かれた列車妨害事件で、現場近くの雑木林で見つかったパイプレンチは奈良県内の機械工具メーカーが製造した市販品で、油圧式ジャッキは東京都内の大手メーカー製であることが8日までに、岐阜県警垂井署捜査本部の調べで分かった。
 調べによると、パイプレンチは全長が約50aで柄の部分は赤色。ボルトを挟む部分は可変式で滑り止めのため山形の溝が刻んである。
 油圧式ジャッキはオレンジ色をしたボトル型。10d程度のものを持ち上げられるタイプで、製造番号からこの1年以内に製造されたものと分かった。(京都新聞 夕刊)
9日■JR7社、なお協力拒む
 旧国鉄の債務処理をめぐるJRの追加負担問題で、藤井孝男運輸相は8日、JR西日本の南谷昌二郎社長と会談し、協力を要請したが、南谷社長は「債務処理法案には反対せざるをえない」と述べた。藤井運輸相は4月中旬から、JR7社の社長に個別に協力を要請してきたが、7社とも協力拒否の姿勢を変えなかった。(朝日新聞)
11日■京都市営地下鉄2駅 証明書発行コーナー きょうから業務
 京都市は11日、市営地下鉄の2つの駅の構内に「市証明書発行コーナー」を開設し、住民票の写しや印鑑登録証明書などの発行業務を始める。市が地下鉄の駅のような交通ターミナルで証明書を発行するのは初めて。受付時間もほかの発行コーナーなどより2時間遅い午後7時まで。
 発行コーナーが開設されるのは地下鉄烏丸線の四条駅と竹田駅。四条駅コーナー(075・343・3782)は南改札口横、竹田駅コーナー(075・642・0712)は東口定期券売り場横に設ける。月曜日から金曜日の午前8時半から午後7時まで(祝日、年末年始除く)。(朝日新聞)
■台車設計した社員書類送検 広島・作業台車暴走
 広島市安芸区の新交通システム「スカイレール」の建設現場で昨年8月、作業用台車が暴走して作業員2人が死亡、7人が重軽傷を負った事故で、広島県警の捜査本部は11日、台車を設計した「アイメックス」(本社・同県因島市)の電気統括部副部長、円福寺英昭容疑者(57)ら同社員3人を業務上過失致死傷の疑いで広島地検に書類送検した。(朝日新聞 夕刊)
12日■地下鉄の2駅でも開設 四条・竹田 市証明書の発行コーナー
 住民票の写しや印鑑登録証明書が駅構内で手軽に取得できる「京都市証明書発行コーナー」が11日、市営地下鉄烏丸線四条駅(下京区)と竹田駅(伏見区)の2ヵ所に開設された。通勤通学などで多くの市民が利用する地下鉄構内にコーナーを設けるのは初めて。利用時間も午前8時30分から午後7時までと、従来より延長している。
 同コーナーは、ともに駅の定期券販売所に隣接した目立つ場所に設置された。しかし、まだ知名度は低く、偶然通りかかった市民が足を止め、壁に張った利用案内を読んでいた。
 同コーナーで取り扱うのは、住民票や住民記載事項証明書、印鑑登録証明書、外国人登録済証明書、納税証明書などオンライン処理できる証明書関係で、戸籍関係や印鑑登録業務は行わない。また、土、日曜と祝日、年末年始は休業する。
 市は今後も各ターミナルで発行コーナーの開設を目指し、来年度は山科駅を予定している。(京都新聞)
■鉄道に自転車も”同乗”OK 地球温暖化対策に一役 まず2社で半年間試行 7月から運輸省がモデル事業
 鉄道に自転車を載せて買い物を−。運輸省は12日までに、鉄道車両に乗客が自転車を持ち込んで目的地まで運ぶモデル事業を今年7月から実施することを決めた。自家用車に比べ、二酸化炭素の排出量が約10分の1と少ない鉄道の利用を促進して、地球温暖化対策に一役買おうという狙い。
 モデル事業に名乗りを上げている富士急行(山梨)など数社のうち2社を選び、約半年間実施する。需要が見込めるなら来年度以降、鉄道事業者に積極的に導入するようPRしていく考えだ。
 鉄道車両への自転車持ち込みは、JR北海道や明知鉄道(岐阜)、三岐鉄道(三重)など一部で導入されているが、サイクリング車だけを対象としたり、夏のレジャー期に限定されているケースがほとんど。
 今回のモデル事業は、利用目的を限定せずに、旅行や通勤、買い物などに使えるようにする。原則として毎日持ち込めるようにするが、混雑時間帯は避ける予定。
 鉄道会社には、自転車専用の車両を連結したり、各車両に自転車用のスペースを設置してもらったりして最適な方法を検討。利用者にもアンケートして問題点を探る。(京都新聞 夕刊)
13日■オピニオン解説 事故の「予兆」なぜ生かせなかった… 「異常」報告されず 将来のため真相に光を 信楽鉄道、惨事から7年
 なぜ、あの事故を、防ぐことが出来なかったのか。
 滋賀県の山あいを走る信楽高原鉄道で、1991年に起きた列車正面衝突事故から、14日でまる7年になる。信楽発の高原鉄道列車と京都発のJR西日本臨時列車「世界陶芸祭号」が単線上でぶつかり、死者42人、重軽傷者は614人に上った。原因や責任を問う刑事、民事裁判はいまも続いている。
 「真相を知りたい」。法廷で証言を聞きもらすまいとする遺族を見ると、胸が痛む。
 車両がひしゃげた現場、捜査、裁判取材を通じて悔やまれるのは、「予兆」を生かせなかったことだ。
 あの日、私は滋賀県警本部で取材をしながら動揺していた。陶芸祭を見に行く妻の両親を朝、車でJR大津駅まで送っていた。会場に行くには県道を通るバスもあったが「鉄道の方がいい」と勧めた。
 両親は草津駅でJR臨時列車に乗り換えようとホームにいたが、満員状態で1本後の列車にして間一髪、免れた。家に電話して妻からそう聞いた時、肩の力が抜けていくのを感じた。
 5月14日午前10時25分ごろ、高原鉄道は信楽駅の信号が赤なのに、対向のJR臨時列車の位置など安全を確認しないまま発車した。
 その11日前の5月3日にも、高原鉄道は同じ信楽駅の信号トラブルで赤発車していたことが分かった。この時は、行き違い場所のJR臨時列車側の信号が赤だったため、惨事に至らなかったにすぎない。14日の大事故につながる予兆はあったといえる。
 予想を上回る鉄道利用、導入されたばかりの信号システム、ダイヤ順守のあせり…など事情はあったが、安全を無視した高原鉄道の非は否定しようがない。
 ただ、裁判が進むにつれて明らかになったことがある。その一つは、5月3日に運転した2人のJR運転士が、どの信号機かは争いがあるが、高原鉄道線内で信号トラブルが起きていたことを知っていたことだ。
 だが、運転士からJRに報告は上がっていなかった。JR運転士は「異常時の対応はすべて信楽高原鉄道とする、と教育を受けており、高原鉄道の責任者は(信号トラブルを)知っていたから」と証言した。
 JR運転士を責めるのは酷かもしれない。だが、たとえ他社線でも乗り入れている以上、現場で見聞きした「異常」をすくい上げることができていれば、あるいは事態は変わっていたかもしれない。
 裁判で、捜査資料が順次開示されている。それは多くの尊い命を失った悲しみの財産だ。事故当初、胸におりのようにたまった「なぜ」を明らかにするものが数多く出てきている。
 発生当初には報道しきれなかった事故の全体像に光をあてたい。この7年の間に滋賀から京都に転勤し、担当は変わったが、その思いで可能な限り裁判所に足を運んできた。
 起訴された3人の高原鉄道関係者を処罰することだけでは惨事は防ぐことはできない。何が起きたのか。丹念に追い、細部を積み上げて事故の背景を明らかにしなければならない。
 信楽事故後、遺族や学識者らは「鉄道安全推進会議」を発足させた。メンバーは今年2月にオランダで開かれた世界運輸安全会議に参加した。私も会議の模様を取材した。スウェーデンの事故調査委員長は死者852人を出した「エストニア」号の惨事の前に、同様のフェリー事故が起きており、予兆が見落とされたと指摘した。
 遺族は言う。「事故で奪われた命はかえってくるものではないが、悲惨な犠牲を将来に生かすことはできます」。これからも地元紙として、歴史の記録者の一人として、信楽事故にこだわり続けたいと思う。(京都新聞)
14日■JR西大路駅周辺 放置自転車なくそう 美しくする会 チラシ配りアピール
 JR西大路駅(南区)周辺の放置自転車をなくそうと13日早朝、駅周辺の住民や企業、行政でつくる「西大路駅周辺を美しくする会」のメンバーが、自転車で通勤、通学する会社員や学生にチラシを配り、美化と放置自転車追放をアピールした。
 この日、駅北西側に暫定駐輪揚(160台)がオープンするのを機に、同会が初めて行った。
 メンバー30人は午前7時に同駅前に集合、小雨の降る中で、自転車通勤、通学の人に、放置自転車追放などを訴えるチラシを手渡し、放置された自転車のかごにチラシを投げ込んだ。さらに、設置されたばかりの暫定駐輪場へ自転車の誘導や、放置自転車の整理、ごみ拾いなども行って駅周辺を美しくした。
 同会の愛下正道会長(84)は「乱雑に放置された自転車が減って、成果があったようだ。今後もねばり強く活動して、駅周辺の環境美化に取り組みたい」と話している。
 同駅周辺には市営駐輪場(440台、無料)もあるが、1990年代初めから放置自転車が増え、最近では駅改札口や歩道沿いに自転車があふれて、車いすなどの通行の防げになっていた。(京都新聞)
■京都市バス また人心事故 対応迫られる交通局 先月からはや4件 事故の運転手を再教育
 13日午前9時すぎ、伏見区横大路の市道で、京都市交通局の市バス=松田敏行運転手(58)=が、信号待ちで停車中の2dトラックに接触し、トラックに乗っていた3人が首や肩を打つ軽いけがをした。市バスには乗客が4人いたが、けがはなかった。昨年から相次ぐ事故を受け、市交通局は「お客様を大切にします」と書いたプレートの車内掲示など、さまざまな改善策を始めるが、今年度に入って4件目となる人身事故で、改めて対応が問われそうだ。
 13日の事故で伏見署は、松田運転手が周囲をよく確認していなかったのが原因とみて調べている。
 先月は3件の人身事故が起きた。6日昼ごろ、東山区役所近くの東大路通で、乗用車が追い越し車線から市バスの前に入ろうとして接触、乗客4人が軽いけがを負った。同13日には左京区の北山通で市バスが減速中、乗客の小学1年生の男児が転倒して軽いけがをし、また同日夕方には、上京区の烏丸今出川交差点で市バスが乗用車に追突する事故を起こし、乗客2人が軽いけがを負った。
 先月15日の定例会見で桝本頼兼市長は、事故について「市民のみなさまにご迷惑をおかけして申し訳ない」と陳謝し、サービス改善策として市バスの車内に「お客様を大切にします」といったスローガンと運転手の氏名を書いたプレートを掲げる、と発表した。
 プレートは「お客様を大切にします」「親切な応対に努めます」「安全運転に努めます」の3種類。縦10a、横25aで、運転手の氏名も大きく記される。6月から運転席後背部の停車表示灯上部に掲げられる予定。「氏名を大きく掲げると、乗客の反応が運転手一人一人に返ってくる。安全を確保する職務の重大さを自覚することにつながる」と市交通局は期待する。
 今年度から、人身事故を起こした運転手に、滋賀県湖東町の民間交通安全研修施設「クレフィール湖東」での1泊2日の研修を課し、独自のカリキュラムで再教育に取り組む。
 また、昨年6月に市バスが乗客の腕を後部ドアにはさんで引きずる事故が起きたのを受けて「タッチセンサー」を全車に取り付けた。ドアの端のクッションゴムの中に取り付けられ、万一乗客の手をはさんだ場合、自動的にドアが開く。
 市交通局によると、過去5年間で、市バス側に責任があるとみられる事故は1993年度299件、94年度363件、95年度321件、96年度295件、97年度227件と推移し、94年度以降、減少傾向にある。事故の内訳を公表されている96年度のデータでみると、295件のうち人身事故は126件で42.7%を占める。また同年度の負傷者数165人のうち、53人は急ブレーキが原因で車内でけがをしている。(朝日新聞)
■信楽鉄道事故法要 7年目の祈り 真相見えずなお歯がゆさ
 犠牲者42人を出した信楽高原鉄道列車衝突事故から丸7年目を迎えた14日、滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬の事故現場で、同鉄道と遺族の会による法要がそれぞれ営まれた。遺族約40人をはじめ、同鉄道や町などの関係者ら計約60人が追悼の祈りをささげた。
 同鉄道の法要は午前10時から始まり、北川啓一社長や杉森一夫町長らが、犠牲者の名前が刻まれた慰霊碑へ献花した。次いで読経が響くなか、参列者が次々と焼香した。同10時半からの遺族の会の法要では、事故発生時の10時35分に全員が1分間の黙とうをささげた後、献花や焼香を行い、静かに手を合わせていた。
 法要を終えた北川社長は「遺族の方の気持ちを忘れず、今後も地域の足として頑張りたい」と述べた。また、遺族の会の吉崎俊三世話人は「事故の真実が見えないはがゆさは、今も変わらない」と厳しい口調で語った。
 同事故をめぐっては現在、大津地裁で業務上過失致死傷などに問われた同鉄道関係者らの審理が続いている。また、大阪地裁でも9遺族が、JR西日本と同鉄道に損害賠償を求めた民事訴訟が係争中。(京都新聞 夕刊)
■信楽鉄道事故 7周年で法要
 信楽高原鉄道(本社・滋賀県甲賀郡信楽町)とJR西日本の列車が衝突、死者42人と重軽傷者約600人を出した列車事故から7周年を迎えた14日、信楽町黄瀬にある事故現場では、遺族と同鉄道関係者らが法要を営んだ。
 法要は、事故現場前の慰霊碑で開かれ、事故の起きた午前10時35分には遺族ら約40人が黙とう。犠牲者のめい福を祈った。「遺族の会」の吉崎俊三代表(64)は「事故は風化する方向にあっても、遺族の無念さは変わることはない。事故の再発防止が我々に課せられた使命」と述べた。(朝日新聞 夕刊)
15日■市バス・地下鉄、利用調査へ 京都市交通局 東西線開業後の乗客動向探る 来月、全路線で実施
 京都市交通局は、地下鉄東西線開業に伴うバス系統見直し後の乗客動向を把握するため、市バス・地下鉄の全系統、全路線の利用実態調査を来月、実施する。利用者の具体的な声を集めるためのアンケート調査も併せて行う。こうした大がかりな実態調査は10年ぶりで、交通局では「結果は、今後の運行に具体的に生かしていきたい」としている。
 市バスの利用調査は、来月2、4、9日の3日間実施。69系統すべての路線で、始発から最終までの利用客の動向を調べる。
 各車両の乗降口に調査員を配置し、乗客に調査カードを配布、下車時に回収する。調査カードに示された乗車地、時間帯、乗り継ぎ状況、乗車券の種類などの項目について、調査カードの該当する部分を手で切り取って、調査員に渡してもらう。
 地下鉄の調査は16日に実施。全駅の改集札口で、調査員が乗車・降車駅や利用時間帯などを記したカードを配布、下車時に回収する。
 交通局では、乗客数や乗降車地、利用時間帯が自動的に記録できる計数機を備えたバスを一部路線に導入しているが、どのように乗り継ぐかについては把握していない。今回は、特に乗り継ぎの動向を重点に調査する。こうした全系統・路線の調査は88年以来という。
 一方、アンケート調査は来月下旬に、無作為に選んだ16歳以上の市民3万人を対象に、郵送方式で実施する。平日・休日の外出先や、使用する交通機関のほか、市バス・地下鉄を利用する理由、利用しない理由などについて聞く。
 交通局は、これらの調査に約1億円の費用を見込んでおり、「調査結果の分析などをふまえ、旅客流動の実態にあわせた効率的な運転計画の見直しに取り組んでいく」としている。(京都新聞)
■鉄道事故 独立調査機関設置を 信楽で安全推進会議 法制化向け方針
 信楽高原鉄道列車衝突事故から丸7年目の法要が滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬の事故現場で営まれた14日、遺族らが結成する「鉄道安全推進会議」(TASK=臼井和男会長)の総会が、同町長野の町開発センターで開かれた。この中で臼井会長が、本年度から、国内における鉄道事故の独立調査機関設置の法制化に向け、関係者に働きかける方針を初めて明らかにした。
 会議は、同鉄道事故を今後の教訓にと、遺族や弁護士らが93年8月に結成し会員は約600人。この日は、約30人が参加した。
 秋田真志弁護士が、昨年10月に視察した米国の鉄道や飛行機などの事故の独立調査機関であるNTSB(国家運輸安全委員会)の活動を報告。96年1月にメリーランド州で運転士が死亡した地下鉄事故で「NTSBは、犠牲者が1人だったにもかかわらず同事故を重視。自動運転の車両の速度超過に気づいた運転士が手動への切り替えを許可されなかったことを調べ上げた」と事故防止への独立調査機関の価値を強調した。
 続いて、事務局長の佐藤健宗弁護士が、今年2月にオランダで開かれた世界7ヵ国加盟の国際運輸安全連合(ITSA)の世界会議について報告。参加してみて▽事故に至るまでの故障や欠陥の調査▽遺族や被害者へのケアーなどの必要性を感じたという。(京都新聞)
■新型寝台特急公開へ 23日にJR大阪駅で
 JR西日本は、今夏デビューする新型特急寝台電車「サンライズエクスプレス」を23日午前11時半から午後2時半まで、大阪駅3番ホームで一般公開する。
 サンライズエクスプレスは、東京−高松間の「サンライズ瀬戸」、東京−出雲間の「サンライズ出雲」として、7月10日に運行を始める。
 2階建ての車両は、「さわやかな朝」をイメージした外観で木を使ったぬくもりのある寝台を備えている。
 展示会当日は、駅構内の桜橋口改札に受け付けを設ける。
 ここで配布する無料の記念入場券で、7両編成の車両を見学できる。(京都新聞)
■ポイント部分に小石 新幹線が4本遅れる 明石
 15日午前7時10分ごろ、兵庫県明石市小久保二丁目、山陽新幹線西明石駅構内の上り線で、福山発新大阪行き「こだま600号」(6両編成、乗客約200人)の進路へのポイントが切り替わっていないのを東京指令所が見つけた。駅係員が調べたところ、ポイントに小石がはさまっていた。こだま600号は約20分後に運転再開し、後続の3本が23−9分遅れ、乗客約2100人に影響が出た。(朝日新聞 夕刊)
16日■”夏族”旅行へ JR6社が臨時列車 1万1570本増発しまーす 日本海の海水浴に「マリン」 新宮へは全席指定「スーパーくろしお」
 JRグループ旅客6社は15日、夏(7月1日−9月30日)の臨時列車の運転計画を発表した。増発列車は計1万1570本で、定期列車と合わせた総運転本数は昨年比3%増の12万3689本となっている。
 増発列車の内訳は、新幹線が4077本で、昨年比8%増。在来線は同11%減の7493本。東海道新幹線が東京−新大阪間で「のぞみ」を毎週金曜日の夜に1往復増発する。8月のお盆期間(7日−18日)には「のぞみ」を1日最大15本増発するほか、全車指定席の「ひかり」を計30本運転する。
 在来線は通常一日置きの札幌−大阪間の寝台特急「トワイライトエクスプレス」を夏休み期間は毎日運転。このほか上越線、山口線、北陸線でお盆期間中を中心にSLを運転する。
 JR西日本で増発されるのは、計2158本。うち、お盆期間は、824本。
 山陽新幹線では帰省ラッシュとなるお盆に、500系のぞみを23本、1日にして最大3本を追加。別に、全席指定の「ひかり」を27本、増発する。京滋関係では、8月8日から17日まで京都新宮間に、全車指定席の特急スーパーくろしおを1日1往復、新たに設定した。
 同福知山支社管内の運転本数は、昨年比39%減の261本。
 海水浴輸送期間(7月17日−8月6日)は、山陰線では京都−網野(豊岡)直通の全席指定の特急「マリンタンゴエクスプローラー」を毎日、京都−天橋立を結ぶ快速「天橋立ホリデー号」を週末などに、それぞれ上下1本ずつ運行。福知山線の特急「マリンたかはま」と、播但線の特急「マリンはまかぜ」を週末のみ運転する。マリン列車はすべて全席指定。
 お盆期間は、山陰線で「タンゴエクスプローラー81号」を昨年に引き続いて全席指定で運転するほか、福知山線の特急「北近畿85号」(新大阪−城崎)を初めて運行する。(京都新聞)
■窓 バスの特別席広めてほしい 大津市・小川 正雄(公務員・50)
 こどもの日の5日はゴールデンウイーク最後の日であった。この日は子供だけの日ではなく、大人たちも子供の時代に戻って有意義な1日を過ごす日ではないでしょうか。その日、中学時代の仲間25人がJR奈良線六地蔵駅に集まってハイキングを楽しみました。
 午前10時に出発し、伏見・日野の法界寺から供水峠を越え、炭山を経て天ケ瀬ダムまで、ゆっくり4時間かけて歩きました。途中、植物や昆虫、鳥の声に励まされて、みんな無事に歩き通しました。
 天ケ瀬ダムで地ビールを飲んで疲れをいやし、そこからJR宇治駅までバスで帰りました。バスには「このバスは全席がシルバーシートです」の表示があり、うれしい気持ちになりました。譲り合うのに特別席はいりません。いいお土産ができた、という気持ちで本当に楽しい1日でした。この全席シルバーシート制を、ぜひ広めてほしい、と思います。(京都新聞)
17日■地下鉄東西線 沿線住民の不満あらわ 京大ゼミ生ら調査 154人回答もとに冊子 市中心部への移動時間3割「長くなった」 市バス統廃合 7割「不便に」
 昨秋開通した京都市営地下鉄東西線が沿線住民にどのような影響を与えたかについて、京都大の学生たちが、住民へのアンケートを行い、調査結果をこのほど冊子にまとめた。市バスの統廃合など沿線住民の不満の声があらためて浮き彫りになり、学生らは「京都市は利用者の意見をもっとよく聞き、改善すべきだ」と指摘している。
「市は改善を」
 冊子は「地下鉄開通の夢と現実」で、岡田知弘・京大経済学研究科教授(地域産業分析)のゼミの学生8人が、地下鉄開通や駅前再開発事業の波紋などについて問題点をまとめた。アンケートは東西線開通後約1ヵ月の時期に行い、山科区を中心に住民154人から回答があった。
 アンケートで、市中心部への移動時間については約4割が「短縮された」と答えた。一方で約3割が「長くなった」とし、特に御陵、蹴上駅の利用者は、京阪電鉄・京津線の駅が東西線乗り入れに伴い2駅減ったことが影響し「長くなった」と答えている。料金については「普通」が4割で、「高い」は3割、「安い」は1割にも満たなかった。
 市バスの統廃合で京阪バスに引き継がれた路線バスについては、約7割が「不便」と答えた。内訳は「本数が減った」が4割、「路線が減った」が3割、「他の交通機関への乗り継ぎが不便」が2割だった。
 具体的な声では▽料金が割高になるとの事前の説明が不十分▽バスの最終時間が早く、仕事の関係で困る▽バスとの乗り継ぎが不便で、四条河原町など市内中心部へ行くのに時間がかかる−などが挙げられた。
 同ゼミの京大経済学部4年のハン・ジュヒャンさん(27)は「施設を作って終わりではすまされない。地下鉄とバスの連携など、不便な面についてもっと検討すべきだ」と話している。
 冊子は300部を作製し、希望者に無料で配布する。問い合わせは、京大経済学部岡田ゼミ 075(753)3462へ。(京都新聞)
■釣りざおで感電死 線路上の架線に接触
 16日午後4時15分ごろ、富山県入善町古黒部のJR北陸線の入川鉄橋付近で、釣りに来ていた長野県望月町布施大黒山、短大職員川口雅明さん(37)の釣りざおが架線に触れ、川口さんが感電死した。
 入善署の調べによると、川口さんは仲間4人と午後3時ごろから入川で釣りをしていたが、土手の上の線路を横断する際、持っていたカーボン製の長さ7.3bの釣りざおが高さ5bの2万ボルトの電圧の架線に触れたらしい。(京都新聞)
■旧国鉄債務処理、組織犯罪対策 衆院で継続審議方針 政府・自民
 政府・自民党は、今国会で審議中の重要法案について、会期内の成立を目指すか継続審議とするかについて、例年になく早い決断を迫られている。参院選を控えた国会では、参院で審議未了となった法案は廃案とする慣例があるため、衆院通過が大きな節目となるからだ。政府・自民党は16日までに重要法案の仕分け作業を終え、旧国鉄長期債務処理法案、組織犯罪対策3法案、行政機関保有情報公開法案については衆院で縦続審議とする方針を固めた。
 今国会では、最優先案件としている財政構造改革法(財革法)改正案、中央省庁改革基本法案、98年度補正予算案に加え、15日衆院を通過した金融システム改革関連法案、国連平和稚持活動(PKO)協力法改正案の成立に全力を挙げる構えだ。
 国会の慣例では、国会閉幕後に参院選を控えている場合、参院段階での継続審議は認めていない。参院選でかなりの数の参院議員が入れ代わるからだ。
 自民党は、参院選の日程を7月12日投票とするため、会期を1週間程度延長する方針だが、それでも実質審議日数は残り1か月もなく、「政府提出法案をすべてあげるのは無理」(同党国対幹部)な状況だ。
 政府・自民党が継続審議とする方針の旧国鉄長期債務処理法案は、松永蔵相が財革法改正案や補正予算案の審議にとられ審議日程が組めないことが大きく左右した。組織犯罪対策三法案は、通信傍受を認めている内容に社民党が反対、「閣外協力を解消するにしても、社民党を刺激したくない」(自民党幹部)との判断も働いた。
 ただ、新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法案は、当初は継続審議が濃厚だったものの、インドネシア情勢の緊迫化を受け、在留邦人保護に関連する自衛隊法改正案だけ切り離して先行処理する案が浮上している。(読売新聞)
■夏の臨時列車261本 JR福知山線など
 JR西日本福知山支社は15日、海水浴客や帰省客などを対象とした夏の臨時列車(7月1日−9月30日)のダイヤを発表した。福知山、播但、山陰の3線区を合わせた臨時列車本数は261本で、マイカー利用者の増加などを見越して、昨年の約6割と大幅に削減した。
 7月17日から8月6日までを「海水浴輸送期間」と設定して136本を運行。若狭方面への直通列車「マリンたかはま」(新大阪−若狭高浜)と、但馬方面への直通列車「マリンはまかぜ」(大阪−浜坂)の運転日を、乗客のニーズに合わせて、平日から週末と休日に変更した。
 また、8月7日から18日までを「盆輸送期間」として86本を運行。新大阪−城崎間を走る「北近畿85号」を新設し、8月13、14日に運行する。全車指定の列車を増やし、同支社では、「ゆったりした帰省、Uターンを楽しんでほしい」としている。(読売新聞)
■福井地震50年 語り継ぐ教訓(抜粋)
焼け残った車体走り続け 路面電車は「生き証人」 引退後保存 不死鳥の街見守る
 福井市下馬町の下馬中央公園西側の一角に、「モハ161」号は、新しく塗装を施し、化粧直しをした体を休めている。福井地震の日、真っ黒に焼け焦げた姿をさらしていた面影はどこにもない。
 1933年製。福井鉄道(本社・福井県武生市)の路面電車としてデビューした。50馬力2基のモーターは当時の最新式、ベージュと濃紺のツートンカラーが粋だった。
 あの日、国鉄の福井駅前を通りかかった時に暗転した。激しい揺れで、出火した民家が線路上に崩れ落ち、車体が炎上。辛うじて鉄骨の枠組みとモーター、台車が残った。
 前年の1947年4月、入社したばかりの武生市村国、矢敷昭男さん(71)が「車両が福井の方で炎上したらしい。様子を見て来てくれ」と連絡を受けたのは翌日だった。
 商店街が焼け落ちた駅前にその「モハ161」号はあった。すすけた車体は1日たってもまだ熱い。側面には、「○○へ、無事なら連絡下さい」「お母さんは○○にいます。生きていますよ」となぐり書きしたメッセージが何枚も張り付けてあった。
 修理に必要な資機材を運輸省に申請。GHQの決裁が下り、ようやく半年後、部品が届いた。市民の願いを受けて「電車の複旧が、落ち込んだ人々を活気づける」と、作業を急いだ。
 まもなく現役複帰を果たした「モハ161」号は昨年9月、老朽化でついに引退。保存を求める声が上がって、福井市は震災の「生き証人」として保存することにした。「ボルト一つまで思い出がしみ込んでいる」。今年5月、初めて公園を訪れた矢敷さんは、”わが子”を気遣うように一つひとつの部品を点検し、その姿をカメラに収めた。(読売新聞)
18日■リニア初試乗 最高速は450` 山梨実験線で藤井運輸相ら
 藤井孝男運輸相らは17日、JR東海などが開発を進めている山梨リニア実験線(山梨県都留市−大月市、先行区間18.4`)の超電導磁気浮上式リニアモーターカーに試乗した。JR関係者以外が、山梨リニアに試乗するのは初めて。
 運輸相のほか同県の天野建知事ら計49人が試乗。リニアは午後1時、実験センター(都留市)をスタートし時速165`前後で浮上走行、最高時速450`を出しながら、約16`の行程を往復した。(京都新聞)
■イライラ京都市バス 2−10分前後、中には46分も やっと来たら2台「だんご」 遅れる到着、進ます改善 リストラ先行 交通、運行事情あるが
 京都市バスの発着の遅れが、今やすっかり常態化している。あてにならない運行ダイヤが、乗客離れをいっそう加速させている。赤字を抱える市交通局は、大胆な経営改善策を示しているが、身を削ることに精力を費やし、最大の乗客サービスである定時運行への努力を置き去りにしているようにも見える。停留所に足を運び、運行の実態を体験した。(政経部、石川一郎)
 15日午前11時54分の花園駅前バス停(右京区)。五月晴れの空から、強い日差しが照りつけるなか、同40分着のはずの93系統の市バスが、遅れて通過した。それから待つこと50分。午後零時45分に、93系統のバスが2台、「だんご状態」で到着した。
 時刻表では、この2台は、午前11時59分と午後零時19分着のはず。同39分着のバスも定刻を過ぎているのに、姿を見せなかった。結局、同54分にもう1台が到着して、何とか帳尻(じり)を合わせた。
 93系統は丸太町通を東西に貫き、綿林車庫(左京区)−嵐山間を結ぶ。この日は市内で葵祭による交通規制があったにせよ、46分も遅れるのは異常。丸太町通は車の流れもスムーズで、バスが遅れるような理由は見当たらなかった。
 同バス停には、同じ嵐山方面から出る91系統(四条烏丸行き)、92系統(北大路行き)がある。この日午前9時−午後1時の間のダイヤでは、遅れの幅はいずれも2−10分。
 同時間帯に同バス停を経由する嵐山方面発の京都バスは、途中の運行経路は異なるものの、18本中8本が定刻に到着した。最大でも六分遅れで、平均遅延時間は2分半だった。
・往路が複路に響く
 なぜ、市バスに大幅な遅れが生じるのか。交通局の岡田幸一運輸課長補佐は、「定刻より早い発車を防ぐために、ダイヤよりもやや遅れめに運行している。早く着いても停留所には待機して時間調整するスペースがないので」と説明する。93系統の46分の遅れについては「葵祭の影響もあったのでは…。これから調査する」と話した。
 93系統は、締林車庫−嵐山間の往復という形だが、実際は嵐山に着いても、待機して時間調整する場所はない。綿林車庫に戻るまで、走り続けなければならない。このため、往路の遅れは復路にも響く。
 「専用道路がない限り、定刻の発着は至難の技」と岡田課長補佐。市内には、西大路通など延べ91`余りのバス・タクシー専用レーン(朝夕のみ)があるが、一般車の割り込みや違法駐車が後を絶たない。
 こうした現状に、利用者側も慣れっこになっている。同バス停近くの主婦上田恵美子さん(50)は、「遅れる時間を見越して、バス停へ来ます」。しかし、「遅れがひどい時は、間引き運転しているのでは、と勘繰ることも。せめて何分遅れるのか、わかるようにしてほしい」と不満ももらした。
・新機器の増設中止
 交通局は、大リストラ作業の真っ最中だ。一昨年の運賃改定時に発表した経営改善策にのっとり、営業所の廃止や人員削減、給与制度の見直しなどに取り組んでいる。しかし、運賃改定に際して、市議会が付帯決議した「サービス向上による旅客増加対策」「走行環境改菩」などの乗客向けの取り組みは、今のところ後手に回っている。
 バスの遅れや現在地を示す「バスロケーションシステム」は、市内640余りの停留所のうち211ヵ所に付いたが、1基が200万円かかるため、「現時点では、これ以上の増設予定はない」(運輸課)。
 花園駅前バス停は、歩道上にベンチがあるだけ。15日は、正午に24.8度の気温を記録した。付近に直射日光を避けるものは何もない。この日、亀岡市から友人ら3人で葵祭見物に来た田井喜久さん(81)は、15分待ったあげく、「暑いし、かなわない」とタクシーに乗り込んだ。
 経営改善のためのリストラが不便を温存し、かえって利用客を減らす悪循環。「市は大規模な駐車場を市内につくり、自らバス離れを招いているのに、公営交通を維持する努力は、交通局だけに課せられている」。交通局職員のつぶやきが聞こえた。(京都新聞)
■線路上に布団のぞみ止める 新大阪駅近く 強風でマンション9階から
 17日午後1時55分ごろ、JR新大阪駅近くの大阪市東淀川区西淡路3丁目の東海道新幹線上り線路上に落ちていた布団を、博多発東京行き「のぞみ16号」がはねた。同列車が約14分間停止するなど計4本が5−14分遅れ、約2000人の乗客に影響した。
 同じころ、現場近くのマンション9階に住む男子大学生(21)方から「ベランダに干していた布団を線路に落とした」と新大阪駅に連絡があった。東淀川署は、この学生から事情を聴いたうえで厳重注意した。マンションは新幹線の高架から約5bしか離れておらず、布団が強風に飛ばされて線路に落ちたとみられる。(朝日新聞)
■尼崎の東海道線内 自転車3台を放置
 18日午前2時40分ごろ、尼崎市のJR東海道線立花駅を通過中の上り貨物列車の運転士が、ホーム端の線路上に自転車が放置されているのを発見、急ブレーキをかけたが間に合わず接触した。列車には異常はなく、12分後に運転を再開した。尼崎西署は、悪質ないたずらとみて往来防害容疑で調べている。(京都新聞 夕刊)
■大阪市交通局 幹部ら19人処分
 大阪市交通局の市営地下鉄職員らによる覚せい剤取締法違反事件で、大阪市は18日、同罪で起訴された同地下鉄車掌の栗栖靖岳被告(27)を懲戒免職処分にするとともに、笹倉和忠交通局長を口頭による厳重注意処分、監督責任のある管理職員のうち2人を減給、11人を戒告、5人を訓告処分とした。
 事件では栗栖被告を含め計4人が逮捕、起訴されており、今回の大量の管理監督者の処分につながった。
 減給処分は直属の上司に当たる交通局高速運輸部の堺筋本町管区駅長と阿波座乗務所長。減給処分の2人については、1日分の賃金の5分の1を6月分の本給から減額する。(京都新聞 夕刊)
■駅員らの覚せい剤事件 幹部19人処分 大阪市交通局
 大阪市交通局は18日、市営地下鉄の車掌や駅員ら4人が覚せい剤取締法違反などの疑いで相次いで逮捕、起訴された事件を受けて、同局の幹部職員計18人を減給処分などにした、と発表した。
 笹倉和思・交通局長を厳重注意、山口節男・前高速運輸部長ら5人を訓告処分としたほか、山崎政彦・前堺筋線運輸長ら11人を戒告、直属の上司に当たる中西雄二・堺筋本町管区駅長と城山陸昭・阿波座乗務所長を労働基準法の規定に基づいて日給の5分の1の減給処分とした。笹倉局長は「全局を挙げて再発防止に取り組み、職員の指導、教育を図って、信頼回復に努めたい」とコメントした。(朝日新聞 夕刊)
■自転車3台線路に放置 尼崎、貨物止まる 東海道線
 18日午前2時40分ごろ、兵庫県尼崎市立花町1丁目のJR東海道線立花駅構内で、新南陽(山口県)発名古屋ターミナル行き上り貨物列車(27両編成)が線路わきに置かれていた自転車をはねて停車した。現場近くにもう1台と、同駅から東約400bの踏切付近にも1台の自転車が放置されていたことから、尼崎西署は何者かが運行を妨害するため線路内に置いたとみて列車往来危険容疑で捜査している。(朝日新聞 夕刊)
19日■特急など4割滅、261本 夏のJR臨時列車 全車指定を増やす
 JR西日本福知山支社は7月1日から9月30日まで運転する夏の臨時列車のダイヤを発表した。管内のリゾート地へ向かう山陰、福知山、播但の主要3線をあわせた特急、急行、快速の臨時列車は計261本。明石海峡大橋の開通で客足が瀬戸内方面へ流れることなどを予測し、前年より39%、169本減らした。
 今年は平日の臨時列車運転のほとんどを取りやめ、客の利用が増える列車は車両の増結でしのぐ。特急は自由席をなくし、全車指定席のものを増やした。
 海水浴向け(7月17日−8月6日)の山陰線は全席指定の特急「マリンタンゴエクスブローラー」を毎日運行するが、福知山線の特急「マリンたかはま」や播但線の特急「マリンはまかぜ」などは週末のみの運転になる。お盆の期間(8月7日−18日)、但馬方面への帰省のために新大阪−城崎間に「北近畿85号」を初めて運転する。
 このほか、イベント列車として、7月の大阪天神祭りと8月の條山デカンショ祭りの列車を快速で運転する。(朝日新聞)
■日テレ元プロデューサー 電車内で痴漢行為 執行猶予付き判決
 通勤電車内で女子学生に痴漢行為をしたとして、強制わいせつの罪に問われた日本テレビの元報道局プロデューサー北村和也被告(42)=休職中=に対し、東京地裁は18日、懲役1年4月執行猶予3年(求刑懲役1年6月)の判決を言い渡した。岡田雄一裁判長は「女性の人格を無視した行為で、年若い被害者が受けた精神的苦情や屈辱感は大きい」と述べた。(朝日新聞)
20日■市バス、バイクと接触 右京、転倒の男性けが
 20日午前10時55分ごろ、京都市右京区四条通葛野大路西入ルで、東進していた四条烏丸行き市バスと中京区西ノ京式部町、無職牧野秀夫さん(75)のバイクが接触した。バイクは転倒し、牧野さんが右肩に軽傷を負った。バスには約50人の乗客がいたが、けがはなかった。
 太秦署によると、市バスが、道路左端を走っていた牧野さんのバイクを追い抜こうとした際、バスの左前部がバイクに接触した、という。
 同署は市バスがバイクを追い抜く際、十分な車間距離をとっていなかったのではないかとみて、運転手(56)から詳しく事情を聴いている。(京都新聞 夕刊)
■全国発明表彰 今年度受賞者決まる(抜粋)
・通産大臣省 低騒音求めたら「鼻」が流線形に 500系新幹線電車の意匠
 JR西日本(大阪市)吉村慎一朗(42)▽日立製作所(東京都国分寺市)木村茂孝(35)、田中博文(42)▽同(東京都千代田区)服部守成(60)▽ノイマイスターデザイン社(ドイツ)アレキサンダー・ノイマイスター(56)
 空気の抵折が少ない独特の車体デザインで時速300`での営業運転を実現した。トンネルに入るときの衝撃音、先頭部が空気を切る騒音などを抑えるため、傾斜した「ノーズ」部分の長さを従来ののぞみ型電車の約2.5倍に当たる約15bに伸ばし、先鋭的な流線形状にした。(朝日新聞 夕刊)
■21世紀まで957日 淡路島の電車 車の便利さに敗れ
 明石海峡大橋の開通で、活気づく淡路島(兵庫県)。その島にかつて、電車が走っていた時代があった。島の電車は1966年9月30日、車社会という時代の波にのみ込まれ、姿を消した。
 島の中央、三原町に住む市川富夫さん(62)は、1本のビデオを大切にしまっている。タイトルは「電車が走っていた島」。4年前、地元の三原高校放送部の生徒たちが、NHK杯全国高校放送コンテストに出品したテレビ番組を収録してある。
 放送部員たちは、15年ほど前から毎年、生まれ育った島を知ろうと「あわじあいらんど」シリーズを作っている。ずっとラジオ番組だったが、「電車−」は、シリーズで初めてのテレビ番組だった。部員たちは関係者を訪ね、鉄路の跡を歩いた。
 番組作りに協力した市川さんは、運転士だった。51年、淡路交通に入社。駅務員、車掌をへて、60年に念願の運転士になった。「駅や沿線にいろいろな思い出がある。のんびりした時代で、線路を横切ろうとした牛に接触したこともあった」と、目を細めた。
 構成とインタビューを担当した土居千春さん(21)は「電車のことは、親たちが話していたので知っていた。どんな電車だったのか、とにかく知りたかった」。
 「さよなら電車」を運転した黒川三嘉さん(71)=三原町=も登場する。当時のニュースフィルムの中で、硬い表情で運転する姿と、それを見ながら部員のインタビューにこたえる黒川さんの姿が重なった。「(さよなら電車の)運転士だったが、うれしくなかった。さびしかった…」。マイクに向かった黒川さんの目に涙が浮かんでいた。
 電車は午後3時20分、同僚や家族、多くの市民らに見送られ、文字通りの終着駅福良駅に向かって出発した。
 番組の最後にナレーションは語りかける。
 「私たちの求めていたのは便利さだけではなかったのでは…。人間味あふれる電車に乗ってみたいと思うのは、私たちだけでしょうか」
 土居さんも、ナレーションを担当した平野香織さん(21)も、社会人になって島を離れ、神戸市で暮らしている。「電車が走っていたらよかったと思うけれど、車がないと島での暮らしは不便。仕方なかったのかもしれませんね」と口をそろえた。(喜田 洋)
 淡路鉄道(現・淡路交通) 1911年(明治44年)、地元有志らが地方鉄道敷設免許を申請。14年(大正3年)、全社設立後、着工した。洲本−福良間全線約23`は25年(同14年)に開通。48年(昭和23年)には、全線電化が完成している。(朝日新聞 夕刊)
21日■長野新幹線のトイレに銃弾 壁を貫通、県警が捜査
 20日午前10時20分ごろ、長野市赤沼のJR東日本長野(北陸)新幹線運転所で、あさま501号(8両編成)の7号グリーン車トイレの壁に銃弾とみられる穴が開いている、と同社長野支社から長野県警鉄道警察隊に届けがあった。同警察隊などによると、7号車の身障者用トイレと女子トイレが接する壁と、女子トイレの反対側の壁にそれぞれ銃弾で撃ち抜いたとみられる直径約1aの穴が開いていた。8号座席指定車の外壁には銃弾痕ようのへこみがあり、身障者用トイレの中から女子トイレに向けて発射した銃弾が、壁を貫通したとみられる。
 19日夕、長野に到着した後清掃員が見つけていたが、上司に知らせず、20日になって報告し、届けたという。長野県警は乗客などが女子トイレにいた場合、死傷した恐れもあったとして器物損壊容疑などで捜査している。
 JR東日本によると、身障者用トイレの壁はアルミニウム製厚さ約1.2_、女子トイレの壁は繊維強化プラスチック製約2_。(京都新聞)
■窓 京津線乗り入れ二条まで延長を 中京区・渡辺 啓史(会社員・30)
 私は毎日、地下鉄の丸太町駅から浜大津の会社へ、烏丸線、東西線、京津線という経路で通勤しています。地下鉄東西線が開通し、京津線が東西線とつながり、一枚の切符で自宅の近い丸太町駅から浜大津駅まで行けるようになり、以前よりは、ずっと便利にはなりました。
 しかし、お願いしたいことが一つ。京津線の乗り入れ区間のことです。市役所前までではなく、二条まで、いや烏丸御池でも結構ですから乗り入れてほしい。京津線から烏丸線に乗り換えるために、一駅分、東西線に乗らねばならない。場合によっては、十分近く待たされる時もある。他の利用者も「なんでこんな中途半端なとこで」と不満を述べています。
 詳しい鉄道事情は分かりませんが、せっかく線路がつながっているのですから、できるものなら浜大津から二条直通をつくっていただきたいものです。また烏丸線も東西線との連絡に、もう少し「ゆとり」をもたしてほしいです。また新田辺行きの普通の一部を日曜日や観光シーズン、またはラッシュ時には、奈良発の直通急行にするのもいいと思うのですが…。(京都新聞)
■市バス接客態度 34%が不満持つ 京都交通労組の市民アンケート 「予想以上に多い」 労狙 運転手らに改善訴えへ 「時刻表通り道行」も上位
 京都市バスについて、3人に1人は運転手の接客態度に不満を持ち、3割近くが増便を求めていることが、京都交通労働組合(約2370人)が20日まとめた市民アンケート結果でわかった。同労組は「予想以上に不満が多い」として、職場集会で運転手らに改善を呼びかけるとともに、利用を増やすための増便などについて市交通局と協議したい、としている。
 アンケートは、厳しい経営状況の市バスと市営地下鉄について、利用者の率直な意見を聞こうと3月に実施した。職員が市内各区の9万世帯に配布し、19.8%に当たる1万7824人から郵送で回答を受けた。回答者の2人に1人はバスを、4人に1人は地下鉄を、それぞれ週に1−2回以上利用していた。
 市バスの改善すべき点を複数回答で尋ねたところ、運転手の接客態度の向上(34.1%)が最も多かった。次いで、時刻表通りの運行(28.9%)、運行回数を増やす(28.5%)の順だった。
 自由記述欄には「回数券を買おうとしたら、釣り銭がないからと断られた」「乗り換えを問い合わせる人に対する答えが不親切だ」などの意見が寄せられた。また、「急発進、急停車をするなど、運転が乱暴だ」などの指摘もあった、という。
 市バスの走行環境の改善策としては、路上駐車の禁止や取り締まりの強化(61.0%)、日曜や祝日は観光地への自動車乗り入れを禁止する(30.5%)が上位を占め、「バスの走行環境の改善のために、自家用車を利用せずに協力してもいい」という声も17.9%あった。
 一方、地下鉄の改善点としては、運賃を安く(26.0%)、路線の新設(14.6%)だった。
 会見した同組合の政勝男委員長らは「市や警察などの関係機関に申し入れをするとともに、職員の意識改革にも取り組みたい」と話した。(朝日新聞)
■市バスが接触事故 バイクの男性けが 右京の府道
 20日午前10時55分ごろ、右京区四条通葛野大路西入ルの府道で、京都市交通局の市バス=加門勝弘運転手(56)=が中京区西ノ京式部町、無職牧野秀夫さん(75)運転のバイクに接触、バイクが転倒し、牧野さんが右鎖骨の骨を折る全治1ヵ月の大けがをした。市バスの乗客は数人いたが、けがはなかった。
 太秦署の調べでは、加門運転手が前を走っていたバイクを追い越そうとしたところ、市バスの左前部がバイクに接触したらしい。同署は加門運転手が前をよく見ていなかったのが原因とみて調べている。(朝日新聞)
■地下鉄東西線乱れる 300人に影響 始発など4本 作業車の故障で 早朝に一時
 21日午前3時45分ごろ、京都市営地下鉄東西線の三条京阪駅構内で、保線作業車が故障し動かなくなった。同5時45分ごろ、車両を撤去したが、この影響で、下りの醍醐発始発電車が41分、上りの二条発が31分遅れたほか、乗り入れの京阪電車など上下4本が運休した。7時20分に正常ダイヤに復旧したが、乗客約300人に影響が出た。
 市交通局によると、朝のラッシュ前で乗客に目立った混乱はなかったという。保線作業車はレールを点検中にブレーキが解除できなくなったといい、原因を調べている。東西線は開通直後の昨年10月中旬、乗り入れの京阪の故障で初のトラブルが起きている。(京都新聞 夕刊)
■市バス運転手 停職6ヵ月に バス離れ口論問題
 京都市バスの運転手(31)が3月末、東山区内で乗客を車内に残したままバスを離れ、別のワゴン車の男性と口論した問題で、市交通局は21日までに、この運転手を停職6ヵ月の懲戒処分にした。
 市交通局などによると、3月31日夜、東山区四条通東大路の交差点で、綿林車庫行きの市バスが前方のワゴン車にクラクションを鳴らしてトラブルとなり、運転手はバスを降りてワゴン車の男性と口論。松原署員が仲裁するまでの約30分間、乗客は車内に残されたままとなった。
 市交通局は4月に懲戒委員会を開き、「みだりに車両を離れて乗客を放置したのは、運転手としてあるまじき行為で、見過ごすことはできない」として、処分を決めた。
 運転手は、トラブルを起こした翌日から謹慎しており、停職期間は10月1日まで。
 市交通局管理本部は「停職6ヵ月は、免職に次ぐ厳しい処分。乗務員一同、今回の問題を肝に銘じて市民サービスに徹していく」としている。(京都新聞 夕刊)
22日■乗客放置の京都市バス運転手 6ヵ月間の停職処分 交通局
 京都市バスの運転手(31)が今年3月、運行中の路線バスを途中で止めて車を降り、乗客約25人を10分以上放置したまま車外で一般車のドライバーと口論するトラブルがあり、市交通局は「乗客に迷惑をかけ、市バスに対する信用を失墜させた」として、懲戒規程に基づき、運転手を重大事故並みの6ヵ月間の停職処分とした。
 同局によると、3月31日午後7時50分ごろ、東山区の四条東大路交差点で、左折しようとしたワゴン車が渋滞のため、交差点内で停車。後続の錦林車庫行きの市バスが横断歩道をふさぐ形で止まらざるを得なくなり、運転手がワゴン車に向けてクラクションを数回鳴らした。
 運転手によれば、「その後、交差点内でワゴン車とバスが並んだ際、ワゴン車の蓮転手に車の中からバスの左サイドミラーをたたかれた」との理由で、約200b離れた別の交差点内でバスを止め、前方にいたワゴン車を追いかけてドライバーと口論となり、警察官が駆けつける騒ぎになったという。
 同局はバスの停車時間を後続バスの運行状況から13分間と推定。運転手が戻ったときは、乗客は全員、動かないバスに見切りをつけて下車していた、と結論付けた。そのうえで、「乗客を安全に運ぶ職務を放棄したのは職業運転手としてあるまじき行為。交差点内に車を止めるなど複数の服務規程に反している」として、4月20日付で、運転手に謹慎を命じた4月2日にさかのぼって6ヵ月間の停職処分とした。処分は「前例がない」(営業課)として公表していなかった。(朝日新聞)
23日■わーい! SLと綱引きだ 梅小路蒸気機関車館 「フェスタ」に園児ら1500人 100人の力で巨体「D51」スルスル
 「'98こどもSLフェスタ」が22日、下京区の梅小路蒸気機関車館で催され、京都市や宇治市内の保育園25園から参加した園児約1500人が、SL(蒸気機関車)との綱引きや体験乗車などを楽しんだ。
 普段は絵本やテレビでしか見ることのないSLの本物の迫力にふれてもらうと、日本保育園協会などが7年前から毎年、JR西日本の協力で催している。
 フェスタは、園児全員が色とりどりの風船を夏空に放って開幕。子どもたちはさっそく、黒い煙を上げて力強く走る「SLスチーム号」に試乗して往復8分間のSLの旅に歓声を上げたり、特設ステージで繰り広げられるアトラクションなどを楽しんだ。
 また、100人余りの園児たちがチームを組んで、「D51形」機関車を相手に綱引きにも挑んだ。SLは最初、びくともしなかったが、みんなで力を合わせて引っ張ると、123dもある巨体がスルスルと動き出し、子どもたちは「バンザイ、バンザイ」と大喜びだった。(京都新聞)
■新型寝台列車を公開 JR
 JR西日本とJR東海が共同開発し、今夏デビューする新型寝台特急電車「サンライズエクスプレス」が22日、報道関係者らに公開された。寝台列車の開発は20年ぶり。
 車体は、青色を基調とした「ブルートレイン」とは変わり、ベージュとワインレッドの2色を使って朝焼けのイメージとした。これまでは寝台の大半がカーテンで仕切られているだけだったが、新型車両は2階建てで、個室を基本とした6タイプの寝台と座席がある。木のぬくもりを生かした内装で、液晶テレビやシャワーなどビジネスホテル並みの設備を備えた。車イスの出入りしやすい身障者用個室もある。
 7月10日から「サンライス瀬戸」(東京−高松間)と「同出雲」(東京−出雲市間)として運行を始める。電車化によるスピードアップで所要時間はいずれも1時間程度短縮される。(朝日新聞)
25日■JR訴訟 28日判決 東京地裁 中労委命令どう判断 国労組合員の「不採用救済」 中労委敗訴なら権威失墜危ぶむ 「責任ない」JR側強気
 1987年4月、国鉄の分割・民営化でJRに採用されなかった国労組合員をめぐる訴訟の判決が28日、東京地裁で言い渡される。JRに不当労働行為の責任を認めた中央労働委員会の救済命令の取り消しをJR側が求めた行政訴訟。関係する組合員は約1000人、長期化している戦後有数の労使紛争解決へ向けた影響は大きく、労働委員会の出した結論に司法がどのような判断を下すか注目される。
 「敗訴となれば権威は失墜、存在意義が問われる」と危ぶむ中労委側。「新会社であるJRに責任はない。救済命令は取り消されて当然」と強気のJR側。中労委とJRはそれぞれの思いで東京地裁判決を迎える。
 「双方とも怒りや恨みを棚上げにして…」
 6年前のちょうど5月。不当労働行為救済申し立ての再審査をしていた当時の中労委会長、石川吉右衛門東大名誉教授は、国労とJRの双方に和解を促す「最終解決案」を提示した。
 国労側は「あくまで救済命令を求める」とし、JRへの採用を1月間だけとした解決案を即刻拒否。「命令を出せば、10年戦争になりかねない」との石川元会長の懸念は的中した。その後、中労委が出したすべての救済命令に対し、JR側は取り消しを求めて行政訴訟を起こし、紛争は長期化した。
 山口俊夫中労委会長は「現在の法制度を踏まえ、十分な根拠を示し命令を出した。裁判所には理解していただけると確信している」と言い切る。
 中労委事務局も「負ければ労働委員会制度が根底から揺らぐ。労働法の権威ぞろいの中労委公益委員が熟慮の末に出した命令だけに、裁判所との法解釈論争には負けられないというプライドもある。敗訴すれば、控訴せざるを得ないだろう」と漏らした。
 東京地裁の和解勧告にも応じず判決を求めてきたJR側は「国鉄の法人格を継承するのは国鉄清算事業団。採用候補者の選定は国鉄が行ったことで、新会社であるJRには責任はない」と強い姿勢だ。
 JR東日本の清野智取締役人事部長は「国鉄改革は国民の支援を受けて行われた。再就職の対策が手厚かったのも民間会社ではなく国鉄だからこそ。それをすべてノーと言ってきたのが今の結果だ」と国労を批判している。
・「30歳代のすべてを闘争に費やした…」 組合員、勝利心待ちに
 「振り返ったら11年、30代のすべてを闘争に費やした。解決に向け一点の光も見えている。あと少し頑張れば…」
 全国各地で約1000人の国労闘争団員が、アルバイトなどをしながら勝利判決を心待ちにしている。平均年齢は約45歳。働き盛りの時期に仕事を奪われた人たちばかりだ。
 筑豊闘争団で会計担当の野見山昌光さん(40)=福岡県直方市=もその一人。1980年国鉄に入社、直方気動車区で列車の誘導やポイント切り替えの担当に。
 間もなく合理化のあらしが吹き始め、分割・民営化に反対していた国労への圧力が強まる。車掌希望だった後輩は、上司に「国労なら無理だ」と言われ、泣きながら脱退していった。
 86年7月、国鉄が余剰人員対策につくった人材活用センターへ。炎天下、草むしりをした毎日。JRに採用されずに移った国鉄清算事業団では自学自習で漢字の書き取り作業。その事業団も90年に解雇され、生活のためラーメンの行商に歩き回った。
 11年の闘いは自分を変えた、と思う。口べたで引っ込み思案だったが、今では人前で支援を訴える。「人に世話になっているので、何か少しでも役に立てれば」と、長男が通う小学校のPTA会長も務める。
 野見山さんの月収は約13万円。奥さんの直子さん(38)のパート収入や支援金を合わせてもぎりぎりの生活。外食にも行けず子どもの服を買うのがやっとだ。「裁判で負けたらどうするの。早く普通の生活を取り戻したい」「結果をみないと。もうちょっと待ってくれ」愚痴をこぼす奥さんとの間でけんかも起きる。娘は中学2年。もうすぐ高校入試だ。
 「国労というだけで差別され、私だって悔しい。最後まで闘ってほしいけれど、収入がないと生活できないし…」と直子さん。
 合理化と組織再編で、JRには野見山さんの元の職場はすでにない。「それでもJRの社員となることが第一。どんな仕事だってやってみせる。金をもらって終わりでは闘ってきた意味がない」
・不採用問題 1987年4月の国鉄の分割・民営化で約7600人がJRに採用されなかった。多くは北海道、九州などの国労、動労、動労千葉の組合員。このうち約3100人が全国18都道府県の地方労働委員会に計27件の救済を申し立て、すべての地労委が、JRに対し採用を求める「組合側勝利」の救済命令を出した。JRは中労委に再審査を申し立て、中労委は不採用者のうち国鉄清算事業団を90年3月末で解雇された1047人の一部を除いて、あらためて選考して採用するよう命じた。JR、国労双方がこれを不服として命令取り消しの行政訴訟を東京地裁に起こした。
・争点 人選の責任 JR 国鉄が選考 名簿作製 清算事業団が救済を/中労委・国労 事業と労使関係を継承したJRが負え
 国鉄分割民営化の際多数の国労組合員が採用されなかったことを、中労委は不当労働行為として、JRに採用などを命じた。国労組合員計951人が対象だった。
 JR側が東京地裁に取り消しを求めているのは、この中労委の命令だ。JRは「当時、選考したのは国鉄であり、JRとは別法人。法的責任はない」と主張。訴訟は人選の責任がどこにあるかをめぐって争われてきた。
 東京地裁は和解を強く勧告、訴訟当事者でない清算事業団にも話し合いを呼び掛けるなど円満な幕引きを目指してきたが、結局実らなかった。JRと中労委、どちらが勝っても控訴は必至で、4年余りの訴訟を経ても解決への道のりはなお遠い。
 問題の人選は87年4月のJR発足を前に、国鉄改革法に基づき国鉄が採用名簿を作成、それに従い「JR設立委員」が採用を決めるという流れで行われた。
 JRは「国鉄が作った名簿に従っただけ。名簿の選考が不当労働行為だとしても、これを救済する国鉄の義務を引き継ぐのは清算事業団」と主張。
 国労や中労委の側は「国鉄はあくまでJR設立委員の補助として名簿を作った」と指摘し「国鉄の事業も労使関係も、そのままJRに引き継がれた。責任を負うべきなのはJRだ」と反論した。
 両者一歩も引かない構えに東京地裁は昨年5月、和解を勧告。7月には国労、中労委側の主張の骨格を「採用できない」と否定する一方で、JRの責任を立証するための新たな考え方を国労側に提案するなど、解決の道を積極的に探ってきた。
 和解を一貫して拒否してきたJR側は「訴訟の流れは会社に有利」とにらむ。同地裁は2月、和解を断念したが、同時に「判決の結論にかかわらず、早期かつ抜本的な解決に尽力を」と見解を表明していた。
 訴訟は北海道、九州の組合員と本州の組合員の2組に分かれており、判決は28日の午前10時半と11時に別々の法廷で言い渡される。(京都新聞)
■清掃作業中の男性 電車にはねられ死亡 精華町
 24日午前9時35分ごろ、京都府相楽郡精華町菅井、JR学研都市線祝園−西木津間で、近くの農業西田弘さん(67)が、宝塚発木津行きの快速電車にはねられた。西田さんは全身を強く打ち、死亡した。
 木津署の調べによると、西田さんは午前8時ごろから、地区の清掃作業で近くで雑草刈りなどに従事していた。電車の運転士の話では、線路を横断中の西田さんに気付き急ブレーキをかけたが、間に合わなかったという。乗客にけがはなかった。
 電車は現場に約20分停車。後続の上下2本が部分運休し、計約 150人に影響が出た。(京都新聞)
■SLかっこいい 親子写生大会に600人 梅小路蒸気機関車館
 「上京親子ふれあい写生大会」が24日、下京区の梅小路蒸気機関車館で開かれ、訪れた親子たちが写生を楽しんだ。
 上京区内の12の子供会でつくる上京子ども育成会連絡協議会が主催し、年1回開いている。
 朝から断続的な雨だったが、600人の親子が集まった。会場では、展示された20両の蒸気機関車の間に親子や友達同士が集まり、画用紙に向かった。
 子どもたちは、絵の具を混ぜては画用紙に色を付けたり、保護者や近くの大人に色遣いのアドバイスを受けていた。機関車が草花の中を走る想像を入れた絵や、勇壮な機関車をていねいに写したものなど、思い思いに作品を仕上げた。(京都新聞)
■京都市バスとワゴン車衝突 南区、6人重軽傷
 24日午前10時50分ごろ、京都市南区吉祥院石原野上町の葛野大路通交差点で、大阪府豊能郡能勢町宿野、電気工事業手伝い福井弘さん(38)の軽ワゴン車と、四条烏丸行き市バス=山岡忠彦運転手(56)=が出合い頭に衝突した。福井さんの助手席に乗っていた兄の通さん(40)が足の骨を折る重傷を負い、福井さんと後部座席の2人が軽いけがをした。市バスの乗客6人のうち、南区の無職の女性(69)ら2人が頭や首に軽いけがをした。
 九条署によると、現場は信号のない交差点で、葛野大路通を北進中の市バスの右側面に、府道を西進してきた軽ワゴン車が衝突したという。
 府道には、一時停止義務があり、同署は、福井さんが一時停止をしたのかどうか、詳しく原因を調べている。(京都新聞)
■軽ワゴン車と市バスが衝突 5人重軽傷
 24日午前11時ごろ、南区吉祥院石原野上町の府通交差点で、大阪府豊能郡能勢町宿野、電気工事業福井弘さん(38)運転の軽ワゴン車と、京都市交通局の市バス=山岡忠彦運転手(56)=が出合い頭に衝突、福井さんの車に同乗していた兄の通さん(40)が足の骨を折る重傷を負ったはか、福井さんの両親と市バスの乗客2人の計4人が軽いけがをした。
 現場は信号のない交差点で、九条署は、福井さんが一時停止窒息った可能性があるとみて調べている。市バスには乗客6人が乗っていた。(朝日新聞)
26日■林郁夫被告に無期懲役 地下鉄サリン実行犯で初判決 非人道的だが「自首」 松本被告の首謀人体東京地裁
 地下鉄サリンなど六事件で殺人、殺人未遂罪などの罪に問われ、オウム真理教元幹部で元医師林郁夫被告(51)の判決公判が26日、東京地裁で開かれ、山室恵裁判長は林被告に求刑通り無期懲役を言い渡した。判決で山室裁判長は地下鉄事件について、松本智津夫被告(43)=教祖名麻原彰晃=を首謀者とした組織的犯行とし、教団幹部らと林被告との共謀を認定。その上で「極刑が当然だが、適用は慎重であるべきだ」とし、林被告が自首していることなどを考慮して死刑は相当でないとした。
 死者12人、重軽症者約3700人を出した地下鉄事件の実行犯とされる被告への判決は初めて。松本被告をはじめ、教団関連事件にかかわったとされる他被告の公判にも影響を与えそうだ。
 山室裁判長は事件の動機について「松本被告らが教団への強制捜査を避けようと、大規模な事件を起こして警察や社会を混乱に陥れるしかないと考えた」とした。その上で「日本はもとより世界の犯罪史上でも類を見ない非人道的な犯行で、人間の尊厳をおよそ無視したもの。その発想自体、稚拙で短絡的」と指摘し「教団防衛という愚劣で小さな目的のため、普通の市民が犠牲になり、その苦しみや恐怖は想像を絶する」と非難した。
 林被告は地下鉄事件のほか、公証役場事務長仮谷清志さん=当時(68)=の逮捕監禁致死、元信者監禁や麻酔剤密造などの事件でも起訴され、起訴事実をすべて認めたため、主要被告の中では最も速く審理が進行。法廷で謝罪の言葉を何度も繰り返す一方、松本被告を厳しく批判した。他被告の公判でも積極的に証言して事件の経緯や教団内部の実態を明らかにしてきた。
 検察側は、林被告が捜査当局もつかんでいなかった地下鉄事件への関与を自ら取調官に明かしたことから「自首が成立している」と判断。供述は組織犯罪の解明に貢献したと指摘し、遺族の一人が公判で死刑を望まない意向を証言していたことも考慮し、死刑求刑を避けた。
・検察と異なる酌量
 オウム真理教元幹部林郁夫被告に無期懲役を言い渡した26日の判決は検察の論告求刑と同様、死刑相当の犯行としながら情状を酌量して刑を減軽した。
 しかし、検察が自首、反省といったもっぱら事件後の情状を評価していたのに対し、判決は首謀者とされる松本智津夫被告に利用されたことや教祖の指示に逆らえなかった面など犯行の経緯の中にも酌量すべき事情を指摘した。
 事件後の情状だけでは死刑を無期に減刑してこなかったこれまでの判例に沿った判断であり、組織犯罪の特殊性を強調した検察とは一線を画した。
 検察の無期求刑には「捜査にどれだけ協力したかが生死の分かれ目なのか」「実質司法取引であり、政治的な求刑」と批判も強かっただけに、判決で示された裁判所の姿勢は現在国会で審議中の組織犯罪対策法案にも徹妙な影響を与えそうだ。
 一方、坂本堤弁護士一家殺害事件の自首を主張する元幹部岡崎一明被告側には「前例」と映るかもしれないが、どこまで踏襲されるかは予断を許さず、まず検察側の求刑が焦点となる。(解説)
・林郁夫被告の判決骨子
 一、被告を無期懲役に処す
 一、医師として人命の貴さを理解していたはずなのに、麻原彰晃(松本智津夫)を首謀者とした地下鉄サリン事件の謀議に加わり、サリン発散などの行為に及び悲惨な結果を招来させたことは厳しく非難されるべきだ
 一、犯行の罪質、動機等からすれば、刑事責任は重大で極刑をもって臨むのが当然だが、被告の地下鉄サリン事件に関する自首や、真摯(しんし)な反省の態度、教団による将来の犯罪の防止に対する貢献などの事情にかんがみ、死刑だけが正当な結論とは言い難く、無期懲役刑をもって臨むことも刑事司法の一つの在り方として許されないわけではない
・自首 罪を犯した者が、その発覚前に自ら捜査機関に犯罪事実を明かし、処分を求める意思表示をすること。刑法42条で、刑を軽減することができる理由として規定されている。オウム真理教元幹部林郁夫被告が地下鉄サリン事件を実行したと供述したのは別件で逮捕された後だったが、当時地下鉄サリン事件の実行に林被告が加わっていたことを捜査当局も把握していなかったことなどから、検察側は公判で「自首が成立する」とした。(京都新聞 夕刊)
■無期懲役判決 林郁夫被告の公判語録 殺人「おぞましい」
 「やっぱり私、生きてちゃいけない」。林郁夫被告は、オウム真理教関連事件の解明責任を自分に課し、出家から大量殺人に至るまでの自らの行動と心の動きを、冷静に、時に号泣しながら話した。2年半にわたる公判での発言から拾った。
 「高校生のころ(戦争、人種差別など)世の中の矛盾に気付いた。自分の力が及ばない問題を総合的に解決する法則のようなものがあるんじゃないかと考えていた」(1997年10月7日の公判で)
 「オウムを現代版の釈迦(しゃか)とその弟子たちととらえていた。教団たたきを心ない仕打ちと勘違いし、医者の自分が出家すれば、周囲の目も変わると思った」(同)
 「坂本弁護士一家殺害事件が教団の仕業と麻原(松本智津夫被告)から聞かされたとき『世界が崩れちゃう』と思った」(97年12月9日の被告人質問で)
 「私は(地位や名誉など)麻原が本来持ちたかったものを持っていたので、彼に挫折を感じさせる存在だった。麻原は私に『いい教育を受け、いい結婚をし、功徳を一人で使っていいな』と言った」(同)
 「長いこと一緒に教団にいたのに、互いのことが分かっていないのが悲しい。もっと分かり合えていたら(被告同士で対面する)こんな場面はなかった。そう思うと麻原が憎らしい」(97年10月30日の中川智正被告の公判で)
 「お二人(サリンの袋を片付けて命を落とした営団地下鉄職員ら)の崇高な行為に比べ、医師の使命を持っていたはずの私が起こした無差別殺人のなんとおぞましいことか」(96年3月26日の公判での意見陳述)
 「(家族に言葉も残せず、亡くなった被害者の無念を思うとき)心にかけてくださる方もいるけれど、やっぱり私、生きてちゃいけない」(97年12月10日の被告人質問で号泣しながら)(京都新聞 夕刊)
■林郁夫被告の判決要旨
 オウム真理教元幹部林郁夫被告に対し東京地裁が二十六日に言い渡した判決理由の要旨は次の通り。(呼称敬称略、肩書は当時)
 一、麻原彰晃(松本智津夫)らは、仮谷清志を拉致した事件が教団の犯行であると発覚することを恐れ、警察の教団施設に対する強制捜査を阻止するため、首都中心部を大混乱に陥れようと考えて、地下鉄サリン事件を敢行した。その発想自体、稚拙で、短絡的であるばかりでなく、教団の利益のためならば手段を選ばず、他人はどうなろうとも構わないという自己中心的で、教団特有の体質に根ざした動機に基づく犯行である。教団は、麻原の指示により武装化を推進していたのであり、このような教団の反社会性、武装集団としての性格が地下鉄サリン事件を引き起こした遠因となっており、この点を軽視することはできない。
 地下鉄サリン事件は、こともあろうに、化学兵器であるサリンを使い、混雑した地下鉄の電車内において、同時多発的に敢行した無差別テロであり、日本はもとより世界の犯罪史上でも類を見ない非人道的な人間の尊厳をおよそ無視した犯行である。
 この事件は、麻原を首謀者として、多数の教団幹部らが綿密な謀議を重ね、周到な準備を遂げた上、それぞれの役割を果たした組織的、計画的犯行である。
 教団における絶対的存在である麻原が、教団独自の教義を背景に、教団幹部らに救済の一環と信じ込ませて実行させた面もあるが、その実態は、人命の尊さを一顧だにしない無差別大量殺人にすぎなかったのであって、救済とはおよそ対極にある蛮行というほかない。
 死亡した被害者は、いずれも、サリンを吸入したことすら分からずに意識を失って倒れ、その後意識が回復しないまま絶命した。その苦悶、恐怖には、想像を絶するものがある。一瞬にして家族の一員を奪われ、不幸のどん底に陥れられた遺族の悲嘆、絶望、怒りは察するに余りある。
 幸いにして一命は取り留めたものの重篤な後遺症によって治癒の見込みさえ立たない被害者もいるのであって、その苦悩、無念さ、その家族の負った悲しみ、苦しみもまた計り知れない。しかるに、この犯行に関与した教団幹部らは、遺族や被害者に対して何らの被害弁償もせず、遺族及び被害者の多数が地下鉄サリン事件の犯人に対して極刑を望んでいるのは当然のことである。
 地下鉄サリン事件は、我が国の治安に対する信頼を根本から揺るがし、無差別テロに対する恐怖と不安に陥れたのであり、社会に与えた影響は甚大である。
 被告人は、地下鉄サリン事件の共謀に加わり、実行役として千代田線の電車内にサリンを発散させたのみならず、自らの判断で、実行役らがサリン中毒に陥った場合に備え、解毒剤等を準備して犯行前に他の実行役に渡し、結果的に、実行役の逃走を容易にするなどして犯行の完遂に寄与したのであり、重要な役割を果たした。
 被告人は、医師として、誰にも増して人命の貴さを理解していたはずであるのに、このような卑劣な行為に及んで悲惨な結果を招来させたことについては、厳しく非難されなければならない。
 一、仮谷に対する逮捕監禁致死の事件は、周到な謀議を行い、組織性、計画性が認められる。
 被告人は、当初から犯行に加担していたわけではないが、その時点までの犯行の概要を知った上で、監禁を継続することとし、妹の居場所を聞き出す目的で仮谷に麻酔薬を投与するなどしたほか、合計約十一時間にわたる長時間、仮谷が教団施設から脱出することを不可能にさせたのであり、この犯行において重要な役割を果たした。また、事件後に罪証隠滅行為を行った。
 一、注射用チオペンタールの無許可製造の事件では、被告人は、「治療省大臣」として、中心的な立場で、非人道的なイニシエーションを行っていたばかりでなく、製造の過程で試作品の効果を確かめる実験をするなどして協力したのであり、関与の程度も積極的である。
 一、各犯行において、被告人は、医師でありながら、医療技術を悪用し、医師の名を汚したのであり、この点も看過できない事情である。
 一、各犯行の罪質、結果、なかんずく地下鉄サリン事件における残虐性、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響等からすれば、被告の刑事責任は重大で、これを償うには極刑をもって臨むのが当然であると思われる。
 ところで、死刑は犯人の情状を併せ考察し、罪責が重大で、やむを得ない場合に科することが許される究極の刑罰であるから、これを科するには慎重の上にも慎重を期さなければならない。
 一、被告人は地下鉄サリン事件について自首し、この自首は被告人の真摯な反省、悔悟の念に基づくものと認められる。
 被告人は、身を挺して殉じた地下鉄職員の崇高な行動と、自分が引き起こしたおぞましい無差別役人行為とを比べ、あまりの落差の大きさに雷に打たれたような強い衝撃を受け、この取り返しの付かない大きな過ちは、自分の生命を懸けても償えるものではないと胸が張り裂けるような思いがし、せめて自分にできることは、教団の犯罪行為がすべて明らかになるように、また、教団による悲惨な事件がこれ以上発生しないように、自分の知る限りを明確に述べることであると考えて、自首することとした旨供述している。
 被告人の供述状況をみると、地下鉄サリン事件について自首したのを皮切りに、その後も捜査、公判を通じ、一貫して、被告の関与した犯罪のみならず、教団の行った他の犯罪、教団の組織形態、活動内容等に関し、自己の知る限りを詳細に供述し、犯罪の解明に多大な貢献をしている。被告人の供述が突破口となって、麻原を始め教団上層部の検挙につながったことが窺われ、組織解体と将来の凶悪犯罪の未然防止に貢献したと評価することができる。教団の武装化が相当程度進展していた当時の状況に照らせば、その意義は決して小さくない。
 被告人は極刑が予想される中、臆することなく供述を続け、その内容は被告に不利な事項にまで及んでいる。包み隠さず、すべてを供述しようとする姿勢は、被告の反省、悔悟の念の深さを示している。
 また、真実を明らかにすることだけが自分に課せられた最後の使命であり、かつ、人間として当然の責任であるとし、麻原を盲信して犯行に及んでしまった悔しさ、情けなさ、被害者や遺族に対する申し訳なさから、時には号泣する被告人の姿に胸に迫るものを感じた者も少なくないであろう。「私は生きていちゃいけない。」という被告人の言葉には、自己保身の意図は一片も窺われない。
 死亡した被害者二名の妻も、当初は極刑を望んでいたが、公判を傍聴するうち一名は「一生刑務所の中で罪を償ってほしい」と証言するに至り、もう一名は「林被告の態度は怒りや悲しみを増大させるものではありません」と書いた上申書を検察官に提出した。少なくとも、被告人に対して極刑を望んでいると断ずることはできない。
 一、被告人は、麻原の説くところを盲信した結果、地下鉄サリン事件の実行役となることを決意したが、その際、教団と反対勢力との間で既に戦争が始まっていて、教団が潰されれば人類の救済は不可能になると考え、サリンの撒布がやむを得ない措置であると思い込んだのである。これを鵜呑みにしたことは愚かとしかいいようがない。
 しかし、被告人がなまじ純粋な気持ちと善意の心を持っていただけに、視野狭窄に陥って、麻原の欺瞞性、虚偽性を見抜けなかったとみることができる。そうすると、被告人が村井秀夫を介して麻原からサリン撒布の実行役になるように指示された際に、被告人の心理としてはこれに折し難かったというべきである。そして、この点は、その限度ではあるにせよ、考慮してよい事情である。
 被告人が地下鉄サリン事件の実行役に選ばれた経緯をみると、麻原が被告人をも実行役に加えるように指示したのである。いささか不自然の感がある上、被告人自身にとっても予想外の指示であったことに照らすと、麻原が被告人の信仰心に付け入って被告人を利用したものと認められ、この点についても、その限りにおいて評価すべき事情である。
 一、さらに被告人は、仮谷に対する逮捕監禁致死の事件において、犯行の発案、計画に参画したわけではなく、被告人の管理状況が死因と直接結び付いているとは考えにくい。
 一、加えて被告人は、医療技術を悪用したことを深く反省し自ら医籍の抹消を申請し、地下鉄職員の遺族に対し謝罪の意をしたためた手紙を送るなどして慰籍の努力をしている。既に教団を脱会し、教団に入信するまでは心臓外科を専門とする医師として数多くの患者の生命を救い、それなりに社会に貢献していたことなどの事情も認められる。
 以上、被告人の行った犯罪自体に着目するならば極刑以外の結論はあろうはずがないが、被告人の真摯な反省の態度や地下鉄サリン事件に関する自首、犯罪の解明に対する貢献など諸事情を鑑みると、死刑だけが本件における正当な結論とはいい難く、無期懲役刑をもって臨むことも刑事司法の一つのあり方として許されないわけではないと考えられる。(京都新聞 夕刊)
■傍聴100回 真の悔悟確信 「死刑覚悟感じた」許すことできないが 地下鉄サリン犠牲者の妻
 地下鉄サリン事件で夫を失った高橋シズエさん(51)は1995年12月の林郁夫被告の初公判以来、共犯被告も含め100回以上の公判を傍聴してきた。営団地下鉄霞ヶ関駅助役としてサリンの入った袋を片付けて犠牲となった夫の一正さん=当時(50)=の無念を思うと、時がたっても悲しみがいやされることはない。
 「被告の心情、事件の真相を確かめたい」との一心で東京地裁に足を運び続けた2年半。ようやく「許すことはできないが、林被告に真の悔悟があることは確信できた」という。
 地下鉄千代田線を利用して自宅から同地裁へ通う経路は偶然にも95年3月20日に林被告がたどった犯行のコースと重なる。「林被告が乗った一両目には乗らない。霞ヶ関駅でドアが開くと、そこは夫が倒れたホームだから」
 初公判での林被告のいかにも医師らしい落ち着いた態度に「えっ、この人が」と息をのんだ。96年3月の第2回公判で林被告は、遺族に謝罪し号泣、見ていた高橋さんも泣き伏した。「悔しさと怒りしかなかった。謝るくらいなら、なんでもっと前に気付かないの、って」
 林被告はその後も法廷で涙の謝罪を繰り返した。だが「事件後悲しいくらい疑い深くなった」という高橋さんの心は動かなかった。
 そんな心境が変化したのは昨年12月10日。林被告は被告人質問で、逮捕後に自殺を考えたことを明らかにし「家族に遺書を残そうと思った時、突然被害者の無念に思い至った。やっぱり私、生きてちゃいけない」と、審理が中断するほど声を上げて泣いた。その姿に「死刑を受け入れる覚悟を感じた」。
 結審前の昨年末、検察側から証人としての出廷を要請されたが、高橋さんは「気持ちの整理がつかない」と断った。林被告の量刑について法廷で述べることはなかった。
・特に違和感ない
 公判を傍聴し続けたジャーナリスト江川紹子さんの話 量刑については予想していた通りだった。林郁夫被告を持ち上げすぎだとか、いろんな意見があるだろうが、判決を聞いていて特に違和感はなかった。林被告は犯行時にマインドコントロールされていたと主張していたわけではないが、裁判所は松本智津夫被告の指示には逆らえない心理状況だったと判断した。それが最大のポイントだと思う。
 争いがあった部分でも、林被告の真摯(しんし)な反省態度を評価し、言い分を認めていた。岡崎一明被告も自首を主張しているが、真摯な反省をしているかどうかは評価が分かれており、注目したい。
・死刑の新基準評価
 渥美東洋・中央大総合政策学部教授の話 別の比較的軽い容疑で取り調べられ重い罪を認めたことを自首と認定し、組織のさらなる凶悪な活動を阻止したことと併せて、死刑を科すべきでない理由とした。この二つはこれまでにない判断。組織犯罪対策に配慮した面もあるだろう。今後、十分検討する必要があるが、死刑を科すことに限定を加える新たな理由を立てたことについては評価できる。
 これまで、死刑の基準はあまりにもあいまいすぎた。今後も(今回のように)理由をはっきりさせる判決が出てほしい。オウム事件を含め、別の事件の被告の判決にもかなり大きな影響が出そうだ。
・量刑とも満足
 斉田園太郎・東京地検次席検事の話 林郁夫被告について東京地検は、諸般の情状を考慮して無期懲役を求刑しており、本日の判決は事実認定、量刑ともに満足すべきものと考えている。地下鉄サリン事件や仮谷清志さん逮捕監禁致死事件については、松本智津夫被告=教祖名麻原彰晃=ら教団幹部の中に、共謀や関与を否認している者もいるので、判決の認定事実を検討した上で、立証に万全を尽くし早期結審を目指す。
・妥当と言えず不当でもない
 元広島高検検事長の竹村照雄弁護士の話 自らの医療知識を悪用した点など、林被告が教団の犯罪の中で果たした役割を考えれば極刑以外あり得ない。重大な犯罪を犯したものが、進んで詳細な供述をするのは当然のことであり、また、林被告ほどの人間であれば、松本被告の欺まん性にも早く気付かなくてならなかった。この判決についてはだれも妾当とは言えないし、不当とも言うことはできないと思う。きょうの判決で、死刑は改めてその存在の意味を重くしたと言えるだろう。裁判官も悩んだろうが、求刑が死刑であれば死刑判決が出たのではないか。
・誠実さ伝わる
 オウム真理教家族の会(旧オウム真理教被害者の会)の永岡弘行代表(60)の話 率直に言って無期懲役でよかったと思う。これまでの公判から「こういう残酷なことをする人ではない」と感じていたが、判決でも誠実な態度が伝わってその思いを強くした。麻原(松本智津夫被告)を法廷に引っ張り出して見せてやりたかった。
・無期囚の実質服役は20年弱 過去10年間
 無期懲役の判決を受けたオウム真理教「治療省大臣」林郁夫被告は控訴しない意向で、無期刑がこのまま確定するとみられる。刑法は無期刑囚にも仮釈放を認めており20年弱の服役期間で出所するケースが多い。
 刑法や犯罪者予防更正法は、服役期間10年以上の無期刑囚が「改しゅんの情や再犯の恐れがない」と認められた場合、服役先の刑務所長から申請を受けた法務省の地方更正保護委員会の決定で仮釈放できる、と定めている。
 法務省の犯罪白書(1997年版)によると、仮釈放された無期刑囚(仮釈放取消で服役、再度出所したケースを除く)は87年から10年間で175人。このうち128人が仮釈放までに服役した期間は、16年から20年。
 最近では、「狭山事件」で無期懲役が確定した石川一雄・元被告(59)=えん罪を訴え再審請求中=が94年12月、17年間の服役を経て仮釈放を認められた。(京都新聞 夕刊)
■「無期」に深々と一礼 林被告判決公判 目を伏せ涙ぬぐう 被害者は怒り新た
 死者12人、重軽症者約3700人を出した地下鉄サリン事件。無差別テロの実行に加わった医師に裁きが下った。26日開かれたオウム真理教元幹部、林郁夫被告(51)の判決公判。「犯罪史上類を見ない非人道的な犯行」と、厳しく指弾した裁判長。公判の中で林被告は「私、生きてちゃいけない」と号泣しながら、悔悟の言葉を繰り返した。傍聴した遺族の感情にも変化が見られ、検察側は重要供述を「自首」と評価、死刑を避けた無期懲役を求刑していた。
 「被告人を無期懲役とする」。26日午前11時10分、山室恵裁判長の声が張りつめた空気の東京地裁104号法廷に響いた。地下鉄サリン事件の実行犯として初めて判決を迎えたオウム真理教元幹部林郁夫被告は直立して主文言い渡しを聞いた後、やや間をおいて深々と一礼した。顔色は青白いが、表情に変化は見られなかった。
 その直後に閉廷。傍聴していた公証人役場事務長仮谷清志さんの長男実さん(38)は「たとえ死刑になっても納得できるものではない。この怒りは生涯忘れない」と強い口調で感想を漏らした。
 この日の林被告はグレーのスーツに白いワイシャツ姿という普段の公判と同様の服装で両手錠のまま入廷した。
 山室裁判長が「判決理由の要旨を告げ、最後に主文を言い渡します」と言い渡し方法を伝え、判決文朗読に入ると、被告席に座った林被告は終始つらそうに目を伏せ、時折ハンカチで目頭の涙を押さえた。
 「遺族、被害者の多数が地下鉄サリン事件の犯人に対し極刑を望んでいるのは当然」「医療技術を悪用し医師の名を汚した」などと厳しい断罪の言葉が続く。
 その一方で山室裁判長は、林被告が進んで供述し事件解明に貢献したことを認め「反省、悔悟の情は顕著」と情状を酌量、1時間以上にわたった判決理由朗読の最後を「無期懲役をもって臨むことも許されないわけではない」と結んだ。
 この日、前夜からの雨が残る地裁正面玄関前には早朝から傍聴希望者が集まり、締め切りまでに492人が列をつくった。しかし林被告がサリンをまいた千代田線で亡くなった二人の営団職員の妻は傍聴しなかった。
 「電車に乗る人や女の子がホームに並んでいるのを見て、自分が殺そうとしている人を実感した。でも結局は麻原を信じ、それにすがるしかないという思いだった」。
 林郁夫被告は拘置所で、地下鉄車内にサリンをまく直前の心理などをつづった14通の手紙を弁護人に託した。内心のかっとうや事件を告白した時の気持ちの揺れなどが記されている。「オウムは釈迦(しゃか)の現代版と信じていた。麻原にポア(殺害)されれば犠牲者も救われると。今思うととても恥ずかしい」。1995年3月18日、故村井秀夫幹部にサリン敷布を指示された時の気持ちをこう説明した。
 林被告は同年4月8日、石川県下で盗んだ自転車に乗って逃走していたところを逮捕された。それから1ヵ月後、地下鉄事件の実行犯だったことを供述する決断をした理由をこう述べる。「麻原のまやかしに気付いたのは、殺した(地下鉄職員)2人の方に心が行った時。電車を走らせるため、わたしがまいたサリンを片付けて亡くなった。わたしは医者で人を助けるのが本来の職業なのに」。
 しかし、決断しても犯行を告白できないまま数日が過ぎた。「麻原の命令でサマナ(出家信者)はどんな事でもやる。早く麻原を逮捕してほしいと。でも意志のままにならず最初はどうしても言えなかった」。同5月6日夜、取り調べを終えようとした警視庁捜査員に姿勢を正しながら、「わたしがサリンをまきました」とようやく告白した。
 最終陳述で、林被告は「この手紙で、わたしの知る限りのすべての事実を明らかにした。もう言い残したことはない気持ちです」と語った。14通の手紙は昨年8月から今年1月にかけて書かれ、積み重ねると30aに及ぶ。これらの手紙は証拠採用された。「どんな判決が出ても控訴するつもりはない」。林被告は判決前、弁護人にそう語っていた。(京都新聞 夕刊)
■林郁夫被告に無期懲役 「地下鉄サリン」など6事件 「自首」・証言を評価 東京地裁判決
 12人の死者と5000人を超す重軽症者を出した地下鉄サリン事件の実行犯とされ、計6事件で殺人や逮捕監禁致死などの罪に問われたオウム真理教元幹部・林郁夫被告(51)に対し、東京地裁は26日、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。林被告について山室恵裁判長は「医師としてだれにも増して人命の尊さを理解していたはずなのに卑劣な行為に及び、このような悲惨な結果を招いた」と厳しく批判した。そのうえで、「被告の行った犯罪自体に着目するならば極刑以外の結論はあろうはずがない」としつつ、被告の「自首」が教団幹部の逮捕や教団による数々の組織犯罪の解明につながった点などを評価。「死刑だけが正当な結論とは言い難い」と述べた。
・松本被告の「命令」認定
 地下鉄サリン事件で殺人罪などに問われた14被告のうち、判決が言い渡されたのは初めて。林被告はこれまでの公判で「どんな判決でも従う」と繰り返し述べており、無期懲役刑が確定する公算が大きい。
 山室裁判長は、主文の宣告に先立って判決理由を読み上げる形を取った。この中で、地下鉄サリン事件は「松本智津夫(麻原彰晃)被告の命令で組織的、計画的に引き起こされた無差別大量テロで、およそ救済とは対極にある蛮行だった」と認定した。
 また、林被告が起訴された公証役場事務長監禁致死、2件の女性信徒監禁、犯人隠避、薬事法違反の5つの事件についても、起訴事実にほぼ沿った形で事実を認定し、「医師としての知識を悪用した」などと厳しく指摘した。ただ、公証役場事務長の死因については「確定的なことは言えない」と述べ、「林被告の管理下では死亡につながる行為はなかった」とする弁護側の主張を一部受け入れた。
 林被告に対する論告で検察側は、「多大な困難を伴う組織犯罪の全容解明や、組織の中枢の逮捕や処罰、将来の犯罪の防止に貢献した」と述べて刑事政策上の効果や配慮を前面に打ち出した。さらに、遺族の被害感情が一部和らいでいるという事情もあるとして、この種の事件では異例ともいえる無期懲役を求刑していた。
 この日、判決理由で山室裁判長は、1995年12月に起こされた地下鉄サリン事件の犯行動機について、「首都中心部を大混乱に陥れ、警察組織に打撃を与えると共に教団への強制捜査を免れようとした」と認定。「動機に酌量の余地は全くなく招いた結果も重大だ」と批判した。
 そのうえで、検察側、弁護側双方の主張を受け入れて、捜査段階や公判段階で進んで供述したり証言したりするなど教団の犯罪解明に貢献した点、真剣に反省悔悟している点などを評価。「無期懲役をもって臨むことも刑事司法の一つのあり方として許されないわけではない」と結論づけた。
・「特段の事情」で死刑成軽
 《解説》なぜ、死刑ではなく無期懲役なのか。計13人の生命を奪った犯行に関与した林郁夫被告に対する判決で示された量刑理由は、今回の判断は特別な事情が重なったゆえの特別な結果であることを強調したうえで、「無期懲役刑をもって臨むことも刑事司法の一つのあり方」と述べた。この判決が量刑面で他の信徒被告の裁判に直接波及すると考えるのは早計だが、判例の枠組みの中でこうした判断もあり得ることを示した判決として注目される。
 その判決は、地下鉄サリン事件で被告の「自首」が成立するという判断を示した。それがもたらした「組繊犯罪の解明と組織の中枢の逮捕・処罰」、さらには「将来の犯罪の予防」などに貢献したとされる点についても丹念に触れた。
 3月の論告求刑公判で、検察側は被告の「自首」などを「特段の事情」として挙げ、犯行の結果に比べれば極めて異例といえる無期懲役の求刑にとどめていた。
 実は検察内部でも、求刑への異論は判決間際までくすぶっていた。仮に、判決が検察側が挙げる「特段の事情」を酌量せず、そもそも無期懲役刑が相当だという判断を示すようなことがあった場合について、「量刑不当を理由に控訴することもできなくなる」と懸念を示す検察幹部もいた。法廷が異なるとはいえ、他の実行役についても無期懲役が相当という先例にもなりかねないからだ。
 そんな「危険」を冒してまで、あえて無期懲役を求刑したのは、組織犯罪に対してわが国の刑事司法がどのような姿勢で臨むかという先例となるケースと位置づけたからだった。連続4人射殺の永山事件判決で最高裁が示した「死刑選択の一般的基準」は、裁判上の指針として定着し、殺害の手段・方法の残虐性などのほか殺害された被害者の数を踏まえ、やむを得ないと認められる場合には死刑の選択も許される、とされている。
 今回の判決は、検察側の主張に理解を示したうえで、「死刑だけが正当な結論とはいい難い」と、いわばぎりぎりの判断を示した。最高裁が示した死刑適用基準との整合性を図りつつ、結果的に「特段の事情」を認めた点で意味があるといえそうだ。(社会部・後田竜衛)(朝日新聞 夕刊)
■林郁夫被告の判決理由(要旨)
 東京地裁が、地下鉄サリン事件の実行犯とされ、六つの事件で殺人や殺人未遂などの罪に問われたオウム真理教元幹部・林郁夫被告(51)に言い渡した判決理由の要旨は次の通り。(敬称、呼称略)
 地下鉄サリン事件は、松本智津夫や教団幹部らが、平日朝の通勤時間帯に、東京都内を走る地下鉄の複数の電車内において一斉にサリンを発散させ、乗客ら十二名を殺害し、多数の者に重軽傷を負わせて殺害の目的を遂げなかったというものである。
 松本らは、仮谷清志を拉致した事件が教団の犯行であると発覚することを恐れ、警察の教団施設に対する強制捜査を阻止するため、首都中心部を大混乱に陥れようと考えて、地下鉄サリン事件を敢行したのであり、その発想自体、稚拙で、短絡的であるばかりでなく、教団の利益のためならば手段を選ばず、他人はどうなろうとも構わないという自己中心的で、教団特有の体質に根ざした動機に基づく犯行である。
 教団は、前示のとおり、社会や国家権力に対する対決姿勢を強め、松本の指示により教団の武装化を推進していたのであり、このような教団の反社会性、武装集団としての性格が地下鉄サリン事件を引き起こした遠因となっており、この点を軽視することはできない。
 サリンは、自然界には存在しない人工の有機リン化合物で、生物の神経伝達機能を破壊する兵器用神経ガスとしてナチス・ドイツの時代に開発され、大気中一立方b当たり一〇〇_グラムの濃度で存在すれば、一分間で半数の人間が死亡するといわれるほど殺傷能力の高い毒ガスである。
 地下鉄サリン事件は、こともあろうに、化学兵器であるサリンを使い、朝の通勤ラッシュの時間帯を狙って、閉鎖された地下空間で、かつ、混雑した地下鉄の電車内において、同時多発的に敢行した無差別テロであり、日本はもとより世界の犯罪史上でも類を見ない非人道的な犯行である。治療に当たった医師の適切な措置がなければ、より大規模な殺戮(さつりく)の事態を招きかねない状況にあったのであり、人間の尊厳をおよそ無視した犯行である。
 この事件は、松本智津夫を首謀者として、多数の教団幹部らが、犯行場所、日時、方法、逃走手段、役割分担等つき綿密な謀議を重ね、犯行に用いる自動車の調達、現場の下見、変装用衣類の購入をするなど、周到な準備を遂げた上、それぞれの役割を果たした組織的、計画的犯行である。教団における絶対的存在である松本が、教団独自の教義を背景に、教団幹部らに救済の一環と信じ込ませて実行させた面もあるが、その実態は、人命の貴さを一顧だにしない無差別大量殺人にすぎなかったのであって、救済とはおよそ対極にある蛮行というほかない。
 犯行の結果は、死者が十二名、サリン中毒の傷害を負った者が十四名、そのうち重篤な者が二名という深刻なものである。被害に遭った人々は、いずれも、地下鉄を利用していた通勤客や駅構内の職員らであり、もとより何の落ち度もなく、サリンで攻撃されるいわれもない普通の市民であるのに、教団の組織防衛という愚劣で矯小(わいしょう)な目的のため、理不尽な犯行に巻き込まれ、その犠牲になったのである。
 被害現場となった駅構内及びその近辺においては、口から血の混じった泡を吹き、意識を失って倒れ、縮瞳(しゅくどう)、吐き気、頭痛等で苦悶(くもん)する者が続出し、数百人もの人々が救急車で病院に搬送されるなど、阿鼻叫喚の巷(ちまた)と化す凄惨な状況であった。死亡した被害者は、いずれも、サリンを吸入したことすら分からずに意識を失って倒れ、その後意識が回復しないまま絶命したのであり、その苦悶、恐怖には、想像を絶するものがある。一瞬にして家族の一員を奪われ、不幸のどん底に陥れられた遺族の悲嘆、絶望、怒りは察するに余りあり、しかも、遺族の中には、悲しみと絶望から、心身疲弊して病床に伏した者も少なくなく、その状況は悲惨というほかない。
 幸いにして一命は取り留めたものの重篤な後遺症によって治癒の見込みさえ立たない被害者もいるのであって、その苦悩、無念さは、死亡した被害者に勝るとも劣らず、その家族の負った悲しみ、苦しみもまた計り知れない。しかるに、この犯行に関与した教団幹部らは、遺族や被害者に対して何らの被害弁償もせず、遺族及び被害者の多数が地下鉄サリン事件の犯人に対して極刑を望んでいるのは当然のことである。
 さらに、地下鉄サリン事件は、一般市民を対象にした無差別大量殺人として人々を震憾させ、我が国の治安に対する信頼を根本から揺るがし、無差別テロに対する恐怖と不安に陥れたのであり、社会に与えた影響は甚大である。
 ところで、地下鉄サリン事件の共謀に加わり、実行役として千代田線の電車内にサリンを発散させたのみならず、だれに指示されたわけでもないのに、自らの判断で、実行役らがサリン中毒に陥った場合に備え、解毒剤等を準備して犯行前に他の実行役に渡し、結果的に、実行役の逃走を容易にするなどして犯行の完遂に寄与したのであり、重要な役割を果たした。
 また、被告人は、自らが発散させたサリンによって二名を死亡させ、二名にサリン中毒の傷害を負わせたのであって、重大な結果を生じさせた。とりわけ、死亡した二名は、いずれも、地下鉄職員として、乗客の安全と電車の運行の確保という強い使命感から、危険を顧ることなく、原因不明の物体を素手で片付けるなどした結果、命を落としたのである。
 被告人は、医師として、だれにも増して人命の貴さを理解していたはずであるのに、このような卑劣な行為に及んで悲惨な結果を招来させたことについては、厳しく非難されなければならない。(朝日新聞 夕刊)
■教団なお不気味な動き 「施設」に強い警戒感 山科 住民不安 ビデオ監視
 オウム真理教の「教団施設」をめぐる住民とのトラブルはいまも続いている。
 福島県いわき市小名浜で、信徒が借りている元電気機器販売会社の保養施設は、松本智津夫被告の三女と信徒が住民票を移して話題になった。地元信用金庫が昨年12月、これを競売で落札した。信徒側は異議を申し立てるなどしたが、棄却された。信金側は所有権移転登記を行い、4月中旬、福島地裁いわき支部に引き渡しの強制執行手続き書類を提出した。
 いまのところ信徒は退去しておらず、周囲は地元のいわき東署が24時間態勢で警備している。付近の住民でつくる「玉川地区オウム対策協議会」の西田幸男会長も「数日前にはマントラ(詞唱)も聞こえた。目立った動きはないが、監視を続ける」と警戒を解いていない。
 京都市山科区。分譲マンション「山科ハイツ」の管理組合が「教団施設として使用し、住民に不安や恐怖感を与えている」として、信徒が入居する部屋の明け渡しなどを求めた訴訟で、京都地裁は今年2月、組合側の言い分を認めた。信徒側は控訴している。
 現在、部屋には男性信徒が入居しているという。中には祭壇があり、新たに教祖になった松本被告の息子2人の写真が中央に、松本被告の写真がその横に置かれている。部屋の外には住民側によって監視カメラが備え付けられ、ビデオが24時間信徒の出入りを記録している。
 管理組合によると、訴訟の判決以降、信徒の出入りが顕著に減ったという。組合の花山周三理事長(51)は「オウムが、社会的、道義的責任をどう総括するのかがポイント。教団のやったことに対して責任を持てば、話し合いの第一歩にはなる。彼らはそれに答えず、全部はぐらかす」と批判する。
 事件の風化もあり、不安は消えないという。「ビデオの記録には、教団への勧誘のビラを配っている人たちの出入りも残っている。そんな集団が一緒にいることが怖い」
・「事件の風化 心配」教団復帰する元信徒も
 林郁夫被告の裁判は、オウム真理教の元信徒や親、脱会を支援するカウンセラーらの注目も集めていた。
 西日本在住のオウム真理教の元信徒(23)は、林被告の裁判での証言について、「医師としての良心の呵責にさいなまれ、最初に教団批判したことは脱会者の一つの支えになった」と評価する。「松本(智津夫被告)の命令は絶対で逆らえなかった。私自身も『サリンをまけ』と言われたらやっただろう」と林被告の心情に理解を示す一方で、いまだに罪を認めない被告たちには「本当のことをもっともっとしゃべっていくべきだ」と不満をぶつけた。
 最近の教団の活発な動きには危機感を抱いている。「松本被告の裁判が長期化して、事件が風化していくのが心配だ。脱会した人が教団に復帰したり、セミナーに新たな人が参加したりしている。気を許すことはできない」
 親たちは、子どものマインドコントロールを解く難しさに頭を痛めている。オウム真理教家族の会(旧被害者の会)代表の永岡弘行さん(60)は「会員の中で子供が戻ってきたのは数パーセント。親からすれば悲しいが、監視せざるを得ない。出たり入ったりは、オウムに限らずカルト(熱狂的宗教集団)につきものだ」と話す。
 教団からの脱会を支援している日本福音ルーテル三鷹教会の平岡正幸牧師のような宗教者や精神科医、弁護士などが参加する日本脱カルト研究会(JDCC)はこの春、マインドコントロールから身を守るためのカルト予防ビデオ「幻想のかなたに」を作った。大学などに売られた約250本は、サークルを装った勧誘を見破るためなどに活用されているという。
 平岡牧師によると、地下鉄サリン事件後に新たに入信した信徒には、学校や職場でいじめにあっていた人が多い。バッシングされる教団と自分とを重ね合わせ、共感するという。
 「オウムが続いている背景には、いじめが頻発するいまの社会がある。社会の土台も、オウムも以前と変わっていない」。平岡牧師は、教団がある面では「駆け込み寺」となっている現状を指摘した。
・「これでよかった」被害者語る
 営団地下鉄日比谷線小伝馬町駅で事件に巻き込まれた被害者の一人は「最初から自分の犯した罪や社会的な責任をきちんと把握していたのは、彼(林被告)くらいしかいなかった。うらみ、つらみは早い段階からなかった。極刑ではなく、これ(無期懲役)でよかった」と話した。
・国民全体が納得できるか
 元福岡高裁長官の佐々木史朗・名古屋経済大教授(刑法) 判決は予想通りだ。あとは、判決がどれだけ合理的な説明をできたか、ということになる。動機や実行行為を考えれば、こうした判決はむしろ犯罪者の助け舟ということになりかねない。日本の刑事裁判では常に被害者が日陰に置かれる。被告は一部の被害者に謝罪の手紙を送っているようだが、ほかにも被害者は多い。この判決で果たして被害者、ひいては国民全体が納得できるのかどうかが気になる。(朝日新聞 夕刊)
■悔悟…償いきれぬ罪 林被告に無期懲役 「生きてちゃいけない」 判決理由に泊まらぬ涙
 罪を償うのに、命を差し出せと申し渡されるより、罪の意識にさいなまれながらなお生きて罪を償え、と言われることの方がかえってつらい、ということがあるのではないか。26日、地下鉄サリン事件の「実行犯」初の判決として、「無期懲役」を言い潰された後、法廷の真ん中に立ち尽くすオウム真理教元「治療省」トップ林郁夫被告(51)の後ろ姿を見つめながらそう考えた。未曾有の無差別大量殺人事件を引き起こした一人として、被害者とその遺族の悲しさ、苦しさを思えば、「私は生きてちゃいけないと思う」と法廷で述べ、どんな判決にも潔く従う、と言ってきた被告は、これからどう覚悟を決めていくのだろう。
 判決の日、濃いグレーのスーツを着、きちんと整髪して出廷した被告の頭頂部が、心労のためでもあるのか、2年5ヵ月前の初公判のときと比べて、随分と薄くなっているのが見える。
 被告にとって、主文の言い渡しが、最初であろうと、後回しであろうと、どうでもいいことだったろう。被告の周辺が語ったところでは、3月2日の論告求刑公判で、検察側が「死刑」ではなく、「無期懲役」を求刑した直後、林被告は、「死んでおわびをするのが償いの一部だと思っていたのに、それも出来なくなるのかな」と、すっかり放心した様子だった、という。
 「生きてちゃいけない」と言ったのも、被告にしてみれば、あのような犯行に及んだ自分の存在そのものを許すことが出来ない、という気持ちからなのだ。
 その思いが再び込み上げてくるのだろう、裁判長の朗読する判決理由が、仮谷清志さん拉致事件に関係した別の信徒の指紋除去手術に及び、さらに地下鉄サリン事件の日の、あのおびただしい混乱と悲惨な光景、被害者の無念の思いにさしかかると、被告はポケットからハンカチを取り出して、あふれる涙をふいた。
 被告の法廷を特徴づけるのはその悔悟の涙だった。
 とりわけ激しく被告が泣くのは、自分がまいたサリンを吸って死亡した2人の地下鉄職員と引き比べて、「自分の行為のなんとおぞましいことか」と述べるときだった。人の命を救う医師である自分が、人のためになろうと出家までしたのに、結局何も得られずに、償いきれない罪を負ってしまった、との思いは、被告の心を内側から激しく突き上げるのだ。
 本人の口から結局聞くことが出来なかったので、本当に彼の言葉だったかどうかは分からないが、高名な心臓外科医であった被告が宗教の世界を目指したのは、自分を「売ぺきな円」に仕上げたい、と考えたからだ、と聞いたことがある。被告が法廷で、「解脱、悟りが得られれは、自分は還俗して、その境地を医療に生かしたい、と思った」と説明したのが、おそらくそのことだったろう。
 人はなぜ死ぬのか。それを見通すことは出来ないのか。医療の限界を思うとき、解脱を得られれば、問題はすべて一挙に解決出来るのではないか、と考えて求めた「自己完結」。
 だが、そう考えれば考えただけやすやすと、被告は「教祖」の暗い野心にからめ捕られ、その「野望」の実現のための一兵卒に仕立て上げられたのだった。
 起死回生の「変身」を遂げて、一挙にこの閉塞状況から抜け出せたらどんなにか、という思いはだれにもあるだろう。しかし人生をある時一気に逆転させる、都合のいい手だてなんてないのだ。そう考えずに、ただ一人の「絶対者」を求め、神に見立ててその前にひれ伏し、何も考えず、ひたすら言われるままに行動する道を、なぜ選んでしまったか。
 被告は今、独房で原稿を書いている。もし出版できたら、その印税で少しでも被害者に弁償することが出来るように、と思うと同特に、自分と同じ錯覚に陥っそしまう人がこれ以上出ないように、と願ってのことだ、と被告は周囲に説明している、という。
・「判決かみしめねば」元信徒
 午前11時10分、山室恵裁判長に「被告人、前に出なさい」と言われ、林郁夫被告は裁判長の前に立った。背筋を伸ばし、軽く握った両手をわきにおいた。判決の主文が言い渡される間、姿勢を変えず、「被告人を無期懲役とする」と裁判長が言う間も、まっすぐ前を向いていた。
 この1時間10分前。
 「まず初めに理由の要旨を告げ、最後に主文を言い渡します。長くなるので、被告人は座って」
 開廷早々、裁判長がそう告げると、傍聴席に緊張感が走った。
 主文が判決理由朗読の後に回った場合は、死刑判決が言い渡される例が多い。検察側の求刑は無期懲役だが、求刑は検察官の「参考意見」にすぎず、無期の求刑に対して裁判長が極刑を言い渡すことも理論上は可能だ。一方で、無期懲役の求刑に対して極刑判決が言い渡されたケースは記録上、ない。
 傍聴席には、地下鉄サリン事件とともに林被告が起訴されている公証役場事務長監禁致死事件の被害者の長男、仮谷実さん(38)や猛毒のVXで被害を受けたオウム真理教家族の会(旧被害者の会)の永岡弘行代表(60)らが姿を見せた。
 今年3月の論告求刑公判で、「かなうならば、父と同じ恐怖と苦痛を味わわせたい」とコメントを寄せていた実さんはこの日、少し緊張した表情を見せていた。永岡代表は「生きていてはいけない、と彼は言う。服役中も罪を償い続けるだろう」と言って法廷に入り、傍聴席に着いた。
 関心の高さを反映するように、この日朝、東京地裁前には、傍聴券を求める長蛇の列ができた。
 かつて教団「科学技術省」に所属したことがある元信徒(30)の姿もあった。
 元信徒は「私たちにとって林さんの判決はひとごとではない。林さんは自分の存在すら否定してしまっている。生きて罪をあがなうのも、またつらいことだ。元信徒も、現役の信徒も、判決の重みをかみしめなくてはならない」と話した。(朝日新聞 夕刊)
■大阪空港−奈良線 リムジンバス申請
 大阪空港交通(本社・大阪府池田市)と奈良交通(本社・奈良市)は大阪空港とJR奈良、近鉄奈良両駅を結ぶリムジンバスの共同運行を決め、26日、近畿運輸局に認可を申請した。
 両社によると、7月中旬から、1日15−16便を運行させ、JR奈良駅から70分、近鉄奈良駅から60分で結ぶ予定。うち一部がJR天理、近鉄天理両駅まで運行する。(朝日新聞 夕刊)
27日■保津峡に転落 女性助かった JR待合室から24b
 26日午後4時ごろ、亀岡市保津町保津山、保津川に架かる橋上にあるJR山陰線の保津峡駅下りホーム待合室の窓から、女性が約24b下の保津川河川敷ののり面に転落した。
 京都市消防局の救助隊員がロープを使って河川敷に下り、女性を救出した。女性は左足を骨折したが、命に別状はなかった。
 亀岡署によると、転落したのは京都市右京区の女子大学生(21)で、「自分で落ちた」と話している、という。同署は、転落した地点が傾斜のあるのり面で、草が生えていたため、衝撃がやわらいだとみている。(京都新聞)
■奈良−大阪空港間バス路線を申請
 奈良交通(奈良市)と大阪空港交通(池田市)は共同で26日、大阪空港近鉄奈良駅・JR奈良駅間(一部は両奈良駅を経由、天理市まで)のリムジンバス路線を近畿運輸局大阪陸運支局に申請した。
 奈良発は午前5時台から午後5時台まで、1日15便。大阪空港発は午前8時台から午後9時台まで、1日16便がそれぞれ運行される。同空港からJR奈良駅までは約1時間10分。料金は大人1440円、小人720円(天理まで大人1680円、小人840円)。(京都新聞)
■ニュートラム 非常ブレーキ作動し急停止
 26日午後1時半ごろ、大阪市住之江区南港中5丁目の市営ニュートラム中ふ頭駅の南東約50bで、住之江公園発コスモスクエア行き電車(4両編成)の非常ブレーキが突然作動し、急停車した。電車は約20分間停車した後、ブレーキを手動で解除して運転を再開した。けが人はなかった。この故障で上下線計6本が最高23分遅れ、約500人に影響が出た。(朝日新聞)
■京阪奈新線 三セク設立 近鉄や奈良県合意
 大阪都心部と関西文化学術研究都市を結ぶ京阪奈新線(生駒−登美ケ丘、8.7`)の建設をめぐり、事業主体の近畿日本鉄道と奈良県、奈良市、生駒市の沿線自治体は27日、同線の建設主体となる第三セクターの設立で合意したと発表した。新会社を7月をめどに設立。奈良県など自治体は今年度に必要な出資金や補助金を、6月の補正予算に計2億6800万円計上する。
 京阪奈新線の総建設費は986億円で、うち三セク会社がまかなう建設費は777億円。(朝日新聞 夕刊)
28日■大阪の地下鉄また線路出火 2万4000人影響
 27日午後7時5分ごろ、大阪市浪速区の市営地下鉄御堂筋線大国町駅から約350b南の軌道内で煙が出ているのを、中津発新金岡行き電車の運転士が発見。電車は手前で停止し、間もなく大国町駅員らが消し止めた。
 消火作業などで電車約40本が最大26分遅れ、約2万4000人に影響が出た。
 浪速署などによると、レールの間にある排水溝にたまった新聞紙やごみが、何らかの原因で自然発火したとみられ、同署などが調べている。(京都新聞)
■トイレ付き車両困難 JR紀勢・阪和線
 和歌山と大阪を結ぶJR紀勢・阪和線など主要駅間の所要時間が長い路線にトイレのない列車があるのはサービス上問題として、近畿行政監察局が4月、JR西日本に改善を求めていたことに対し、同社は27日、トイレ付き車両配備が事実上困難であることを同監察局に文書で回答した。
 回答書は「駅時刻表や車内放送でトイレのないことを利用者に周知するなど最大限の処置を実施したい」などとして、総合的な判断からやむを得ず通勤型のトイレなし車両を使うことがあるとしている。(京都新聞)
■海水浴客向けきっぷ2種発売 KTRとJR西日本
 北近畿タンゴ鉄道とJR西日本は来月18日から、京阪神からの海水浴客向けに、特急の普通車指定席に往復乗車できる「マリン丹後きっぷ」「日帰り琴引浜ビーチきっぷ」を発売する。利用期間は7月18日から8月9日。
 「マリン」(有効期間4日間)は、臨時特急「マリンタンゴディスカバリー」「マリンタンゴエクスプローラー」で、京阪神の3市内から天橋立−久美浜まで往復。天橋立−久美浜間は普通列車で乗り降り自由となる。「日帰り琴引浜」(同1日だけ)は、京阪神3市内から網野までの往復で、定期特急の普通車指定席も利用でき、天橋立で乗り継ぎも可能。
 京都市内からの料金は、「マリン」が大人9600円、「日帰り」が8000円、子供はそれぞれ半額。
 2人以上のグループに発売される(子供だけのグループを除く)。(京都新聞)
■地元企業の決算(単位100万円)
 ◇京福電気鉄道3月期決算無配継続 売上高9315(前期10631)▽経常損失930(同損失542)▽当期損失162(同損失79)▽無配(同無配)▽株主総会は6月25日▽取締役 田中輝重▽退任監査役西村昭太郎(京都新聞)
■旅客数滅で赤字続く
 京福電気鉄道は、昨年10月に嵐山線の運賃を値上げしたが、JR京都駅ビル、京都市地下鉄東西線の開業の影響もあって旅客数の減少が続き、鉄道・バス両事業の売り上げは前期比6%減った。個人消費の冷え込みで分譲住宅販売も落ち込み、総売上高は同12.4%減少。福井県内の遊休地の売却益3億6000万円を計上したが、当期赤字は拡大した。
 99年3月期は、人件費と設備投資を抑制するが、旅客数の低迷が続くとみて、売上高92億4200万円(前期比0.8%減)、経常損失5億3900万円、当期損失6300万円を予想する。配当は無配継続の方針。(京都新聞)
■中労委の救済命令取り消す JR不採用2訴訟で当期用地裁判決 「選考責任なし」北海道・九州 本州・中労委権限を逸脱
 国労組合員のJR不採用問題をめぐり、採用選考のやり直しなどを命じた中央労働委員会の救済命令を取り消すようJR6社が求めた行政訴訟で、東京地裁は28日、救済命令を取り消す判決を言い渡した。北海道、九州と本州の2組に分かれた審理のうち、北海道、九州の訴訟ではJRの人選責任を全面的に否定したが、本州の訴訟ではJRの不当労働行為となる余地を認めた上で「救済命令の内容が中労委の権限を逸脱している」とそれぞれ別の判決理由が示された。JRの責任を否定した判断が一部示されたことは、労働委員会制度の存在意義をめぐり深刻な議論を起こしそうだ。10年以上にわたって続く戦後有数の労使紛争は最大の節目を迎えた。
 北海道、九州の組合員の訴訟で萩尾保繁裁判長(異動のため福岡石武裁判長代読)は「JR採用の人選をしたのは国鉄であり、JR側は国鉄の作った名簿に従って採用を決めただけで、選考の責任は負わない」と判断、JR側の主張をほぼ全面的に認めた。
 しかし本州五都県の組合員の訴訟で高世三郎裁判長は「国鉄からJRへの採用は、JRによる新規採用に当たる」との判断を示して事実上JRの人選責任を認めた上で「仮にJRの人選に不当労働行為があっても、中労委は採用のやり直しを命じることができるだけ」とし、一部組合員の採用そのものを命じた中労委の救済命令は違法だとした。
 中労委命令は1987年の国鉄分割・民営化後、解雇された国労組合員について「採用選考の際、組合差別の不当労働行為があった」と判断。北海道、九州の組合員については選考のやり直し、本州では一部組合員の採用を命令したため、JRは不服として取り消しを求め提訴した。
 訴訟は北海道、九州の組合員と本州の組合員の2組に分かれて別の法廷で進行し、昨年5月には北海道、九州の事件で萩尾裁判長が「紛争発生から10年の歳月を数え、早期に抜本的な解決を図るべき時期にきている」と和解を勧告。中労委側は受け入れを回答したが、JRは拒否したため、判決言い渡しとなった。
・政府・与党の役割重大に
 JR側の勝訴に終わった28日の国労組合員不採用訴訟の東京地裁判決は、勝利判決をきっかけにJRに和解を迫る戦略を持っていた国労や、命令の権威をかけて争ってきた中労委にとって打撃となった。
 中労委側が控訴することは確実とみられ、11年余り続いた労使紛争がさらに長期化することは避けられない。
 国鉄改革の負の遺産を清算するためには、法律論争でいたずらに解決を長引かせるのではなく、司法の場を離れた労使の話し合いが不可欠だ。その意味で、政府・与党が果たすべき役割は大きい。
 JR側はその責任を認めた中労委命令のすべてについて取り消しを求める行政訴訟に持ち込んだ。その結果、命令の実行は宙に浮いたままとなり、不当労働行為の審査は地労委から最高裁まで事実上、5審制になっているのが実態だ。
 判決は、地労委段階から一貫して同じ論理でJRにに和解を迫る戦略を持っていた国労や、命令の権威をかけて争ってきた中労委にとって打撃となった。
 中労委側が控訴することは確実とみられ、11年余り続いた労使紛争がさらに長期化することは避けられない。
 国鉄改革の負の遺産を清算するためには、法律論争でいたずらに解決を長引かせるのではなく、司法の場を離れた労使の話し合いが不可欠だ。その意味で、政府・与党が果たすべき役割は大きい。
 JR側はその責任を認めた中労委命令のすべてについて取り消しを求める行政訴訟に持ち込んだ。その結果、命令の実行は宙に浮いたままとなり、不当労働行為の審査は地労委から最高裁まで事実上、5審制になっているのが実態だ。
 判決は、地労委段階から一貫して同じ論理でJRに救済命令を出し続けてきた労働委員会の命令を、すべて否定することにもつながる。命令の権威は失墜し、労働委員会制度の存在そのものが問われることは必至だ。
 この日の判決は、JRへの採用手続きを定めた国鉄改革法の規定について、純粋な法解釈に基づいて判断した。
 「不採用による組合差別」をいかに是正するかという視点でJRの責任を認定した労働委員会とは異なる「司法の論理」を展開したとも言える。
 判決が指摘するように、不当労働行為の責任がJRではなく、国鉄や国鉄清算事業団にあるとしても、すでに国鉄はなく、事業団も今秋には解散の予定だ。国労組合員にとって、鉄道事業を引き継いだJR以外に復帰すべき職場はなく、事実上、職場復帰という形での救済の道は閉ざされることになる。
 その意味から、判決は司法による救済には限界があることも示した。(解説)
・労働委員会 あっせん、調停、仲裁などの労使紛争の調整や、不当労働行為の救済を行う行政委員会。各都道府県に地方労働委員会、労働省に中央労働委員会がある。労働者、使用者、公益代表の委員からなる三者構成。労働組合員を理由に不利益な扱いや組合運営への介入などについて申し立てを受けると、裁判の口頭弁論に当たる審問で事実関係を審理し、不当労働行為に当たると判断すれば、是正のため救済命令を出す。地労委命令に不服な場合は中労委に再審査申し立てができるほか、地労委、中労委命令に対しては、地裁に命令取り消しの行政訴訟を起こして争う道もある。
・不採用問題 1987年4月の国鉄の分割・民営化で、北海道、九州などの国労組合員を中心に約7600人がJRに採用されなかった。このうち約3100人が全国18都道府県の地方労働委員会に計27件の救済を申し立て、すべての地労委がJRに採用を求める救済命令を出した。JRは中労委に再審査を申し立て、中労委は国鉄清算事業団を90年3月末で解雇された1047人を対象に一部を除いて、あらためて選考、採用するよう命じた。JR、国労双方が不服として命令取り消しの行政訴訟を東京地裁に起こした。
・JR不採用事件の判決骨子
 【北海道・九州訴訟】
 一、中労委の救済命令を取り消す
 一、国労の訴えを却下する
 一、国鉄の行った採用候補者の選定に不当労働行為があったとしても、その責任は国鉄が負い、設立委員、JR各社は責任を負わない
 一、国鉄とJR各社の間に実質的な同一性があるかは疑問
 一、中労委の救済方法についての裁量権は無制約ではなく法令上の制約を受ける
 【本州訴訟】
 一、新規採用の際、労働組合の脱退、不加入を条件とする場合以外は不当労働行為に当たらない
 一、中労委の救済措置は、救済対象者を採用するか否かをあらためて判断し直すことを命ずるのが限度である(京都新聞 夕刊)
■JR不採用訴訟判決要旨
 JR不採用訴訟で東京地裁が二十八日、言い渡した二件の判決理由の要旨は次の通り。
【北海道・九州訴訟】
 一、労組法七条の使用者は、雇用主以外の事業主であっても、自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の使用者にあたると解される。
 しかし、国鉄改革法上、承継法人の職員採用手続きに関し、設立委員には国鉄に対して職員の募集にあたってその労働条件と採用基準を提示する権限、国鉄から提出された名簿に記載された者の中から採用者を決定する権限があるにすぎない。
 採用候補者の具体的な選定行為、これに基づく名簿作成行為自体は国鉄がその責任と権限に基づいて行うことが定められているうえ、設立委員において国鉄が行使する右権限を規制しうる規定も存在しないことを併せ考慮すれば、設立委員は、採用候補者の具体的選定、これに基づく名簿作成過程を現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にはなかったものと認められる。
 従って、一九八七年四月一日の採用に関して国鉄の行った採用候補者の選定、名簿作成に不当労働行為に該当する行為があったとしても、その行為に関する労組法七条の使用者としての責任は、専らこれを行った国鉄が負うべきものであって、設立委員、ひいてはJR各社がその責任を負うべきものではない。
 二、承継法人の職員の採用に関する国鉄の立場は設立委員の補助機関の地位にあったと解釈すべきであるとの主張について
 国鉄改革法二三条は、承継法人における労働契約関係の創設を段階的に行うものと定め、各段階における設立委員、国鉄の権限の範囲ならびにその主体を法定しているものと解すべきである。
 設立委員の権限は、同法によって特別に付与されてその範囲も法定されていることからすれば、本来設立委員のなすべき手続きの一部を国鉄にゆだねたとして、国鉄は設立委員の補助機関の地位にあったとはいえない。国鉄改革法の立法過程における大臣等の答弁は、法案説明のために便宜的に用いられたもので、厳密な意味で設立委員と国鉄との法的関係を定立するものとはいえない。
 三、国鉄とJR各社は実質的同一性を有するから、JR各社は不当労働行為責任を負うとの主張について 国鉄改革関連八法に基づくJR各社の設立と国鉄の清算事業団への移行が、およそ違法または不当な目的をもってなされたといえないことは明らかであるし、国鉄とJR各社との間に実質的な同一性があるといえるのか自体にも疑問がある。
 四、清算事業団の目的、業務の範囲が限定されているから、救済命令の名あて人を清算事業団にすることは不適当であるとの主張について
 労働委員会は、使用者の行為が不当労働行為に該当するかどうかの判定について裁量権を有するものではないし、救済方法の内容の決定については広い裁量権を有するとしても、これとても全く無制約なものではなく、法令上の制約を受けざるを得ないのであるから、国鉄、ひいては清算事業団に対する救済命令が、清算事業団の目的等に照らして一定の制約を受ける結果になったとしても、やむを得ないというべきである。
 五、国鉄改革法二三条の採用手続きのもとで行われた不当労働行為について、その救済が実質的に否定されるような結果になれば、同条自体が憲法二八条、ILO九八号条約、国際人権A規約に違反するとの主張について
 憲法二八条は、労組法等の法令により具体化された権利を超えて、労働契約関係の存続または創設を強制しうる権利を保障しているとは解されない。
 また、国鉄が行った不当労働行為に対する救済は、国鉄、ひいては清算事業団との間でなされるべきもので、一切救済が受けられないわけではないことからすれば、国鉄改革法二三条は、憲法二八条、ILO九八号条約、国際人権A規約に違反するということはできない。
【本州訴訟】
 一、改革法の規定に照らして考えると、設立委員による採用行為は、新規採用に当たる。
 最高裁一九七三年十二月十二日大法廷判決にかんがみれば、労働組合法七条が労働契約締結前の段階と締結後の段階とを区別し、前者については「労働者が労働組合に加入せず、もしくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること」(一号)だけが不当労働行為を構成する。
 従って、新規採用は一号に当たる場合を除き、不当労働行為に該当しない。
 そうすると、中労委の各命令が「設立委員が採用しなかったこと」という事実をもって不当労働行為に当たると判断している点は違法である。
 二、中労委の各命令が国鉄による不当労働行為責任が原告らに承継されるとした判断は、改革法は新会社の職員について、新規採用を行うとの法形式を採っているが、他方、国鉄に採用候補者の選定、名簿作成を行わせるとしているので、国鉄とその職員の雇用関係が原告らに承継されると解する余地がある。
 しかし、改革法は国鉄に採用候補者選定の全面的な判断権限を認めたのではなく、設立委員の定めた採用の基準を適用して具体的な採用候補者の選定、名簿作成を行うにとどまると規定している。承継法人の職員としてどのような人材を採用するのかの判断基準の決定は、設立委員において定めることとしたと解すべきである。
 三、中労委は、予備的主張を追加し「設立委員が組合差別を内容とする採用の基準を定めたこと」という事実が不当労働行為に当たると主張する。
 労働組合法七条一号の規定は、採用の自由は保障されるが、使用者が採用の自由を手段にして団結権の保障を積極的に侵害することは許されないことを示しており、改革法二三条に基づく採用については、設立委員が組合差別を内容とする採用の基準を定めた場合は、右規定の禁止する雇用条件を定めることに相当する。
 それでは、設立委員自身が国労の組合員でないことを採用の基準として定めたわけではなかったが、国鉄が国労の組合員でないことを募集条件とし、組合差別の意思で、国労の組合員を採用候補者から除外した場合はどうか。設立委員が、これを容認する意思で是正を命ずることなく放置したならば、設立委員自ら不当労働行為を行ったことと同視でき、設立委員は、同様に不当労働行為責任を負うものというべきである。
 しかしながら、このような不当労働行為に対して労働委員会が救済措置として命ずることができるのは、原告らに対し、国労の組合員でないことを採用候補者の選定の基準としてはならない趣旨のことを命じた上で、救済対象者が採用候補者として選定され、名簿に登載されたとして、採用するか否かをあらためて判断し直すよう命ずることが限度であり、採用された者として取り扱うことまで命ずることはできない。
 よって、中労委の各命令は違法として取り消すこととした。(京都新聞 夕刊)
■懐かしい「120形」「1800形」の機関車だ 真ちゅう製の鉄道模型1000点展示 梅小路蒸気機関車館 元京大名誉教授で愛好家の故宍戸さんの遺品 実物の80分の1 アイデア駆使手作りの品 遺族が寄贈
 香料などの有機天然物化学の研究で知られ、鉄道模型の愛好者でもあった元京都大名誉教授・故突戸圭一さん(1995年に86歳で死去)の鉄道模型コレクション約1000点を集めた「宍戸コレクション展」が、京都市下京区の梅小路蒸気機関車館で開かれている。同コレクションは宍戸さんが真ちゅうなどで手作りした蒸気機関車や列車などで、遺族が同機関車館に寄贈した。展示は、約500点ずつ2回に分けて、来月28日まで。
 宍戸さんは元鉄道友の会京都支部長で、京大在職中から、機関車や列車などの模型作りに熱中。左京区下鴨泉川町の自宅8畳間には軌道のほかトンネルや鉄橋などの付いた「鴨鹿(かもしか)本線」を設け、模型の列車を走らせていたという。宍戸さんが亡くなった後、親交のあった京都の鉄道模型愛好家仲間たちが遺族と同機関車館に働きかけ、今回の寄贈と展示が実現した。
 コレクションは、明治から現代までの蒸気機関車や列車、ディーゼル車など実物の80分の1の大きさの模型約100種類。明治時代に京阪神間を走っていた120形機関車や、京都−敦賀間、長浜−大垣間の急勾(こう)配区間で活躍した1800形機関車など、今では模型としても珍しい貴重なものが含まれている。
 屋根に塗られた防水用のコールタールを表現するためストッキングを利用した客車や、土砂をコーヒー豆のかすで再現した貨物車など、独自のアイデアの数々が披露されている。同機関車館は「明治時代の機関車になると今では写真しか残っておらず、同コレクションは本当に貴重。今後の企画展で大いに活用させてもらう」と喜んでいる。
 宍戸さんの妻の由里子さん(84)は「夫は亡くなる直前まで模型づくりを続け、毎年1回は仲間と一緒に自作の模型を走らせるなどして楽しんでいました。夫のコレクションを大切に思ってもらいうれしい」と話している。
 展示は午前9時半−午後5時で、月曜は休館。入館料が必要。(京都新聞 夕刊)
■JR不採用訴訟判決 無念さらに深く 「国労というだけで」 遺志継ぎ闘う家族
 「最悪の判決だ」。国鉄の分割・民営化から11年余り。東京地裁は28日、JRに採用されなかった国労組合員の救済を命じた中央労働委員会命令を取り消した。中労委側の主張はことごとく退けられ「完敗」。6年前の同じ日に示された解決案をけり、勝利を信じて闘い続けた約1000人の組合員の願いは無残に打ち砕かれた。「何と言っていいか分からない」と家族の目には涙が浮かぶ。「予測された通り」とJR側。労働委員会制度の根幹を揺さぶる判決に中労委の受けた衝撃は深刻だ。
 東京地裁で最大規模の103号法廷。北海道、九州事件に対する長い判決主文が淡々と読み上げられるが、廷内の傍聴席の国労組合員や家族らは顔を見合わせ、判決の意味がすぐには理解できない様子。言い渡し終了後「完敗らしいぞ」との声が上がり、組合員や家族らは目に涙を浮かべながら「予想した中で最悪」「何といっていいか分からない」と怒りに声を振り絞った。
 続いて本州分の判決が言い渡された101号法廷でも、傍聴席の組合員らは重苦しい表情。再び敗訴が言い渡されると、組合員らは沈痛な面持ちで法廷を後にした。
 地裁前では法廷に入れなかった約1000人が緊張した表情で玄関を見詰めた。垂れ幕を持たずに出てきた国労幹部が「不当判決」と報告すると「ナンセンス」と一斉に折議の声が上がった。
 「納得できない」。北海道美幌町の保険外交員三浦成代さん(43)は、国労組合員でJRに採用されず失意のまま死亡した夫の思いを引き継ぎ闘争を支えてきた。なぜ夫は不採用になったのか。三浦さんら家族の無念さは今なお消えない。
 「夫は組織の上に立つ人ではなかった。国労というだけで不採用になった」。夫の斎(ひとし)さんは国鉄の分割・民営化の際、石北線美幌駅の操車係。定年まで勤め上げるつもりだった。
 本州のJR他社への採用枠はあったが「両親の面倒をみなければならず、美幌から離れられない」と、JR北海道への採用を希望した。
 だが採用名簿に斎さんの名前はなかった。地元企業にも応募したが、結果は「不採用」。当時は国労組合員というだけで敬遠される雰囲気があった。国鉄清算事業団の職員となったが、1990年に清算事業団からも解雇された。
 それからは国労美幌闘争団の一員としてアルバイトで生活費を稼ぐ日々が始まった。
 だが4年後、厳しい生活が影響したのか脳内出血で倒れ、そのまま帰らぬ人に。45歳だった。
 「このまま闘争団から抜けたら、夫と私が頑張ってきた年月が何だったのか分からなくなる」。今は保険の仕事と闘争団の活動で家にゆっくりする時間はほとんどない。
 残された子ども3人のうち長男(20)と二男(18)は札幌に、長女(13)が三浦さんと一緒に住む。三浦さんは「遺志を引き継ぐことが夫にしてやれる最後のことだった」と振り返る。
 清算事業団を解雇された1047人のうち斎さんと同じように計11人がこれまでに死亡、判決を見届けることができなかった。
・敗訴の影響大きく 労働委制度 根幹揺さぶる
 JR不採用問題をめぐり東京地裁は28日、中労委命令を取り消し、中労委関係者の「敗れたら労働委員会制度への影響は計り知れない」との懸念は現実となった。不当労働行為の再審査の中で、中労委が最も重要視していたJR不採用事件。地方労働委員会から積み上げた救済命令の論理が否定され、労働委員会制度の根幹が大きく揺さぶられた。
 JR側は当初から労働委員会に挑戦的な態度を取り続けてきた。地労委の審問に欠席したり、幹部が「労働委員会無用論」をぶったり…。
 「司法判断を仰ぐ」と、JRの責任を認めた命令にことごとく訴訟で対抗、命令に一切従わない姿勢を貫き、中労委にとってはメンツをかけた争いでもあった。
 裁判所で労働委員会命令が取り消された前例はある。山口俊夫中労委会長は「民事上の権利や義務のみで判断するのではなく、労働委員会は、不当労働行為の是正や労使関係の改善を重視する」と裁判所との立場の違いを強調、「負けても命令の権威が落ちるわけではない」と話す。
 だが、労働委員会へ訴えても命令が実行されないとなれば、解雇撤回などを求める労働者がよりどころとしてきた労働委員会の機能喪失につながりかねない。(京都新聞 夕刊)
■中労委命令取り消し 国労差別訴訟「不採用救済誤り」 東京地裁2判決 JR責任、判断異なる
 1987年4月の国鉄の分割・民営化に伴い、多くの国労組合員がJRへの採用を拒まれた問題にからみ、「不採用を不当労働行為と認定し、救済命令を出した中央労働委員会の判断には誤りがある」として、JR5社とJR貨物が中労委を相手に命令の取り消しを求めた訴訟で、救済命令を取り消す判決が28日午前、東京地裁で相次いで言い渡された。国労、中労委はいずれも控訴する見通しだ。
 民事11部(萩尾保繁裁判長)は「国鉄改革法の規定によると、採用候補者の選定作業を支配できる地位にはなく、職員の採用選考についてJRは責任を負う立場にはない」と述べた。
 一方、民事19部(高世三郎裁判長)は「JRの設立委員が組合差別の意図を知りながら改善策を取らなかった場合には、JRが責任を負う余地はある」との異なる判断を示しながらも、「救済対象者を、JRに採用されたものとして取り扱うことまで労働委員会は命じることはできない」として、11部と同様に中労委命令を取り消した。
 JRに国鉄職員を採用する手続きは、@国鉄が希望者の中から選んで名簿を作成A設立委員がその名簿から採用B設立委員の採用行為はJRが行ったものとする−と国鉄改革法23条で規定されていた。
 このため裁判では、国労組合員の多くを名簿に載せなかった国鉄の行為について、JRが使用者責任を負うのかどうかが最大の争点になっていた。
 この点について、萩尾裁判長は「設立委員は名簿の中から採用者を決める権限があるに過ぎず、かりに名簿作成作業に不当労働行為があったとしても国鉄が責任を負うべきだ」と判断した。
 一方、高世裁判長は「改革法は、採用候補者の選定について国鉄に全面的な判断権限を認めたものではなく、採用の判断基準は設立委員が定めたものだ」と指摘し、「設立委員が組合差別を内容とする採用基準を定めた場合は、不当労働行為にあたる」との一般論を示した。
 さらに、「国鉄が組合差別の意思で採用候補者からはずしたことを知って、設立委員が放置した場合には不当労働行為の責任を負う」と述べ、JRに責任が帰属することもありうるとした。
 しかし、高世裁判長は、設立委員が国鉄の組合差別の意思を知っていたかどうかの判断は示さずに、「中労委の救済措置は限度を超えている」と述べた。
JR採用差別事件 国鉄の分割・民営化では、国労組合員を中心に約7600人の国鉄職員が希望しながらJRに採用されず、国鉄清算事業団に移った。このうち、地元JRへの採用を求めて事業団にとどまった1047人が、1990年4月に解雇された。
 国労など3労組は、不採用を組合間差別の不当労働行為だとして地方労働委員会へ救済を申し立て、各地労委は訴えを全面的に認めた(27件、救済対象者約3100人)。JR側の再審査申し立てを受けた中央労働委員会の命令は、事件によって異なる。対象者の多い北海道と九州7県の事件の命令は@不採用の一部で不当労働行為が成立、使用者責任はJRにあるA清算事業団を解雇された者を選考し直し、「相当数」を民営化時に採用された者として扱い、3年以内に就労させる、などだ。
 JR側は「責任を負う立場ではない」として、命令取り消しを求める行政訴訟を起こし、組合側も救済内容が地労委命令より大幅に後退したとして提訴した。(朝日新聞 夕刊)
■解説 解雇救済、政治の出番 JR採用差別訴訟
 11年余に及ぶJR採用差別紛争の最大の争点は、国鉄が作成した採用者名簿に組合差別という労働組合法違反の不当労働行為があった場合、JRに使用者責任が及ぶか否かだった。この点について、東京地裁民事11部は「及ばない」との判断を示した。他方、同19部は、責任が及ぶ余地があるとの含みを残しながらも、11部と同様に中労委命令を取り消した。
 結果として、国鉄改革法の規定を論拠にするJR側の主張が事実上、支持されたことになる。
 逆に、国鉄とJRは実質的に同一とする国労の主張や、国鉄をJR設立委員の補助機関と位置づけてJRに責任があるとした中労委の主張は退けられた。
 だが、採用者選定で、国労など3組合と他組合の間に露骨な差別があった事実は消えない。地労委、中労委も認定した大規模な不当労働行為の責任がJRにないとなると、いったいだれが責任を負うのか。責任は清算事業団にあるといっても、事業団は今年10月に消滅する。ミステリーの題名ではないが、「そしてだれもいなくなった」ということになりかねない。
 労組法の適用を排除、遮断するような国鉄改革法の仕組み。そこに隠された国労解体という政府・自民党の政治的意図が、浮き彫りにされたとも言える。
 清算事業団を解雇された人の多くは、アルバイトなどで耐えながらJR復帰を求めている。救済命令の取り消し判決は痛烈な打撃だろう。
 命令を否定された中労委の衝撃も大きい。不当労働行為による権利侵害から労働者を守る労働委員会制度が揺らぎ、存在意義が問われるからだ。
 ちょうど1年前の28日、同じ東京地裁(民事11部)は「早期、抜本的な解決を図るべき時期だ」として、JR各社と清算事業団、中労委、国労の四者に和解を勧告した。JR側の拒否で和解を断念した今年2月にも、「解決への尽力を切望する」と述べた。
 法律論争はともかく、長期紛争はこれ以上放置できない人道上の問題であり、JRの安全やサービスにもかかわるという認識から、具体的な解決努力を促したものだ。
 一方で、この事件は国鉄改革の「負の遺産」ともいわれ、政治に大きな解決責任がある。全国360を超す自治体議会も政府の努力を求める意見書を採択している。
 橋本龍太郎首相は国会答弁で「判決が問題解決の契機になり得ると考えられる」と述べ、解決に努める意向を示した。政治主導で和解を図るべき、まさに政府・与党の出番である。(編集委員・中野隆宣)(朝日新聞 夕刊)
29日■社説 JR訴訟で政治出番の道探れ
 国鉄の分割・民営化の際、国労組合員らがJRに採用されなかった問題をめぐる2つの行政訴訟で東京地裁はきのう、中央労働委員会の救済命令を取り消す判決を出した。
 国鉄の分割・民営化では7600人の国鉄職員がJRに採用されなかった。多くは国労などの組合員で、うち約3100人が各地の地方労働委員会に救済を申し立て、すべてで救済命令を得た。
 JR側の再審査申し立てで舞台は中労委の調停に移った。中労委も、不採用となった組合員について、JRに選考のやり直しや一部組合員の採用を求める救済命令を出した。
 これに不服なJRは命令の取り消しを求めて提訴する。訴訟では、職員の採用は国鉄が人選して作った名簿に従っただけで選考に責任はないとするJR側と、国鉄の事業も労使関係もそのままJRに引き継がれたとする中労委側の主張が真っ向から対立していた。
 東京地裁の判決理由は、一つはJRに採用選考の責任はないことを明確にしたが、もう一つは、JRに人選責任はあるが救済命令の内容が中労委の権限を逸脱していて違法というものだった。
 勝ち負けで言えば、JRが勝ち、中労委、労働者側が負けたのである。
 国鉄が分割・民営化されて11年になる。民営会社として独立したJR各社は多角経営や企業努力で業績を上げている。サービスも向上した。国鉄の分割・民営化がもたらしたプラス面は多くの国民が認めるところだ。
 その一方で、分割・民営化に伴う負の部分を今に引きずっているのも事実である。とりわけ雇用をめぐるトラブルは、当事者には深刻である。ここに至るまでに和解の道はなかったのかと、あらためて残念に思う。
 東京地裁判決は、ともに中労委の判断を否定するものだけに影響も大きい。労働委員会といえば、わが国労働行政の一角を担う制度である。中労委の判断にはそれなりの重みもある。
 それが司法の場で覆されたとあっては、中労委の権威にもかかわる。労働者が救済を求めるよりどころとしてきた労働委員会制度そのものを揺るがすことにもなりかねない。
 もちろん労働委員会と裁判とは役割も仕組みも違うわけだから、あらためて司法判断を仰ぐことはあっていい。その結果、結論に違いが出ることもあるだろう。今回のケースがまさにそれである。
 となると中労委、東京地裁どちらの論理構成に分があるのか、さらに上級審の判断を得たくなる。ただ、労働者の雇用にかかわる争いが延々と続くことには別な問題が生じる。
 地労委、中労委を経て最高裁までいく事態になれば、実質五審制ということになり、時間がかかりすぎるからだ。
 いまこの時点では、労働組合、JR双方とも引くに引けぬ状況であろう。事態打開の方策として政府・与党が政治問題として提起し、解決を採ることが考えられていいのではないか。関係者それぞれの高度な政治判断に期待したい。(京都新聞)
■関西私鉄大手5社の決算 本業不振で4社減収 3月期 近鉄、京阪は20%減益
 関西私鉄大手5社の1998年3月期決算が、28日出そろった。主力の鉄道事業の不振で、阪神を除く4社が減収に陥った。経常利益は前期は全社増益だったが、今期は近鉄と京阪が20%前後の大幅減益。昨年4月の消費税率引き上げ前に定期券などの先買いがあった反動に加えて、景気低迷や天候不順に伴う出控えが大きく響いた。
 5社の鉄道輸送人員の合計は、前期比で4.7%少ない22億9000万人。これに連動して、旅客収入も同 4.7%減の4497億円にとどまった。 営業距離の長い近鉄は出控えの影響をもろに受け、鉄道事業の売上高が同4.1%、84億円も減少した。京阪も同6.3%、42億円の減。昨年開業したJR東西線との競合、京都の地下鉄東西線開通に伴う京津線の一部廃止も響いた。
 鉄道事業の売上高を阪急は42億円(3.7%)、南海は29億円(4%)、減らしたが、支払い利息などの営業外費用をそれぞれ64億円、42億円削減して経常黒字を確保。阪神は鉄道事業の17億円の売上減を、昨年開業した西梅田地区の複合ビル「ハービス大阪」の賃貸収入など不動産部門の57億円の増収でカバー、増収増益となった。(京都新聞)
関西私鉄大手5社の98年3月期決算
企業名売上高経常利益税引利益
近 鉄2525(▼3.1)138(▼20.8)111(▼ 0.7)
阪 急2140(▼7.0)120( 28.5)59(  0.1)
京 阪1161(▼0.3)55(▼19.8)28(▼20.3)
南 海1137(▼2.9)52(  4.7)28(▼ 3.0)
阪 神786( 6.7)14(  3.7)21(  7.6)
※単位億円、()内は対前期の伸び率、▼はマイナス
■京阪奈新線 三セク会社7月設立 近鉄と3自治体 136億円出資
 奈良県、奈良市、生駒市と近畿日本鉄道は28日までに、大阪方面と関西文化学術研究都市を結ぶ鉄道「京阪奈新線」(近鉄生駒−高の原駅間、約12.2`)を建設する第三セクター会社の概要について合意した。近鉄と地元3自治体が136億円を出資し、今年7月をめどに設立する。
 第三セクターの会社は、まず生駒駅−奈良市・登美ケ丘間(約8.7`)を建設する。総事業費は986億円で、うち第三セクター会社が負担する建設費は777億円で、残り209億円は近鉄が負担する。
 777億円の内訳は、出資金136億円、国と奈良県などの3自治体が負担する補助金が182億円、沿線の宅地開発企業などが出す開発者負担金が100億円、残り359億円は借り入れる。
 会社の資本金の負担内訳は、近鉄などの民間68億円(50%)▽奈良県40億8000万円(30%)▽奈良市6億8000万円(5%)▽生駒市20億4000万円(15%)。補助金の出資率も国が50%で、残り3自治体の割合は資本金と同じ。
 同線は全線地下または高架で整備し、駅は新しく生駒市白庭台付近▽同市北大和付近▽奈良市登美ケ丘付近−に3駅を設ける。
 第三セクター会社の本拠は生駒市に置き、本年度は会社設立後すぐに鉄道事業免許を申請、地質調査などにとりかかる。来年度から用地取得を行い、2000年度着工、2005年度開業を目指す。開業後は近鉄が運営する。(京都新聞)
■バイクが歩道占拠 車いすなど通行に支障も 昨春開業のJR藤森駅前
 昨年3月に開業したJR奈良線・JR藤森駅(京都市伏見区深草大亀谷)周辺で、放置バイクが増え、住民らが困っている。歩道の大半を埋め尽くし歩行者の迷惑になるうえ、真新しい駅広場の景観が台無しになっている。
 同駅近くには、大学があるほか新興住宅地もひろがり、1日に1500人以上が利用している。同駅南側には市が設置した無料の駐輪場(342台収容)があるが、スペースの都合などでバイクの駐車を禁止しているため、開業と同時に、周辺にバイクを止めておくケースが目立ち始めた。
 昨秋ごろには、駅ロータリーの歩道上をバイクで埋め尽くす状態が慢性化。周辺は坂道が多いため、駐輪場が空いているにもかかわらず自転車よりもバイクを使って駅まで来る人が多いようだ。
 現在は、常時5、60台から100台近くのバイクが放置されたままで、歩道が全く機能していない。
 同駅近くに住む主婦佐藤順子さん(55)は「せっかく便利になったと喜んでいたのに、今のままでは、駅にも入りにくい。車いすの障害者やお年寄りもいるのに、何とかできないものでしょうか」と心配している。
 市道路管理課は「放置自転車は条例に基づいて撤去できるが、放置バイクについては、道路交通法でないと、取り締まれない。市民の皆さんには、自転車の利用をお願いしたい」と呼びかけている。(京都新聞)
■関西私鉄 輸送人員滅止まらず 3月期決算 阪神だけ増収増益
 関西の大手私鉄5社の1998年3月期決算が28日出そろった。輸送人員の減少に歯止めがかからない中、不動産や流通など関連事業や営業外収支の動向で、利益に差が出た。阪急電鉄、南海電気鉄道、阪神電気鉄道の3社が増益だった。
 鉄道事業は、昨年4月の消費税率アップを前にした定期券や回数券の先買いの反動をはじめ、長引く景気の低迷による利用客の減少、JRなどの新路線へ乗客が移ったことで、不振がより鮮明になった。
 阪神は昨年3月に開業した大阪・西梅田の大型商業施設の賃貸収入が寄与したほか、プロ野球、阪神タイガースの公式戦前半の健闘で観客が増えて阪神甲子園球場の施設収入が伸び、唯一、増収増益だった。
 阪急、南海は、支払利息が減るなど営業外収支が改善し、増益となった。
関西私鉄5社の1998年3月期決算
 売上高経常利益輸送人員
近畿日本鉄道2525(▼3.1)138(▼20.8)7億4271万人(▼3.6)
阪急電鉄2140(▼7.0)120( 28.5)7億1039万人(▼4.0)
南海電気鉄道1137(▼2.9)52(  4.7)2億8276万人(▼4.0)
京阪電気鉄道1161(▼0.3)55(▼19.8)3億6060万人(▼7.8)
阪神電気鉄道786( 6.7)14(  3.7)2億 38万人(▼6.6)
金額の単位は億円、カッコ内は前期比伸び率(%)、▼はマイナス
 99年3月期は、南海を除く4社が、不動産販売を大幅に増やすなどして、増収増益と予想しているが、本業の鉄道事業で増収を見込むのは、他社との競合が比較的軽い近畿日本鉄道のみ。阪神、京阪電気鉄道などは今年度の輸送人員を、ピークだった92年3月期の8割前後と想定している。
 南海は10月1日付で大阪スタヂアム興業と合併することで、売り上げは伸びるものの、鉄道事業の不振をカバーできず、減益を見込む。(朝日新聞)
30日■精神障害者手帳制度 来年から市バス・地下鉄無料に でも申請ためらう声も 「周囲の目か気に」
 社会復帰の促進を図るものとして、精神障害者手帳制度が実施されて3年近くが過ぎた。京都市では、来年1月から手帳交付者を対象に市バス・市営地下鉄乗車料金を無料とすることが決まっており、今後、手帳の申請が増えるとみているが、精神障害者の間では、「手帳を持つと差別的な目で見られるのでは」と、申請をためらう声も聞かれる。
 精神障害者への障害者手帳制度は、1995年5月に改正された精神保健福祉法に基づいて、同年10月に始まった。手帳交付者に対しては税制の優遇措置のほか、一部公共施設への入場無料や映画館の割引などの特典がある。
 京都府内では、昨年3月までに、2016人の精神障害者が手帳交付を受けている。しかし、身体障害者や知的障害者とは違い、精神障害者の場合は2年ごとに更新手続きが必要になっている。また「手帳を見せることへの抵抗がある」との声も多く、現在は身体障害者などに比べ申請者が少ない。
 定時制高絞に通う京都市南区の女性(24)は「学生証を持っているから、地下鉄などが無料になっても、学割で済ませるつもり。手帳を持つと、病気まで持ち歩いているような感じがするので、申請はしない」ときっぱり。伏見区の男性(24)は「メリットは少なく、手帳はいらない」と言い、社会福祉施設に通う同区の女性(30)は「毎朝、市バスに乗るが、運転手の視線を感じるのが嫌なので、無料になっても使わない」と話す。
 身体障害者や知的障害者に交付している障害者手帳の数は圧倒的に多く、昨年3月末で、手帳交付を受けた身体障害者は府内に10万2830人、知的障害者は1万2666人。福祉関係者らは障害者の実数にほぼ近い数字とみている。
 一方、精神疾患の発病率は人口の1%から数%との学説もあり、府内でも潜在的な精神障害者は多いと見られているが、手帳の府内の交付数は約2000人。「交通機関の無料など各種の特典が整えば、今後、さらに申請者が増えるはず」(京都府と市)と予測するが、精神障害者への理解をさらに深める啓発活動が必要といえそうだ。(京都新聞)
■奔流底流 リニアモーターカー、走行実験本格化 速い でも 高い ”実用線浮上”メド立たず 膨大建設費がネック
 「夢の交通」といわれるリニアモーターカー(超電導磁気浮上式鉄道)の走行実験が、山梨リニア実験線(山梨県都留市−大月市間18.4`)で本格化している。開発を進めるJR東海は計画している中央新幹線(東京−大阪間)での実用化を目指すが、東海道など既存の新幹線に比べて建設費が膨大になるのに加え、中央新幹線そのものが国の財政難で整備のメドが立たないまま。東京−大阪を1時間で結ぶ「リニア新幹線」の実現は見通し良好とはいえないようだ。(東京支社 川村一郎)
 今月18日、報道関係者向けの初の試乗会が同実験線で催された。実験車両(3両編成)のうち真ん中の試乗車両は通路をはさんで2席ずつの計64席。現在の新幹線より小さめだ。
 発車後、時速150`当たりで、すーっと振動が減り、浮上走行に入る。車窓の風景の流れは新幹線とは段違いに速い。電光速度計には、1分半ほどで「時速450`」の表示が浮かんだ。
 リニアモーターカー研究は旧国鉄が1962年から始めた。山梨での実験はJR東海と鉄道総合技術研究所が昨年4月から行っている。総費用は約3000億円。今年度はすれ違いの走行実験などを進め、99年度中に実用化の可否を決める予定だ。
 開発推進は、3月に国土庁が策定した新全国総合開発計画にも盛り込まれた。JR東海は「日本固有の技術に新たな評価をいただいた。ぜひ中央新幹線で実現したい」(宇野護広報部次長)と意欲をみせる。実現すれば実験線は営業線の一部になる。
・期待高まるが
 東京、神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知、三重、奈良、大阪の九都府県は「リニア中央エクスプレス建設促進期成同盟会」を組織して運動を展開。国会議員も議員連盟をつくって後押ししている。
 25日に東京で行われた国会等移転審議会の意見聴取でも、リニアへの期待が強調された。調査対象地となった京滋など4府県知事らは「リニアで東京とは1時間」(稲葉稔滋賀県知事)とアクセス利便性を力説。実現は既成事実であるかのような印象すら抱かせた。
 だが、実現までには課題が山積している。リニアモーターカーは、電磁力を利用して浮上、推進する仕組みで、電磁コイルを軌道に並べるなど既存の新幹線に比べて建設費はかなり高い。鉄道総研は8兆円強(既存方式6兆円)と試算している。
 加えてリニアの実用化以前に中央新幹線の実現そのものが不透明だ。同新幹線は73年の全国新幹線鉄道整備法で基本計画路線に位置づけられた。以来四半世紀、実現への第一歩となる整備計画路線への格上げは日の目を見ていない。
・追い風もやむ
 現在、基本計画に盛り込まれている12路線のうち、中央新幹線は四国新幹線とともに沿線の地形・地質調査に着手しており、優先順位は高い。だが、96年度で終わるはずだった調査は続行中で、「公表の見通しは立っていない」(運輸省幹線鉄道課)。
 そこへ政府の財政構造改革路線の絡みで、旗振り役の運輸省でさえ「整備計画への格上げは収支などを考慮して長期的に考える」と慎重だ。
 中央新幹線の基本計画では、主要経過地を「甲府市、名古屋市、奈良市付近」と記しているだけで、ルートは決まっていない。そこで京都府は「京都の国際的な役割や東海道・山陽新幹線の輸送実績を勘案して」と、毎年、政府予算要望で「京都を通るルートで具体化」を訴え続けている。
 近年、中央新幹線推進の有力論拠は、バブル期に飽和状態となった東海道新幹線のバイパス機能構築だった。だが、同新幹線は2003年度に東京・品川新駅が完成すると1時間に4本の増発が可能となり、当面の需要はさばける。追い風だった「東海道新幹線限界説」もトーンが下がっているのが現状だ。
 実験線沿線の騒音被害や大都市で路線を通す際の大深度地下利用などの問題も出ており、克服すべきハードルは数多い。(京都新聞)
■新幹線駅設置へ要望活動を継続 湖東駅推進協が総会
 近江八幡市や八日市市など滋賀県内の2市7町で組織する東海道新幹線湖東駅(仮称)設置推進協議会(会長・玉田盛二近江八幡市長)の本年度の総会が29日開かれ、新しい事業計画などを決めた。
 同協議会は1988年に設立され、新幹線新駅を近江八幡市域に誘致するために、関係諸機関に働きかけを行ってきた。
 この日は▽県やJRなど関係機関への要望▽研究会や懇談会の開催▽各市町広報でのPR▽関係諸団体との連絡調整−などを盛り込んだ事業計画を決めた。(京都新聞)
■叡電「きらら」ローレル賞に 鉄道友の会 パノラマカー 楽しんで乗る設計評価
 鉄道ファンでつくる「鉄道友の会」は29日、昨年中に営業運転を始めた新型車両のうち、デザイン・技術面などで最も優れた車両を選ぶローレル賞に、叡山電鉄(本社・京都市左京区)の900系電車「きらら」を決めた。
 900系「きらら」は、昨年10月から出町柳−鞍馬駅間で登場した新型パノラマカー。車窓に広がる洛北の美しい緑や紅葉を満喫してもらおうと、天井近くまで広く窓を設け、窓に向けて座るイスを配置するなど、工夫をこらした。
 叡山電鉄によると、観光客の人気は非常に高く、秋の紅葉シーズンには900系電車の発車時間の問い合わせが1日100件を超える日もあったという。
 日本鉄道友の会京都支部の森俊朗事務局長は「人を輸送するだけでなく、乗車することを楽しんでもらおうとする設計がすばらしかった」と評価している。
 900系「きらら」の企画を担当した粟生弘太郎・同電鉄取締役は「鉄道マンにとって名誉ある賞で、受賞はとてもうれしい。座席数を減らすのは勇気がいったが、遠方からの観光客をターゲットに発想を転換したのがよかった」と喜んでいる。(京都新聞)
■大阪モノレール 営業`世界一に ギネスに登録
 大阪府の第三セクター「大阪高速鉄道(大阪モノレール)」は29日、大阪空港−門真市間の21.2`を運行する大阪モノレールが世界一長いモノレールの営業路線としてギネスブックに登録された、と発表した。
 大阪モノレールは、これまで大阪空港−南茨木間の13.3`で営業し、東京モノレール(16.9`)、千葉都市モノレール(13.5`)に次いで3番目だった。昨年8月に南茨木−門真市間が開通。7.9`延伸し、東京モノレールを抜いたため、ロンドンのギネス出版社に、世界一の認定を申請していた。(京都新聞)
■車内でわいせつ行為容疑の会社員を逮捕 近鉄京都線
 府警鉄道警察隊は29日、宇治市伊勢田町砂田、会社員蓑村康生容疑者(27)を強制わいせつの疑いで現行犯逮捕した。
 調べでは、同容疑者は29日午前7時40分ごろ、近鉄京都線の電車内で、香川県内の無職女性(21)に対し、体を触るなどのわいせつ行為をした疑い。別の女性からの被害相談を受け、乗車して警戒していた同隊員が犯行を目撃し、近鉄竹田駅ホームで現行犯逮捕した。(朝日新聞)
■山陽新幹線 ランプ故障で「のぞみ」遅れ
 29日午後5時ごろ、福岡県那珂川町のJR博多総合車両所で、博多発車京行きの山陽新幹線「のぞみ28号」(16両)が博多駅に向かおうとしたところ、運転席の速度計ランプが故障していることがわかった。JR西日本は別の16両編成を博多駅に向かわせたが、同号は28分、後続の博多発新大阪行き「こだま654号」は9分出発が遅れ、乗客計約600人に影響が出た。(朝日新聞)
■新幹線基地でポイント故障 東北など16本運休
 30日午前8時56分ごろ、東京都北区の新幹線車両基地構内でポイント故障が発生、列車が基地から出られなくなった。東北、上越、長野(北陸)の各新幹線が上下線とも運転できなくなったが、同9時49分ごろ運転を再開した。
 このため東北、上越、長野の各新幹線で上下線計16本が運休、計63本が最大53分遅れ、約4万人に影響した。(京都新聞 夕刊)
■阪神本線の高架化 下り線の工事完了
 兵庫県と西宮市、阪神電鉄の3者が共同で進めている同市内の阪神本線高架化工事(延長約3.6`)で、下り線の工事が終わり、30日始発から高架での運転が始まった。同日午前9時半から阪神西宮駅で記念行事があり、馬場順三市長ら約160人がホームでくす玉を割って完成を祝った。
 甲子園駅から西宮・芦屋市境の約4.4`の間を高架にし、19ヵ所の踏切をなくす計画で、甲子園駅から久寿川駅までの約0.8`は1984年に完成し、90年から残りの区間に着手していた。今回の区間にある14ヵ所の踏切は、一度に上下5、6本の電車を待つこともある「あかずの踏切」だったが、これで遮断時間は約半分になるという。上り線は2001年に完成する予定。(朝日新聞 夕刊)
■北海道 ふるさと銀河線 岡女堂駅 赤字線に甘い助っ人 工場移転きっかけに神戸の甘納豆屋さん建設 知恵絞って緩行客増
 北海道・十勝平野に工場を移した神戸の甘納豆屋さんが、近くを走る第三セクター「ふるさと銀河線」に自費でつくった駅が評判を呼んで、関西や東京などから観光客が増えている。年間5億円の赤字の出る同線は、存続が危ぶまれている。阪神大震災のとき、工場を移転していたおかげで被害を免れた甘納豆屋さん。新しい「ふるさと」の危機を一緒に乗り越えようと団体客を集めたり、豆まき列車を走らせたり、知恵を絞っている。
 十勝平野を南北に結ぶ「ふるさと銀河線」(池田−北見)は、全国の第三セクター路線で最長の140`を走る。33ある駅の一つが「岡女堂駅」だ。
 1日14本のワンマン列車が短いホームに停車すると、センサーが感知して音楽が流れる。無人駅だが、夜は日高山脈をイメージしたホームの屋根をカクテル光線が照らし出す。
 駅をつくったのは、同線を経営する第三セクター会社「北海道ちほく高原鉄道」ではなく、神戸市兵庫区に本社をおく甘納豆メーカー「岡女堂」社長の大谷泰男さん(70)だ。
 1855年創業のしにせだが、若い世代を中心に洋菓子志向が強まるなどで、売れ行きは伸び悩んでいた。そこに、小豆や黒豆の仕入れ先の北海道本別町から誘致の話が出た。地価の高い神戸の工場をマンションに建て替え、1988年に工場を移した。
 約50人の従業員は地元の人々。工場見学や甘納豆を買うために観光バスが立ち寄り始めた。高原鉄道から「従業員や観光客に鉄道を利用してもらえたら」と相談を受け、地元にとけ込もうと工場わきに駅をつくることに決めた。用地は無償貸与だが、建設費の3000万円は自前だった。95年1月の震災で本社は半壊したが、生産に支障はなく、被災地外の百貨店では通常通り販売できた。同年9月、予定通り駅は完成した。
 しかし、銀河線の経営が危なくなっていた。沿線には目立った観光施設もなく、過疎も進み、年間輸送量はピーク時の100万人が70万人まで落ちた。関係自治体が資金を出し合った経営安定化基金の運用益が、当初の金利5.4%から1%程度に低下したため激減、基金を取り崩さざるをえなくなった。
 利用者の大半が地元の高校生や高齢者だ。駅開業の前日、近所の80歳代のおはあさんが「駅まで1時間歩いて病院に通ったが、近くに駅ができて楽になった」と一升瓶を持って工場に来たことがあった。おばあさんの笑顔が大谷さんの頭から離れず、もうひとごとではいられなかった。
 長男で専務の修一さん(43)と旅行会社を走り回り、観光バスのツアーの一部に銀河線利用を組み込む新コースを提案。のんびり走るローカル線が目新しく、94年度には650人だった道外からの団体利用者が翌年度は4000人、96年度は5000人を超えた。節分には「豆まき列車」を走らせ、駅周辺に鬼の面をかぶって待つ社員に向かって列車の窓から豆まきをしてもらった。
 漫才コンビを呼んだ寄席列車もっくり、昨年6月、町で初めてのビアガーデンを敷地内につくった。今は名物駅弁を計画中だ。
 大谷さんは「何もない広さが観光資源、真っ白いキャンバスには多彩な絵が描ける。小さな鉄道だが、地元の貴重な足ということを忘れず、知恵を絞れば道は開ける」と話している。(朝日新聞 夕刊)
31日■接客態度など理由に停職処分 「事実誤認」と提訴 京都市バス運転手
 京都市交通局から接客態度などを理由に停職処分を受けた市バス運転手(50)が、「処分は事実誤認によるもの」などとして、市を相手取り、処分の取り消しなどを求める訴訟を京都地裁に起こしていることが30日、わかった。
 訴えによると、原告の運転手は今年3月1日午後3時半ごろ、西京区の洛西バスターミナルで乗客を乗せて発車したが、数b走ったところで2、3人の子どもがバスを追いかけてくるのを見つけて停車。子どもを乗車させると、同行の別の子ども十数人と引率者2人も続いて乗車した。終点の桂駅西口で運転手が引率者の女性に乗車の仕方を注意したところ、「子どもが勝手に走ったので知らない」「何という乱暴な運転をするのか」などと言われた、としている。
 一方、市交通局によると、トラブルの相手は市内の小学生12人と保護者の女性3人の計15人。市は双方から事情を聴いた結果、15人は前の乗客に続いて乗車しようとしていたのに運転手がドアを閉めて発車した▽急発進など粗暴な運転操作をした▽降りようとした保護者を制止し、「子どもを使ってバスを止めるとはどういうことか」などの脅迫じみた言動をした−などと結論付け、今月23日から3ヵ月間の停職処分にした。
 原告の運転手は「ほかに乗客が見あたらないことを確認のうえで発車した。女性には『危険が伴うので次のバスに乗るように指導してほしい』と言っただけで、処分は事実誤認で無効だ」と主張。市交通局の平田嘉輝自動車部長は「処分は懲戒委員会で審議し、判断したもので適正と考えている。訴状の内容を検討し、市交通局の立場を述べていきたい」と話している。(朝日新聞)
■JR西労組米子 自民現職を支持 参院選
 西日本旅客鉄道労働組合米子地方本部(重田紀生委員長、2358人)は30日の執行委員会で、7月に予定されている参院選の鳥取選挙区(改選数1)で自民党現職の坂野重信氏(80)を支持することを決めた。米子地本が保守系候補を支持するのは初めて。
 鳥取選挙区には坂野氏のほか、社民の松永忠君氏(59)、共産の市谷知子氏(30)、無所属の田村耕太郎氏(34)の新顔3氏が立候補を表明している。(朝日新聞)