1995(平成7)年 3月


1日■支柱に鉄骨添え補強 地下鉄復旧で運輸省が方針 全体も鉄板で巻く(朝日)
  ■大阪−岡山間の列車、一往復増発 JR貨物(朝日)
  ■阪急・夙川−甲陽園 阪神・西灘−岩屋 きょうから再開(朝日)
  ■声 新幹線復旧は安全最優先で 広島市 内倒(公務員 50歳)(朝日)
  ■青鉛筆(朝日)
  ■阪急甲陽線が 44日目開通 阪神岩屋−西灘も(京都)
  ■阪急甲陽線が開通 阪神西灘−岩屋も(朝日)
2日■京都市の地下鉄工事 支柱の耐震性強化 帯鉄筋増やす(京都)
  ■関西私鉄 労使交渉始まる 阪神、阪急は個別に(京都)
  ■阪急も三宮乗り入れ 13日から 阪神間移動55分に(京都)
  ■京都発着を延長 特急など4本、今月中(京都)
  ■大阪−神戸 乗り継ぎ1回で 王子公園−三宮 阪急が13日再開(朝日)
  ■地下鉄の柱に独自の強化策 京都市が方針(朝日)
3日■地下鉄東西線工事差し止め 住民の請求棄却 京都地裁 交通権の主張認めず(京都)
  ■声 老人につらい バスの乗降口 高槻市 鶴原 晶子(無職 80歳)(朝日)
  ■5時46分の生と死 脱線した阪神電車 通過直後に陸橋落下(京都)
4日■車両に異常音「はるか」停車 JR阪和線(朝日)
  ■山陰線ダイヤ乱れる 余部鉄橋で強風(京都)
5日■本社代替基地 高崎に検討 震災教訓にJR東日本(京都)
  ■トラックと急行衝突 男性が死亡 綾部のJR踏切(京都)
6日■横浜の京浜急行 車内で刺激臭 薬物中毒疑い 客11人手当て(京都)
7日■JRと近鉄の駅舎分離”新生”桜井駅10日開業(京都)
  ■叡雪がダイヤ改正 夜間に上下 6列車増発(京都)
  ■化学薬品か特定はできず 京浜急行の刺激臭(京都)
  ■市営地下鉄 三宮・新長田駅 16日に再開(朝日)
  ■JR西日本20%減収(前年同月比) 2月の販売高 東西分断で大打撃(京都)
  ■阪急の値下げ 運輸省が認可 伊丹駅発着の一部(朝日)
8日■踏切事故想定の訓練 駅員ら救護法再確認 京阪の淀車庫内(京都)
  ■電気工事業者に禁固3年を求刑 生駒トンネル火災(朝日)
9日■阪神電鉄「赤字」へ 当期損失35億円 震災響く(京都)
  ■JR西日本 山陽新幹線 初期微動で列車停止 地震検知システム 「ユレダス」を導入(京都)
  ■JR西日本、山陽新幹線に地震対策 微動検知や落橋防止(朝日)
  ■阪神が赤字転落へ 3月期決算修正見通し 車両被害や不通響く(朝日)
10日■梅田−三宮が1時間以内に 13日から輸送拡大(京都)
  ■JR新長田駅 ラッシュ戻った 通勤客ら「こんなに早く…」(京都)
  ■阪急伊丹線あす全線開通(京都)
  ■新幹線 岡山−博多間が20年 震災で記念行事は中止 静かな「成人式」に(京都)
11日■機関車に飛び込み 中年男性が死亡 JR西大路駅(京都)
  ■山陽新幹線復旧へ急ピッチ 六甲トンネル内部を初公開 JR西日本(京都)
  ■阪急伊丹駅、仮駅で再開 きょう一部区間運賃値下げ(朝日)
  ■阪急伊丹駅 仮駅舎で営業再開 伊丹線53日ぶり全線開通(京都)
  ■JR・阪急 復旧進み振り替え輸送で対立 「並走区は対象外」 13日開通の王子公園−三宮 「乗り換えは不便」(朝日)
  ■私鉄値上げに「反対」相次ぐ 民間公聴会(朝日)
  ■阪急伊丹駅営業を再開 仮駅が完成(朝日)
12日■山陽新幹線の運転再開 5月連休前見通し(京都)
  ■新幹線GW前に再開 応援得て工期短縮 東海道線も月内にも完工 JR西日本(朝日)
  ■鉄道1年・港湾2年・幹線道3年 兵庫県が復興方針提示(朝日)
13日■政治再生 第5部 統一地方選 何が問われているか 市民の足 建設費膨張は「借金」に(京都)
  ■試験運転再開前に(京都)
  ■阪急も三宮に戻る 王子公園からきょう再開 大手3社そろう(京都)
  ■王子公園−三宮きょう開通 阪急、代替バスも変更(朝日)
  ■三宮に鉄道3線「集結」阪急・王子公園間が開通(京都)
  ■泉北高速鉄道 来月1日から 14.5%値上げへ(朝日)
14日■山陽新幹線 補強策の効果公表へ 鉄道施設検討委 手抜き工事の影響も(京都)
15日■値上げ疑問意見も 私鉄公聴会(京都)
  ■中小はストも 私鉄総連中央闘争委(京都)
  ■窓 新しい京都駅 優雅な空間を 左京区・小原正太郎(無職・82)(京都)
  ■関西の大手私鉄5社 運賃値上げで公聴会(朝日)
  ■全体復旧、まだ遠く 交通 秋まで寸断続く(朝日)
16日■高齢車両 今月末で引退 南海、記念乗車券発売(京都)
  ■大地震で脱線それ避難 嵯峨駅構内 トロッコ列車で訓練(京都)
  ■来月20日に先行電化開業 JR綾部−福知山間(京都)
  ■キセル乗車3年、840万円 福島の会社員に請求(京都)
  ■きょう営業再開 地下鉄三宮、新長田駅(京都)
  ■神戸市営地下鉄 三宮・新長田駅が再開 きょう上沢駅も来月中旬(朝日)
  ■地下鉄三宮駅が再開 新長田駅も2ヵ月ぶり仮復旧(京都)
  ■山陽新幹線 鉄路あす”握手” 59日ぶりに尼崎市内で 月末から走行試験(朝日)
  ■神戸市営地下鉄 三宮・新長田も駅再開(朝日)
17日■山陽新幹線・東海道新幹線 全線開通早まる 来月上旬にも 井手社長が見通し 阪神大震災から2ヵ月 復興へ明るさ(京都)
  ■阪急神戸線など 全線再開は今秋(京都)
  ■新幹線は来月中旬 東海道線は今月末 阪神高速神戸線は来年末 復旧見通し早まる(朝日)
  ■大動脈つながる 山陽新幹線復旧へ前進(京都)
  ■被災者が自殺 阪神電車に飛び込み(朝日)
  ■”動脈”きょう接続(朝日)
18日■震災で妥結読みにくい 私鉄総連関西地連 春闘取り組みまとめ(京都)
  ■窓 北大路ターミナル 乗り継ぎ不便 改善を期待 北区・近藤重男(老人会役員・79)(京都)
  ■関空特快ウイング 来月20日から運転(京都)
  ■電車、女性はね5万人に影響 島本町のJR東海道線(京都)
  ■被災の住民が飛び込み自殺 JR西ノ宮駅(朝日)
19日■「宇治友が丘団地」市など3者が バス路線計画(朝日)
20日■地下鉄にサリン? 朝の都内3線16駅 死者6、重軽傷600人 無差別殺人の疑い(京都)
  ■地下鉄にサリン? 6人死亡 東京、16駅で同時に 乗客ら約600人被害 車内から異臭、爆発音も(朝日)
21日■東京地下鉄毒ガス事件 主成分「サリン」と断定 死傷者3200人越す マスタードガスも検出 複数の不審者 松本事件と関連を捜査 警視庁(京都)
  ■社説 犯人逮捕こそ最大の抑止策(京都)
  ■南海本線泉佐野駅周辺渋滞解消へ 9道路またぐ高架化完成(京都)
  ■烏丸線の点検強化 サリン事件で京都市交通局(朝日)
  ■社説 毒ガステロの底知れぬ恐怖(朝日)
  ■無差別 組織テロ 東京の地下鉄殺人 サリン被害3200人に 5本の電車から検出(朝日)
  ■首相ら口々に「厳戒」 再発防止に緊張感(朝日)
  ■未経験犯罪に総力態勢 地下鉄サリン事件(朝日)
  ■被害、日比谷線など3線で 1〜3両目に「包み」 車内に、ホームに、倒れる人(朝日)
  ■姿見せぬ犯人「許せぬ」 地下鉄サリン事件 初産控えた妻残し 犠牲の会社員 死に顔目を見開いて(朝日)
22日■松本事件と同物質検出 東京の地下鉄サリン 山梨の悪臭も関連? 死者10人に(京都)
  ■埼京線で異臭騒ぎ 不審物なく運転再開(京都)
  ■身元不明死者は93歳(京都)
  ■死者は10人に 東京地下鉄サリン事件(朝日)
23日■窓 地下鉄サリン事件に一言(京都)
  ■東海道線と山陽新幹線 26日までに復旧 工事完了の方針 JR西日本再開は来月初旬(京都)
  ■地下鉄サリン事件 かばんから新聞の包み 下車後、液体広がる(京都)
  ■新たに判明した死者(京都)
  ■駅ロッカーから短銃 松原署に電話で予告(京都)
  ■阪急神戸線 夙川−岡本間 来月7日に再開 JRは28日から走行試験(朝日)
  ■鉄道用周波で交信 木津署、2人を聴取(京都)
  ■安全地帯に激突 会社員ら2人死亡(京都)
  ■ホームに衝突 男性2人死亡 京都・山科(朝日)
24日■東海道線1日にも復旧 30日から新幹線も検査(京都)
  ■線路侵入男性ひかれて即死 向日市のJR(京都)
  ■JR東海道線 来月1日に全通へ 住吉−灘が復日見通し(朝日)
  ■震災が響き 低額の回答 JR西日本(朝日)
  ■震災の街で支え合う お客さん動き街に活気 鉄道の重大な使命を実感 阪神電鉄の御影駅長 箕浦幹也さん(28)(朝日)
  ■神戸市営地下鉄 全駅が利用可能に 上沢駅も31日から営業(朝日)
  ■叡電平均14.9% 値上げ認可 1日から実施(京都)
  ■私鉄大手、9950円で決着 阪急・阪神除く 春闘ヤマ場越す(朝日)
  ■山陽新幹線新大阪−姫路 来月10日ごろ開通(朝日)
  ■叡山電鉄 来月1日から 14.9%値上げへ(朝日)
25日■山陽新幹線 10ごろ再開へ(京都)
  ■京阪に新型車両 パワーウインドーなど内外装一新「7200系」5月登場(京都)
  ■地下鉄サリン殺傷 5車両 霞が関駅に”集中停車” 8時10分ごろ照準 3分半の間に次々 官庁職員狙う?(京都)
  ■落下原因が未解明で 橋げた再使用は不安 全面復旧早まる山陽新幹線 安全大丈夫か(朝日)
  ■地下鉄サリン入り容器 当日付けの朝刊で包む 販売地域特定急ぐ(朝日)
  ■「鉄道運賃にも上限価格制を」 運輪相が検討表明(朝日)
  ■私鉄大手は9950円の賃上げ(朝日)
  ■JR亀岡駅−馬堀駅 京都交通がバス運行 来月5日から(朝日)
  ■阪急桂駅トイレで 短銃と実弾を押収 通報受けて桂署(朝日)
26日■松本・地下鉄・上九一色村 3事件のサリン同一 警視庁など断定(京都)
  ■JR六甲道仮駅 開通に備え券売機設置(京都)
  ■消えぬ恐怖首都厳戒 ごみ箱すべて撤去 不審物届け出続出 「爆発物」と脅迫電話 乗客は1割減 地下鉄サリン事件から1週間(京都)
  ■声 戦後50年 国鉄民営化(朝日)
27日■山陽新幹線と東海道線 不通区間が復旧 工事が完了 開通間近に(京都)
  ■JR復旧工事が完了 再開見通し 東海道線来月1日 山陽新幹線同10日ごろ(朝日)
  ■運輸省 復旧確認を開始 東海道線・山陽新幹線 あすから走行試験(京都)
  ■地下鉄サリン事件後1週間 被害者に心の後遺症 におい・地下鉄「こわい」(朝日)
28日■「2液混合法」か 地下鉄サリン 車内で反応 松本事件も類似(京都)
  ■サリン発散は最高無期懲役 与党が新法案了承(京都)
  ■SLに乗車できる 「ファン感謝デー」 2日、梅小路で(京都)
  ■小規模な軟弱地盤 高架橋落下に影響 山陽新幹線 運輸省委が解析(朝日)
  ■JR東海道線住吉−灘間 運転再開向け車両使い検査(京都)
  ■レールの響き再び 東海道線で走行試験(朝日)
  ■震災被害の山陽新幹線 施工不良を指摘 運輸省検討委 直接原因には認めず(朝日)
29日■阪神特急 梅田−御影9分短縮 運転時間も3時間延長(京都)
  ■あすから走行テスト 山陽新幹線高架支柱チェック(京都)
  ■1日から170`運転 新幹線新大阪−京都(京都)
  ■経常利益赤字 2億6000万円に 神戸電鉄3月期(朝日)
  ■計測機が一部故障 走行試験やり直し JR東海道線(朝日)
  ■有馬口−有馬温泉 31日から運転再開 神戸電鉄(朝日)
  ■米の専門家ら来日 地下鉄サリン事件で(朝日)
30日■高架橋は横揺れで破壊 耐震検討委中間報告 補強にはお墨付き(京都)
  ■きょう試運転 山陽新幹線(京都)
  ■中小私鉄119組合決着 スト構え大詰めの交渉(京都)
  ■電車と衝突、玉突き 八日市・6人が軽傷(京都)
  ■山陽新幹線 きょうから走行試験 不適の新大阪−姫路間で(朝日)
  ■嵐電の写真入り 絵はがきセット 発売(朝日)
  ■中小私鉄・バス ストにらんで 深夜まで交渉(朝日)
  ■新幹線騒音 環境基準達成は3分の1 改善 進むが 住宅地、19%のみ(京都)
  ■山陽新幹線 72日ぶり試走 新大阪−姫路(京都)
  ■山陽新幹線で走行試験開始 震災から72日ぶり(朝日)
  ■新幹線の騒音 暫定目標達成 環境庁調査(朝日)
31日■窓 JR車両編成弱者に不親切 吹田市・山崎太郎(元教員・73)(京都)
  ■JR7社の95年度事業計画 3年連続の減収減益 景気低迷、震災響く(京都)
  ■JR各社 震災響き収入縮小 来年度の事業計画 四国など4社赤字(朝日)
  ■サリン・ショック世界に不安の種(朝日)
  ■東海道線あす始発から開通 最終検査で「OK」(京都)
  ■JR東海道線あすから全通 安全検査終了(朝日)



1日■支柱に鉄骨添え補強 地下鉄復旧で運輸省が方針 全体も鉄板で巻く
 運輸省は28日、阪神大震災で支柱が押しつぶされるなどの被害が出た神戸市営地下鉄や神戸高速の地下トンネルの復旧について、支柱の両側に鉄骨を添えたうえで、全体を鉄板で巻いて補強する方針を決めた。鉄骨を添える分だけ、新幹線の高架橋の復旧工法より強化される。ただ、被害の大きかった神戸高速の大開駅については、同様の復旧方法で十分かさらに検討したうえで決めるとした。
 運輸省によると、新幹線と違ってトンネルでは、頭上にある土からさらに大きな荷重を受けた可能性があることから、鉄骨を添えることにした。ただし、亀裂が入っただけの支柱は、鉄板を巻くだけにとどめる。補強する柱は、神戸市営地下鉄で233本を、神戸高速で5本になる。
 大開駅は120bにわたって地上の道路がトンネルの中に向かって陥没しているため、トンネルを地上から掘り返して新たに造り直す。掘り返すだけで約3ヵ月かかるという。地上の道路の復旧見込みもまだたっていない。
 このほか、阪急電鉄の西宮北口−夙川間の倒壊した高架橋は、復旧期間を早めるために、柱の中に鉄骨を入れたうえで全体を鉄板で巻いて復旧する。倒壊した三宮駅は、これまで一部6階建てだったのを、2階建てに建て直す。(朝日新聞)
■大阪−岡山間の列車、一往復増発 JR貨物
 JR貨物は28日、阪神大震災で分断された東海道線に代わって、山陰線や伯備線などで「う回」運行している大阪−岡山間の貨物列車を3月3日から1往復増発すると発表した。
 同社は2月中旬から1往復運行しているが、代替のトラック輸送は道路渋滞による到着時間の遅れが深刻で、荷主から貨物列車の増発要請が出ていた。(朝日新聞)
■阪急・夙川−甲陽園 阪神・西灘−岩屋 きょうから再開
 阪神大震災で運休が続いている阪急甲陽線の夙川−甲陽園間(約2.2`)と、阪神本線の西灘−岩屋間(約0.6`)が1日から運転を再開する。
 阪急電鉄は甲陽線の再開に伴い、甲陽園−西宮北口間で運転中の鉄道代替バスを夙川−西宮北口間に変更する。一方、阪神電鉄の代替バスは、これまで通り御影−岩屋間の運行を続ける。また、阪神は同日から梅田−青木間の運行となっている特急を梅田−御影間に延伸し、運転本数も増やす計画だ。(朝日新聞)
■声 新幹線復旧は安全最優先で 広島市 内倒(公務員 50歳)
 阪神大震災で橋げたが落下するなどの被害を受けて不通になっている山陽新幹線が、5月の連休明けに復旧するという。どんな地震でも新幹線の全線が耐えられると確信が持てるまでには、少なくとも半年はかかると思っていたのに、意外に早い復旧計画には驚くばかりだ。
 JRは新幹線の安全性の確保より採算を優先しているようだ。東京オリンピックの直前に開通した東海道新幹線など、橋梁(きょうりょう)とか路床などの大半がそのまま改修などが行われずじまいだから、いくら考えても耐震性などに不安が残る。
 山陽新幹線にしても、コンクリートの中の材料は、腐食しやすい海砂利を使っていると言われ、現実に橋脚など亀裂が目立っている。しかも全線のあちこちに手抜き工事の可能性が多いとも言われている。
 新幹線は高速で走行するのだから、ちょつとしたトラブルでも大事故につながる。今回の大地震の被害を機に全線にわたって万全のうえに万全を期した点検をし、少しでも不安な個所があれは、徹底的な補強工事を行って、100パーセント安全だとの確信を得て開通にこぎつけてもらいたい。(朝日新聞)
■青鉛筆
 「赤い地下鉄」として親しまれてきた営団地下鉄丸ノ内線の500型車両が引退することになり、28日、車内を銀モールで飾ったお別れ列車が走った。
 戦後復興のシンボルとして、1954年に登場した。赤い色は当時の英国製たばこ缶の色から、側面の銀色の波模様はロンドンの遊覧バスのデザインからとったという。
 ただ、冷房装置が付けられないなど老朽化が目立ち、7年前から銀色の新型車に順次、交代していた。引退後はアルゼンチン・ブエノスアイレスの地下鉄で”余生”を送る。(朝日新聞)
■阪急甲陽線が 44日目開通 阪神岩屋−西灘も
 阪神大震災で不通になっていた神戸市内の阪神電鉄本線岩屋−西灘0.6`と、西宮市内の阪急甲陽線夙川−甲陽園の全線2.21`が震災から44日目の1日、始発から運転を再開した。
 阪神本線では同日から特急電車の運転区間を梅田−青木から梅田−御影に延長。御影駅発の本数は1日245本と震災前とほぼ同じに戻り、午前8時台の梅田行き急行で約180%台だった乗車率もやや緩和された。
 阪急甲陽線は線路の損傷は少なかったが、変電所の被害が激しく運転再開に時間がかかった。(京都新聞 夕刊)
■阪急甲陽線が開通 阪神西灘−岩屋も
 阪神大震災で運休が続いていた阪急甲陽線(夙川−甲陽園、約2.2`)が1日から運転を再開した。しかし、本来なら夙川駅で連絡となる神戸線が上下線ともに依然として不通。このため、震災前の午前7時半前後、沿線の学校へ通う生徒らで約85%あった平均乗車率が、この日は25%にとどまった。
 一方、阪神本線の西灘−岩屋間(約0.6`)も1日から運転を再開。阪神本線の不通区間は、9月末に復旧を予定する御影−西灘問(約3.1`)を残すだけとなった。不通区間には代替バスを運行しているが、発着が御影−岩屋間となっていることから、西灘−岩屋間の利用者は少なく、午前7時半ごろの乗車率は約20%しかなかった。(朝日新聞 夕刊)
2日■京都市の地下鉄工事 支柱の耐震性強化 帯鉄筋増やす
 建設中の地下鉄の地震対策の強化へ京都市交通局は1日、駅などの地下構造物を支える柱を巻きつけるようにして補強している帯鉄筋の数を独自の判断で増やし、耐震性をアップさせるよう各工区に指示したことを明らかにした。同局は「巨大地震でどれだけの力が加わるのか国の基準がまだ出ていないが、帯鉄筋を増やすことで揺れに対する強度は増す」としている。
 この日開かれた市会事業予算特別委員会で、市交通局が明らかにした。
 同局によると、補強するのは、現在建設中の東西線と烏丸線の北山以北の北北伸の建設工事の支柱で、すでに完成している部分を除くすべての柱が対象。これまでは国の基準に従い、柱の天井部分付近と床に近い部分は10a間隔、その間の中間部分は25a間隔で巻きつけていたのを、今後はすべて10a間隔で均一に巻きつけ、強化を図る方法に変更する。
 運輸省技術企画課によると、帯鉄筋の強度は、設計段階では考慮していないが、縦方向に入っている主鉄筋がずれるほどの大きな力が加わった場合、主鉄筋がばらけるのを防ぐ効果を持っている、という。
 交通局では「補強の効果は、数字では出ないが、揺れに対して粘り強い構造となり、地下駅などが一気につぶれることは防げる。事業費への影響もほとんどない」(野嶋久暉建設部長)としている。
 阪神大震災では、神戸高速鉄道の地下駅が地上の道路とともに陥没するなどの被害があり、運輸省は専門委員会を設置して、現行の耐震基準を見直す調査を始めている。帯鉄筋以外の部分の耐震強化策について、中谷佑一公営企業管理者(交通局長)は「運輸省の調査で一定の結論が出た上で、市としても、さらに本格的な対策を講じていきたい」としている。(京都新聞)
■関西私鉄 労使交渉始まる 阪神、阪急は個別に
 阪神大震災の影響で、ストを構えず東西に分かれた今春闘の私鉄総連(池村良一委員長)と私鉄関西大手経営側との集団交渉が1日、大阪市都島区のホテルで始まった。
 交渉には、震災被害が大きく集団交渉から離脱、個別交渉となる阪神、阪急を除く関西の京阪、南海、近鉄の計3社の労使と私鉄総達幹部らが参加した。
 冒頭に震災で亡くなった私鉄総連傘下の組合員とその家族計76人のめい福を祈り労使双方が黙とう。池村委員長が経営側にあらためて要求書を提出し、組合側が要求についての説明を行った。
 池村委員長は「震災に配慮してストを設定しない組合側の立場も考え、誠意ある回答を」と要請。経営側の日本民営鉄道協会労務委員長の高井潤三京阪専務は「今日は組合側の話を聞いただけ。こういう交渉形態になったが、円満に解決したい」と話した。
 関衆の集団交渉は2月28日にスタート。関西、関東とも今月中旬まで計4回の集団交渉を行い、回答日の今月24日の決着を目指す。
 私鉄総連と阪急を含む傘下組合は、既に平均2万円の債上げ要求を経営側に提出。
 個別交渉となる阪急の労働組合は集団交渉の様子を探りながら早期決着を図る方針。阪神の労働組合はまだ要求書を提出しておらず、経営側との交渉のめどは立っていないという。(京都新聞)
■阪急も三宮乗り入れ 13日から 阪神間移動55分に
 阪急電鉄は1日、阪神大震災で不通になっている同社神戸線三宮−王子公園3.1`の運転を13日始発から、伊丹線新伊丹−伊丹仮駅0.5`の運転を11日始発から再開すると発表した。
 今回の開通で阪神間に路線を持つ阪急、阪神、JR西日本の3社すべてが、神戸市の中心部の三宮地区に乗り入れを再開する。
 この開通で、阪急神戸線の不通区間は御影−西宮北口となる。三宮から阪急御影駅でJR東海道線住吉駅か阪神電鉄本線御影駅に1回乗り継ぐだけで阪神間の移動が可能になる。
 駅間の徒歩移動を含む所要時間は約55分。震災後初めて1時間を切り、通勤通学客の足は便利になりそう。阪急三宮駅は震災で駅ビルが大きな被害を受けて取り壊されたが、線路がある高架橋の損害は少なく、約2ヵ月で復旧が可能になった。
 伊丹駅が全壊し約0.4`南の仮駅で復旧する伊丹線は営業キロ短縮で11日の開通時から伊丹発の運賃を値下げする。また同日から神戸線西宮北口−梅田で朝ラッシュ時を除き特急運転を再開する。(京都新聞)
■京都発着を延長 特急など4本、今月中
 JR西日本は1日、阪神大震災の影響で2月6日から大阪発着を京都発着に変更している特急「しなの」(大阪−長野間)と急行「たかやま」(大阪−飛騨古川間)の計4本を今月いっばい京都発着のまま運転することを決めた。
 震災後のう回ルートになった福知山線の電車増発で大阪駅の発着線が不足。ラッシュ時に大阪駅を発着する両列車を京都発着にしてホームを確保した。(京都新聞)
■大阪−神戸 乗り継ぎ1回で 王子公園−三宮 阪急が13日再開
 阪急電鉄は1日、神戸線の王子公園−三宮間(約3.1`)を13日に、伊丹線の新伊丹−伊丹間(約0.9`)を11日から運転再開する、と発表した。
 神戸線はすでに運転中の御影−王子公園間を三宮まで延伸するもので、御影−三宮間で普通電車だけを日中約10分間隔で運転する。これに伴い、西宮北口−三宮間で運転中の鉄道代替バスも西宮北口−御影間に変更となる。
 これまで梅田(大阪)と三宮間を電車だけで行き来するには、2回の乗り換えが必要だったが、13日からは1回の乗り継ぎで結ばれる。
 伊丹線は11日からの運転再開で全線開通する。日中約10分間隔の運転の予定。伊丹駅ビルは、阪神大震災で崩壊しており、大阪寄り約400bの場所に仮駅を設けて営業する。
 阪急の復旧計画によると、夙川−岡本間(約5.1`)が4月中旬、岡本−御影間(約2.2`)が7月中旬、西宮北口−夙川間(約2.7`)が8月末にも、それぞれ運転再開の見通しだ。(朝日新聞)
■地下鉄の柱に独自の強化策 京都市が方針
 阪神大震災で高速道路の支柱や地下鉄の駅が倒壊したため、京都市は2日、建設中の地下鉄東西線の駅などの柱に巻きつけている「帯鉄節」を10a間隔にして数を増やす強化策を取る方針を明らかにした。運輸省の地下鉄工事に関する設計基準にはない措置だが、「国の新たな耐震基準を待ってはいられない」と、独自に判断したという。
 京都市で建設中の地下鉄は東西線(13駅、12.9`)と烏丸線北伸線(2駅、2.6`)。山科駅や松ケ崎駅など、未完成の地下構造物すべての柱を対象とするという。
 帯鉄筋は、鉄柱を補強するために巻きつける鉄筋。地震の揺れで柱に力が加わった場合、縦に入っている主鉄筋が横ずれするのを防ぐ効果があるという。現在の基準では、地下鉄の柱は帯鉄筋を巻く間隔が天井と床に近い部分で10aになっているが、中間部分は25aでいいことになっている。帯鉄筋を増やすことで柱の粘りが増し、一気に駅などが倒壊するのを防ぐ効果があるという。
 山口巌・高速鉄道本部長は「地下鉄建設はどんどん進んでおり、手をこまねいていられないので踏み切った」と話している。(朝日新聞 夕刊)
3日■地下鉄東西線工事差し止め 住民の請求棄却 京都地裁 交通権の主張認めず
 京都市の地下鉄東西線建設に伴い、廃止が決まった京阪京津線九条山駅の周辺住民が「駅がなくなると生活環境が著しく悪くなる」として、京都市や京阪電鉄が出資する第三セクター京都高速鉄道会社(社長・依田満京都市収入役)を相手に、東西線御陵−蹴上駅間の工事差し止めを求めた訴訟の判決が2日、京都地裁で言い渡された。大出晃之裁判長は、「住民が主張する『交通権』は認められず、差し止め請求には理由がない」として訴えを棄却した。
 訴えていたのは「九条山の住環境を守る会」の白方英子代表(72)ら152人。京都高速鉄道は、東西線の御陵−三条京阪間を建設中で、完成後、京津線は東西線に乗り入れ、九条山と日ノ岡駅は廃止される。
 住民側は、九条山駅が廃止されると最寄り駅は1.5`離れた蹴上駅になり、通勤通学や買い物に大きな負担となって、憲法が保障する移動の自由など国民の「交通権」が著しく侵害されると主張していた。
 判決で、大出裁判長は「移動の自由を保障する憲法の規定などは国の国民に対する責務を定めた規範的な性格のもので、交通権の根拠にならず、要件も明確ではない。原告が主張する『交通権』は認められない」と判断した。
 原告・弁護団は「判決は残念だが、駅廃止で住民が重大な不利益をこうむることは明らかであり、被告は駅設置の実現に向け努力すべき」としている。(京都新聞)
■声 老人につらい バスの乗降口 高槻市 鶴原 晶子(無職 80歳)
 バスの乗降口の階段はなぜあのように高いのでしょうか。若者や達者な人なら別にどうもないでしょうが、高齢者や足の悪い者にはとても乗りにくいのです。
 高さは私のひざくらいまであって、両手で左右の持つところをしっかり握り、足をうんと上げ、手にうんと力を入れてやっと乗れるのです。荷物なんかある時はとてもつらいのです。
 高齢者も病院へ通うため、たびたび外出しなければなりません。私も10年くらい前までは別につらく感じなかったのですが、80歳を超えて切に感じるようになりました。どうか高齢者のために、なんとか改造して下さるようにお願いします。
 バス停で止まる時も降りやすいようになるべく歩道に近づけ、平行に止めて欲しいものです。ともすれは3、40aも歩道から離れて止められ、降りる時、転びそうになります。
 発車の時も乗ったとたんに走り出し、つかまるところもなく、ふらつくこともあります。皆が腰を下ろすまで待って欲しいのです。運賃を無料にしていただき、いつもありがたいと思っています。なにとぞよろしくお願いします。(朝日新聞)
■5時46分の生と死 脱線した阪神電車 通過直後に陸橋落下
 あっ線路が蛇のようだ 2b、車両浮く 運転士 今も身すくむ
 「テレビで当時の現場が映ると鳥肌が立つし、電車が揺れると『また地震だ』と身がすくむ」
 こう語る阪神電鉄運転士、今安弘さん(29)は1月17日が早番だった。大阪市此花区の自宅を午前3時半に車で出た。寒く暗かった。いつもと変わらない冬の出勤だ。
 妻と1歳10ヵ月の長男の3人家族。大阪府守口市の高校卒業後、昭和59年入社。6年間駅員や車掌を務めた後、社内の試験に合格し運転士になった。
・必死で急ブレーキ
 同5時、梅田発高速神戸行き始発普通電車で神戸方面に向かって走り出した。4両編成、乗客は80人ほど。
 「気のせいか、街中がいやに静かだなあと思った」
 時速65`。電車は神戸市灘区大石東町付近に差し掛かった。突然、電車が浮き上がってくる気がした。
 電車は2bほど持ち上げられた。その後、急降下し激しく揺れ出した。線路がまるで蛇のように曲がりくねる。薄暗い中に木造の民家が激しく揺れながら倒壊していくのが目に飛び込む。「地震だ」
 必死で急ブレーキをかけた。15秒後、停車した。外に出ると、もうもうとした土煙。脱線。車両が傾いていた。無線で「救急車頼む」。車掌は、眼鏡が割れて掛けていなかった。
 線路沿いに車両を見て回る。手動式でドアを開けたときに鳴るブザーが響き渡る。乗客が「どうなっているんだ」と詰め寄る。
・シートを担架代わり
 線路と隣接して住宅が密集していた。近くのマンションではガス爆発。外したシートを担架代わりに重傷の乗客8人を車内から降ろした。
 「血を流し苦しんでいる人もいたが、応急処置をするだけで、あとは『頑張って』と励ますしかなかった」
 救出のため応援社員が現場に到著したのは地震発生から約4時間後。約100b後ろでは陸橋が落ちていた。
 「もしあそこで止まっていたらと思うとぞっとします」
・新幹線にも恐怖
 一方、JR新大阪駅では、午前6時始発の博多行き「ひかり131号」がホームに待機中だった。既に車内に乗客を入れ、運転士の広岡研二さん(25)も運転席に着席。
 「出発の信号が出ればいつでも発車できる状況だった」
 突然地鳴りのような音がゴーツと聞こえて、車体が揺れ出した。「パンタグラフと架線の間から火花がぱちぱちと飛んでいた」
 新幹線の高架橋が落ちる。8ヵ所にわたった。その中の兵庫・尼崎の新幹線高架橋は新大阪駅から西に8.1`。出発してからわずか5分足らずの地点だ。時速は阪神電車の3倍近い。地震が19分遅く起きていたら…。「想像さえできません」(京都新聞 夕刊)
4日■車両に異常音「はるか」停車 JR阪和線
 3日午後7時6分ごろ、大阪府高石市のJR阪和線で、関西空港発京都行き上り特急「はるか48号」の最後部の車両で異常音が聞こえたため、停車して乗務員が車内を調べた。だが、異状は見つからず、同列車は10分遅れで京都に着いた。折り返しの「はるか57号」が24分遅れたのを最高に、上下合わせて8本のダイヤに影響、約900人の足が乱れた。(朝日新聞)
■山陰線ダイヤ乱れる 余部鉄橋で強風
 4日午前5時10分ごろ、兵庫県城崎郡香住町のJR山陰線余部鉄橋で風速20bを記録、列車の運行を一時見合わせた。このため、午前中に出雲市行き特急「出雲3号」が1時間20分遅れたのを最高にダイヤが乱れ、約1300人が影響を受けた。(京都新聞 夕刊)
5日■本社代替基地 高崎に検討 震災教訓にJR東日本
 首都圏の大量輸送を担うJR東日本は4日までに、阪神大震災を教訓として、東京本社(東京・丸の内)の代替機能を持つ指令基地を、過去に地震が少なく東京からも比較的近い高崎支社(群馬県高崎市)に置く方向で検討を始めた。
 震災時にJR西日本で指揮命令系統が大きく乱れた点を重視した措置で、本社の列車指令などがダメージを受けた場合、瞬時にバックアップ体制を機能させることが目的だ。
 同社の安全対策部は「今回の地震で指揮命令系統の確立が最重要であることがあらためて分かった。”神経”が切れては対応策も立てられない。東京本社がダウンした場合、瞬時に高崎支社が第二本社として立ち上がる体制がベスト」としている。(京都新聞)
■トラックと急行衝突 男性が死亡 綾部のJR踏切
 4日午後零時半ごろ、綾部市下原町のJR山陰線第二下原踏切で、網野行き急行「丹後1号」と近くの村上工務店の軽トラック=吉見久美さん(59)運転=が衝突した。軽トラックは大破し、吉見さんは全身を強く打って即死した。同列車は現場に約2時間停車、後続の特急など18本に部分運休や遅れが出た。綾部署の調べでは、同踏切は警報機付きで遮断機はなかった。(京都新聞)
6日■横浜の京浜急行 車内で刺激臭 薬物中毒疑い 客11人手当て
 5日午後11時50分ごろ、横浜市西区の京浜急行横浜−戸部間を走行中の品川発浦賀行き普通電車(4両編成)の3両目で突然刺激臭が立ち込め、約20人が目やのどの痛みを訴えた。1歳の女児を含む11人が病院に運ばれたが、いずれも軽症だった。
 神奈川県警は治療した医師の話などから化学物質などによる急性薬物中藁の症状との見方を強め原因の特定を急いでいる。また6日朝から車両を実況見分した。
 車掌は「車内は白っぽく見えた」と横浜市消防局の救急隊員に証言しており、ガス状の物質が車両内で拡散した可能性が強いとみている。
 調べによると、3両目には約80人が乗車。横浜駅を出た直後に刺激臭が発生した。戸部駅で約10分間、停車しシートの下を調べるなど点検したが、においの元とみられるものはなく別の車両に乗客を移して発車。
 次の日ノ出町駅で降りた19人が目などの痛みを訴え11人が手当てを受けた。戸部駅で下車した乗客のうち2、3人も駅員に同様の症状を訴えたという。
 治療に当たった看護婦は「患者は目や鼻がピリピリすると言い、何人かは徹熱もあった」と話している。(京都新聞 夕刊)
7日■JRと近鉄の駅舎分離”新生”桜井駅10日開業
 近鉄大阪線の桜井駅(奈良県桜井市)と、JR桜井線の桜井駅(同所)で進められていた駅施設改良工事がこのほど完成。JR駅舎が高架上に引き上げられるなど、これまで共同利用駅になっていた両駅は完全分離され、10日からオープンする。
 両駅は、これまで乗り継ぎ通路が複雑なうえ、エスカレーターなどの設備も貧弱だった。桜井市が駅前整備事業として両線を南北にまたぐ自由通路を設置したのをきっかけに、近鉄は平成5年7月から、JRも翌年7月から着工していた。
 改良工事で近鉄は、幅約4bだったホームを約9bに拡大。高架下の駅舎を改築して、1ヵ所だけだったホームヘの階段を2ヵ所に増やし、エスカレーターとエレベーターを1基ずつ併設した。JRは、平地にあった駅舎を自由通路上に上げて橋上駅とし、ホームとの乗降に使うエレベーター2基を新設。上リホームを5.5bから7.0bに拡幅するなどした。(京都新聞)
■叡雪がダイヤ改正 夜間に上下 6列車増発
 叡山電鉄は6日、叡山本線と鞍馬線の夜間時間帯に上下6列車を増発するダイヤ改正を発表した。実施は22日から。
 夜間時間帯の運転間隔を短縮し、旅客の利便を図るためで、午後10時から午前零時までの夜間時間帯に、叡山本線の出町柳−修学院間で上下2本、鞍馬線の出町柳−二軒茶屋間で上下4本をそれぞれ増発する。
 出町柳発の最終列車時刻は従来通りだが、この改正で鞍馬線がこれまで30分に1本の割合だったのが、20分に1本となる。増発は、日祝日を含めた全ダイヤで実施する。また、4月下旬には新造車両を投入、冷房化率を75%とする。(京都新聞)
■化学薬品か特定はできず 京浜急行の刺激臭
 横浜市内を走行中の京浜急行車内で6日未明、刺激臭が立ち込め11人が病院で手当てを受けた事件で、神奈川県警戸部署などは、傷害事件の可能性もあるとみて同日午前9時半から約7時間にわたって車両を実況見分する一方、関係者から事情を聴いた。
 しかし、刺激臭の原因を特定できず、症状を訴えた乗客から血液や毛髪を採取、分析を急いでいる。同署は被害の発生状況から何者かが化学薬品を持ち込んだ可能性が高いとみている。
 乗客などの話によると、電車が横浜駅を出発した直後から、3両目の車両内に刺激臭が立ち込め、乗客約20人が目やのどなどに痛みなどを感じたという。(京都新聞)
■市営地下鉄 三宮・新長田駅 16日に再開
 神戸市は6日、阪神大震災で閉鎖が続いている市営地下鉄の3つの駅のうち、三宮駅と新長田駅の営業を16日始発から再開すると発表した。三宮駅については当初、「被害が大き過ぎて再開の見通しが立たない」としていたが、利用度の高さを考え、応急修理ができた段階で仮営業を始めることにした。本格復旧は今秋になる見通し。両駅の間に位置する上沢駅は、4月中旬に営業を再開できる見込みという。(朝日新聞)
■JR西日本20%減収(前年同月比) 2月の販売高 東西分断で大打撃
 阪神大震災(兵庫県南部地震)で山陽新幹線などが大打撃を受けたJR西日本など、JRグループ全体(6社)の2月1ヵ月間の駅窓口での販売高が約2207億5000万円と、前年同月に比べ10%の減収になっていることが7日、分かった。
 この販売高は、旅行会社での販売を除きJR各社が直接販売した切符の売り上げ合計で、区間がグループ他社にまたがる場合は相互収益の精算前の速報数字。
 西の3社への影響が目立つが各社とも、山陽新幹線新大阪−姫路間や東海道線住吉−灘間が阪神大震災で不通となるなど阪神間で鉄道が東西に分断されているのが減収の原因とみており、一刻も早い全線開通を求める声が上がっている。
 震災で大きな被害を受けたJR西日本は販売高が約432億円と前年同月の約541億円に比べ20%のダウン。JR四国は販売高約24億5000万円と、34%の減収。JR九州も約93億3000万円で、22%減と苦しい状況。また、旅行者数がかなり減少したというJR北海道も約56億円で21%の減。約1314億4000万円を売ったJR東日本、約287億3000万円のJR東海もそれぞれ4%、11%減らしている。(京都新聞 夕刊)
■阪急の値下げ 運輸省が認可 伊丹駅発着の一部
 運輸省近畿運輸局は7日午前、阪急電鉄が申請した伊丹線伊丹駅発着の一部区間の運賃値下げを認可した。阪急は11日から、阪神大震災で崩壊した伊丹駅ビルに変わり、大阪寄り約400bの場所に仮駅を造って営業を始める。これにより、運賃の基本となる営業距離が短縮されることから異例の値下げを申請していた。
 認可によると、11日から伊丹と神崎川、阪神国道、逆頼川、豊中、中山、箕面、崇禅寺、関大前の8駅間の運賃が20−40円安くなり、通勤・通学定期も44区間で1ヵ月最大400円値下げとなる。(朝日新聞 夕刊)
8日■踏切事故想定の訓練 駅員ら救護法再確認 京阪の淀車庫内
 踏切事故を想定した救急救助訓練が7日、伏見区淀の京阪電車淀車庫内で行われ、京阪電鉄の駅員ら80人が、緊急の通報体制をはじめ乗客の避難誘導、負傷者の救護法などを再確認して非常時に備えた。
 緊急時の連携を密接にするため、伏見消防署と京阪電鉄が毎年実施。この日は、淀駅近くの踏切で4両編成の普通電車とトラックが衝突、乗客18人が負傷し、トラックも炎上した、との想定で始まった。
 衝突事故の発生を告げる白煙が広がると同時に、車掌が列車無線で淀駅に通報。
 淀駅は消防に連絡するとともに、救護隊の駅員ら19人を現場に急行させた。
 事故現場では、車掌が乗客を車外に避難させ、駆けつけた駅員らが消防の救急隊員とともに、素早く負傷者の救護と搬送にあたった。
 また、救助隊がトラック(訓練では乗用車)に閉じ込められた運転手を救出、3台の消防車は放水を行って二次災害などを防いだ。
 参加者らは、自分の決められた任務を再確認しながら、真剣な表情で訓練に取り組んでいた。(京都新聞)
■電気工事業者に禁固3年を求刑 生駒トンネル火災
 44人の死傷者を出した1987年9月の近鉄東大阪線・生駒トンネル(約4.7`)火災事故で、「手抜き工事」が事故原因として業務上失火、業務上過失致死傷の罪に問われた電気設備工事会社社長中谷利雄被告(54)に対する論告求刑公判が7日、大阪地裁(寺田幸雄裁判長)で開かれた。検察側は「工事業者として初歩的な注意義務を怠り、過失は重大」と述べ、禁固3年を求刑した。
 論告によると、中谷被告は86年3月、トンネル内の高圧ケーブルの接続工事をした際、アース用部品の取り付けを忘れ、ミスに気付いた後も放置したため、ケーブルから発生した微弱な電流の逃げ場がなくなり、火災が起きたとされる。
 この火災でトンネルに煙が充満し、通過中の大阪港発生駒行き下り普通電車がトンネル内で立ち往生。高校教師の男性(当時56)が急性呼吸不全で死亡し、43人が一酸化炭素中毒などになった。
 28日の最終弁論で結審する。(朝日新聞)
9日■阪神電鉄「赤字」へ 当期損失35億円 震災響く
 阪神電鉄は8日、95年3月期決算見通しを発表し、阪神大震災の被災で当期損失が35億4000万円と、戦後最悪の決算となることが明らかになった。
 同社は、震災で鉄道施設を中心に大きな被害を受け、現在も本線の御影−西灘間(3.1`)が不通のまま。被害総額は約700億円と見込まれている。
 主力の鉄道事業が、震災の影響で284億2000万円と、中間決算発表時に比べ約8億1000万円の減収。マンション販売などの土地建物事業は、すべてストップしたため同16億6000万円減、阪神パークや六甲山スキー場などの運動場遊園事業も全面閉園で同8億3900万円減と落ち込み、全体の売上高は697億9200万円と、前期比約100億の減収に。
 この結果、経常利益は50億9000万円と、中間発表時の予想を下回り9億2000万円の減益。復旧費用などを特別損失として90億2100万円を計上するため、最終段階では、予想の32億円の利益から一転35億4000万円の赤字に転落することになった。(京都新聞)
■JR西日本 山陽新幹線 初期微動で列車停止 地震検知システム 「ユレダス」を導入
 JR西日本は8日、山陽新幹線の新たな地震対策として、地震動をいち早く検知して列車を停止させるシステム「ユレダス」を導入すると発表した。鳥取、浜田(島根県)、高知、福岡、延岡(宮崎県)の5地点に置き、来年1月から稼働させる。この間の地震対策の徹底も兼ね、3年前から導入しているJR東海の装置(計14ヵ所)とも、ネットワーク化を図る。
 山陽新幹線の地震対策は現在、沿線の変電所周辺など計23ヵ所に置いた地震計装置に頼っている。地震計が40ガル(ガルは加速度の単位)以上の揺れを感じると、自動的に列車の電源を切り、非常ブレーキがかかるよう設計されている。しかし、地震の早期検知は、ユレダスのシステムの方が優れていることがわかっていた。
 ユレダスは、地震を揺れ始め(P波)の段階で捉え、これを瞬時に電算機で分析、後に続く本震(S波)の大きさを予期して警報を出す。危険と判断すれば、地震計装置と同じように列車を停止させる。一つの検知装置が、半径約100bの揺れを感知し、電源しゃ断までは3−4秒。
 JR東海は平成2年から導入、現在は計14地点に検知装置を置いている。
 JR西日本は、阪神大震災を教訓に、地震対策を徹底させるため、地震計とユレタスを併用することにした。
 設置費用は約8億円。設置直後は装置にデータを蓄積する必要があり、有効に働くまでには1年ほどかかる。同社では、それまでの間、JR東海が綾部、金剛山、新宮の3地点に設置している検和装置を利用する計画。既に東海側の了承を得ており、遅くとも今年5月中には、3地点の検知装置と山陽新幹線を結ぶことにしている。(京都新聞)
■JR西日本、山陽新幹線に地震対策 微動検知や落橋防止
 JR西日本は8日、山陽新幹線の新たな地震対策を発表した。来年1月から、予想震源域に設置した地震計で揺れ始めの徹動を検知して、列車を早期に減速、停止させるシステムを導入するほか、97年3月までに高架橋の橋げたが、激しい揺れによって横滑りや落下するのを防ぐ補強工事を全線の高架橋に施す。
 地震の初期徹動を検知するシステムは「ユレダス」と呼はれる。予想震源域に置いた地震計が、地震の主要動である「S波」(進行速度=毎秒約4`)よりも進行速度の速い小さな振動である「P波」(同8`)を捕らえ、コンピューターの演算によって地震の規模や震央距離を瞬時に算出。軌道に大きな影響が予想される場合に警報を発して送電を止め、列車を「S波」の到達までに減速、停止させる。
 JR西日本の計画では、地震計を鳥取市、浜田市(島根県)、高知市、福岡市、延岡市(宮崎県)の5ヵ所に置く。すでに東海道新幹線は「ユレダス」を導入しており、JR東海が地震計を14ヵ所設置している。今年5月をめどに、このシステムとも連動させる考えで、新大阪−姫路間は当面これで補うとしている。総投資額は約8億円という。
 一方、落橋防止の補強工事は、橋脚にコンクリート製の突起を設けて橋げたにかませたり、橋げた同士を鋼製のピンでつないだりする。
 この工事は1988年から約10億円をかけて約800ヵ所で実施しており、阪神大震災で高架橋が落下した新大阪−姫路は施工済みの個所も含まれている。
 しかし、JR西日本は「阪神大震災では支柱が壊れたため橋げたが落下したが、地震には様々なパターンがあり、有効な地震対策のひとつではある」(鉄道本部)と判断、震災前の97年3月までに約1200ヵ所という計画を大幅に見直して、約6000ヵ所を対象に約80億円をかけて、山陽新幹線全線の高架橋にこの落橋対策を施すことにした。(朝日新聞)
■阪神が赤字転落へ 3月期決算修正見通し 車両被害や不通響く
 阪神電気鉄道は8日、1995年3月期決算の業績予想の下方修正を発表した。阪神大震災で鉄道架線や車両などの損壊被害が約790億円にのぼるうえ、一部区間の不通による減収分もあり、復旧用の補助金支給や法人税の減免分などを含めても、当期損益は、当初見通しの31億円の黒字から、一転して35億円の赤字となる見通しだ。70年代に現在の会計基準になって以降、赤字転落は初めて。
 修正額は、売上高が見通しに比べ5.0%減の697億円、経常利益が同15.4%減の50億円。
 地震で損壊した鉄道の修繕費など特別損矢90億円を計上するため、赤字に転落する。
 来期も、復旧の本格化に伴って費用も膨らむので「今年度よりさらに悪化する」(手塚昌利社長)とみている。このため、3月から役員報酬を年20%、課長以上の管理職の給与を年5%カットするなどして経費削減に努めるほか、住宅販売などを増やし、収益増を狙う。
 また同社長は、現在申請中の運賃値上げについて、認可が下り次第、予定通り値上げする意向を示した。(朝日新聞)
10日■梅田−三宮が1時間以内に 13日から輸送拡大
 阪神大震災で御影−西灘間が不通になっている阪神電鉄は9日、阪急電鉄・王子公園−三宮間の13日始発からの運転再開に合わせ、振り替え輸送の区間を阪急・御影−王子公園間から阪急・御影−三宮間に拡大する、と発表した。
 また、同日から両社が共同で阪神・御影−阪急・御影間に直通連格バスを運行する。これによって阪神、阪急両線乗り継ぎで梅田−三宮間は1時間以内で結ばれることになる。
 振り替え輸送の対象は、阪神の定期券か回数券で、御影−西灘間の各駅を発着または通過となる乗車券。
 普通乗車券で乗り継ぐ場合は両線の乗車券が必要になる。阪神・御影−阪急・御影間の連絡バスは所要時間が約5分で10分間隔(ラッシュ時は5分間隔)。(京都新聞)
■JR新長田駅 ラッシュ戻った 通勤客ら「こんなに早く…」
 阪神大震災で駅舎がほぼ全壊し、通過駅になっていたJR山陽線の新長田駅(神戸市長田区)が10日始発から、仮駅舎で業務を再開した。
 仮駅舎は元の駅の西側に設置され、上下線の仮設ホームとも姫路方向に約200b移動。輸送力をカバーするため12両編成の特別列車を運行している上り線は従来よりも約80bホームが長くなった。
 震災で同駅はホームの屋根や柱が倒壊するなどしてほぼ全壊。1月30日に神戸−須磨間が開通した後も通過駅になっていた。
 同線と接続するJR東海道線は神戸市内の住吉−灘間(4.5`)が現在も不通のままで、阪神間の全通は5月の連休前後とみられている。
 新長田仮駅舎周辺ではこの日、約30人のJR職員が出てキップ売り揚などへ客を誘導。足早にホームへ駆け上がるサラリーマンや、電車から降り、近くの事務所へ向かう人で活気が戻った。
 神戸の中心街・三宮へ通勤する会社員藤原朋子さん(23)=同市長田区久保町=は「昨日までは隣の鷹取駅を利用していたが、時間がかかるうえ夜は真っ暗で怖かった。新長田駅は当分駄目だと聞いていたので、こんなに早く再開されて本当にうれしい」と話していた。(京都新聞 夕刊)
■阪急伊丹線あす全線開通
 阪急電鉄は11日始発から、伊丹線の伊丹−新伊丹の運行を再開する。震災で伊丹駅は崩壊したため、南400bに仮駅を設けての再開で、同線は全線開通になる。伊丹−新伊丹間の代替バス運行は中止する。
 ダイヤはほぼ平常通りに復活。伊丹発が午前5時3分−午前零時22分、塚口発が午前4時54分−午前零時13分。運転間隔はラッシュ時が六分、昼間時間帯は10分程度。(京都新聞 夕刊)
■新幹線 岡山−博多間が20年 震災で記念行事は中止 静かな「成人式」に
 山陽新幹線は10日、岡山−博多間が開業してから満20年を迎えた。1月の阪神大震災で橋げた落下などの被害を受け、今も新大阪−姫路間が不通で、震災復旧優先のため博多駅などで計画していた記念行事はすべて中止。静かな「成人式」となった。
 岡山−博多間は昭和50年3月10日に開業。この間に運んだ乗客は新大阪−博多間で約11億6000万人、走った距離は約4億5000万`に達した。
 新大阪−博多間は開業時3時間44分だったが、新型車両「のぞみ」の投入で2時間半にスピードアップ。ここ数年は年間6000万人台後半が利用しているものの、航空機との競争も次第に厳しくなっている。九州内では、1日約4万人が利用する博多−小倉間の「通勤新幹線」がドル箱となっている。
 阪神大震災による被害は在来線も含めると1200億円。JR西日本はゴールデンウイーク前の復旧に全力を挙げている。(京都新聞 夕刊)
11日■機関車に飛び込み 中年男性が死亡 JR西大路駅
 10日午後3時ごろ、京都市南区唐橋平垣町のJR西大路駅で、東海道本線下りホームの西端にいた中年男性が、通過中の回送機関車に飛び込み、死亡した。
 九条署の調べでは、男性は年齢50歳くらいで、黒色ジャンパーに紺色作業ズボン姿だった。同署で身元の確認を急いでいる。(京都新聞)
■山陽新幹線復旧へ急ピッチ 六甲トンネル内部を初公開 JR西日本
 JR西日本は10日、阪神大震災で不通になっている山陽新幹線新大阪−姫路間で、復旧工事がほぼ終了した新神戸駅東側の六甲トンネル(全長16.25`)の内部を震災後初めて報道陣に公開した。
 兵庫県西宮、芦屋、神戸の3市を通る同トンネル内の主な損傷個所は、芦屋市円7ヵ所、神戸市内5ヵ所の計12ヵ所。側壁やアーチ(天井)部分にできたひび割れが大半だが、最も大きな損傷はトンネルのほぼ中央部。側壁約51平方bにロックボルトを打ち込み、樹脂を注入して補修した。(京都新聞)
■阪急伊丹駅、仮駅で再開 きょう一部区間運賃値下げ
 阪神大震災で駅ビルが崩壊した阪急伊丹駅の仮駅が完成し、11日始発から営業を再開する。大阪寄り約400bの場所に建設したため、営業距離も短縮し、同日から関大前や逆瀬川など8区間の運賃が、震災前に比べて20−40円値下げとなる。仮駅での営業再開に伴い、新伊丹−伊丹間で運転していた鉄道代替バス用者のJR定期券への買い替えが進んだことから見直しを決めた。(朝日新聞)
■阪急伊丹駅 仮駅舎で営業再開 伊丹線53日ぶり全線開通
 阪神大震災(兵庫県南部地震)で不通になっていた阪急電鉄伊丹線の伊丹−新伊丹間(0.5`)が11日、運転を再開。高架駅が倒壊するなど大きな被害が出た伊丹駅は仮駅舎で53日ぶりに営業を再開した。
 同社は伊丹線の全線開通に合わせて神戸線の梅田−西宮北口間で特急の運転を開始した。
 また、伊丹仮駅舎が従来よりも約400b南に移り、運賃計算距離が短くなったのに伴い同日から同駅発着の一部区間での運賃値下げを実施。新たに改札機6台や券売機3台などを設置した仮駅舎はホームが従来の3本から1本に。午前5時3分発の塚口行き始発電車からほぼ平常ダイヤで運行した。
 旧伊丹駅は震災で駅ビル3階のホームが停車中の列車2編成(計8両)とともに2階部分に崩落するなどしてほぼ全壊。現在、駅ビルの取り壊し作業が進められているが、建て替えが済み完全復旧するには少なくとも1年半−2年は掛かるとみられている。
 運賃が値下げになったのは、普通運賃、回数券が伊丹−神崎川(200円から160円に)など8区間。定期券は通勤、通学とも44区間。
 この日は第2土曜日に当たるため、サラリーマンやOL、学生の姿も少ない。同駅では普段より2人多い駅員を配置し、客の対応に当たったが、利用客が予想より少なく混乱も特にないという。伊丹市内から尼崎市に通う会社員谷垣敬二さん(57)は「新伊丹まで歩いて20分かかったのが、ここでは10分もかかりません。帰りの遅いサラリーマンの息子にも、便利になりました」と話していた。(京都新聞 夕刊)
■JR・阪急 復旧進み振り替え輸送で対立 「並走区は対象外」 13日開通の王子公園−三宮 「乗り換えは不便」
 JR西日本と阪急電鉄の間で阪神大震災による不通区間を補いあう「振り替え輪送」をめぐる解釈に大きな相違が出て、13日から阪神間の一部区間でこれまでのような定期券や回数券の融通が利かなくなる。
 鉄道業界では、自社線の不通区間を他社に補ってもらうことを「振り替え輸送」と呼ぶ。
 例えば、JR大阪駅から三ノ宮駅へ向かう場合、JRの定期券客は阪急の御影−王子公園をそのまま利用でき、逆に阪急の梅田−三宮間の定期券客は、JR東海道線の大阪−住吉間、灘−三宮間に乗れる。
 ところが、阪急神戸線の王子公園−三宮間が13日から開通するのを機に、振り替え輸送の運用に関する両社の意見が食い違った。この区間に相当するところは東海道線も走っており、本来、振り替え輸送の対象にはならないというのがJR側の言い分。
 阪急側は今月1日、「これまで通りの取り扱いにすれば、利用客が乗り換えをしなくて済む」と、現状維持を申し入れていたが、JRは10日、「両社の運賃や定期代は元々差がある。このまま継続すれは二重運賃が長期間にわたり、乗客に不公平感が生まれる」と、阪急の申し入れを断り、不通区間に限って振り替え輸送を引き受けることにした。
 JRが本来の振り替え輸送の原則に立ち返る方針を固めたことで、13日から阪急の定期券や回数券でJR灘−三ノ宮間は乗車できなくなる。また、特例措置として認めていた大阪−西ノ宮間も、1ヵ用の猶予を置いた4月13日からは別途運賃が必要になる。
 JRの岩崎邦夫営業部長は「不通区間の輸送は代替バスを走らせるなどの自社の努力が第一であり、振り替え輸送はあくまでそれを補うもの。復旧が進んだ今と震災直後では事情が異なる」と話す。一方、阪急の川端寿二取締役運輸部長は「今までより乗客に不便を掛ける結果になり残念。幸いにも阪神には当社の考え方を理解していただいている」と話している。(朝日新聞 夕刊)
■私鉄値上げに「反対」相次ぐ 民間公聴会
 近鉄、南海、京阪、阪急、阪神の関西大手私鉄5社が4月1日実施希望で運輸省に申請している運賃値上げについての民間公聴会(主催・関西消費者団体連絡懇談会)が10日、大阪市北区で開かれた。私鉄側は運輸部長ら幹部約30人が、利相客側は会社員、主婦、障害者団体のメンバーら約30人が参加した。
 私鉄側が輸送力向上や身障者対策などの設備投資の増加や、不況による旅客の減少などを理由に、5社平均19.2%の値上げの理解を求めたのに対して、主婦や身障者からは「経営は別々なのにいつも値上げは一緒。談合としか思えない」「身障着の多くは低所得。1ヵ月の定期代が給料より高いケースすらある。せめて割引制度を拡充してほしい」などの意見が相次いだ。
 申請が阪神大震災直後の1月19日だったことから「交通の確保に被災者が苦しんでいるというのに、市民感情を全く無視した申請。その神経がわからない」などの意見や、今後の地震対策についての質問も出た。(朝日新聞 夕刊)
■阪急伊丹駅営業を再開 仮駅が完成
 阪神大震災で駅ビルが崩壊した阪急伊丹駅の仮駅が完成し、11日始発から営業を再開した。仮駅は約400b大阪寄りに造ったことから、運賃の基本となる営業距離が短縮し、開大前や逆瀬川など8区間の運賃が、同日から20−40円値下げとなった。また、通勤・通学定期も梅田、三宮など44区間で値下げされた。
 駅ビルの新築については、駅前再開発を考える伊丹市と協議会をつくり検討する方針で、仮駅での営業は約2年間に及ぶ見通しだ。
 震災から53日ぶりの営業再開だったが、土曜日の朝とあって通勤客はまばらだった。(朝日新聞 夕刊)
12日■山陽新幹線の運転再開 5月連休前見通し
 亀井静香運輸相は11日、大阪市内で開かれた講演の中で、阪神大震災で不通となっている山陽新幹線の復旧見通しに触れて、運輸省の鉄道施設耐震構造検討委員会(委員長、松本嘉司・東京理科大教授)が、4月初めにも復旧個所の安全点検をするという方針を明らかにした。これによって点検後、試運転が可能になり、5月連休前の運転再開にこぎ着ける見通しが強くなった。
 これまでJR西日本は復旧は公式的には5月の連休明けになるとしていた。だが復旧工事が予想以上に進んだため、同運輸相は早期開通が実現できる、と判断したもようだ。(京都新聞)
■新幹線GW前に再開 応援得て工期短縮 東海道線も月内にも完工 JR西日本
 阪神大震災(兵庫県南部地震)による被害で不通が続いているJR山陽新幹線、東海道線が4月中に運転再開する見通しとなった。亀井静香運輸相は11日、大阪市内で講演し、山陽新幹線の復旧工事が予定より早く進み、高架橋や路盤の強度などを調べる運輸省の最終点検にあたる「開業前検査」を4月初めにも実施する方針を明らかにした。JR西日本では、山陽新幹線全線の線路を週内にもつないで、3月中に工事を完了、直ちに試運転列車を走らせる計画。東海道線の完工もほぼ同時期としている。いずれの工事も運輸省の指導で進められており、5月上旬としていた2つの大動脈の復旧がゴールデンウイーク前になることは確実だ。
 亀井運輸相は「労使が一体となって作業に取り組んでおり予定より早い復旧が見込まれる」としたうえで、山陽新幹線は復旧工事が完了後、まずJR西日本による試運転を実施、高架橋や路盤などの安全確認をする考えを明らかにした。4月初めには、運輸省鉄道局に加え、学識経験者らで組織する「鉄道施設耐震構造検討委員会」(松本嘉司委員長=東京理科大教授)でも再検査を行い、そのうえで、運輸省が運転再開日を決定するという。
 JR西日本の計画では、東海道線も3月末か4月初めには工事が完了することから、運輸省の検査は山陽新幹線とほぼ同時期に行われる見通しだ。
 JR西日本が「5月上旬」としている2線の運転再開が早まることについて、亀井運輸相は「安全第一と、1日も早い復旧は決して二律背反するものではない」と話した。
 阪神大震災で、山陽新幹線は新大阪−姫路間にある高架橋の橋脚708本が損壊。このうち121本は修復ができないほど壊れ、8ヵ所で橋げたが落下した。東海道線も神戸市内の住吉−灘間で高架橋が落下するなどした。復旧にあたっては耐震検討委の承認を受けた工法で進んでおり、鉄筋コンクリート柱の鉄筋を増やしたうえで、周囲に鉄板を巻いて補強している。亀井運輸相もこの日、「強度は従来よりも3倍になった」と話している。
 JR西日本は山陽新幹線、東海道線ともに開通の目標をゴールデンウイーク明けの「5月上旬」として、工事を進めてきたが、目標設定時に想定した作業員数がJR各社などの応援などにより、5割以上も増えて約2300人になったことや通常よりも早く乾くコンクリートなどの使用で工期を短縮した。
 山陽新幹線、東海道線の分断により、東西の人、物の流れがストップ。この影響で赤字転落を予想する企業も多い。ゴールデンウイーク前の全線開通が確実となったことで、経済効果も大きい。(朝日新聞)
■鉄道1年・港湾2年・幹線道3年 兵庫県が復興方針提示
 兵庫県は、阪神大震災の復興計画の基本方針、「阪神・淡路震災復興戦略ビジョン」案をまとめ、神戸市で11日開かれた第2回都市再生戦略策定懇話会(座長・新野幸次郎神戸大学名誉教授)に提示した。計画期間10年のうち、当初3年間は住宅、産業、都市基盤を全力で再建する期間と位置付け、鉄道は1年、港湾は2年、幹線道路は3年以内に復旧、臨海部に国際的な交流施設を集めた「国際経済文化アクセスゾーン」を整備する、としている。
 ビジョン案は、2月の第1回想話会に県が示した「阪神・淡路震災復興計画(ひょうごフェニックス計画)」の素案をもとに、委員の意見を反映させて作成した。
 復興事業の進め方として、震災後3ヵ月を仮設住宅建設や都市交通復旧を急ぐ「緊急役旧事業」期間、3年を基盤整備を進める「戦略的復興事業」期間、10年を新都市や神戸空港などを整備する「復興促進事業」期間の3段階に分け、それぞれの期間内に達成することにした。
 「戦略的復興事業」の生活分野では「住宅復興3ヵ年計画」にもとずき、公的住宅の早期建設や再建のための資金援助を実施するほか、臨海・内陸部の新市街地に大量の住宅用地を確保する。
 産業分野では、大阪ベイエリアの拠点として、神戸港や臨海地区一帯に「国際経済文化アクセスゾーン」を設定し、「世界保健機関(WHO)神戸センター」「国際会議場」「外国公館エリア」「留学生センター」などの国際交流施設や、情報産業などの先端企業を建設・誘致して、新しい産業を育成することを提言している。
 都市基盤分野では、「緊急インフラ整備3ヵ年計画」を作成して交通の再建を最優先するほか、災害時の被害を最小限に抑えるために市街地を約2`ごとに分割して公園や緑地、耐火建築物を配置する防災構想を提言している。
 一方、10年かけて復興を目指すのは、市街地再開発や災害時の救急医療システムの確立、防災性の高い都市基盤整備など。被害が集中した神戸市西部などこれまで公共施設が比較的少なかった250fについては道路、公園、住宅地、商業地域が一体になった街並みを建築する一方、三宮駅周辺は新都心として再建する。また、新しい救急システムを開発するため、救命医療の研究機能を備えた「災害医療センター」を創設する。
 さらに、神戸空港を推進し、鉄道は神戸−大阪間の代替・う回ルートとして、神戸電鉄や加古川線の強化を図るとしている。(朝日新聞)
13日■政治再生 第5部 統一地方選 何が問われているか 市民の足 建設費膨張は「借金」に
 京都市西京区大原野西境谷町の長坂生人さん(40)は、左京区静市市原町の会社まで通勤している。洛西ニュータウンの自宅から市バス−阪急−地下鉄−京都バスと乗り継ぐ。所要時間は平均1間40分、渋滞時には2時間以上もかかる。「満員バスに揺られ、へとへと。こんな通勤がいつまで続くのか」。
延伸メド立たず
 洛西ニュータウンは京都市が造成、1976年から入居が始まった。現在、約1万1000世帯3万5000人が暮らす。分譲案内パンフレットには、地下鉄東西線の建設計画路線図が書かれ、これを信じて住んだ人も多い。だが、建設費の膨張と現在の建設区間の工事の遅れで、2005年までに延伸工事に着手する予定とされていた二条駅以西は「着工のメドも立っていない」(市交通局)。
 昨年7月14日、京都市の地下鉄臨時市会が開会された。ふだんまばらの傍聴席は東西線建設費膨張の実態解明を求める市民で埋まった。
 各会派の議員が次々と代表質問に立った。が、市側は「工事の進行管理に責任があった」と謝っただけだった。「議員はしっかりチェックしていたのか」。工事が始まって4年半、この間の建設費膨張を十分に監視できなかった議員に、傍聴の市民からは怒りの声も飛んだ。
・責任あいまいに
 委員会審議では「これまでから本当にこの予算でできるのか、工期は大丈夫か、と指摘してきたではないか。その都度、あなた方は『できます』と答えたではないか」と交通局幹部に詰め寄る議員。「費用の膨張を隠し通そうとした当時の公営企業管理者(交通局長)が要職に登用されているのは解せない」と問題視する議員もいた。
 野党の共産党は委員会への参考人として当時の公営企業管理者の出席も求めたが、他の与党4会派は各議員団内部ではさまざまな論議を交わしながら、本会議など市民の目前で本格的な膨張理由の解明に取り組もうとする姿勢に乏しかった。
 「完成すれば地域にも貢献する」。現在の工事区間に当たる山科区選出の市議は、市幹部の責任の追及より早期完成の必要性を会派内で強調した。
 臨時市会は、本格的な責任追及はあいまいなまま、市長への警告を決議して閉会した。「与党は、あと一歩のところで、問題にフタをしてしまった」と共産の阿美弘永市議(西京区選出)は批判する。
 与党4会派は国への建設財源補助確保の要望には同一歩調で臨んだ。府への援助要請もした。
・「夢物語」に憤り
 昨年11月下旬、上京区のホテルで府議と京都市議の与党懇談会が開かれ、府と京都市の幹部も出席した。「第三セクターへ府も資本金の五%を出資してほしい」「さらに建設費が膨張した場合、追加出資が要る」などの話が交わされた。
 新年度予算で京都府は地下鉄東西線建設に27億5000万円という異例の補助を盛り込んだ。国も一般会計から地下鉄建設財源に無利子の貸付をする転貸債を認めた。
 建設財源は確保できる見通しがついてきた。しかし、京都市は建設責の膨張で将来の借金となる多額の市債を出さなければならなくなった。議員は、こうした市民の足の確保にかかった費用の明細を議会の中で市民の前にしっかりと示すことができなかった。
 長坂さんの地下鉄通勤は「夢物語」になりつつある。「住むところだけ造って、通勤は自分で考えろ、の姿勢には憤りすら感じる」。長坂さんは、積み残しの乗客も出るほど混雑したバスに乗るたびに憤りを感じている。(京都新聞)
■試験運転再開前に
 阪急電鉄は13日の三宮−王子公園間の運転再開を前に、12日午後1時すぎから同区間で2往復の試験運転を行った。試験電車は徐行しながら三宮駅へ到着、同乗していた保線関係者らはほっとした。(京都新聞)
■阪急も三宮に戻る 王子公園からきょう再開 大手3社そろう
 阪急電鉄は13日始発から王子公園−三宮間で運転を再開、55日ぶりに三宮に乗り入れる。阪神間に路線を持つ阪急、阪神、JR西日本の3社すべてが神戸・三宮に戻ってくる。
 阪急三宮駅は13日は西改札口のみでオープンし、東改札口の再開は4月下旬の見通し。ダイヤは、三宮発御影行きが午前5時2分−午前零時18分、御影発三宮行きが午前5時10分−午前零時20分。三宮−御影間は折り返し運転で所要約10分。ラッシュ時は6、7分、昼間時間は10分間隔。
 定期券や回数券の振り替え輸送も大きく変更され、阪急と阪神は阪急神戸線三宮−御影間と阪神本練御影−梅田間で相互に振り替える新リレー方式を実施。
 一方、阪急の利用者はJR三ノ宮−灘間が乗れず、神戸高速鉄道の利用者もJR三ノ宮−神戸間が利用できない。それぞれの区間でJRの運賃が必要。代替バスは阪神が西灘−御影間に短縮され各停だけとなる。(京都新聞)
■王子公園−三宮きょう開通 阪急、代替バスも変更
 阪神大震災で不通になっている阪急神戸線の王子公園−三宮間が、13日始発から運転を再開する。これで神戸の中心である三宮駅に、阪急、JR西日本、阪神の大手3社の電車が震災後初めて、そろって乗り入れる。同区間の運転再開に伴い、阪急電鉄は西宮北口−三宮間で運行している鉄道代替バスを、西宮北口−御影間に変更する。
 また、これまで阪急の定期券や回数券で、JR東海道線の灘−三ノ宮間が乗車できたが、13日からは別途運賃が必要になる。JR定期券客が大阪から三ノ宮へ向かう場合は、東海道線の不通区間である住吉−灘間に代わって阪急の御影−王子公園を無償で利用できるが、そのまま三宮まで乗ると王子公園−三宮間は運賃が必要となる。
◆神戸市バスの34・35系統が運行再開
 神戸市交通局は、市バスの森北町−本山駅前−魚崎中学校前−東灘区役所前−阪神御影南口−阪神住吉などを巡る循環線の運行を13日始発から再開する。これにより、全73路線のうち66路線が復旧する。
 運休している路線は、1系統=石屋川−阪急春日野道−メリケンパーク▽9系統=吉田町一丁目−上沢駅−吉田町一丁目▽18系統=メリケンパークー布引−摩耶ケーブル下▽30系統=魚崎車庫−本山駅−東灘高校▽32系統=六甲道駅−御影山手−六甲道駅▽41系統=磯上公園−夢野町二丁目−吉田町一丁目▽123系統=神戸駅−ひよどり台−しあわせの村。
 運行状況などの問い合わせは市バス相談所(078・321・0484)へ。(朝日新聞)
■三宮に鉄道3線「集結」阪急・王子公園間が開通
 阪神大震災で不通になっていた阪急電鉄神戸線の三宮−王子公園間(3.1`)が13日始発から、55日ぶりに運行を再開した。
 これで同線の残りの不通区間は西宮北口−御影間(10`)となった。JR東海道線、阪神本線と合わせ阪神間の鉄道三練が神戸市中心部の三宮にすべて乗り入れ、JR、阪神との乗り継ぎで大阪・梅田と三宮間が最短1時間で結ばれることになった。
 この日の三宮駅の始発は午前5時2分の御影行き普通電車で、上下線合わせて1日計250本が6−10分間隔で運転する。
 倒壊した7階建ての駅ビルの撤去が済んだ三宮駅は高架3階部分にあるホームが外部に露出し、震災前の面影はなくなった。改札が駅西口1ヵ所だけになったため、ラッシュ時は通勤、通学客で混雑した。(京都新聞 夕刊)
■泉北高速鉄道 来月1日から 14.5%値上げへ
 運輸審議会は13日午前、大阪府都市開発(本社・大阪市)から申請されていた大阪府堺市と泉北ニュータウンを結ぶ泉北高速鉄道(中百舌鳥−光明池)の平均14.5%の運賃値上げを認め、運輸大臣に答申した。これを受けて運輸省は14日、申請を認可する。泉北高速では4月1日から実施する予定。
 答申によると、初乗り運賃(2`まで)は現在の120円が140円になる。主な区間では、中百舌鳥−泉ケ丘間が180円から200円に、中百舌鳥−光明池間が220円から250円に値上げされる。
 泉北高速は4月1日から、建設中の光明池−和泉中央(大阪府和泉市)間の営業運転を始める計画で、同区間の運賃も180円と答申された。中百舌鳥−和泉中央間は280円になる。(朝日新聞 夕刊)
14日■山陽新幹線 補強策の効果公表へ 鉄道施設検討委 手抜き工事の影響も
 亀井運輸相は13日、阪神大震災の被害からの復旧工事が進んでいる山陽新幹線の安全点検を4月初めに実施、連休前に運転再開にこぎつける見通しをあらためて示すとともに、安全点検実施までの間に新幹線の設備について鉄道施設耐震構造検討委員会(委員長・松本嘉司東京理科大教授)による調査結果の中間報告をまとめ、公表することを明らかにした。
 新幹線や在来線はこれまで、検討委の承認を経た工法に従って復旧が進められているが、中間報告ではこの工法による施設の強度試験の結果を基に補強策の効果も明らかにする。
 また検討委は崩壊した高架橋の柱やコンクリート片を使った強度試験を実施しており、指摘された海砂使用による強度劣化や木片の混入など、手抜き工事の影響についても検証結果を公表する予定。
 安全点検はJR西日本による復旧工事と試運転の完了を受けて運輸省と検討委が合同で行う最終チェックで、修復した高架橋を中心に、列車を走らせた場合のたわみや振動などを計測、開業の可否を判断する。(京都新聞)
15日■値上げ疑問意見も 私鉄公聴会
 関西の私鉄大手5社が申請している運賃値上げに関する運輸審議会(会長・石山陽会長)の公聴会が14日から、大阪市中央区のホテルで始まった。阪神大震災で、阪急、阪神の両電鉄が鉄道施設に大きな被害を受け、幹線区間の不通が続いている時だけに、利用者側の公述人からは「満足に電車に乗れなくなっているのに、値上げはおかしい」とする厳しい意見が相次いだ。
 公聴会には、利用者側代表の一般公述人18人、申請者側からは5社の社長と役員、それに運輸省の担当職員ら計約100人が出席。傍聴席には、消費者団体のメンバーら市民200人がつめかけた。
 石山会長のあいさつに次いで、近鉄、南海、京阪、阪急、阪神の順に各社の社長が冒頭陳述を行い、申請の理由を説明した。この中で、阪急電鉄の菅井基裕社長と阪神電鉄の手塚昌利社長は、震災被害に伴う復旧に660−700億円に上る多大の費用が必要になったことを強調。厳しい経営から立ち直るためにも値上げが必要−と訴えた。
 一般公述人は、この日は京都消費者団体連絡協議会の原強事局長など18人が意見を述べた。最初に公述した弁護士の井上善雄さん(48)=橿原市=は「阪神地区では、被災者が私鉄を利用できない状況なのに、値上げとはとんでもない。5社そろっての申請は談合ではないか」と厳しく批判。原事務局長も「経営実態のちがう各社が一斉値上げするのが、そもそもおかしい。阪神、阪急については、震災による損失で、申請の根拠が失われている」と指摘した。
 公聴会の一般公述人は、値上げ申請に反対意見の人と、賛成意見の人が15人ずつ計30人選ばれており、15日も引き続き12人が意見を述べる。
 大手私鉄の運賃値上げは今回、関西5社を含めた全国14社が申請済みで、同審議会の公聴会は、このあと、中部地方、関東地方の順に続けられる。(京都新聞)
■中小はストも 私鉄総連中央闘争委
 春闘の行方に大きな影響力を持つ私鉄総連(池村良一委員長)の中央闘争委員会が14日、京都市内のホテルで開かれた。阪神大震災の影響もあって、大手組合については今春闘では、ストを構えない方針が確認されたが、中小組合は「満足な回答が得られなかった場合」に限り、今月30日にストを構え、交渉を進める方針が決まった。
 闘争委の後に会見した池村委員長は「大手は24日まで、中小は27日までに回答を求める。今年はスト設定はしない方針だっが、中小ではストを構えないと、全く回答しない経営者もいるのでやむを得ない」と語った。(京都新聞)
■窓 新しい京都駅 優雅な空間を 左京区・小原正太郎(無職・82)
 いま京都駅は改築工事が進んでおり、やがて新しい駅舎が誕生することと思うが、このさい私は二、三希望したいことがある。
 駅のなかで最も多くの人が集まるのはコンコースである。その安全性・利便性をはかることはもちろんだが他の地方から来た人が京都の第一印象を持つのもこの場所だと思う。ここには国際文化観光都市の名にふさわしい優雅な装飾などを多くするよう考えてほしい。
 最近、待合室がホームレス対策のためか、次第に縮小、かつ殺風景なものになりつつある。京都の場合、待合室は単に乗車の時間待ちだけでなく観光客の落ち合う場所、またしばしの憩いの場にもなっている。やはりここは快適で和やかな雰囲気の場所にしてほしい。
 駅のイメージは駅の前面の風景に大きく左右されると思う。高さ60b、東西480bもの建物になれば、駅の前面は日陰の時間が長く、ビル風の吹く寒々とした風景になりやすい。そのため、適当に植樹もし、美術的な工作物をつくるなどして、付設のホテルや百貨店にのみ込まれないような駅として、個性のあるイメージをつくってほしい。
 こんなことを言っても、もう手遅れだろうか。それとも、そんなことはちゃんと設計図に盛り込み済みだよ、と言われるだろうか。(京都新聞)
■関西の大手私鉄5社 運賃値上げで公聴会
 近鉄、南海、京阪、阪急、阪神の関西大手私鉄5社が運輸省に申請中の運賃値上げに関する運輸審議会の公聴会が14日、大阪市中央区馬場町のKKRホテル大阪で開かれた。各社の社長から「輸送需要が急激に減少している一方で、輸送力の増強や運転保安の向上、サービス改善のための投資が増え、鉄道部門の収支は悪化している」などとする値上げ理由の説明があった後、主婦や教師、弁護士らが意見を述べた。
 反対意見としては「阪神大震災の被災者は、鉄道を利用できない状況の上、値上げの申請書を見たり考えたりする余裕がない」「経営内容の異なる企業が、なぜ一斉値上げとなるのか」「高率な私鉄の値上げによる物価の上昇は必至で、不況を長期化させる」といった内容が多かった。
 一方、サービス向上や混雑緩和などを条件に、「阪神大震災で鉄道の整備と安全確保には大きなコストが必要なことがよく分かった」「サービスを受ける利用者も相応の対価を運賃として支払うのはやむを得ない」との賛成意見も出された。
 公聴会は15日も午前10時からKKRホテル大阪で開かれる。(朝日新聞)
■全体復旧、まだ遠く 交通 秋まで寸断続く
 阪神大震災から、17日で2ヵ月になる。神戸市中心部の三宮駅には、JR西日本、阪神、阪急の大手3社の電車がそろって乗り入れを始めた。しかし、大阪と神戸を結ぶ3社の鉄道はいまだに途中で寸断されたまま。道路も全体の復旧にはまだまだ時間がかかりそうだ。
【鉄道】
 阪神間の鉄道は震災後、徐々に復旧が進み、14日現在の不通区間はJR東海道線と私鉄6社あわせて42.8`と新幹線の新大阪−姫路間。すべてが復旧するのは今秋になりそうだ。
 JRは東海道線六甲道駅付近の高架の被害が大きく、灘−住吉間の4.5`が依然不通。JR西日本広報室は「復旧後のダイヤは、徐行区間などの問題もあるので、はっきりしたことは言えない」。
 11日に亀井静香運輸相が新幹線・在来線とも連休前に復旧する見通しを明らかにしたが、JR西日本は「1日も早くと作業を進めているが、復旧のめどはあくまでも連休明け」と慎重な姿勢。現在不通になっている新幹線の姫路−新大阪間の部分開通についても「検査の結果もあるので、現時点では何とも言えない」。
 阪急は、西台北口−夙川間にある高架部分1.6`を全面撤去し、新設している。8月末に全線開通の見通し。同社広報室は「全線復旧時には、震災前よりもいいダイヤを組みたい。開通当日からきっちりと運行する」と話している。
 阪神は現在は高架区間(2`)の金高架柱657本中、433本を撤去して新設するなどの作業に追われている。高架上にあって被害が大きかった石屋川車庫は高架柱243本すべてを新設、全線開通(9月末ごろ)の半年後に復旧の予定。阪神電鉄広報課は「開通すれば駅のホームを車庫がわりにする。車庫、車両ともに被害があるため、開通後しばらくはラッシュアワーは震災前の9割程度の運行になりそうだ」と話す。(朝日新聞)
16日■高齢車両 今月末で引退 南海、記念乗車券発売
 南海電鉄貴志川線(和歌山−貴志間、14.3`)を走る「1201型電車」が、3月限りで引退することになり、31日午後、和歌山駅の出発ホームでお別れ式が行われる。
 南海線を走り始めて今年で62年。関西の大手私鉄では最高齢の現役車両だったが、4月からのダイヤ改正を機に引退、新鋭のワンマンカーに跡を譲る。
「1201型」は、昭和8年から18年にかけて製造され、デビュー当時は南海本線の花形電車だった。
 南海電鉄は、引退を記念して15日から「12001型さようなら記念乗車券」7000セットを売り出した。写真はがき3枚と、貴志川線の切符3枚が1セットになって800円。大阪・なんば駅をはじめ、高野線、貴志川線などの各駅で取り扱っている。31日まで。郵送による申し込み方法もある。問い合わせは、同社運輸部営業課 06(644)7165へ。(京都新聞)
■大地震で脱線それ避難 嵯峨駅構内 トロッコ列車で訓練
 京都−亀岡間を走る観光トロッコ列車で、初の地震を想定した避難・救助訓練が15日、京都市右京区嵯峨のトロッコ嵯峨駅構内で行われた。
 踏切通過中の列車が、直下型大地震のため脱線、大型トレーラーに衝突して乗客ら15人が負傷したという想定。消防車など12台と消防ヘリコプターが出動、右京消防署員、嵯峨野観光鉄道職員、嵯峨幼稚園の園児ら計約120人が訓練に参加した。
 午後1時55分の訓練開始と同時に、車掌が「地震発生−。みなさん落ち着いて避難してください」と車内を駆け回り、乗客の幼稚園児らを車外へ誘導。到着した消防署員らは6b四方のエアテントをふくらませて応急救護所を設け、乗客やトレラー運転手など負傷者を次々と運び込んだ。
 この日、トロッコ列車は運休日だったが、隣接するJR嵯峨嵐山駅を利用する観光客らが大勢取り巻き、緊張感あふれる訓練を見守っていた。(京都新聞)
■来月20日に先行電化開業 JR綾部−福知山間
 電化工事が進むJR山陰線園部−福知山間(54.3`)のうち、綾部−福知山間(21.3`)に4月20日から電車が走る。春のダイヤ改正に合わせての先行電化開業で、普通電車が1日6往復する。
 山陰線の電化は、京都−園部、福知山−城崎間ではすでに電化されており、園部−福知山間が来春完成を目指し工事中。このうち複線化している福知山−綾部間の工事が早く進んだため、電化のPRも兼ねて、一足はやく電車を走らせることになった。
 JR福知山支社が15日発表した電車のダイヤは、福知山発が午前7、10、11時と午後2、5、9時台に各1本。綾部発が午前8、10、11時と午後2、6、9時台の各1本で、計6往復。このうち、1往復は従来のディーゼル列車ダイヤの置き換え、5往復は増発。
 また、午後の2往復は綾部ー城崎(豊岡)間を直通運転とし、福知山で乗り換えていた通勤、通学者などの便を図ると、している。所要時間は、電車の場合、福畑山−綾部間で約3分短縮される。
 電車運行については、工事区間が全面電化される来春までの暫定ダイヤとなる。(京都新聞)
■キセル乗車3年、840万円 福島の会社員に請求
 福島県原町市の会社員(32)が勤務先の仙台市まで約3年間にわたって”キセル乗車”していたことが分かり、JR東日本原ノ町駅は15日までに鉄道運輸規定に基づき、正規運賃の3倍の約840万円を請求した。
 JR東日本、福島県警鉄道警察隊の調べによると、この会社員はJR原ノ町駅−仙台駅間を通勤していたが、1992年1月中旬から95年1月末までの間、定期券を同区間を通しで購入せずに、JR仙台駅と次の駅の長町駅、および原ノ町駅と3つ先の相馬駅の2枚の定期券を使って改札口を通過していた。(京都新聞)
■きょう営業再開 地下鉄三宮、新長田駅
 阪神大震災で地下ホームの柱が損傷するなどして使用できなくなっていた神戸市営地下鉄の三宮駅と新長田駅が16日、58日ぶりに仮復旧し、始発から営業を再開する。
 両駅は一時不通だった板宿−新神戸間(8.8`)が2月16日に開通した後も通過駅になっていた。
 これで、神戸以西から大阪方面へ向かう通勤客などは、三宮駅でのJR、阪神、阪急各線への乗り継ぎや、新長田駅からのJR山陽線への乗り継ぎが楽になる。
 またホームの損傷などが激しい同地下鉄上沢駅は復旧工事が続いており、4月中旬に営業再開の予定。(京都新聞)
■神戸市営地下鉄 三宮・新長田駅が再開 きょう上沢駅も来月中旬
 神戸市営地下鉄の三宮、新長田両駅が16日始発から営業を再開する。両駅停車のため、数分程度のダイヤ変更があるほかは、始発と終発の時刻、1日の列車本数は現行と同じ。残された上沢駅も4月中句には営業を再開する予定。
 三宮駅では10ヵ所の出入り口のうち5ヵ所が、新長田駅では4ヵ所のうち2ヵ所が使用不能。エレベーターも故障のため使えない。使用できない出入り口も、改修がすみしだい開放する。
 神戸市交通局では「すべての工事は今秋に完成する予定。それまでは改修工事をしながらの営業になるが、なるべく早く震災前のダイヤにもどしたい」としている。
 両駅の使用できる出入り口は次のとおり。
 【三宮駅】JR三宮駅北側ロータリー北(東出入口2号)▽JR三宮駅北側(同3号)▽サンチカ方面地下連絡通路(同4号)▽ムーンライトビル(西出入口1号)▽東急ハンズ(同3号)
 【新長田駅】東出入口▽ジョイブラザ方面地下連絡通路(西出入口2号)(朝日新聞)
■地下鉄三宮駅が再開 新長田駅も2ヵ月ぶり仮復旧
 阪神大震災で閉鎖していた神戸市営地下鉄3駅のうち、三宮駅と新長田駅が16日始発から営業を再開、直結したベッドタウンなどからの乗降客で2ヵ月ぶりににぎわった。残る上沢駅は4月中旬の再開を目指す。
 同地下鉄は2月16日から3駅を素通りする形で、西神中央−新神戸間の全線が開通。三宮駅では鉄筋コンクリートの支柱に亀裂が入り、補強用の仮支柱を立てる復旧作業を進め、その間、北1`の新神戸駅、西1`の県庁前駅で乗降し、乗り継ぎ駅へ歩いていた。
 三宮駅ではラッシュ時の午前8時ごろ、4、5分置きに”すし詰め”の車内から吐き出される通勤客らがホームにあふれた。(京都新聞 夕刊)
■山陽新幹線 鉄路あす”握手” 59日ぶりに尼崎市内で 月末から走行試験
 阪神大震災で新大阪−姫路間が不通となっている山陽新幹線について、JR西日本は運輸省に対し、運転再開に向けた試験走行などの計画案を提示した。それによると、17日に全線の線路を締結、架線も来週中に復元する。その後、送電試験や高架橋の「健全度検査」、実車による走行試験などを約2週間予定しており、4月早々にも運輸省に最終試験である「開業前検査」を要請する。運輸省では同検査を約1週間と想定していることから、安全が確認されれは運転再開は4月中旬となる。
 17日は、新大阪側から延ばしてきた線路と姫路側からの線路を尼崎市内で溶接する。これで東海道・山陽新幹線全線が59日ぶりにつながる。
 走行試験は今月末から約1週間を計画しており、初日は「ドクターイエロー」と呼ぶ路線や架線の点検車を2−3往復させる。2日目以降は速度向上試験に入り、こだま型の「0系」電車やひかり型の「100系」電車を時速30−220`で走らせ、修復した高架橋に異常がないかを調べる。のぞみ型の「300系」電車による時速270`試験も行う。(朝日新聞 夕刊)
■神戸市営地下鉄 三宮・新長田も駅再開
 阪神大震災による被害で閉鎖が続いていた神戸市営地下鉄の3駅のうち、三宮駅と新長田駅の営業が16日始発から再開された。三宮には阪急、阪神、JRの各線がすでに乗り入れを再開しており、この日も朝から大勢の乗降客や乗り換え客で混雑した。本格復旧は今秋になる見通しで、残る上沢駅の営業再開は4月中旬になる見込みという。
 今回の震災で、市営地下鉄は駅や線路部分を支える鉄節コンクリート製の柱計233本の鉄筋部分が折れたり、コンクリートが深くひび割れたりする被害を受けた。2月16日に全線で運転を再開したが、駅舎の被害が激しかった3駅は通過していた。(朝日新聞 夕刊)
17日■山陽新幹線・東海道新幹線 全線開通早まる 来月上旬にも 井手社長が見通し 阪神大震災から2ヵ月 復興へ明るさ
 JR西日本は16日、阪神大震災で不通が続いている山陽新幹線(新大阪ー姫路間)と、東海道線(住吉−灘間)の復旧工事が共に今月27日ごろまでに完了することを明らかにした。両線とも4月早々に運転を再開できる可能性が出てきた。
 山陽新幹線は、8ヵ所の落橋部分をすべて元に戻した。高架の橋脚耐震強化工事も、すでに90%が終了。17日には、尼崎市内で最終のレール接続が行われる。東海道線も、懸案だった六甲道駅近くの落橋部分が回復して、難工事は残っていない。
 JR西日本では、復旧工事の予想外の進ちょくで、16日になって当初の見通しを修正。山陽新幹線は復旧完了を今月25日前後、東海道線は同26−27日ごろ−として、運輸省に報告した。
 自主検査には、山陽新幹線が約1週間、東海道線が数日必要とみられる。
 井手正敬社長は「社員のがんばりと、JR他社の協力などのおかげだ。復旧には、完全な耐震工事とスピードを同時に求められ苦しんだが、運輸省の耐震委員会から指摘された修復工事はすべてやった」と話している。両線の復旧見通しに関してJR西日本は、これまで「五月の連休前」としていた。(京都新聞)
■阪急神戸線など 全線再開は今秋
 阪神大震災で大きなダメージを受けた鉄道網は震災後2ヵ月で徐々に回復。新大阪−姫路間が不通の山陽新幹線は今月末で復旧工事が完了し、4月上旬にも開通する公算が大きい。
 一万、阪急神戸線など阪神間の私鉄2線や兵庫県内の中小私鉄4線の残り不通区間開通は一部を除き、最も遅い区間で今飲までかかる。
 阪急神戸線は不通区間のうち西宮北口−夙川間にある全長1.6`の高架の損傷が激しく、すべて撤去した後、新設する。
 このため、夙川−岡本間が4月上旬、岡本−御影間が7月上旬にそれぞれ部分開通するが、西宮北口−夙川間が完了して全通するのは8月末。
 阪神本線は梅田−元町間(32.1`)のうち、これまでに梅田−御影間、西灘−元町間が開通。残る不通区間は御影−西灘間(約3.1`)だけだが、陸橋などの損傷が激しい上、沿線の道路が狭いなど作業環境が悪く、全線開通は9月末ごろになりそうだ。(京都新聞)
■新幹線は来月中旬 東海道線は今月末 阪神高速神戸線は来年末 復旧見通し早まる
 JR西日本の井手正敬社長は16日、大阪市北区の同社本社で記者会見し、阪神大震災による不通区間の復旧工事が順調に進み、東海道線が今月26日にも、山陽新幹線もほぼ同時期に完工するとの見通しを明らかにした。運転再開日は、運輸省が最終試験をして決定するが、東海道線は3月末、山陽新幹線は4月中旬の全面開通が有力となった。
 JRの自主検査で安全が確認できれば、同社は運輸省に対して「開業前検査」を要請する。運輸省でも開業前検査をし、早けれは東海道線は3月30日ごろ、山陽新幹線は4月10日ごろにも不通区間で運転が再開される。
 阪神高速道路公団は16日、阪神大震災で大きな被害を受けた阪神高速神戸線の全面復旧は当初見込みより1年余り短縮され、来年末ごろになるとの見通しを発表した。復旧時期が早まった理由として、設計・施工の基準となる建設省の「被災道路橋の復旧仕様」が予想より早くまとまったことや、工程や施工方法を精査した結果としている。設計面では、同規模の地震に対しても落橋や倒壊しないことを基本方針とし、損傷していない橋脚も補強工事を実施する。
 復旧工事では、神戸市の摩耶−京橋(3.2`)を優先させ、来年3月ごろに湾岸線を通じて神戸−大阪間のアクセスを確保したいとしている。
 神戸市東灘区で635bにわたって倒壊した区間は、コンクリート製橋脚の直径が従来の2倍の6bとなり、橋げたは10数倍の1枚300bとなる。直径が大きくなることで、下を走る国道43号の車線は片側4車線から3車線に減り、昨年12月に建設省が決めた国道43号の減線を先取りすることになる。(朝日新聞)
■大動脈つながる 山陽新幹線復旧へ前進
 阪神大震災で新大阪−姫路間が不通になり、4月中旬にも全線開通する見通しが強まっている山陽新幹線の第一中食満(なかけま)高架橋(兵庫県尼崎市)上で、震災から2ヵ月の17日午後、最後まで未接続で残っていた営業運転用のロングレールがつながった。
 レールの敷設が完了することで、「東西を結ぶ大動脈」東海道・山陽新幹線は再生に向け大きく前進。復旧工事はいよいよ最終段階に入る。
 震災後、山陽新幹線の不通区間では、ロングレールをはずし、復旧作業用の短いレールに敷き替えて資材などを運搬していた。
 今後は自主検査を繰り返し、4月初めの運輸省の開業前検査を待つばかりとなる。(京都新聞 夕刊)
■被災者が自殺 阪神電車に飛び込み
 16日午後11時45分ごろ、神戸市東灘区魚崎中町一丁目、阪神電鉄青木−魚崎間の横屋踏切(警報器、遮断機付き)で、同区内の仮設住宅に住んでいた男性(66)が梅田発阪神御影行き普通電車にはねられ、即死した。
 兵庫県警東灘署の調べでは、男性は昨年秋から脳梗塞(こうそく)で病院に通っており、ふだんから「死にたい」と漏らしいたという。同区内のアパートに妻(62)と住んでいたが、地震でアパートが全壊し、避難所で暮らした後、今月10日に仮設住宅に移ったばかりだった。男性は踏切内に立っていたといい、同署は病気などを苦に自殺をしたとみている。(朝日新聞 夕刊)
■”動脈”きょう接続
 山陽新幹線の新大阪−姫路間の修復工事がほぼ売了し、JR西日本は17日午後2時過ぎ、大阪側、姫路側それぞれから延ばしてきた線路を兵庫県尼崎市内でつなげる。震災による分断から60日目、大動脈である東海道・山陽新幹線はようやく1本に結ばれる。
 JR西日本の計画では、今月末には最高時速270`で電車を走らせるなどして約1週間、高架橋の強度を調べる。来月中旬にも「のぞみ」や「ひかり」が走り始める見通しだ。(朝日新聞 夕刊)
18日■震災で妥結読みにくい 私鉄総連関西地連 春闘取り組みまとめ
 私鉄総連関西地方連合会(奥村修一委員長、50組合)は17日、春闘のヤマ場へ向け、傘下各労組の取り組み状況をまとめた。
 集団交渉になるのは、大手が京阪、南海、近鉄の3労組、中小が紀州鉄道、熊野交通、野鉄観光など11労組。個別交渉は大手が阪急、阪神の2労組、中小は京福京都、叡山電鉄、山陽などの34労組。阪急、阪神の大手2労組を含めた計14労組は、スト権を確立しないまま個別交渉に入る。
 私鉄総連では、すでに「大手は24日、中小は27日までに回答を求める」との日程を決定。大手はストを構えないが、中小は満足する回答を得られない場合、30日に24時間ストを構えることになっている。
 関西地連の各労組も、この日程に従って進み、22日の私鉄総連中央闘争委員会で(東京)で、詰めの対応を協議する。
 今春闘は、阪神大震災で鉄道施設被害が甚大だった阪神、阪急両電鉄の組合が私鉄総連の中央集団交渉から外れ、個別交渉に臨む方針を決定。近鉄、京阪、南海の3労組も、中央交渉からは離脱するという異例の「東西分離交渉」となった。
 阪神、阪急両電鉄労組の妥結は4月中旬以降になりそうで、これに伴い両電鉄系列の数社を含むかなりの中小労組で、会社側の回答が30日以降にずれ込む、とみられている。
 関西地連の野村恭三書記長は「異例ずくめの春闘で、大手、中小ともどんな形の妥結になるのか読みにくい。中小では、スト突入の組合が出てくるかもしれない」と話している。(京都新聞)
■窓 北大路ターミナル 乗り継ぎ不便 改善を期待 北区・近藤重男(老人会役員・79)
 これまで当欄でもしばしばその不便さが指摘されている北大路ターミナル。市バスの乗客の大半が利用する乗り継ぎに全く配慮されていない。
 現在は下車して南に歩いて階段を地下に下り、延々数百bも交差の迷路を歩いて再び乗車場に出る。それが一本道ではなく、慣れた者でも、時には地下鉄の方に迷い込んでしまったりする。
 老人、子供、身障者、幼児・荷物を持った者、慣れない観光客などを全く無視した独りよがり、市民不在の設計である。
 そこで、次のように改善することを要望する。現在ある降車、乗車ホームを廃止し、待合所を中央に置いて、バスの左ドアに合わせて、コースを旧施設と同じ左回りとし、中央に地下鉄降り場を設けること。
 これらは土地も工費も多くを要せず、従来の不便が除かれ、多くの利用者に喜ばれるはず。利用者泣かせの現施設を一刻も早く改善されるよう期待する。(京都新聞)
■関空特快ウイング 来月20日から運転
 JR西日本は17日、大阪駅から関西国際空港への乗客の足を便利にするため大阪−関西空港間を50分台で結ぶ「関空特快ウイング」(6両)を4月20日から運転すると発表した。
 ウイングは大阪を経由して京橋−関西空港間を運行する関空快速の通過駅を増やし所要時間を10分以上短縮。朝夕のラッシュ時を除く時間帯で1日上下計13本を運転する。関空快速と比べ、大阪から11分早い55分、関西空港から12分早い52分となる。(京都新聞)
■電車、女性はね5万人に影響 島本町のJR東海道線
 17日午後8時10分ごろ、大阪府・島本町のJR東海道線の踏切で、芦屋発米原行き快速電車が、踏切内にいた若い女性をはねた。女性は頭を強く打ち即死した。高槻署は、女性が自殺を図ったのではないかとみて、身元の確認を急いでいる。
 この事故で、はねられた女性が、踏切付近に設置された障害物検知装置に接触し、同装置が故障。このため、東海道線は上下線計24本が運休したほか、計76本が最高1時間16分遅れ、約5万人に影響した。(京都新聞)
■被災の住民が飛び込み自殺 JR西ノ宮駅
 17日午後5時46分ごろ、兵庫県西宮市池田町のJR西ノ宮駅二番線ホームから男性が線路内に飛び込み、野洲発芦屋行き快速電車(12両編成)にはねられ即死した。
 西宮署の調べでは、芦屋市大原町、無職山田定信さん(59)で、ホーム中央付近に立っていたが、電車が通過する直前に線路内に飛び降りた。自殺とみて調べている。山田さんは一人暮らし。震災で住んでいたアパートが全壊し、1月17日から同市内の小学校で避難生活をしていた。(朝日新聞)
19日■「宇治友が丘団地」市など3者が バス路線計画
 宇治市内で進む民間の大規模宅地開発「宇治友が丘団地」について、宇治市、開発業者、バス会社の3者が資金を出し合って新たなバス路線を設けることにした。運輸局の免許を得て、4月10日から運行を始める。マイカー通勤による交通混雑の緩和のため市が調整を進めたもので、府内では初のケース。府内各自治体の大規模開発指導要綱では、開発業者に公共交通の整備を求めているところはなく、今後の町づくりに影響を与えそうだ。
 このほどまとまった案によると、住友商事がバスの購入費や停留所の設置費約5400万円を負担。市は運行費の補助に毎年約780万円を出す。赤字が予想されるが、運行は京阪宇治交通。新路線は宇治友が丘団地と近鉄大久保駅、宇治市役所などを結ぶ3系統で、定員38人のミニバス5台を使い、平日は43使、日曜、祝日は32便を運行する。料金は市内の他路線並み。(朝日新聞)
20日■地下鉄にサリン? 朝の都内3線16駅 死者6、重軽傷600人 無差別殺人の疑い
 20日午前8時20分ごろ、東京都内の営団地下鉄日比谷線や丸ノ内線など地下鉄3線の16駅の駅構内や車内で、刺激臭が立ち込め、出勤途中の利用客らが次々と倒れている、と110番があった。東京消防庁によると、おう吐やのどの痛みなど体の異常を訴え、出勤途中の日本たばこ産業社員和田栄二さん(29)も=東京都足立区千住旭町=や霞ヶ関駅助役高橋一正さん(52)ら計6人が死亡。約10人が重体になり、負傷者も600人を超えた。警視庁は、築地駅構内の残留物などの分析から刺激臭の原因が有毒ガス「サリン」の可能性が高く、同時多発の無差別殺人事件とみて捜査本部を設置、殺人などの容疑で本格捜査を始めた。
 病院の医師によると、患者はひとみが収縮、たんが出るなど、昨年6月に長野県松本市で起きたサリン事件の被害者の症状と酷似しており、警視庁は組織的に車内などに有毒ガスがまかれたとみて、発生源を調べている。
 警察庁は刑事、警備局合同で総合対策室を設け、全国の警察本部に対し公共交通機関などの警戒を強化するよう指示した。東京消防庁も同時多発救急対策本部を設置した。
 運輸省は緊急対策本部(本部長・戸谷博道鉄道局長)を設置、亀井運輸相は、鉄道、航空、海運など全国の交通機関に対し、厳重に警戒するよう指示した。
 この影響で日比谷線は全線がストップするなど、週明けの朝のラッシュアワーの地下鉄各駅は大混乱となった。
 捜査本部のこれまでの調べでは、午前8時2分に恵比寿駅を出た中目黒駅発の日比谷線電車で、新聞紙にくるんだ弁当箱のような物から液体が染み出したという。この弁当箱のような物は恵比寿駅で降りた乗客が電車内に置いて立ち去ったとの目撃があり、捜査本部で男の行方を追っている。
 男は先頭車両の連結部分近くに乗っており、30−40歳、身長170−175a、サングラスをかけ紺のコート姿だったという。
 このほか、別の日比谷線と千代田線の車内に新聞紙に包まれた弁当籍のような物から透明な液体が出ていたのが目撃され、この直後から乗客らが目が痛くなったり気分が悪くなったという。
 サリン 構造中にフッ素を持つ有機リン化合物の一種で、農薬研究開発の過程から1938年、ナチスドイツが猛毒の神経ガスとして開発した。リン酸のメチル化合物とフッ素化合物から製造する。常温では無色の液体だが、無臭で揮発しやすい。動物実験では、大気1立方b中100_cの濃度のガスを1分間吸入するだけで、半数が死亡するほどの強い神経毒性を持つ。毒性はシアン化水素(青酸ガス)の約500倍とされる。神経伝達に関与する酵素のコリンエステラーゼの機能を阻害し、呼吸だけでなく、皮膚からも吸収され、けいれん、窒息、瞳孔(どうこう)の縮小などの症状を起こす。94年6月、長野県松本市で有毒ガスが発生し、付近のマンション住民ら7人が死亡した事件では、サリンが原因と推定された。
・110と119 番通報殺到 地下鉄毒ガス ドキュメント 20日
8時20分ごろ地下鉄日比谷線神谷町駅などで刺激臭が立ち込め、利用客が倒れていると110番が相次ぐ
8・33地下鉄丸ノ内線中野坂上駅下リホームで乗客6人が倒れていると119番。中野消防署の救急隊が出動、乗客、職員ら数人を病院に収容
8・44警視庁が総合警備本部を設置
8・45すぎ警視庁に入った連結によると、午前8時2分ごろ、地下鉄日比谷線恵比寿駅で、サングラスをかけた男性が、新聞紙にくるんだ弁当箱のような容器を車内に置いて立ち去ったのを乗客が目撃
9・00警察庁が、警備局と刑事局合同の事件対策室を設置
9・00東京共同銀行が開業。本店は地下鉄神谷町駅に近く、救急車のサイレンが鳴り響く
9・00ごろ地下鉄霞ケ関で、現場検証を始めた警視庁鑑識課員が次々と体の不調を訴え。警視庁は防毒マスクを用意
9・12英国のロイター通信が東京発で、東京の地下鉄の8駅で正体不明の異臭が発生、通勤客200人以上が被害と至急報
9・30すぎ東京消防庁は、地下鉄丸ノ内線中野坂上駅で、有毒性の強い「アセトニトリル」(別名メチルアメイド)を検出した
9・45警視庁の要請で陸上自衛隊の医師6人らを東京・飯田橋の警察病院に派遣
9・45運輸省が緊急対策本部設置。亀井運輸相が全国の交通機関に厳戒態勢をとるように指示
9・52米国のAP通信も、地下鉄有毒ガス事件を至急報で報道
10・00警視庁によると、午前10時現在、異常を訴えたのは314人に上り、病院に収容された
10・30警視庁によると、午前10時半現在、死亡者は男性2人、女性1人の計3人
10・30村山首相が五十嵐官房長官に人命救助に全力を挙げるよう指示
10・30すぎ警察庁は、全国の警察本部に対し、公共交通機関など不特定多数の者が集まる施設への警戒強化を指示
11・00警視庁によると、午前11時現在の死者は5人。東京消防庁のまとめで負傷者は約500人に
11・00すぎ警視庁捜査一課長が記者会見、毒物はサリンの可能性が高いと発表、殺人容疑で捜査閲姶
12・00ごろ警視庁によると、病院に運ばれたのは599人に上り、死者は6人
12・00ごろ患者が収容されている駿河台日大病院の矢崎誠治救命救急部長は「サリンなど有機リン系化合物による中毒の可能性が高い」
・首都にサリンの悪夢 朝の地下鉄パニック 顔ゆがめる乗客ら 無差別殺人恐怖走る
 「電車を止めろ」「降ろしてくれ」。込み合う車内に刺激臭が流れ、悲鳴を残し次々に乗客が倒れた。週明けの20日朝、ラッシュアワーの東京を襲った地下鉄有毒ガス事件。時間を追って増える死者、重軽症者。官庁街を、オフィス街を救急車が慌ただしく行き交い、地下鉄駅前に設けられた大型テントの治療所は、ハンカチで目や口を覆った被害乗客らであふれた。だれが、何の目的で。松本サリン事件の悪夢がよみがえる。首都の地下を網の日のように結ぶ巨大交通網は、無差別役人の恐怖に震え上がった。
 【千代田線霞ケ関駅】「ただ今、駅ホームに薬物がまかれたのでホームを通過しました」。千代田線霞ヶ関駅にちょうど差し掛かった我孫子発代々木上原行き電車の車内アナウンスが突然叫んだ。
 車内は満員で一瞬何が起こったか不審な表情が浮かぶ。次の国会議事堂駅の待合室に既に被害者約10人が運ばれており、血相を変えた麹町署員、消防庁職員が次々駆け付けた。
 担架で地上に運び出された40歳代のサラリーマンは額面は真っ白。口を押さえおう吐を繰り返していた。
 霞ケ関駅は日比谷、千代田、丸ノ内3線が乗り入れている地下鉄の要所。午前8時すぎ、千代田線の代々木上原行き電車内で異臭がするとの通報で、駅員が駅ホームに駆け付けた。においの出ていた新聞紙を片付けようとしたところ、目が見えなくなり駅員3人が次々に倒れた。
 日比谷線霞ヶ関駅では検証の警視庁鑑識課員6人も相次いで倒れ込んだ。
 【日比谷線神谷町駅】東京消防庁などによると、乗客ら30人以上が頭痛やおう吐感を訴えた。中目黒駅始発の電車の先頭車両後部に乗っていた病院職員の女性(50)によると、当時、車内の混雑の程度は新聞を広げて読めるほど。中目黒駅から3つ目の六本木駅辺りで、車内の床に新聞紙の包みが置かれているのに気付いた。
 包みから液体が流れ出して間もなく、刺激臭がし乗客が次々に頭痛などを訴えたという。
 この直前まで、包みの周りには紺色の作業者のような服を着た50歳代の白髪交じりの男性がいたという。刺激臭はシンナーのようなにおいだった。
 【日比番線築地駅】日比谷線築地駅では、パトカーや救急車約50台が到着。
 駅前の新大橋通りは全面通行止め。東京消防庁の大型テント2基が設けられ、駅で倒れた乗客らが次々運び込まれた。
 駅近くの喫茶店の従業員は「午前8時すぎに、水をくれと人が駆け込んで来た。中には口や鼻から血を流している人もいた」と青ざめた表情。
 【丸ノ内線中野坂上駅】丸ノ内線は事件直後から各電車とも霞ケ関と中野坂上の両駅を通過。中野坂上駅に電車が近づくと「怪しげなビニール袋から強い異臭を感じています。窓を閉めてください」との車内放送が何度も流れた。駅入り口わきに敷かれた青いビニールシートの上に具合の悪くなった消防隊員数人が座り込んで手当てを受けていた。
 一人の隊員は「気持ちが悪い。くらくらする。話はちょっと待って」とせき込んでいた。
・医師総出で患者手当て
 【病院】東京都中央区の聖路加国際病院では「何人が運び込まれたかは分からない。医師が総出で対応している」と説明。軽傷の患者は目を押さえるなどしてロビーにたたずんでいた。
 地下鉄日比谷線の上り(中目黒行き)の最前部に乗っていた20代の男性会社員は「竹ノ塚から乗った。小伝馬町駅に着いたところで周囲の人たちが気持ちが悪いと言い出した。刺激臭は特になかったが、下車して数分たったころから目がかすみ、気持ちが悪くなった。タクシーでここまで来た」と話していた。
・1入でも多く助かって…
 【東京清防庁】「こんな事件は初めて」。東京・大手町の庁舎3階の「作戦室」に設置された救助救急対策本部。各課から約50人が緊急招集された。
 本部から飛び出した職員は「これほど多くの地点で大勢の被害者が出たのは私も初めて。一人でも多く助かって…」と緊張した表情。
・鑑識課前に防毒マスク
 【警視庁】捜査一課員を全員招集、慌ただしい雰囲気に。8時44分に警備本部を設置、予定されていた署長会議は中止された。警察庁も警備、刑事両局内に合同対策室を設置した。
 警視庁6階の刑事部捜査一課。朝から集まった捜査員らが真剣な面持ちで会議。幹部は厳しい表情で指示を飛ばした。
 また別館総合庁舎2階の鑑識課の部屋の前には防毒マスクが積まれ、緊迫した様子をうかがわせた。
・陸自専門部隊が待機
 東京都内の営団地下鉄駅で20日起きた有毒ガス事件で、陸上自衛隊は警察病院に医師6人を派遣する一方、練馬駐屯地の第一師団化学防護小隊や101化学防護隊(大宮市)など、化学防護の専門部隊約140人を待機させ、要請があり次第出動する態勢を取った。
 陸自によると、駅構内のガス検知をするほか、原因とみられるサリンが塩素系の薬剤で除去できることから、除染車15台で準備している。
・安否確認の電話が殺到
 【営団地下鉄本社】ひっきりなしに鳴る電話、心配そうに様子を見守る女子職員。東京都台東区にある帝都高速度交通営団の本社10階の広報課では、家族の安否を確かめようとする市民や報道陣からの問い合わせが続き対応に追われた。
 奥村信広報課長は「職員も出ていない早朝に起きたので、状況の把握に手いっばい」と汗をふきながら話した。
・最近の主な異臭事件
93東京都江東区亀戸の新興宗教団体オウム真理教施設から白い煙とともに異臭が立ち込め、付近住民が被害訴える
9421長野県松本市の住宅街で刺激臭とともにサリンと推定される物質が立ち込め死者7人、重軽傷200人以上
奈良県の七市町で異臭が立ち込め、小、中学生ら 231人が湿疹(しっしん)などの被害
95オウム真理教が「山梨県上九一色村の教団施設などでサリンなどの毒ガスが噴出された」として同村の会社経営者を殺人未遂罪で告発。告発側は2月9日、教団関係者を誣告(ぶこく)罪などで告訴
 横浜市の京浜急行の日の出町駅で異臭が立ち込め11人が病院で手当てを受けた
・府警も点検指示 JRや私鉄 駅構内で特別警戒
 東京都内の営団地下鉄・日比谷線や丸ノ内線などで起きた有毒ガス事件で、警察庁が20日、全国の警察本部に対し交通機関など不特定多数の人の集まる施設への警戒を強化するよう指示したのを受けて、京都府警警備部は、午前9時20分に京都市営地下鉄沿線の各警察署やJR京都駅などを管轄する鉄道警察隊に、駅構内や車内の点検を指示した。
 署員や隊員が手分けして車内の網だなや駅構内のごみ箱などに不審な物がないかどうか調べたが「これまでのところ、異常は見られない」(警備部幹部)という。
 また、特殊犯の捜査にあたる府警刑事部は、捜査一課を中心に、東京都内で起きたサリン容疑事件の情報収集に努めている。
 京都市交通局は午前10時ごろから、府警の指示で、市営地下鉄烏丸線の13の駅構内と各列車内に、不審物がないかどうか点検を始めた。いまのところ異常はないとしている。
 また、京都市内のJRや阪急、京阪、近鉄など主要私鉄各社も同日朝から駅構内の特別警戒を開始。不審物がないかどうか点検した。
 一方、京都市消防局は、有毒ガス発生の原因などについて、情報を集めている。
・5日には京浜急行電車でも 東京都内の地下鉄で20日起きた毒ガス殺傷事件と同様の事件は3月5日深夜、横浜市内を走っていた京浜急行の電車内でも発生している。
 京浜急行の事件は5日午後11時50分ごろ。横浜−戸部駅間を走行中の品川発浦河行き普通電車(4両編成)の3両目に突然異臭が立ち込め、この車両の乗客約80人のうち11人が病院に運ばれた。いずれも軽症。
・何が目的か、憤り 京の市民ら声震わす
 東京都内の地下鉄で20日発生した有毒ガス事件で同日正午すぎ京都市内の主要ターミナルで事件を報じる京都新聞の号外が配布され、市民らは無差別役人の恐怖に顔をこわばらせた。
 下京区四条烏丸の地下鉄駅付近で、号外を手にした宇治市の前田種夫さん(67)は「いったい何が目的なのか。一般市民には迷惑な話だ。早く犯人を捕えてほしい」と憤りの表情。
 また、卒業式に向かう途中の城陽市の大学生前田奈穂さん(23)は「地下鉄は逃げ場がない。もし、京都でこんなことがあったら、もう怖くて乗れなくなる。最近、無差別殺人などが多く、世紀末のような感じだ」と声を震わせた。
 愛知県岡崎市から出張でやって来た自営業岩月昭佳さん(44)も「事件のあった営団地下鉄は、東京出張の際によく利用している。とても恐ろしい」と、不安を隠さない。(京都新聞 夕刊)
■地下鉄にサリン? 6人死亡 東京、16駅で同時に 乗客ら約600人被害 車内から異臭、爆発音も
 20日午前8時すぎ、東京都内の営団地下鉄日比谷、丸ノ内線の駅構内などで、ほぼ一斉に強い刺激臭が漂い、警視庁の午前11時現在のまとめによると、築地、茅場町など16の駅で、乗客や駅員ら599人が病院に運ばれた。東京消防庁の調べでは、11人が心肺停止状態になり、6人の死亡が確認された。警視庁は、午前11時、築地駅の残留物の分析や被害状況から、使われた薬物は長野県松本市で昨年6月にまかれたのと同じ猛毒のサリンの可能性が高いと発表した。同庁は、多くの場所で同時多発していることから、組織的な犯行とみて、刑事、公安両部合同の総合警備本部を設置、刑事部には殺人事件の特捜本部を置いて本格的な捜査を始めた。
 営団地下鉄は日比谷線を全線で運行停止にした。病院に運ばれた人以外にも、せき込んだりする人が続出。朝のラッシュアワーと重なり、各駅は通勤、通学客で大きく混乱した。
 乗客の話では、列車の座席の下に新聞紙に包まれた箱が置いてあったり、ガソリン容器のようなものが倒れたりしていた。車内に透明の液体がまかれたという証言もある。
 また、乗客によると、築地駅では車内で爆発音があり、車内に異臭がたちこめたという。
 死亡した6人は東京都足立区千住旭町、JT社員和田栄二さん(29)▽同区千住四丁目、営団地下鉄霞ケ開駅助役、高橋一正さん(52)▽会社員、岩田孝子さん(32)のほか、八丁堀駅で収容された男女各1人と神谷町駅の1人。
 東京消防庁は20日午前、警防本部を設置し、「サリン系の物質が使われた模様。各救助部隊は注意して行動せよ」という命令を出した。
 警察庁は午前9時、刑事、警備合同の「東京都内地下鉄内における毒ガス発生事案対策室」を設置した。
 同対策室は全国の警察本部に公共交通機関など不特定多数の集まる場所の警戒を強化することなどを緊急指示した。
・目に激しい症状
 営団地下鉄日比谷線の小伝馬町駅で患者の応急処置にあたった日本橋医師会の副会長、鈴木孝雄医師によると、患者はいずれも@目の球結膜の充血Aどう孔が1_ほどに縮むB激しいおう吐C血圧低下−などの症状が見られたという。
 現場の捜索にあたった捜査員の中にも同様の症状を訴えたものがいた。
 聖路加病院の日野原重明院長と桜井健司副院長が午前11時過ぎ、記者会見し、患者の症状について「副交感神経が刺激を受けている。松本であった中毒事件のサリンも可能性のひとつ」と述べた。
 同病院には約170人が収容され、大半の人が粘膜の炎症、瞳孔(どうこう)の縮小、吐き気の症状があった。同病院では松本のサリン事件の患者を扱った信州大学病院と連絡を取り合い、サリンによる影響と酷似しているとの見方を強めている。
・サリン 炭素、水素、フヅ素、酸素、リンからなる化学物質。強い神経毒性があり、同じ有機リン系のタブン、ソマンと同様に化学兵器になる。1930年代末にドイツで毒ガスとして開発された。常温では液体だが、気化しやすい。皮膚に付いたり呼吸で肺から体内に入ったりして、神経をまひさせる。呼吸中枢がまひすると短時間で死亡する。人体の致死量は、体重1`当たり0.01_cとされ、極めて微量。神経活動に不可欠なアセチルコリンを分解する酵素、アセチルコリンエステラーゼを働かなくさせるため、神経が正常に機能しなくなる。
・「酸素早く」叫ぶ医師 けいれんする男性患者 廊下でも数十人が手当て
 中央区明石町の聖路加国際病院には、午前10時過ぎ、救急車で次々と会社員やOLが運はれた。
 「酸素を早く」。救急医の大声が飛ぶ中、救急用ベッドに乗せられた男性は口に酸素マスクを当てられた。足がぴくぴくと動き、時々けいれん状態をおこした。
 救急棟の廊下では点滴を受ける会社員ら数十人が応急手当てを受けていた。
 地下鉄日比谷線に乗っていた会社員(59)は「小伝馬町駅でホームに降りたとき、急に目がちかちかした。からだがだるくなり、軽い吐き気があった。近くで女性が倒れるのが見えた。いままでに感じたことのない状態だった」と話した。
 聖路加国際病院の日野原重明院長によると、午前10時までに呼吸困難や嘔吐(おうと)などの症状を訴えた150人以上が同病院に運ばれ、うち1人が心臓まひなどで死んだ。
 同病院の救急センター入り口には救急車がひっきりなしに到着。担架や車いすに乗せられた患者らはネクタイとベルトを緩めたり、目に手を当てたりし、中にはぐったりとしたまま、動かない人もいた。
 東京・駿河台の日本大学病院には15人の被害者が収容された。うち5人は運び込まれたとき、意識がなかったが、うち2人はその後、意識が戻った。同病院の矢崎誠治・救命救急センター部長によると、ほとんどの患者が「青酸化合物中毒と有機リン系毒物による中毒の両方の症状を示している。陸孔(どうこう)が縮み、だ液が多く出ているのが共通している。呼吸をしていても、体内で酸素を吸収できない窒息状態だ」という。
 このため、解毒剤を使ったり、酸素吸入の措置をしが、14人が入院することになった。
 港区三田一丁目の東京都済生会中央病院では、午前11時半までに、70人以上の患者が診断を受け、9人が入院した。目の痛みや、「目が見えない」と訴える患者が多く、意識障害が出た人が入院したという。診察は内科が中心で、このほか眼科や耳鼻科でも行われている。
・「縮瞳」症状あり サリンの可能性
 小林国男・帝京大教授(救急医学)の話 病院に運ばれてきた軽柾の患者では、ひとみが縮む「縮瞳(しゅくどう)」という症状が見られ、有機リン系の薬物の中寿が考えられる。その中で気化しているとすると、サリンの可能性は考えられる。サリンなら、少量の気化でも障害が出る。当初、原因ではないかとされたアセトニトリルでは縮瞳は起きない。
・今月に入って類似事件3件
 運輸省のまとめによると、今月に入って鉄道の車内や駅で不審物から異臭がした事件が次の通り相次いでいる。
 3月5日午後11時50分ごろ、横浜市中区の京浜急行日ノ出町駅付近で、品川発浦賀行きの普通電車3両目で異臭が立ち込め、11人が病院に運ばれた▽同14日午後5時20分ごろ、京浜急行の押上発三崎口行き特急車内で異臭がするとの乗客の連絡で、神奈川新町駅で緊急停止、点検したが異常見つからず▽同15日朝、東京都千代田区の営団霞ケ開駅で、改札口近くに放置されたアタッシュケース3個から蒸気が噴き出す。
・首都ラッシュ 猛毒襲う 地下鉄・毒ガス事件 通勤客、卒倒・おう吐 息苦しく「窓を開けろ」
 通勤客であふれる駅ホームや電車内で、異臭が漂い、次々と乗客が倒れ始めた。「目がかすむ」「呼吸ができない」。苦しみながら、病院に運ばれていく。20日朝、都内16の地下鉄駅で起きた毒ガス事件。発生したガスはサリンの可能性もある。だれが、何のために。昨年6月の長野県松本市で起きたサリン事件を思い起こさせ、人々を恐怖に陥れた。
●神谷町駅
 日比番線神谷町駅では午前8時10分すぎ、中目黒発東武動物公園行き電車の先頭車両で異臭が発生し、通勤客ら約30人が目やのどに痛みを訴えて倒れた。吐き戻したり、意識がもうろうとしている人もいた。
 乗客の話では、左側最後部のドアの近くの床に置かれた、新聞紙にくるまれた50a四方ぐらいの四角い包みが原因らしい。
 六本木駅を過ぎたあたりで、この包みから無色透明の液体が床に染みだし、間もなく刺激臭が立ち込めた。せきこむ人や、目を押さえる人、床にしゃがみこむ人が相次ぎ、電車が次の神谷町駅につくと、1両目の乗客はみな、逃げるようにホームに飛び出した。何人かはホームからさらに外に出たが、そのまま座り込んで動けなくなった人も多かったという。
 また、会社員の女性(28)は「息苦しくなってせき込むうちに、目の前が白っぼくかすんできた。シンナーのようなにおいがした」と目を真っ赤にはらしながら話した。
●築地駅
 築地駅では、8時16分ごろ、北千住発中目黒行き電車が入ってくると、前方の車両から乗客が手を出して騒いでおり、扉が開くと同時に客が飛び出し、5人がホームに倒れ込んだ、という。
 築地駅員らが倒れた乗客を外まで次々と抱え出した。救出にあたった駅員らもしばらくすると目がかすみ、吐き気を催して道路に座り込んだ。
 電車に乗っていた埼玉県草加市の会社員岡田展幸さん(24)は「車内に透明の液体がまかれたようだ。きついにおいがした。目がかすんで頭が重い」と話した。同県越谷市の会社員増沢春雄さん(57)は3両目に乗っていたという。「息が苦しくなり、せきが出て震えてきた。すぐそはに乗っていた人が倒れた。非常ベルが鳴った」と話した。
 午前10時すぎには、医師、看護婦も駆けつけ、重症者らに点滴を始め、次々と救急車に乗せた。医師の1人は「中毒症状があるので解毒のためのぶどう糖などを打った。毒物は何なのかわからない」と話していた。
●八丁掘駅
 八丁堀駅前では新大橋通り沿いに青いシートが敷かれ、気分の悪くなった乗客ら15、6人が、救急車を待っていた。
 午前8時すぎに、茅場町駅から中目黒方面の電車に乗った千葉県市川市の会社員谷古忠司さん(23)は「前から3両目の真ん中のドアから乗ったら、床がべたべたしていた。何か、薬品のようなにおいがして、酸素がなくて呼吸ができなくなった。頭が痛くなって、たまらず八丁堀駅で降りた。自分の周りの人も気分が悪いなどと、言っていた」と話す。
 また、同駅で救助にあたった消防隊員によると、被害者は「アルコール臭がしたあと気持ちが悪くなった」「なんのにおいもなく、突然、具合が悪くなった」「目がかすむ」などといっている、という。
●人形町駅
 日比谷線の前から3両目の後部に乗っていた草加市の会社員武田倫明さん(35)によると、人形町駅にさしかかったとき、車内で突然数人の乗客が「ゴホゴホ」とせき込みはじめた。「窓を開けろ」という男性の声であちこちの窓が開けられた。前から3両目の車内の床に2b四方の液体をまいたような跡があった。何人かが足をすべらせており、液体は光っていたという。
 ベンゼンのようなにおいがし、武田さんも、目がちかちかしてせきこんだ。武田さんは聖路加病院で診察を受け「瞳孔(どうこう)が半分に縮まっている」と診察された。目を洗浄し、少しずつ落ちついてきたという。
●霞ヶ関駅
 千代田線霞ケ関駅。午前8時15分ごろ、電車の1両目の車内にガソリン容器のようなものが倒れていたので、同駅助役の高橋一正さんが容器をホームに運んだ。高橋さんは約200b離れた駅事務所に戻ったところで倒れ、その後、息を引き取った。さらにその約10分後、同じ電車の8両目の車内に新聞紙に包まれた薬品らしいビンも見つかった。
 駅上の通産省前には、午前9時20分すぎになっても、通勤途中らしい中年の男性がひとり、担架の上に横たえられていた。顔には人工呼吸器。けいれんしているのか、足が小刻みに震える。うぐいす色の制服を着た駅員が手を握り、「しっかりしろ」「頑張れ」と何度も声をかけた。
 同駅の松本忠夫・駅務掛主任は、騒ぎを聞きつけて異臭を放っている千代田線ホームにかけつけた。すでに同僚が、異臭の元とみられるぬれた新聞紙を、いくつものゴミ袋に入れて片づけていた。松本さんはモップでホームをふいたが、やがて気持ちが悪くなってきた。「石油のようなにおいがした。目が暗くなって、視界が狭くなった」
●茅場町駅
 茅場町駅周辺では約120人が被害を訴え、病院に運ばれた。このうち和田栄二さん(29)が死亡した。近くの証券会社に勤める59歳の男性は日比谷線の車内でシンナーのような揮発性の悪臭をかぎ、気分が悪くなった。会社に着いたとたん倒れこんでしまったという。同僚に両わきを抱えられて、同駅に連れて来られ、待機した消防隊員に痛みを訴えた。
・大阪でも警戒
 一方、東京で起きた、地下鉄の毒ガス発生事件で、大阪府警は類似の事件が発生する可能性もあるとみて防毒マスクを準備するなど警戒を強めている。
・亡くなった方々
 高橋一正・霞ケ開駅助役(50)=足立区千住四丁目午前8時15分、千代田線代々木上原行き電車が到着し、第1車両にガソリン容器のようなものが倒れていたので、高橋助役が容器をホームにおろした。直後にけいれんを起こして倒れた。日比谷病院で死亡確認(営団地下鉄調べ)。
 会社員岩田孝子さん(32)=聖路加病院で死亡確認(同)
 会社員和田栄二さん(29)=東京消防庁調べ(朝日新聞 夕刊)
21日■東京地下鉄毒ガス事件 主成分「サリン」と断定 死傷者3200人越す マスタードガスも検出 複数の不審者 松本事件と関連を捜査 警視庁
 東京都心部の地下鉄構内で有毒ガスが発生した事件で、異常を訴え病院に運ばれた被害者は20日午後11時半現在、3227人に達したことが警視庁築地署捜査本部の調べで分かった。東京消防庁によると、うち6人が死亡、15人が重体。同時多発テロでは前例のない大量殺傷事件となった。
 捜査本部は営団地下鉄日比谷線、千代田線、丸ノ内線の3路線5車両で有毒ガスの発生源とみられる容器計6個を発見。複数の残留物の分析から、主成分を猛毒の神経ガス「サリン」と断定。また、現場1ヵ所からはマスタードガスとみられる「びらん性ガス」を検出した。
 複数の現場で不審な男が目撃されている上、複数の狂毒ガスが検出されたことで、捜査本部は毒ガス精製に通じた組織による無差別殺人とみて、捜査一課を中心に刑事、公安、生活安全各部から捜査員300人を動員、全庁的な異例の態勢で本格捜査に着手。昨年6月、7人が死亡した長野県松本市のサリン事件との関連を調べている。
 一方、日比谷線小伝馬町に出動した自衛隊が現場の毒物を中和させる作業中、付近の有毒ガス検知で、マスタードガスとみられる「びらん性ガス」を検出した。警視庁科学捜査研究所で鑑定を急いでいる。
 小伝馬町駅などから病院に運ばれた3人の患者は、サリンによる症状のほか、発疹(ほっしん)や気管支炎などびらん性ガスの症状が出ているという。
 事件直前、日比谷線恵比寿駅で目撃されたサングラスにマスク姿の3、40歳の男など複数の現場で、容器を車内に放置して逃げた男が目撃されており、捜査本部は複数の犯人が午前8時ごろを期して一斉に毒物を仕掛けたとみて不審人物の割り出しを急いでいる。
 調べによると、毒物が入っていた容器は、霞ヶ関駅で2つ、中野坂上、本郷三丁目、築地、小伝馬町の各駅で1個ずつ回収された。
 中野坂上で見つかった白いビニール袋には縦横10aの箱二個が入っており、1つは空だったがもう1つには白い液体が入っていた。それ以外は、新聞紙にくるまれた縦横約20aの弁当箱大の容器で、液体が漏れていた。日比谷線車内ドア近くや丸ノ内線車内シート下の床などの残留物をガス成分分析器で解析したところ、複数の残留物からサリンを検出した。
 中野坂上駅の残留物からは「アセトニトリル」と呼ばれる劇物のシアン化合物を検出、捜査本部はサリンとシアン化合物の混合物の可能性があるとみている。
 捜査本部は、長野県松本市で起きたサリン事件との関連を調べる一方、15日早朝、丸ノ内線霞ヶ関駅構内に放置されたかばんから白煙が噴出した事件についても関連がおるかどうか調べている。
・再発防止を指示 首相が厳し<非難
 村山首相は20日午後、首相官邸で報道各社のインタビューに答え、地下鉄サリン殺傷事件について「何の関係もない一般市民に対する無差別の殺傷事件は、断じて許すことはできない。憎んでも余りある」と述べ、犯行を厳しく非難した。
 その上で首相は「徹底的な捜査で原因を究明し、再発防止に万全を期すよう指示した」と述べ、捜査や警戒の態勢強化を関係当局に指示したことを明らかにした。
・重度被害者や遺族に給付金 官房長官表明
 五十嵐官房長官は20日午後の記者会見で、地下鉄サリン殺傷事件で死亡した人の遺族や、重い障害を受けた被害者などに対しては「犯罪被害者給付金支給法が該当することになるだろう」と述べ、同法に基づいて遺族、障害の各給付金を支給する考えを明らかにした。
 同支給法は通り魔事件など犯罪行為により、不慮の死を遂げた人の遺族や重度障害を受けた人に給付金を出す制度。都道府県公安委員会に申請し裁定を受ける。
 遺族給付金は政令に基づき最高1079万円、障害給付金は障害の程度によって同1237万円。
 五十嵐長官は同事件について「無差別の加害で極めて憎むべき行為だ。政府として全力を挙げて犯人の割り出しに努力し、1日も早い事件の解明、犯人逮捕を目指したい」とあらためて強調。野中国家公安委員長(自治相)、亀井運輸相を通じ、全国の関係機関に対し公共交通機関などの警戒を厳重にするよう指示した。
・”無差別の恐怖”広がる 地下鉄サリン事件
ドキュメント 「死ぬ助けて」「断じて許せん」
【20日】1240都立広尾病院の中島健之院長は記者会見で「サリンによる急性中毒とみられる」
 1300大阪府警は警備連絡室を設置。大阪市内の主要ターミナルや地下街を検索
 1300ごろ地下鉄小伝馬町駅で降りた会社員本郷隆之さん(28)は「階段の途中で何人もの人が口から泡を出し”死ぬ、助けて”と叫びながら倒れていた」と証言
 1330営団地下鉄の永光洋一総裁が「無差別の凶悪犯罪の対象になったことは誠に遺憾」との談話
 1450陸上自衛隊が地下鉄霞ヶ関駅構内で日比谷線車両の毒物除去作業を開始
 1500ごろ警視庁は毒物をサリンと断定
 1530サリンが入った容器は地下鉄3線の5車両に計6個置かれていたことが警視庁の調べで判明
 1600聖路加国際病院の日野原重明院長が「患者の症状は改善傾向にあるが、まだ予断を許さない」
 1630東京地検の甲斐中辰夫次席検事が定例会見で「犯罪史上まれにみる大事件だ。地検刑事部を中心に、警視庁と協力して捜査に全力を挙げる」
 1730消防庁長官名で、都道府県知事、政令市長に対し、類似事件発生に警戒するよう通和
 1851村山首相がインタビューで「断じて許すことはできない。憎んでも余りある」
 1920警視庁によると、病院に運ばれた人は3200百人を超えた。うち死亡者は6人
・政府も異例の対応 衝撃「日本の中枢」での犯行
 「原因は、遺留物からサリンの可能性が非常に強いとみられる」20日午前11時、警視庁6階の捜査一課長室。厳しい表情で寺尾正大捜査一課長がこう切り出すと、詰め掛けていた各社の記者が一斉に立ち上がり、駆け足で部屋を出た。都心の官庁、オフィス街へ向かう通勤客を襲った地下鉄サリン殺傷事件。警視庁の調べでは6人が死亡、病院に運ばれた人は3200人を超える。化学兵器にも使われる猛毒の神経ガス、サリンを発生させたとみられる不審物は日比谷線、丸ノ内線など複数の路線から見つかった。検察幹部が「犯罪史上まれにみる大事件」と表現する組織的な同時多発の無差別テロ。国民を恐怖に陥れた犯行グループはどういう組織なのか。その狙いは−。
「松本」と関連?
 長野県松本市の住宅街で昨年6月27日発生した有毒ガス事件。死者7人、200人を超える負傷者を出した原因も今回同様、サリンと推定される物質だった。だが、サリン生成の方法なども特定できないまま、捜査は難航している。
 今回の被害者の多くは松本サリン事件の時と同じく、目やのどの痛み、手足のしびれを訴えた。聖路加国際病院(東京都中央区)の日野原重明院長は会見で「信州大病院から松本事件の患者の症状を聞き、サリン中毒の可能性が大きいと判断し、被害者を治療した」と説明した。
 「サリンを使って人を殺傷しようと考える人物や組織が複数あるとは思えない」と、ある捜査関係者は2つの事件の関連性を指摘する。自然界に存在しないサリンを製造するには薬品の入手、有機合成の知識、化合する施設の3つが不可欠とされるからだ。
 関連があるとすれば、犯罪の規模からみて松本サリン事件が”リハーサル”で、今回が”本番”ともいえる。しかし、2つの事件とも動機や経緯がはっきりせず、両事件を結ぶ線はまだ見えていない。
・狙いは霞が関か
 今回の事件は無差別テロとしては、昭和49年8月30日の死者8人、重軽傷者380人を出した三菱重工ビル爆破事件の規模を上回る。
 捜査当局がショックを受けたのはそれだけではない。被害のあった日比谷、丸ノ内、千代田の営団3線が交差する霞ヶ関駅のある霞が関地区は、日本の中枢とも言うべき主要官庁が密集しており、犯行が国家に対する挑戦だった可能性を否定できないからだ。
 五十嵐官房長官は20日の会見で村山首相の指示を受けて「政府として被害者救助、再発防止に全力を挙げて取り組む。何の関係のない善意の大衆の被害は憎むべきだ。徴底して捜査し、原因を究明したい」と語り、政府としての異例の対応を見せた。
 警察庁や運輸省は陸、海、空の交通機関の警戒を指示。防衛庁も全国15の化学専門部隊に待機命令を出し、このうち防衝庁長官直轄の101化学防護隊(埼玉県大宮市)など3部隊は事件後、市ヶ谷駈屯地や現場となった地下鉄の駅などに除染車とともに出動した。
・深まる「なぞ」
 「松本の事件ではここまでの対応はなかった。異例中の異例だ」と防衛庁幹部。政府関係者の言葉から国家の危機という意識が強く伝わってくる。
 日比谷線に乗っていて被害を受けた中年女性は「どうしてこんなひどいことをするのか」と痛む目を押さえながら、地下鉄車内という逃げ場のない密室での犯行に恐怖の表情で話した。
 過激派のような「犯行声明」もなく、事件のなぞは深まるばかりだ。警視庁は威信を懸け刑事、公安、生活安全部合同の態勢で、遺留品や複数の路線で目撃された不審人物の割り出しに全力を挙げている。
陸自の化学部隊 霞ヶ閑など6駅サリン除去作業
 東京都内の営団地下鉄駅などで神経ガスのサリンがまかれた無差別役人事件で、陸上自衛隊は20日、都内のほか埼玉、群馬県の化学部隊も動員し霞ヶ関(千代田区)などの5駅で、ガスの検知や中和剤を使い有毒物質を除去する除染作業を続けた。また、同日夕、沼田千葉県知事の要請に基づき、同県松戸市のJR車庫に停車している地下鉄車両を除染するために化学部隊の一部が向かった。
 同日午後零時50分の都知事からの要請を受け、陸自は直ちに、第一師団化学防護小隊(練馬区)の隊員11人、除染車など2台を霞ヶ関駅に派遣。また、第101化学防護隊(埼玉県大宮市)と第12師団化学防護小隊(群馬県北群馬郡榛東村)の隊員計48人が、日比谷駅(千代田区)や築地、小伝馬町駅(いずれも中央区)などで作業。第32普通科連隊(新宿区)の105人が部隊を支援した。
 同日夕までに霞ヶ関、築地駅の除染を終了。日比谷駅ではガス検知作業をしたが、異常はなかった。
 また同日午後5時、千葉県知事から災害派遣要請があり、霞ヶ関駅で除染を終えた第一師団化学防護小隊など隊員約40人が松戸市のJR車庫に派遣された。
・朝の通勤時間狙う? 浮かび上がる実態
 大都市東京の動脈である地下鉄日比谷、丸ノ内、千代田の主要三路線を狙った地下鉄サリン殺傷事件。3路線の少なくとも5車両に午前7時50分すぎから8時40分ごろにかけ、複数の犯行グループがサリンの入った容器を置いて逃げた。発生状況を分析すると、多数の市民が集中する朝の通勤時間帯を狙った無差別殺人の実態が浮かび上がってくる。電車の進行と時間の経過に合わせ、同時多発した事件の全容を追った−。
 最も大きな被害が出たのは北千住発中目黒行き日比谷線電車。7時56分、秋葉原駅で2−3人が異常を訴えて病院に運ばれ、小伝馬町駅では車内に刺激臭のする新聞紙の包みがあるのが見つかり、乗客がホームにけり出した。
 さらに、築地までの4駅でも乗客が次々倒れ、8時21分、築地駅で別の包み1つが発見された。
 また、中目黒発の日比谷線電車は、8時2分に恵比寿駅で、サングラスに白いマスク姿の30−40歳の男が、新聞紙に包んだ弁当箱のようなものを置いているのを乗客が目撃。5分後に到着した神谷町駅で乗客が次々に倒れた。
 丸ノ内線も同時刻ごろ、別の場所を走っていた電車2本にサリンが仕掛けられた。池袋発荻窪行きの電車は8時21分、新宿三丁目駅で気分が悪くなる乗客が現れ、5分後に中野坂上駅に到着した際、乗客や駅員、消防署員ら計50人以上が病院に運ばれる騒ぎに。車内からは白いビニール袋に入った異臭物が見つかった。
 池袋発新宿行きの同線電車でも座席の下から新聞紙に包んだ弁当箱ようのものが見つかり、8時43分、本郷三丁目駅で駅員が車外に運び出した。車内に付着した液体から発するガスのため、次の御茶ノ水駅で駅員6人が病院に運ばれた。
 一方、我孫子発の千代田線でも8時2分、新御茶ノ水駅で車内に異臭が漂い始め、霞ヶ関駅に着いたときに乗客のほとんどが下車。先頭車両の網棚に新聞紙にくるまった箱が見つかり、液体が流れ落ちていた。箱を車外に運び出した駅員は病院に運ばれた。
・社会学者・専門家に聞く イデオロギーを背景に持つのか
 20日、東京都内の地下鉄で起きた「地下鉄サリン殺傷事件」について、薬物に専門的な知識を持つ犯人像の分析や、社会株序への挑戦ともいえる無差別的犯罪の社会背景などを、薬物専門家や社会学者に聞いた。
 宝月誠京都大文学部教授(社会学) 外国でも公共の場所で有毒ガスを使った事件は例がないのでは。われわれが信じている社会の安全性が覆され、不気味な事件だ。
 犯人の意図を推測すると▽通勤時間帯の地下鉄での発生は、具体的なターゲットになる人物があった可能性がある。無差別犯罪のようだが、事件の意図が伝わっている人がいるのかもしれない▽凶器となるものを製造し、操ることができる力があるという示威行為−の2つの可能性があるように思う。
 よほどの信条がないとここまでの犯罪はできない。事件の犯人は、宗教・政治的イデオロギーを背景に持っているのだろう。また、犯行声明がないなど目的・意図がまったくわからず、これまでの過激派のテロとは大きく異なっている。事件をあまりに簡単に、しかも同時多発で実行していることを考えると、愉快犯とも考えにくい。
・専門知識が必要/現場で合成も?
 桑原保正京都大農学部付属農薬研究施設教授 毒ガスとして開発されたサリンはごく徹量が皮虜に触れても人を死に至らしめる強い毒性があるので、取り扱いがむずかしい。今回の事件では有機溶媒のアセトニトリルが検出されている。アセトニトリル自体にも毒性があるが、もしサリンを溶かす溶剤として使ったとすれば、揮発しやすいサリンの急速な気化を抑えたり、空気に触れて壊れるのを防ぐなど、サリンを安定化させる扱い方を知っていると思われる。合成にも実験道具を扱うので、ある程度の専門期識が必要だ。
 薬物中毒に詳しい佐藤重仁筑波大医学部助教授(麻酔学) 被害者の症状から見て、有機リン中毒とみられるが、これほどの強い毒性はサリン以外に考えられない。ただ純度の高いサリンを持ち運ぶのは危険すぎる。完成したサリンを地下鉄に持ち込んだというよりも、完成直前の薬剤を混ぜるなどの方法で現場で合成したとも考えられる。いずれにしろ、化学薬品に知識を持った人物がいるのではないか。
・世界各地で大きく報道 米国 地下鉄に強い関心
 東京で20日起きた地下鉄サリン殺傷事件は、日本の首都でラッシュアワーに起きた無差別テロであることや、毒ガスの使用という異様な手口などから、世界各国のメディアがトップ級ニュースとして大きく報じた。
 【ニューヨーク20日共同】東京で20日起きた地下鉄サリン殺傷事件は、地下鉄の利用度の高いニューヨークでも、各テレビ局が定時のニュースで「ラッシュアワーを狙った無差別殺人」(NBC)「地下鉄の恐怖」(ABC)などと大きく報道、市民の関心の高さを示した。
 CNNも含め米国のテレビは、共同通信の報道やNHKの映像を引用しながら「サリンという名の致死性の神経ガスを使ったテロ的な殺人」と論評し、「事件の起きた地区はビジネス、官庁の中心部で、ラッシュアワーの車内はパニックとなった。警視庁は殺人容疑で犯人を追っている」と東京特派員のリポートを放送した。ニューヨークでは郊外電車の中での無差別発砲事件や地下鉄での殺傷事件が多発しており、今回の事件は市民に身近に受け止められている。
 地下鉄で通勤するOLは「ここの地下鉄は前の電車を待つために、駅と駅の間での臨時停車時間が長い。そんな時に毒ガス事件が起きたら、出口に殺到する人で犠牲者は東京の何倍も出る」と興奮して話していた。
核爆弾の代用 英BBC
 【ロンドン20日共同】英BBCテレビは20日、東京で起きた地下鉄サリン殺傷事件について早朝からトップニュースで伝え、テロリストが毒ガスを「核爆弾の代用」として使ったと報じた。
 BBCは、日本がこの種のテロを経験したのは初めてとして戸惑いぶりを伝えたほか、今回の事件と昨年6月の松本サリン事件との関連などにも触れながら詳しく報道した。
ナチス開発と独メディア
 【ベルリン20日共同】東京で20日起きた地下鉄サリン殺傷事件は、ドイツでもテレビやラジオなどで大きく伝えられた。
 全国公共放送のARDテレビは、午前11時からのニュース番組で同事件をトップで報道。現場の映像や「ものすごい頭痛がした」という被害者の声とともに、日本政府が同事件を個人的な犯行とはみていないことなどを伝えた。またサリンが第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって開発されたものであることも付け加えた。
 DPA通信もドイツ時間の未明から東京発でこのニュースを詳細に報道。日本政府や警察当局が事件後、鉄道や空港での安全対策を強化したことや、昨年6月にも長野県松本市でサリンによる大量死亡事件が起きていることなどを伝えた。
ロシアでもトップ級報道
 【モスクワ20日共同】ロシアのマスコミは20日、地下鉄サリン殺傷事件について海外ニュースのトップ級で次々と報じ、関心の高さを示した。ロシア・テレビは、救急車に運び込まれる被害者や酸素吸入を受ける女性の姿などを放映、「毒ガスを使ったテロ行為」と伝えた。
 ロシア・ラジオが共同通信モスクワ支局に事件について取材するなど、より詳しい情報を求める動きも出ている。
新華社も事件を速報
 【北京20日共同】中国の国営通信社、新華社は東京の地下鉄サリン殺傷事件について、20日午前中から速報した。ラジオ、テレビも同夜の定時全国ニュースで伝え、中国の関心の高さを示した。
 報道はナチス・ドイツが第二次世界大戦中に開発した毒ガス・サリンを使った無差別殺人事件である点を強調している。
 テレビニュースは地下鉄駅構内を逃げ惑う人々や、路上に倒れた重症者に心臓マッサージをする救急隊員の様子など生々しい現場の映像も伝えた。
発生直後から韓国は報道
 【ソウル20日共同】韓国では20日、東京の地下鉄サリン殺傷事件を発生直後からMBCテレビなどが朝のニュースで速報したのをはじめ、夕刊紙中央日報も一面で大きく報道、強い関心を示した。
 聯合通信はNHKの報道などを引用して速報、3月から放映を始めたばかりのニュース専門の24時間有線テレビYTN(聯合テレビニュース)も繰り返し伝えた。
 韓国では、特定の個人を対象とした犯罪とは違う無差別殺傷事件がなぜ起きるのか理解に苦しむとの声が強い。テレビニュースを見たソウルの30代の男性会社員は「何が目的なのだ。犯人はまったく卑劣な人だ」と憤慨した口ぶりだった。
・プロ集団の犯行? 運搬困難 時限装置使用か
 青酸ガス(シアン化水素)の約500倍の毒性を持つサリン。密室状態の地下鉄車両や駅構内で噴出させれば、犯人自ら巻き込まれる可能性が極めて強く、運搬にさえかなりの危険を伴う。時限装置の使用を指摘する識者もあり、20日朝の地下鉄サリン殺傷事件は化学的知識を持った集団による無差別テロの色合いが濃くなっている。
 今月5日、京浜急行の車内で起きた刺激臭騒ぎとの関連に注目するのは化学兵器に詳しい防衛庁の専門家。「京浜急行の事件は地上を走り比較的開けた場所だったから、死者は出なかったのだろう。空気の出入りがある所での効果が薄いことに気付き、地下鉄のように空気が拡散しない場所を選んだのではないか」と指摘する。
 15日朝には営団地下鉄の霞ヶ関駅構内でアタッシェケースから突然蒸気が噴き出した。内部に複雑な気体発生装置が組み込まれていることが分かったが、何のために置いたのか不明のまま。京浜急行の刺激臭騒ぎを含め、事件のなぞを解く不気味な「連鎖」ととらえる見方もある。
 しかしサリンは持ち運ぶことさえ危険だ。井上尚英・九州大教授(衛生学)は、サリンを合成する前の有機リン系フッ素化合物とアルコールの一種を容器の中に仕切って入れていた可能性を指摘する。
 2つの液状の物質はそれ自体は無害だが、「一定の時間がたったら、仕切りの板などが腐食して両者が混ざるなどの仕掛けを作っておけば、サリンの合成は可能だ」と話す。
 毒物の権威として知られる黒岩幸雄・昭和大病院薬剤部長も、毒性の強さから現場でサリンを扱った可能性を否定。周到な準備をした上で「時限式装置を使ったのではないか」と高度な知識を持つプロ的な集団の犯行の可能性を指摘する。
・同種事件相次ぐ 警視庁警戒
 毒ガスのサリンに絡む事件としては、昨年6月に長野県松本市で住民7人が死亡した事件や、7月に山梨県上九一色村でサリン残留物が検出される騒ぎがあったが、ついに20日、都心部の営団地下鉄内でもサリンを使用した大量の死傷者が出る事件か起きた。
 首都圏ではこれまでにも悪臭騒ぎが起きたり、地下鉄駅で超音波式加湿機を使った不審物が仕掛けられた事件が相次いでおり警視庁は正体不明の無差別テロが今後も起きる可能性があるとみて警戒を強めている。
 都内周辺では、平成5年7月に江東区亀戸の新興宗教団体の道場付近から悪臭が立ち込め、住民から苦情が殺到する騒ぎがあった。東京都などか調べたが、原因は分からなかった。
 今年3月6日には、横浜市中区を走行中の京浜急行の電車内で異臭が流れ、乗客約20人が目やのどの痛みを訴え、十数人が病院に運ばれる事件があった。
 いずれも、サリン関連物質かどうかの確認はできていないが、京浜急行の事件は神奈川県警が捜査をしている。
 また、地下鉄の霞ヶ関駅では3月15日早朝、駅改札口付近に置かれたアタッシェケースから蒸気が吹き出す事件が発生。超音波式の加湿機と同じ仕組みの機械が組み込まれており、計3ヵ所に置かれていた。
 過激派が使ったことのない構造の機械。このため、警視庁は今回の事件との関連も調べている。
・見えない殺意に怒り 地下鉄サリン事件 声を震わす遺族ら 徹夜態勢で治療続く
 猛毒ガスのサリンによる同時多発ゲリラ。20日午後、通勤ラッシュの地下鉄乗客ら6人が犠牲になったほか、負傷者が3200人を超えた。「怒りで足が震える」。前例のない無差別死傷事件に突然、肉親、知人を奪われ、家族らに怒りが広がった。夜に入っても駅構内と車両の洗浄作業が続けられ、丸ノ内線の電車内などで新聞紙に包まれた不審物が見つかり、乗客を避難させる騒ぎも。間もなく事件と無関係と分かったが、東京の大動脈は”見えない殺意”に終日おびえた。
父になる直前
 日本たばこ社員、和田栄二さん(29)は日比谷線の小伝馬町駅で事件に巻き込まれた。
 いつものように出勤を見送った妻の素子さん(28)に午前10時すぎ、会社から悲報が届いた。
 和田さんは夫婦2人暮らし。嘉子さんは来月、初めての子供を出産予定で、栄二さんも「早く生まれないかな」と楽しみにしていたという。
 同じ社宅に住む伊藤香美さん(29)は「和田さんは気さくな人で、あいさつをよく交わした。事件はとても人ごととは思えない。怒りで足が震える」とショックを隠せない。
 岩田孝子さん(33)も小伝馬町駅で倒れた。勤め先の事務機器卸会社の上司は自転車で病院に駆け付け「遺体は眠っているような感じで、冗談に思えるほどだった。本当に冗談だったらいいのですが…」と声を詰まらせた。
 地下鉄3線が交差し、官庁街に直結する霞関駅。高橋一正助役(50)は千代田線の車内に不審物があるとの通報でホームに駆け付けた後に不調を訴え、搬送先の病院で死亡した。
早く犯人を
 足立区千住の自宅に駆け付けた叔父の高橋周一さん(62)は「一正は人一倍責任感が強いためこんなことになってしまった。早く犯人を捕まえてほしい」と”無差別殺人”に憤りをぶつける。
 神谷町駅構内で亡くなったプレハブ建物の工事責任者、小島肇さん(42)の同僚は「自分もちょっと、時間がずれたらと思うと恐ろしい。電車に乗るという日常の行動に恐怖心を植え付けた罪は大きい」。6人の遺体は死因の特定のため、警視庁本富士署などへ。
あふれる患者
 約700人の負傷者が運び込まれた中央区の聖路加国際病院は一時、患者で挙あふれ、2階の通路に机といすを並べて仮の処置室にするなど、まるで野戦病院に。医師の一人は「呼吸困難の患者は状態が急変する恐れがあり、徹夜で様子を観察しなければ」と慌ただしく廊下を走る。
 千代田区の駿河台日大病院の矢崎誠治救急救命センター部長は「毒物に有効な治療薬が足りず、大阪からの空輸を手配している」と対応に追われていた。
・関西も厳戒
 東京の地下鉄サリン殺傷事件を受け、東京に次ぐ地下鉄網を持つ大阪府内では20日、JRや地下鉄、阪急電鉄など交通機関や地下街、医療機関などで社員や職員が施設内の巡回を強化、不審な物が置かれていないかなど、慎重にチェックを続けた。
 大阪市交通局は市営地下鉄やバス、新交通システム「ニュートラム」の全線で車内や駅構内を緊急点検した。事件の背景などがはっきりしていないため、終日態勢で職員が駅や車内を巡視、警戒に当たった。
 一方、京都市交通局でも、20日午後、営業施設部長名で、列車内と駅構内の巡視を含む点検強化の徹底を求める通達を出した。
 交通局は同日午前中から地下鉄烏丸練の各駅と列車について、不審物の有無について巡視点検を始めたが、通達は、折り返し時の列車内や駅構内の巡視点検の強化のほか、バスターミナルや市バス車内の忘れ物点検の徹底を図るよう求めている。さらに、通達では、不審物を発見した場合には、乗客の誘導や運転指令と警察への早期連格などを指示している。
・「国家権力の謀略的犯罪」オウム教が見解
 地下鉄サリン殺傷事件に絡み、宗教法人「オウム真理教」(総本部静岡県富士宮市、麻原彰晃教祖)は20日、「国家権力は、オウム真理教が非道な行為を行ってはばからない団体であると印象付けるために、東京サリン事件という謀略的犯罪を引き起こしたと考えられる」などとする見解を発表した。
 見解は「一部情報によると、不当にも東京サリン事件と当教団を結び付ける動きがある」などとした上で「(事件は)教団への弾圧を行いやすくするために計画的に仕組まれた」などとしている。(京都新聞)
■社説 犯人逮捕こそ最大の抑止策
 思いもかけぬ惨事に言葉を失う。東京営団地下鉄の車内に持ち込まれた有毒ガス「サリン」によって乗客ら6人が死亡し、3000人をこえる人が病院で手当てを受けた。ラッシュ時の乗客の無差別殺傷を狙ったテロ行為である。私たちの周辺に途方もない悪意が潜んでいることに恐怖を覚えずにはいられない。
 20日午前8時20分ごろ、営団地下鉄日比谷線の神谷町駅近くで車内に刺激臭が立ち込め、乗客が倒れているとの110番。続いて丸ノ内線中野坂上駅ホームで乗客が倒れていると119番。その後も通報が相次ぎ、3路線、15駅で被害者が出ていることが判明した。
 目撃者らによると、新聞紙に包まれた20a大の箱が車内に置かれており、そこから透明な液体が染みだしていたという。その後の警視庁の調べで、その箱が毒ガスの発生源であり、箱は5車両に計6個置かれていたことが分かった。
 警視庁は残留物から、毒ガスを「サリン」と断定した。有機リンの化合物であるサリンは、化学兵器としてドイツが開発したもので、青酸カリの500倍もの殺傷能力を持つといわれる。そうした危険な物質が、おおっぴらに持ち運びされているという事実にもりつ然とする。
 複数の犯人が同時多発をもくろんだゲリラ的犯行であり、市民社会に挑戦する類を見ない悪質な犯罪である。サリンを持ち込んだ者はまだ特定できないが、いくつかの目撃証言もある。群衆の中に紛れ込んで姿を消した卑劣な犯人を許してはなるまい。捜査当局は犯人逮捕に全力をあげてもらいたい。
 昨年6月、長野県松本市でサリン中毒事件が発生し、死者7人、重軽症者200人以上を出したのは記憶に新しい。その事件の解明が進んでいないのが今回の事件の誘因と言えば、警察に対して過酷に過ぎるかもしれないが、犯人逮捕こそ最大の犯罪抑止策であることを改めて強調しておきたい。
 有機リン系のある試薬にフッ素化合物を混ぜると、サリンは簡単に生成できると言われる。だが、松本事件では当該の試薬の購入先からは疑わしいケースは浮かび上がらなかった。このため、その試薬を作るために必要な薬品数十種類にまで捜査を広げている。その捜査もさらに徹底してもらいたい。
 今回の事件と松本事件が関連があるかどうかは不明である。だが、同一犯人の可能性も否定できない。とすれば、松本事件や、さらに今年3月5日に京浜急行の車内で刺激臭が発生した事件も、今回の事件に向けた一連の予備行為という見方も成立する。
 犯人の目的は何か。社会に恐怖と不安をまき散らすことを楽しむ愉快犯か。日本の社会に対する抗議なのか。何かの理由で追い詰められた集団のせっぱ詰まった逆襲なのか。犯行声明もなく、推測する手段もない。だが、私たち市民が恐ろしい犯罪者の敵意の前に無防備にさらされていることだけは確かだ。
 事件が再発する可能性は否定しきれない。公共輸送機関はもとより、不特定多数が集まるところでは十分な警戒が必要だろう。不審な荷物などには十分に注意を払いたい。同時に、市民社会が常に冷静に対処し、パニックに陥ることを避ける和恵も持ちたい。(京都新聞)
■南海本線泉佐野駅周辺渋滞解消へ 9道路またぐ高架化完成
 泉佐野市の南海本線・泉佐野駅周辺で進められている連続立体交差事業(全長約2.8`)のうち、南端部分の約1.2`区間が完成。真新しい高架橋の上を、このほど電車が走り始めた。
 連続立体交差事業が行われている区間では、これまで同本線と計9本の道路が連続して平面交差しており府内の鉄道のうちでも最も踏切が多い場所だった。大阪府と、泉佐野市、南海電鉄では、各道路の渋滞解消と鉄道の安全確保のため7年前から、総事業費370億円で同本線の高架化に取り組んでいる。
 今回、高架が完成したのは泉佐野駅と羽倉崎駅の間。国道481号と泉佐野市道の2本の道路と、同本線が立体交差になった。高架になった同本線のさらに上を、JR空港線と関空自動車線の併用高架橋がまたいで走っており、周辺の光景は、一変している。
 連続立体交差事業は今後、北側部分に進み、約10年後に残り2.6`が完成する予定。その際、現在の南海・泉佐野駅も現在より約6b高い高架駅になる。(京都新聞)
■烏丸線の点検強化 サリン事件で京都市交通局
 東京都内の営団地下鉄でサリンと見られる有毒ガスによる死傷者が出た事件で、京都市交通局は20日、地下鉄烏丸線の13駅や車内の巡視を強めるよう職員に指示。午前中に、全96車両(修理中を除く)の車内を総点検したが、異状はなかったという。
 通常2、3時間おきに行っている駅のコンコース、プラットホームの見回り回数を増やしたり、バスターミナルなど人が集まる場所での巡視を強化したりした。不審物を見つけたらすぐ乗客に離れるよう誘導することなどを求めている。強化態勢は3月いっばい続ける。
 またこの日は、デスクワークにつく職員も電車に乗り込み、不審物がないかをチェックした。(朝日新聞)
■社説 毒ガステロの底知れぬ恐怖
 「ツーンとするにおいがして息が苦しくなり、せきが出て体が震えてきた。何度も吐いた。そばに乗っていた人が倒れた」
 朝の通勤客で混雑する東京都心部の地下鉄電車内や駅構内で、猛毒ガスのサリンによるとみられる無差別殺人事件が発生した。犠牲者は6人にのぼり、重軽症者は3000人を越える。被害に遭った乗客の言葉は、事件の底しれぬ恐怖を表している。
 亡くなった人の遺族と被害に遭った人たちに、お悔やみとお見舞いを申し上げる。とともに、犯人らに憤りを覚える。
 事件は午前8時すぎ、地下鉄の複数路線の車中や駅ホームで起きた。満員の車内の床に置かれた包みから液体が染み出し、鼻をつくにおいが立ちこめる。せき込んだり、床に倒れたりする人が出て、車内やホームは一転、修羅場と化した。何が起きたか分からないまま、死亡したり、病院に運ばれたりした人もいたに違いない。
 サリンは、1930年代の末にナチスドイツが大量殺傷の兵器として開発した。青酸カリの数十倍という猛毒だ。化学の知識と経験があれは、市販の薬品からも生成できるという専門家もいる。中毒になった人は後遺症に悩まされる。
 警視庁は組織的な犯行の可能性が高いと見ている。どこかで生成したサリンを、朝のラッシュ時間帯に一斉にまく。その手口からも、犯人らは明らかに無差別大量殺人を計画したとしか思えない。
 目的は、社会不安を起こすことなのだろうか。同時多発で、人目も恐れぬやり方からは、特定の意図をもった集団の介在と、その集団の狂気さえ感じさせる。社会への許しがたい挑戦と言わざるをえない。
 サリンと推定される物質が、日本の犯罪に登場したのは昨年6月である。長野県松本市の夜の住宅街を襲い、7人の死者と200人を超える重軽症者が出た。
 事件発注以来、9ヵ月近くたつが、いまだに犯人につながる有力な手がかりは得られていないという。
 松本事件の12日後には、山梨県の山村で異臭が発生し、サリンをつくる際にできる副生成物とみられる有機リン系化合物が検出されていた。この事件も未解決のままである。
 この捜査の遅れと今回の事件が無間係だったとは言い切れまい。
 警察庁は、電車などの警戒の強化を全国の警察に指示し、不審物に触らないよう呼びかけている。亀井運輸相も、鉄道事業者にホームや車内に不審物がないかを点検し、不審者に警戒するよう指示した。
 再発を防ぐ有効な手だてがないまま、犯人らが次の犯行を狙っているとしたら、私たちの社会にとって、これ以上の不安はあるまい。
 安全な社会を築くのは難しいが、壊すのは極めて易しい。実際、安全を世界に誇ってきた社会は昨年来、短銃発砲で揺らいでいるのだ。
 総理府が昨年12月に行った世論調査では、「日本の国や国民について、誇りに思うことはどんなことか」の問いに「治安の良さ」を挙げた人は42.6%と、1年前より約10ポイント下がった。
 短統発射事件や今何のような凶悪事件で、わたしたちの社会はいま、安全を維持できるかどうかの瀬戸際にさしかかっているのである。
 市民の安全を守ることは、すべてに優先されなければならない。村山首相も真相究明を指示した。警察当局に、一刻も早い事件の解決を期待したい。(朝日新聞)
■無差別 組織テロ 東京の地下鉄殺人 サリン被害3200人に 5本の電車から検出
 東京都内の営団地下鉄日比谷、丸ノ内、千代田各線の電車内で20日朝、薬物によって多数の死者・重軽傷者が出た事件で、警視庁の特別捜査本部は同日、残留物の分析結果などから、犯行に使われた薬物を猛毒のサリンと断定した。警視庁のまとめによると、同日夜までの死者は6人、治療を受けたのは3221人に上った。同じ時間帯に複数の場所で発生していることや、サリンを作るのに排気機能の整った特別の施設が必要なことから、捜査本部は、無差別殺人を狙った組織的犯行との見方を強めている。サリンは、昨年、長野県松本市や山梨県西八代郡上九一色(かみくいしき)村で検出されており、捜査本部は関連も調べる。東京地検も刑事部長を本部長とする異例の捜査本部を設置した。
 警視庁捜査本部が電車内などで残留物を調べたところ、サリンを生成する過程で同時にできるメチルホスホン酸ジイソプロピルエステルを検出した。専門家は、この物質がサリン使用を裏付ける決め手になるとしている。現場では、有機化合物の合成に使われるアセトニトリルも検出されており、これにサリンを溶かし込んで電車内に運んだとみられる。
 松本市の事件では、現場周辺から、メチルホスホン酸ジイソプロピルエステルと同種の、サリン生成の際にできる副生成物が検出された。また昨年7月に悪臭騒ぎがあった山梨県上九一色村でも、同様の物質が見つかっている。
 専門家によると、化学を専攻する大学生程度の知識があれば、サリン生成は不可能ではないという。だが、実際に作るには大学や企業の研究室並みの施設が必要といい、個人による生成は難しい。
 一方、営団地下鉄によると、サリンは日比谷、丸ノ内、千代田各線の計5本の電車内で発見された。このうち3本の電車内で押収されて警視庁科学捜査研究所で鑑定中のサリンは、いずれも液体状態だった。
 捜査本部は、事件が午前8時すぎの30数分間に、3路線の電車5本の中で発生していることなどから、一般社会に何らかの反感を持つ組織の計画的犯行とみている。捜査本部は、完成されたサリンが国外から持ち込まれた可能性などについても調べる。
「憎んでも余りある」首相 村山富市首相は、20日朝に東京の営団地下鉄内で起きたサリンによる殺傷事件について同日夜、官邸で報道各社のインタビューに応じ、「何の関係もない一般市民を無差別に殺傷するのは、断じて許すことができない。憎んでも余りある。亡くなった方の遺族に心から哀悼の意をささげたい」と語った。
 また原因究明に万全を期すよう関係機関に指示したことを明らかにした。(朝日新聞)
■首相ら口々に「厳戒」 再発防止に緊張感
●首相官邸
 「ひどい。再発防止のため、運輸相には車の中の危険物を浸したり、通報などを徹底するよう、自治相には、集会場など人が集まるところでは警備を強化するよう指示した」
 20日に起きた地下鉄でのサリン殺傷事件について、この日午後零時45分、村山富市首相は首相官邸で、野中広務国家公安委員長(自治相)、亀井静香運輸相との協議後、両目をやや充血させて記者団に語った。
 首相への報告を終えた亀井氏は「犯人が意思をもっている限り(事件が再発する)可能性がある。そうした最悪の事態を想定して厳戒態勢をしくということだ」。野中氏も「全国的に厳戒態勢をしいている」と、口々に「厳戒態勢」を強調した。
 阪神大震災では初動対応の遅れが批判された首相官邸。それだけに午前中から緊張した雰囲気が漂った。首相は事件発生についての報告を秘書官から電話で聞いた後、午前9時半すぎに執務室へ。午前10時すぎ、五十嵐広三宮房長官に毒物がサリンであることを知らせる連絡が野中氏らから入り、緊張感が高まった。
・サリン事件、9ヵ月で3件 入手経路特定に全力 捜査当局
 東京・地下鉄の毒ガス事件で警視庁が原因物質と断定したサリンは、致死量1_グラム足らずの猛毒で、しかも、サリンが関係した事件や騒ぎは、昨年6月以来、この9ヵ月で3件目になる。捜査当局は、サリンの合成方法や原料の入手ルートなどについて、この3件に共通点があるか調べている。
 サリンは神経ガスの1種。神経の活動に欠かせないアセチルコリンを分解して、量を調整する酵素(コリンエステラーゼ)の働きを阻害する。アセチルコリンが分解されずに神経にたまると、ひとみが1_以下の点のように収縮したり、呼吸中枢がマヒしたりして死亡する。
 今回の事件で被害者が3000人を上回る規模になったのは、地下鉄車内という密閉された空間でサリンが発生したためとみられる。サリンは常温では液体だが、揮発性が高い。
 地下鉄事件の現場から検出されたメチルホスホン酸ジイソプロピルエステルは、サリンを作る最終段階で出来る副生成物。この物質は、長野県松本市の事件、その直後の山梨県上九一色村の悪臭騒ぎでも検出されたとされる。
 専門家らによると、文献などで知られているサリンの生成方法は、塩素系リン化合物に、フッ素化合物とアルコールを反応させる方法。フッ素化合物とアルコールのどちらを先に反応させるかで、2通りの合成方法がある。
 いずれの場合も、同じ副生成物が発生し、これだけでは、どちらの方法でサリンが作られたかを特定するのは困難だ。
 さらに、専門家は、この副生成物そのものに、塩素化合物やフッ素化合物などを加える方法もあると指摘する。
 原料は簡単に入手でき、製造方法を記した研究論文も出ている。国内には現在、サリンの製造を禁止する法はなく、合成は不可能ではないとされている。
 しかし、合成可能とはいえ、今回の事件では地下鉄3路線で、3000人を上回る被害が出るだけの量が使われている。また、長野県松本市の事件でも、7人が死亡、213人が重軽症となるほどのキロ単位の薬品類が使用されたとみられている。専門家は、松本市で使われたとされるサリンの量を作るためには「中小企業の工場並みの規模の施設が必要」と指摘しており、技術や人手の裏づけ、資金力が不可欠となる。(朝日新聞)
■未経験犯罪に総力態勢 地下鉄サリン事件
 「ひどい」。村山首相が怒りをあらわにした。何者かが毒ガスの「サリン」をラッシュ時の地下鉄に放った20日朝の同時多発事件。社会への挑戦ともいえる無差別殺傷に対し、警視庁は出動可能な機動隊員など1万人以上を動員。自衛隊は化学科部隊を出動させた。首相官邸は「厳戒態勢」を指示し、鉄道各社は駅や車両の警戒を強化した。
●警視庁 警官1万1000人動員
 地下鉄車内で毒ガスを発生させるという未経験の事態に、警視庁は1万1000人の警察官を動員し、救助や情報収集にあたった。警視庁幹部は「重大な反社会的犯罪で、許すことはできない」と、厳しい表情で決意を語った。
 警視庁には午前8時17分、日比谷線八丁堀駅の事務室から第一報の110番が入った。以後、「異臭がする」「病人が大量に出ている」などの通報が、日比谷線や丸ノ内線の駅から続々と入り始めた。
 各署から警察官が現場にかけつけると同時に、鑑識課から約30人が出動した。課員はふだんの作業服で駆けつけ、霞ケ関駅と茅場町駅に行った10人は、吐き気などの症状を訴えて病院に運ばれた。1人は重症だ。
 機動隊も出動できる全部隊が派遣された。「同時多発ゲリラ」との情報もあったため、防毒用の装備は持っていなかった。購入したばかりの化学防護服約50着が至急、現場に送られた。
 午前8時42分には、警視庁17階に総合警備本部が設置された。総合指揮所のホワイトボードに書き込まれる被害者数が刻々と増える。被害の大きさが明らかになり、統一地方選のために午後に予定されていた署長会議も、急きょ中止が決まった。
 捜査一課が中心になり、「地下鉄駅構内毒物使用多数殺人事件」の特別捜査本部が設置された。通常の殺人事件の捜査本部が50人前後なのに比べ、けた違いの300人が捜査に当たる。
 警察庁の国松孝次長官は8時分、出勤途中の車中で報告を受け、幹部の集合を指示。9時10分から警備、刑事局長らと会議を開いて、全国の警察本部長に「公共交通機関など不特定多数の集まる場所の警戒強化」などを緊急指示した。
●自衛隊 化学戦担当の部隊出動
 毒ガスにからむ事件で初めて自衛隊が派遣された。出動したのは、化学戦を担当する陸上自衛隊の化学科部隊を中心に約160人。
 防護マスクと防護衣で身を固め、被害のあった地下鉄駅構内に入り、かすかに残るサリンらしい薬物に塩素系中和剤を散布した。
 防衛庁によると、警察庁から連絡が入ったのは午前8時50分。その約20分後、内局幹部は「関東圏の化学科部隊は市ケ各駐屯地(東京都新宿区)に集まれ」と口頭で指示した。
 午後零時50分、都知事からの災害派遣要請を受けて、第1師団(司令部・東京都練馬区)の部隊が霞ケ関駅、第12師団(群馬県榛東村)が小伝馬町駅など、部隊ごとに駅を分担して出動した。駅事務室や車両の中など、検知器で有毒物質が残る場所を探した。午後5時には千葉県知事からも要請があり、汚染車両が収容された松戸駅の車庫へ向かった。
 駅の除染はそれぞれ20分から50分ですんだ。20日夜は万一の再発に備え、隊員を市ケ谷駐屯地に待機させるという。
●鉄道各社 不審物警戒に巡回強化
 亀井静香運輸相からの指示を受けた鉄道各社は夕方のラッシュ時から、非番の職員や管理職まで動員して警戒に当たった。JR東日本では500人を動員、駅構内を巡回したり、電車に添乗させて不審物がないか見張った。
 京王帝都電鉄も約30人を動員。新聞紙やビニール袋に包まれた不審物が、ごみ箱やベンチの下、コインロッカーにないか見て回った。
 鉄道各社は合理化策として、構内にテレビカメラを設置して駅員を減らしてきており、警戒態勢をいつまでも続けられない。「1週間程度」とする私鉄がある一方で、「21日は休日だし、22日以降の態勢はまだ決まっていない」とする私鉄もある。
 営団地下鉄の、氷光洋一総裁は午後1時40分から、JR上野駅近くの本社で記者会見した。「公共交通機関である地下鉄が無差別の凶悪犯罪の対象になったことはまことに遺憾。死傷された方々には心からお見舞いを申し上げたい」という談話を読み上げた。駅や電車の安全確保を徹底することを約束したものの、具体的対策として「不審物の発見に重点を置いて点検にあたる」と答えるのが精いっぱい。決め手となる対策が見つからない事態に焦りを深めた。
●東京消防庁 救急車130台で被害者次々搬送
 「死者も重体も、まだ増えそうです」。東京消防庁の記者室で午後5時、広報担当者が説明する。
 この日午前8時9分に、最初の119番を受けた。約600人の隊員と救急車130台などが出動した。
 地下鉄駅の入り口付近では、歩道などにシートを敷いて臨時の救護所を開いた。重症の人は都内約70の病院へ救急車でピストン輸送した。
 毒物などの専門部隊「化学機動中隊」も全10部隊が出動し、駅や車内で薬品の特定を急いだ。
 同11時23分、「薬品はサリン系の模様。各隊員は十分注意して活動せよ」の本部命令が発令された。それでも救急隊員48人が症状を訴え、病院へ運ばれた。
・国が遺族らに給付金支給へ 官房長官が考え
 五十嵐広三官房長官は20日午後の記者会見で、同日朝に東京の営団地下鉄内で起きたサリンによる殺傷事件での死亡者の遺族や、身体に障害が残った人に対し、国が給付金を支給する考えを明らかにした。
 1974年の三菱重工爆破事件を契機に80年に成立した「犯罪被害者等給付金支給法」に基づき、死亡者の遺族へは220万円から1079万円、障害が残った人には262万5000円から1273万円の範囲で支給される。(朝日新聞)
■被害、日比谷線など3線で 1〜3両目に「包み」 車内に、ホームに、倒れる人
 「サリン」による被害は、どう広がったのか。20日朝の地下鉄の運行状況と、各駅から病院へ運ばれた人数、被害者の証言などから再現した。関係する電車は異状が起きてから短時間で停車、最寄り駅で客を降ろしているが、わずかな時間に被害は広がった。
 被害が最も集中したのは日比谷線だ。死亡者6人のうち5人を占める。2本の電車でサリンが発生し、それとは別に7本の電車でも異臭がした。
 最初に異状を感じたのは午前8時すぎ、茅場町駅だった。1つ手前の人形町駅で「前から3両目で、だれかが新聞紙にくるまったものをけ飛ばした。このあと車内で変なにおいがした」との乗客の話がある。
 この電車は北千住7時43分発とみられる。茅場町駅発は定刻通りなら8時1分。8時6分、築地駅に着いたとき、車内の非常ブザーが鳴った。すでに助けを求める乗客がかなりいた。
 その後、電車の前から3両目で異物を確認した。茅場町駅からは8時9分、築地駅からは8時17分、東京消防庁に異状発生の通報があった。
 北千住方面へ向かっていた中目黒7時59分発の電車は午前8時11分、神谷町駅に到着した時に、乗客から「先頭車に倒れている人がいる」との通報が駅員にあった。乗客4人が車内に倒れており、搬出した。
 後続列車が追っているため、同電車はそのまま出発し、霞ケ開駅に着いたのは午前8時13分だった。先頭車両の床の上で、新聞に包まれた弁当箱大の異物から白い液体が流れ、異臭がしていた。ホームで数人が倒れていた。
 千代田線では、相互乗り入れしているJR線の我孫子駅7時9分発の電車が8時10分すぎ、霞ケ関駅に到着した。車内にこぼれていた液体をふきとった駅職員がホームで倒れ、死亡した。
 丸ノ内線では池袋7時47分発、同8時32分発の電車から異物が発見された。
 初めの電車は新高円寺まで走り、停車した。この間、手前の中野坂上駅で多数の被害者が出た。8時半ごろ、前から3両目に男女1人ずつが倒れていた。同じ車両で液体の入った10a四方の容器を発見、駅員が下ろしている。
 後の電車は本郷三丁目駅で8時40分ごろ停止した。2両目の床に新聞に包まれた異物が落ちていた。(朝日新聞)
■姿見せぬ犯人「許せぬ」 地下鉄サリン事件 初産控えた妻残し 犠牲の会社員 死に顔目を見開いて
 いつものように出勤した夫が、娘が、同僚が、突然、帰らぬ人になった。遺族たちは「こんなことが許されるわけがない」と声を詰まらせた。20日朝、東京都内の地下鉄駅や電車内で起きたサリン事件。6人が巻き込まれて死亡し、同日夜になっても病院を訪れる人が後を絶たない。長野県松本市に続く、姿が見えぬ者の犯行に、人々の不安は募る。
 霞ケ関駅助役の高橋一正さん(50)は、乗降客の整理に当たったあとに亡くなった。午後6時すぎ、遺体が安置された丸の内署地下2階に駆けつけた妻シズエさん(48)は、目を赤くはらして「何も話すことはございません」。
 この朝、駅で一緒だった同僚たちによると、高橋さんは前夜8時から朝8時までの「全泊」勤務だったが、ラッシュ時の乗降客整理のため、午前9時半までの残業勤務についていた。5番線ホームの先端にいた高橋さんは、電車の中で異臭がするのに気づき、車内の床にこぼれていた液体をモップでふきとった後、ホームで倒れたという。
 同僚の1人は「液体が何だか分からなかったので、通常の作業をしていただけなのに、悔しい」と話した。
 日本たばこ産業(JT)社員、和田栄二さん(29)の妻嘉子さん(29)は正午前、中央署の霊安室で夫と対面した。目を見開き、口も開けたままのむくんだ顔は苦しそうだったという。
 結婚3年目の嘉子さんは、チェックのマタニティードレス姿だった。初めての子どもの出産予定は来月19日。居合わせた和田さんの上司によると、嘉子さんは「あと1ヵ月で、子どもの顔が見られたのに」と言って泣き崩れたという。
 和田さんはJT本社ビル建設推進部の部員として、4月1日に完成する東京・虎ノ門の新本社ビルの建設プロジェクトを担当していた。
 新ビルがオープンする予定の4月1日は、和田さんの誕生日でもあり、子どもの誕生も近いため、仕事も張り切ってこなしていた。「初産だから、遅れるかもしれないな。この忙しい時に、出産休暇をとらなければならないが、よろしく頼む」と同僚に話していた。
 嘉子さんは上司に「いつもと変わりなく、元気に出ていったのに。こんなことになるなんて」と言ったという。
 埼玉県草加市に住む岩田孝子さん(32)の父親、文次郎さん(63)は午前11時ごろ、警視庁からの連絡で、「娘の死」を知らされた。そして、「信じられない」とつぶやきながら、築地署に向かったという。
 孝子さんが勤務する東京・茅場町の事務機器販売会社では、孝子さんの机の上に花が飾られた。上司の総務部長は「あんなにいい娘さんだったのに……。犯人を許せない」と声を詰まらせた。
 孝子さんは1986年に入社し、経理を担当していた。明るい、みんなに好かれる女性で、仕事もまじめ。この春には昇進する話が進んでいたという。
 病院からの電話で総務部長が飛んでいったが、通されたのは地下の霊安室だった。「まだぬくもりがあり、本当に死んでいるのかと思った」と涙ながらに話した。
 千葉県浦安市に住む建設会社員小島肇さん(42)は東京・六本木にある勤務先に向かう途中だった。同僚によると、プレハブ住宅などの建設工事を本社で取り仕切る工事部課長代理を務めていた。
 現場を回った経験もあり、部下の信頼を得ていた一方、最近になって英会話を習ったり、ジャズを好んだり、夏休みには奥さんと娘さんの3人で外国旅行を楽しむ「人間的に幅の広い人」だったという。
 突然、同僚を失った女性社員(39)は「何の目的で、こんなことをするのか。人間的常識のある人のすることではない」と話す。
・児童らの被害24人 中学、卒業式繰り下げ
 東京都教育庁は20日、営団地下鉄構内で起きたサリン事件で、都内の小学校に通う児童13人と、高校・ろう学校に通う生徒11人が被害に遭ったと発表した。そのうち、少なくとも高校生1人が入院し、2人が治療を受けたという。
 また、小学校14校で終業時間を繰り上げて児童を帰宅させた。台東区内の中学校3校ではこの日の卒業式の時間を繰り下げた。
・亡くなられた方々 東京消防庁など調べ
 東京都足立区千住四丁目、営団地下鉄霞ケ関駅助役高橋一正(50)▽足立区千住旭町五丁目、会社員和田栄二(29)▽埼玉県草加市中根町、会社員岩田孝子(32)▽千葉県浦安市堀江四丁目、会社員小島肇(42)▽東京都江東区東陽二丁目、会社員坂井津那(50)▽男性(70歳ぐらい)、日比谷線神谷町駅から都立広尾病院に搬送、午前9時18分に死亡確認(夕刊で既報の方々も含む)
症状のひどい方々
 症状が特に重い方々と入院先(東京消防庁調べ、敬称略)
 ▽東京都台東区三ノ輪一丁目、会社員赤石沢桂子(50)▽埼玉県草加市金明町、会社員田中ひろみ(23)▽同県大宮市東大宮六丁目、営団職員菱沼恒夫(51)▽同県越谷市南越谷三丁目、藤本武男(64)=駿河台日大病院
 ▽横浜市港北区綱島西五丁目、会社員弘永惇(50)=済生会中央病院
 ▽千葉県浦安市富士見五丁目、荒巻研二(40)▽東京都江戸川区一之江二丁目、高校1年野山賢美(16)=慶応大学病院
 ▽埼玉県越谷市蒲生西町一丁目、会社員金子晃久(32)▽千葉県木更津市大久保二丁目、中越辰雄(54)=東京女子医大病院
 ▽埼玉県越谷市赤山町、公務員大沼栄一(54)▽同県春日部市藤塚、公務員志田実(59)=東大病院
 ▽埼玉県吉川町上内川、岡田三夫(50)=千駄木日医大病院
 ▽千葉市美浜区高洲四丁目、会社員太田順子(23)=都立墨東病院
 ▽千葉県市川市平田三丁目、渡辺孝一(37)=自鬚橋病院
 ▽女性(30歳ぐらい)=東京医大病院(朝日新聞)
22日■松本事件と同物質検出 東京の地下鉄サリン 山梨の悪臭も関連? 死者10人に
 東京の地下鉄サリン殺傷事件の現場残留物に、昨年6月に長野県松本市のサリン事件で検出されたものと同じ物質があったことが、22日までの警視庁築地署捜査本部の調べで分かった。昨年7月の山梨県上九一色(かみくいしき)村の悪臭騒ぎでも似た物質が検出されており、捜査本部は同一の組織が長野、山梨、東京の事件を引き起こした疑いがあるとみて捜査している。
 21、22日の2日間で新たに被害者4人が死亡し、死者は計10人となった。東京消防庁によると、病院で手当てを受けた被害者は計5510人に上り、うち重体は16人、重症37人。
 捜査本部は同日、サリンが発生した地下鉄電車内を検証、サリン入り容器を置いて逃げた複数の男の割り出しに全力を挙げている。
 東京の地下鉄事件の現場から検出されたサリンの副生成物は、メチルホスホン酸ジイソプロピルと呼ばれる有機リン系化合物で、原料からサリンを生成する際に副産物として生じる。複数の残留物からサリンとともに検出された。
 この物質は昨年6月27日夜に長野県松本市内でサリンが発生、7人が死亡した事件で現場に残っていた水などから、サリンとともに検出された。(京都新聞 夕刊)
■埼京線で異臭騒ぎ 不審物なく運転再開
 22日午前7時20分ごろ、東京都北区のJR赤羽駅に向けて走行中の川越発新宿行き埼京線上り電車で「強い異臭が車内に立ち込めている」と、乗客の通報を受けた武蔵浦和駅員から110番があった。
 JR東日本は赤羽駅で電車から乗客全員を一時降ろして避難させた。赤羽署員が車内を調べた結果、不審物などは見つからず、約30分後に運転を再開した。乗客約1000人にけがなどはなく、大きな混乱もなかったという。JR東日本によると、このため上下14本が運休、12本が最高40分遅れ、約2万5000人に影響が出た。(京都新聞 夕刊)
■身元不明死者は93歳
 東京の地下鉄サリン殺傷事件で、営団地下鉄日比谷線神谷町駅から病院に収容され死亡した男性は、21日の警視庁築地署の捜査本部の調べで、東京都渋谷区広尾、渡辺春吉さん(93)と分かった。(京都新聞 夕刊)
■死者は10人に 東京地下鉄サリン事件
 東京都内の営団地下鉄日比谷、丸ノ内、千代田各線の5本の電車内に、猛毒のサリンがまかれた事件で、警視庁築地署の特別捜査本部は22日、関係した各駅で捜査員が不審人物の目撃者を捜すなど、本格的な捜査を続けている。事件後、目撃情報は多数寄せられているが、あいまいなものも含まれているため、分析を急いでいる。重症で入院していた被害者のうち4人の男性が22日までに死亡し、事件による死者は計10人になった。このほか東京消防庁によると、21日夜までに約5500人が医療機関で治療を受けた。
 捜査本部の調べでは、22日までに約120件の不審者の目撃情報が寄せられている。
 こうした情報の中には、間接的に聞いたものや、脱出の際の混乱やサリンによる症状で、はっきりしない目撃もある。捜査本部は各情報提供者から詳しく事情を聴くとともに、新たな目撃者を捜す。
 22日までに新たに亡くなったのは▽埼玉県大宮市東大宮6丁目、営団地下鉄職員菱沼恒夫さん(51)▽同県越谷市南越谷3丁目、藤本武男さん(64)▽千葉県木更津市大久保二丁目、会社員中越辰雄さん(54)▽東京都品川区豊町一丁目、無職堀安雄さん(77)。また日比谷線神谷町駅から運び出されて死亡した男性は、東京都渋谷区広尾一丁目、渡辺春吉さん(95)と分かった。捜査本部が21日にこのうち8人の司法解剖を行った結果、8人とも毒物による中毒死の疑いが強い。(朝日新聞 夕刊)
23日■窓 地下鉄サリン事件に一言
・陰湿で冷酷な無差別殺人 下京区・山田善八(無職・76)
 営団地下鉄3路線、霞ヶ関を起点として、突如襲った組織的犯罪のテロは、強力な化学薬品を使った毒ガスで、何のかかわりもない無防備な一般市民を標的にした許しがたい犯行である。
 早朝のラッシュアワーをねらい、車両の出入り口に猛毒の「サリン」をしかけ、車中の、それも地下鉄という逃げ場のない場所を選び、混乱を見届けて、平然と立ち去るという非情な手口は、何に例えられるだろう。
 10人の死者を出し、多数の重症者が、まだ各病院で生死の間をさまよっておられる。この残虐極まりない光景を、犯人たちはうすら笑いを浮かべて眺めているのだろうか。良心のかけらもないのだろうか。
 昨年6月、長野県松本市で7人の死者を出したサリンガス事件に酷似しているといわれるのは、犯人たちがガスの効果を試していたと思われ、その冷酷さが恐ろしい。この種のテロ事件は犯人検挙が、テロ防止への最大の戒めであろう。
 解明に時を過ごし、逮捕に手間取れば、陰湿極まりない犯人たちは再び犯行を重ねる恐れがある。速やかな犯人逮捕こそが、不幸にも犠牲になられた方々へのせめてもの手向けではないだろうか。
・事件の解明に徹底的対処を 長岡京市・横田久弥(無職・74)
 東京のど真ん中の地下鉄にしかけられたサリンによる無差別殺人事件。もともとこうしたテロなどは政治の貧困な国に起こるものと思っていた。
 以前の長野、山梨両県内のサリン事件をもっと重大視し、徽底的に対処しておけば、この東京での惨事は防げたかもしれないと思うと、残念でならない。長野、山梨の犯行は、今回の瀬踏みであったのかもしれない。
 都心の人々を恐怖のどん底に陥れた獣(けだもの)のようなテロ集団を、一日も早く、一人残らず逮捕してほしい。こんな毒薬を自在に操れる者といえば限られているだろう。
 このまま手をこまねいていては、彼らのテロ行為はますますエスカレー卜するばかりだろう。村山首相以下政府の面目にかけても、事件の解明、犯人逮捕に全力を挙げ、安心して通勤、通学できる日を国民にもたらしてほしい。(京都新聞)
■東海道線と山陽新幹線 26日までに復旧 工事完了の方針 JR西日本再開は来月初旬
 JR西日本は22日、阪神大震災で不通になっている山陽新幹線新大阪−姫路間と、東海道線住吉−灘間の復旧工事について、当初の見込みを若干修正し「ともに今月26日までに完了する」と発表した。
 復旧工事の完了後は、両線とも車両試運転など、JRによる自主検査が行われる。次いで、運輸省・鉄道施設耐震構造検討委員会(松本嘉司委員長)の精査、さらに運輸省鉄道局の最終検査があり、安全が確認され次第、運転再開するという。
 JRの試運転は、山陽新幹線が「ドクターイエロー」と呼ばれる検査専門車両のほか、営業運転している0系、100系、300系の各形式の車両が使われる。期間は約1週間の見込み。東海道線は「EF65型」の電気機関車2両を1組に、これを並走させるなどして点検し、1−2日で終えることにしている。
 運輸省の検査に必要な日数について、同省では「2、3日程度では終わらないだろう」としており、両線とも運転再開は当初の見込み通り4月初旬以降になるとみられる。(京都新聞)
■地下鉄サリン事件 かばんから新聞の包み 下車後、液体広がる
 東京の地下鉄サリン殺傷事件で警視庁築地署捜査本部は22日、これまでの目撃証言から日比谷線に中目黒駅から乗じ込んだ白マスクの男が、サリンを持ち込んだ犯人の1人である可能性が強まったとして、男が乗っていた車両の乗客からの聞き取りを徹底する一方、中目黒駅と男が降りた同線恵比寿駅周辺での足取り捜査に全力を挙げている。
 またサリン被害が日比谷、丸ノ内、千代田の3路線5車両に及び、マスクの男以外にも不審な男が目撃されており、捜査本部は複数の犯人像の特定を急いでいる。
 マスクの男に関するこれまでの目撃証言を総合すると、身長170−175a、で中肉。顔半分を覆うほどの白いマスクに太い黒縁の眼鏡を掛け、明るい紺色のハーフコートを着ていた。
 男は20日午前7時59分中目黒発東武動物公園行きの先頭車両に乗車。進行方向左側の一番後ろのドアから乗り込み、すぐ左隣の席に座った。
 電車が走り出して1、2分後、男はかばんの中から約20a四方の角張った新聞紙の包みを取り出した。電車は当時「立ってゆったり新聞を読めるほど」(乗客)で車内にゆとりがあった。男は両足の間に新聞包みを置き、包みを放置したまま次の恵比寿駅で降りたという。
 目撃した女性は「男が降りた後、新聞紙の周囲に無色透明の液体がドーナツ状ににじみ出て、六本木駅に着いた時にはさらに広がり、乗客は吐き気や日の痛みを訴えてパニックになった」と話している。
 このほか日比谷線小伝馬町駅では、車両からサリンの新聞包みをホームにけり出した男や、その後でホームから逃げ出した男ら複数の不審な男が目撃されており、捜査本部が確認を急いでいる。(京都新聞)
■新たに判明した死者
 地下鉄サリン事件による22日までの新たな死亡者は次の通り。(敬称略) 菱沼恒夫(51)=埼玉県大宮市▽中越辰雄(54)=千葉県木更津市▽堀安雄(76)=東京都品川区▽藤本武男(64)=埼玉県越谷市(京都新聞)
■駅ロッカーから短銃 松原署に電話で予告
 22日午前10時20分ごろ、松原署に40歳代の男性の声で、短銃を京都市東山区の京阪三条駅のロッカーに置いておく、という内容の電話があった。署員が調べたところ、京阪三条駅構内のロッカーで、紙袋から短銃2丁と実弾10発が見つかった。松原署の調べによると、短銃はブラジル製回転式短銃38口径1丁と、改造とみられる22口径1丁。実弾10発のうち5発は、22口径の短銃に込められていた。(京都新聞)
■阪急神戸線 夙川−岡本間 来月7日に再開 JRは28日から走行試験
 阪急電鉄は22日、阪神大震災で不通となっている神戸線の夙川−岡本間(5.1`)を4月7日始発から運転再開すると発表した。これで、同線の不通区間は、高架橋が落下した西宮北口−夙川間(2.7`、復旧は8月末)と、住吉川の土止め用の壁が崩れた岡本−御影間(2.2`、同7月中旬)の2区間になる。夙川−岡本間の運転再開で、阪急の全84駅が営業を再開することになる。
 計画によると、夙川−岡本間は普通電車だけの運転で、12−20分の運行間隔。西宮北口−御影間で運転中の鉄道代替バスは、引き続き同じコースで運転する。
 JR西日本は22日、阪神大震災で不通となっている東海道線の住吉−灘間、山陽新幹線の新大阪−姫路間の復旧工事が27日までに完了する、と発表した。電車を走らせて修復した高架橋などの強度を調べる自主試験を、東海道線は28、29日の2日間、山陽新幹線は29日ごろから約1週間の予定で始める。
 JRの計画によると、東海道線は通勤電車よりも重い1両約95dの電気機関車を2両つなげて住吉−灘間を時速15−80`で数往復する。山陽新幹線は「ひかり」や「のぞみ」型車両を使って、同30−270`の走行を繰り返し、高架橋の変化などを検査する。この自主試験で安全が確認でき次第、運輸省の鉄道施設耐震構造検討委員会(松本嘉司委員長=東京理科大数授)に、最終検査となる「開業前検査」を要請する。これに「合格」して、運転再開となる。
 同委員会の検査日程や試験結果にもよるが、東海道線は早けれは3月31日にも、山陽新幹線は4月10日前後にも全線で運転再開となる見通しだ。(朝日新聞)
■鉄道用周波で交信 木津署、2人を聴取
 鉄道事業用無線の周波数で不法に交信していたとして、京都府警生活安全特捜隊と木津署などは23日、電波法違反(不法開設)の疑いで、京都府綴喜郡井手町のトラック運転手(26)ら2人を調べた。
 調べでは、2人は昨年8月ごろから、改造した無線機を大型トラックに取り付け、阪急電車の緊急連路用の無線の周波数で交信していた疑い。2人はアマチュア無線の免許を持っているが、鉄道事業用無線の周波数は使えない、という。(京都新聞 夕刊)
■安全地帯に激突 会社員ら2人死亡
 23日午前1時半ごろ、京都市山科区日ノ岡堤谷町の府道で、伏見区下鳥羽浄春ケ前町、会社員白井敬人さん(23)の乗用車が、京阪電鉄京津線日ノ岡駅のコンクリート製安全地帯(高さ85a、幅67a)に激突、白井さんは胸などを強く打って即死、助手席の伏見区小栗栖森本町、工員田村政博さん(25)も頭などを打って約1時間後に死亡した。(京都新聞 夕刊)
■ホームに衝突 男性2人死亡 京都・山科
 23日午前1時40分ごろ、京都市山科区日ノ岡堤谷町の府道で、京都市伏見区下鳥羽浄春ケ前町、会社員白井敬人さん(23)運転の乗用車が、路面上にある京阪電鉄京津線日ノ岡駅のコンクリート製ホーム(高さ85a)に激突。白井さんと助手席に乗っていた友人の同市伏見区小栗栖森本町、会社員田村政博さん(25)が、胸や頭を強く打ち、死亡した。
 山科署の調べでは、現場は直線で、白井さんが前をよく見ていなかったらしい。(朝日新聞 夕刊)
24日■東海道線1日にも復旧 30日から新幹線も検査
 運輸省の松尾事務次官は23日午後の記者会見で、阪神大震災のためJR東海道線で唯一不通となっている住吉−灘間について「30、31日の運輸省による開業前検査で合格すれば、4月1日にも復旧が可能だ」との見通しを示した。
 また次官は京都−新大阪間で時速120`の徐行運転をしている東海道新幹線についても、同じ日程で検査を開始、問題がなければ170`運転に移行する、としている。ただ新大阪−姫路間が不通となっている山陽新幹線については「もうしばらく状況をみる必要がある」と述べるにとどまった。(京都新聞)
■線路侵入男性ひかれて即死 向日市のJR
 23日午前11時46分ごろ、向日市上植野町堀ノ内、JR東海道線掘ノ内踏切北約100bで、男性が富山発大阪行き特急雷鳥にひかれ即死した。
 向日町署の調べでは、男性は直前に線路内に入って寝ころんだという。年齢40−50歳、身長165aぐらい。
白髪交じりの5分刈りで、服装はブルーや茶色など迷彩色調の長そでポロシャツ、紺色のトレパン。
 雷鳥が現場で21分停車し、後続の9本も22−3分遅れて約3500人の乗客に影響が出た。(京都新聞)
■JR東海道線 来月1日に全通へ 住吉−灘が復日見通し
 運輸省の松尾道彦事務次官は23日の記者会見で、阪神大震災で住吉−灘間が不通となっているJR東海道線の復旧について「開業前検査を30、31日に実施する予定で、4月1日開業の可能性が出てきた」と述べた。JR西日本の梅原利之常務・鉄道本部長も「4月1日から震災前のダイヤで運転を再開したい」との見通しを明らかにした。
 これまでの計画では、JRが自主検査で復旧区間の高架橋の強度などの安全性を確認後、同省に対して最終検査にあたる開業前検査を要請、そこで「合格」となれば運転再開するとしていた。この日、両者間で試験日程の調整がついたことから、「すべての検査で安全が確認できれば」という条件付きながら、運転再開予定日の発表となった。
 運転再開後のダイヤについてJR西日本は、東京−九州間の寝台特急などは今後JR各社と調整するものの、京阪神地区の通勤・通学電車は直ちに震災前のダイヤに戻す。また、駅ビルが壊れた神戸市灘区の六甲道駅は仮駅舎での営業になるという。
 阪神大震災でJR東海道・山陽線は高槻−姫路間が不通となった。その後、東西から復旧工事を進め、高架橋が落下したり駅が崩壊したりした住吉−灘間(4.5`)が「最後の難所」となっていた。この間、利用者らは鉄道代替バスの利用や播但線、福知山線などのう回ルートでの通勤・通学を余儀なくされたほか、企業もJR貨物の輸送力低下などによって大きな打撃を受けた。(朝日新聞)
■震災が響き 低額の回答 JR西日本
 今春闘でJR西日本は23日、組合側に回答を示した。阪神大震災で来年度は業績が悪化する見通しとなっていることから、賃上げは、昨年実績より約2400円ダウンの9800円(定昇込み、2.95%)、年間ボーナスも同0.35ヵ月低い5.25ヵ月分にとどまった。(朝日新聞)
■震災の街で支え合う お客さん動き街に活気 鉄道の重大な使命を実感 阪神電鉄の御影駅長 箕浦幹也さん(28)
 駅周辺の様子や乗降のお客さんを見ていると、だいぶん落ち着いてきたようです。まだ大変な状況なんですが、少しずつ震災前に戻りつつあるなあ、と感じています。
 震災後しばらくは、御影駅の周りに人は見られず、シーンとしてました。大阪・梅田からの電車運行がのびてきたのは、青木駅までが1月26日、御影駅までが2月11日。みなさんの歩かれる距離が少しでも短くなってよかった、と思いました。お客さんの動きとともに、街も活気を取り戻して生き返ってきました。鉄道は重大な使命を持っているんだ、と改めて実感しましたね。
 リュックを背負い、両手に大きな荷物を提げ、カートを引くお客さんは減りました。女性でもジャンパーやズボンの人が多かったのに、スカートやスーツの勤務姿が増え、色彩も明るくなったようです。夜も長くなって、お酒を飲んで帰ってくる人もみられるようになりました。
 御影駅の管区内には深江−西灘間の9駅があり、約40人いる駅員の半数ほどは家に被害を受けました。まだ避難所や仮設住宅から通勤している駅員もいます。
 震災が起きた時は、京都市の自宅にいて出勤する前でした。かなり揺れ、テレビをつけたら震源は兵庫県。すぐ駅に電話を入れ、駅に止めてあった回送電車が脱線したけれど、駅舎は大丈夫と知りました。当日は大阪までしか行けず、翌日早朝に甲子園駅まで運転を始めたので、甲子園から駅員のバイクを借りて御影に向かいました。途中のひどい景色には驚きました。
 一番大変なのは、電車の不通区間の代替バスの運行です。電車は時間が決まっていますが、バスは道路の渋滞があり、乗り換えにも時間がかかります。「バスをもっと出せ」「電車を早く開通させんかい」などの苦情も聞きます。できるだけ不便をおかけしないように、一生懸命やっているんですけれど…。
 一日でも早く電車が全線復旧して、お役に立ちたい。ホームに立つと、いつも見かけたお客さんに戻って来てほしい。そんな願いが強いですね。(朝日新聞)
■神戸市営地下鉄 全駅が利用可能に 上沢駅も31日から営業
 神戸市は23日、阪神大震災で閉鎖している市営地下鉄上沢駅(神戸市兵庫区)の仮営業を31日始発から始めると発表した。これで、市営地下鉄は2ヵ月半ぶりに全駅が利用可能になる。
 上沢駅は震災で駅舎部分やホームの天井を支える鉄筋コンクリートの柱94本が壊れた。市交通局は当初、営業再開は4月中旬になるとしていたが、柱の応急修理を急ぎ、仮設のトイレや事務室をつくって、仮営業ができるまでにこぎつけた。31日以降も復旧作業は続けるため、4ヵ所ある出入り口のうち利用できるのは当面2ヵ所に限られる。
 市営地下鉄では、三宮、新長田両駅も仮営業中。市交通局によると、上沢駅を含めて全線が本格的に復旧するのは今秋になる見込みという。(朝日新聞)
■叡電平均14.9% 値上げ認可 1日から実施
 近畿運輸局は24日、叡山電鉄(本社・京都市左京区)が申請していた叡山本線と鞍馬線(計14.4`)の旅客運賃の値上げを認可した。値上げ幅は平均14.9%で、4月1日から実施される。
 今回の改定で、1区間(初乗り)運賃は現行の170円から200円になり、普通運賃(定期外)は15.1%の値上げ。この結果、出町柳−八幡前が250円(現行220円)、出町柳−市原360円(同320円)、出町柳−鞍馬400円(同350円)などとなる。定期の平均割引率は、通勤が46.3%(現行46.9%)、通学64.2%(同63.7%)。
 同社は91年11月に平均10.7%の値上げをしたが、新車両の導入など鉄道輸送施設の近代化のための設備投資が92年度から4年間で14億円を超え、現行運賃のままだと95年度には鉄道事業で1億3500万円の収入不足に陥るとし、2月に値上げ申請していた。(京都新聞 夕刊)
■私鉄大手、9950円で決着 阪急・阪神除く 春闘ヤマ場越す
 関東ブロック4社(営団地下鉄、東武、東急、京成)と関西ブロック3社(京阪、南海、近鉄)に分かれて集団交渉をしていた私鉄大手各社の経営側は24日未明、組合側に9950円の賃上げ回答を示し、私鉄総連もこれを受け入れた。私鉄総連をはさんで個別に交渉していた京浜急行、京王帝都、相鉄、名鉄、西鉄も、それぞれ同額の回答で決着した。これにより、異例ずくめだった今春闘はヤマ場を越え、焦点は中小企業や郵政、林野など国営企業の賃上げ交渉に移る。
 9950円は、昨年実績の1万1400円に比べ1450円低い。率では組合員平均で3.38%になり、1967年に中央集団交渉が始まって以来の最低だった。
 昨年実績を目指した組合側は、同じ公益産業の電力の回答が昨年より600円低かったことを参考に、最低でも1万円台に乗せるよう主張。これに対し経営側は、運賃値上げを申請していることもあって、金属大手など他産業より「突出感」がある1万円台乗せに強い難色を示した。額はNTTの「昨年比マイナス1500円」回答を当てはめた9900円を上限と想定していたとみられる。
 結局、経営側は、組合側がストライキを設定しなかった点に配慮して、「上限」に50円上積みした格好。
 震災で大きな被害を受けた阪神、阪急の両社では、復旧を優先し、交渉を今後に持ち越している。残る中小組合は、一部が30日にストを設定して、27日に回答を追っている。(朝日新聞 夕刊)
■山陽新幹線新大阪−姫路 来月10日ごろ開通
 阪神大震災で新大阪−姫路間が不通になったままになっているJR山陽新幹線について、亀井静香運輸相は24日の閣議後会見で、4月10日ごろに営業再開できる見通しを明らかにした。9ヵ所にわたって落下した高架橋の支柱に鉄板を巻く工法で復旧を進め、今月中にはほぼ工事が終わる予定だった。
 亀井運輸相は「運輸省の検査が4月4日か5日ごろから4、5日間ある」とした。運輸省によると、これに合格すれは営業再開できるという。鉄板を巻いた工法で阪神大震災級の地震に耐えられるかについては、3月29日に運輸省鉄道施設耐震構造枚討委員会が発表する中間報告で明らかになるという。(朝日新聞 夕刊)
■叡山電鉄 来月1日から 14.9%値上げへ
 運輸省近畿運輸局は24日、京都市内を走る叡山電鉄(出町柳−鞍馬、八瀬遊園間)から申請されていた平均14.9%の運賃値上げを認可した。叡山電鉄は4月1日から実施する。
 主な区間の改定運賃は、出町柳−修学院間200円(現行170円)▽出町柳−八瀬遊園間250円(同220円)▽出町柳−二軒茶屋間310円(同270円)▽出町柳−鞍馬間400円(同350円)(朝日新聞 夕刊)
25日■山陽新幹線 10ごろ再開へ
 運輸相は、現地の検査に先立ち29日に、鉄道施設耐震構造検討委員会が補強内容などを盛り込んだ中間報告を発表することも明らかにした。
 亀井運輸相は24日の閣議後会見で、阪神大震災で新大阪−姫路間が不通になっている山陽新幹線の復旧について「30日からJR西日本が営業用車両による走行実験を開始し、その結果が良好安全なら、4月4日か5日ごろに運輸省が検査に入る。私も現地へ行き検査状況を見る」と語った。
 運輸相はまた「検査期間は4、5日かもっとかかるかもしれないが、突貫工事でハイレベルの耐震工事をやっており、早期開通への期待が持てるのではないか」と述べ、4月10日ごろにも営業運転の再開が可能になるとの見通しを示した。(京都新聞)
■京阪に新型車両 パワーウインドーなど内外装一新「7200系」5月登場
 京阪電鉄は、輸送力増強の一環として5月から本線で新型通勤用電車「7200系」の運行を姶める。
 7200系は、川崎重工兵庫工場で計16両が製作され、当初は4月にデビューする予定だった。しかし、阪神大震災のため、工場からの搬出に手間どり、このほどようやく納入が終わった。
 新車両は内外装とも一新され、車窓はパワーウインドー、乗客がスイッチひとつで開閉できる。内側の入り口ドア上部には、路線図上の次駅や現在駅をランプで点滅表示する案内表示器を新設。
 グリーン1色だったシートは、ブルーグリーンとバープルブルーのツートンカラーになり、豪華さを増した。
 当面は、本線の急行と準急用電車として使用される。これに合わせ、6月中旬にダイヤ改正を予定している。(京都新聞)
■地下鉄サリン殺傷 5車両 霞が関駅に”集中停車” 8時10分ごろ照準 3分半の間に次々 官庁職員狙う?
 東京の地下鉄サリン殺傷事件で、サリンが見つかった3路線5本の電車は、すべて8時9分すぎから13分までの約3分半の間に、3路線が交差する霞ヶ関駅に集中して停車していたことが24日までに分かった。実際に被害が出た場所や時間は5車両でずれがあったが、運行はほぼ時刻表通り。同駅付近は、警察庁など中央官庁が集中している上、この時間帯は職員の出勤時間帯に当たることから、警視庁築地署捜査本部は、霞ヶ関駅を標的にした疑いが強いとみている。
 調べによると、サリンが仕掛けられていたのは@北千住発中目黒行き日比谷線A中目黒発東武動物公園行き日比谷線B我孫子発代々木上原行き千代田線C池袋発荻窪行き丸ノ内線D池袋発新宿行き丸ノ内線−の5本。日比谷線と千代田線の計3本は、7時56分から8時2分の間に別々の駅でサリン被害が発生したが、いずれも8時11分から13分の2分間に霞ヶ関駅に到着している。荻窪行き丸ノ内線は8時21分に被害が出たが、同9分に霞ヶ関駅に到着していた。
 一方、8時43分ごろ、本郷3丁目付近で被害が発生した新宿行き丸ノ内線は、8時54分に霞ヶ関駅に到着する予定で、他の4本とは時間帯が異なっていた。しかし、その後の調べで、折り返し運転する前に池袋駅に到着した際、乗車した女性が床に新聞で包まれた不審物を目撃していたことが判明した。このため不審物は折り返し前から車内に置かれた可能性が高く、その場合8時11分に霞ヶ関駅に到着していたことになり、他の4本と同駅到着時間がほぼ一致する。
 また15日にも、霞ヶ関駅に仕掛けられた不審物から水蒸気が噴出する事件が起きており、捜査本部はグループが霞ヶ関駅を狙った可能性が高いとみている。(京都新聞)
■落下原因が未解明で 橋げた再使用は不安 全面復旧早まる山陽新幹線 安全大丈夫か
 阪神大震災で高架橋が落下するなどの被害を受けた山陽新幹線が、4月10日ごろ全線開通する見通しとなった。JR西日本が復旧の時期を一時「6月上旬」、それも「仮復旧で」と説明していたことを思うと、工事は驚異的なペースで進んだことになる。東海道・山陽新幹線と東海道線の分断の影響で多くの企業が赤字に転落し、改めてその重要性を認識させただけに、早期復旧は歓迎すべきことだ。しかし、最高時速270`で走る高速鉄道の安全対策は万全なのだろうか。斎藤博明(社会部)
 今回の震災で、山陽新幹線は新大阪−姫路間の高架橋が8ヵ所で落ちた。この区間では約5200本の橋脚や支柱のうち、700本以上が折れたり亀裂が入ったりした。おまけに、壊れた橋脚からは木片や発泡スチロールが出てきたり、海砂の使用による腐食、橋げたと橋脚の接合部の強度不足が明らかになったりと、無事である橋脚や支柱にも「手抜き工事」や「施工ミス」があるとの凝念を抱かせる指摘が、土木学会関係者らから相次いだ。
 震災直後、運輸省は学識経験者らで「鉄道施設耐震構造検討委員会」を組織した。JR西日本の復旧工事は、同検討委が承認した工法によって進められており、再び同規模の地震に見舞われても崩れないようにと、支柱に鉄板を巻くなどの措置が施されている。
 JR西日本も「安全は我々がだれよりも願っている。工期は社員の頑張り、JR各社からの応援などで短縮できたが、それで安全が損なわれるようなことは断じてない」(梅原利之・常務取締役鉄道本部長)と話す。
 一刻も早い復旧は鉄道マンの使命だと、JR社員が不眠不休で工事を進めてきたことは10分承知しているし、信頼もしている。だが、運転再開にあたっては、JR西日本は利用者や沿線住民に対して説明会を開くなどして、どう対策を講じたのかを改めて明らかにする必要があると思う。いくら運輸省のお墨付きがあっても、「安全です」の一言で再開するのでは市民の不安は消えず、「拙速」とのそしりを免れないだろう。
 そもそも、「なぜ、高架橋が壊れ、落ちたのか」という根本的な疑問は解決していない。
 例えば、兵庫県尼崎市の高架橋落下現場。周辺の民家の多くが無事だったのに、高架橋だけが崩れ落ちた。JR西日本の井手正敬社長は震災直後、「阪神大震災は、無駄遭いと批判されながらも200%安心なものを造ってきた国鉄の経験を、軽々と超えた」と話した。
 確かに震度7はすさまじい破壊力だった。だが、尼崎市の高架橋落下には別の理由があるはずだ。
 被災地の沿線住民の間には、「落下した橋げたを再使用して大丈夫か」との不安や、「姫路−博多間にも手抜き工事があるのではないか」との凝問があるのは事実だ。早過ぎる復旧は、株式上場に向けて利益確保に懸命なJR西日本の姿勢に絡んで、利用者の不安を募らせているようだ。
 「再使用」についてJR西日本は「極めて常識的なやり方」と説明するが、一般的には、落ちたものを再び使うということに、やはり抵抗があるだろう。「手抜き工事」とみられる個所が見つかった以上、不安が復旧区間にとどまらないのも確かだ。
 耐震強化策として支柱に巻かれた鉄板にも凝問がある。運転再開までにはJR西日本、運輸省による実車走行試験が実施される予定だが、仮にこの試走や運転再開後に支柱に亀裂が発生した場合、どうやって発見、補修するのか。土木関係者に「素人の質問ですが…」と尋ねたら、笑われるどころか同じ擬問を抱いていたのには驚いた。
 JR西日本は、今後の地震対策についても積極的に取り組んで欲しい。同社は1997年3月までに、山陽新幹線全線の高架橋約7000ヵ所を対象に橋げたの落下防止の工事を施すほか、来年1月から、地震の揺れ始めの微動を感知して列車を減速、停止するシステムを稼働させる計画だ。今回の地震を教訓にした対策であり、速やかな対応は評価できる。
 ただ、被害がなかった区間の高架橋をはじめ、「盛り土」や「切り取り」と呼ばれる路盤が土の区間の対策、阪神大震災で地上局が壊れて通信不能に陥った列車無線の対策など、課題は山積している。
 大規模事故が起きた際の負傷者の救出などを定めた対応マニュアルも信楽高原鉄道事故後に作られたが、大地震対応や社員教育という面では十分とはいえず、見直しが必要だろう。
 JR西日本の幹部らは「運輸省の指導の下で地震対策を進める」と繰り返すが、新幹線を運行し、乗客の命を預かっているのはJR西日本にほかならない。「被災者」であるJR西日本の一連の対策は、東海道、東北、上越の各新幹線や在来線の地震対策として役立つだけに、復旧工事に向けた以上の熱意を期待したい。(朝日新聞)
■地下鉄サリン入り容器 当日付けの朝刊で包む 販売地域特定急ぐ
 東京都内の営団地下鉄の電車内に20日朝、猛毒のサリンがまかれて多数の死者と重軽掟者を出した事件で、サリン入り容器を包んでいたのは事件当日の読売新聞朝刊だったことが25日、警視庁築地署の捜査本部の調べで分かった。捜査本部は、配達、販売地域の特定を急ぐとともに、当日付の新聞を使った意図を解明し、犯人グループに迫りたいとしている。
 サリンが入った容器は、日比谷、丸ノ内、千代田の3線、計5本の電車から各1個見つかり、このうち2個が新聞に包まれていた。危険なため、押収後は何重にもなったビニール袋に入れられている。このビニール越しに見た活字の特徴や記事の内容などから、いずれも読売新聞の20日付朝刊とわかった。
 新聞は、印刷と酎達時間の関係から地域によって内容が少しずつ異なり、紙面を詳しく分析すれば、配達地域をある程度絞り込める。まだ、ビニール袋から取り出していないため、家庭に配達された宅配の新聞か、駅売りかの区別は分かっていない。
 捜査本部は、宅配の新聞を使った場合、地域を特定されるため、犯人グループは、駅などの売店で売られている新聞を使った可能性が高いとみて、駅売店での聞き込みを続けるとともに、目撃情報の提供を呼びかけている。また、捜査本部は、事件当日の新聞を使った犯人グループの意図に関心を示している。サリンの製造や運搬などからみて、以前から準備された犯行とみられるのに、包む新聞を当日にした理由は何か。そこに、犯人グループの犯行声明のような狙いが隠されていないかどうか、新聞の内容を分析している。
 都内で配られた読売新聞の20日付朝刊の主な見出しは、1面トップが「知事選『災害対策』を重視」で「シンガポール首相の訪比延期」など。社説は「先進国といえぬ水道の防災化」「美術館は『記念碑』ではない」。社会面には「山口氏親族の企業群資金調達の”中核”判明」「オウム真理教大阪支部を捜索」などがあった。(朝日新聞 夕刊)
■「鉄道運賃にも上限価格制を」 運輪相が検討表明
 亀井静香運輸相は24日の閣議後の記者会見で、鉄道運賃の設定方式について「いわゆるプライスキャップ制度(上限価格制)を導入する方向で、運賃改定の仕組みを思い切って見直したい」と述べた。鉄道会社の値上げ申請を受けて同省が運賃を認可する現在のやり方を部分的に変えて、3年程度先までの運賃の上限を示すことで、鉄道会社が弾力的に運賃を決められる方式を軸に検討する。
 政府の規制緩和の目玉として、与党内でプライスキャップ制度の導入論が高まっているのに対応した。3月末に出す政府の規制緩和推進5ヵ年計画に見直し方針を盛り込み、5月末までに運輸省としての具体案をまとめる。(朝日新聞)
■私鉄大手は9950円の賃上げ
 私鉄大手各社の経営側は24日未明、組合側に9950円の賃上げ回答を示し、私鉄総連もこれを受け入れた。昨年実績より1450円低い。今春闘はこれでヤマ場を越えた。(朝日新聞)
■JR亀岡駅−馬堀駅 京都交通がバス運行 来月5日から
 京都交通(本社・亀岡市)は24日、JR亀岡駅前から同馬堀駅前までの新路線「亀岡市内馬堀線」を4月5日に開通すると発表した。1日の運行回数は亀岡駅前−馬堀駅前間が往復8便、西つつじケ丘発馬堀駅前行きが5便(日祝日4便)、馬堀駅前発西つつじケ丘行きが11使(同10便)。馬堀駅前のほか、新たに設置された停留所は広田、都台、森、アルプラザ前、広道、スピンドル前。(朝日新聞)
■阪急桂駅トイレで 短銃と実弾を押収 通報受けて桂署
 桂署は24日、西京区の阪急桂駅構内のトイレから短統1丁と実弾2発を押収した、と発表した。
 調べによると、短銃は長さ30a、直径1.5aの棒状の改造銃でタオルに包まれていた。午前8時半ごろ、同署に30歳くらいの女性の声で「主人が暴力団をやめることになった。鉄砲と弾を阪急桂駅のトイレに置いたので処分して」と電話があり、捜査員が男子トイレの給水タンクの上に置かれているのを見つけたという。(朝日新聞)
26日■松本・地下鉄・上九一色村 3事件のサリン同一 警視庁など断定
 東京の地下鉄サリン殺傷事件で、警視庁などの捜査当局は25日までに、地下鉄で使われたサリンは、長野県松本市で発生したサリン事件(昨年6月)と山梨県上九一色村のオウム真理教施設周辺で起きた悪臭騒ぎ(同7月)の2件で使われたサリンと同一と断定した。地下鉄、松本、山梨3事件の現場の残留物をガスクロマトグラフィー(成分分離器)などで鑑定した結果、複数の有機リン系化合物の成分の構成比が一致した。同じサリンと判明したことで、3つの事件は同一グループによる組織的な連続薬物事件の可能性が出てきた。
 上九一色村にあるオウム真理教施設の一斉捜索で、サリン生成に必要とされる原材料物質が見つかっており、警視庁は施設を検証、押収物から残留物の検出を急ぎ、3事件との関連を調べている。
 警視庁築地署捜査本部の調べによると、地下鉄サリン事件の現場では、不審物を包んでいた新聞紙や車内の空気などから、サリンのほか、サリンの副生成物の有機リン系化合物「メチルホスホン酸ジイソプロピル」が検出された。松本の事件でもサリンと、同じ副生成物が検出されている。
 地下鉄の事件では、これに新たに、メチルホスホン酸に塩基が加わった有機リン系化合物が複数見つかった。サリンの生成過程で残った物質や不純物とみられる。
 これらの化合物は松本のサリン事件現場や、上九一色村の悪臭現場でも周辺の土壌から採取されていた。
 ガスクロマトグラフィーの鑑定では、これらの化合物の種類や構成比率が一致。
 このため捜査本部は、サリンの生成方法と原材料が同一と断定、さらに詳しく分析するため自衛隊の専門機関で最終的な鑑定を急いでいる。
 一方、東京の目黒公証役場事務長拉致(らち)事件で、警視庁が家宅捜索した上九一色村のオウム真理教施設から、サリンの生成に必要な「三塩化リン」「フッ化ナトリウム」「イソプロピルアルコール」が大量に見つかった。
 サリンが検出された悪臭騒ぎがあったのは、同施設のすぐ近くで、捜査当局は一連のサリン事件と、オウム真理教施設の関連についてさらに捜査を進めている。(京都新聞)
■JR六甲道仮駅 開通に備え券売機設置
 阪神大震災で不通になっているJR東海道線の住吉−灘間(4.5`)のうち最も被害の大きかった六甲道駅(神戸市灘区)で25日、仮駅舎の構内に券売機8機が設置された。
 線路や架線の調整、信号関係のチェックなどの仕上げ作業が26日中にすべて完了。4月1日の全線開通に向け、実際の車両を走らせるJR西日本や運輸省の検査を待つばかりとなる。
 六甲道駅は震災で高架下の駅舎が倒壊。同駅周辺の高架部分約2.2`のうち約1`が復旧工事の最難関として最後まで残っていた。JR西日本は、同駅周辺の倒壊した高架をジャッキやクレーンで持ち上げながら支柱を復旧する特殊な工法で、損傷した支柱約920本を帯鉄筋の量を増すなどして補修。損傷のなかった約40本も鋼板を巻くなど補強した。
 仮駅舎は従来の駅のホームをそのまま使い、元の位置に復旧した。(京都新聞)
■消えぬ恐怖首都厳戒 ごみ箱すべて撤去 不審物届け出続出 「爆発物」と脅迫電話 乗客は1割減 地下鉄サリン事件から1週間
 死者10人、重軽症者約5500人。かつてない犯罪による大惨事となった東京の地下鉄サリン殺傷事件から26日で1週間。首都・東京は不審物発見の通報でパトカーが走り回るなど依然、事件の恐怖が色濃く残る。山梨県上九一色村の教団施設内からサリン原材料が大量に押収されたオウム真理教との関係はあるのか−。「不安を取り除くには事件解決が一番」。警視庁は地下鉄駅に残された新聞紙で包まれたサリン容器などを自衛隊の専門施設に持ち込んで鑑定を進め、懸命の捜査を続けている。
 日比谷、丸ノ内、千代田の3路線、5車両にサリンが仕掛けられた営団地下鉄は、不審物を入れられないよう8路線148ヵ所の全駅で、すべてのごみ箱を撤去、乗客に注意を促す車内アナウンスを頻繁に流している。
 駅構内や車内での不審物発見の届け出も相次ぎ、事件翌日には、銀座線車内でぬれた新聞紙に包まれた荷物を発見。運行を中止し、車庫で新聞紙を開いた結果、中から生魚が出てきたこともあったという。
 職員は「爆発物を仕掛けた、という脅迫電話は5−6件に上っている。ラッシュ時はふだんと変わらないが、全体で1割ほどの客が減っている」と話す。
 事件以来、不審物が見つかったという110番は1日10件。うち2、3件は爆発物処理班が出動する。普段、出動は月1、2回なので異例の多さ。住民の恐怖をうかがわせる。
 事件は、昨年の松本サリン事件をきっかけに警視庁機動隊が約60個の防毒マスク、防護服を導入した矢先に発生。鉄道の各駅で警戒に当たる鉄道警察隊は25日までに、100個を急きょ配備した。
 警視庁はサリンが包まれていた新聞紙や床にこぼれた液体を現場から採取、ビニール袋に密封して保管していたが、同庁の科学捜査研究所内で開封すると、サリンが庁内に拡散する恐れが予想された。このため化学兵器に対する防護策を研究、有毒ガスや排水を処理する施設を備えた陸上自衛隊化学学校(埼玉県大宮市)に証拠品を持ち込み、含有成分の鑑定を進めている。
 サリンが仕掛けられた電車は、いずれも官庁街を抱える霞ヶ関駅をほぼ同時刻を通過していた。捜査当局をはじめ、中央官庁街を標的にした可能性もあるとして、警視庁は各官庁に警備強化を要請した。(京都新聞)
■声 戦後50年 国鉄民営化
・債務完済などなお多い難問 笠岡市 山下 坦(無職63歳)
 NTTに続いて、国鉄民営化も大成功で、年間2兆円以上の赤字をたれ流していたものが、JRに変身したら黒字経営になり、サービスも格段に良くなった、などという評価が定着しているようだ。
 しかし、大きなマジックがあって、私には、にわかに信じ難い思いである。
 20数兆円という気の遠くなるような巨額の累積債務を、清算事業団に肩代わりさせてその利払いを免責、数万人の職員の強制に近い解雇、他の国家公務員に、国鉄共済年金への救済をさせるなどの荒療治の結果、わずかの黒字が出たからといって、民営化をはやす大合唱はおこがましい限り、と言いたいのである。
 現に難航している株式の発行が完了し、新幹線や、不用資産の処分収入によって、国民の税負担に頼ることなくばく大な債務を完済したとき、国鉄民営化は幕引きと言えるのではないだろうか。
 そのうえ、多額の基金による利子収入が経営の大きな支えになっている北海道、四国、九州などの財務体質が改善されない限り、JR礼賛論にくみすることはできない。
 建設が進んでいる新線の未来も定かではなく、阪神大震災での減収や、復旧費が更なる苦難として大きくのしかかってきている。どのように克服するのか見守りたい。
・国労つぶしに的絞って強行 東京都 鈴木市蔵(元国労副委員長 84歳)
 国鉄は日本が誇りうる文化であった。そう言える哲学があった。この民族的遺産を分割民営化は打ち壊した。大きな損失である。
 国鉄の良さは国民の国鉄だという安心感からきている。北海道から九州の果てまでローカル線を一筋のレールでつなぐきずなが、おのずと国土愛を生み培ってきた。分割民営はこの国土愛まで切り売りした。
 国鉄は戦後の一時期を除いて1964年までは黒字であり国庫に納入までしていた。それが赤字経営になったのは国鉄の責任ではない。経済の高度成長のために奉仕させられた貨物運賃政策と、東海道新幹線の建設費の全負担を押し付けられたからであった。
 この政策的な戦略は分割民営への布石であった。同時に、この戦略は、国鉄労働組合つぶしに的を絞った。「国鉄労使国賊」論などが公然と暗えられマスコミの多くも同調した。この強権的な包囲網の中で分割民営は強行された。
 不当労働行為は全国的に横行し労働者の人権は無視された。いまでも千余人の解雇者の行方は放置されたままである。分割民営化の問題が起きたときから、反対の闘いを続けているのは国鉄労働組合だけである。国鉄人の根性をそこに見るのは私だけではないであろう。
・信頼した国労 退職し心に穴 綾部市 野間和江(会社員 47歳)
 多くの自殺者を出し、国鉄労働者の心を荒廃させ、1987年春、国鉄は分割、民営化された。
 民主国家とは信じ難いあらゆる手を使って、加入組合によるJR社員への雇用差別のあらしが吹き荒れ、まさに断腸の思いで毎日、国鉄労働組合からの脱退者の数を目にしていた。
 私は、日本の労働運動の中核をなす労組としての役割を担っていた(と信じていた)国鉄労働組合で働く書記労働者であった。
 大きな組織にドッカリとあぐらをかいたような一面があったとはいえ、結構幅広く、社会党一党支持だったものの、結果的に政党支持は自由。文化、スポーツ活動もそれなりにやり、平和思考で、私はそんな国労で働くことに誇りと揺るぎない信頼を寄せていた。
 それがJR社員への雇用差別のあらしの中でもろくもガタガタと組織は切り崩され、一時は20万人を超える労働者を擁した国労は3万組織に激減し、書記労働者の多くが退職を余儀なくされた。
 むなしさと無気力感。中年女性の失業はお決まりの一本道で、貧窮と将来の不安感とでポッカリ開いた心の穴は年ごとに大きくなっていく。
 「とんでもない人生にさせてしまって」と言ってくれた脱退した組合員の顔も懐かしい春がきた。
・駅の無人化で町の顔寂しく 広島市 吉光義雄(無職 70歳)
 国鉄の民営化によって、従業員の乗客に対するサービスが向上したことは評価できる。
 民営化以前の従業員は、軍国主義時代の軍人の感があって、旅客に対し主客転倒の有り様だった。旅客として尋ねたいことがあっても、従業員がひどく厄介視するから遠慮しなければならないほどだった。その点は民営化によって、大きく改善された感がある。以前のように、びくびくしながら物を尋ねる必要がなくなった。それどころか、この従業員は親切だなあと思うこともしばしばである。
 ただいけないことに、会社側が民営化について心得違いをしていないかと感じることはある。私が利用している路線でも、駅の無人化や乗務員のワンマン化が進んだ。本来会社側ですべきことを乗客の手に移したと感じることが多い。乗客にセルフサービスの面を増やすことが民営化であったのかと苦笑させられる。
 それでも運賃は安くならず、駅の無人化により駅前は寂しくなった。駅前はその町の顔だったのにと思うと、無人化が町の発展を阻害しているようである。
・トイレは清潔 応対も親切に 東京都 斎藤良子(主婦 53歳)
 人の集まるところの中心に駅がある。にぎやかな人声や電車の騒音は、何となく生きた生活環境と安らぎを与える。民営化後、乗せてやる国鉄から乗ってもらうJRに少しずつその資を変えてきたことは喜ばしい。
 変化の一つは、駅のトイレが明るく清潔になったこと。暗く、落書きを消した跡と異臭が漂う場所であったのが、きれいになると使う人にもきれいに使う心が芽生えた結果だ。これは駅が乗り降りするお客さんばかりでなく、集まってくる人たちに楽しんでもらうところだとJRが気がついたからだろう。
 第二の変化は、都内のJR駅の改札口が自動化されたこと。ごく一部の職員の不愉快な態度で国鉄のイメージを壊していたが、民営化後の有人ゲートでの親切な応対は好感が持てる。
 第三は、民営化後運賃の値上げがないこと。公共料金は電話を除くと値上げされるのが当然のように見られるが、民営化後8年たった今、値上げをしないですむことは経営のやり方が上手と言える。これは利用者への最大のサービスだ。
 今後のJRに対するお願いは、電車の遅れや事故が無いことは当然として、運転が乱れたときには車内の乗客に適切な情報を早く伝えてほしいことだ。
・快適さに感動JR九州の旅 大津市 森田 憲一(無職 67歳)
 それは去年の秋だった。同窓会の全国大会参加のため、熊本へ往復鉄道旅行をした。澄みきった秋空の下、西九州路を快適に列車は走った。きれいな車内、親切な客室乗務員、ただただ感心してサービスを受けた。
 帰路、博多で乗り換える直前に「またのご利用を乗務員一同心よりお待ち申し上げております」というアナウンス。普通の言葉だが、妙にジーンときた。
 帰ってからその感動を仲間内のミニコミ紙に書いた。早速反応があり、神戸在住の友が吉野ケ里周遊の折、乗車券を紛失し、JR九州の親切な対応に感激したというエピソードを書き送ってきた。
 民営化された当時、昨日までと打って変わった「おはようございます」「毎度ありがとうございます」という改札口でのあいさつが乗客を戸惑わせてからもう8年。民営化は着実に成果を挙げているように思う。
 何事も慣れたころが怖いという。震災によって安全神話が窮れた今、初心に戻って国民の足としての公共責任を見事に果たして欲しい。
 もう一人の友は、新大阪で乗り換えた際、関西の電車はなんでこんなに汚いのかとつぶやいていた。JR九州と比較してのことだ。車両だけではあるまい。心の込もった、ぬくもりのあるサービスの有無だと思った。
・コスト優先し過疎化に拍車 亀岡市 村山起久子(主婦 35歳)
 当時、政治に無関心だった私は、「民営化されれば、何となくしまりのない国鉄職員が、キリッと背すじを伸はすのではないか」という程度に受け止めていた。しかし、民営化の本質はそれほど単純ではないことに気付いた。
 政府の役割を削減し、市場機構と競争に多くをゆだねれば、無駄なコストは省かれる。収益を生まないものは、容赦なくカットされ、国鉄の場合、過疎地を支えていたローカル線の多くが、廃線に追い込まれた。
 結果は、都市の過密化と村の過疎化を助長し、都市、村ともに、様々な問題を抱えるに至っている。
 市場原理は、何らかの規制を入れないと、ほとんどの場合、弱肉強食で動く。そのために切り捨てられるのは、常に、社会的な弱者である。
 国民の間の格差を広げないため、たとえ赤字になっても、国が責任を持ってしなければならないことはたくさんある。
 国鉄の赤字に対するマスコミの攻撃は激しかったという。最近の”農家への補助金たたき”しかり。国家予算からすれば、わずかな、それらへの出費を削減し、いったい何をしようとしているのか。もっと大切なものが、見落とされているような気がしてならない。(朝日新聞)
27日■山陽新幹線と東海道線 不通区間が復旧 工事が完了 開通間近に
 阪神大震災で不通になっている山陽新幹線・新大阪−姫路間(91.7`)と在来のJR東海道線・住吉−灘間(4.5`)の復旧工事が26日、震災から69日目で完了した。
 運輸省は27、28の両日、両線の復旧個所が指示通り施工されたかを確認。これを受けて、東海道線については28日から、山陽新幹線は30日から、実際の車両などを走らせるJR西日本の自主検査がスタートする。
 同省の開業前検査で最終的に安全が確認されれば、東海道線は4月1日、山陽新幹線は同10日ごろ、全線開通する。
 震災で山陽新幹線は兵庫県西宮市など8ヵ所で高架橋の橋げたが落下するなど、昭和47年の開業以来経験のない規模の被害が出た。
 JR西日本は運輸省の鉄道施設耐震構造検討委員会が示した工法で工事。不通区間の高架橋の柱約700本の損傷部分を継ぎ足すなどして補修、無傷の柱約500本も鋼板を巻き補強した。
 当初、全線開通は「5月の連休明け」としていたが、側壁などにひび割れができた六甲トンネル(全長約16`)の損傷が予想外に小さかったことや、落下した橋げたの再利用が可能になったことなどで工期が大幅に短縮した。
 また六甲道駅周辺の高架部分が約2`にわたって倒壊した東海道線は複線での仮復旧が見込まれていたが、複々線での運転再開が可能になったことで、開通後の早い時期に震災前のダイヤに戻るとみられる。(京都新聞)
■JR復旧工事が完了 再開見通し 東海道線来月1日 山陽新幹線同10日ごろ
 阪神大震災(兵庫県南部地震)による高架橋の落下などで不通になっている山陽新幹線の新大阪−姫路間(91.7`)と、東海道線の住吉−灘間(4.5`)の復旧工事が26日午後、完了した。これを受けて運輸省は27、28の両日、2線の復旧工事が「鉄道施設耐震構造検討委員会」(委員長=松本嘉司・東京理科大教授)の指示通り施工されたかを調べる。
 JR西日本の計画では、東海道線は28日から、山陽新幹線は30日から実際の車両を走らせる自主試験を始める。その後、再び同省による「開業前検査」があり、東海道線は4月1日、山陽新幹線は同10日ごろに全線で運転再開となる見通しだ。
 不通区間の高架橋の支柱などには、耐震力を高めるために厚さ6_の鉄板が巻かれた。この塗装などは今後も実施されるが、復旧工事そのものは阪神大震災から69日目に完了した。
 JR西日本は全線開通のめどを「5月上旬」としていたが、約1ヵ月も工期を短縮した。これについて同社は、JR各社からの応援要員の増加や周辺道路の24時間使用で、当初の予想より材料運搬、大型クレーン車の搬入が順調だったためとしている。落下した橋げたの再使用や、早く乾くコンクリートの使用も効果的だったという。(朝日新聞)
■運輸省 復旧確認を開始 東海道線・山陽新幹線 あすから走行試験
 阪神大震災(兵庫県南部地震)で不通になっていた区間の復旧工事が完了した山陽新幹線・新大阪−姫路間(91.7`)とJR東海道線・住吉−灘間(4.5`)で、27日、運輸省による復旧個所の施工状況の確認作業が始まった。
 震災で損傷した高架橋の柱などについて、同省の鉄道施設耐震構造検討委員会が承認した復旧計画通りに施工されたかを点検するもので、28日まで2日間の日程で行う。
 確認が済み次第、JR西日本は東海道線については28日から、山陽新幹線は30日から実車走行試験などに入る。
 この日の確認作業は、同省鉄道局の担当官ら10人が山陽新幹線の「神崎高架橋」(兵庫県尼崎市)から「下食満(しもけま)高架橋」(同)の間の数個所で、損傷した柱の復旧個所などを中心に実施。
 また、高架部分が約2`にわたり倒壊した東海道線の六甲道駅周辺では、鋼板を巻くなどして補強した柱をハンマーでたたくなどして注入したモルタルの状態を丹念にチェックする。
 28日は山陽新幹線の六甲トンネル内部や新神戸−西明石間の高架橋を中心に行う。(京都新聞 夕刊)
■地下鉄サリン事件後1週間 被害者に心の後遺症 におい・地下鉄「こわい」
 地下鉄サリン事件から、1週間になる。10人が亡くなり、医療機関で治療を受けたのは5000人以上に上った。手当てを受けた被害者の多くが自宅に戻ったが、27日になっても、入院生活を余儀なくされている重症者もいる。都立墨東病院の救命救急センターでも、3人が今も中毒症状や精神的な恐怖と闘っている。
 沢野誠医師(34)は、太田順子さん(23)が運ばれてきた時のことを、鮮明に覚えている。意識がなく、呼吸も止まりかけていた。声を出すことはできない。唇だけが動いた。「た・す・け・て」
 沢野医師は「よっぼど怖かったのでしょう。刺されたり、撃たれたり、これまでたくさんの救急患者を見てきたが、あんな顔は見たことがない」と言う。
 太田さんは今も、入院している。
 事件のあった20日、いつも通り、午前7時すぎに千葉市美浜区高洲4丁目の自宅を出た。勤め先は地下鉄日比谷線東銀座駅に近い日産自動車の本社。京葉線を使い、八丁堀駅で日比谷線に乗り換える。
 前から3両目の車両に乗り込んだ途端、悪臭が鼻をついた。アルコールを連想させる、いやなにおいだった。ドア付近の床がぬれていた。サラリーマン風の男性が、苦しそうに手すりにもたれかかっている。
 ドアが閉まった直後、その男性が背中から倒れた。乗客の一人が非常ベルを押す。次の築地駅に着くと、「救急車!」とだれかが叫んだ。太田さんも意識が遠くなった。オレンジ色のかすみがかかったように感じた。
 電車を降りて、ホームにうずくまった。サラリーマン風の男性が、腕を抱えて階段まで連れて行ってくれたところまでは覚えている。2、3段降りたところで、意識が途絶えた。
 1週間たつ今も、症状が残る。おでこのあたりがひどく痛む。時々、視界が暗くなり、雑誌の文字を読むのがつらい。
 主治医の中山洋医師(28)は「後遺症はほとんどないと思うが、サリン中毒はデータが少ないだけに、不安が残る」と話す。
 そうした症状よりも深刻なのは、精神的な恐怖。太田さんは「ちょっとでもにおいがきついものは食べられない。ご飯もだめです。においがあるだけで、あの時のことを思い出してしまう」。食べられないので、栄養補給の点滴管を、今も抜くことができない。
 退院できても、地下鉄は利用しないつもりだ。「駅に入ることを考えるだけでも怖い。また変なことが起きるのではないか、と」
 最寄りのJRの駅から本社まで、歩けば20分以上はかかる。それでも、地下鉄の恐怖よりはましだと、太田さんは言う。「本当はJRにも乗りたくないんです」24日に、集中治療室から一般病棟に移ることができた。
 東京都墨田区八広2丁目の会社員、児玉孝一さん(35)は今も人工呼吸器をつけたままだ。
 サリンは瞳孔(どうこう)を収縮させるだけではなく、節肉や肺の働きも低下させる。児玉さんは肺水腫を併発している。23日には一時、危篤状態に陥った。沢野医師は「接触したサリンの量がかなり多かったのでしょう」と語る。
 20日午前7時20分ごろ、いつも通り、自宅を出た。勤め先に近い日比谷線神谷町駅へ向かう途中で、事件に遭った。
 母親は「話ができるような状態ではない」と断りながら、「犯人を殺してやりたい。息子は、仕事のために通勤していただけなんですよ」と語った。
 沢野医師は「児玉さんの場合、肺水腫の後遺症で、肺の機能が衰えることが心配だ」と話した。
・ものものしく各駅警戒続く
 死者10人と多数の重軽傷者が出た地下鉄の各駅では、不審者や不審物への警戒を呼びかける構内放送が流れ、警察官が改札口や通路を巡回するものものしさが続いている。27日朝も、通勤客らは不安そうに足を速めていた。
 「不審な荷物はありませんか」。事件の大きな舞台になった丸ノ内、日比谷、千代田の3線が交差する霞ケ関駅では数分間隔で、アナウンスが流れる。午前8時すぎ、丸ノ内線から日比谷線に乗り換える途中のOL渡辺賜買さん(24)は「不安はあっても、毎日の生活のほうが大変。ああいうのは遭っちゃう時は遭っちゃうものだろうから」。外務省勤務の竹内邦男さん(56)は「二度とこんなことが起きないようにしてほしいね」と言う。
 霞ケ関駅はこの日、応援組も加わって普段の倍の100人ほどの職員が出動して、列車内の網棚やホームのいすなどに不審物がないかと警戒した。日本橋駅から応援にきた清宮正啓さん(53)は「何となく緊張しますね。中身のわからない忘れ物は、すぐ警察に渡しています」。
 日比谷線神谷町駅ではこの日朝、いつもと同じくらいの人がホームに降り立った。
 東京都港区内の会社社長三鬼副信さん(60)は20日、事件のあった電車に乗っていた。たくさんの乗客がホームにうずくまる光景を目撃した。
 「先頭車両に乗っていれば、ぼくも被害に遭ったはずだ。罪のない人を殺した犯人を許せない」と話す。
 地下鉄を利用するのは、今でも不安だ。「でも、仕方がない。この駅が会社に一番近いのだから」と話した。(朝日新聞 夕刊)
28日■「2液混合法」か 地下鉄サリン 車内で反応 松本事件も類似
 地下鉄サリン殺傷事件で犯行に使われた不審物は、別々の袋に詰めたサリン一歩手前の物質とアルコールの一種を車内で反応させてサリンを作る”2液混合方式”だった可能性の強いことが、27日までの警視庁築地署捜査本部の調べで分かった。捜査本部は、犯人が新聞紙に包んだ袋に何らかの方法で穴を開け、2種類の薬材を流出させて混合、サリン発生前に逃走した疑いがあるとみて目撃情報などから容疑者の割り出しを急いでいる。
 長野県松本市のサリン事件では、容器は見つかっていないが、白煙が上がるなど、現場でサリンが発生した形跡があり、捜査当局は同じ方式だった可能性が強いとみている。
 調べによると、地下鉄事件でサリンが発生した5車両のうち、少なくとも2車両の不審物は、複数のビニール袋を新聞紙で包んであり、袋から液が漏れ出しているのを乗客が目撃している。
 さらに@サリンと一緒に、サリン合成時に副生成物として生じる「メチルホスホン酸ジイソプロピル」が検出されたA2車両で不審物から白煙が出ているB被害が出るまでの時間やサリン発生の規模が各現場で異なっている−などの状況が、2つの液体を混ぜてサリンを発生させた際の特徴と一致しているとみている。
 専門家によると、サリンの生成方法は何通りかあるが、この方式は、生成の最終段階で、三塩化リンから作る「メチルホスホン酸系化合物」と「イソプロピルアルコール」を混ぜ合わせ急激な化学反応を起こす。この際に、「メチルホスホン酸ジイソプロピル」が発生し、白煙が上がるという。
 被害が出た5本の電車のうち、北千住発の日比谷線では急激にサリンが発生したことを示す白煙が車内に充満、5本の中で最も被害が大きかった。
 中目黒発日比谷線では、男が不審物を置き去ってから約5分後に異常が起きた。これに対し、丸ノ内線の一車両では不審物が見つかってから40分以上経過してから被害が出ており、捜査本部は混合スピードの差で被害に違いが出たとみている。(京都新聞)
■サリン発散は最高無期懲役 与党が新法案了承
 与党政策調整会議が27日開かれ、警察庁はサリンなど毒物の使用などに関する新法案について「人の生命、身体、財産を害する目的でサリンなどを発散させた場合は最高で無期懲役、製造、所持した場合は7年以下の懲役」とする方針を示し、了承された。
 毒物の所持、製造に関する罰則は30日に成立する予定の化学兵器禁止・特定物質規制法案(通産省所管)が「化学兵器を使用した場合、最高無期懲役、化学兵器として使用する目的で製造、所持した場合は7年以下の懲役または300万円以下の罰金」の量刑を盛り込んでいる。
 地下鉄サリン事件などを契機に犯罪防止の面から検討されている新法案もこれに準じる内容とした。新法案は4月中に国会提出され、5月初めにも成立する見通しだ。(京都新聞)
■SLに乗車できる 「ファン感謝デー」 2日、梅小路で
 JR西日本は、4月2日に京都市下京区の梅小路蒸気機関車館で「春休みSLファン感謝デー」を開く。
 主な催しは、D51型とC61型のSL2両による重連運転、子供たちとSLとの綱引き大会など。トロッコ客車2両をSLに連結して走らせる「スチーム号体験乗車」(有料)もある。
 入場料は、大人(高校生以上)260円、子供150円。問い合わせは、梅小路運転区 075(313)2004。(京都新聞)
■小規模な軟弱地盤 高架橋落下に影響 山陽新幹線 運輸省委が解析
 阪神大震災で落下した山陽新幹線の高架橋の多くが、これまで地震の影響はないだろうとされてきた狭い範囲の軟弱地盤の上に立っていたことが、運輸省鉄道施設耐震構造検討委員会の解析で明らかになった。この軟弱地盤がこれまでにない強い地震の揺れを予想以上に増幅したらしい。検討委員会は、地盤に応じたきめ細かな耐震対策を取っていなかったことが被害につながったと見て、解析結果を29日に出す中間報告に盛り込み、耐震基準の見直しにかかる。
 検討委員会が被害個所周辺の地質を調べたところ、落下した8ヵ所の高架橋のうち7ヵ所が、「沖積砂層」と呼ばれる比較的柔らかい地盤の上に立っていたことが分かった。いずれも厚さは数メートルで、長さは200bから2`までとさまざまだった。
 JR西日本によると、沖積層が大きく広がっている所では、岩盤上に建設するときより耐震強度を1.5倍に増やさなけれはならないとしていた。ただ、沖積層が一部にしかなければ、地震による影響はないとみて岩盤上と同じ強度を適用してきたのが実態という。このため被害個所も、岩盤上と同じ基準が適用されていた。
 しかし、検討委員会で今回の地震による地盤の動きを計算したところ、沖積砂層は狭い範囲であっても揺れを増幅させることがわかった。このため、高架橋は設計範囲を超える揺れを受け、落下したらしい。
 土木工学の専門家によると、こうした小規模の軟弱地盤はほとんどの河川の周囲にあるという。
 ただ、落下した8ヵ所のうち1ヵ所は、固い洪積層の上に建っていた。また沖積砂層の上にあっても、落下しなかった高架橋もあった。このため検討委員会では、地形や地層の傾斜が、地震波を反射させたり、屈折させたことも影響したとみており、さらに詳しく破壊のメカニズムを分析する。(朝日新聞)
■JR東海道線住吉−灘間 運転再開向け車両使い検査
 阪神大震災(兵庫県南部地震)で不通になり、運輸省が復旧工事の完了を確認したJR東海道線・住吉−灘間(4.5`)の一部区間で、JR西日本は28日午前、車両を使った自主検査に入った。検査は29日まで2日間の日程で実施。異常がなければ、30、31の両日に予定されている運輸省の開業前検査を経て、4月1日始発から、全線で運転を再開する。今回の検査は不通区間のうち、最も損傷が激しかった六甲道駅を中心とする約2.2`の高架部分で、複々線の線路4本を上下各2線ずつに分けて実施。
 この日は午前10時すぎ、東灘信号場を出発した機関車2両編成が時速15`のゆっくりしたスピードで海側の下り線の線路2本を西から東へ並走。29日は山側の上り2線で同様の検査を実施する。(京都新聞 夕刊)
■レールの響き再び 東海道線で走行試験
 阪神大震災で不通となっている東海道線の住吉−灘間(4.5`)で、28日午前、修復した高架橋の強度などを調べるJR西日本の走行試験が始まった。試験は2日間の予定で、安全が確認できれば、同社は運輸省に「開業前検査」を要請する。
 走行試験は「載荷試験」と呼はれるもので、実際に電車を走らせて、修復した高架橋のたわみや支柱の沈下量、架線の張り具合などを調べる。今何の検査対象は、不通区間の中間にある六甲道駅周辺の複々線の高架橋約2.2`。試験車は、レールに満員の通勤電車の約3両分に当たる荷重をかけるため、1両約95トンの電気機関車を2両つないだ。列車が並走する場合も多い複々線であることから、試験車も2編成用意した。
 午前10時、灘駅寄りの東灘信号場の下り線2本に並んで停車していた2編成の試験車が、住吉側に逆走する格好でそろって発車。阪神大震災から69日間で修復した工事の安全を確認するように、時速約15`のゆっくりしたスピードで走った。(朝日新聞 夕刊)
■震災被害の山陽新幹線 施工不良を指摘 運輸省検討委 直接原因には認めず
 阪神大震災で高架橋が落下した山陽新幹線の被害について、運輸省鉄道施設耐震構造検討委員会(委員長、松本嘉司・東京理科大学教授)は、29日に発表する中間報告案をまとめた。報告案は、高架橋などの施工に当たって、海砂の使用による塩害や、帯鉄筋の巻き方が不十分なためによる強度不足があったことを指摘している。ただし、これらは今回の被害の直接原因ではなく、原因はあくまで予想を超える強い横揺れで、縦揺れよりも影響を及ぼしたとしている。
 山陽新幹線はコンクリートに混ぜる砂に、海から取ってきた海砂を使ったが、海砂はよく洗って塩分を取り除いておかないと、コンクリートの中の鉄筋を腐食させる。報告案によると、落下した高架橋のうち、2ヵ所で基準を超えた塩素量が測定された。塩分の処理が十分でなかったらしい。
 また、高架橋の柱には、縦方向に入れた鉄筋を束ねるため、約15a間隔で横方向に帯鉄筋が入っている。ところが、この帯鉄筋の間隔がふぞろいだったり、帯鉄筋の両端を結ばず、曲げただけの個所があったりして、強度低下を招いたと指摘している。
 このほか、コンクリート中の水分が多かったり、コンクリートや鉄筋のつなぎ目の処理が不十分だったりした個所もあったらしい。
 ただ、いずれの個所も最低限必要な強度は確保されていたことから、これが被害の直接原因ではないと判定した。また、コンクリート柱を鉄板で巻く今回の復旧方法について、鉄板で巻くと耐震性はこれまでの約2.5倍に高まると評価している。(朝日新聞 夕刊)
29日■阪神特急 梅田−御影9分短縮 運転時間も3時間延長
 阪神電鉄は4月9日、ダイヤ変更を行い、本線の梅田−御影間で特急電車を現在より9分スピードアップするとともに、西大阪線と武庫川線の運転本数を、震災前と同じ規模に戻す。
 阪神電鉄の各線は、最近になって線路施設の修復・整備工事が進捗(しんちょく)。センバツ大会用に振り向けている車両が、来月からは通常の輸送に使えるようになるため、ダイヤ変更で輸送力増強を図ることにした。
 新ダイヤでは現在、32分かかる梅田−御影間の特急を、23分までスピードアップ。運転時間も午前7時−午後10時へと3時間延長する。
 西大阪線の運転本数は現行の61本から92本へ、武庫川線も59本から70本へと、震災前と同じ本数に戻し、乗客の利便を図る。
 阪神本線は住吉−西灘間で依然、不通が続いているほか、復旧済みの梅田−御影間と、西灘−三宮間でも大事を取って特定の区間で電車を減速運転している。(京都新聞)
■あすから走行テスト 山陽新幹線高架支柱チェック
 運輸省は28日、阪神大震災(兵庫県南部地震)で不通になっている山陽新幹線新大阪−姫路間(91.7`)とJR東海道線住吉−灘間(4.5`)について復旧個所の施工状況の確認作業を終了した。
 同省は29日午後、確認作業の結果を鉄道施設耐震構造検討委員会に報告する。委員会で問題がないと判断されれば、JR西日本は30日から5日間程度の日程で、検査車両を走らせるなどし、山陽新幹線の自主検査に入る。
 また、同社は28日、運輸省の確認作業が既に終了していた東海道線の不通区間のうち、六甲道駅周辺の約2.2`で、電気機関車を使った走行検査を実施した。
 JRによる山陽新幹線の自主検査では、軌道や架線の状態をチェックする検査車両のほか、「ひかり」や「のぞみ」など数種類の新幹線車両を走行させ、補強した高架橋の支柱のひずみや振動などを計測。
 時速30`から徐々に速度を上げ、検査の最終段階では「のぞみ」の最高時速270`での走行テストも予定している。(京都新聞)
■1日から170`運転 新幹線新大阪−京都
 JR東海の須田寛社長は28日記者会見し、阪神大震災の影響で120`の徐行運転をしている新大阪−京都間について、運輸省の検査を経て、4月1日から170`運転に移行する見通しを示した。現在、同区間で5分程度の遅れが出ているが、若干短縮される。
 JR東海によると、同区間の補修工事は25日までに完了し、30、31両日に運輸省の安全検査を受ける。さらに170`運転の実績を見て、運輸省の指導を受けながら、徐々に速度を上げ、「のぞみ」の最高時速270`運転を含む完全復旧に向かう。(京都新聞)
■経常利益赤字 2億6000万円に 神戸電鉄3月期
 神戸電鉄は28日、3月期(1994年4月1日−95年3月31日)の業績予想を発表した。阪神大震災により、鉄道施設が大きな被害を受け、営業を一部で停止したりしたため、経常利益は昨年11月の中間決算発表時より5億8100万円下方修正して、2億6300万円の赤字となった。株主への期末配当は見送る予定。
 売上高は、鉄道収入の減収などから、中間決算時の予想よりも7億3100万円低い221億3900万円。当期利益も中間決算時から11億3500万円マイナスの8億5700万円の赤字としている。(朝日新聞)
■計測機が一部故障 走行試験やり直し JR東海道線
 4月1日の全線開通をめざしてJR西日本が28日から2日間の予定で始めた東海道線の住吉−灘間(4.5`)の走行試験で、修復した高架橋の沈下量などを調べる計測機器の一部が故障し、データが収集できなかった。このため、JRは同日午後10時過ぎから走行試験をやり直した。
 午前中に試験車を同区間で2往復させて各種データを収集する予定だった。JR鉄道本部は「高架橋や線路に異常が発生したわけではないので、日程に変更はない」と話している。(朝日新聞)
■有馬口−有馬温泉 31日から運転再開 神戸電鉄
 神戸電鉄は28日、有馬線の不通区間のうち有馬口−有馬温泉(2.5`)の運転を31日始発から再開すると発表した。これに伴い、有馬温泉−五社間の代替バスは同日から廃止。残る不通区間は湊川−長田(1.9`)で、8月上旬の復旧を予定している。
 長田から有馬口まで運転していた電車の一部を有馬温泉まで延長し、有馬口始発電車の一部が有馬温泉始発になる。また、有馬口−有馬温泉の折り返し運転も再開。午後11時40分の長田発谷上行き最終電車は有馬温泉まで延長する。(朝日新聞)
■米の専門家ら来日 地下鉄サリン事件で
 東京の地下鉄サリン事件に関連し、米国の専門家チームが29日夕、来日する。米疾病予防センター(CDC)のリリブリッジ氏をリーダーに、米陸軍化学物質防衛医瞭研究所のシーデル氏ら5人で構成。研究資料を収集するとともに、被害者の治療などに協力する。米国政府の協力の申し入れに対し、日本政府はサリン中毒患者の治療方法などについて知識をもった専門家の派遣を希望していた。(朝日新聞 夕刊)
30日■高架橋は横揺れで破壊 耐震検討委中間報告 補強にはお墨付き
 阪神大震災による鉄道被害の原因や対策を調べている運輸省の鉄道施設耐震構造検討委員会(委員長・松本嘉司東京理科大教授)は29日、東京・霞が関の同省で開いた第四回委員会で「高架橋の破壊は、激しい横揺れで柱が切断されるせん断破壊のためと推定される」との中間報告をまとめ、亀井運輸相に提出した。
 柱に鋼板を巻き付けるなどの現在の補強方法については「粘りは従来の5倍、耐震性は2.5倍になり、今回程度の地震に耐えうる」とした上、約600ヵ所で実施した施設の健全度試験の結果も問題ないと結論。山陽新幹線の不通区間、新大阪−姫路間の安全性に”お墨付き”を与えた格好となった。
 一方で、松本委員長は「被害を受けていない部分の補強も今後検討していく」とし「耐震設計基準の見直しが必要」と語った。
 検討委はコンピューターで今回の地震の際の高架橋の動きを解析。その結果@せん断破壊が起きたA上下動より水平方向の揺れによる力が主体−と推定した。
 さらに地震波の周波数が、高架橋の持つ固有周期と一致したことから、共振現象で揺れが増幅され、被害が拡大したとしている。
 高架橋は柱の上部が10a程度動くのが限界だが「設計強度以上の力が働いたため崩壊した」と説明した。
 報告は、塩分を含む海砂の使用や木材の混入などの施工不良については「強度劣化はあったが許容範囲内」と判断した。しかし引き続き被害との因果関係を調べるとしている。(京都新聞)
■きょう試運転 山陽新幹線
 JR西日本は不通になっている山陽新幹線の運転再開へ向け、30、31日の両日、新大阪−姫路間で自社試験運転を実施する。
 30日は「ドクターイエロー」と呼ばれる試験専用車(7両編成)を、時速30−70キロで2往復させる。31日は「0系型」の車両(16両編成)で往復させる。
 一方、来月1日の運転再開が見込まれている東海道線の住吉−灘間では、30、31の両日、運輸省の開業前検査が行われる。30日は電気機関車、31日は通勤用電車を使い時速15−80キロで走行する。
 運輸省の開業検査でOKが出れば、予定通り1日始発から運転を再開する。再開ダイヤは31日発表される予定。(京都新聞)
■中小私鉄119組合決着 スト構え大詰めの交渉
 私鉄総連(池村良一委員長)加盟の中小私鉄、バスなどの組合は、30日始発からの24時間ストを背景に29日夜、経営側と大詰めの賃上げ交渉を続けた。
 中小私鉄の労使交渉は、大手の妥結を受けて27日から本格化。私鉄総連への29日午後11時までの報告によると、総連の統一闘争に加わった中小224組合のうち119組合が決着した。大手と同じ9950円の賃上げ回答を引き出したのは22組合だった。
 30日のスト突入時間帯をにらみながらぎりぎりの折衝が続く見通しだ。(京都新聞)
■電車と衝突、玉突き 八日市・6人が軽傷
 29日午後6時10分ごろ、八日市市小脇町、近江鉄道八日市線四ツ辻踏切(警報機・遮断機付)の線路敷地内で停車していた滋賀県蒲生郡安土町内野、パート藤井美千代さん(28)の乗用車に、米原発近江八幡行きの電車=泉晴一郎運転士(28)=が衝突、はずみで藤井さんの車は信号待ちで停車していた3台の車に玉つき衝突した。藤井さんと3台の5人が頭などを打って軽傷。列車には約30人が乗車していたが、無事だった。
 八日市署の調べでは、藤井さんが無理に踏切に入り、車の後部が線路敷地に残っていたためらしい。(京都新聞)
■山陽新幹線 きょうから走行試験 不適の新大阪−姫路間で
 JR西日本は29日、阪神大震災で高架橋が落下するなどした山陽新幹線の新大阪−姫路間で、30日朝から5−6日間の予定で自主走行試験を始めると発表した。また、住吉−灘間が不通の東海道線については、28日から実施していた自主走行試験で安全が確認できたとして、運輸省に「開業前検査」を要請した。
 JR西日本によると、山陽新幹線の走行試験は、30日の午前7時から始める。
 まず、姫路駅から「ドクターイエロー」と呼ぶ試験車を時速30`で走らせて、線路や架線を調べると同時に、修復した高架橋約100ヵ所でたわみや沈下量などを計測する。31日以降に、荷重試験や速度向上試験に入り、「ひかり」や「のぞみ」車両も走らせる。
 この試験後、JR西日本は運輸省に「開業前検査」を要請する。同検査は4−5日間の予定で実施されることから、順調ならは4月10日ごろに全線開通する見通しだ。
 一方、東海道線は30日午後2時から、運輸省の「開業前検査」が始まる。検査は31日午前9時に終了する予定で、同日午前中にも運輸省から4月1日の全線開通が発表される。(朝日新聞)
■嵐電の写真入り 絵はがきセット 発売
 京都ピイアールセンター(下京区)は「嵐電(らんでん)」の名で親しまれている京福電鉄嵐山線の写真入り絵はがきセット「京都の街に嵐電」の発売を始めた。
 京福電鉄のPR誌製作などを手がけている同センターの代表取締役内藤靖正さん(61)が1992年夏から94年秋にかけて撮影した嵐山本線と北野線の計12枚。昨年デビューしたこげ茶色の車体のレトロ調電車も3枚含まれている。
 動く物を撮影する難しさに加え、撮ろうとした瞬間に電車の前を車が横切るなどの苦労も多く、4度足を運んで撮り直したこともあったという。だが、昨年4月に試作品を作り、駅の案内所で無料配布したところ好評だったので商品化を考えた。「街の中を走る電車は懐かしさも手伝うのか予想以上にファンが多いようです。今後も撮り続け、写真集を作りたい」と内藤さんは話している。
 800円。問い合わせは京都ピイアールセンター(075-341-6531)。(朝日新聞)
■中小私鉄・バス ストにらんで 深夜まで交渉
 春闘で大手私鉄並みの賃上げを求め、30日始発から24時間ストを構えている、私鉄総連関西地連の中小私鉄とバスの18組合は、29日夜から30日未明にかけて会社側と交渉を続けた。一部は時間切れでストに突入する可能性もある。
 30日午前零時現在、ストを予定しているのは次の組合(観光バス専業を除く)。
 金剛自動車、水間鉄道(以上、大阪)
 有田鉄道、紀州鉄道、御坊南海バス、竜神自動車、明光バス、熊野交通、大十バス(以上、和歌山)(朝日新聞)
■新幹線騒音 環境基準達成は3分の1 改善 進むが 住宅地、19%のみ
 住宅が集中している新幹線沿線の騒音は、横浜市など一部を除き暫定目標の75デシベル以下になるなど改善されたが、環境基準(住宅地で70デシベル)の達成率は3分の1程度という調査結果を、環境庁が30日開かれた中央環境審議会交通公害部会に報告した。
 環境庁は、今回測定した第一次対策区間(計約220`)については暫定目標をほぼ達成したとしている。しかし、この区間以外で暫定目標を超える地域があることから、対象地域を広げて1996年度末をめどに目標の達成を目指す。
 調査は昨年9月から11月にかけて、東海道・山陽、東北、上越各新幹線沿線の20府県計223ヵ所で実施。東海道の横浜市、神奈川県平塚市、静岡県清水市と山陽の兵庫県高砂市の計4ヵ所で騒音レベルが76デシベルに達した。それ以外はすべて75デシベル以下に収まった。
 環境基準と比べると、住宅と商工業の混在地域(41ヵ所)はすべて基準を満たしたが、住宅地では182ヵ所のうち、35ヵ所がクリアしただけで達成率は19%にとどまった。
 東北、上越では新しい2階建て車両で騒音が大きい傾向が見られた。
新幹線路線別の平騒音
(単位:デシベル、▼はマイナス)
線 名94年度91年度調 査
地点数
東海道72.173.4▼1.3120
山 陽72.373.1▼0.862
東 北72.975.8▼2.926
上 越71.074.1▼3.115
 環境庁は「住宅地の環境基準の達成は現在できる対策では難しい。当面は75デシベル以下の区間を広げるのに力を入れたい」と話している。
防音壁かさ上げへ JR東海新幹線鉄道事業本部の斉藤邦夫環境管理室長の話 一部に暫定目標の未達成個所があったのは誠に遺憾だ。未達成となった3ヵ所については、防音壁のかさ上げなどの対策を取りたい。
対策の効果を確認 JR東日本広報部の話 3年前の(目標達成率が低い)調査結果を真剣に受け止め、防音壁やパンクグラフのカバーなどの対策をした効果が確認された。その先の目標(環境基準)についても今後取り組んでいきたい。(京都新聞 夕刊)
■山陽新幹線 72日ぶり試走 新大阪−姫路
 JR西日本は30日、阪神大震災で不通になっている山陽新幹線の新大阪−姫路間(91.7`)で、新幹線車両を使った走行試験を開始。震災後72日ぶりに被災地を走った。
 走行試験は5、6日程度の日程で行われ、4月4日ごろから開業前検査を経て、山陽新幹線は同10日ごろには全線開通する。(京都新聞 夕刊)
■山陽新幹線で走行試験開始 震災から72日ぶり
 阪神大震災で高架橋が落下するなどした山陽新幹線の新大阪−姫路間で、30日午前7時過ぎから、JR西日本による走行試験が始まった。5−6日間の予定で、「ひかり」や「のぞみ」型車両などを走らせて線路や架線、修復した高架橋のたわみ、沈下量などを調べる。山陽新幹線はこの試験後、運輸省の開業前検査を経て、4月10日ごろには全線で運転再開となる見通しだ。
 この日は、まず「ドクターイエロー」と呼ぶ試験車が姫路駅を午前7時に出発、阪神大震災から72日ぶりに不通区間に進入した。時速30`で、新大阪までの約90`を約3時間40分聞かけて走った。
 新大阪−姫路間では、約5200本の高架橋の柱のうち、約700本が壊れたり亀裂が入ったりした。運輸省の鉄道施設耐震構造検討委員会の指導で、多くの柱に耐震力を高める鉄板が巻かれた。(朝日新聞 夕刊)
■新幹線の騒音 暫定目標達成 環境庁調査
 環境庁は30日、東海道、山陽、東北、上越各新幹線の騒音調査結果をまとめた。住宅地の暫定目標値(75デシベル以下)の達成率は4線全体で98%で、「ほぼ達成した」と判断した。しかし、当初の達成目標は1985−87年で、しかも環境基準を緩めた暫定目標値をやっと達成できたに過ぎず、「今後も一層の対策が必要」としている。
 調査は昨秋、目標期限の93年度末の達成状況を調べるために実施した。東海道など4線の沿線で、住宅が集中している20府県の223地点で測定した。
 その結果、騒音の平均値は4線全体で72.2デシベル、路線別では東海道72.1デシベル、山陽72.3デシベル、東北72.9デシベル、上越71デシベルで、暫定目標値の達成率は東海道、山陽が98%、東北、上越が100%だった。しかし、環境基準(70デシベル以下)の達成率はわずか19%にとどまった。(朝日新聞 夕刊)
31日■窓 JR車両編成弱者に不親切 吹田市・山崎太郎(元教員・73)
 いまJR東海道山陽新幹線は16両編成のうち普通車自由席の車両が、下り列車先頭と上り列車最後尾にだけ5両かためて連結されている。これに乗るときには場合によっては1車両25bもあるあの長い列車のほとんど端から端まで歩かなければならない。
 この車両編成は、座席指定料を倹約した分だけ冷遇されていることを思い知らされるだけでなく、足の弱い病弱者や老人、幼児たちへの思いやりに欠けた弱者排除の思想を裏に秘めた仕打ちではないかとさえ思われてしまう。
 それだけではない。禁煙車はその5両の中でも最先端に連結されていて、そこにたどりつくために歩かされる距離もそれだけ長くなり、自由席車両を利用する弱者・非喫煙者はいつもこのように二重三重に冷たく扱われている。
 かつて米国で乗った列車には、原則禁煙の客車すべての端っこに喫使用の小部屋があったし、いま欧州大陸やシベリアの鉄道の客車や寝台車は通路が禁煙である上に、禁煙と喫煙のコンパートメントが交互に並んでいる。イギリスの列車は交互に連結していて、みな公平に扱っている。日本のように弱者と非喫煙者を目の敵にして特に冷遇しているように見える列車など、欧米ではお目にかかったことがない。JRもすべての乗客をせめて欧米なみに公平に扱ってほしい。(京都新聞)
■JR7社の95年度事業計画 3年連続の減収減益 景気低迷、震災響く
 JR旅客6社とJR貨物は30日、1995年度の事業計画を発表した。7社合計の売上高は阪神大震災による輸送収入の減少などにより、前年度計画に比べ1.7%減の4兆4635億円、経常利益は同17.9%減の1724億円を見込み、計画ベースで3年連続の減収減益となる。
 景気低迷と、阪神大震災による鉄道不通と利用者の競合交通機関への移行が後遺症として残る。海外旅行ブームと裏腹の国内旅行離れも響く。
 株式上場を目指す西日本は経常利益を410億円、東海は472億円と予相し、96年度上場の基準(西日本400億円、東海448億円)を満たす見通し。
 94年度の経常利益は西日本が「200億円くらい」(原和安常務)とするなど、両社とも95年度内上場の基準達成は不可能。このため、今後特例による上場の可能性を模索する。
 設備投資は、7社合計で前年度計画比1.7%増の6488億円を予定。震災復旧費800億円を盛り込んだ西日本のほか、北海道、四国が投資額を上積みしたが、他は減額か横ばいを計画している。
 売上高は、激増と見込む東日本を除く6社が減収を予想。特に、収益の柱の山陽新幹線の不通が響く西日本、同線への接続客が多い四国の落ち込みが目立つ。
 賃上げ率の圧縮や新規採用減、出向者の増加で人件費抑制を図るなど、各社とも経費削減に努めるが収入減を補えず、赤字幅が縮小する北海道のほかは営業損益が軒並み悪化する。
 経常損益段階では、東日本、東海、西日本が減益を見込み、北海道、四国、九州、貨物は赤字に転落するとしている。このため、北海道など旅客3社は95年度中に運賃値上げを申請するとみられる。
・発足以来初の赤字転落予想 貨物
 JR貨物が30日発表した1995年度事業計画は、阪神大震災による鉄道不通の影響から売上高は前年度計画比4.2%減の2051億円を見込んでいる。前年度計画では5億円の黒字だった経常損益は、86億円の赤字に転落すると予想している。
 計画段階で経常赤字を見込むのは、87年の国鉄分割民営化による同社発足以来初めて。
 震災によるトラック、船などの代行輸送経費と破壊された施設の復旧費計約50億円を特別損失として計上するが、保有不動産の処分で約138億円の特別利益を出す計画。
 しかし、計画策定時には地震で不通になった東海道線の復旧時期を5月の連休明けと予想していたのが、その後4月1日に繰り上がることになった。このため同社は「減収額や特別損失は圧縮される」とみており、5月にも計画を見直すことにしている。
 設備投資額は、新たなコンテナ貨車の導入や列車自動停止装置の改良などで、前年度計画と同額の327億円を予定している。
・西日本 経費を徹底的に削減 上場基準達成には自信
 JR西日本は30日、阪神大震災の被害復旧を柱とする1995年度事業計画を発表した。線路の開通を優先したために遅れている、壊れた駅舎の整備などの復旧工事が本格化することから、経費を徹底的に削減したうえで収益改善を図る。
 震災の影響は95年度も残り、前年度計画より収入が471億円減るものの、経常利益は410億円を見込んでいる。南谷昌二郎副社長は「新幹線、在来線の開通が、計画をつくった時に想定していた連休明けから、4月上旬に早まったこともあって努力次第で十分達成できる」と語り、株式上場の基準となる経常利益400億円の確保に自信を示した。
 営業収益(売上高)は前年度計画比5.0%減の8827億円の見通し。94年度は震災で500億円以上収入が減っており、実績見込みに比べると若干増収になる。関西国際空港へのアクセス輸送を充実したり、低価格のパック旅行商品をつくったりすることで収入を増やし、震災による落ち込み幅を小さくする。
 設備投資は前年度計画より200億円増額して1600億円とするが、そのうち災害復旧費は800億円。自動券売機の更新など安全に直接かかわらないものは先送りする。
・防災対策に940億円
 JR西日本は30日発表の1995年度事業計画で、阪神大震災で受けた大きな被害の早期復旧を「当面の最重要課題」と位置付け、地震防災対策の一層の充実を目指している。
 設備投資の見込み額は1600億円。そのうち「保安・防災対策費」に940億円を投入する。
 同対策費の内訳は、震災で8ヵ所の高架橋の橋げたが崩落し新大阪−姫路間が不通となっている山陽新幹線などの復旧に800億円もの巨費を見込んでいる。
 さらに、東海道新幹線に設置されている地震振動を早期に感和し、必要に応じて列車を停止させる「早期地震検知警報システム」(ユレダス)を山陽新幹線に導入するほか、同新幹線全線で、高架橋の橋げたを補強する落橋防止対策工事を実施する。(京都新聞)
■JR各社 震災響き収入縮小 来年度の事業計画 四国など4社赤字
 JR7社は30日、1995年度の事業計画を運輸省に申請した。阪神大震災による一部不通や旅行手控えが響いて、94年度予算と比べた営業収入は東日本がほぼ横ばいのほか、他の6社は1−8%程度少なく見積もっている。このうち北海道、四国、九州、貨物の4社は、経常赤字の予算にした。このため貨物を除く3島の各社は、1987年の分割・民営化後初の運賃値上げを検討している。
 予算段階での経常赤字は、JR発足直後に北海道が2年間しただけ。四国や九州は山陽新幹線不通の影響が大きいほか、北海道も含めて高速道路や飛行機との競合激化で収入が伸び悩んでいる。この3社は分割・民営化に伴って設けられた経営安定基金の運用益で営業赤字を補っているが、金利低下による運用益減少も痛手になる。
 JRの旅客運賃は、国鉄時代の86年に値上げされて以来、消費税上乗せを除いて据え置かれており、「値上げは十分検討していく段階だ」(JR九州)との声が出ている。値上げ申請は94年度決算が出る5月以降になりそうだ。
 本州の3社は95年度は値上げをしない方針で、3島の会社が値上げすれば、地域格差が生まれることになる。(朝日新聞)
JR7社の95年度予算
 営業収入営業損益経常損益
東日本19707
(  25)
3874
(▼ 163)
1010
(▼ 2)
東 海10860
(▼ 142)
3523
(▼ 198)
472
(▼82)
西日本8827
(▼ 471)
1230
(▼ 97)
410
(▼95)
北海道1014
(▼ 15)
▼ 412
(   3)
▼17
(▼20)
四 国454
(▼ 39)
▼ 412
(▼ 30)
▼17
(▼33)
九 州1722
(▼ 30)
▼ 285
(▼ 46)
▼40
(▼52)
貨 物2051
(▼ 90)
▼ 19
(▼ 84)
▼86
(▼91)
単位・億円、カッコ内は前年度計画からの増減額、
▼はマイナス
■サリン・ショック世界に不安の種
 東京を襲ったサリン事件は、世界に恐怖と不安の種をまいた。各国の政府、メディアは強い関心を寄せ続けている。韓国は「隣組」を通して、全国の家庭に毒ガス対策を周知した。地下鉄の発達しているニューヨークや香港などの大都市も、「わが身にいつ降りかかるか」と神経をとがらせている。オウム真理教の関与の疑いが濃くなるにつれ、熱狂的な宗教集団による「世結末の現象」とみる論評も目たってきた。海外に広がる波紋を、ソウル(清田治史)、香港(花野敏彦)、ニューヨーク(佐藤吉雄)、ロンドン(林修平)の各特派員が報告する。
・隣組通し対策周知−韓国 「逃げる時は防護マスクやぬれタオル、ビニールなどで呼吸器を守り、皮層の露出を避ける」。韓国全土で27日夕、一斉に開かれた住民の会合「班常会」で、9項目の毒ガス対処要領が配られた。
 この国の「班」は、日本の町内会よりさらに細かく、アパートなら同じ階段に向き合う隣人たちで組織される「隣組」だ。各世帯から1人ずつ毎月の常会に参加して、政府や市町村からの広報を受け取り、全国民に徹底する仕組みになっている。
 サリン事件の直後から、ソウル、釜山の地下鉄駅は防護マスクや解毒剤などを常備し始めた。警察も、地下鉄警備陣を、それまでの6倍にあたる1300人に増員することを決めている。
 4月14日に行われる予定の民間防衛訓練は当初、大型の交通事故・橋梁(きょうりょう)崩壊を想定していたが、急きょ「毒ガス・毒劇物対策」に切り替えられた。ソウルでは大がかりな訓練になるという。
 韓国が敏感なのは、日本の隣国というだけでなく、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を意識するからだ。主要紙の東亜日報や朝鮮日報は、北朝鮮が毒ガスを大量保有していると述べ、テロヘの日常的な対策に警鐘を鳴らした。
・地下鉄使って訓練−香港
 香港の消防局も23日に「地下鉄で毒ガスが発生した」との想定で訓練を展開した。ものものしい防護服をつけた救助隊が、消防署員がふんする10人の「市民」を救出した。
 香港のある週刊誌の記者は、警備状況を調べる実験と称して、ビニールにくるんだ紙箱を地下鉄車両に置き去りにした。乗客はだれも注意を向けず、20分ほどして係員がホームに持ち出し、手で箱を開けた。「毒ガスだったら、どうなっていたか」。同誌に問いただされた地下鉄会社は「原則としては、その場で開けてはいけないのだが…
・FBI特別警戒−NY
 世界最大級の地下鉄網をもつニューヨークでは、米連邦捜査局(FBI)や市警が、特別パトロールをはじめた。
 無差別テロの恐怖を、ニューヨーク市民はひしひしと感じている。反応は敏感だ。東京で事件が起きた直後、紙袋を持って地下鉄に乗ってきたサングラスの男に、女性客が「何が入っているの。中を見せなさい」と詰め寄った。乗降客が最も多いタイムズスクェア駅で、銀行員のマイケル・ドーセットさん(28)は「毒ガスは逃げようがない。時間はかかるけれど、帰りはバスに乗るようにしている」と話した。
・テロ対策での国際協力強調 米国務長官
 クリストファー米国務長官はインディアナ州のインディアナ大学で29日行った米外交政策に関する演説で、サリン殺傷事件について触れ、国際社会が情報機関や捜査機関も含めテロ対策で今後協力しなければならない、と強調した。
 長官は今回の事件が、テロリストが現在「極めて巧妙にできた広範な(テロ)手段を持っている」ことを世界に知らせた「警告」であると指摘。そのうえで「最も有能な情報機関や捜査機関ともできるだけ協力し、こうしたテロリストに対処する必要がある」と述べた。(共同)
 湾岸戦争当時、英当局は化学兵器テロを心配して極秘に「非常事態計画」を練っていた。計画作りに加わった専門家は「同じようなテロがロンドンで起きたら、有効に対応できるとは思わない」と打ち明ける。「今日、最も危険なのは、宗教的な動機をもつ集団」。英国のテロリズム研究の権威、ブルース・ホフマン氏は米系誌にそう語った。
 米有力週刊誌ニューズウイーク国際版最新号も、「終末思想をもつ宗教集団は、破滅的な戦争や自然災害が信者を楽園へいざなうと信じて、暴力に傾きやすい」と解説している。(朝日新聞)
■東海道線あす始発から開通 最終検査で「OK」
 JR西日本は31日午前、阪神大震災(兵庫県南部地震)で住吉−灘間(4.5`)が不通になっている東海道線について、4月1日始発からの全線での営業運転再開を決定するとともに、運転ダイヤを発表した。
 また、運輸省は同日午前、2日間の日程で行った同線の不通区間の最終検査を終え、検査結果に問題がなかったことを明らかにした。
 震災から74日ぶりに全線開通にこぎつけたことで、被災地復興に弾みがつきそうだ。(京都新聞 夕刊)
■JR東海道線あすから全通 安全検査終了
 阪神大震災で不通となっているJR東海道線の住吉−灘間(4.5`)について、運輸省は31日午前、「開業前検査」を終了し、修復した高架橋などの安全性が確認できたとして、営業運転を許可した。JR西日本は4月1日始発から、ほぼ震災前の運転ダイヤで運行を再開する。阪神大震災で阪神間を走る鉄道は、東海道線や阪急神戸線、阪神本線が線路の崩壊などで部分運休に追い込まれた。分断から75日目、まずJRが全面復旧する。
 運輸省は、JR西日本の自主検査後の30、31の両日、開業前検査を実施した。JR西日本の計画では、1日始発からほは震災前のダイヤで通勤・通学電車を運転する。駅ビルが崩福した六甲道駅も仮駅舎で営業する。(朝日新聞 夕刊)