1991(平成3)年5月


1日■労組地本幹部を鉄パイプで襲撃 警官発砲、1人は逮捕 茨城(朝日)
  ■電車にひかれ母子?即死 泉佐野の阪和線(朝日)
2日■検分 建都1200年事業 あと3年 E 京都駅改築 高層化で景観論争 注目される行政の対応(京都)
  ■飛び込み?死亡 京福電車遅れる(朝日)
  ■46年ぶり復活 稚泊フェリー就航(京都)
3日■余部鉄橋で運転制限(京都)
  ■検分 建都1200年記念事業 あと3年 F 迎賓館 調査費獲得で弾み 地元で試案 具体化促す(京都)
4日■JR奈良線 信号機故障 9000人の足乱れる(京都)
  ■検分 建都1200年記念事業 あと3年 G 岡崎一帯を再整備 面積の拡充も必須条件(京都)
5日■古都の景観 守れるか JR京都駅高層化で論争白熱 規制緩和へ危機感 経済活性化を重視(朝日)
  ■走れニュートレイン〈4〉 トワイライトエクスプレス(JR西日本) 旅の楽しさいっぱい(京都)
  ■株式上場へ走るJR3社(朝日)
7日■京都駅ビル 審査開始 あす 7作品から1点決定(京都)
  ■市バス内でスリ逮捕(京都)
  ■国鉄清算事業団の資材置き場を焼く 京都、子供の火遊び?(朝日)
  ■駅ビルコンペ始まる JR京都(朝日)
8日■JR京都駅改築コンペ審査 注目浴びてきょう結論 どの設計案になっても避けられぬ景観論争(朝日)
  ■取り消し求め住民提訴(朝日)
  ■GW期間中の旅行客 新幹線・飛行機とも減少 高速道路は”最悪”の渋滞(朝日)
9日■新京都駅は59.8b 審査投票 機能性を重視 6年度完成へ JR改築コンペ 原氏の作品 最優秀に(京都)
  ■21世紀への都市戦略 第5部 新京都駅〈1〉 激論 高さ「最低」で決着 最高120bを支持の声も(京都)
  ■吹き抜け/段丘/斜面の京都駅 京の地形イメージ”明るさ”を前面に 人工地盤に諸設備 外観、ガラスに金属パネル(京都)
  ■京の玄関 賛否の渦 一番低い…それでも59.8b ほかに比べ妥当 ポリシーがない 街角の声(京都)
  ■低速HSST 初めての試験走行(京都)
  ■JR京都駅改築コンペ 最優秀に原氏の作品 16階建て高さ59.8b 建築巡り市の対応焦点(朝日)
  ■京都駅改築 規制外しに根拠必要 利害調整問われる行政(朝日)
  ■京都駅コンペ 議論白熱「低さ」が決め手 反対派ひとまず「ホッ」(朝日)
  ■駅ビル開発会社取締役務める 副知事の公用車運転日誌公開 行き先は「市内」(朝日)
  ■快速電車でスリ逮捕(朝日)
  ■不正払い戻し 60駅で157万円 新幹線事件で追送検(京都)
10日■新京都駅 A 規制 高さ”別格”扱いに 都計変更に疑問の声も(京都)
  ■社説 新京都駅を都市づくりの核に(京都)
11日■新京都駅 B 南口 民活再開発に打撃 経済界不満 新手法必要(京都)
  ■建設省の工事再開へ 広島の橋げた落下事故(京都)
  ■JR京都駅改築コンペ 筋書きのないドラマ 21世紀に向かう新しい空間提案 最優秀作品(朝日)
  ■停車駅素通り JR加古川線(朝日)
12日■新京都駅 C 競合 燃え広がる百貨店戦争 商業地図塗り替え(京都)
  ■窓 駅ビル高層化 古都に新風 大津市・仲上 義男(無職・78)(京都)
  ■走れニュートレイン〈5〉 ハイパーサルーン(JR九州) 素晴らしい展望効果(京都)
  ■窓 駅改築の議論 百年後考えて 長岡京市・惣司 秀雄(無職・63)(京都)
13日■新京都駅 D 波紋 町づくりの布石に 注目される行政の対応(京都)
  ■盛り土除去し土地不足解消 JR、線路横を壁面に(京都)
14日■装飾電車でジャズ演奏 開業10周年で地下鉄まつり 京都市が来月2日 旧市電の公開、記念品も(京都)
  ■信楽高原鉄道とJR衝突 23人死亡 370人負傷 水口 陶芸祭で超満員(京都)
  ■地獄、めり込む車両 「陶芸祭」列車衝突 悲鳴「速く助けろ」 車輪宙づり。血の跡点々(京都)
  ■世界陶芸祭のJR臨時列車 列車と正面衝突、7人死亡 約30人が負傷 超満員 30人なお車内 単線、信号機故障か(朝日)
  ■残る乗客 必至の救出(朝日)
  ■列車ぐにゃり、上がる悲鳴 信楽の事故(朝日)
  ■JR福知山線 1時間の停電 トラック、標識切断(朝日)
15日■死者42人の大惨事 信楽高原鉄道 負傷者も 449人 列車遅れれからく届かず 県警、朝から現場検証(京都)
  ■濃密運行アダ 信号故障後の対応に不手際(京都)
  ■凡語(京都)
  ■社説 基本忘れた信楽高原鉄道(京都)
  ■大事故なぜ起きた(京都)
  ■負傷した人たち(京滋関係分)(京都)
  ■将棋倒し 重なる遺体 陶芸祭の楽しみ暗転 友や妻 変わり果て 遺族哀しい対面(京都)
  ■信楽鉄道事故 車内、目覆う惨状 せまる暗夜、救出難航(京都)
  ■窓 駅舎高層化は京の景観破壊 北区・小谷十三之烝(会社員・65)(京都)
  ■死者42人、重軽傷者454人 信楽列車惨事 信号故障・管理ミス追求 周波数に違い 無線連絡つかず(朝日)
  ■「乗り入れ」落とし穴 専門家に聞く JR側とかみ合わず? 運転士同士の間隔に相違/人の層の薄さ一因/故障時のルールあるはず…(朝日)
  ■社説 安全軽視が招いた大惨事(朝日)
  ■時々刻々 「待避線」で運行数急増 信楽列車惨事 収益増へ、4月から 第三セクターに足かせ(朝日)
  ■JR西日本 上場にも影響か 信楽事故 効率追求、見直しも(朝日)
  ■妻は 友は どこに 安置所に悲痛な叫び(朝日)
  ■「命綱」なぜ切れた 信楽惨事 運転士「信号は青」 ブレーキ音聞こえず(朝日)
  ■「JR株上場 今は難しい」 東証理事長(朝日)
  ■制止振り切り発車 信楽惨事で高原鉄道側 信号故障の点検中に 安全確保の手順踏まず(朝日)
  ■信楽高原鉄道惨事 業務上過失致死傷容疑で3ヵ所捜索 信号安全確認せず 事故現湯など検証始まる(京都)
  ■不幸な事故に複数の要因 見込み運転に問題 ナゾ深まる「信号」(京都)
  ■惨事解明へ操作のメス 信楽鉄道事故 100人投入、慎重に検証 復旧めど立たず 遺族ら怒り新た(京都)
  ■観光トロッコ列車 浪漫乗せてゴトゴト走る 緑樹、薫風心地よく(京都)
  ■信号系統は故障していたか 信楽列車惨事 専門家にインタビュー 曽根 悟 東大教授(電気工学)(朝日)
  ■鉄道会社 危ぶまれる存続 運転士死亡、補償問題も(朝日)
  ■無念な朝 検証始まる 信楽列車惨事 退避線区間中心に 安全管理ミス強まる(朝日)
16日■世界陶芸祭を中止 信楽鉄道惨事 稲葉知事が表明 犠牲者に深い弔意 会期12日間残して(京都)
  ■信号機など鑑定へ 捜査本部 JR柘植派出所も捜索(京都)
  ■全国の単線に点検報告課す 村岡運輸相か会見(京都)
  ■駅ビル反対で知事に申請 京都駅の対策協議会(京都)
  ■再起へ重すぎる課題 信楽鉄道 補償問題も大打撃(京都)
  ■信楽高原に何が起きた 列車衝突事故 「変だな山積」 なぜ発車 強まる複合ミス 信号故障発端に(京都)
  ■信楽惨事 掲示責任追及へ 高原鉄道に管理ミス(朝日)
  ■信楽列車惨事 保安情報 徹底せず トラブル時訓練もなし(朝日)
  ■陶芸祭中止 「村おこし」中途で幕 住民「仕方ないが…」(朝日)
  ■高原鉄道信楽駅 4月にも信号異常 乗り入れ試験で赤 県警 故障との因果究明(京都)
  ■廃線やめて「おらが足」 信楽惨事、住民ら訴え 山の暮らしの支え(朝日)
17日■社説 信楽惨事をどう乗り越えるか(京都)
  ■信楽高原になにが起きた 惨事に即座の中止決断 陶芸祭(京都)
  ■信号装置など押収 信楽鉄道惨事 きょう走行テスト 両列車 位置、進行を把握(京都)
  ■JR西日本も保安監査へ きょう運輸省(京都)
  ■涙誘う無邪気な遺影 中島さん葬儀(京都)
  ■現場を衆院委視察 稲葉知事 路線存続を要請(京都)
  ■だれだ 地下鉄のごみ箱に捨てるのは 5分の1が”家庭ごみ” 野菜くず紙おむつ 張り紙も効果なし 駅、対策に苦慮(京都)
  ■窓 応対ひどいバスの運転手 八幡市・柳舘宏実(主婦・26)(京都)
  ■信楽高原鉄道 4月前半、訓練中に 信号トラブル(朝日)
  ■大阪各地でも犠牲者の葬儀 信楽の鉄道事故(朝日)
  ■朝鮮人学校のJR定期 「格差は差別」認める 運輸大臣(朝日)
  ■JR西労組、分裂へ 臨時大会流会(朝日)
  ■トピック 冷や汗ものの実演(朝日)
  ■神泉苑「跡地」全面発掘へ 保存 実質断念か 現状変更を申請 地下鉄東西線 研究者らに懸念 京都市文化庁へ(京都)
  ■全盲の医師 転落し死亡 ホーム事故防止研究者(京都)
  ■悲しみ漂う祭りのあと 世界陶芸祭 出店、スタッフら 看板、ノポリ撤去(京都)
  ■全車両撤去し走行テストへ(朝日)
  ■新幹線にはねられ 中年の男性が死亡(京都)
  ■信楽鉄道の衝突地点 貴生川駅から9.1` 捜査本部特定(京都)
18日■事故の2社に保安監査実施 信楽惨事で運輸省(京都)
  ■信楽高原になにが起きた 列車衝突事故 理解越えた? 信号システム 3セクの合理化 脅かされる安全(京都)
  ■事故車両走らせ検証 県警捜査本部 双方の構造確認 ブレーキ痕 二十数b手前(京都)
  ■乗客に愛された鉄道マン 信楽高原鉄道殉職運転士ら5人 しめやかに葬儀(京都)
  ■窓 二重、三重に安全施策して 左京区・宮本直美(主婦・58)(京都)
  ■信楽列車事故 誤出発検知前に信号通過か 信号系に時間的すき間(朝日)
  ■信楽高原鉄道 速度も出しすぎか 激しい損傷 遅れに焦り?(朝日)
  ■JR京都駅改築案 こうなります 南北分断 京大建築科山崎助手が完成予想写真 「行政自ら都計を」(朝日)
  ■読者プラザ 客を乗せずに市バスは発車 上京区 村上 明(会社員 57歳)(朝日)
  ■JR西日本 安全綱領変更していた 遅れたら処罰 民営化で効率優先 信楽鉄道事故 青信号で停車 運転士には判断余地なし(京都)
  ■新たに検知器2基を押収(京都)
  ■来月16日に合同慰霊祭 県が意向 信楽町民体育館で(京都)
  ■夕刊ひろば 乗り合わせ軽傷、補償は 「全容把握へ 連絡をすぐ」(京都)
  ■合同葬来月16日 信楽惨事(朝日)
19日■当分バス代行続行 信楽高原鉄道 臨時取締役会 初の顧問制導入(京都)
  ■JR西労組が分裂へ 総連脱退反対派 23日に新労組を結成(京都)
  ■「安全意識やや欠けた」運輸省が保安監査 信楽鉄道の甘さ指摘(京都)
  ■犠牲者悼み現場に祭壇(京都)
  ■見舞金用の銀行口座開設 信楽町の事故対策本部(京都)
  ■見舞金総額1000万円 JR西日本が支払う(京都)
  ■信楽高原になにが起きた 列車衝突事故 13人中11人犠牲 その時、乗客ら先頭車に 高原鉄道列車 負傷の車掌彗代行証言(京都)
  ■走れニュートレイン〈6〉 スーパーホワイトアロー JR北海道 ゆったり、風景一望(京都)
  ■JR西労組 分裂状態に(朝日)
  ■ワールドビュー 韓国 新幹線の来年着工固まる 日独仏で受注合戦へ(朝日)
  ■運輸局職員出迎え 「遅れ取り戻せ」速度アップ 信楽事故 ”臨時乗務員”が証言(朝日)
20日■遺族ら次々供養 怒りと悲しみ、交錯させ 事故後初の日曜(京都)
  ■信楽高原になにが起きた 列車衝突事故 すでに1週間 人為的か機器の故障か 検証重ね究明急ぐ(京都)
  ■京阪と乗用車衝突 東山の京津線 バスまきぞえ(京都)
  ■東京駅発着指定券 きょう発売 東北・上越新幹線(京都)
  ■列車双方、警笛なし 信楽事故現場 見通し悪い急カーブ(朝日)
  ■人プリズム 旧国鉄・私鉄全線完乗の佐々木彦三さん 壮大なムダだけど(京都)
  ■信楽惨事1週間 途方に暮れる遺族 補償…考える余裕なく(朝日)
21日■信楽鉄道事故 県会が特別委設置へ 30日に臨時議会 補償、再建など対応(京都)
  ■全労連調査団現地聞き取り 信楽鉄道事故で(京都)
  ■信楽高原でなにが起きた 列車衝突事故 苦闘続く町役場 ”小世帯”を直撃 行政機能まひ寸前(京都)
  ■1日からダイヤ改正 京阪・特急など増発(京都)
  ■「都市計画の変更ノー」 JR駅改築で市民団体 京都市へ申し入れ(朝日)
  ■JR内の連絡も不完全 信楽鉄道事故 駅−列車 大部分、無線届かず(朝日)
  ■「徹底合理化が要因」信楽鉄道事故 全労連が独自調査(朝日)
  ■信楽町 1年間「喪」に服す 町長、鉄道存続を強調(朝日)
  ■まず4両を貴生川駅へ(朝日)
22日■信楽高原鉄道 県幹部OB2人を派遣 稲葉知事 補償交渉と再建で(京都)
  ■再建、可能な限り協力 JR西(京都)
  ■信楽事故 つかめぬ負傷者数 県・県警・消防・JRの各発表 最大72人の開き(朝日)
  ■JR京都駅 改築積極的に推進 田辺市長 従来の方針強調(京都)
  ■JR奈良線「六地蔵駅」新設を申請 来年8月に完成(京都)
23日■信楽事故 衝突時刻など特定 JR出発信号手前にいた?(京都)
  ■近畿運輸局へ存続指導要請 稲葉知事(京都)
  ■町に激励、見舞金相次ぐ 信楽鉄道事故 陶芸祭前売り券払戻辞退も馳(京都)
  ■JR側にも過失強まる 信楽惨事 5分以上の遅れ 複数証言 連絡義務に違反?(朝日)
  ■高層例外措置、波及せぬ JR京都駅改築で市長(朝日)
  ■「六地蔵駅」を申請 JR奈良線(朝日)
  ■信楽駅ATS作動せず ホーム増設で構造欠陥(京都)
  ■信楽事故の究明担当 運輸局調整官が自殺 枚方の官舎(京都)
  ■信楽列車事故 信号機のナゾ解明へ 走行テストの準備入り(朝日)
24日■信楽鉄道事故 補償は全面支援 衆院委で運輸相「マニュアル総点検」(京都)
  ■信楽高原になにが起きた 列車衝突事故 誤出発検知装置の作動時 伝達正常なら信号所「赤」 回路のトラブル? 県警究明(京都)
  ■海へ直行便マリン列車 JR西日本(京都)
  ■臨時列車581本運転 JR福知山支社 夏のダイヤ発表(京都)
  ■京都−鹿児島間の高速バス認可申請(京都)
  ■「JR西労」が発足 民営化後初の分裂(京都)
  ■JR株、今年度上場せず 運輸省、市場低迷で決断(朝日)
  ■補償へ財政支援 自治省に要請へ 運輸相が答弁(朝日)
  ■職員・OBら7人 信楽鉄道へ派遣 株主の滋賀県など(朝日)
  ■現場の検証ほぼ終える 走行テスト実施へ(朝日)
  ■JR西労組が分裂 JR西労が結成大会(朝日)
  ■JR株式 本年度の上場は困難 運輸省検討 市場混乱を懸念(京都)
  ■信楽鉄道事故の教訓(京都)
  ■「お待ちどうさん」はダサい? 南海電鉄の車内放送 新空港…”国際化”へ泉州言葉見直し(朝日)
25日■「超高層化への恐れ」JR京都駅ビル改築考える集会 原氏の案を批判(京都)
  ■叡山電鉄株 京阪が6割取得 再建支援と沿線開発も(京都)
  ■JR西日本 常設訓練センターを建設 信楽鉄道事故再発防止 緊急会議で決定
  ■信楽高原鉄道「補償」「運行再開」へ体制 北川社長らを正式選任 会見で信頼関係強調(京都)
  ■信楽惨事 代替バス、鉄道と同じ料金 運行再開のメドなく(朝日)
  ■京都観光・2日乗車券 交通局 来月1日から発売(朝日)
  ■信楽鉄道事故 車両撤去始まる(京都)
  ■事故車両の移動を開始 信楽現場に残った3両(朝日)
26日■走れニュートレイン〈7〉アーバンライナー 近鉄 私鉄のスピード王(京都)
  ■信楽事故 補償交渉へ動き出す 遺族らちかく弁護団結成(朝日)
27日■払い戻しを義援金に 陶芸祭の未使用券 信楽町民ら申し出(朝日)
  ■衝突現場から全車両を撤去(朝日)
  ■信楽高原鉄道 新体制スタート(朝日)
28日■負傷者は576人信楽列車事故(京都)
  ■駅周辺整備は不可欠 京都駅改築で商店主ら市民集会(京都)
  ■地方都市はバスを基幹に 運輸省部会が報告(京都)
  ■「九条山駅をぜひ」 地下鉄で地元が要望(朝日)
  ■駅東部の再開発を JR駅ビル問題で 崇仁協藷会が集会(朝日)
  ■信楽事故でJR側信号 県警が「青」裏付け 待避所の制御盤ランプ 誤出発痕跡なし(京都)
29日■信楽・陶芸の森 再オープンの日程、白紙に(京都)
  ■衝撃広がる信楽事故 第3セクターに苦悩の色 安全対策模索も厚い”赤字の壁”(京都)
  ■南北動脈 きょう10周年 地下鉄 赤字が常態化 問題点探ると 建設費が財政圧迫 市バスは乗客離れ 東西線の建設難航(朝日)
  ■広島・橋げた事故 犠牲者15人に 入院中の主婦死亡(朝日)
  ■信楽鉄道事故 補償問題で四者協設置 被害者を早期救済(京都)
  ■信楽事故 「四者協」を設立 JRと県など 補償交渉の窓口に(朝日)
  ■乗員乗客の総計は724人 信楽事故捜査本部(朝日)
30日■負傷者、京は最多266人 信楽高原鉄道事故 都道府県別の内訳(京都)
  ■観光バス2社 値上げを申請 「帝産」と「京阪国際」(京都)
  ■信楽高原鉄道の再開 JRへ協力要請 衆院特別委 運輸相答弁(京都)
  ■JR西日本904人を異動 京都駅ビルなど 関係会社に223人出向(京都)
  ■私鉄13社 値上げへ 実施は11月 15%弱の見込み(朝日)
  ■開通1ヵ月 トロッコ列車 人気は超特急 7万6000人利用 年間予想の過半数 保津川下り乗客倍増 5月(京都)
  ■JR京都駅高層化問題 住民案は高さ24b 駅の機能を最優先(朝日)
  ■貸し切りバス 料金アップへ 南海観光まず9%申請(朝日)
31日■保津峡トロッコ体験列車も JR福知山が夏の臨時列車 「マリン号」新設(朝日)
  ■JR7社とも増収増益 本州3社 1割配当、役員に賞与 3月期決算(朝日)
  ■花博効果で最高の収益 JR西日本(朝日)
  ■京都駅改築訴訟 「高層ビルは景観破壊」 第1回口頭弁論 西山氏ら意見陳述(京都)
  ■ソ連で列車が爆発、多数死傷(京都)



1日■労組地本幹部を鉄パイプで襲撃 警官発砲、1人は逮捕 茨城
 1日午前1時ごろ、茨城県東茨城郡美野里町、JR東労組(JR総連翼下)水戸地本組織部長湯原正宣さん(48)方で、鉄パイプを持った5、6人のグループが襲撃し、正宣さんは全身を打たれて重傷、妻キヨ子さん(46)も頭や足に軽いけがをした。湯原さん方には、事前の情報で県警の私服警官4人が張り込み中で、男たちに短銃を発射、1人のあごと左胸に命中した。男は大けがをして病院に運ばれ、殺人未遂、住居侵入の現行犯で逮捕された。
 県警警備部と石岡署は2週間ほど前から過激派が湯原さん方を襲うという情報をキャッチ、現場近くを巡回、見張っていたという。
 湯原さんは急動労出身。JR東労組水戸地本では89年2月、前組織部長が中核派とみられるグループに路上で襲われて死亡しており、湯原さんは後任だった。(朝日新聞 夕刊)
■電車にひかれ母子?即死 泉佐野の阪和線
 1日午前5時25分ごろ、泉佐野市泉ヶ丘四丁目のJR阪和線東佐野駅北約70b付近で、赤ちゃんを背負った女性が線路に入ってしゃがみ込むのを鳳発和歌山行きふつうあ電車の運転士が見つけ、非常ブレーキをかけたが間に合わずはねた。女性と赤ちゃんは全身を強く打って即死した。(朝日新聞 夕刊)
2日■検分 建都1200年事業 あと3年 E 京都駅改築 高層化で景観論争 注目される行政の対応
 京都駅ビル改築に向けて、京都駅ビル開発会社が内外の著名建築家7人から募集した駅ビル設計コンペの応募作品が4月25日、平安建都1200年記念協会の役員を対象に、京都市上京区の京都私学会館で公表された。「事前展示会」と名付けた会場には、駅ビル模型の写真パネルや設計図のコピーなどで7人の全作品を展示。同日夕までに荒巻禎一府知事、田辺朋之京都市長をはじめ、同協会役員の3分の1に当たる54人が訪れ、展示に見入った。
 同じ日の午後。京都駅高層化に反対する住民運動団体の代表5人は、京都弁護士会館で記者会見。「(協会役員だけへの公表は)市民への公開拒否であり、コンペは即時中止するべきだ」との声明を出し、景観への懸念を表明した。
 設計コンペは昨年11月、同開発会社とJR西日本が主体となって、指名方式で米、英、独各1人と国内4人の建築家に設計を依頼した。出そろった7作品は、高さ約60bから最高120bと、いずれも京都市の現行の高さ規制を上回っていた。また、「建都1100年で建立された平安神宮に匹敵するモニュメントとして、1200年には京都駅周辺に羅城門の復元を」(昨年3月、木下稔・1200年記念協会理事長=当時=の記者会見発言)との同協会側の意向をくむかのように、羅城門をイメージした作品も2点、含まれていた。
 京都駅の歴史は1877年(明治10年)、赤れんが造り、2階建てで開設した七条停車場に始まる。1914年(大正3)、木造ルネサンス様式の駅舎に建て替えられるが、終戦間もない50年(昭和25)、火災で焼失。2年後の52年、3代目として現在の駅舎が出来た。資材調達も思うにまかせない時代の建築だけに、「京都の玄関口にふさわしい駅舎に改築を」との声は、早くから聞かれた。
 それが83年、京都府、京都市、京都商工会議所が共同で当時の国鉄に改築を要望したころから、改築計画は現実味を帯びてくる。翌年には建都1200年記念事業に位置付けられ、85年には府、市、会議所、国鉄の4者で構成する京都駅改築協議会が発足。さらに90年、改築実行計画が発表され、駅開発準備金社は駅ビル開発会社に改組された。
 「最初は行政側から要望したが、国鉄の分割民営化後は、JR西日本の方が改築に熱心になった」(京都市幹部)ことで、「94年度完成」に向けた動きは一層、加速されて行った。
 京都市の内田俊一活性化推進室長は「新駅ビルは、人が交流し、人でにぎわう機能を期待したい」とし、設計コンペについては「京都の新しい出発を象徴するデザインが選ばれると思う」という。また、田辺市長は先月25日、事前展示会に当たり、「(審査会で)選ばれた作品には必要な手続きを踏んで対応する」とコメントを発表。改めて高さ規制緩和の方向を示唆した。
 一方、「高層化は京都の歴史的個性を喪失させ、京都全体の景観のバランスを大きく崩す恐れが強い」(大西国太郎京都芸術短大教授)と、危惧(ぐ)する声も根強い。
 設計コンペの審査会は7、8日の2日間開かれ、いよいよ、4代目の新駅ビルのデザインが決まる。そして、京都駅論争の焦点は、京都市が本当に高さ規制の壌和にゴーサインを出すかどうかに移る。(京都新聞)
■飛び込み?死亡 京福電車遅れる
 1日午後9時半ごろ、右京区西院春栄町の京福電鉄嵐山線で、女性が四条大宮発嵐山行き電車(1両編成)にひかれ、約80b引きずられて電車の下敷きになった。市消防局救助隊が電車をジャッキで持ち上げて救出したが、間もなく死亡した。電車の乗客約70人は無事だった。
 太秦署の調べによると、近くに住む女性(63)らしく、目撃者の話では頭から電車に飛び込んだという。
 この事故で、電車が現場に約45分間停車したほか、後続の4本が30−10分遅れ、約200人の足に影響があった。(朝日新聞)
■46年ぶり復活 稚泊フェリー就航
 敗戦時まで「稚泊(ちはく)航路」と呼ばれる定期航路のあったソ連・サハリン(樺太)のコルサコフ(大泊)と北海道・稚内港の間に不定期のフェリー便が就航、2日午前、コルサコフ行きの第一便がツアー客ら83人を乗せて稚内港を出港した。
 46年ぶりとなる航路復活は、軍港として外国船入港が認められていなかったコルサコフ港がことし2月、対外開放されたことを受けて実現した。
 出航したフェリーは「東日本海フェリー」(本社札幌市)の「第10宗谷丸」(1554d)。サハリン観光ツアーを企画してい旅行会社「タイムス観光」(同)がチャーターした。2日午後4時(日本時間)にコルサコフに入港、同港では里帰りするサハリン残留邦人の一行約100人を乗せ、3日、稚内港に戻る予定。同航路には9月までに計10往復が運航される。(京都新聞 夕刊)
3日■余部鉄橋で運転制限
 2日午後1時50分ごろ、兵庫県城崎郡香住町余部のJR山陰線余部鉄橋で22bの強風を記録したため同福知山支社は同5時35分ごろまで列車の運転を制限した。
 普通列車1本が運休したほか倉吉発京都行き上り特急あさしお10号など特急10本、普通19本が35分−10分遅れ、1500人に影響した。(京都新聞)
■検分 建都1200年記念事業 あと3年 F 迎賓館 調査費獲得で弾み 地元で試案 具体化促す
 「京都は伝統文化と新しさがとけ合った素晴らしい都市。訪問できて本当にうれしい」。先月19日入洛したゴルバチョフ・ソ連大統領は、京都市内のホテルで開かれた晩さん会のスピーチで古都・京都を絶賛した。
 今年になって同大統領のほか、スウェーデンのイングヴァル・カールソン首相やソ連のベススメルトヌイフ外相、メキシコ上院議員団など海外からの賓客が相次いで京都を訪れた。ゴルバチョフ大統領の場合は各地から受け入れプロポーズが殺到した中で、東京以外では京都と長崎だけが訪問先に選ばれた。最近5年間に京都を訪れた国賓、公賓は25人。来日するVIPのほとんどが、日本を代表する歴史文化都市・京都を訪問するといっても過言ではない。
 建都1200年の平成6年、世界へ向けた関西の玄関口として関西新空港が開港する。外国からの賓客は飛躍的に増える。しかし京都はもちろん関西には、これらの賓客を接遇する国の迎賓館がない。
 関西財界を中心に、新空港開港に合わせ平成5年サミット(先進国首脳会議)を関西に誘致する動き活発化し、これらと連動して「京都に第二迎賓館を」との構想が浮上した。サミット開催は大阪で、招宴行事は京都の迎賓館で−との思惑。その後、新空港開港が当初見込んでいたサミット開催年より遅れることが確実になったため、迎賓館構想はサミット誘致とは切り離し、京都を訪れる国賓、公賓を恒常的に接遇する、建都1200年と平成新時代のエポックとなるような施設として建設するよう国に働きかけてきた。
 昨年7月、京都府、京都市、京都商工会議所の3者が連名で京都への迎賓館誘致を政府に要望した。国の迎賓館としては、旧赤坂離宮(東京)を改修した迎賓館があるが、フランスのベルサイユ宮殿を摸した洋風建築で外国の賓客には珍しくない。上京した荒巻禎一知事らは大蔵省、外務省、総理府、宮内庁など各省庁や自民党など関係各方面を精力的に回り、古都・京都にふさわしい和風迎賓館の必要性を強くアピールした。
 京都府、京都市と一体となって迎賓館誘致に乗り出している京都商工会議所の塚本幸一会頭も「建都1200年を機会に、日本の歴史文化の中心地である京都に、わが国の伝統的な建築様式を取り入れた世界に誇れる和風迎賓館がぜひ必要」と力を込める。大阪、神戸の両商工会議所や関経連など関西財界も積極約に支援に動き出している。
 こうした誘致運動が功を奏し、本年度政府予算で国土庁の地域活性化対策推進費10億円の一部が迎賓館建設のための調査費に活用されることが決まり、建設実現への突破口が開けた。これを受け、国は近く建設へ向けて調査・研究に入ることになっているが、肝心の所管官庁がまだ決まっていない。赤坂の迎賓館の場合も、う余曲折を経て総理府の所管に落ち着いた経緯がある。
 荒巻知事は「京都の歴史や文化などを考えれば京都御所周辺が最も望ましいが、その前にどの省庁が所管するかが先決。中央の動きを待っているだけでなく、建設場所や規模、運営形態なども含めて今夏までに地元サイドの試案をつくり、これをもとに迎賓館建設がさらに具体化するよう働きかけていきたい」と、今夏の来年度政府予算概算要求に向け要望活動を一層強化する考えだ。
 完成目標の平成6年までわずか3年。日本文化を象徴する和風迎賓館が建都1200年に花を添えられるかどうかの正念場を迎えた。(京都新聞)
4日■JR奈良線 信号機故障 9000人の足乱れる
 3日午後4時45分ごろJR奈良線京都−桃山駅間の信号機8基が故障し、同区間の運行が一時停止した。このためJR西日本は同区間を信号機にたよらない方法で運行させたが、午後4時44分発奈良行き快速電車潮が50分遅れで京都を出るなど、夜まで上下計45本が部分運休したり遅れたりして約9000人の足に影響が出た。信号機は午後9時半ごろ復旧した。
 同社によると原因は、京都市伏見区の同線稲荷駅で社員らが信号ケーブルを交換していた際、誤って回線をショートさせたため。(京都新聞)
■検分 建都1200年記念事業 あと3年 G 岡崎一帯を再整備 面積の拡充も必須条件
 ゴールデンウイークを楽しむ家族連れでにぎわう岡崎公園(京都市左京区岡崎)は、京都の市街地では数少ない都市公園である。
 岡崎公園は、遷都1100年記念の一つとして明治28年に開催された「第4回内国勧業博覧会」の跡地を利用、同37年に建設された。巡って 100年。京都会館、美術館、動物園などすっかり市民の文化的な活動の中心地となった公園を、21世紀に向けた文化芸術ゾーンとして再整備する計画が京都市の手で進められている。
 対象地域は都市公園区域(15f)と周辺区域(10f)を合わせた25f。交通問題、施設の老朽化、施設配置の高密度化など積もった諸課題を解決し、「優れた景観との調和を図りつつ、文化の活性化のための基盤づくりを進める」(京都市企画調整局)のが、再整備計画の狙い。このため昭和60年に「岡崎公園関係課長会議」を庁内に設置、計画案を練ってきた。
 先月27日。岡崎公園北東部のグラウンドに、地下駐車場(500台収容)を建設するための起工式が行われた。同公園には京都会館東側に駐車場があるが、手狭。日祝日には道路に車があふれ返り、およそ公園とは呼びがたい。総工費70億円。平成5年3月末に完成する。
 今一つ、ビッグプロジェクトが同公園でまもなく動き出す。京都市勧業館の全面改築がそれだ。
 勧業館はさきの「第四回内国博」の際、パビリオンとして建設されたのが前身。現在の建物は昭和12年の建設。以来、京都の中核的なイベント会場として、伝統産業を中心にした展示、見本市会揚として活用されてきた。しかし国立京都国際会館イベントホール、京都府総合見本市会館など最新設備の展示会場が増える一方で、勧業館の老朽化がいやがうえにも目立った。市は平成2年度に整備基本計画策定費2000万円を計上し、勧業館再整備基本計画検討委員会(座長、米山俊直京大教授)のもとで検討してきた。
 この結果、勧業館のすぐ西の京都市伝統産業会館もこの際、撤去し、あわせて約2万平方bの敷地に、両館の機能をあわせもった施設を建設する意見が強く出され、この方向での計画の具体化が図られようとしている。平成6年度中に完成させる。
 岡崎再整備計画案の中で、この間にすでに完成した施設もいくつかある。一昨年8月、疏水記念館が、疏水インクラインの西にオープンした。その1ヵ月後、疏水記念館のすぐ南東に京都帝国際交流会館が開設された。国際観光都市・京都が、市民レベルでの国際交流を推進する狙いで、約40億円を投じた。京都市は今後さらに、第二美術館建設構想や京都会館の新たな役割の検討に入る。ただ岡崎公園は都市公園法によ建物の建ぺい率(7%)を超える9%の建造物が建っており、これ以上の施設建設には公園面積の拡充が必須条件となっている。また東山を借景にしているものの、公園としてはいかにも緑に乏しい。グラウンドや動物園のありようも含めて緑地の確保に力を注ぐ必要がある。
 「これまで比較的順調に事業化できてきたが、公園面積の拡大は難問」(折坂企画調整局計画課長)として、疏水べり散策道の公園化など多角的な検討に入っている。(京都新聞)
5日■古都の景観 守れるか JR京都駅高層化で論争白熱 規制緩和へ危機感 経済活性化を重視
 年間約4000万人の観光客を迎え入れる京都で、景観論争が再燃した。3年後の平安建都1200年記念事業の目玉として計画されているJR京都駅の改築・高層化計画が、実現に向けて具体的に動き始めたためだ。事業主体の京都駅ビル開発会社(社長・井手正敬JR西日本副社長)が国内、外の建築家7人に委嘱していた設計案は、4月25日に公表されたが、ビルの高さは約60bから、最高120bまであり、7案とも同地域の現行の高さ規制(原則31b、特例45b)を超えている。駅ビル高層化には、京都仏教会が反対の姿勢を打ち出し、約2000人の市民が知事や市長、会社を相手に公金支出差し止め訴訟を起こしている。「経済活性化の起爆剤に」とする京都経済界の高層化待望論がある一方、駅周辺では猛烈な地上げが進み、「高さ規制の緩和によって古都の景観破壊が決定的になる」と危ぶむ声も根強い。
 「日本の古都であり、芸術文化の宝庫」ということで第二次大戦で大きな戦災をまぬがれた京都市。その都市計画のなかで他都市と比べ際立っているのが、市独自に設けた建物の高さ規制だ。88年4月、建築基準法に基づき市が「総合設計制度」を導入、高度地区(地域によって6種)にそれぞれ高さのガイドラインを設けるまで、市内では原則として31bを超える高層建築物の建設が認められなかった。
 ただひとつの例外は、京都駅前に立つ京都タワー(高さ131b)である。1964年、東京オリンピックの開催、東海道新幹線開通の年に建てられたこのタワーについては、市を二分する景観論争が当時、起きた。市は、建築物ではなく「巨大工作物」という解釈を採って、”超法規的”に認められた経緯がある。
 間もなく、市内の名勝双ケ岡の開発問題が起こる。これらの反対運動が2年後の「古都保存法」の制定につながっていく。それから四半世紀、市は市域の4分の1を占める風致地区をはじめ、美観地区、歴史的かいわい景観地区などを次々と指定、市全域にきめ細かな景観行政の網を張りめぐらし、同法は京都の景観保全にそれなりの役割を果たしてきた。
 しかし、ここ2、3年、土地ブームが建物の高層化をあおり、古くからの町並みをゆがめたことから、再び「景観」が市民の関心事となった。乱・再開発をめぐる論争地は数多い。京都同様、戦禍をまぬがれた奈良でも、JR奈良駅の40b化計画に、市民から強い反発が起き、京都では京都ホテルの60b改築計画に反対の声が上がった。
 京都に比べ大阪、神戸両市ではすでに関西新空港完成をにらんだ交通網、宿泊機能の整備に入っている。京都は、新幹線で新大阪へ16分の至近距離。新空港と連動が可能な商業機能の新拠点づくりになる、と京都経済界の期待は大きい。景観保護か、経済効果重視か、JR京都駅ビルに対する市の判断が、全国各都市の景観行政に影響を及ぼすことは間違いないだろう。
・「歯止めを失い乱開発」
 古都の景観保存運動を進めている市民グループは労働団体などと「高層化に反対する組織」を結成、京都仏教会も景観を守る立場から「絶対反対」の方針を取り、京都市長に景観保全策を要望している。
 京都市の観光事業の売り上げは年間約1兆3000億円。波及効果を含めると約2兆3000億円にのぼり、市内商工業全体の25%を占める勘定だ。東山に代表される周囲の山並みと、寺院、町家のたたずまい、国内の国宝の20%、重要文化財の15%を占める「文化財の宝庫」であればこそ、観光客が訪れる。
 しかし、観光立地にもかげりが見える。市の調査では、修学旅行生が84年の140万人台をピークに、88年には120万人台に落ち込んだ。町家は高いビルに姿を変え、東山の山ろくまでマンションが迫り、去年、清水寺は近くのマンション予定地を10億円で買収、景観破壊を食い止めた。裏千家家元の千宗室氏が60bの高層化改築計画を進める京都ホテルの役員を辞任する事態にもなった。
 京都駅の南口、北口では東京や大阪の資本に地元資本が入り乱れて、土地の買い占めが行われている。去年秋の調査で住宅地のアップ率が全国一となり、東京、大阪に迫る。いまははとんどさら地だが、新京都駅ビルの高さ規制が緩和されるのを待つ状態だ。緩められれば、景観保全に歯止めがなくなる恐れは強い。
・ホテル・百貨店入り規模日本一
 現在の京都駅舎は、1952年に完成した3代目。大正天皇の即位大典を機に14年に新築された2代目駅舎が、50年の失火で焼失したため、再建された。物不足時代の建物だけにJR東海道線の主要駅のなかではもっとも貧弱だった。旧国鉄の分割、民営化などで中断していた改築計画は88年11月、塚本幸一京都商工会議所会頭(ワコール会長)が京都駅改築協議会の座長に就任して動き出した。その際、塚本会頭は「国際コンペを実施し、市に高さ制限の緩和を求め、高層化も検討する」と表明、いまの計画のレールが敷かれた。
 京都は明治維新に伴う遷都で経済力を失ったが、1894年(明治27)の建都1100年の際には、琵琶湖疏水を完成し、国内都市で初の路面電車を走らせ、中央資金の導入によって都市基盤を整備させた実績を持つ。1200年を機に、京都駅ビルの改築を始め、地下鉄東西線の建設、JR二条、山科両駅周辺の整備も記念事業として位置付けた。
 京都駅ビル改築実行計画によると、規模は西日本一となり、大阪駅ビルの約1.5倍に当たる延べ23万4000平方b。このうち駅施設は1万平方bで、乗客が3年後に約四割増えると想定した。ホテルは延べ7万7000平方bで、客室は670室、大宴会場や高級レストランを備える。商業施設の売り場面積は5万平万b。このうち百貨店が4万5000平方bを占める。
 ホテルはJR西日本の直営、百貨店は伊勢丹と共同出資の子会社が経営する。JR東日本の上野駅が300b、JR東海の名古屋駅が250bと、JR各社の新駅ビル高層化計画が打ち出される中、JR西日本も京都駅改築を「社運をかけた事業」、地元財界も「経済活性化のバネに」と意気込んでいる。
・最優秀作品8日に決定
 公開された作品は今月7、8日に審査会を開き、8日中に最優秀作品を選ぶ。市民への一般公開は6月12日から18日まで中京区の京都文化博物館で。
 選ばれた作品は市と府の都市計画審議会に諮られ、認められれは事業に入る。市によると、都市計画法は原則的に建物の高さを制限していない。市独自に定めている高度規制最高限度である60bを超える案が選ばれても「法的には可能」だ。そのうえで、「世間常識を考慮に入れ、判断は都計審の先生に任せている」と説明している。
 今年度中に都市計画上の手続きを終え、年度末ごろには駅施設の工事に着手、92年度からはホテル棟や商業棟工事にもかかり、94年度には主要部分を完成させる段取りだ。駅ビル本体の工費は約700億円で、テナントの内装などを含めると1000億円を超える。
・特例認めると次々開発には制約必要 「のっぽピル反対市民連合」中島晃事務局長に聞く
 京都駅改築の最大の問題点は、都市計画法をないがしろにしていることだ。設計募集の段階で、特例でも45bまでという高さの制限を度外視した。行政も「デザイン重視」とし、その内容に従う意向を示している。まず、建物ありき、なのだ。京都市の助役は、都市計画審議会の会長を務める一方で、駅ビル会社の取締役にもおさまっている。これでは、チェック機能が働かない。
 老朽化した駅を建て替えること自体には異議はない。ただ、平安建都1200年の記念として造られ、京都の玄関口という性質からいって、市民の意見を十分に聴く必要がある。ところが、7人の建築家が設計し、決める審査会は11人のみ。宝ケ池の京都国際会議場のコンペは作品を公募した。
 もうひとつ、注意しておきたいのは、「駅ビル」とはいっても、駅部分は23万平万bのうち1万平方bに過ぎないということだ。いずれも京都最大になるデパートとホテルのために、異例の高さがなぜ許されるのか。
 なるほど、120bのビルが出現したところで、ただちに東山や北山の眺望がさえぎられるわけではない。駅周辺の景観がそれほどすぐれているわけでもない。しかし、特例をひとつ認めれば、京都のどこにでも高層建築が建つ恐れが出る。
 全国各地の小京都でも、町並みの保存が難しくなっていると聞く。手本となるべき京都が、その役割を自ら放棄すれば、日本中の都市はこぞって、「リトル東京化」してしまうだろう。開発が必要なのは京都も同じだが、おのずと制約があるはずだ。
 運動を始めたころは、どの作品も100bの大台を超えるのだと思っていた。その意味で、コンペの候補作品を見て、ちょつと意外な感じがした。われわれのグループばかりでなく、日ごろ表立たない人まで、この問題に発言するようになったからではないか。
 《のっぽビル反対市民連合》 「住環境を守る京の町づくり連絡会」(木村万平代表)など住民運動約10団体が参加して、去年10月に結成した。JR京都駅と京都ホテルの高層化に反対して、署名活動やビラまき、集会などを開いている。
《審査全メンバー》
 審査委員長 川崎清 審査員 磯崎新、内井昭蔵、笹田剛史、ユージン・ベンダ(米)、ハンス・ホライン(オーストリア)、レンゾ・ピアノ(伊)=以上建築家。塚本幸一・京都商工会議所会頭、梅原猛・国際日本文化研究センター所長、角田達郎・JR西日本社長、井手正敬・京都駅ビル開発会社社長
・国際コンペの7作品
安藤 忠雄氏 デザインのイメージは、都市南北の分断を解消する羅城門と自然を引き込む人工地盤(グリーンステージ)。建物全体の中心は地下に沈んだ巨大な円形坪庭。(高さ72.5b、地下3階、地上15b階)
ベーター・ブスマン氏 デパート中心の街としての「市場」と、京都の通り割りをイメージ。7、8階の東西に古い京都を回想させる通りを再現する。外観はガラス主体。(62b、地下3階、地上14階)
原 廣司氏 東に段丘、西に斜面をイメージしたコンコース。随所に採光の工夫を凝らす。階段型百貨店や空中経路などに特徴。西段丘の上には市民広場。(59.8b、地下3階、地上16階)
池原 義郎氏 東側に「門」、中央部のコンコースに「光の谷」、西側に「段丘の街」をイメージ。東から西へ低くなる形態で全体の視覚的低層感を強調する。(60.3b、地下3 階、地上17階)
黒川紀章氏 平成の羅城門をイメージし、町屋と寺院の屋根を思わせる消し炭色を使う。デパートの上にホテルを配し、最上階には逆三角形のスカイラウンジ。(120b、地下3 階、地上30階)
ジェイムス・スクーリング氏 東側の市民プラザを重視し、東側の南北自由通路を強調している。高層ホテルと京都タワーと市民プラザがモニュメンタルに見えるよう配慮。(120b、地下4階、地上29階)
バーナード・チュミ氏 「七街道」「のぼり」「やぐら」を7つの62−83bのやぐらに象徴させた。ホテルや商業などの各施設をブロック化させた。(83b、地下3階、地上18階)(朝日新聞)
■走れニュートレイン〈4〉 トワイライトエクスプレス(JR西日本) 旅の楽しさいっぱい
 1988年の青函トンネルの開通と同時に走り出した豪華寝台特急「北斗星」の人気は高く、豪華列車は日本でも脚光を溶びるようになった。
 JR西日本が89年から大阪−札幌間、1502`の長距離を走る豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」を登場させたのは「北斗星」の成功が大きな支えになったからだと言えよう。
 この列車はやはり「北斗星」を意識し、それ以上のグレードアップ車を登場させることによって本格的クルージング列車としての地位を確立したものだ。
 例えば豪華けんらんの言葉がぴったりの展望スイートはダブルベッドにソファ、トイレ、洗面所、シャワーが装備れているが、何よりも素晴らしいのはこの部屋が展望車になっていることである。このように鉄道の旅の楽しさが凝縮されたコンパートメントは世界の列車にもないだろう。「北斗星」と同じ設計ながらロイヤル個室も長距離旅行にはうれしい。
 スイートはおろか、ロイヤルなどの切符は1ヵ月前の発売と同時に完売という人気である。しかし、ほかにB寝台車もあるので、こちらは切符入手がスイート、ロイヤルほどではないようだ。
 食堂車は「北斗星」よりワンランク上を狙っている。沿線の海の幸は大阪の名門ホテルのシェフの監修というから、本格的フランス料理のフルコースが味わえる。トワイライトの日本海を眺めながらの食事や、サロンカーでのバータイムのひとときは豪華列車ならではの雰囲気である。(鉄道写真家・南正時)
 〈メモ〉季節列車でおおむね週4往復運転。所要時間約21時間▽料金(乗車券、特急料金込み)は大阪−札幌スイート大人2人使用で86660 円、ツイン2人使用52660 円、1人用個室ロイヤル36560 円。(京都新聞)
■株式上場へ走るJR3社
 JR東日本、JR東海、JR西日本の3社は、91年3月期決算で初めて民間企業並みに1割配当をし、今年度中の株式上場に向けて走り出した。国鉄の分割、民営化からすでに4年。政府が国鉄改革のゴールとしてきた上場問題が差し迫った課題となってきた。しかし、各社とも10月に行われる新幹線買い取りで、巨額の借金がずしりとのしかかってくる。株式上場をテコに民営化推進を目指すJR各社はいま何を考え、今後どんな経営戦略をとろうとしているのか、を追った。(畑 衆)
JR7 社の会社内容(営業収入、経常利益は90年度計画、カッコ内は89年度実績)
会社名 北海道 東日本 東 海 西日本 四 国 九 州 貨 物  計 
本 社
所在地
札幌市 東京都 名古屋市 大阪市 高松市 福岡市 東京都    
希望している
上場時期
未 定 91年度 91年度 91年度 末 定 96年度 末 定    
主な路線 函館線
室蘭線
東北新幹線
上越新幹線
山手線
東海道新幹線
高山線
飯田線
山陽新幹線
関西線
北陸線
予讃線
土讃線
鹿児島線
日豊線
全 線    
社員数
(人)
12,300 800,800 21,500 48,400 4,300 14,100 11,500 192,900
営業収入
(億円)
1,037(998) 17,819(17,355) 10,325(10,031) 8,452(8,343) 459(439) 1,556(1,439) 2,005(1,921) 41,653(40,526)
経常利益
(億円)
8(2) 1,186(1,034) 978(1,083) 459(402) 61(61) 40(38) 68(64) 2,800(2,684)
・運賃値上げ浮上 経営面にのしかかる新幹線買い取り負担
 「あのレポートはいったいなんですか。新幹線の買い取り負担が一番重い当社は、まるで91年度の株式上場が無理といわんばかりではないですか」
 4月初め、JR名古屋駅内にあるJR東海本社で木村恭平経営管理部長は、訪ねてきた野村総合研究所の調査担当者に声を荒げた。
 「いいえ、そういうつもりで書いたわけではないのですが…」と説明する調査担当者に、木村部長は「しかし、そうは読めないね」と言った切り、気まずい沈黙が流れた。
 発端は、野村総研が3月初めにまとめた「公益企業の民営化と株式市場」と題するレポートだった。91年度中に計画されているJR各社の株式上場についてこのレポートは、新幹線を運営するJR東日本、JR東海、JR西日本3社の上場の前提となっている新幹線買い取り額が巨額であ為ことから「経営に与える影響が大きく、その影響を見極めた後にすべきだ」と指摘。上場を92年度以降に遅らせるとの提言を盛り込んだ。
 とりわけ、買い取り額が一番大きいJR東海の場合、経営面への影響が「顕著に表れる」と結論づけたことが、91年度中に株式上場を目指す同社を強く刺激した。
 新幹線の施設と線路が通っている土地は現在、新幹線保有機構が持ち、東海道新幹線はJR東海、山陽新幹線はJR西日本、東北、上越新幹線はJR東日本に同機構がリースしている。しかし、上場に向けて資産と負債を確定する必要が出てきたため、このJR3社は今年10月に、新幹線を買い取ることを決めた。JR東海による東海道新幹線の買い取り価格は、JR東日本の3兆円強を大幅に上回る5兆823億円。同社が負担能力の限界とみていた試算額を、5000億円も超えてしまった。
 しかし、木村部長は「それでもなお、株式上場後、健全な経営はできる。新幹線買い取りの負担が重いから、上場はできないという論理は成り立たない」と反論する。
 89年度の同社の経常利益は1083億円。新幹線買い取り後の92年度からは、借金の急増で経常利益は約400億円減り、600億円前後にダウンする。それでも、東京証券取引所一部上場の基準である「純資産額が1株当たり10万円以上」「1株当たりの利益2万円以上」「上場後は1割以上の配当継続」を、いずれも満たすことができる、とJR東海は先行きの経営に自信を示す。
 とはいえ、新幹線買い取りに伴う5兆円を超える借金は、根雪のように残る。支払い金利だけで年間3300億円にも膨らみ、毎年利子の返済に追われることの繰り返しで、借金の元本そのものは一向に減らないためだ。そこで浮上してくるのが、運賃値上げ論だ。
 JR東海の経営陣の一人は、「借金を抱えたままでいいという考え方もあるが、それだと、経営はその時々の金利に左右され、やるべき投資ができなくなる事態も起きる。それでもいいのかどうか」と語り、借金を減らす手段として将来値上げする可能性を示唆する。もし、運賃を10%上げれは、借金返済のために毎年、800億円以上を充てることができる計算だ。
 JR東日本の住田正二社長も「経営努力はするが、新幹線買い取りで固定資産税がかかってくる。場合によっては運賃値上げをせざるを得ない時がくるかもしれない」と語っている。
 JR各社は私鉄と異なり、関連事業の収入が極端に少なく、運賃だけが頼りの経営だ。今後新幹線増発、新しい車両の投入といったサービス向上を掲げながら、「適正運賃」を求める動きが強まりそうだ。
・目標は「私鉄型」 新線の建設はお断り 鉄道依存脱却めざす
 今年3月、東京・秋葉原−筑波研究学園都市の60`結ぶ常盤新線を建設、運営する第三セクターの設立総会が、東京都内で開かれた。開業は2000年。出資するのは東京都、埼玉、千葉、茨城3県のほか、沿線の12区市町村。しかし、この日の設立総会には、首都圏の通勤、旅客を一手に握るJR東日本の幹部の姿はなかった。
 常盤新線は、首都圏の交通混雑を緩和するため運輸省が打ち出した切り札だった。ところが、JR東日本は一貫して新線建設には慎重で、第三セクターへの出資も断った。
 「常盤新線の建設コストは、地価高騰のあおりで軽く1兆円は超える。運賃収入で回収できる投資の限界額は2500億円。どだい無理な話ですよ」と細谷英二経営管理部長は素っ気ない。「鉄道事業者が新線を建設する時代は終わった」とも言う。
 民営化路線に踏み出した以上、もと来た道にあと戻りはしないという決意が、今回の出資見送りに色濃くにじんでいる。
 JR東日本の現在の借金は、約2兆4000億円もある。さらに10月には東北、上越新幹線の資産を3兆1000億円で買い取るため、借金の総額はJR東海を追い越し、5兆5000億円に達する。国内では、東京電力に次ぐ巨額の借金会社になる。「経営基盤の強化が何よりも急務」と細谷部長は強調する。
 首都圏の混雑緩和に向けた輸送力増強では、車両が数珠つなぎに走っても衝突しないように、ATS(自動列車停止装置)をさらに強化するなど窮余の策をとる。
 新線建設をしない限り首都圏の抜本的な輸送力増強にはつながらないにもかかわらず、この問題についてJR東日本は、常盤新線のケースのように国や自治体にゲタを預けた格好。
 JR東日本と同グループは2001年の全売上高5兆4000億円のうち半分を、グループ企業で稼ぎ出す計画。89年度の実績と比べると、鉄道収入の伸び率は50%と低く見込んでいるのに対して、都市開発、不動産、流通など関連事業の売上高は一挙に3倍に増やし、「脱鉄道依存」の戦略を鮮明に打ち出している。借金の重圧が上場後経営を圧迫しないように、JR東日本は私鉄型のグループ企業を目指して走り出したといえる。
 JR東海も、将来国家プロジェクトとして東京−大阪間のリニア中央新幹線計画を抱えてはいるが、当面新線を建設する考えはない。須田寛社長は「新線建設はもはや一民間企業では負担できない」と言う。国鉄清算事業団が保有している名古屋地区の貨物線の買い取りに対しても、いまのところ消極姿勢だ。
・行方はまだ霧の中 株式売却あせる会社 運輸省・証券界は慎重
 「どの会社の株式から上場を始めるかは、全く白紙です。それどころか、91年度にJR株を上場することすらまだはっきりとは決まっていません」。運輸省の黒野匡彦・国鉄改革推進部長は、株式上場をめぐって先走りがちなJR各社の動きをこうけん制する。
 東日本、東海、西日本などJR主要各社の株式上場について政府は89年12月に、「遅くとも91年度中に上場する方向で検討する」ことを閣議決定した。これを受けてJR株を保有している国鉄清算事業団は91年度予算に、株式売却益として1500億円の収入を早々と計上した。このため、上場が有力視されているJR東日本、JR東海の両社はわれがちに上場しようと、ライバル意識をあらわにしている。
 JR東日本は、「なるべく早くうちの全株式を一括して売り出してほしい」(総合企画本部)と訴えている。政府に株を保有されている限り、運輸省や族議員が役員人事や経営問題に介入するため、こうした束縛から早く逃れたいという意識がありありだ。
 一方、JR東海も「JR東日本の上場が先になるのは納得できない」(須田寛社長)と一歩も後に引かない構え。それどころか、JR東海の株数はJR東日本の半分だから、まずうちの株式を上場する方がやりやすい」と、運輸省に最近ひそかに打診さえした。JR東日本に後れをとれば会社全体の体面にかかわると言わんはかりだ。
 JR西日本も満を持している。「できれはJR東日本、JR東海に後れをとりたくない」と言い、株式上場で先行する2社を追撃しようと、懸命だ。JR北海道、JR四国、JR貨物の各社はいまのところ上場のめどが立っていないが、JR九州は96年度上場を目指して経営計画を立てている。
 ところが、肝心の運輸省は最近一転して慎重な姿勢を見せ始めた。株式市場の低迷が続き、JR株を早いうちに高く売ろうとしたもくろみが狂ってきたためだ。旧国鉄から国鉄清算事業団が引き継いだ債務26兆円の清算は、JR株の売却益と東京・汐留など事業団が所有する大環模用地の売却にかかっている。この債務全体のうち9兆円を株売却益で充てようと考えているが、高値で売るには「いまの株式市況はタイミングが悪い。慎重にも慎重に判断したい」(同省国鉄改革推進部)と話す。
 証券界からも、JR東日本の全株式を売却するだけでも調達額は4兆円を超すとみられることから「いまの株式市況でこれだけ巨大な株式売却はとうてい吸収できず、株価低迷を招いたNTT株の二の舞いになる」(大手証券会社)といった声があがっている。
 JR東日本、JR東海の幹事証券会社である野村証券幹部は「JR株式上場のいまの環境を天気にたとえれば曇り。これから雨になるのか、それともやがて晴れるのか、現段階で予報するのは難しい」と苦虫をかみつぶしたような表情。
 上場申請を審査する立場の、長岡実・東京証券取引所理事長も「市場は悪く、何が何でも今年度に上場というわけでもないだろう」とけん制する。
 政府は早ければ7月にも、今年度中にJR株式上場をするかどうか決めるが、その行方はまだ霧の中だ。(朝日新聞)
7日■京都駅ビル 審査開始 あす 7作品から1点決定
 JR京都駅改築の設計競技(コンペ)審査会が7日から京都市東山区の都ホテルで始まった。内外の指名建築家7人から提出された作品7点を各界代表13人の審査委員が2日がかりで審査、8日、21世紀京都の玄関口にふさわしい最優秀作1点を決定する。
 審査会は午前9時から行われた。冒頭、設計競技主催者である京都駅ビル開発会社の井手正敬社長が「7点はいずれも個性豊かで、どの作品に決まっても、新しい京の街づくりに大きなインパクトを与えると思う」とあいさつ。続いて外国人建築家3人を含む審査委員が紹介され、委員長の川崎清京大教授が「よき伝統を守り新しい創造を目指す京都の21世紀のシンボルを、国際約な視点で選びたい」と述べた。
 この後、技術委員による各作品の構造上のチェックなどの報告と平安建都1200年協会の意見報告があった。午前10時から設計者本人が作品を紹介するプレゼンテーションが1作品40分ずつ、午後まで続けられ、これを受け本格審査が始まった。審査は8日夕まで続けられる。
 会場には、各作品の模型などが作品ごとに掲示され、審査委員は前日初の現地視察を行ったこともあり、新鮮な視点でいろんな角度から作品を見比べていた。また、各作品はいずれも都市計画法で定められた駅周辺の高さ制限を超え60b以上になることから、開会を前に、同駅の高層化に反対している「のっぽビル反対市民連合」(代表・西山卯三京大名誉教授)のメンバーが各審査委員に競技中止を求める要請書を手渡した。(京都新聞 夕刊)
■市バス内でスリ逮捕
 京都府警捜査三課は6日、住所不定、無職関屋博容疑者(42)を窃盗の現行犯で逮捕した。
 調べでは関屋容疑者は同日午後2時10分ごろ、京都市下京区四条通河原町西入ルで停車中の市バス内で、乗客の伏見区醍醐勝口町、主婦青山俊子さん(58)のハンドバッグから、現金約4000円の入った財布を抜き取ったところを、警戒中の同課員に現行犯逮捕された。(京都新聞 夕刊)
■国鉄清算事業団の資材置き場を焼く 京都、子供の火遊び?
 6日午後6時45分ごろ、京都市下京区観喜寺町、国鉄清算事業団所有の資材保管所から出火、鉄骨の消費者金融店「プロミス北浜支店」で、6日午後5時ごろ、利用客から「現金自動預入払出機(ATM)が壊されている」と110番通報があった。
 七条署の調べによると、ATMの前面のステンレス製カバーがこじ開けられていたが、約600万円入りの現金ボックスは機械の奥に取りつけられていたため、現金の被害はなかった。窃盗未遂の疑いで調べている。
 調べでは、この日は休みで、ATMだけが動いていた。午後4時ごろ、防犯カメラが写らなくなっており、犯人が犯行前にカメラを壊したらしい。防犯装置は作動しなかったが、来店する客が多く、犯人は犯行途中で逃げ出したらしい。(朝日新聞 夕刊)
■駅ビルコンペ始まる JR京都
 JR京都駅の改築計画に伴う設計競技(コンペ)の審査会が7日、京都市内のホテルで始まった。8日まで行われ、新しい駅ビルの設計原案になる最優秀作品が選ばれる。
 京都駅の改築は平安建都1200年記念事業の目玉として計画された。JR西日本が中心となってつくる京都駅ビル開発会社(社長・井手正敬JR西日本副社長)が国内外の建築家7人を指名し、改築設計案を募集した。7作品は4月25日に公表された。
 駅周辺の現行の高さ規制は原則31b(特例45b)。公表された設計案の高さは59.8b−120bで、いずれも現行規制を超えている。
 審査会では7日、建築家が自作について説明する。8日は終日審査し、同夕にも最優秀作品を決める。(朝日新聞 夕刊)
8日■JR京都駅改築コンペ審査 注目浴びてきょう結論 どの設計案になっても避けられぬ景観論争
 JR京都駅の改築に伴う設計競技(コンペ)の審査会(川崎清審査委員長)が7日、東山区のホテルで開かれ、出品した建築家7人から作品説明が行われた。審査は8日も続けられ、同日夕にも京都の新しい玄関の設計原案となる最優秀作品が決まる。事業主体の京都駅ビル開発会社(社長・井手正敬JR西日本副社長)とJR西日本が、国内外の7人の建築家を指名、設計案を募集して審査会を開いた。
 主催者代表の審査員を務める井手正敬社長が「建都1200年記念、国際観光都市の玄関にふさわしいものを選んでいただきたい」とあいさつ。プレゼンテーション(作品提示)では、7人の建築家がそれぞれ模型やパネルを使い、40分をかけて自作をPRした。11人の審査員は8日も終日会場にこもり、審査に当たる。
 駅周辺の現行の高さ規制は31b(特例45b)だが、7案ともオーバーしている。市民グループや京都仏教会などは超高層化に反対しており、どの設計案が選ばれても景観論争は避けられそうにない。
・高さ無条件 市民を無視
 京都ホテルの60b化阻止を当面の目標に、高層ビル反対運動を続けている京都仏教会常務理事の清滝智弘・広隆寺貰主は「京都の表玄関にふさわしい風格ある駅に、商業スペースはいらないし、高さは全く不要。一デパート、一ホテルのために京都の景観を壊されては因る。高さに条件を付けないコンペは、市民の意見を無視した出来レース、茶番劇に過ぎない。最低でも約60bあり、こんな応募作品の中から選ぶ審査会など論外だ」と手厳しい。
 大西國太郎・京都芸術短大教授(景観論)は「たとえデザインが良くても、高層建築であるほど景観上、大きな問題が出てくる。結論からいえば、100b以下のものを選んでもらいたい。洛中にはさまざまな歴史的建築があり、100b超級が建てばそれだけが突出してしまう。東・西本願寺、枳殻(きこく)邸、三十三間堂など駅周辺の美的に完成された場所から、巨大な塊がいやおうなしに見えてしまう。東山の低い山並みとほとんど肩を並べてしまうことも問題だ。京都にふさわしいものを建てるべきだ」と話している。
・都計の視点 全案欠ける
 建築家で、のっぽビルの反対運動にも取り組んでいる蓮佛亨(れんぶつ・とおる)さんは「『地元で反対運動があるのを知っているか』などの質問状を、審査員のうち建築家に送ったが、回答のあったのは委員長だけだった。専門家としての信義に欠けており、審査自体が認められない。そもそも、なぜあれだけの大建築が必要なのか。今以上の交通渋滞が発生するのは目に見えており、都市計画の視点が全く欠けた設計案はかりだ。どの作品が選ばれても今後、市民の反対運動はさらに盛り上がるだろう」と話している。(朝日新聞)
■取り消し求め住民提訴
 JR山陰線二条駅周辺を再開発する京都市の土地区画整理事業をめぐり、地元住民が市を相手取って、事業の計画決定の取り消しを求める行政訴訟を7日、京都地裁に起こした。
 訴えを起こしたのは中京区西ノ京星池町、写真家杉原昌治さん(53)ら計画区域内と隣接地の住民計26人。
 訴えによると、@約130世帯のうち66世帯が反対しているのに、事業計画を2月4日に市が決定したことは、「関係住民の合意が必要」とする土地区画整理法の趣旨に反するA国鉄清算事業団から買った旧国鉄二条貨物ヤード跡地の3.3平方b当たりの単価が当初予定の約73万円から、昨年7月の購入時には約119万円まで上がっており、地方財政法に違反する不当な公金支出に当たる、としている。
・「法的には問題ない」
 これに対し、市計画局拠点整備課は「事業は法的には全く問題がなく、計画通り進めたい。土地の価格は独自の鑑定評価に基づいており適正。地元住民には粘り強く説得し、理解を得たい」と話している。(朝日新聞)
■GW期間中の旅行客 新幹線・飛行機とも減少 高速道路は”最悪”の渋滞
 ゴールデンウイーク中のJR全体の旅行客が発足後5年目で初めて前年より減った。JR旅客6社が7日発表した同期間(4月27日−5月6日)中の輸送概況によると、長距離旅行客は597万人で、花の万博による国内旅行ブームで過去最高だった前年比2%の減少。東海道新幹線6%、山陽新幹線は7%、それぞれ減った。反対に、関西のJR、私鉄とも近郊電車は増えていた。
 また、日航、全日空、日本エアシステム、エアーニッポンの国内航空4 社が7日、まとめた連休(4月26日−5月6日)中の大阪空港発着の国内線の利用客は54万6341人で、昨年に比べて3.4%、1万8600余人減った。日航の国際線も大阪発の便の利用客は2万5978人で、昨年より5.9%、1600余人の減。湾岸戦争の後遺症がまだ続いていることを示した。
 日本道路公団は7日、先月27日から今月6日までの高速道路利用状況をまとめた。全国的に天候に恵まれたことから、1 日当たりの平均利用台数は前年より3.6%多い72万7000台に上った。交通量の増加に伴って渋滞状況も昨年よりひどく、10`以上の渋滞発生件数は昨年より30回増え、過去最高の183回を数えた。
 利用台数調査は東名、名神高速、九州自動車道など全国12カ所の料金所を通過した車を数えたもの。名神高速吹田料金所で前年より5.9%減ったものの、あとの11カ所は軒並み通過台数がふえ、山陽道広島料金所では17.9%増を記録した。
 渋滞が最もひどかったのは、5日夕の中国道上り線宝塚西トンネル付近で、大阪方面に向かう車が集中したうえ事故も重なって、延々75`に及んだ。(朝日新聞)
9日■新京都駅は59.8b 審査投票 機能性を重視 6年度完成へ JR改築コンペ 原氏の作品 最優秀に
 平安建都1200年を記念して京都駅ビル開発とJR西日本が国内外の建築家7人を指名し実施したJR京都駅改築の設計競技(コンペ)の最優秀作品は8日夕、京都市東山区の都ホテルで開かれた審査会(審査委員長・川崎清京都大教授、11人)で、無記名投票により、建築家原廣司氏(東京大教授)の作品に決まった。同作品は高さ59.8bと、応募7点の中では最も低く、シンプルなデザイン。しかし、市の現行高度規制を超える高層建築物となることから都市計画決定の変更手続きが必要で、高層駅を巡る景観論議はさらに白熱化しそうだ。
 原氏設計の作品は、鉄骨鉄筋コンクリート造り・鉄骨造り地下3階地上16階(高さ59.8b、屋上工作物含め64.3b、東西の長さ約450b)。京都の段丘、斜面などをイメージしたコンコース、多目的デッキや、空中経路、階段状の百貨店、大空間文化ホールなどを取り入れ、外観はガラスと金属パネルで近代約な雰囲気をかもし出している。
 7、8の両日の審査会では、駅ビルの高さやデザイン、技術的な設計条件などを巡って論議が沸騰。指名建築家7人の作品から4人に絞り込み、最終約には高さ120bのジェームズ・スターリング氏(英国)の作品と高さ59.8bの原氏の作品について審査員が無記名投票し、多数決で原氏の作品が選ばれた。高さ約60−120bの応募作品の中では最も低くオーソドックスなデザインで、京都の碁盤の目の道路を想定した格子のデザインや駅舎の吹き抜けの空間、駅ビルの機能性などに評価が集まった、という。
 JR西日本、京都府、京都市、地元経済界などが出資する京都駅ビル開発は、来年度早期に駅、コンベンション・ホテル、商業、文化、駐車場など複合約な機能を持つ駅ビルの建設に着手し、主要施設の平成6年度完成を目指す。
 同駅周辺は市の高度地区の指定によって建物の高さは31b(総合設計制度を使えば45b)以下に制限されており、コンペ作品の建設には都市計画決定の変更手続きが必要となる。
 最終審査結果について、川崎審査委員長は「京都にふさわしい建物かどうかという点を踏まえて審議が尽くされた。ふさわしいものが選ばれたと思う」と、話している。
・高さ含め現実的提案
 最優秀作品に決まった原廣司氏の話 大変なことになったと驚いている。施設として必要な内容を満たしつつ、他方で景観などへの配慮が必要という条件の中で、高さも含めて現実約な解決策として提案したものだ。複合施設ではあるが、人々が通過する「駅」としての機能に主眼を置いている。今後の設計作業を通じて外面の色彩もどぎつい色を避け、正面側(北側)はガラスを多用して明るいものにしていきたい。
 原 廣司氏(はら・ひろし)東京大学建築学科卒。82年から東大生産技研教授。「田崎美術節」で日本建築学会賞、「那覇市立城西小学校」で那覇市景観賞など受賞。透明感あるデザインで知られる。新梅田シティ開発計画にも参画。著書「空間〈機能から様相へ〉」でサントリー学芸賞を受賞。川崎市出身。54歳。(京都新聞)
■21世紀への都市戦略 第5部 新京都駅〈1〉 激論 高さ「最低」で決着 最高120bを支持の声も
 「原廣司氏が最優秀作品に選ばれました」。8日午後7時過ぎ、京都駅ビル改築設計コンペの審査会が開かれた京都市東山区、都ホテルの審査会場前ホールで、テレビのライトに照らし出され、報道陣に取り囲まれた谷口紀久京都駅ビル開発会社取締役企画部長は、興奮気味に審査結果を発表した。だが、選考理由を問いただす声には「後日、審査委員長から発表します」と答えるのみで、口をつぐんだ。
 審査会は7、8日の2日間にわたり、同ホテルの一室に審査員11人、特別審査員2人らがほぼカン詰状態で行われた。7日は、指名建築家7人が作品説明し、審査委員長の川崎清京都大学教授が「今日中に最優秀作一点を決めたい」と発言して、審査の口火を切った。議論の方向は、京都の歴史、風土などをポイントに、特に景観面では東山、西山、北山の三山との調和に力点を置いて進んだ。
 個別の作品審査では、高さ72.5bで羅城門をイメージした安藤忠雄氏を推す声に対し、井手正敬京都駅ビル開発社長(JR西日本副社長)が、技術上の問題や採算性などから難色を示した。塚本幸一京都商工会議所会頭は、持論の駅南部との高層調和論を持ち出して、120bビルの黒川紀章氏を支持。これには、薦田守弘京都市助役が昨年12月市会の決議などを説明し、極端な高層化に慎重な対応を求めた。梅原猛国際日本文化研究センター所長は、できるだけ低い方が市民に受け入れられやすい旨を主張。「超高層は京都にふさわしくない」との意見が一時は大勢を占めた。
 個々の作品の評価は、審査員の間で分かれたものの、この日の論議で安藤、池原義郎、原廣司、J・スターリングの4氏に絞られ、翌日の審査に持ち越した。巷(こう)間で早くから”本命視”されていた黒川氏の作品は、この時点で消えた。
 翌8日は午前9時から審査が始まり、午前中は前日の論議が蒸し返された。午後に入って、4氏の作品を類似性で「安藤・スターリング」組と「池原・原」組の2つのグループに分類。第1グループからは、黒川氏と並んで、最高の120bのスターリング氏、第2グループからは7つの作品の中で最も低い59.8bの原氏が、それぞれ残り、「高さ論議」を象徴する形になった。
 審査会の最終約な議論は、平安建都1200年記念のシンボル性や京都の町並みとの調和などで白熱化。一つに絞り切れないまま、最後は無記名投票で決した。投票結果は7対4だったという。
 京都市は、全国の都市の中で唯一、住居系地区以外での「高さ規制」を行うなど、景観保全の先進地の歴史を持つ。京都の景観対策で「高さ」は格別の意味がある。審査会で「景観と高さ」が勢い、議論の的になったのは当然といえた。
 高さに対する市民の関心も高く、駅ビル高層化に反対する住民運動も活発で、7日朝は「のっぽビル反対市民連合」のメンバー16人が審査会場前に押し掛け、審査会の傍聴を求めた。原氏の作品が選ばれたことについて、中島晃同連合事務局長は「基本的には都市計画法違反や密室審議、景観破壊の問題を残したままだ。一番低い作品を選ばざるを得なかったのは、市民の反対を無視できなかったからだろう」と話した。
 これに対し、西川幸治京都大学教授(建築学)は「手続き的な問題で異議を唱える声もあるが、コンペ作品の中では京都の歴史約景観に配慮した穏当な判断だろう」としたうえで、「駅改築を機に京都の将来像を描くために、市民が知恵を出しあうときが来た」と見る。
 京都駅改築をめぐっては、各種団体による景観シンポジウムも盛んに開かれ、景観論議は高まる一方だ。
 京都駅ビル開発会社は10日、京都市上京区のホテルで川崎委員長らが出席し、最優秀作の選考理由や経過について発表する。(京都新聞)
■吹き抜け/段丘/斜面の京都駅 京の地形イメージ”明るさ”を前面に 人工地盤に諸設備 外観、ガラスに金属パネル
 京都の”新しい顔”となる新京都駅ビルの設計コンペの最優秀作品に8日、原廣司氏の作品が決まった。全応募作品の中では最も低層の設計で、京都の歴史風土を強く意識した明るくきめ細かな作品となっている。
原氏の作品は、高さ59.8b(鉄筋鉄骨コンクリー卜造り・鉄骨造り、地下3階、地上16階延べ床面積約23万平方b)で、7作品全部の中では最も低い。空間スペースや自然採光の多用で、建物全体のボリュームと重いスケール感を抑制するため、随所にきめ細かな工夫を施した作品と評価されている。
 最大の特徴は、京都の地杉をイメージした大きな空間(吹き抜け)と段丘を持つコンコース。原氏は「京都の地理学的コンコース」と名付ける。コンコースから東側になだらかに段丘が伸び、西側にはさらに小刻みな斜面が広がる。段丘と斜面全体がコンコースであり、市民広場でもある。
 また「平安京以来の伝統を受け継ぐ京都の街路網の痕跡を残す」(原氏)ように地上15bの空間上に「門を支える檀」をイメージした多目的デッキ(人工池盤)を築き、その上に主要施設を建設する。東側には市民広場、ホテル、文化施設、西側には”階段形”の商業施設(デパート)などが配置される。駐車場は東・西側にも中央郡にもスペースを確保している。
 コンコースをはじめ文化施設にも大空間を設けるなど、いたるところに自然採光を取り入れ、建物全体の明るさをかもし出しているのも大きな特徴。空中経路も張り巡らしている。
 外観はガラスと金属パネルでモダンさを演出。色彩は京都の落ち着いたムードにマッチさせて「あまりどぎついのは避けたい」(原氏)考えで、とくに駅正面側はガラスを多く採用して明るさを強調したという。(京都新聞)
京都駅改築のあゆみ
昭和27年5月現駅舎完成
58年5月京都市が国鉄に対して駅改築を要請
59年
3月
6月
京都市が京都駅改築事業を平安建都1200年事業に位置づけ。国鉄が具体的検討へ
59年10月平安建都1200年記念事業推進協が改築を関連事業に指定
60年4月第1回駅改築協議会開催
60年6月第1回実行委・幹事会で平成6年10月開業に向け検討事項を各機関分担
60年9月国鉄が改築構想4 案を提示
62年2月国鉄改革に伴い新会社発足後も協議会への参加を要望
62年10月第3回実行委で文化施設、高さ制限、収支などを議論
63年11月第2回駅改築協で平成2年春の開発会社設立と平安建都1200年完成を目指すことを決定
平成元年4月駅開発準備会社を設立
2年4月京都駅ビル会社設立
2年11月設計コンペを開始
3年5月審査会開催・作品決定
■京の玄関 賛否の渦 一番低い…それでも59.8b ほかに比べ妥当 ポリシーがない 街角の声
 「100年後の街のポリシーが抜け落ちている」、「国際都市にふさわしいデザイン」−。21世紀京都のシンボルとなるJR新京都駅のスタイルが8日、決まった。歴史都市・京都の文化、地形学的な玄関口をイメージしたという地上16階建て。120b級もあった候補7点の中では最も低かったが、現在、計画の進む京都ホテル並みの59.8bの高層になる。結果について街では、高さの問題も含め賛否両論の声が聞かれる。景観間題、再開発もからんで新京都駅はこれからも論議を呼びそうだ。
 京都駅で帰宅中の会社員池内勝司さん(46)=左京区= 建物の発想が自然な原さんか、池原さんの作品に決まるのではないかと思っていたので、やっぱり、という感じです。それにしても建都1200年の目玉事業として新駅舎を建てるということですが、1100年の事業と比べればちゃちですね。100年後の京都をどんな街にしていくのかのポリシーが全く抜け落ちている。
 観光などで訪れていた竹重しげのさん(59)=山口県山口市= 京都には年に何度か来ますが、京都タワーを見ると、いつも京都に着いたんだなぁと思いますし、タワーが埋もれてしまうほど高い駅でなくてよかったです。一つ高い建物ができると、次々とタケノコみたいに建つでしょうし、そうなれば京都のよさはなくなってしまう。どんな駅になるのか、完成すればすぐに寄せてもらいます。
 同志社大学2年の富岡理子さん(19)=大阪市北区= 景観の面から高いのは選びにくいでしょうから、やっぱり一番低いのになったのか、と思います。京都に高層建築はマッチしませんから、できるだけ高さを制限した形で実現してほしいですね。設計者の意向もあるので、難しいかもしれませんが…。京都の街は大好きですが、駅を含め最近、変わっていっているのが気になります。
 京都駅の近くの主婦綾戸節子さん(59)=下京区= 近くにこんな施設ができるのは、使う側からすれば便利がよくなっていいですね。大阪駅を思えば低いですし、地面に限りがある以上、機能を求めるならば、高くしていかないと仕方ないのではないでしょうか。それに駅前は広いですから、この程度の高さなら問題ないと思います。
 京都駅前で旅館と飲食店を開く大友弘さん(70)=下京区= ホテルと百貨店のために、なぜ高い建物が必要か、との疑問をもっている。全作品の中で最も低い駅を選んだのは、景観論争を配慮した結果だと思うが、この作品はあまり京都らしい建物でないように思う。羅城門をイメージした黒川さんの作品は高層だが、低層に手直ししやすい建物だし、おもしろかったのでは…。
 七条商店街振興組合の樋口信一理事長(68)=下京区= 駅ビル改築は、中に百貨店が入ることもあって組合員の関心が高い。原さんの作品は高さ60bを切っており、他の作品と比べてそれぐらいが妥当なのでは…。デザインも落ち着いた雰囲気で、タワーも生きてくるように思う。(京都新聞)
■低速HSST 初めての試験走行
 国内初の中低速磁気浮上式リニアモーターカー(HSST)の実用化を進めている中部エイチ・エス・エス・ティ開発(本社名古屋市)は8日、名古屋市内の実験線で初めて実験車両のテスト運転を行い、順調な結果を得た。
 この日の初走行ではHSST-100型の実験車両2両が、延長1.5`の実験線の上を約1a浮上、雨の中を時速30`前後のゆっくりした速度で3往復し、車内の計器で浮力などを細かくチェックした。
 同社は、今後、最高時速100`で走らせてカーブや分岐点での走行状態を調べるなど、1、2年をかけて試験する。(京都新聞)
■JR京都駅改築コンペ 最優秀に原氏の作品 16階建て高さ59.8b 建築巡り市の対応焦点
 古都に高層ビルはふさわしいかどうかの論争が続く中、「京都駅ビル開発会社」(社長・井手正敬JR西日本副社長)とJR西日本が主催する京都駅改築の国際コンペで8日、設計原案となる「最優秀作品」に東京大学生産技術研究所教授の原廣司氏(54)の作品が選ばれた。設計条件から高さ制限をはずす異例のコンペとなり、応募7作品とも現行の駅周辺の高度規制(原則31b、特例45b)を超えていた。原氏の作品は、この中で一番低いが、建設へ向けて、許認可に当たる京都市の対応が焦点になる。
 選ばれた原氏の作品は高さが59.8b。地上16階、地下3階。審査は7日から2日間にわたり、デザイン、周辺との調和、高さ、機能などにわたり意見を交わした。初日に4作品に絞り、最後は2回の投票で決めた。デザインの独創性か機能性か、高度規制はどうなるか、などをめぐり激論が続いた。審査会(11人)を要約して委員長の川崎清・京大教授は、「困難な審査だったが、十分意見を出し合った。経過は後日発表する」と話した。
 歴史的文化都市の事情から、京都市は現在、他の大都市より格段に厳しい高さ規制を設けている。市内の現行の高さ規制は6つの高度地区に分けられ、敷地の一部を公共用地(公開空地)に提供する代わりに高さの割り増しを認める総合設計制度を適用しても第六種地区の最高60bまで。駅周辺地域は第五種地区に指定され、特例でも45bしか認められていない。このため市は、新駅建設に例外扱いの方針で臨むとし、高さ規制の緩和も含めた整備手法を決めるのは後回しにしている。
 老朽化したJR京都駅の改築は、3年後の平安建都1200年記念関連事業の目玉とされ、駅ビルの主要部分は百貨店とホテルが占める。市の対応をめぐっては「場当たり的では高層化の突破口になりかねない」と批判する京都仏教会や住民団体と、「規制緩和で活性化を」とする地元経済界との間で今後も激しい論議が続くことになりそうだ。
 原廣司氏 1964年、東大博士課程修了。現在、東大生産技術研究所教授。主要作品に田崎美術館、飯田市美術博物館などがあり、田崎美術館で日本建築学会賞(86年)を受賞したほか、西ドイツケルン市都市再開発国際コンペ最優秀賞(87年)に輝いている。
・都市景観創造へ期待
 田辺朋之・京都市長の話 期待どおり京都の歴史的景観と調和し、平安建都1200年の記念にふさわしい作品が選ばれた。新しい都市景観の創造へ大きなきっかけになる、と期待している。今後、府と協議しながら、都市計画上の必要な手続きを進めていきたい。(朝日新聞)
■京都駅改築 規制外しに根拠必要 利害調整問われる行政
解説 JR京都駅改築のコンペは、京都が「東京、大阪並み」の地価高騰の大波に襲われ、これからの町並み保全と再開発をどう方向づけするか、という曲がり角の時期に行われた。駅ビルの高さ決定は、周辺の土地商法に結び付けられて高層化をあおるきっかけにもなりかねない。「秩序ある都市計画」の宿題は重い。
 周囲の低い山並みを借景とし、社寺、文化財が集中する古都の景観を一変させかねない要素をはらんだままコンペは進められた。高層化をめぐる激しい賛否の論議が先行したのも無理はない。
 120bの2作品を含む7作品が4月下旬に公表されると、超高層化を心配していた人たちから「比較的抑制の効いたデザインがある」という声が聞かれたのもまた確かだった。最優秀作品の原氏の案は旧市街地で一番高くなる工事中の京都ホテルの60bよりも低くなったことになる。
 作品が決まった後の問題は、建築物の許認可に当たる京都市の対応に移る。整備手法には、特定街区の制度を導入して新たな高さ規制を設ける案などが有力視され、都市計画決定をすることになる。
 それにしてもなぜホテルと百貨店が主要部分を占めるビルに優遇措置を認めるのか。これまでは京都市から説得力ある説明はなく、「駅改築は3年後の平安建都1200年記念の関連事業」という位置付けだけが強調された。
 JR主導の事業とはいえ、京都府、市は、一定の発言権を持つために駅ビル会社設立に際し資本金の5%ずつを出資した。駅ビルに入る予定のホテルや百貨店の出店計画と地元との利害をどう調整するか、地方自治体の指導力はこれからも問われることになる。(朝日新聞)
■京都駅コンペ 議論白熱「低さ」が決め手 反対派ひとまず「ホッ」
 高層化をどこまで「公認」するのか、の是非をめぐって、古都に景観論争を巻き起こしたJR京都駅改築の国際設計競技(コンペ)は8日夜、白熱した議論の末に最優秀作品が決まった。11人の審査員の視点が様々なうえ、建築コストや高さ規制の政治的条件などが重なり、決選投票に。結果は、指名された7人の建築家の作品中、ビルの高さが一番低い原廣司氏(54)の案に落ち着いた。「残念ながら、(高さを)セーブすることになった」と、施主のJR側。「もっと独創的な作品を選びたからた」と、気落ちする審査委員の声もある。高層化に反対してきた市民グループは「超高層ビルが乱立する危機はひとまず避けられた」とまずは胸をなでおろしながらも、白紙撤回を求めるアピールを出した。
 《ソロバン勘定》駅ビル本体の建設費は約700億円。事業主のJR西日本は、コンペの指名建築家7人にこう見積もりを示した。ところが、建築家の1人は「7人の作品すべて700億円を超えますよ」と、つぶやいた。
 事業者を代表して審査に加わった井手正敬・京都駅ビル開発会社社長(JR西日本副社長)は「国際コンペは本当に難しい。会社としては、どんなにお金をかけてでも良いものをつくる、という訳にもゆかない」とコスト面の要素が判断材料のひとつとなったことを認めた。
 《審査員》コンペが終わったのは午後6時半。審査委員長の川崎清・京大工学部教授はすっかり疲れた様子だった。「高さも含めて十分に審議を尽くした。京都にふさわしい、ということで選びました」
 哲学者で国際日本文化研究センター所長の梅原猛さんは「口角泡を飛ばす議論が、最後まで続いた。2回目の投票で決まったが、その差はわずかだった」と、明かす。「私としては独創的なものを選びたかったが、結果としてはアンハッピー(不幸)な気持ちが6割。ただ、熱心に議論を交わし、責任を尽くしたことには満足している」と結んだ。
 《仏教会》反対運動を続けている京都仏教会常務理事の清滝智弘・広隆寺貫主は「とりあえず内心ではホッとしているが60b級といっても、現行の高さ規制を超えているわけ。市当局には必要以上の商業スペースを取らせない、より古都の表玄関にふさわしいものに、と注文をつける」と、訴えていた。
 《ノッポ反対》「のっぽビル反対市民連合」事務局長の中島晃弁護士は、「一番低い作品を選んだのは批判を避けようとした結果では」と受け止める。とはいえ、「あくまで白紙撤回を」との立場は成していない。
 都市計画の立場から京大工学部の三村浩史教授は「原さんの作品は威圧感を避けた繊細な外観など、工夫がある」。その一方で「市民サイドの本当の審査は、これからだ。今でもひどい駅前の車の流れがどう処理されるか」と周辺整備の必要性を指摘している。
 《責任重大》最優秀作品設計者の原さんは「選ばれるとは思わなかった。大変なことになった」と喜びを語った。大きな駅を北側の旧市街地から見ると、太陽を背にして、黒々とそびえ立つ姿に見える恐れがある。そこで、ガラスを多用して明るく見えるようにした。「高さが問題であることも知っており、現実的な答えを出した」。京都を訪れる人たちに一瞬でも旅のイメージを持ってもらいたいという気持ちが設計の際に頭から離れなかったそうだ。「責任重大です」(朝日新聞)
■駅ビル開発会社取締役務める 副知事の公用車運転日誌公開 行き先は「市内」
 JR京都駅の改築高層化問題で、駅ビル開発会社への自治体の出資や人員派遭の差し止め訴訟を起こしている原告住民から求められていた同会社取締役を務める草木慶治副知事の公用車運転日誌が8日、府情報公開条例に基づき公開された。それによると、公用車の行き先は「市内」と記されているだけで、特定の場所は示されておらず、原告側が「訴訟の基礎資料」として期待していた内容は得られなかった。
 運転日誌は、道路交通法施行規則の中で安全運転管理者に義務づけられており、自治体や運送会社が規則に従って運転者名や運転開始、終了時間、走行距離などを記入している。しかし、記入方法ははっきりと決められておらず、府は「安全確保」という規則の趣旨に沿って、走行距離や時間を一日単位で記し、行き先は京都市内の場合「市内」とだけ書いている。
 原告住民側は「この内容では訴訟での資料にならない」とし、別の方法で、府の駅ビル会社への公金支出差し止めを訴える資料を見つけたい、と話している。(朝日新聞)
■快速電車でスリ逮捕
 向日町署は8日、住所不定無職木下国夫容疑者(49)を盗みの凝いで逮捕した。
 調べによると、同容疑者は同日午後1時15分ごろ、JR東海道線向日町−神足駅間で、米原発加古川行き快速電車の座席に座っていた和歌山市の男性(46)のシャツポケットに入っていた眼鏡を床に放り投げ、男性が拾おうと前かがみになったすきにズボンから現金約22万円入りの財布を抜き取った疑い。男性は先月退職した会社の給与を持ち自宅に帰る途中だった。(朝日新聞)
■不正払い戻し 60駅で157万円 新幹線事件で追送検
 偽の遅延証明スタンプを押した新幹線特急券を使って特急料金が不正に払い戻されていた事件で、京都府警捜査二課と七条署、鉄道警察隊は8日までに、有印私文書偽造と詐欺などの疑いで、京都市伏見区三栖町三丁目、無職小泉清澄被告(55)ら4人を追送検し、捜査を終結した。
 追送検は、その後の調べで小泉被告らが昨年9月30日と11月30日、台風の影響で新幹線のダイヤが大幅に乱れた際、JR東海京都駅の改札口から、回収済みの自由席特急券を盗み、それらに偽造した遅延証明スタンプを押し、12月1日JR石山駅で現金1万3900余円を不正に払い戻させた疑い。
 府警によると、小泉被告らが偽造スタンプを押して払い戻した特急券は476枚、被害総額157万円余に上り、京都、滋賀など近畿2府3県の延べ約60の駅で払い戻しを受けていた、という。(京都新聞 夕刊)
10日■新京都駅 A 規制 高さ”別格”扱いに 都計変更に疑問の声も
 京都市の田辺朋之市長は8日夕、京都市中京区のホテルで開かれていた市防災協会連絡協議会総会の席上、京都駅ビル設計コンペの最優秀作品が参加作品中で高さが最も低い原廣司氏に決まったことを秘書から知らされた。だが、最低層とはいえ、59.8bで、市の現行高さ規制を超えていることに変わりはない。会場を出たロビーでテレビの取材陣に囲まれ、インタビューを受けた田辺市長の顔には、新駅ビルのデザインが確定した安ど感とともに、駅ビル改築計画の焦点がいよいよ、市の都市計画変更の実行いかんに移ったことへの緊張感が交錯した。
 京都駅とその周辺は現在、都市計画法に基づき、市が第五種高度地区に指定しており、最高でも高さ31b(総合設計制度では45b)の建物しか建てられない。コンペ最優秀作品を建設しようとすれば、施主となる京都駅ビル開発会社が現行規制に合うよう高さを設計変更するか、市が規制緩和措置を取る必要がある。
 先月24日、下京区のホテルで、同開発会社はマスコミ対象にコンペ参加作品の事前レクチャーを行った。席上、全作品が高さ規制を超えたことについて、谷口紀久取締役企画部長は「市の現行規制に(高さを)合わせようとは考えていない」と言い切った。
 一方、規制緩和の権限を持つ市は、これまでから市会などで再三、緩和の意向を表明してきた。具体約な緩和策としては、特定街区の指定や高度地区の解除などの手法があり、いずれの方法をとるにしても都市計画の変更手続きなどが必要となる。都市計画変更の場合は、開発会社からの要請を受けたうえで、市案として変更計画をまとめて市都市計画審議会、府地方都市計画審議会に諮り、同意を得なければならない。府都計審の同意までには「最短でも数か月はかかるだろう」(市都市計画局)という。今月2日の定例記者会見で田辺市長は「平安建都1200年記念のモニュメンタルな建物であり、高さ規制の枠を超えることもあるだろう。行政的に間違いなく手続きを進めたい」と、慎重な言い回しながら、従来の考え方を念押ししている。
 こうした市の姿勢に対し、京都弁護士会歴史都市部会長の尾藤広喜弁護士は「法制度の枠内でコンペを行うのが法治国のあり方。京都駅ビルという特定の建物建設のために、コンペの結果に合わせて市が都市計画を変更しようとするのは重大な都市計画法違反だ」と指摘する。京都弁護士会は昨年11月、「都計法上は、特定建築物の建築を理由に都市計画の変更はできない」との申し入れ書を市に提出し、再考を促した。
 また、市は特例措置を講じようとする理由の一つに、駅ビルの「公共性」をあげているが、大半をアパート、ホテルで占める建物に「公共性」を認めることを疑問視する向きもある。
 京都市の小山選一都市計画部長は、京都駅ビル改築について「市としてはそれなりに協力し、建築できる方向で条件を整える必要があると考えている」としたうえで、「あくまで京都の玄関口である駅に限った特例になると思う。他地域や他の建物に波及させるつもりはない」と”別格”であることを強調した。(京都新聞)
■社説 新京都駅を都市づくりの核に
 平安建都1200年を記念するJR京都駅改築事業の設計コンペで最優秀作品が決まった。高さ約60bの新しい京都の顔である。京都の将来図にどんな位置を占めるのか−難しい景観問題も含め、広く市民権を得るため、今後なお活発な町づくり論議を盛り上げねばなるまい。
 物不足の戦後に建てられた現在の京都駅は貧弱で、国際文化観光都市を掲げる京都の玄関口としては見劣りする。また数十年の歳月を経て、老朽化がひどく、改築が懸案となっていた。
 そこでJR西日本に、地域の活性化を願う地元行政や経済界が加わって昨秋、京都駅ビル開発会社をつくり、事業に取り組む運びとなった。「新しい京都のシンボル」を−と著名な建築家を指名しての異例のコンペである。会社側は一時、100b以上の超高層化を志向する考えを示し、景観破壊を心配する市民の反対運動もあって、今回の決定が注目されていた。
 審査会で2日間にわたる白熱の論議のすえ、最終的に7候補作品のうち、東京大学教授原廣司さんの作品が選ばれた。地下3階、地上16階建て、高さ約60bの横長の建物。デザインは比較的シンプル。京都の碁盤の目を霧した造りや駅ビルの機能が買われたという。結果として120bの超高層が避けられたのに景観論議の影響は否めまい。
 三方をなだらかな山々に囲まれた盆地、自然と調和しながら、歴史のたたずまいを守ってきた京都に、景観は重大なテーマである。京都市も風致地区、美観地区、歴史的かいわい景観地区など他都市にない厳しい規制や建物の高さを制限する景観行政に力を入れてきた。
 この抑制が自然と市民の都市観をつくり広げてきた面は見逃せない。今回、おおかたの委員にそれが意識されたとしても、成り行きではないか。思いきったインパクトを期待したむきには不満なようだが、これから市民の合意を得るのに、最大公約数の”たたき台”にはなろう。
 駅であるからには、まずターミナル機能の充実が必要だ。将来、洛南新都市から学研都市、関西新空港へとつながる京都の玄関口としての利便性、ホテル、デパート、文化施設を含むアミューズメント・センターとしての魅力はどうか。
 そのためには、周辺地域とのかかわり、近隣の商店との競合、共存関係のありようから、京都の将来図の中でどのように機能させるか、まちづくり構想との関係が問われることになろう。
 ことし初めに、京都市から「北部保存、南部開発」、その間に緩衝地帯を設けるとの、まちづくり田辺試案が出された。緩衝地帯が焦点の京都駅を中心に想定されていたのは疑いない。作品決定にいたって、次に田辺試案に基づく具体的な区分け、線引きなどが関心事だ。
 現在の高さ規制に触れる新京都駅については「特例」扱いにする意向のようだ。しかし、その高度は他へどんな基準となるのか。その波及度が都市計画全体の構図を左右する。京都市は21世紀を見通し、きっちりと見識あるグランドデザインを示さねばならない。
 これまでの駅改築事業の経過をみても、残念ながらその手続きは多くの市民を納得させうるものと言い難い。今後、都市計画を審査する都市計画審議会、また田辺試案を審議するまちづくり審議会での建設的な論議を期待するとともに、公聴会などで広く市民の意見をくみ入れる仕組みを心がけるべきだ。京都再生のチャンスに悔いを残さないように。(京都新聞)
11日■新京都駅 B 南口 民活再開発に打撃 経済界不満 新手法必要
 街が虫に食われたような更地。いつ、どんな建物に変化するのか分からない駐車場、テニスコートの群れ。設計コンペの審査終了で、将来の新しい姿を現した京都駅の南口周辺の現状だ。関西新空港へのアクセスや京都の高速道路整備に対応できる超一等地ながら、「古都の玄関口としては見苦しい」といわれ続けている。
 京都駅改築は「特例であって、他に波及するものではない」一昨年9月の京都市会で田辺朋之市長は、駅ビルを引き金にした高層化の連鎖反応を懸念する質問に、きっぱりと答えた。しかし南口周辺では、都市計画法に基づく現行の高さ規制緩和への突破口としての高層駅の誕生に、大きな期待が寄せられていた。
 市は昨年6月、駅南一帯を対象にした「京都駅南口再開発事業」について、市主体での実施を断念した。投機がらみの地権者の目まぐるしい変化と、地価高騰が原因だった。「規制の枠内の再開発では、地価が高過ぎて余剰スペースが出ず、建設費がねん出できない」(市街地再開発課)からだった。
 同課の実施した最近の地権者意向調査では、回答を寄せた民間業者らのほとんどが、高層化の容認を含む規制の緩和を求めている。
 ツインタワーの大阪ビジネスパーク(OBP)を手掛けた経験を生かし、駅南一帯の西部2.5fの土地に高層ビルによる街づくりを計画している松下興産は、「駅ビル改築の動向を関心を持ってみている」と、明確にその高さを意識していた。
 また審査会前の先月30日午後の定例記者会見で、塚本幸一京都商工会議所会頭は「会議所の常議員会は、駅の高層化に賛成する意見で占められた。120bを推す声もあった」と話した。
 会議所が駅南の松下興産の建設予定ビルを区分所有する形で設置を目指す地元経済界の新拠点・京都経済センターは、新しい京都の象徴となる駅舎より高くはできない。が、「大きな器は確保したい」とする考えからの発言だった。
 高さ59.8b。8日夜に決定した新京都駅のデザインは、しかし、最高の120bではなくもっとも低い作品に落ち着いた。
 審査会場の京都市東山区のホテル内で、報道陣に囲まれた経済人代表の審査委員、塚本会頭も結果について「六分四分の気持ちでアンハッピーだよ」と、不満を口にした。
 松下興産は「あの場所にふさわしいビルのプランをこれから立てるが、建物の高さが即、景観を悪くするとは考えていない」と話し、新駅ビルより高い建物はふさわしくない、としたこれまでの同社の考えとは若干、ニュアンスを異にした。
 南口に約2500平方bの土地を持つ村田機械の村田純一社長は「大都市の駅前の中で、京都の整備が一番遅れている。建物の高さにばかりこだわり、景観を決めるスカイラインをおろそかにしているからだ」と、「高さ」一点張りの論議によるマイナス面を指摘する。
 駅南口の再開発ついて、竹沢忠義市都市計画局長は「京都駅の改築とは切り離して、民間活力を導入した新たな整備手法を今後、提示していきたい」とするが、一番低いデザインとなった新京都駅は、現実問題として、駅周辺の「民活」に少なからずショックを与えたようだ。
 10日午後に開かれた新駅設計コンペの結果報告で、川崎清委員長は「突出した部分がなく、穏やかなスカイラインを形成するいい作品が選べた。京都駅は市の南北の中間点にある。市の南部はある程度、制限のない自由な開発を行っていけばいいと思うが、いい駅ができたなら、これを基準に街づくりは進むだろう」と述べた。
 59.8bの京都駅のデザイン決定と同時に、京都駅南側一帯の再整備は新たな手法と方向の模索を迫られている。(京都新聞)
■建設省の工事再開へ 広島の橋げた落下事故
 建設省中国地方建設局は10日、橋げた落下事故のため工事が中断している広島市の新交通システムの鋼鉄製橋げた架設工事のうち、同省が施工する工事を15日から再開する、と発表した。
 工事を再開するのは広島市安佐南区西原二丁目から同七丁目の1.2`の区間で、期間は6月30日まで。工事は午前零時から同5時までで、その間、国道54号を3.2`にわたって全面通行止めにする。同地建は工事再開について周辺住民から同意を得ている、としている。(京都新聞)
■JR京都駅改築コンペ 筋書きのないドラマ 21世紀に向かう新しい空間提案 最優秀作品
 東京大学生産技術研究所教授の原廣司氏(54)の設計案が最優秀作品に決まったJR京都駅改築の設計競技(コンペ)で審査委員長を務めた川崎清・京大工学部教授は10日、京都市内のホテルで記者会見し、審査経緯を発表した。最後は11人の審査員による無記名投票の結果、7対4で原氏の作品が選ばれたことを明らかにし、「筋書きのないドラマだった」と2日間の審査を振り返った。
 川崎委員長によると、初日の7日に、国内外の建築家7人の設計案から投票で4案に絞った。2日目の8日に、議論を重ねて最優秀作品を決める予定だったが、議論が白熱して決着がつかないため、最終投票に持ち込んだ。
 最終の2案には原氏とジエームス・スターリング氏(英国)の2案が残り、無記名で原氏に決まった。
 原氏の案は高さ59.8bだが、スターリング氏のは120bだった。完成後の景観への影響を考え、数ヵ所の地点から見た7案のシミュレーションを検討し、景観面の配慮をした。高さも議論の対象になったが、あくまでもデザインを優先した結果、両氏の作品が残ったという。ただし、高層化反対の運動があったことから、「より緊張して選ばなければと思った」と話していた。
 「優劣つけがたい作品ばかりだった」と7作品の水準の高さを評価。一方で、技術上の困難さや威圧的な印象、京都になじむかどうか−など各作品ともマイナス面があったという。
 その中で、原氏の案は「大胆な内部空間を中心に展開するユニークな空間構成に特徴がある。21世紀に向かう新しい空間のデザインを提案している」と高く評価された。
 川崎委員長は「各審査員とも議論を尽くして満足している」と話していた。(朝日新聞)
■停車駅素通り JR加古川線
 11日午前7時44分ごろ、小野市黍田町のJR加古川線市場駅で、加古川発西脇行き普通列車(内海昭三運転士、2両編成)が停車しないまま、通り過ぎた。市場駅で同列車を待っていた約30人は、約45分後の後続列車に乗車した。乗客 120人には、同駅に下車予定の人はいなかった。(朝日新聞 夕刊)
12日■新京都駅 C 競合 燃え広がる百貨店戦争 商業地図塗り替え
 新京都駅ビルのデザイン決定の翌9日。京都市中京区の京都商工会議所で、京都商店連盟や京都市小売商総連合会など小売りの有力4団体の懇談会が開かれた。くしくも駅ビルと同じ日に国会で成立した大規模小売店舗法(大店法)改正がテーマだったが、代表ら14人の話題は京都駅に。
 「商業施設が大き過ぎるという声が多かった。しかし、ある程度はやむを得ないとの空気も漂っていた」。出席者の1人はその場の重苦しい雰囲気を、こうもらした。
 JR西日本と伊勢丹による新京都駅の百貨店計画は、店舗面積5万平方b。既存店最大の大丸の実に1.5倍の大きさになる。昨年9月に計画発表されるや、京都を発祥の地とする大丸と高島屋はすかさず大規模な増床計画を打ち出した。駅前の京都近鉄百貨店も検討に入り、新京都駅が火をつけた百貨店戦争は折からの大店法緩和の追い風に乗り、一気に燃え広がった。
 影響を受けたのは百貨店だけではなかった。これまでかたくなに大型店を拒み続けてきた中小小売業者も微妙に態度を変え始めた。
 「大丸、高島屋の増床は100%認めたい」「両店の法約な手続きを早く進めるべきだ」。先月25日、京都商店連盟の理事会では、異例ともいえる百貨店支持の声が渦巻いた。先頭に立ったのは両店の地元、中京東支部。結局、理事会は手続きの進行を認めることを了承した。
 一方、京都駅周辺ではJR伊勢丹に期待が集まる。駅ビルのデザイン決定が間近に迫った今月2日、駅北側の商店街や旅館、事務所などでつくる京都駅前商業地区連絡協議会が要望書をJRや府、京都市などに提出した。高さ、商業施設の適正規模化などを求める内容。新駅ビル計画への反対のようにも見えるが、力点は共存共栄のための連携と地域整備に置かれていた。
 代表幹事の一人、樋口信一七条商店街振興組合理事長は「大型店に反対できない以上、地域が良くなることを考えないと…。現在の京都駅周辺は、四条周辺に比べ、あまりにも見劣りがする」と述べ、京都駅と駅前観光ゾーンの東西両本願寺を南北の拠点とした、地元商業の活性化を熱っぽく語る。
 京都の商業集積地はこれほで、都心の四条河原町周辺が突出してきた。しかし、京都駅の乗客はJRと近鉄を合わせて年間6480万人にのぼり、四条河原町周辺の阪急、京阪の4駅合計を60万人近く上回る。その吸引力を背景とした伊勢丹の京都駅進出は、京都の商業地図を一変させる可能性がある。しかも、伏見区と宇治市にまたがる六地蔵地域でも3つの大型店計画が集中している。
 こうした地域間競争の激化に商店街も敏感に反応せざるを得ない。大型店で集客力が増す地元商店街の期待と、客を奪われかねない周辺部の危機感が交錯しているのが現状だ。
 京都工芸繊椎大学の森田孝夫助教授は、「現在、市内の総小売販売額の14.7%を占める百貨店売上高が、20%以上になる可能性がある。その売り上げ増分をどこから得るかが問題」と指摘する。つまり、周辺部の商店街との調和と同時に、市外から集客できる力をどうつけるかが、大きな課題となるわけだ。
 商店街をも巻き込んできた百貨店戦争。新京都駅の登場を機に、市内の商業集積が一気にふくらむことは避けられないだけに、商圏の広がりが不可欠となっている。滋賀や奈良、さらに阪神をもにらんだ京都の商業のマスタープランづくりが業界、行政に求められている。(京都新聞)
■窓 駅ビル高層化 古都に新風 大津市・仲上 義男(無職・78)
 平安建都1200年記念事業のひとつとして、京都駅の開発が内外建築家を網羅した設計の審査が終わり、当選作品が決定した。
 1200年の伝統文化が根づく古都京都に、よかれとした今回の開発には、京都によかれという一念が背景にあったような気がして、こみあげるうれしさがある。今後、賛否の論議の白熱化が予想されるが、人それぞれの考え方や尺度も異なる点を考えれば、自分の意見のみが正しいと考えることなく、人の意見も十分聞く態度で、市民一人ひとりが審査に臨んでほしい。
 当選作品は、東山、西山、北山等の三山との調和も十分配慮されているという。ただ現在、京都駅周辺の高層規制は31bで、当選作品の建設には市条例の改正が必要のようであるが、その辺のことは市にゆだねたい。
 高層建築は、どこに建っても従来の眺望を遮断する欠点はあるが、京都駅周辺の街並みを見る限り、驚くほどの不調和はなく、かえって伝統文化に新風を吹き込む新京都のシンボルとして、君臨できるのではないだろうか。1200年の間、伝統文化を支え続けた地下に眠る故人も、これなら許してくれるのではないだろうか。(京都新聞)
■走れニュートレイン〈5〉 ハイパーサルーン(JR九州) 素晴らしい展望効果
 国鉄から民営に移行して初のJR第1号新型特急電車を登場させたのが九州旅客鉄道余社(JR九州)である。
 「新生鉄道のJRにふさわしいざん新なスタイルと性能を」というコンセプトの「ハイパーサルーン」といわれる783系特急電車は当初、鹿児島本線の特急「有明」に使用され、「ハイパー有明」と命名された。
 近代的な流線形の大型ガラスの前面スタイルに、乗客はもちろんJR各社も注目し、それ以後に登場した車両に与えた影響は大きい。
 車内は鹿児島寄りの先頭車がグリーン車で、座席は大型シートが横3席のゆったりサイズになっている。すぐ前には運転席があり、展望効果と相まって運転士の気分が味わえる。鉄道ファンならずも、思わず身を乗り出してしまう。グリーン車の乗客には同乗のハイパーレディーがおしぼりとコーヒーをサービスする。博多−熊本間を並行して走る高速バスとの乗客獲得争いも加熱し、「ハイパーサルーン」は最高時速130`にまで上げてバスに対抗している。
 「ハイパーサルーン」は今までの旧形特急電車に次々と代わり、平成元年3月から博多−長崎間の特急「かもめ」にも投入されて、「ハイパーかもめ」としてカフェテリアを備えたグレードアップ車で登場。その後、日豊本線のL特急「にちりん」の一部にも使われ、九州の主要特急は次第にハイパー化されてゆくことになった。(鉄道写真家・南 正時)
 〈メモ〉現在「ハイパーサルーン」は「有明」「かもめ」「にちりん」の一部に使用され、時刻表にハイパーの名で表示されている。「ハイパー有明3号」の博多−熊本間の所要時間は約1時間15分▽同区間指定料金込み3690円(通常期)。自由席もある。(京都新聞)
■窓 駅改築の議論 百年後考えて 長岡京市・惣司 秀雄(無職・63)
 京都駅の高層化が反対され、一番低いプランで決定された。有識者の審査員の方々で、慎重審議された結果だが、市民の声が反映される必要があるという意見もある。果たして、この決定で百年後に悔いはないであろうか。
 京都タワーが建設された当時、駅前に見苦しい高層建築だ−として反対運動が盛んであった。いま京都タワーは、多くの人々に親しまれ、京都の一つのシンボルとして定着してきている。建設当時、反対した人々の意見は、今はどうなのであろうか。
 東京都庁の豪華ビルが、いろいろと議論を呼んでいる、東京・新宿の超高層建設群はなかなかの偉容である。それはまた、日本の繁栄を表徴するものとなっているし、日本人の誇りでもあり、大東京の一つの誇りとして定着してきている。
 戦前私たちは、京都は日本の三大都市の一つとして教えられてきた。戦後の京都の地盤沈下は著しい、それは京都から社会、経済、文化での柔軟な志向が失われてきたからだ。超高層をためらっているようでは、時代に取り残され、京都の将来の繁栄発展はあまり望めないように思えてならない。100年後、子孫に誇れる選択を残したいものだ。(京都新聞)
13日■新京都駅 D 波紋 町づくりの布石に 注目される行政の対応
 京都駅改築設計競技(コンペ)の審査会から2日後の10日朝、京都市上京区のホテルで、荒巻禎一府知事、田辺朋之京都市長、塚本幸一京都商工会議所会頭がひざ付き合わせて懇談する年1回恒例の朝食会が開かれた。話題は自然と原氏の作品が選ばれたコンペ結果に向いた。
 審査員の1人でもあった塚本会頭は「審査員11人のうち7人は建築家。建築家はいわば芸術家で、好き嫌いが激しい。僕は経済約視点でみていた」との表現で、必ずしも思い通りに運ばなかった審査の内輪話を披露。都市計画の変更手続きを迫られる田辺市長は「府都計審に諮ることになるので、ひとつよろしく」と荒巻知事にやんわりと協力を求めた。京都市の南部と北部の接点に位置する京都駅。京都の将来図に及ぼす影響は計り知れない。三者三様の思いが席上に漂った。
 高さが59.8bと一つの結論が出たことで、市のまちづくりへの波及効果や、駅地区と市全体の都市計画の整合性はどうなるのか−といったテーマが、次に京都が直面する重い課題となる。
 「京都駅はモニュメンタルな建物で、これを基準にまちづくりを行うことはない」(田辺市長)とはいうものの「事実上の波及効果」は疑う余地がない。市幹部が先に建設省へ走り、駅地区への導入が想定される都市計画の手法の一つ「特定街区」の指定について下相談したのも、難しい析況を十分認識してのことだ。「高さ」問題や、市の行政手続きの進め方を巡ってなお論議がかまびすしいだけに、担当官から「特定街区を悪者にしないでくださいよ」とくぎを刺されたともいう。
 その京都の「まちづくりのバイブル」(石川善朗企画調整局参事)作りを目指す「まちづくり審議会」が、今月下旬にも発足する。有識者、市民代表ら30数人をメンバーに、土地利用と景観の2つの専門委員会を設け、その方向性と施策を探る。
 「広い長期約な視野に立って冷静に議論し、ピンポイントではなく京都のまち全体のありようをまとめていきたい」と佐藤達三助役。たたき台は田辺市長がさきに提示した田辺試案。「北部の保存、都心部の再生、南部の開発」を柱にしたまちづくりの指針が論議の爼(そ)上に上る。
 田辺試案の中でも京都駅はおおむね保存と開発の地域の接点に位置するが、59.8bの京都駅について大西国太郎京都芸術短大教授は「多少は高くなったが、抑制がきいている。あとは北部、都心部、南部と三段階に分け(規制の)めりはりをつければいい」と、同試案の軌道上にあるとみる。むしろ、京都駅や京都ホテルなどにみられる高さ論議が起きる背景について「開発ポテンシャルが北に偏り、南部に開発の受け皿がないからだ」と指摘し、交通網整備など南部への重点約な公共投資の必要性を強調した。
 「まちづくりの審議」と並行して、本年度のタイムスケジュールには5年に一度の市街化区域・市街化調整区域の線引きの見直しや、高さ規制とリンクする用途地域の見直しが予定に挙がっている。市内人口が減少傾向にあることから、通常の見直し作業は小幅となりそうだが、田辺試案の方針に沿って「個性」を打ち出せば21世紀の京都をにらんだ大幅な都市計画の変更も考えられよう。
 京都のまちづくりの設計図をどう描くか。コンペ審査委員長の川崎清京都大教授は10日の審査講評で「今回の議論はこうした(将来の都市計画の)ことを考えていくきっかけになった」と振り返った。
 京都の新しいまちづくりは市民の注視を浴びながら「いよいよ正念場」(市都市計画局幹部)を迎えた。(おわり)(京都新聞)
■盛り土除去し土地不足解消 JR、線路横を壁面に
 鉄道総合技術研究所(JR総研)は、用地が大幅に節約でき雨や地震にも強い線路盛り土の工法を開発、このほど実用化にこぎつけた。同時に既成の土の斜面を垂直なコンクリート壁に変え、新たな用地を生み出す工法も確立しており、地価高騰に悩む鉄道会社にとっては大歓迎の新工法。
 JR総研の新工法は土の間に網状の補強材を等間隔で敷き詰め、両側を厚さ約30aのコンクリート壁で固める方法。
 線路盛り土の斜面は通常約30度の傾斜で、高さ6b、幅7.6bの単線区間だと幅28bの用地が必要だったが、新工法だと線路の両側の土地が節約でき約3分の1の用地で敷設できる。
 コンクリート高架橋に比べ約半分の工事費で済み、浮いた用地費を計算すると、地価が1平方b当たり20万円以上の場所だと従来の盛り土工法より安上がりで済む、という。
 この工法を使って東海道新教線名古屋車両所の拡張工事が進められており、斜面を改良し引き込み線2線を新設中。(京都新聞)
14日■装飾電車でジャズ演奏 開業10周年で地下鉄まつり 京都市が来月2日 旧市電の公開、記念品も
 京都市交通局は地下鉄開業10周年を記念して6月2日、「地下鉄まつり」を催す。北大路車両整備場跡地(地下鉄北大路駅)を会場にチンチン電車など市電の保存車両公開やステージショーなどを行うのをはじめ、特別記念の装飾列車を運行し、車内でデキシーランドジャズを演奏する。また、大型カラーテレビやTシャツなどの当たる記念プレゼントもある。
 北大路会場は午前10時からオープニングセレモニーを行い、キャラクターショーやマジックショーを催すほか、遊びコーナー、展示コーナーなどを設ける。市電保存庫では明治時代のチンチン電車など8両を公開する。記念プレゼントは19日から6月1日まで北大路、四条、京都、竹田の4駅に応募用紙を備えつけ、応募者の中から当日、会場で抽選し、テレビ、旅行券など総額100万円相当の賞品を約20人にプレゼントする。会場への先着500人にTシャツプレゼントも行う。
 特別記念列車は6両編成で午前11時45分ごろ、北山駅を出発し、竹田で折り返して北大路駅まで運行する。所要時間は約50分。定員260人。車内ではデキシーランドジャズの演奏やバニーガールによるドリンクサービスがある。乗車希望者は15日から22日(当日消印有効)までに官製はがきで、京都市中京区壬生坊城町、市交通局経営推進課へ申し込むこと。多数の場合は抽選する。無料。
 このほか、北大路、四条、京都、竹田の各駅コンコースでもジャズ演奏やバニーガールから花のプレゼントがある。(京都新聞)
■信楽高原鉄道とJR衝突 23人死亡 370人負傷 水口 陶芸祭で超満員
 14日午前、滋賀県甲賀郡水口町の信楽高原鉄道(単線、貴生川−信楽間14.7`)で、信楽町で開備中の「世界陶芸祭」に向かうJR京都発信楽行きのJR直行列車(3両編成)と、信楽発貴生川行きの同鉄道列車(4両編成)が正面衝突した。JR列車は超満員で、両列車とも1両目が大破しており、甲賀郡消防本部などに入った連絡では午後2時現在、乗客23人が死亡、370人以上が重軽傷を負っているとみられ、信楽中央病院などに運ばれた。同鉄道列車が信楽駅の出発信号の故障で10分遅れで出発したといい、JR列車に連絡できないまま中間地点付近の待避所(複線)に行き着く前に衝突したらしい。
 同日午前10時半ごろ、滋賀県甲賀郡水口町牛飼の信楽高原鉄道で、JR京都発信楽行き臨時列車「世界陶芸祭号」=林光昭運転士(48)=と信楽発貴生川行きの同高原鉄道列車=淵本繁運転士(51)=が正面衝突した。先頭車両はくの字形に浮き上がって大破、乗客ら23人が死亡したほか、約370人が負傷した。JR列車は約600人の乗客があり、満員状態。高原鉄道列車は約50人の乗客がいた。
 信楽高原鉄道(水口町貴生川−信楽町信楽間、14.7`)は、単線。行き違い設備の待避所が貴生川駅から約6.5`地点の貴生川−紫香楽宮跡間にある。
 衝突現場は、貴生川駅から9`で、待避所から信楽駅方向に約2.5`入ったところ。同鉄道の話では、信楽駅の出発信号の故障で、午前10時14分発の同鉄道列車が10分遅れで発車しており、JR列車が待避所を通りすぎた後、単線区間で衝突したといい、滋賀県警などは信号機の作動状況などを中心に事故原因を調べている。
 JR臨時列車は、4月20日から5月26日まで世界陶芸祭の期間中、平日は1日1往復の便が、JR草津線貴生川駅から同高原鉄道信楽駅まで乗り入れている。
 死亡者は、現場近くの信楽町、牧公民館へ安置。詰め掛けた家族らが、変わり果てた身内の姿に泣き崩れていた。
 JR臨時列車の1両目に乗っていた大阪府茨木市玉櫛二丁目、主婦後藤泰子さん(48)は「1両目の真ん中の右側窓際に主人=正利さん(51)=と2人で座っていた、『ガーン』という音とともに、衝突した。気がつくと主人の体の上に列車が覆いかぶさるように、のしかかっており、身動きができなかった」と、セーターなどに血を浴び緊張の表情で語りながら、列車に閉じ込められた主人の救助を待っていた。
 また、滋賀県滋賀郡志賀町南小松の会社員勝田善邦さん(25)は「列車がゆっくりスピードを上げたと思ったら突然、ドーンとすごい衝撃が走り前部に立っていた人が将棋倒しで飛ばされた。何が起こったか分からず割れた窓から地面に飛び降りた。高原鉄道列車の前部から火が噴き出しており必死で消火器で消した。座席に7、8人が挟まれ『助けてくれ!』と叫んでいたがどうしようもなかった」と恐怖に寒えていた。
 信楽高原鉄道はJR西日本の地方線縮小に伴い旧信楽線が昭和62年7月に廃止、県や地元信楽、水口両町などが出資した第3セクターの単線鉄道として同月発足した。営業キロは貴生川−信楽の14.7`。前年度の輸送実績は1ヵ月平均5万6000人。
 世界陶芸祭は先月20日に信楽町で開幕。このうち入場者の25%が同鉄道を利用すると見込まれ、中間地点に列車対向設備(待避路線)を設け輸送カアップを図った。また、京都方面などからの利便を図るため平日はJR京都から、休日は同大阪駅からの直行便を各1便運転している。
 衝突した列車のうち、京都発のJR直通列車は午前9時25分、定刻通り1番ホームを発車した。3両編成で定員252人のところ、乗車率は240%(JR京都駅調べ)、約600人の満員状態で、ホームには約50人の積み残し客が出た。JR京都駅の話では、毎日大勢の乗客で、積み残し客が出るのも少なくなかった。14日は好天に加えて平日で京都発の直通列車は1本しかなかったため、ふだんより乗客が多かったという。
・対策本部を設置 信楽高原鉄道と町
 信楽高原鉄道は、事故現場近くに午後1時「信楽高原鉄道列車事故現地対策本部」(本部長、社長・杉森一夫町長)を設置。また、信楽町もこれより先の午後零時に「同列車事故対策本部」(本部長・同)を、同町役場内に設けた。(京都新聞 夕刊)
■地獄、めり込む車両 「陶芸祭」列車衝突 悲鳴「速く助けろ」 車輪宙づり。血の跡点々
 死者23人、多数の重軽傷者−。世界陶芸祭の楽しみが一瞬にして吹っ飛んだ。14日午前、陶芸祭会場間近の信楽高原鉄道で京阪神からの乗客を運ぶJR臨時列車と同鉄道の列車が正面衝突。両方の最前部車両が衝突の激しさを物語るようにぺしゃんこにつぶれ、約5bほどせりあがって止まっていた。地元消防団などの必死の救出作業が続けられているが、押しつぶされた車両の中には身動きできない乗客の顔がみえる。苦しそうな表情を浮かべかすかに動く人、ぐったりとなって目をつぶっている乗客の顔もみえる。「ジャッキがない」「早くタンカを」悲鳴に似た声が飛び交うなか、救出された乗客や近くの住民が救出作業を見守っていた。
 両車両の運転席は見えない。双方の先頭車両は前部がめりこむようになり、コの字型に折れ曲がって線路からせりあがっている。車輪は宙づりの状態で、衝突のものすごさを物語っている。
 窓ガラスはバラバラにこわれ、付近には血のあとが点々とし、助けられた乗客は毛布にくるまれて次々にトラックなどで運ばれていく。折れ曲がった車両の窓から女性の姿がみえる。「早く助け出せ」。消防隊員や警官が救助活動を続けるが、めりこんだ車両からなかなか助けられない。
 現場は紫香楽宮跡駅から貴生川駅寄りに500b離れた地点。東側は森林で、西側は国道307号沿いに民家が点在する静かな山間部。そこが一転して惨劇の場になった。
 水口町鹿深の公立甲賀病院には、救急車で負傷者が続々運び込まれ、午後1時現在、死者3人を含め13人にのぼった。病院内は医師や看護婦があわただしく走り回り、警察官が身元確認に追われるなどごったがえした。陶芸祭見物に来る途中だったという京都市山科区の中年の主婦は「JR側の2両目に乗っていたが、突然激しいショックで転倒しそうになった。あとはおぼえていない」と肩をふるわせながら話していた。
 近くに住む主婦(72)は「いつも10時20分に紫香楽宮跡駅を出る電車が通過したなと思ったら、ものすごいドーンという響きが聞こえ、事故を知った。こんなことは初めて」と声をふるわせていた。
 救出作業は、傾いた車体の窓からロープを入れ、負傷者の体に巻きつけ引きずり出す形で続けられた。助け出された50歳くらいの男性は、体を「く」の字型に折り、ぐったりしたまま。上着は肩のところから破れ、血がべっとりつき、事故のすさまじさを物語っていた。
 現場には、医師や看護婦が多数かけつけ、応急手当てに懸命。大破した車体には、まだかなりの負傷者がとじ込められているとみられ、救出活動は混乱した。
 京都府相楽郡木津町の協同組合ハイタッチリサーチパークの研究開発関係者も信楽陶芸祭にディスプレーなどの研修のため、衝突した京都駅からの臨時直行便に乗車した。一行は男女24人で、事故を知ったリサーチパークの関係者は、一行の中のけが人の有無などについて関係機関への問い合わせに追われた。
・なぜ、京都駅あ然
 衝突したJRの臨時列車をこの日朝送り出した京都駅には、ちょうど駅の各現場長20人が集まって開いていた連絡会議の最中に、事故の第一報が飛び込んだ。
 「正面衝突らしい。けが人が多数出ている」。受話器を取った職員の声に、会議は一瞬練りついたが、すぐに出席者全員が職場へかけ戻った。列車の運行に当たっている京都管理部からは16人の職員のうち13人が、事故現場へ飛び出し、他の保線や信号などの部門からも計約50人が事故処理に向かった。
 世界陶芸祭に合わせての臨時列車は、運行開始の先月20日以来、日祝、平日を問わず超満員の盛況で、職員らも喜んでいただけに、突然の事故に、一様に信じられない、といった表情。「毎朝、1番ホームからにぎやかに出発する列車を見るのが楽しみだった。けさもスシ詰めの列車を見送ったばかり。今までの努力が水の泡になった。死んだお客さんの家族にどう説明したら…」と、頭を抱える若い職員も。
 一方、テレビなどで事故を知った家族らの問い合わせは、正午前から増え治め、改札口や駅長室には「病院はどこか」と、直接訪れる人も。同駅では訪れた家族らには、現地までの無賃の乗車券を発行して、対応したが、家族の中には心配のあまり、乗車券を受け取るなり、ホームへ駆け出す人もあった。(京都新聞 夕刊)
■世界陶芸祭のJR臨時列車 列車と正面衝突、7人死亡 約30人が負傷 超満員 30人なお車内 単線、信号機故障か
 14日午前10時35分ごろ、滋賀郡甲賀郡信楽町黄瀬の信楽高原鉄道の紫香楽宮跡駅付近で、同鉄道の信楽発貴生川(きぶかわ)行き普通列車=4両編成=とJRが乗り入れている京都発信楽行きの臨時快速列車「世界陶芸祭号」=4両編成、林光昭運転士(48)=が正面衝突した。この事故で乗客ら7人が死亡したほか、約30人が負傷した。このほか、乗客約30人が正午現在、列車内に閉じ込められているという。現場は単線で、信号機の故障などから待避線でのすれ違いがうまくいかなかったため、衝突したらしい。JRの臨時列車は同町内で開かれている「世界陶芸祭」へ向かう途中で、定員の2.4倍の約600人が乗車していた。
 滋賀県警水口署などの調べによると、現場は貴生川駅から約9`信楽寄りの単線間。ダイヤでは、両列車は貴生川駅から約6.5`の待避線で行き違うことになっていた。ところが、信楽高原鉄道の列車は午前10時14分に信楽駅を発車するはずだったのに、構内の信号が出発信号に変わらず、およそ10分遅れて出発したという。
このため本来なら待避線に信楽高原鉄道が先に入って貴生川方面から来るJRの列車を待つダイヤになっていたが、逆の形でJRが同じ待避線で待つ格好となった。その際、待避線の信号がどういうふうになっていたか分からないという。同署などでは出発信号が乱れたことから、単線上で衝突したとみている。
 負傷沓は、信楽町の信楽中央病院、国立療養所紫香楽病院、水口町の水口市民病院、公立甲賀病院の四病院に収容された。
 「世界陶芸祭号」はJR西日本が世界陶芸祭の入場客のために開幕日の4月20日から大阪、京都駅を始発に各1本、直通で信楽駅まで臨時に編成した列車。事故に遭った列車は定員の2.4倍の乗客を乗せ、京都駅を午前9時25分に出発し、10時38分に信楽駅に到着する予定だった。
 信楽高原鉄道は、1987年7月に、JR信楽線を地元滋賀県や信楽町などが引き継ぎ、第三セクターを設立して開業した単線鉄道。JR草津線貴生川から信楽まで14.7`あり、沿線は信楽焼など陶器の里として、観光客が多い。
 世界陶芸祭は26日までの予定で開かれており、14日現在の入場者は、58万人。予想の35万人を早々と突破している。
 JRの列車が同鉄道に乗り入れるのは分割民営化以後、今回が初めてだった。JRの運転士が同鉄道内もそのまま運転していた。
 現場は滋賀県南部の山あいで、信楽高原鉄道は緩やかな谷間を縫うように走っており、貴生川(きぶかわ)−紫香楽宮跡(しがらきぐうし)駅間の緩やかなカーブ地点。衝突のショックで4両編成の両列車のうち、JRの先頭車両は「く」の字形に持ち上がり、信楽高原鉄道の車両は「く」の字の下にめり込んでいた。(朝日新聞 夕刊)
■残る乗客 必至の救出
 【本社へりさちどりより小北清人】現場は森林の間を走る国道307号沿いの単線上。正面衝突した列車は共に4両編成。衝突した先頭車両はめちゃめちゃに壊れ、衝突の激しさで双方とも上にせり上がって国道側に大きく傾いている。上空から足ると双方の先頭車両が一つの鉄のかたまりになったようだ。
 現場は線路がカーブしている地点で、周囲を森林に囲まれているため、見通しが悪く、正面衝突の一因になったとみられる。
 周辺ではレスヰュー隊員が乗客の救出にあたっている。国道は通行止めになり、数十台の車が渋滞中。ドライバーらは心配そうに、救助の様子を見守っていた。(朝日新聞 夕刊)
■列車ぐにゃり、上がる悲鳴 信楽の事故
 ごう音を立てて列車が正面から激突した。鋼鉄製の車体がぐにゃりと折れ曲がり、山のように盛り上がった。満員の列車から悲鳴が上がる。たくさんの乗客が車内に閉じ込められた。14日午前、滋賀県の信楽高原鉄道で起きた列車事故。静かな山あいは、大惨事の舞台になった。民営化から4年たったJRと、かろうじて生き残った第三セクター鉄道の事故の背景に安全対策上の問題があったのか、単線での正面衝突という事故に、世界陶芸祭への行楽客たちは「なぜこんなことが」といって絶句した。
 きれいなカラー車体の列車の先頭部分がまるで、スクラップのようにめちゃめちゃにつぶれた。衝突の瞬間、列車から白い煙が噴き出した。京都市北区、主婦栢森ともえさん(56)はJRの2両目に乗っていたが、「ガーン」という音とともに投げ出された。1両目の列車では「助けてくれ」、「足をはさまれた」といった悲鳴が聞こえた。衝突した車体はともに前部が大きく盛り上がり、そのすき間から、顔を血だらけにした女性や子どもが消防署員にかつがれて、次々と救出された。
 けが人は車に乗せられ、最寄りの病院へ。だが、けが人はあとからあとから出て、救急車が足りず、マイカーで運ばれる人もいて、病院はパニック状態に。
 信楽町にある国立療養所紫香楽病院。「けが人が多くて症状もよくつかめない」。同病院の職員は悲痛な声を上げた。水口町の水口市民病院では、午前11時半ごろ、4人が次々と救急車で運ばれて来た。正午前になっても、容体や身元がわからず、医師、看護婦らがあわただしく治療にあたった。
 また、水口町の甲賀病院には、午前11時40分までに負傷者約20人が救急車で運ばれ、救急車の医師のほか、一般の診療を担当していた医師たちも動員された。手当ての間にも次々に救急車が到着し、収容人数はどんどん増え続けた。
 事故現場から北約4`の信楽町国保中央病院には、13人のけが人が続々と運び込まれた。医師4人、看護婦13人の全員が出勤、応急手当てに。手足を骨折している人、多量に出血している人。事務員は「病室が狭くて入りきれない。応接間で休んでもらっている人もいる」。
 現場から北約7`の地元の第四消防署では、「正面衝突」の第一報を受けて以後、署員16人の大半が消防車などで出動、けが人の救助にあたった。「午前11時半ごろ、死者5人と現場から無線で入りました。けが人は数えきれないほどで、重体の人もいるので懸命に救出をしています」と興奮気味に話していた。
 現場は、滋賀県信楽町の「滋賀県立陶芸の森」へ向かう国道に沿った単線の鉄道。けたたましくサイレンを鳴らして現場に向かう救急車や消防車などが、陶芸祭に向かう車の問を縫うようにして走って行く。信楽高原鉄道の信楽駅では現場との連絡や事故の問い合わせにてんてこ舞い。同駅すぐ前にあるJRバスに事故列車からの代替輸送をたのみ同11時半ごろ5台のバスが現場に向かった。(朝日新聞 夕刊)
■JR福知山線 1時間の停電 トラック、標識切断
 14日午前9時13分ごろ、尼崎市潮江五丁目、JR福知山線尼崎駅の北西約1`の踏切で、通行中のトラックが架線の高さ制限を示す注意標を引っかけ切断、切れたワイヤが下りの架線に触れショートした。このため1時間4分にわたり福知山線尼崎−川西池田間が停電し上下線とも不通になった。
 この影響で快速など上下7本が運休、福知山発大阪丁行き特急「北近畿4号」など上下24本が最高47分遅れ約3900人の足が乱れた。(朝日新聞 夕刊)
15日■死者42人の大惨事 信楽高原鉄道 負傷者も 449人 列車遅れれからく届かず 県警、朝から現場検証
 滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬の信楽高原鉄道(単線、貴生川−信楽間14.7`)で14日午前、京都発信楽行きJR臨時列車=林光昭運転士(48)、3両=と信楽発貴生川行き信楽高原鉄道列車=渕本繁運転士(51)、4両=が正面衝突した事故で、滋賀県警は同日深夜までに乗客ら死者42人、重軽傷者 449人を確認した。救出件業は夜遅くまで行われたが、「もう車内に閉じ込められている人はいない」として、午後11時10分、作業を打ち切った。県警は水口署に事故捜査本部(本部長・山本武治刑事部長、約100人)を設置した。重傷を負ったJRの林運転士は「青信号で進行した」と話しているといい、県警は15日早朝から信号系統を中心に現場検証するとともに、同鉄道関係者らから信楽駅の列車の出発状況などについて詳しい事情を聴く。国鉄が昭和62年4月、民営化されJRとなって以来初の大惨事となった。
 県警の調べによると、事故現場は貴生川駅から約9.5`、また行き違い設備の小野谷信号所(待避所)から1.5`の地点。林運転士の話では、貴生川駅を出発したJR列車は、待避所の手前で信号が黄色から青色に変わったため徐行して同所内に進入、待避所から単線区間に出る直前の信号も青だったため、そのまま進んで紫香楽宮跡駅方向に向かっていたところ、カーブ地点で同鉄道列車と衝突したという。
 JR西日本によると、高原鉄道列車が定刻より遅れて信楽駅を発車したあとの午前10時25分、同駅から貴生川駅に「10分遅れて発車」の連絡があった。この時点でJR列車はすでに貴生川駅を発車して信楽に向かっており、連絡を受けた貴生川駅のJR職員は、亀山(三重)のCTC指令室には伝えたものの、JR列車とは無線で交信できる状態にもかかわらず、連絡していなかった、という。
 一方、信楽高原鉄道本社の話では、信楽駅に到着した列車に車両1両を増結して4両編成で出発しようとしたが、駅構内の信号表示板が赤だったため、手旗信号で定刻より11分遅れで出発した。待避所の信号も赤になっているとみて、同鉄道列車とJR列車が待避所で共に停止状態になるため、手動で行き違いをさせようと、業務課長らが列車に同乗。また、駅職員が国道307号を車で待避所に向かっていた、という。
 県警本部に入った情報では、同鉄道は以前にも定刻になっても表示板の信号が青に変わらないトラブルがあったが、その際は間もなく回復した、という。県警は、待避所、信楽駅、貴生川駅3ヵ所の信号系統を中心に現場検証し、信楽駅でなぜ信号が赤のままだったのか、また、待避所の信号状況などを捜査。また、同鉄道やJR運転士ら関係者から運行状況について詳細な事情を聴く。
・陶芸祭さょう閉場 稲葉知事会見 打ち切りも示唆
 稲葉稔滋賀県知事は14日夜、県庁内で記者会見し、開催中の世界陶芸祭の今後の日程に触れ「15日は、亡くなられた人に弔意を表するために閉場するが、その後の閉揚も含めて検討している」と、会期を12日間残して14日限りで陶芸祭を打ち切る可能性があることを示唆した。
 稲葉知事は冒頭「こんな大惨事になり、県政を預かる責任者として、亡くなられた方やけがをされた方に申し上げる言葉もなく、ごめい福を祈るとともに、けがをされた人に対し衷心よりお見舞い申し上げる」と述べ、「予想以上の入場者となったが、高原鉄道へのJR乗り入れで途中にすれ違いの場を設けるなど、安全についてはできる限りのことをしてきたのに」と残念そう。16日以降の陶芸祭開催については「閉場も含めて、15日中には対応を決めたい」と、陶芸祭の打ち切りもあり得ることを示唆した。
・事故の死亡者名簿
 死亡が確認されたのは次のみなさん。(敬称略)
 ▽亀岡市大井町並河二丁目、会社員森上修(35)▽京都市伏見区深草正覚町、会社員松林達雄(43)▽向日市鶏冠井町稲葉、無職安藤壮之助(76)▽同、安藤ふみ子(70)▽京都市右京区嵯峨二尊院門前善光寺山町、会社員臼井信子(26)▽京都市伏見区桃山町大津町、主婦木村てい子(62)▽京都市伏見区両替町十五丁目、無職伊原一男(65)▽綴喜郡田辺町興戸番鉾立、黒川和子(37)▽京都市伏見区石田森南町、中尾きみ子(68)▽大津市南郷六丁目、会社員高橋宗人(47)▽甲賀郡信楽町黄瀬、中島治三郎(63)▽同、中島未晴(2つ)▽同町作原、平野真正(68)▽同町長野、無職熊谷輿三郎(68)▽甲南町葛木、信楽高原鉄道勤務吉沢彦一(55)▽信楽町多羅尾、信楽高原鉄道常務奥村清(62)▽蒲生郡蒲生町、同鉄道勤務中島春男(54)▽水口町三大寺、信楽高原鉄道運転士渕本繁(51)▽信楽町江田丸ノ内、久保高子(61)▽大津市大門通、国江恵美子(48)▽茨木市玉櫛二丁目、会社役員後藤正利(51)▽堺市南長尾三丁目、栗谷源三郎(76)▽茨木市三島町、会社員平野秀一(60)▽高槻市奥天神町二丁目、樽井言致(76)▽同、樽井美代子(69)▽大阪市中央区安堂寺町二丁目、古川吉次(76)▽大阪市福島区海老江二丁目、無職内田真二(75)▽神戸市灘区赤松町、会社役員林昇(58)▽高槻市西真上二丁目、野田花子(71)▽東大阪市東石切町、今谷益雄(76)▽大阪府三島郡島本町広瀬、主婦寺川初枝(67)▽同町大沢、主婦向谷富子(54)▽宝塚市中山桜台一丁目、主婦吉崎佐代子(53)▽三重県阿山郡伊賀町柘植、信楽高原鉄道車掌中村裕昭(54)▽高松市三谷町、村川ツヤ子(63)▽神戸市東灘区森北町、中原辰子(52)▽長崎市大庄川田町、栫和子(52)▽大阪府三島郡島本町桜井、藤目幸子(78)▽大阪市浪速区恵美須西、中田晶子(42)▽大阪市住吉区長居、大内司朗(74)▽高松市屋島西町、長尾トシ子(67)▽尼崎市東難波町四丁目、都田美代子(48)(京都新聞)
■濃密運行アダ 信号故障後の対応に不手際
 ひなびた山里を走る第三セクター鉄道で、これほどの惨事がなぜ起きたのか。信楽高原鉄道やJR関係者の話を総合すると、信号故障が発生したあとの対応の不備などさまざまな問題点が浮かび上がってくる。
 事故を起こした信楽高原鉄道の列車が信楽駅を出発したのは、定刻より11分遅れ。3両編成を急きょ1両増結した上、構内の出発信号が故障で赤のまま変わらなくなったためで、結局、駅員が手信号で発車させた。JR直通列車も定刻より2分遅れて貴生川駅を発車した。
 信楽線は全線が単線。本来のダイヤなら2つの列車は唯一、行き違い線路のある小野谷信号所(待避所)でスレ違う。しかし、実際には信号所から信楽駅寄りで激突してしまった。
 同鉄道によると、列車運行は自動閉そく装置で制御。信楽駅を列車が出発すると、小野谷信号所の信楽側信号は自動約に赤に変わって対向列車は進めない。
 さらに、同鉄道の広岡実総務課長は「万一、故障で青信号だったとしても、信号所で対向列車を待つダイヤ編成だった」と説明する。これに対し、JR列車の林運転士は警察の調べに対し「信号は青だった」と証言。現場を調査したJR関係者らも「信号が青なら信号所で待機する理由はない」という。だが同夜になって広岡課長は前言を翻し「そんな規定はなかった」と訂正するなど、混乱もみられた。
 信楽高原鉄道は、従来、全線にまったく行き違い設備がなく、1日15.5往復と信楽−貴生川間をピストン運行するだけのゆったりしたダイヤだった。
 ところが、信楽町で開催される世界陶芸祭のため、今年3月16日にダイヤ改正。小野谷信号所や特殊閉そく装置を新設した。
 陶芸祭が始まった4月20日からはJR列車も三セク移行後初めて乗り入れ、1日26往復の濃密ダイヤとなっていた。さらに、JR列車には信楽高原鉄道と連絡できる無線が積まれていない点も事故原因につながった。信楽駅では列車の発車と同時に駅員を乗用車で小野谷信号所に派遣。JR列車に指示を与えようとしたが間に合わなかったという。
 現場付近は山あいの急カーブで、双方の運転士は直前まで相手の列車が見えない見通しの雪も死傷者を多数出すことにつながったようだ。
・運転協定書役立たず
 JR西日本と信楽高原鉄道の間では、JRの直通乗り入れ運行を前に、列車制御システムなどについて協定書を交わし、JR側で訓練運行を重ねるなど、万全を期していた、というが、安全対策が役立たずに大惨事を招いたことで、改めて両社の安全管理の甘さが厳しく指摘されそうだ。
 両社は、3月27日付で「車両直通運転契約書」を交わし協定を結んだ。運行列車の安全制御面では、ふだんは信号機で列車の運転を制御する「特殊自動閉そく方式」を採用。同方式が故障した時には「代用閉そく方式」で列車を運転することにしていた。この方式は、小野谷信号所に臨時の駅長を置き、信楽駅と相互連絡。特定の一人の職員が列車に乗らなければ、列車を運転できないシステムで、いわば「人間タブレット方式」といい、信楽−小野谷信号所間は、複数の列車が走れないことになっていた。JR西日本では、今回は信楽駅の信号機の故障・列車の手動発進が、小野谷信号所の信号機に伝わっていなかったのではないかと推定。故障の時点で、「代用閉そく方式」を採用し「連絡がとれるまで(信楽駅から)列車は出してはいけなかった」(守屋実・鉄道本部安全対策室長)としている。
 一方、乗り入れるJRの電車と、高原鉄道の車両無線の周波数が違うため、沿線に500b間隔に電話機を設けて対応したが、「(高原鉄道の)貴生川駅を出発した陶芸祭号には、高原鉄道側からは直接連絡がとれない」(畠申達・JR西日本鉄道本部運用課長)状態だった。このほか、JR側は高原鉄道側の運転士不足から、旧国鉄信楽線当時の運転士8人を選び、乗り入れを前に、「すれ違い運転」も含めた訓練運行を重ねた、というが、実らなかった。(京都新聞)
■凡語
 高原鉄道の名にふさわしく列車はもえる新緑を分けて山あいを走る。信楽はもうそこにきた。日和もよし、マスコットキャラクターを「ポンキー」と呼ぶ。評判の世界陶芸祭が待っている。だが突如不幸が訪れた▼死者42人、重軽傷449人。事故の報に山陰線・余部鉄橋転落が浮かぶ.天王寺駅車止め衝突が渾かぶ。長野・飯田線の正面衝突がよみがえる。国鉄再建答申の古い過去から磯崎元総裁の話も生々しい。「答申は事故について全く考えていない。鉄道人としては耐え難い」▼旧国鉄の三大遺産は「安全正確」「土地」「技術」で中でも民営移行で安全輸送の無形資産を引き継げるかどうかで論争があった。国会での効率優先批判に政府は答える。「人は減っても安全は守る」「事故は絶対に起こさない」と。だが公約がいかにむなしいかはJR移行後の事故が語る▼柳田邦男さんは『事故の視覚』と題す警句がある。安全対策は事故やトラブルを教訓にたてられ、それは例規集に追加される。一見網羅されるが同時に複雑になり、教訓が新鮮に生きているのは1年か2年。ファイルに埋もれて漫然と処理するようになったとき必ずポカを生じる▼どんな事故でも一つの独立した欠陥やミスだけで起きるのはマレだという。アメリカに「ハインリッヒの法則」があり、それは労災事故を統計学約に調べたもので、重大事故はその背後に小事故やトラブルがビラミッド型に積み上げられた結果として招来するというものだ▼陶芸祭はスタートから好調で臨時列車は連日のように積み残し客を出した。この朝、京都駅ホームに残された50人。神のいたずらが禍福を分けた。「人の運命ほど測る可からざる無し」(幸田露伴・幽情記)今はただごめい福と負傷者の回復を祈るのみ。(京都新聞)
■社説 基本忘れた信楽高原鉄道
 列車同士の正面衝突。耳を疑うような事故が敦賀・信楽高原鉄道線で起きた。信楽町で開催中の「世界陶芸祭」へ向かっていた大勢の人が巻き込まれ、死傷者約500人という大惨事となった。安全運転の基本をおろそかにした関係者の責任は重い。
 きのう午前、同鉄道線の紫香楽宮跡駅南約500bの地点で、JR京都発信楽行き臨時快速列車と信楽発貴生川行きの列車が正面衝突した。現場は単線区間である。単線上を逆方向に2本の列車を同時に運行すれば正面衝突するのは自明の理である。鉄道の常識ではありえないことだ。
 ありえないはずの事故が、なぜ起きたのか。防ぐことはできなかったのか。
 2つの列車は、現場から約2.5`貴生川寄りの信号所(無人)で行き違うことになっていた。同鉄道の説明によれば、貴生川行き列車は信楽駅の信号の故障で同駅を約10分遅れて出発した。対向の快速列車はこのことを知らないまま信号所を過ぎ、悲劇の現場へと直進したわけだ。
 貴生川行き列車の方は快速列車が退避していると信じたのだろうし、快速列車は相手列車がまだ信楽駅を発車していないと判断したのだろう。あまりにも初歩的で決定的な誤解がどうして生じたか。信号所の信号機は正常に作動していたか、列車に遅れが出た場合、行き違いをどうすることになっていたのか、危急の際に安全側に働くはずのATS(列車自動制御装置)は役立たなかったのか、解明がまたれる。
 同鉄道の列車なら駅や列車間で無線連絡が可能だが、一方の快速列車はJRからの乗り人れ車両のため会社の無線が通じなかったという。これも不運であった。
 事情はともかく、常識では考えられない事故が発生した以上、やはり安全運行の基本が忘れられていたと断じざるをえない。この春、同鉄道は信号所の設置で列車を増発した。運行方式が変わったわけだが、それに伴う意識改革と安全対策は十分だったか、信号故障の際、第一にやらなければならない安全確保に万全を尽くしたか。
 JR直通列車の乗り入れは同鉄道が発足してから初のこと。18往復の定期列車を陶芸祭期間中はJR車両を借りて26往復に増便していた。保有車両を全部注ぎ込んで、総力輸送体制を組んでいたが、ダイヤ確保に思いを致すあまり、JRとの連絡不備や運行上の無理はなかったか。
 先月20日から始まった「世界陶芸祭」には、当初の予想を大きく上回る人出があり、同鉄道も連日開業以来のにぎわいをみせた。改札口を抜けるだけで20−30分かかる日もあるほどで、同社は「予想以上の人出でどうしようもないのが現状。とにかく安全輪送に全力を尽くしている」(本紙滋賀版)と語っていた。今となれば、それも痛恨のきわみである。
 「世界陶芸祭」は現代人のこころにしみる好企画として迎えられた。人出予想にうれしい誤算があったのは事実だが、だからこそ、人出に柔軟に対応して、何より安全を確認す備えが必要だった。あえて不注意と強調するが、鉄道にはあってはならない安全への不注意が、陶芸によせた人びとの温かい思いを引き裂き、ひいては「信楽線」を残した関係者の熱意を裏切ることになったのも残念である。
 宙に乗り上げた車体が衝撃のすさまじさを物語る。京都から超満員の列車に乗り合わせ、新緑の高原を「陶芸祭」への期待を膨らませていた乗客と、信楽からの列車の乗客に襲いかかった一瞬の暗転。死傷者はあまりに多く、いたましい。亡くなった方々をいたみ、けがをされた方々がせめて一日も早く回復されるように願う。(京都新聞)
■大事故なぜ起きた
 信楽鉄道事故の原因や背景について、鉄道問題に詳しい識者に聞いた。
・正面衝突など考えられない
 天野光三京都大工学部教授 どんな鉄道でも、1閉塞(へいそく)区間に1列車しか入れないようにチェックするシステムが基本であり、列車の正面衝突など信じられないことだ。JRの運転士は、待避線の信号が「黄」から「青」に変わったから単線に進行したと説明したと聞くが、前に列車があれば「青」には絶対にならない。信号故障としても、信号は安全側に作動して「赤」になるはず。もし「青」になっていたとしたら、前例のない信号故障だ。
・思いがけないエラー発生か
 評論家柳田邦男さん 最近は今回のように異なった会社間での乗り入れが多いが、各会社間では安全システムや乗務員の運転感覚に差がある。異なったシステム下で運行したため、思いがけないエラーが生じたのではないか。会社間のシステム調整の不足が背景にあり、単に運転士のヒューマン・エラーと考えるべきではない。
・不慣れのためだったのか
 鉄道史研究家原田勝正さん 常識では考えられない事故だ。気になるのは、なぜ信号故障で職員を信号所まで車で走らせたのかだ。ふつう待避線の信号は常時「赤」の停止定位で、故障しても「赤」のはず。車を走らせたのは、「赤」になっている自信がなかったからではないか。JRにしても信楽高原鉄道にしても陶芸祭で稼ぎ時だったはずで、臨時ダイヤを組むなどふだんと違う列車運行への不慣れがあったのかもしれない。国鉄の分割民営化で生まれた第三セク鉄道だが能力オーバーの運行を強いられて荷重な負担になっていたのではないか。(京都新聞)
■負傷した人たち(京滋関係分)
 信楽鉄道列車事故で治療を受けた負傷者=京滋関係者は次の通り。(敬称略)
 【滋賀医大】福井スミ(72)=宇治市木幡南山畑▽村田マリコ(37)=草津市東草津二丁目
 【大津赤十字病院】西川マサノ(55)= 京都市上京区六軒町通中立売▽磯部仁(26)=京都市右京区西京極殿田町▽鎌田千恵子(25)= 京都市右京区梅津▽田谷かおり(26)=京都市左京区南禅寺福地町▽田村雄助(55)、ヤサ(54)=城陽市枇杷庄大掘▽川目尚豊(38)=守山市伊勢町▽黒川精子(59)=宇治市羽拍子町▽上杉裕子(25)=京都市右京区西京極三反田町▽中島高夫(72)、ユキエ(66)=京都市北区出雲路松ノ下町
 【水口市民病院】橋本俊一(66)、静枝(66)=京都市左京区▽田村ちづ子(41)=京都市南区西九条豊田町▽竹内弘義(43)、重子(46)=京都市伏見区久我石原町▽中井正司(37)=亀岡市千代川町
 【公立甲賀病院】栢森トモエ(56)=京都市北区紫竹西桃ノ本町▽上田初美(28)=大津市坂本二丁目▽片山ちえ子(59)=京都市北区小山下総町▽藤原あき江(48)、志女(67)=京都市出科区勧修寺平田▽吉岡富代子(61)、富久夫(65)=大津市北大路三丁目▽田中信子(58)=宇治市広野町中島▽尾崎友美(20)=竹相楽郡木津町市坂奈良道▽高志みさ子(64)=宇治市木幡大瀬戸▽伊原イト(63)=京都市伏見区両替町▽福井晧二(51)、梨英子(47)=京都市山料区西野阿芸沢町▽山下英昭(47)=京市伏見区桃山町▽橋本政和(60)、久子(56)=京都市南区吉祥院西定成町▽石井泰子(50)=京都市伏見区向島二ノ丸町▽井田絹子(55)=宇治市広野町寺山▽上田玉枝(53)=大津市坂本二丁目▽中島イト(66)=甲賀郡信楽町黄瀬
 【国立療養所紫香楽病院】田辺稲生(26)=甲賀郡信楽町長野▽中島ヤサエ(62)=甲賀郡信楽町黄色瀬▽橋本末一(66)=大津市石場▽藤林金三郎(60)、藤林一子(67)=京都市伏見区醍醐古道町▽鈴木晶子(44)=京都市伏見区久我森の宮町▽中村斉(45)=京都市山科区大宅早苗内▽新司佐邦子(40)=京都市北区上賀茂深泥池町▽森村喜代子(66)=京都市右京区梅津大縄場町▽丸山勝司(43)=京都市右京区太秦袴田町▽中村栄子(49)=向日市寺戸町七之坪▽中居英康(45)=亀岡市大井町並川一丁目▽加納寛(57)=宇治市宇治天神▽竹山道子(26)=城陽市平川室木▽栗原ますえ(44)=綴喜郡田辺町興戸南鉾立
 加藤恭子(44)=宇治市伊勢田町砂田▽西沢和代(40)=宇治市小倉町南堀池▽中村とみ子8(44) =宇治市伊勢田町遊田▽荻野澄子(50)=京都市右京区嵯峨野有栖▽大西資真子(67)=京都市上京区竹屋町通日暮東▽石井泰子(51)=京都市伏見区向島▽林田清(43)=京都市北区西賀茂南大栗町▽中川利春(42)=大津市比叡平▽佐藤敬二(42)=京都市右京区西院月双町▽高野忠男(53)=京都市右京区嵯峨野千代の道町▽小川進(43)=八幡市八幡月夜田▽片岡福子(60)=京都市伏見区淀木津町▽甲斐小枝子(52)=八幡市八幡平町▽西晴行(47)=京都市左京区聖護院西町▽中川うた(66)=京都市北区大将軍坂田町▽野崎幸子(53)=亀岡市千代川町今津一丁目▽福嶋房子(53)=亀岡市千代川町今津一丁目▽井狩らく(56)=滋賀郡志賀町高城▽池本昭夫(40)=京都市東山区今熊野南日吉町▽津田道子(42)=向日市寺戸町永田▽吉田達治(62)=京都市山科区椥辻池尻町▽田中シヨ子(39)=向日市物集女町中条▽広田伊津子(47)=向日市寺戸町中村垣内▽島岡和光(65)、島岡ツヤ子(64)=京都市下京区西七条東久保町▽田原テル(61)=京都市中京区岩上通四条上ル
 北川静栄(69) =亀岡市南つつじケ丘▽清水カネ(59)=亀岡市三宅町▽唐橋ミヤコ(50)=乙訓郡大山崎町下植野▽北村君子(55)=宇治市伊勢田町▽寺川裕(62)=京都市上京区日暮通出水下ル▽中川辰一(68)=京都市北区大将軍坂田町▽山岸敏子(61)=京都市中京区里前蛸薬師▽今泉靖子(49)=亀岡市旭町▽川勝美代子(66)=亀岡市旭町▽徳田重夫(61)= 舞鶴市堀上▽蔦岡章子(37)=向日市寺戸町▽内山雅子(65)=京都市左京区下鴨川原町▽前田裕美子(38)=福知山市堀水内▽奥戸善子(44)=相楽郡木津町相楽台▽山本一乃(50)=京都市東山区本町通五条上ル▽中西節子(81)=京都市出科区音羽沢町▽上田玲子(61)=大津市木ノ岡町▽山峯敏子(61)=京都市中京区黒門通蛸薬師上ル
 野崎幸子(53)=亀岡市千代川町今洋▽曽我満義(78)=久世郡久御山町▽桑田正男(63)=高島郡新旭町太田▽大倉欣一(63)=城陽市寺田大谷▽小島摩利子(43)=京都市西京区山田北水町▽八田艶子(66)=京都市左京区下鴨貴船町▽吉田典子(62)=京都市山科区椥辻池尻町▽刈谷光代(69)=京都市山科区大宅辻脇町▽小谷百合子(39)=京都市上京区五辻通浄福寺西入ル▽大西ジフ(69)=長岡京市高台三▽横田キヌエ(59)=京都市山科区小野荘司町▽西晴育(47)=京都市左京区聖護院西町▽藤林金三郎(60)=京都市伏見区醍醐古道町▽橋本夕起子(42)=京都市伏見区桝形町
 赤博子(49)=城陽市平川室木▽赤松直美(21)=城陽市平川室木▽赤松達治(49)=城陽市平川室木▽小笠原満子(63)=京都市右京区嵯峨天竜寺広道町▽篠田三重子(55)=京都市左京区北白川下池田町▽野崎幸子(53)=亀岡市千代川町今津一丁目▽石津しづ子(59)=京都市左京区一乗寺庵野町▽橋本末一(66)=大津市石場▽福嶋房子(53)=亀岡市千代川町今津▽高乗美貴子(47)=京都市右京区嵯峨野有栖川町▽片岡千代(52)=京都市下京区松原通▽折出須美子(47)=京都市右京区嵯峨野清水町▽辻野愛子(54)=滋賀県愛知郡愛知川町川原▽徳田文子(60)=舞鶴市堀上▽田宮忠三(64)=京都市右京区太秦安井藤ノ木町▽井川紀代子(50)=綴喜郡田辺町薪城ノ内
 天野エミ(59)=滋賀郡志賀町八屋戸▽水谷すま子(59)=向日市寺戸町▽安田芳子(59)=蒲生郡安土町老蘇▽神田政子(57)=京都市南区吉祥院船戸町▽上田由子(55)=宇治市開町▽吉本トミ枝(51)=城陽市久世下大谷▽近藤潤子(55)=宇治市小倉町▽唐橋ミヤ子(50)=乙訓郡大山崎町下値野▽松井憲二(44)=大津市仰木の里一丁目▽北岡志津代(71)=京都市南区八条内田町▽塩谷房子(58)=城陽市寺田植尻▽室田敦子(55)=京都市下京区仏光寺通堀川西入ル▽長谷登志夫字(63)、長谷敏子(57)=京都市北区衣笠赤阪町▽朝比奈孝義(5) =京都市南区上鳥羽山ノ本町▽森和義(32)、森浩美(28)=京都市南区吉祥院西浦町▽尾崎ヒサ子(63)=相楽群精華町大字北稲八間焼山▽藤田トミ子(62)=滋賀郡志賀町高域▽北村恵子(59)=宇治市南陵町一丁目▽谷口寛和(41)、谷口和彦(39)=京都市東山区五条橋東四丁目
 中西瞳(67)=城陽市寺田西ノロ▽伊藤ま津(76)=京都市伏見区▽岩崎結子(55)=長岡京市文橋二丁目▽安田彰子(54)=京都市右京区嵯峨苅分町▽寺重和子(56)=宇治市槇島町落合▽寺尾美子(56)=宇治市広野町丸山▽姫野英子(49)=向日市寺戸町東野▽尾川豊香(54)=京都市中京区南両町▽河井俊雄(61)=京都市南区吉祥院東通町▽河井和子(58)=京都市南区吉祥院東道町▽清水美智代(26)=大津市長等三丁目▽上田淳子(48)=城陽市枇杷庄島ノ宮▽石田公子(44)=京都市中京区壬生御所ノ内町▽野口妙子(39)=城陽市平川鍛治塚▽勝嶌陽子(33)=大津市日吉台二丁目▽浜田一栄(56)=向日市森本町上森▽北尾昭子(50)=京都市西京区大枝南福西町
 【信楽中央病院】曽我妙子(73)=久世郡久御山町林▽伊藤満津(77)=京都市伏見区桃山町光済▽渡辺健次(47)=京都市北区紫野西建台野町▽松岡昌実(62)=八幡市男山雄徳▽荻野澄子(50)=京都市右京区嵯峨野▽折出須美子(47)=京都市右京区嵯峨清水町▽杉村キス子(59)=京都市中京区車屋町通竹屋町下ル▽神田政子(57)=京都市南区吉祥院船戸町▽井川紀代子(50)= 綴喜郡田辺町。薪城ノ内▽山岸敏子(61)=京都市中京区黒門通蛸
薬師上ル▽杉村清五郎(60)=京都市右京区梅津北川町▽前田裕美子(39)=福知山市堀水内▽犀川豊香(54)=京都市中京区西ノ京南西町▽森田みつ江(49)=向日市森本町下森本▽曽我満義(78)=久世郡久御山町林北畑▽勝田善邦(25)=滋賀郡志賀町南小松▽姫野美代子(56)=字治市神明宮東▽甲斐小枝子(53)=八幡市平田▽片岡福子(60)=京都市伏見区淀木津町▽下村ナラミ(49)=城陽市水主南垣内▽太田きくえ(57)=京都市伏見区深草薮ノ内町▽伊藤シズ江(65)、伊藤茂太郎(71)=京都市山科区音羽前出町
 【国立京都病院】モリムラキヨコ(66)=京都市右京区梅津▽イトウアキコ(66)=向日市森本町
 【その他】鎌田幸二(43)=京都市伏見区深草中ノ島町▽中川圭子(43)=京都市伏見区桃山町養済▽渡辺圭子(46)=京都市伏見区桃山羽柴長寺東川▽山本京子(40)=京都市南区吉祥院前田町▽浅田歌子(45)=京都市南区区八条内田町▽中山静江(62)=京都市南区上鳥羽高畠▽木村登志枝(41)=京都市南区唐橋花園町▽松岡啓子(42)=京都市南区唐橋高田町▽藤井美子(46)=京都市南区唐橋経田町▽沢明子(40)=京都市南区八条内田町▽丹羽八重(69)=京都市下京区夷馬場町▽佐々木文子(66)=京都市下京区七条御所ノ内本町▽飯田和代(43)=京都市中京区西ノ京中御門東町▽浜田滋子(42)=京都市東山区大和大路五条下ル▽中西宏江(53)=向日市物集女
・「心からお悔やみ」首相、原因究明を強調
 海部首相は14日午後、滋賀県で起きた信楽鉄道事故について「亡くなった方には心からお悔やみ申し上げます。どうしてこんなことになったのか、政府としても徹底的に原因を究明しなければならない」と述べ、運輸省を中心に事故原因究明に全力を挙げる考えを強調した。
 首相官邸で記者団の質問に答えた。
 坂本官房長官は14日午後の記者会見で、信楽鉄道事故について「重大事故発生は誠に遺憾、残念だ。亡くなられた方に心からお悔やみを申し上げ、負傷者の一日も早い回復をお祈りする」と述べた。
・過去の主な列車事故
昭和37年 5月 3日常磐線三河島−南千住間で脱線した貨物列車に上野発の下り列車が衝突。死者160人、重軽傷296人
38年11月 9日東海道線鶴見−新子安間で脱線した列車に横顔賀線上り列車が衝突。死者161人、重軽傷120人
47年11月 8日北陸線北陸トンネルを通過中の列車が出火。死者31人、重傷120人、軽傷517人
61年12月28日山陰線余部鉄橋で回送列車が転落。死者6人、負傷6人
63年12月 5日JR中央線東中野駅で停車中の列車に後続車両が衝突。死者2人、重軽傷113人
(京都新聞)
■将棋倒し 重なる遺体 陶芸祭の楽しみ暗転 友や妻 変わり果て 遺族哀しい対面
・遺体安置所で
 遺体安置所となった信楽町長野の町民体育館には、午後6時20分ごろから白い布にくるまれたひつぎが次々と運びこまれた。相前後して遺族らが詰めかけたが、中には各病院を探しても家族の行方がわからず、最悪の場合を考えて確認に訪れる人も。変わり果てた家族や友人の姿にすすり泣きがあちこちでもれ、僧りょ8人で営まれた仮通夜の重々しい読経がそれに重なった。
 午前零時過ぎまでに、身元の手がかりのない3人を含む42人の遺体が運びこまれた。まだ現場での収容作業は続いているが、10時ごろには早くもひつぎの搬出が始まり、地元の信楽町黄瀬、中島未晴ちゃん(2つ)の遺体も「おうちに帰ろうね」と声をかける家族に伴われて無言の帰宅へ。
 製茶メーカーの福寿園に勤める京都市右京区嵯峨二尊院門前善光寺山町、臼井信子さん(26)の遺体確認に訪れた同僚の男性(36)は「陶芸祭見物に向かっていたハイタッチ・リサーチパークのメンバーは本当は私だったのですが、仕事の都合で無理に彼女に変わってもらった。テレビで事故を知り、まさかと思って来てみたが、こんな結果になるなんて。なんとおわびをしたらいいのか…」と、途切れ途切れに話し、涙をにじませた。
 陶芸祭に行くため、信楽駅で待ち合わせすることになっていた栗東町小野、無職豊岡力さん(76)は、旧制中学以来の友人3人の遺体と対面、「1本早い列車に乗って弁当を用意して信楽駅で待っていた。60年来の友人を失って本当に残念だ」と泣きじゃくった。
 宝塚市中山桜台の会社員吉崎俊三さん(57)は、29年間連れ添った妻の佐代子さん(53)が亡くなり、芦屋市にとついでいる娘の溝口恵美子さん(28)、坂本久仁子さん(25)がともに重体。「妻が皿を集めるのが好きで久しぶりに母娘3人で連れだっての旅でした。連休が満員なので平日を選び、朝、車で駅まで送ったときは『行ってくるよ』と、元気だったのに…」と、変わり果てた妻の姿に声をつまらせていた。
 稲葉知事が午後11時、遺体安置所に到着。一人ひとりの遺体に線香をたむけて合掌、それぞれの遺族に深々と頭を下げた。知事は事故に対し「遺族のみなさんに申し上げる言葉もない」と、ショックを隠せない様子だった。
・運輸相が現場視察
 運輸省は14日午後7時、省内に「信楽高原鉄道事故対策本部」を設置した。
 本部長は村岡運輸相で、今枝同省政務次官、林事務次官ら計9人で組織。事務局は地域交通局陸上技術安全部に置き、現場機関と連絡をとり事故に関する情報の収集、鉄道事故防止対策検討などに当たる。村岡運輸相は事故現場視察のため急きょ、午後7時44分発の新幹線で京都に向かい、同10時25分、京都駅に着いた。
 村岡運輸相は張りつめた表情で「大変な事故が起こり驚いている。とりあえず自らの目で現場を調べようと思った。第三セクターへJRが乗り入れる場合の安全対策が十分にできていたのかどうかが問題で、他の路線についても早急な総点検を行いたい。死傷者とその家族の人々には、心からお見舞いを述べたいと思う」と話し、足早に車へ乗り込み、現地へ向かった。
 村岡運輸相は同11時50分、連休が安置された信楽町民体育館に到着。遺体に線香を手向け、遺族に深々と頭を下げたが、遺族の中には、「来るのが遅い」と怒りの声をあらわにする人も。
 大惨事について大臣は「申し訳ないとしかいいようがない。亡くなった方は戻ってこないが、事故原因の徹底究明につとめたい」と、目を潤ませて話し、「傷ついた人を見舞いたい」と病院へ。その後、事故現場も視察した。
 これより先に、今枝敬雄政務次官も、負傷者の収容されている病院や事故現場を視察、「まだ細かく事故の内容は聞いていないが、乗客の詰め込みすぎなどがあれば問題。原因究明に全力を挙げ、第三セクター全体の問題して安全性の再点検を進めたい」と語った。
・「おかしいと思った」重傷の運転士
 事故を起こし重傷を負ったJR臨時列車の林光昭運転士(48)は、滋賀県警の事情聴取に対して「複線部分の待避線を通りかかったところ、信号が黄から青に変わったため、そのまま進行した。いつもなら反対車線に列車が止まっているはずなのに見えず、おかしいとは感じたが、信楽駅でトラブルがあったのだろう、と思っていた。スピードについてはどのくらい出ていたか分からない」と述べた、という。
・臨時列車11回 運転の経験者
 JR直通列車を運転していた林運転士は、昭和39年4月、旧国鉄亀山機関区に入社のベテラン運転士。61年から旧JR信楽線の乗務を担当しており、事故のあった同区間を、臨時直通列車ですでに11回運転乗務の経験があった。
・声 かけたが息絶えた 同僚の死に絶句 血を流しうめく負傷者 病院で
 水口町鹿深の公立甲賀病院には午前11時ごろから続々と救急車が到着。頭から血を流したり、うめきながら運ばれてくるけが人は治療室へ。午後4時ごろまでに50人近い人が運ばれ、このうち女性5人が搬送中や治療中に死亡した。
 1階ロビーには軽傷の人たちが集まり、事故の様子を興奮しながら話した。京都市上京区の帯地メーカー・渡文の社員で同僚8人と陶芸祭に行く途中だった亀岡市千代川町、中井正司さん(37)は右足にけがを負い、血のにじむワイシャツ姿で「JR列車の前から3両目の前部に立っていたが、車内はすし詰めで動くこともできなかった。突然、激しい衝撃があり周囲の人に押しつぶされそうになった。なんとか車外に出たが、よく覚えていない」とボウ然とした表情。
 信楽町長野の信楽中央病院には計109人の負傷者が運び込まれ、うち3人の死亡が確認された。病院では、他の病院から医師や看護婦が応援に駆けつけ、治療などにフル回転。治療待ちの負傷者がロビーにいっぱいになり、ニュースで事故の原因が報じられると、「あー」と悲鳴に近い声がもれた。
 死亡した亀岡市大井町、会社員森上修さん(35)と一緒に1両目に乗っていて軽傷だった同僚の京都市北区、渡辺健次さん(47)は「衝突して気がつくと、自分の下に2人、上に何人もの人が重なり合って倒れていた。森上さんはさらに下にいて最初は声をかけあい励まし合っていたが、間もなく苦しみ出し、声が途絶えた。1時間半もたって救出された時、ガンバレと声をかけたが、反応はなくなっていた」と話し、病院で死亡を知らされると「なんてことだ」と言葉を詰まらせた。
 左足骨折などで国立京都病院(京都市伏見区)に運ばれた向日市森本町下森本、主婦糸井昭子さん(52)は「JR列車の先頭車両で、運転席の後ろのデッキに立っていた。バーンという音とともに、ものすごい勢いで折り重なるように前に倒れた。なにがなんだかわからず、気がついたら左足が車体にはさまれ、身動きできなかった。すぐ近くで、年配の男性が顔から血を流してうめいていた。青い煙が出て、みんなが『早く外に出て』と叫んでいた。男性乗客が『頑張れ』とみんなを励ましている声も聞こえた。救助隊に背負われ、ようやく車外に出た」と話していた。
・JR西日本も対策本部設置
 JR西日本は14日午前11時に大阪市北区の本社内に井澤勝常務を本部長とする事故対策本部を設置。事故から約8時間後の午後6時10分、本社で井澤本部長が記者会見し、「事故により多数の死傷者が出たことは、誠に残念かつ遺憾に思います。亡くなられた方に対して心よりごめい福を、また、負傷された方々には一日も早く全快されますよ、お祈り申し上げます」とのコメントを発表した。(京都新聞)
■信楽鉄道事故 車内、目覆う惨状 せまる暗夜、救出難航
 世界陶芸祭のにぎわいに沸くのどかな信楽の里が、一瞬にして修羅場となった。14日、滋賀県・信楽で起きた信楽高原鉄道の列車とJR乗り入れ列車の衝突事故は、死者が42人、400人以上の重軽傷者を数える大惨事となった。現場に駆けつけた稲葉稔知事らも暗然とした表情で立ちつくした。ひしゃげた列車内に閉じ込められた乗客の救出は難航、夜遅くまで必至の作業が続いた。遺体安置所となった信楽町民体育館では、駆けつけた遺族たちが家族の変わりはてた姿と対面、「陶芸祭を楽しみに出かけたのに…。信じられない」と、あきらめ切れぬ表情で涙を落とした。
・現場で
 双方の先頭車両は途中から大きく折れ曲がり、ハの字の形で宙に浮いていた。割れた窓から血だらけの乗客が飛び出し、線路ぎわにしゃがみ込んでいる。消防や病院の救急車だけでは足らず、住民が軽トラックに負傷者をのせて病院との間をピストン往復する。
 警察や消防隊員がロープを使って車内に残された人の救出件業にあたるが、座席の間に挟まれた負傷者も多く、スムーズに進まない。
 車内で負傷者を手当てした信楽中央病院の医師(30)は「車内は衝撃で飛ばされた人のほか、将棋倒しの下敷きになり圧死した人も多い。懸命の手当てはしたが、見ていられない惨状だ」と顔をくもらせた。
 午後2時すぎから、押しつぶされた運転席付近をカッターで開き、閉じ込められた乗務員、乗客の搬出が始まったが、夕方になってもまだ6、7人が車内に残されたまま。大型のクレーン車を使って車両をひき離す作業が懸命に続けられた。
 現場のすぐ横で田植えをしていた農業、大西弥太郎さん(68)は「ドーン」という爆発のような音に線路を振り向いた。「警笛が聞こえたと思ったら次の瞬間ものすごい音がして、電車がぶつかっていた。真っ白の煙が田んぼの方まで流れ、乗客の悲鳴が聞こえた」。
 悲しみの日も暮れ、とっぷりとやみが現場を包む中でも、懸命の救出件業が続く。JRの後ろ2両が切り離され、午後8時50分、線路ぎわの国道307号に据えられた4台の大型クレーンが、食い込んだJRと高原鉄道の先頭車両を持ちあげた。
 バリバリという音とともに、高原鉄道の車両が、強いライトの中でゆっくりと後退。そのすき間に、待ちかねた医師と看護婦が飛び込んだ。
 午後9時5分から相次いで3体の遺体が搬出され、さらに同10時45分、運転席に崩れ落ちていた高原鉄道の渕本繁運転士の遺体を発見した。なお懸命に確認を続けていたが、同11時10分「もういない」として救出作業を打ち切った。
・研修派遣で悲劇 京の企業戦士6人が死亡
 信楽鉄道事故は、関西文化学術研究都市で異業種交流に取り組む研究開発の担い手たち6人の命を一瞬に奪った。世界陶芸祭に向かう一行は残り17人も全員が負傷、ディスプレー研修計画は、大列車事故に吹っ飛んだ。死亡した6人はいずれも協同組合「ハイタッチ・リサーチパーク」に参加する京都などの中堅企業の開発部門を支えてきた人材ばかり。有能な人材の喪失に派遣企業の痛手は大きい。
 ハイタッチ・リサーチパークは、京都を中心とした中堅企業13社が異業種の交流によるニュービジネスの開拓を目指して京都府相楽郡木津町の関西学研都市の「平城・相楽地区」に建設され、昨年9月から第1期分10社が研究活動をしている。
 事故に遭った一行の23人は、異業種間交流の中で生まれる自由な発想を研究開発に生かそうと結成された同組合研究開発事業委員会(平野秀一委員長)のメンバーと各研究所の20−30代の若手社員が中心。
 参加した社員9人のうち、松林達雄さん(43)=京都市伏見区深草=と森上修さん(35)=亀岡市大井町並河=が死亡、7人が負傷した京都市上京区の「渡文」(渡辺隆夫社長)では、事故の一報後、社員約10人が車3台に分乗して現場に向かい、残った社員らは情報収集や家族への対応に追われた。
 午後4時過ぎ、現地の社員から森上さん、松林さんの悲報が伝えられると、ぼう然と立ちつくす男子社員や、目を真っ赤にしてすすり泣く女子社員らで、社内は重苦しい雰囲気に包まれた。事故を知った遺族も駆けつけたが、固い表情で口をつぐんだまま。
 同社は西陣織の高級工芸帯地などを制作しており、本社勤務の辻員は約50人。松林さんは製造課長、森上さんは意匠郡の主任を務めていた。
 クロイ電機(本社・京都市下京区)の高橋宗人さん(47)=大津市南郷六丁目=は家庭用照明器具のデザイン、企画を担当する開発畑の次長(デザイナー)。突然の死に、同僚の守屋豊樹さん(48)は「この3日に職場の後輩の結婚式で会ったのが最後。もの静かで仕事熱心な男でしたが…」と肩を落とした。
・事故対応に苦情相次ぐ
 乗客のうち、けがを負った人の中から事故後のJRと信楽高原鉄道の対応の不適切さを指摘する声が出ている。
 JR臨時列車の2両目中央通路に夫婦で立っていた、という京都市山科区椥ノ辻池尻町、会計員吉田達治さん(62)は「事故後車両の外に出たら、列車の燃料タンクのキャップから油が漏れ続けていて、引火したら大変と、あわてて妻を引っ張り出した。私たち軽傷者は病院で簡単に治療を受けた後、信楽駅からJRバスでJR石山駅まで運ばれた。しかし、信楽駅では切符の払い戻しに十分対応できない状態。同乗の婦人で口から血を流している人があったのに、なにもしてあげられず、気の毒だった」と話している。
 こうした苦情は、JR京都駅にも数件寄せられ、聴員らは平謝りの状態だった。(京都新聞)
■窓 駅舎高層化は京の景観破壊 北区・小谷十三之烝(会社員・65)
 JR京都駅改築計画は、海外含む貪著名7氏の設計コンペから意秀作品を決定、いよいよ大詰めを迎えた。経営的には、一民間駅舎の改築だが、事業の公共性と併せ、文字通り京都の表玄関であり、この波及度はすこぶる高く、広く、88年春に建築基準法を根拠に建築物の高さ規制を設けてから、初の大型プロジェクトとして注目される。
 市民の立場から見て、この企画の最大の問題は、京都市が自らの意思で決めた高さ制限を当初から無視して、ことを進めた点にある。第一に設計コンペに高さ制限なしで発注したこと。第二に、88年に発足させた改築協議会がほぼ開発派で占められたことである。
 京都市がなぜ、他市に見られぬ「総合設計制度」を導入し、異例の高さ規制を採用したのか、言うまでもなく王城千年の古都景観を守るためである。ここにきて、それらを全く無視し、ごく一部の人々の意思のみで「建都1200年事業」めざして古都景観破壊を憂うる点数の市民の声を無視、一方的に強引に進める市当局に強い危惧(ぐ)の念を抱く。
 7作品中、最低の59.8bといっても、規制31bの約2倍である。一つの例外が、できれば例外ではない。奇怪な市の態度に、議会が民意を反映させ、市100年の計をもとに、古都スラム化の防止を期待するとともに「市」の狂省を促したい。(京都新聞)
■死者42人、重軽傷者454人 信楽列車惨事 信号故障・管理ミス追求 周波数に違い 無線連絡つかず
 14日午前、滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬の信楽高原鉄道の紫香楽宮跡(しがらきぐうし)駅北側の単線上で、同鉄道に乗り入れているJRの京都発信楽行き臨時快速列車「世界陶芸祭号」(3両編成)と、同鉄道の信楽発貴生川(きぶかわ)行き普通列車(4両編成)が正面衝突し、ともに脱線した事故で、車内に閉じ込められた乗客らの救助作業は同日深夜まで続けられた。滋賀県警などによると、同日午後11時半現在、同鉄道の渕本繁運転士(51)ら死者42人、重軽傷者454人の大惨事となった。同県警は業務上過失致死傷の疑いで捜査本部を設置。これまでの調べで、待避線区間ですれ違う予定だったJR列車が相手列車が待避線にいないのにそのまま進行したことが明らかになっているが、捜査本部はJRの林光昭運転士(48)の供述から本来、赤であるはずの信号が青になっていたことや、両列車に規定以上の遅れが生じたにもかかわらず連絡がつかなかったことなどから、信号系統の故障に安全管理上の手落ちが加わって惨事を招いたとの見方を強めている。
 捜査本部の調べによると、待避線区間は、貴生川駅から5.5`の地点にあり、約400b。ダイヤ通りだと、信楽高原鉄道の列車が先にこの区間に入り、待避線で待機、JR列車は後から本線を通ってすれ逢うはずだった。
 ところが、JR列車は待避線に相手列車がいないのに、そのまま本線を通り過ぎ、単線上で衝突した。捜査本部の事情聴取に対し林運転士は「待避線に差しかかった時、信号が黄色から青に変わり、そのまま進行した。青の場合、いつもは待避線に信楽からの電車が待っているが、この日は待っていなかった。信楽駅で何かトラブルがあったのだろうと思い、待たずに進行した」と話しているという。
 一方、信楽高原鉄道の列車も信楽駅で出発する際、構内の信号が青信号に変わらず、急きょ手信号に変更、午前10時14分の出発予定が11分遅れとなった。捜査本部はこれらの状況から、信号系統に何らかの異状が起きていたとみて、15日朝から同系統を中心に調べる。
 信楽高原鉄道本社によると、待避線区間の小野谷信号所には「特殊自動閉そく信号機」と呼ばれる信号があり、対向する両方の列車が本線と待避線にそれぞれ分かれて並行した形になると初めて、各列車の前方の信号が「青」に変わる。さらに、信号所付近には、ATS(自動列車停止装置)が設置され、信号が赤の間は、同信号所から先へは進めないはずという。
 しかし、今回の事故はJRの列車が先へ進んだため起きており、同鉄道本社は「列車運行のシステムからいって考えられない。なぜJRの列車が信号所を抜けて進んでしまったのか、わからない」といっている。
 これに対し、JR西日本は「信楽高原鉄道が普通列車をどう発車させたか、情報が入っていないが、手信号で発車すると、対向方向の信号を赤に変える仕組みにはなっていない」と説明する。
 また、JR西日本は同鉄道の乗り入れにあたって安全運転などについて信楽高原鉄道と協定を結び、列車が5分以上遅れた場合、互いに連絡を取り合うことになっている。しかし、同鉄道の列車の遅れは、JRの列車には伝わっていなかった。両列車とも無線装置はあるが、周波数が違い、他社の列車とは通信できない状態だった。
 捜査本部は連絡がどうなっていたのかについても調べている。
・誠に残念・遺憾
 井沢勝・JR西日本鉄道本部長(常務)の話「世界陶芸祭号」にご乗車いただいたお客様に多数の死傷者が出たことは、誠に残念かつ遺憾です。亡くなられた方には心よりごめい福をお祈りしたい。
・きょう、陶芸祭休み
 世界陶芸祭実行委員会(会長、稲葉稔滋賀県知事)は14日、信楽高原鉄道事故の死者に哀悼の意を表し、15日は陶芸祭を休むことを決めた。(朝日新聞)
■「乗り入れ」落とし穴 専門家に聞く JR側とかみ合わず? 運転士同士の間隔に相違/人の層の薄さ一因/故障時のルールあるはず…
 日本の鉄道の「安全神話」を揺るがす信楽高原鉄道での大事故に、鉄道や交通の専門家はいずれも「信じられない」と驚きを隠せないでいる。事故はなぜ起きたのか。事故をどう見るか。専門家に意見を聞いた。
 評論家・柳田邦男さん 異なる会社、異なるシステムの混在する部分で起きた事故だ。分割されたJR各社間、私鉄と地下鉄間、JRと第三セクター間などの相互乗り入れや共同運行が増えている時代を反映した事故といえる。
 会社が違えば、安全確保のシステムも規則も運転士の安全感覚も違う。これが混在する所には思いがけない落とし穴がある。信楽高原鉄道へのJR列車の乗り入れについて、システムなどのかみ合わせがまずかったのではないか。国鉄の赤字線を引き継いだ第三セクターは、安全投資が不十分になりがち。信楽高原鉄道の安全システムも後進的で、ここに乗り入れたJRの運転士は、頭ではそのことがわかっていても、身についた先進的なJRのシステムの感覚がぬぐい切れなかった可能性がある。
 後進的なシステムがそれなりに完結している場合より、中途半端に新しいものが交じっているとかえって危険が高い。
 それにしても、表面的には数十年逆戻りしたようなパターンの鉄道事故。連絡手段がないためにダイヤの乱れを運転士に伝えられなかった点では、1945年の旧国鉄八高線鉄橋上での正面衝突で105人が死んだ事故と同じだ。
 宇野耕治・大阪産業大教授(交通経済) 第三セクター鉄道の場合、採算性、効率主義の陰で、最後に安全を支えてくれる「人」の層が薄くなり、一人ひとりの負担が重くなっている。装置がいかに優秀でも、事故は起きる。今回のようにイベントのために臨時列車を走らせるなど、ダイヤが変則的になる場合、特にその負担は大変なものになっているはずだ。
 曽根悟・東大工学部教授(電気工学) 信号など安全装置の故障は十分起こりうるが、その場合には装置の全部が止まるように作られている。しかし、故障したまま運行しなくてはいけないこともあり、その場合、第二ステップで運転士などがどう対処するかが問題になる。単線で信号が故障したりすると、一定区間は片方が指導員を決めて進行、もう片方は停止している、などのルールをいくつも決めているはずだ。こうしたルールに従えば大事故は防げるが、人間の注意力に頼る、いわは原始的なやり方だけに、非常時の訓練を十分やっていないと、人為ミスが重なって大事故も起こりうる。
 鉄道評論家・川島令三さん 運転士や職員は、ふだんは自動化された運行システムに頼っており、こうした非常時の運行方法に慣れていなかったのではないか。今回の事故は、自動化された運行システムを信頼するあまり、人の手による事故回避の基本動作がおろそかにされてきたことを示していると言える。
運輸省やJR、対策本部
 信楽高原鉄道の衝突事故で、村岡兼造運輸相は14日深夜、信楽町に入り、遺体安置所の同町民体育館などで、犠牲者の家族らを見舞った。また、事故現場を視察し、JR西日本の南谷昌二郎常務から、事故の説明を受けた。
 今枝敬雄運輸政務次官と、松波正寿運輸省陸上安全部長ら4人の同省職員も現場に入った。
 また、運輸省は14日夜、村岡大臣を本部長とする「信楽高原鉄道事故対策本部」を設置した。
 JR西日本は同日、事故対策本部を設置、また社員370人を現地へ派遣した。滋賀県も「信楽高原鉄道列車事故対策本部」(本部長・岩波忠夫副知事)を設置した。
・県警と役場も対策本部設置
 滋賀県警は同日、「信楽高原鉄道列車事故対策警備本部」(本部長=佐々木俊雄・同県警本部長、50人)を設置する一方、水口署は、信楽町黄瀬の黄瀬公民館に現地対策本部(148人)を置いた。
 一方、信楽町は、同鉄道の社長である杉森一夫町長を本部長とする対策本部を役場内に置いた。
・刑事局長ら現地へ
 警察庁は、信楽高原鉄道の列車衝突事故で多数の死傷者が出たことを重視して、14日正午すぎ、事故対策室を設置した。15日朝、国松孝次刑事局長ら4人を現地に派遣する。
・亡くなった方々
 身元が判明した死亡者は次のみなさん。(滋賀県警など調べ、14日午後11時半現在)
 信楽高原鉄道運転士渕本繁(51)=滋賀県甲賀郡水口町▽樽井言致(76)=大阪府高槻市奥天神町▽安藤壮之助(76)=京都府向日市鶏冠井町▽会社員吉沢彦一(55)=滋賀県甲賀郡甲南町▽高橋宗人(47)=大津市南郷六丁目▽栗谷源三郎(76)=堺市南長尾町▽平野真正(68)=滋賀県甲賀郡信楽町▽中嶋末晴(二つ)=滋賀県甲賀郡信楽町
 後藤正利(51)=大阪府茨木市玉櫛二丁目▽会社員森上修(35)=京都府亀岡市大井町▽林浩聡(58)=神戸市灘区赤松町三丁目▽会社社長今谷益雄(76)=東大阪市東石切町▽古川吉次(76)=大阪市中央区安堂寺町▽平野秀一(60)=大阪府茨木市三島町▽野田花子(71)=大阪府高槻市西真上二丁目▽松林達堆(43)=京都市伏見区深草正覚町▽内田真二(75)=大阪市福島区海老江二丁目▽吉崎佐代子(53)=宝塚市中山桜台▽熊谷与三郎(68)=滋資県甲賀郡信楽町▽会社員臼井信子(26)=京都市右京区嵯峨二尊院門前善光寺山町
 ▽木村ていこ(61)=京都市伏見区桃山町▽村川ツヤ子(63)=香川県高松市三谷町▽寺川初栄(68)=大阪府三島郡島本町▽黒川修(37)=京都府綴喜郡田辺町▽信楽高原鉄道常務奥村清一(61)=滋賀県甲賀郡信楽町▽安藤ふみ子(70)=京都府向日市鶏冠井町▽信楽高原鉄道社員中島春男(54)=滋賀県蒲生郡蒲生町▽久保高子(61)=滋賀県甲賀郡信楽町▽信楽高原鉄道社員中村裕昭(54)=三重県阿山郡伊賀町▽向谷富子(54)=大阪府三島郡島本町▽伊原一男(65)=京都市伏見区両替町十五丁目▽国江恵美子(48)=滋賀県大津市大門通▽黒川和子(37)=京都府綴喜郡田辺町
 ▽中原辰子(52)=神戸市東灘区森北町一丁目▽中島治三郎(63)=滋賀県甲賀郡信楽町▽藤目幸子(78)=大阪府三島郡島本町▽中田晶子(42)=大阪市浪速区恵美須西
 ▽栫(かこい)和子(52)=尼崎市大庄川田町
 ▽樽井美代子(69)=高槻市奥天神町
・北陸トンネル事故以来の大惨事
 信楽高原鉄道の列車衝突事故は、72年に死者30人を出した北陸トンネル列車火災事故以来の惨事だった。
 国内の大規模な列車事故は戦後十数年間に集中している。47年、埼玉県の八高線で、6両列車がカーブで脱線転落し、死者184人、負傷者497人が出たのをはじめ、62年、国鉄常磐線三河島駅構内で貨物列車と国電上下線が二重衝突、160人が死亡。63年、横浜市鶴見区の東海道線で脱線した貨物列車に上下電車が二重衝突し、死者161人が出た。
 最近では、72年11月に北陸線北陸トンネル内で起きた寝台列車火災で乗客ら30人が死亡、714人が重軽傷を負った。ほかに88年3月、中国・上海郊外で修学旅行中の高知学芸高校の教師、生徒が列車の衝突事故に巻き込まれ、計28人が死亡した。(朝日新聞)
■社説 安全軽視が招いた大惨事
 滋賀県ののどかな山あいを走る単線の信楽高原鉄道で列車が正面衝突し、多数の死傷者が出た。信じられないような惨事だ。詳しい事故原因は今後の調査を待たなけれはならないが、背景に自治体主導のイベントを成功させるための無理な運行があったとみられる。
 異常なのは、信楽高原鉄道の普通列車と臨時乗り入れのJR快速列車という衝突の組み合わせだ。これまでの調べでは、快速列車が多すぎる乗客に手間をとられて、また普通列車が信号の故障で、それぞれ発車が遅れたあと、たがいの連絡がとれず、待避線でのすれ違いを確認できないまま進行したとされる。
 沿線は陶芸の里として知られ、ふだんは列車の運行も少ない。しかし、信楽町で陶芸祭が開催中は本数を約2倍に増やし、大阪や京都からのJR乗り入れもその一つだった。直前に待避線が新設されたが、乗り切れない客が出るほどの人気で、少ない従業員で対処できるのか懸念されていた。
 信号の故障に加え、乗務員の不慣れと、両方の列車の連絡用無線機の周波数がちがっていたという装備面の不備が重なった可能性が強い。「すれちがっていないのにこのまま進めば衝突するのでは」と不安にかられた乗客もいたという。大量の乗客輸送がこのようないい加減さで行われていたのは、まことに驚くべきことだ。人災にほかならない。
 信楽高原鉄道は、赤字のJR信楽線を滋賀県や信楽町などが第三セクターとして引き継いだ。その際、採算面から厳しい合理化が図られたが、民営化したJRとともに安全面での施設や運用が軽視されるようなことがなかったかどうか。
 高原鉄道や陶芸祭には県など地元自治体も深く関係している。イベント列車としての活用は一気にふだんの数倍の運行能力を課すものだが、連絡態勢や装備面での安全対策は不十分だった。イベントの成功を目指す余り、足元の安全性をおろそかにしていたといわざるを得ない。
 自治体が中心となったイベントの開催は各地に広がっていく気配だ。第三セクターによる鉄道がその有力なアクセスとして利用されることもあろう。大量輸送に際しては二重、三重の安全対策が必要だということを関係者は肝に銘じてほしい。(朝日新聞)
■時々刻々 「待避線」で運行数急増 信楽列車惨事 収益増へ、4月から 第三セクターに足かせ
 14日午前、滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道で起きた同鉄道の普通列車とJRの臨時快速列車「世界陶芸祭号」との衝突事故は、合理化と乗客増対策を強いられる第三セクター鉄道の現実を浮き彫りにした。信楽高原鉄道は旧国鉄の信楽線。赤字で廃線の運命だったのを地元自治体や経済界が出資する第三セクターが引き受け、再出発を果たしてから4年。長年の赤字ローカル線の足かせで、安全対策を切りつめたツケが一気に噴き出したのでは、と関係者は指摘している。
 信楽高原鉄道(信楽−貴生川駅間14.7`)は、当初から「採算」が至上課題だった。滋賀県と地元が出資し、87年7月に開業。旧国鉄時代は年間3億円の赤字があったといわれるだけに、「乗ってもらえる鉄道」が目標で、「高原列車にいっぺん乗ろう」を合言葉に、町民に乗車率アップに努めるよう呼びかけていた。
 しかし、県議会などから「役員は県や町の幹部らで、鉄道専門家がほとんどおらず、心配だ」といった声が出て、安全対策への不安がつきまとっていた。
 信楽高原鉄道は、燃料費を少なくするため車両を軽量化。ワンマン乗務員体制で、信楽−貴生川間の4駅も無人化し、20人の社員も定年退職者らを迎え入れるなど人件費の節約に努めた。「生活路線」だけでなく「観光路線」にも力を入れ、信楽焼で有名な「タヌキ」の切符を売るなど、話題づくりも欠かさなかった。この結果、初年度収益は当初計画を上回る1億11万円に。営業係数(100円の収入を得るためにかかる費用)は、国鉄時代の540から90.6に減り、わずかながら「黒字」を記録。その後も黒字経営が続いていた。
 同鉄道は、さらに輸送力をアップして収益増を図るため、単線で行き違いのできない貴生川−信楽駅間に新しい待避線を設けることにした。対面通行が少しは可能になるからだ。
 これまで上り15本、下り16本と、ほぼ1時間に1本の割合で運行していたのを、昨年10月から民有地を借り上げて工費2億円で延長125bの待避線工事を始め、今年4月1日からすれ違いのできる待避線を利用して上下各18本に増やした。「世界陶芸祭」が開幕した4月20日からは、JRのディーゼルカーを乗り入れさせて、上下各25本を運行している。このうち、JRは1日1往復乗り入れているが、運転士の交代など特別の配慮はしていなかった、という。
 旧国鉄やJRから転換した第三セクター鉄道は全国で33社。84年4月、岩手県で三陸鉄道が開業したのを皮切りに、87年4月の国鉄分割民営化をはさんで次々と誕生。信楽高原鉄道は17番目だった。
 どこも旧国鉄の赤字ローカル線からの転換だけに、経営は苦しく、運輸省によると、89年度実績で黒字を出したのは信楽高原鉄道を含む8社だけ。運輸省交通整備課は「各社ともお座敷列車を走らせたり、人員削減による合理化を徹底したり苦労している。その中で、遠くからのお客を乗り換えなしで運んでくれるJR列車の乗り入れは、経営安定につながる決め手として十数社が取り入れている」という。
 他の第三セクター鉄道の場合、どんな安全対策をとっているのか。そして、今回の事故をどう見ているかを聞いてみた。
 岐阜県の美濃太田−北濃間約72`を走る長良川鉄道も全線が単線で、35駅のうち駅員がいるのは6駅だけ。従業員を国鉄・JR時代の約200人から80人に減らす徹底した合理化経営を続けている。同鉄道の伊藤礼三専務は、「安全対策の上でミスがあったとしか考えられない」といい切る。
 長良川鉄道で信号が故障した場合は、運転規則で腕章をつけた特定の指導者が乗り込んだ列車だけを動かすことにしている、という。
 さらに同鉄道の場合、JRの乗り入れに際しては、乗り入れた相手側と乗務員をそっくり入れ替えるシステムをとって、不慣れによるミスを防ぐ努力もしている。
 一方、約114`の単線を抱える京都府と兵庫県北部を結ぶ北近畿タンゴ鉄道。経営の合理化とあわせて、JRとの乗り入れ、海水浴期間中の臨時列車増発などで売り上げ増を図っているが、「合理化、無人駅化が事故の一因とは考えられない」と白谷光利総務部長は話す。「信楽高原鉄道の場合も、自動列車停止装置(ATS)などの事故防止装置はあり、それがなぜ利かなかったのかが気になる」
 高知県の土佐くろしお鉄道(中村−窪川間、43`)も、乗客を増やすためJRの列車を乗り入れさせ、毎日、JRの特急計14本が第三セクターの単線区間を往復している。高知県交通対策課は「厳しい経営状況の中で、安全装置に頼るだけでなく、運転士の教育を徹底させなくてはいけない」と言っている。
 事故が起きたこの日、たまたま現場近くを通りかかり、けが人の救出に当たった信楽町の元町会議貞(55)は「客が増えた増えたと喜んでいたが、あまりに有頂天になりすぎていた。心に緩みができていたのが、事故の遠因ではないのか」と話している。(朝日新聞)
■JR西日本 上場にも影響か 信楽事故 効率追求、見直しも
 滋賀県水口町の信楽高原鉄道で14日起きた列車事故は、今後の原因究明の行方によってはJR西日本の株式上場問題にも微妙な影響を与えかねない情勢だ。また、信楽高原鉄道自体が旧国鉄の分割民営化に伴って87年に第三セクター方式で設立された経緯があり、今回の事故を機に、ローカル線の分離や経営効率化を強力に進めてきたJRの体質改善策の見直しが迫られそうだ。
 JR西日本は91年3月期に初めて1割配当を実施しており、今年度の事業計画でも経常利益を前年比25%増の574億円と見込み、株式上場に向けて着々と準備を進めている。しかし、運輸省や東京証券取引所は市況が低迷している株式市場へJR3社(東日本、東海、西日本)を同時上場することに難色を示しており、西日本にとって今回の事故によるイメージダウンは大打撃だ。
 また、同社はローカル線の経営効率化を目指し、84年以降、信楽高原鉄道など7つの地方線を第三セクター方式で分離、設立してきた。JRに残したローカル線についても昨年6月から今年9月にかけ、管内25ヵ所に鉄道部を設置して独立採算でやれるよう権限委譲を進めている。しかし、今回の事故ではローカル線での安全対策が万全だったかどうかが問われることになり、経営効率を優先させた事業計画の見直しは避けられそうにない。(朝日新聞)
■妻は 友は どこに 安置所に悲痛な叫び
 遺体の合同安置場所となった滋賀県甲賀郡信楽町長野の町民体育館には、午後6時すぎから、町内の牧公民館などに仮安置されていた遺体が、検視を終えて次々と運び込まれた。身内や友人の安否を気づかう人たちが、車で体育館に駆けつけた。夫を確認し、ひつぎにすがりついてむせび泣く妻。友人を失い、ぼう然と「立ちつくす老人もいる。ひつぎの傍らに並べられた色とりどりの小型リュックやカメラ、ポットの遺品が涙を誘う。体育館の天井には、深夜まで遺族らの悲しみの声が響いた。
 宝塚市中山桜台一丁目、会社員吉崎俊三さん(57)は妻佐代子さん(53)を亡くした。佳代子さんは嫁いだ娘2人を誘い、楽しみにして世界陶芸祭に出かけた。黄金週間は混雑するので、この日を選んだ。長女の溝口恵美子さん(28)と次女の坂本久仁子さん(25)も重傷を負った。
 吉崎さんは昼のニュースで事故を知った。タクシーで病院を駆けずり回り、町民体育館でやっと妻を確認した。「顔が変わっていた」と、吉崎さんは声を詰まらせた。「どこの責任ですかね」「妻とは長年連れ添ってきた」と泣き崩れた。
 滋賀県栗太郡栗東町小野、無職豊岡力さん(76)は電車1本違いで友人の3人と離ればなれになり、危うく難を免れた。友人は関西商業中学(現関西大学第一高校)時代の同窓生。3人とも犠牲になった。
 弁当と飲み物を豊岡さんが用意。1本前の電車に乗り、信楽駅で午前10時すぎから待っていた。いつまでたっても次の電車が来ない。午後4時すぎまで駅で待った。思いもよらない事故が起きていた。「家族同然のつき合いでした。余生を楽しもうといつも話し合っていた。陶芸祭を楽しみにしていた」と目を泣きはらした。
 2歳の幼児も命を失った。現場近くに住む会社員中嶋三木男さんの長男未晴ちゃんで、水口町方面の病院へ行く祖父母に連れられて高原列車に乗り、惨事に巻き込まれた。
 自宅では、事故を聞いて駆けつけた親せきの人らが葬儀の準備のため、黙々と家の中の片付けを始めた。
・ほとんどが即死
 衝突事故の現場で救助活動にあたった医師によると、遺体は両列車の先頭車両にかたまり、車両前部の乗客は、衝突のショックでほとんど即死状態。JRの車両の後部で見つかった遺体は、列車が上りこう配で衝突したため、前部の乗客が後方に倒れかかって押しつぶされた形で、はとんどが圧死状態だった。
 午後4時15分、女性の遺体が見つかる。「車内にあと4、5人いる」と、消防団員。
 JR西日本は、午後5時50分から、JR列車の後方2両の切り離し作業に着手した。JR復旧対策本部の約170人が作業にかかり、午後8時40分、双方の車体が離れた。
 救出活動が続く現場は夜に入り、ぐっと冷え込んだ。滋賀県警と消防の投光車のライトが、無残にひしゃげた事故車両を浮かび上がらせる。午後11時前、また乗客が運び出された。ほかに乗客が残されていないか、さらに捜索が続いた。
・23人死傷に沈痛な空気 リサーチパーク
 京都府木津町の協同組合ハイタッチ・リサーチパークは、衝突事故で研究者ら23人の死傷者を出した。事故の知らせを受けた昼前から、事務局員が社員らの安否の確認に追われた。事故の詳しい情報が入るにつれて死亡者の数が増え、事務局は沈痛な空気に包まれた。(朝日新聞)
■「命綱」なぜ切れた 信楽惨事 運転士「信号は青」 ブレーキ音聞こえず
 犠牲者が、後から後から増えていった。お年寄り。主婦。そして、幼児も…。変わり果てた肉親の姿に、駆けつけた家族は声もない。その間も、何人かの乗客は折れ曲がった列車の中で閉じ込められたまま。14日、滋賀県の陶芸の里・信楽町で起きた信楽高原鉄道の列車衝突事故。惨事は時間を追って規模を大きくし、救出活動が夜遅くまで続いた。JRの臨時列車は、なぜ単線区間に突っ込んだのか。高原鉄道の列車は、どうして前から来た列車に気付かなかったのか。安全に作動するはずの装置が役に立たなかった理由は? ハイテクの時代に起きた正面衝突という「原始的な事故」に、幾つもの疑問が残る。
 全長15`足らずのミニ鉄道。事故を起こした列車のダイヤでは、両端の駅には必ず列車があり、ほぼ同時に出発、中間の待避線ですれ違うことになっている。にもかかわらず、なぜJRの臨時快速「陶芸祭号」は待避線を通り過ぎ、単線に入ったのか。
 陶芸祭号の先頭車最前列に座っていた滋賀県志賀町南小松、会社員勝田善邦さん(25)は衝突の瞬間、座席から投げ出され、割れた窓から脱出した。勝田さんは列車を利用して3回、世界陶芸祭へ行っている。「これまではJR列車が坂を上り切ったところで待ち合わせていたが、そのまま通り過ぎたため、いつもと違うなと思った」と話す。衝突直前、陶芸祭号のブレーキ音も聞こえなかったという。
 JRの訓練マニュアルではすれ違いの確認作業には全く触れておらず、信号が青であれば、直進してよいという指導をしていた。青ならば、前方から列車が来ることはあり得ない、という信号システムの常識を前提にしたものである。その安全対策とは−。
 信楽駅−小野谷信号所間の信号システムは「特殊自動閉そく方式」と呼ばれ、単線区間には1編成の列車しか入れない。列車が同区間内に入ると、対向する列車に対してはすべての信号が「赤」になる仕組みになっている。
 甲賀病院に収容された世界陶芸祭号の林光昭運転士(48)は顔や手、足に大きなけがを負い、ベッドの上で「不可抗力だった」と小さな声で話した。同運転士によると、小野谷信号所(待避線)に入る手前の信号は「黄」だったが、近づくうちに「青」に変わったという。
 本線をそのまま進んで信号所に入ったが、ふつうなら待避線側にいるはずの信楽高原鉄道の列車が見当たらない。林運転士は捜査本部に対し、「信楽駅で何かトラブルがあったのかな」と思った、と話している。
 しかし、信号所出口の信号は「青」。心にひっかかりを残しながら、林運転士は列車を進行させたという。
 信号システムを製作、納入した「日本信号」(本社・東京都千代田区)によると、列車が信楽駅を出た段階で、JR側の信号はすべて「赤」に変わるはずだという。また、信号が故障して「青」になっていた可能性について、「鉄道の信号はどのメーカーのものも故障時にはすべて赤になるようになっている。赤になるところが青になってしまったというようなケースは聞いたことがない」と話す。
 事故は信楽駅構内の信号故障が発端だった。
 駅ホームの出発信号が赤のため、信楽高原鉄道の普通列車は出発を見合わせた。約10分後、駅舎内の「継電盤」の電気系統の故障が見つかった。原因は不明。「赤」のままでは自動列車停止装置(ATS)を解除しなけれは列車は動けない。職員の一人がATSを解除、駅の運転係員がホームで青旗を振って、11分遅れで出発させた。
・両社間の連絡徹底せず
 しかし、信号系が故障しても、事故を防ぐ最後の対策があるはずだった。JRと信楽高原鉄道との事前の申し合わせでは、こうした場合、「信楽」側は、職員を「通行手形」にし、この職員が乗り込んだ列車だけが単線区間に入れることになっており、今回は、信楽駅でもう一人の運転士が同乗して出発した。しかし、JR側の説明によると、この方式をとるためには、信楽駅を発車する前、無人の小野谷信号所に職員を派遭、反対方向の信号を赤にかえ、区間内に列車がいないことを確認する必要があった。
 信楽駅では、信号所に職員を車で向かわせた。しかし、すでに走り出していた列車の後を追う形になった。
 車で向かった職員は線路わきの国道を走っていくと、メチャメチャになった二つの列車の姿が目に入った。「脱線です。正面衝突して小ます」。信楽駅の運転指令室で事故の一報を受けたのはそれが最初だった。
・鉄道社長に激しい抗議
 信楽高原鉄道社長の杉森一夫町長は14日午後11時すぎ、遺体の合同安置所となった信楽町民体育館を弔問に訪れた。
 遺族から激しく抗議を受け「誠に申し訳ないことをしました」と深々と頭を下げた。(朝日新聞)
■「JR株上場 今は難しい」 東証理事長
 長岡実東京証券取引所理事長は14日の記者会見で、JR株式の上場問題について「最近のような市況なら、JR株式の上場はかなり厳しい。JR株の上場は投資家の注目を集めており、市場が上場にふさわしい状態であるかどうかも、判断の基準になる」と述べ、上場に慎重な姿勢を示した。(朝日新聞)
■制止振り切り発車 信楽惨事で高原鉄道側 信号故障の点検中に 安全確保の手順踏まず
 滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬の信楽高原鉄道の単線区間で14日午前、信楽発貴生川(きぶかわ)行き普通列車(4両編成)と、同鉄道に乗り入れているJRの京都発信楽行き臨時快速列車「世界陶芸祭号」(3両編成)が正面衝突し42人が死亡した事故で」滋賀県警の捜査本部は15日午前、業務上過失致死傷の舞いで同鉄道本社と同鉄道貴生川駅の2ヵ所の捜索令状をとり、強制捜査に乗り出した。捜査本部は@信楽駅で起きた信号故障を修理、点検している最中に高原鉄道側が修理作業の担当者の制止を無視して列車を見切り発車させたA赤信号で出発する際は「誤出発ボタン」を作動させ対向列車に赤信号を出す取り決めになっていたのに、同鉄道はこの手順を守っていなかった可能性が高い−などが明らかになり、これらの高原鉄道側の対応が運輸省の鉄道運転規則に違反するとの見方を強めている。
 さらに、捜査本部は両列車がすれ違う予定だった待避線区間の信号が青になり、JR列車の進行を促した原因について、同日朝から現場検証を始めた。単線上での衝突という異例の大惨事は、機械の故障に安全無視の人為的過失が加わった複合ミスの可能性が濃厚となった。
 事故による重軽傷者は、その後も増え、478人となった。
 調べによると、高原鉄道の列車は14日午前10時14分に信楽駅発の予定だったが、同駅の出発信号が赤のまま変わらなかったことから、いったん発車を見合わせた。このため、ホームの先端にある継電盤室まで、同鉄道の施設課長(54)と、同鉄道の信号関係の設備運用を請け負っている信栄電業(本社、東京)の担当者が走った。しかし、2人がまだ点検している途中の午前10時25分、列車は信号が赤のまま発車した。信栄電業の担当者は「待ってくれ、まだチェック中や」と叫んだが、列車は止まらなかった。施設課長は点検が終わっていないことを駅の運転主任らに伝えなかったという。
 運転関係者の話では、赤信号でも出発する場合は@信楽駅で誤出発ボタンを作動させて、待避線区間にある信号所の信号を赤にし、対向列車が来ないようにするA信楽駅から職員が車でこの信号所まで向かい、対個列車がないことを確認するB確認の連絡を受けてから、列車は信楽駅を出発する、という手順が取り決められている。ところが、職員が車で出発したのと前後して、列車は出てしまった。
 さらに、捜査本部はJR列車の林光昭運転士(48)が待避線区間の信号所に接近中、その手前の信号が「黄から青に変わった。信号所から出る手前にある信号も青だった」の証言をしていることや、他の関係者の証言から、「誤出発ボタン」が作動しなかったとの見方を強めている。衝突時の速度はJR列車が50`、高原列車はそれ以下だったという。(朝日新聞)
■信楽高原鉄道惨事 業務上過失致死傷容疑で3ヵ所捜索 信号安全確認せず 事故現湯など検証始まる
 滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道(単線)で、14日午前、京都発信楽行きJR臨時列車と信楽発貴生川行き信楽高原鉄道列車が正面衝突し、死者42人、負傷者415人を出した事故で、滋賀県警捜査本部(水口署)は、15日朝から業務上過失致死傷容疑で信楽高原鉄道本社、信楽駅など同鉄道関係先3ヵ所を捜索している。
 捜査本部は、これまでの調べで同高原鉄道列車が信楽駅を出発する際に信号機が赤だったことを重視、本線の安全を十分に確認しないまま列車を見切り発車させたことが、事故に結びついた可能性があるとみて、関係者から詳しい事情を聴いている。
 捜索は、午前10時半から運転司令室のある同高原鉄道本社と信楽駅、貴生川駅事務所3ヵ所で行われた。また、現場検証も並行して午前10時40分から行き違い設備の小野谷信号所や衝突現場など5ヵ所で始まった。県警捜査員約100人と運輸省地域交通局やJR西日本、信楽高原鉄道関係者の立ち合いで実施、小野谷信号所の信号作動状況などを入念に調べた。また、県警は信号系統の故障の場合、フエールセーフ(故障しても安全な方に働く)が働いて本線の信号は赤になるシステムである点も考慮、「信号所(待避所)の信号は青だった」とするJR運転士の証言の裏付け捜査を行っている。
 警察庁の国松孝次刑事局長は、午前11時45分ごろ、事故現場を訪れ、事故の状況を視察した。
 国松刑事局長は現場で「遺体の収容は昨日中に終わっているが、大変な車両の破損状況に事故の大きさと痛ましさを感じた。しっかりと現場を見て、滋賀県警とともに今後の対応を決めたい」と話した。
・今後の陶芸祭運営など協議 県の対策本部
 滋賀県は15日午前9時から、県庁特別会議室で信楽高原鉄道列車事故対策本部員会議を開き、事故への対応状況と今後の対策などについて協議した。
 会議には、本部長の岩波忠夫副知事はじめ関係部長、オブザーバーの渕田正良出納長ら9人が出席。冒頭、信楽高原鉄道の列車事故の犠牲となった人たちに対し1分間の黙とうを捧(ささ)げたあと、飛弾直文総務部長が、事故発生以降の県の対応などについて説明した。この後、事故の犠牲者への合同葬の持ち方などを含め今後の関係機関との連絡態勢や、現在ストップしている信楽高原鉄道の代替交通機関の確保、さらに、弔意を表して15日は開催を中止した世界陶芸祭の今後の運営などについて話し合った。
・第三セクター会社に設備の総点検求める 運輸省が指示
 運輸省は15日朝、信楽高原鉄道事故に関連して、旧国鉄の赤字ローカル線などを運営する第三セクター会社35社(40路線1574`)に対し、異常時の適切な運転取り扱い、信号保安設備の総点検−を電話で指示した。
 松尾道彦同省官房長が同日朝の記者会見で明らかにしたもので、相互乗り入れしているJR各社にも同趣旨の指示をする予定。同省では松岡運輸相が現地視察から戻る同日夕に信楽高原鉄道対策本部を開き具体的対応策を検討するが、同官房長は「相互乗り入れしている15路線について運輸局による保安監査も実施したい」と述べた。(京都新聞 夕刊)
■不幸な事故に複数の要因 見込み運転に問題 ナゾ深まる「信号」
 列車同士の正面衝突という特異な事故の原因は何か。14日滋賀県・信楽町で起きた惨事で、滋賀県警やJR、信楽高原鉄道の調査が進む中、ある種の見込み運転や信号故障など複数の要因が不幸な重なりを見せた可能性が強まってきた。
 信楽高原鉄道は、信楽駅の構内信号が赤のまま駅員の手信号で列車を出発させた。「赤信号は機器の故障で対向のJR列車は行き違い設備のある小野谷信号所で、待避しているはず」という判断。しかし、この時点で小野谷信号所の信号がどうなっているか、JR列車がどこにいるのかなどは確認できておらず、”見切り発車”だった。同鉄道の山本長生施設課長は「こういう場合の規定は社としてはないが、運輸省の運行基準とは異なっていた」と認めた。
 一方、JR臨時列車の運転士は県警の事情聴取に「小野谷信号所で対向列車が止まっていないので、おかしいとは感じた」と供述しているという。信楽駅の運転司令室とJR列車は直接の無線連絡はできないが、沿線に設けられた専用電話で疑問点を問い合わせることは可能だった。
 また、原因究明では小野谷信号所の信号がナゾの中心となっている。信楽高原鉄道は「信楽駅の信号が故障して赤になれば、小野谷信号所も連動して赤になるシステム」という。ところが、JRの運転士は「信号は青だった」と証言している。信号はATS(列車緊急停止措置)やポイント切り替えと連動するため、赤信号を見過ごして列車が進行したとは考えにくい。もし、赤のままだったとしたら、システム上考えにくい故障が起きたのか、信楽駅で列車を出発させる際に何らかの人為ミスがあったのかなどが今後の捜査のキーポイントになりそうだ。
・臨時閉場 陶芸の森は閑散
 閉場となった世界陶芸祭のメーン会場、県立陶芸の森では、正面入り口などに「鉄道事故に哀悍の意を表し臨時閉場します」の張り紙。前日まで連日、列ができるにぎわいだった会場はひっそりと静まり返り、小雨に煙っていた。会場内の実行委事務局棟横のポールには、日の丸や県旗が半旗で掲揚された。
 アルバイトを除くスタッフ、職員約300人は、平常通り午前8時半までに出勤、入り口などに張り付き、臨時閉場の説明に備えた。スタッフたちは全員が1週間、喪章を着けることにし、不測の大惨事に重苦しい表情ながら、未明までの緊急会議の疲れも見せず、動いていた。
 会場前には、午前8時半ごろに、3−4人が訪れたが、警備員が事情を説明したところ、「それなら仕方がない」と、キビスを返した、という。中には、午前11時までに約100人が強い希望で入場、展示物だけの見学をした。
 田村重明事務局長は「連休明けにスタッフ、職員を集め、事故がないようにしていたが、こんなことになって残念でならない、今後どうするかは、県対策会議の指示待ちです」と、揺れ動く心をのぞかせていた。
・合同調査を申し入れへ JR西日本
 JR西日本は15日朝、信楽高原鉄道に対して、事故原因解明のための合同調査を同日付で申し入れる、と発表した。
 事故のあった信楽高原鉄道は、JR西日本が直通乗り入れしているが、直接調査が出来ない。このため、施設や運行についての詳細や事故当時の実状が把握できず、正確な情報がJR西日本に入って来ないなどから申し入れる。
 申し入れ内容は▽列車の運行状態の詳細データ▽出発信号機故障時の取り扱い手続きと事故当時の状況▽信号保安設備の実態とその機能▽事故原因解明についての合同調査とその考え方−の4項目。
 JR西日本の守屋実安全対策室長は、この合同調査で、原因解明を急ぎたい、としている。
・乗り入れ対応不備 安全性見直し検討 運輸政務次官会見
 滋賀県・信楽町の信楽高原鉄道列車事故を視察中の今枝敬雄・運輸政務次官は15日午前、滋賀県庁で記者会見し、第三セクターとJRの相互乗り入れでの危険性について「システムの違うものが互いにあり、事故が起きないとは言いきれない」と、指摘。これを機に全国の第三セクター方式の鉄道について見直すことを含め、今夕東京で開く信楽高原鉄道事故対策本部(本部長・村岡兼造運輸大臣)で対応を協議する、と語った。
 今枝次官は「第三セクター方式の鉄道は全国に39ヵ所あり、はぼ半分がJRと乗り入れている」と前置き。「互いにシステムの違うものが乗り入れているので、今回のように周波数の違いから無線電話の連絡がとれないなど、事故が起きないとは断言できない」と、今回の事故の大きな要因の一つとの認識で、相互乗り入れにおける緊急時の対応に不備があることを強調。
 第三セクターとJRの相互乗り入れでは、互いの連絡は基本約に列車間でとっておらず、各駅間が電話でとり合っているが、緊急時については「当然、安全性の面から各列車間で連絡できる体制ができていると思っていた」といい、これを機に全国の第三セクターで安全性の見直しを行っていく方針を示した。
 運輸省では、村岡運輸大臣も現地視察に訪れているが、この日も事故による犠牲者の安置所や負傷者の入院先などを見舞ったあと、午後に帰京。同四時から信楽高原鉄道事故対策本部会議を開くことにしている。
・原因究明に全力あげる 村岡運輸大臣
 前夜から現地入りしている村岡兼造運輸大臣は15日朝、地元の事故対策本部が置かれている信楽町役場を訪れ、杉森一夫町長から事故後の救出件業や病院の手配などについて報告を聞いたあと、町役場玄関前で記者会見。「現場や病院をつぶさに見て、大変な事故であることを痛感した。二度とこうした事故を起こさないように、全国の地方交通線に対する緊急警告を発するよう指示した」と語気を強めた。また「あくまでも推定の段階だが、何か原則的なことが間違って行われたと感じている。きのう発足した省内の事故対策本部で原因を徹底究明して、再発防止に全力をあげる」と語った。
・代替バス便運行
 信楽高原鉄道は15日、事故のためストップしている鉄道の代替として信楽−貴生川駅間にバス便の運行を決め、同日から上下35便の運行を実施した。(京都新聞 夕刊)
■惨事解明へ操作のメス 信楽鉄道事故 100人投入、慎重に検証 復旧めど立たず 遺族ら怒り新た
 列車の正面衝突で死傷者457人を出した滋賀県・信楽町の信楽高原鉄道。一夜明けた15日、事故現場は悲しみの雨にぬれた。ひしゃげた車体に検証の視線が光る。高原鉄道信楽駅などでも家宅捜索の捜査員の動きが慌ただしい。「一体なぜこんな惨事に」…遺族にも、悲痛な叫びの中に原因究明を求める怒りがにじむ。「陶芸祭」は、まさかの閉場に暗い静けさにつつまれた。
 死者42人を出す大惨事となった滋賀県・信楽町の列車衝突現場では、午前10時半から現場検証が始まった。国道307号に接した線路わきの土手には信楽高原鉄道の車両が中央からペシャンコに折れ曲がり、残がいとなって横たわる。折から降り始めた小雨が壊れた車体を冷たくぬらし、事故の非情さを物語った。
 現場検証は、予定の午前9時を大きく遅れて始まった。県警は水口署を中心に警察官100人を投入。さらに甲賀郡消防本部、JR西日本の運行関係者も立ち合い、折れ曲がって非常にもろくなっている車体の検証手順が慎重に決められた。
 現場では捜査員が二手に分かれ車体の外部の破損状況と内部の運転席などを細かく調べた。午後は大型クレーンで壊れかかった車体を線路上につり上げ、事故当時の様子を再現し詳しく調べる予定。
 大阪本社からかけつけたJR西日本のある社員は「通常の列車の運行状態を説明できる職員を検証に立ち会わせてほしいと警察から要請があった。復旧のことが気がかりだが、まったくメドが立たない。車両は動かせるような状態ではなく、現地で解体、撤去するしかないだろう」と話し、線路沿いに設けられた鉄道電話で連絡に追われた。
 信楽町の信楽高原鉄道本社では、県警が業務上過失致死の疑いで午前10時50分から家宅捜索を行った。約20人の捜査員に加え、JR西日本の関係者、労働基準監督者の職員も信楽駅舎内の本社事務所に入った。数人いた高原鉄道の職員は捜索を覚悟していたようで、落ち付いた様子だったが、捜査員が机上の書類や運転司令室の記録を細かくチェックしはじめるとこわばった表情で見守っていた。捜索はさらに駅構内の付属設備や線路そのものにも及んだ。報道陣は事務所から完全にシャットアウトされ、すべての窓はカーテンとブラインドで閉ざされるなど厳重な警戒の中で捜索が続けられた。
・京の犠牲者 次々悲しみの帰宅
 亡くなった京都関係者9人は、15日未明にかけて遺族らに抱えられ、つぎつぎ、信楽町民体育館を出発、京都の自宅に悲しみの帰宅をした。
 研修のため参加し、社員2人が死亡、7人が負傷した西陣織の帯地メーカー「渡文」(渡辺隆夫社長、京都市上京区)では、朝から取引先などがつぎつぎと見舞いに訪問。電話もひっきりなしで、社員は応対に追われた。一方、渡辺社長らは午前中、7人の入院先へ向かった。
 同社はこの日も業務を平常通り行ったが、9人を欠いた上、他の社員も前夜遅くまで現地との連絡などで疲労の色が濃く、営業活動などは実質的に停止した状態。男性社員(36)は「2人は明るく存在感があった。いまだに亡くなったことが信じられない」と話していた。
 同じく研修に出かけた23人が事故に遭い、6人が死亡した相楽郡木津町の協同組合ハイタッチ・リサーチパーク事務局では、昨夜に続いて15日朝から幹部ら数人が、今後のことについて話しあった。死亡したフジヤの林昇さん(58)は組合理事で総務事業委員長、吉忠の平野秀一さん(60)は研究開発事業委員長。3つある委員会のうち2委員長を失い福井佑吉副理事長は「優秀な人を同時に失いショックです。遺族の方と相談して合同慰霊祭など組合としての弔意を表す計画を考えていきたい」と話していた。
 また、夫婦で陶芸祭に出かけ、2人とも亡くなった向日市鶏冠井町稲葉、無職安藤壮之助さん(76)、ふみ子さん(70)さんの自宅では、読経の中、弔問客が次々と訪れた。
 2人の遺体は昨夜遅く親族が確認後、自宅に戻った。両親を一度に失った長女の孝子さん(44)は「父の死は早く連絡を受けましたが、最後まで確認がとれなかった母は、ひょっとしたら、と思っていたのに。会社側の対応や事故の状況などあまりにもひどい。遺体引き取りの際も、救出状況についての説明もなかった」と、門越しに目頭を押さえ、声を震わせていた。(京都新聞 夕刊)
■観光トロッコ列車 浪漫乗せてゴトゴト走る 緑樹、薫風心地よく
 京の新しい観光名所とし脚光を浴びている嵯峨野観光鉄道(本社・京都市右京区、長谷川一彦社長)の観光トロッコ列車「ロマンチックトレイン嵯峨野」が、先月27日の開業以来、日を追って観光客らの熱い視線を集め、先のゴールデンウイーク中も平均乗車率が8割を超す行楽フィーバーにわいた。緑の若葉が一段と映える保津峡沿い。ゴトゴトと駆け抜ける乗り心地は利用客を文字通りロマンの世界へ誘い込んでいる。
 トロッコ列車は、直線路に付けかえられたため、廃線化したJR旧山陰線の有効活用としてデビューした。
 トロッコ嵯峨駅−同亀岡駅間約8.8`を25分で結ぶ鉄路。貨車を改造したトロッコタイプの客車4両は、窓を取り払ったタイプと窓付きのタイプ各2両ずつで定員は252人。平安王朝色の山吹色と緋(ひ)色をあしらったロマンあふれる車体が売り物だ。
 先のゴールデンウイーク中を含め10日までの13日間で利用客はざっと4万人。特に午前9時35分発の一番列車から昼過ぎまでの下りが人気で、行きはトロッコ、帰りは、名物・保津川下りで−との行楽コースが早くも受けたよう。
 トロッコ列車の登場で亀岡市など口丹波方面の観光誘致がさらに進むことも予想され京都の奥座敷・湯の花温泉に1泊、翌日は川下り−とのユニークな旅が今後ホットな話題を集めそうだ。(京都新聞 夕刊)
■信号系統は故障していたか 信楽列車惨事 専門家にインタビュー 曽根 悟 東大教授(電気工学)
 42人の犠牲者を出した信楽高原鉄道の正面衝突事故は、高原鉄道側が赤信号を振り切り、発車を強行したのが発端だった。信号系統は故障していたのだろうか。なぜ、機械装置のトラブルを補うシステムが働かなかったのか。残る疑問について、鉄道信号に詳しい曽根悟・東大教授(電気工学)にインタビューした。(聞き手・市中英也)
・故障は想定したはず システム全体に欠陥
 −信楽駅を高原鉄道が発車する際、出発信号が赤でした。信号の修理にあたっていた電気会社社員が制止したが、駅では青旗を降って発車させました。この時点で信号系統が故障していたのでしょうか。
 「導入されたばかりの装置には、『初期故障』という小さな故障がつきものです。信号も同じことで、使いだして間もない時期には、ある程度の故障はあたり前。設計段階で想定済みだったと思います」
 −当然起こる小さな故障が引き金だったと?
 「しかし、あれは故障ではなかった可能性もある。たとえば、信楽駅の駅員が、貴生川からのJR側の快速列車は途中の行き違いなしに信楽まで直行すると勘違いした場合、駅で信号系統をそういう思い込みで繰作すれば、ああいうことは起こり得るんです」
 −高原鉄道側が赤信号を振り切って出発したとしても、待避線区間でJRが停車していれば、安全に行き違えたはずだ、という見方もできますが。
 「反対方向の列車が隣の待避線に来るまで待て、という取り決めは、列車の運行ではあり得ない。もしそうなら、高原鉄道が信楽駅に止まっている限り、JRはいつまでも動けないことになる。JRにとって青信号なら進んでいい。信号とはそういうもので、青は一方にしか出せないのです」
 「ただ、もし従来通り、双方の列車とも気心の知れた高原鉄道同士だったなら、待避区間で停車して、どうなってるんだ、と問い合わせたかもしれない。それをせず直進してしまったのは大変不幸なことだが、JRのとった行動は誤りではない」
 −事故の歯止めはなかったのでしょうか。
 「こうしたシステムは、装置の故障を最初から想定して作ってある。『フェールセーフ』という設計思想です。目の前の信号が赤なら、反対方向も赤になるように作られている。こうした場合、上下線とも運転できないようにするのが、設計思想通りの動作なんです」
 −信号系統に欠陥はなかったのでしょうか。
 「装置そのものを見るなら、今のところ重大な欠陥は見当たりません。しかし、装置が故障した時のマニュアルの作成、整備や、人間の行動までを含めた大きな意味のシステム全体には、重大な欠陥があったと言わざるを得ません」
 −具体的には?
 「まず、故障で信号が赤のままなら発車はできません。停車したままで、故障の中身を把握するのが第一です。次に、出発させたいなら、関係個所と打ち合わせる。今度の場合の相手は貴生川駅。途中にも列車がいないことを確かめて初めて『では、どちらかの列車を発車させましょう』という話になる。今回は貴生川から発車ずみだから、信楽からは出せないはずでした」(朝日新聞 夕刊)
■鉄道会社 危ぶまれる存続 運転士死亡、補償問題も
 陶坂焼き切符の発売、新春初乗り会など、町と町民が乗客増にさまざまなアイデアをこらしてきた第三セクター会社・信楽高原鉄道(本社・滋賀県信楽町)が、14日の衝突事故で存亡の危機を迎えている。保有車両4両のうち2両が大破、常勤役員・社員21人のうち一度に5人を事故で失った。運転士6人のうち3人が死亡したのも運行面で大打撃となる。今後は犠牲者に対する補償問題にも直面する。15日朝も県、JR西日本、信楽町との合同対策会議を開き、事故の対応に追われた。
 犠牲者の葬儀にだれを出席させるか。弔意の表し方をどうするか。会議は重苦しい雰囲気に包まれた。合同葬の開催についても検討した。同鉄道参事の古川六洋・信楽町生活環境課長は「補償のこともあるが、当面の対応で手いっぱい。運行再開のメドなんて全くつきません」。
 1933年間業の旧国鉄信楽線は、第2次大戦でレールとまくら木を供出して一時廃線になった。戦後、地元住民が山の本を切り出して2万3000本のまくら本を作り、47年に再開にこぎつけた。交通の主役が車へと移っても、町の高校生やお年寄りには欠かせぬ足だという。
 新たに身元が判明した死亡者は次のみなさん。(滋賀県警など調べ)
 大内司朗(74)=大阪市住吉区長居一丁目▽長尾トシ子(67)=高松市屋島西町▽都田美代子(48)=尼崎市東難波町四丁目▽中尾きみ子(67)=京都市伏見区石田森南町(朝日新聞 夕刊)
■無念な朝 検証始まる 信楽列車惨事 退避線区間中心に 安全管理ミス強まる
 滋賀県甲賀郡信楽町で14日起きた信楽高原鉄道の普通列車とJR臨時快速列車の正面衝突事故で、滋賀県警捜査本部は事故から一夜明けた15日午前、捜査員200人を動員して衝突現場をはじめ、信楽駅、貴生川駅、双方がすれ違うはずだった待避線区間などを中心に業務上過失致死傷の疑いで現場検証を始めた。信楽高原鉄道の列車が、信号系統の故障が復旧するのを待たず、安全確保策を十分とらないまま見切り発車するなど安全管理上のミスで事故が起きた可能性が強まっており、今後、関係者から事情を聴き、原因究明を急ぐ。
 事故現場では、捜査員が衝突した列車双方の最前部の状況をビデオに収める一方、検証の重点を双方の列車の運転席の計器類に置き、速度計やブレーキ系統の作動状態を調べた。検証にはJRと信楽高原鉄道の社員、近畿運輸局の職員も立ち会った。
 単線上での対向列車の正面衝突を避けるために設けられた待避線の検証では、JRの運転士が「いつも赤信号のところが青になっていておかしいとは思ったが、そのまま直進した」と話していることから、当時、信号が故障していなかったかを中心に調べた。
 信号機は、高さ約5bのコンクリート柱の上部に取り付けてあり、柱の下部には沿線電話端子箱もある。約20b東には、直進する線路のまくら木の間に、信号と連動し列車同士をスムーズに通過させるATS装置が取り付けられていた。
 信楽高原鉄道の信楽駅と駅構内にある同鉄道本社では、約20人の捜査員が改札口のわきにある約10平方bの運転指令室に入り、信号管理の仕組みを調べたり、職員らから事故当日の列車の運行状況などについて説明を求めた。
・「三姉妹」そろって犠牲
 遺体安置所が設けられた信楽町民体育館に、15日午前4時45分、妻と2人の妹を一度に亡くした高松市屋島西町、会社員長尾正春さん(69)ら遺族7人が到着した。変わり果てた妻トシ子さん(67)の姿に、「痛かったろう。一緒に帰ろうのう」と棺にすがりついて泣きじゃくる長尾さんのかたわらで、長尾さんの妹で事故の犠牲になった村川ツヤ子さん(63)の夫利数さん(64)も「顔に付いた血の跡を見るのが耐え難い」と、つぶやいた。
 高松市に住むトシ子さん、ツヤ手さんと、ツヤ子さんの妹の滋賀県甲賀郡信楽町江田、久保高子さん(61)は、義理とはいえ、仲のよい「三姉妹」だった。トシ手さんとツヤ子さんは12日、高子さんの夫の一周忌に出席。翌日は3人そろって世界陶芸祭を見学し、14日は兵庫県三木市に住むもう1人の姉の病気見舞いに向かう途中だった。
 ツヤ子さん宅に、高子さんの息子から「事故に遭ったらしい」と電話が入ったのは14日夜8時ごろだった。すぐにトシ子さん宅へ知らせ、2人の夫は車で信楽に走ったという。
 留守宅を預かるツヤ子さんの長男の妻峰代さん(42)は「義母はふだんバスしか使わないのですが、妹の高子さんがバスに酔うから電車にする、と電話で言っていました。孫にも土産を買って来ると約束していたのに…」 と声をつまらせていた。トシ子さんの家族へは15日未明、「死に顔はきれいだった」という知らせが届いた。
 一方、小学校時代から60年余りの付き合いを重ねた幼なじみも、そろって事故に遭った。大阪府三島郡島本町大沢、無職向谷富子さん(68)と同町広相、同寺川初栄さん(68)。「2人は好奇心がおう盛で、何か珍しいことがあると、いつもそろって出かけていた。それがこんな結果になろうとは…」と、富子さんの夫久夫さん(66)は肩を落とした。
 事故現場から100b足らずの所にある国立療養所紫香楽病院では、入院した人たちの治療やレントゲン検査などが、前夜から延々と続いた。奈良市朱雀四丁目の小高寿々子さん(53)は「背中が痛くて朝方まで眠れなかった」と、看護婦に苦痛を訴える。京都府亀岡市大井町の中井英康さん(45)は点滴を受け続けた。
 同病院に入院したのは計28人。JR西日本の社員13人が泊まり込んで、午前7時55分から角田達郎社長が各病院を回り、負傷者一人ひとりに頭を下げた。ガーゼや包帯を巻いた痛々しい姿で軽く頭を下げてこたえる人もいたが、何の反応も示さない人が多かった。
・合同調査申入れ
 信楽高原鉄道での列車衝突事故について、JR西日本は15日午前、合同で事故原因の調査をすることを信楽高原鉄道会社に申し入れることにした。JR側によると、高原鉄道側の人員が少なく、技術に詳しい幹部が事故の犠牲になっていること、さらに駅や信号の設備がすべて高原鉄道のもので、JRとして直接調べられないことから合同調査を申し入れた、としている。
 同時にJR側はこの朝、現地で信楽鉄道会社に対し@列車の運行の詳しいデータA信号故障時の取り扱い手続きと実施状況B信号保安設備の実態と機能について−の3項目の質問書を手渡した。(朝日新聞 夕刊)
16日■世界陶芸祭を中止 信楽鉄道惨事 稲葉知事が表明 犠牲者に深い弔意 会期12日間残して
 滋賀県・信楽町で開催中の世界陶芸祭について同祭実行委員会長の稲葉稔知事は15日、記者会見し「実行委員会としては本日をもって陶芸祭を中止することを決定した」と発表した。これで”陶芸”にスポットを当てた世界でも珍しい同祭は、会期を12日間残して閉幕するという異常な事態となった。
 世界陶芸祭は、メーン金場の県立陶芸の森が昨年6月に同町勅旨に完成したのを記念して「語り、創(つく)り、燃える。陶芸ルネサンスをめざして」をテーマに4月20日に開幕。開幕以来の入場者数は、当初の期間中(37日間)目標35万人を早々と今月3日に突破。すでに60万人に達するなど、予想以上の人気を呼んだ。
 実行委員会では、14日に信楽高原鉄道で列車事故が起き、死者42人、重軽傷者416人という大惨事となったため、15日は弔意を表して閉場。今後の運営について、実行委員会や県の同鉄道列車事故対策本部(本部長・岩波忠夫副知事)、議会などで検討していた。
 対策本部員会議では、幹部職員らが陶芸祭の中止か続行かで議論。協議の結果、社会的にも中止すべきとの意向が大勢を占めた。これを踏まえて稲葉知事が県議会代表者会議で打診。議会の同意を得て中止に踏み切った。
 記者会見には稲葉知事はじめ岩波忠夫副知事、陶芸祭総合プロデューサーの上原恵美政策監が出席。稲葉知事が「事故の犠牲者に深く弔意を表し、負傷者にお見舞いを申し上げる。ほとんどが陶芸祭に来る人たちで、実行委員会としては本日をもって陶芸祭を中止することに決定した」と語った。
 今回の事故で、陶芸祭を続行することで会場への”足”の4分の1が鉄道から道路に振り向けられ、混雑が予想される交通事情への配慮もあり、稲葉知事は「委員のなかには、事故と祭りを割り切って続行すべきとの意見もあったが、これ以上継続できないと判断した」と決意を示した。
 使われていない陶芸祭の前売り入場券は約2万枚あるため、16日から陶芸の森メーンゲートで払い戻しに応じることにしている。
・事故での中止は残念
 上田篤京精華大教授(建築学)の話 信楽の特産・陶器の振興を目指した”地方博”が、このような事故で打ち切られるのは残念ですね。地域イベントは、曲がり角論がいわれていますが、地方の時代においてはその意義は大きい。地域の活性化、特産振興だけでなく、地方での文化振興の役割を果たしています。信楽の世界陶芸祭は、地方イベントのなかでもユニークなものとみていただけに、中止は何とも残念ですが、滋賀は近江商人の地ですから近江商人精神でこれからも地方文化づくりにしぶとく、元気にやってほしい。(京都新聞)
■信号機など鑑定へ 捜査本部 JR柘植派出所も捜索
 滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道で14日、JR臨時列車と信楽高原鉄道列車が正面衝突し、多数の死傷者が出た事故で滋賀県警捜査本部(水口署)は15日、信楽高原鉄道関係先3ヵ所のほかに、新たにJR西日本京都電車区柘植派出所(三重県)を業務上過失致死傷容疑で捜索、関係書類を押収した。県警は信楽駅を赤信号のまま列車を出発させた同鉄道の人為ミスの疑いを抱いているものの、信号など機器故障の有無の究明には、専門機関の鑑定が必要としており、現場検証が終わりしだい鑑定に出すことにしている。
 捜査本部は、JR京都電車区柘植派出所がJR臨時列車の指令所になっていたため捜索。両社計4ヵ所で、運行計画表や両者で交わされた運転契約書など約400点を押収した。同高原鉄道関係者やJR運転士らの事情聴取の内容との突き合わせを行い、マニュアル通り運転が行われていたかどうか調べている。
 また捜査本部は、この日から負傷者416人やけがのなかった乗客ら計約600人の事情聴取を始めた。行き違い設備の小野谷信号所が「青」とするJR運転士証言が正しいかどうか、ブレーキ操作の有無などの解明を急いでいる。
 現場検証は、車両の破損の激しさや天候不良のためはかどらず15日夜、いったん打ち切り、翌16日朝から再開する。県警は、検証が終了しだい事故車両を撤去してクレーン車などの置かれている国道307号の通行止め区間を解除したいとしている。(京都新聞)
■全国の単線に点検報告課す 村岡運輸相か会見
 運輸省は15日午後、第1回「信楽高原鉄道事故対策本部会議」を開き、現地調査報告のあと、全国のすべての単線路線について安全自主点検の報告をさせるほか、事故を起こした信楽高原鉄道とJR西日本を1週間以内に保安監査する−など5項目を決めた。
 同日夜、記者会見した村岡運輸相が明らかにしたもので、自主点検は旧国鉄の赤字ローカル線などを引き継いだ第三セクター鉄道35社のほか、私鉄、JR各社も含めた全国の単線路線が対象。特に、第三セクター鉄道については同省係官が立ち入り調査、自主点検結果を確認、必要な指導を行う。直接乗り入れしている路線については、相互の連絡体制、教育体制を重点にチェックする。
 その他、同事故の遺族、被害者に対する補償など誠意を持って当たるよう指導するとともに、今後の事故再発防止のため事故原因究明を徹底的に行うことを決めた。同省では、自主点検・報告に半月ほど、両社への保安監査に2日ほど必要とみている。(京都新聞)
■駅ビル反対で知事に申請 京都駅の対策協議会
 民商、国労など17団体でつくる京都駅建て替え問題対策協議会(高橋昭三代表)は15日、「京都駅改築設計コンペを行政が認めることは都市計画法に違反する」として、荒巻京都府知事と田辺京都市長に対し、京都駅ビル開発会社への指導・監督の強化などを申し入れた。
 申し入れ書は▽市長らが平安建都1200年記念にふさわしい建物としている理由の説明▽デパート、ホテルの進出は地元業者の死活問題であり、取りやめてほしい▽改築計画の撤回と市民的議論の保障−などを求めている。(京都新聞)
■再起へ重すぎる課題 信楽鉄道 補償問題も大打撃
 第三セクター信楽高原鉄道は、今回の事故でさまざまな形の打撃を受けた。人材、車両、資金…。損失を乗り越え、再起を図るには解決すべき課題があまりにも重く残った。
 事故で亡くなった信楽高原鉄道の職員は5人で、全スタッフの4分の1にもなる。役員の大半は沿線の町。鉄道現場のトップは、奥村清一常務(62)だったが、当日、運輸省の査察スタッフを迎えるため、貴生川行き列車に乗って事故に遭った。
 運転業務の責任者だった中村裕昭業務課長(54)に加え、6人しかいない運転士のうち3人を一挙に失う事態で、運行部門は完全にマヒしてしまった。
 事故を起こした4両編成の列車は高原鉄道が保有する車両のすべて。2両は現状をとどめないほどに壊れた。残り2両も運転に使うためには入念な点検、修理が必要。「運行再開のメドは全く立っていないし、考えることもできない」(広岡実総務課長)というのが実情だ。
 さらに、経済約な打撃も大きい。国鉄の赤字路線を地元の要望から第三セクター化で残した路線だけに、経済約基盤は元々弱い。500人近い死傷者の補償金を単独で負担できる資金力はなく、大株主の滋賀県や信楽町などの責任は、いやがうえにも増すことになる。
・信楽高原鉄道 再開は困難 JR西日本見通し
 JR西日本の日高秀登事故対策本部副本部長は15日、大阪のJR西日本本社で記者会見し、信楽高原鉄道の運転再開見通しについて「運転士6人のうち3人が今回の事故で死亡されたほか会社幹部も殉職。車両も4両のうち3両が壊れているなどから、同鉄道の運行再開は相当困難と思う」と述べ、復旧作業が進んだ後も信楽高原鉄道の運転見通しが難しいことを示唆した。
 また、同日、JR西日本は、信楽高原鉄道に乗り入れていた臨時列車(平日1往復、休日2往後)の運行を中止することを決めた。
・各種行事も総点検 県対策本部 犠牲者宅に幹部派遣
 滋賀県の信楽高原鉄道列車事故対策本部員会議(本部長、岩波忠夫・副知事)は15日、今後の対策について協議、世界陶芸祭の主催者として、全庁約に、おわびの気持ちを表明するための対策をとることを決めた。
 このため、同日夜から、事故の犠牲となった42人の自宅などへ弔意とお見舞いのため課長級以上の幹部職員を派遣することを決定。
 また、世界陶芸祭の中止と関連して、主催する各種行事を総点検。施設関係のしゅん工式も従来の形にこだわらず内容などを工夫して、被災者の気持ちに配慮して実施することにした。
 同本部は、この日も、県職員を信楽町の現地へ派遣するほか、入院者の見舞いなどに追われた。
 岩波本部長は「この日の決定は当面の対策として決めた。事故で亡くなられた人は今夜にも通夜、密葬の人もあり、遠方や地理不案内などの難しさもあるが、今夜から全力を挙げて回らしてもらう」としていた。
 また、杉森一夫信楽高原鉄道社長(信楽町長)は同日午後、町役場内で記者会見し、事故の壌牲者の合同慰霊祭をできるだけ早い時期に行うことなど、対応策を明らかにした。杉森社長は、この日午前、県やJRなどと協議した結果、できるだけ早い時期に合同慰霊祭を開催する▽死亡者に対し町外は県とJRの幹部、町内は県と信楽町の幹部が葬儀に参列する▽死亡者に対し高原鉄道社長名で香料、生花、果物などを、負傷者には見舞金を出す−など、同鉄道が決めたことを明らかにした。(京都新聞)
■信楽高原に何が起きた 列車衝突事故 「変だな山積」 なぜ発車 強まる複合ミス 信号故障発端に
 「惨事」の言葉では言い尽くせぬ光景が、一夜明けても目に刺さる。つぶれた紙箱のような車体、切断された台車、線路わきの手向けの花が冷たい雨に打たれている。15日、信楽高原鉄道の列車衝突現場。悪夢から24時間たった午前10時半、滋賀県警の現場検証が始まった。濃紺服の係官の動きが慌ただしい。近くに住むという60歳前後の男性が作業を見守りながらつぶやいた。「いつも三雲(甲西町)への勤めに高原鉄道に乗ってるんや。こんな田舎の鉄道でなぁ…」。
 現場検証と同時に、捜査員が三方へ飛んだ。高原鉄道本社、信楽駅、貴生川駅。業務上過失致死傷容疑の家宅捜索だ。「高原鉄道側の信号故障、ミスが濃厚?」。記者らの質問に捜査幹部は「そんなこと、まだ言えん。専門家の鑑定もいるだろうし」
 が、推移は高原鉄道に”分”が悪く見える。これまでの調べで、高原鉄道列車は信楽駅を赤信号なのに出発、JR列車の運転士は待避所を「青信号で通過した」と証言。
・計器点検の最中に
 高原鉄道に信号機器を納入した日本信号(本社・東京)大阪支社の大矢恒雄・信号部長は「信楽駅が赤なら待避所は青になる。誤出発防止ボタンを操作し、信楽側を青にすれば待避所は赤。ただし、JR列車の通過前に赤になったのか、通過後だったのか…」。高原列車の信楽発車は10分遅れた。高原鉄道の山本長生施設課長はこの朝、「『赤』のままで計器をチェックしている最中に列車が走り出した」と証言した。
 JR西日本はこの日午前、高原鉄道側に事故原因解明のため4項目の申し入れを行った。列車運行の詳細データ、信号保安設備の実態説明などを求めた「協力要請」(同社広報室)としながらも、「なぜ発車が大幅に遅れたか、誤出発防止装置の管理などがどうなっていたのかを当然踏まえた対応です」と、やや強気に見える姿勢だ。
 しかし、信楽駅の出発信号に故障はなかったのかの疑問は残るし、事故のあった区間にすでに11回も乗り入れていたJR列車の運転士が、待避所に高原鉄道列車の姿がないのを「変だな」と思いながら、そのまま進行したのを問題なしと言い切れるのか。
 捜査の足音を聞きながら、安置所となった町民体育館から次々と遺体がわが家に向かった。午後1時、最後の一体が帰宅したが、悲しみは館内に塗り込められたかのようだ。
 遺族は家庭で沈み込んだ。父治三郎さん(63)、長男未晴ちゃん(2つ)を亡くした信楽町黄瀬の会社員中島三木男さん(30)は「一晩中、親父のこと、未晴のことを思い返していた。この日本で、列車が正面衝突するなんて…」。重い言葉が、だからこそ揺れ動き、打ちひしがれた胸の内を物語る。
 惨事を呼び込んだ形になった「世界陶芸祭」も激しくもまれ、中止が決まった。
 イベント続開か、中止かを中心に協議した県の事故対策本部員会議は、県庁で午前9時から延々続き、午後5時、陶芸祭実行委会長の稲葉稔知事、岩波忠夫副知事、陶芸祭総合プロデューサーを務めた上原恵美・政策監の3人が記者会見場に沈痛な表情を並べた。「ぎりぎりまで検討したが…」と稲葉知事。知事は、事故直後から中止のハラを固めていた模様だが、「陶芸祭自体は成功していた。地域おこしのモデルにという理念はどうなるのか」という続開論とのはざまで、苦悩の検討を重ねてきた。
・コンパニオンら涙
 傍らで、上原政策藍が「前売り券の払い戻しなど事後措置には万全を期します」と短く言葉を継いだ。上原さんは前夜、遺体安置所の町民体育館の一隅でしょう然と立ち尽くしていた。7万人、5万人と入場者が詰め駆けた時、笑みを失うほど緊張した現場キャップ。無念は陶芸祭会場にも伝わり、コンパニオンらのほおに涙が走り、落ちた。
・世界陶芸祭中止 懸念の”足”命取り 地方イベント難しさ露呈 職員には無念さ
 列車正面衝突の大惨事に、開幕以来、快調に走っていた世界陶芸祭に急ブレーキがかかった。15日夕、実行委会長の稲葉稔滋賀県知事は苦渋のうちに世界陶芸祭の中止を決めた。37日間の会期を12日間も残しての決断は、列車事故に沈む実行委事務局のスタッフや地元町民にダブルショックを与えた。犠牲者への弔意であり当然の決定とみる陶芸業者、目前のゴールを失って落胆、涙する関係者…と受け止め方はさまざまだが、一様に無念さを隠さない。開幕当初から貧弱な「交通アクセス」が心配されたが結局、その交通問題でつまずいた県あげてのイベント。60万人の入場者を残したものの、改めて地方でのイベント成功の難しさを示した。
 事故犠牲者への弔意を表すため臨時閉場していたメーン会場・陶芸の森にも15日午後5時、中止の一報が届いた。
 県庁から電話連絡を受けた一坪徹夫事務局次長が「ただいま連絡が入り、陶芸祭の打ち切りが決まりました」とスタッフに伝えると、一日も早い再開に向け作業を続けていた事務所内は静まり返った。
 天を見上げる男性スタッフ。泣き崩れる女性職員。一坪次長も「あすからは中止後の新しい業務があるので引き続き頑張ってください」と涙をこらえて激励。スタッフらは早速、16日以後に入場予約している団体客や出店業者へ中止決定の電話連絡を始めた。
 一坪次長は「大事故にやむを得ぬ決断だろうが非常に残念だ。ここまでスタッフ一同が一生懸命頑張って予想を大幅に土回る入場音に対応してきた。25万6000枚ほどの前売り券もまだ2万枚余り残っているだけに何とか再開してほしかった」と、中止に無念さを隠さなかった。
 また、会場の華として活躍してきたコンパニオンの女性たちも打ち切りの説明を受けて、泣き崩れた。OLを辞めてコンパニオンになった京都市の村井歩美さん(25)は目を真っ赤にして「まだ続けられると思っていたけど、上の決められたことなので仕方ないですね。こんな不便な場所なのに大勢のお客さんに来ていただき、時には満員で不満を持っているはずのお客さんから『頑張ってください』と励まされたことは、いつまでも忘れません」と涙声。(京都新聞)
■信楽惨事 掲示責任追及へ 高原鉄道に管理ミス
 42人の死者と400人を超す重軽傷者を出す惨事となった滋賀県信楽町の信楽高原鉄道(単線)の列車正面衝突事故で、滋賀県警の捜査本部は15日、赤信号にもかかわらず信楽駅を見切り発車させた同鉄道職員を含め、同社全体の安全管理システムに落ち度があったとの見方を強め、業務上過失致死傷容疑で同鉄道の刑事責任を追及する方針を固めた。捜査本部は、発車に立ち会った関係者から当時のやりとりを中心に、詳しい事情を聴く。
 調べによると、信楽駅では、何らかの理由で信号が赤から青に変わらないため、信号系統の故障を疑った職員が配線が集まっているホーム先端の継電室で機器の点検をしていた。その結果を待たず、幹部職員の一人が運転士に出発を指示したとみられる。
 赤信号で出発する場合、同鉄道では、職員が沿線を車で走り、対向列車が来ていないことを確認、そのうえで、行き違いのための待避線がある小野谷信号所の信号を赤に手動で変えて対向列車が単線上に進入しないよう防護措置をとり、信楽駅で待機中の列車に連絡をするよう決められている。しかし、この幹部職員は車での確認を指示したものの、それと相前後して、出発を指示していたという。
 捜査本部は同日夕までに信楽高原鉄道本社の捜索をはぼ終え、運行記録やJRとの運行取り決めの書類などを押収した。この日午後からはJR京都電車区柘植派出(三重県伊賀町)も捜索し、捜索個所は計3ヵ所になった。16日も引き続き、同鉄道本社の職員から事故当時の模様を聴くほか、事故列車に乗り合わせた人たちからも事情を聴く。
 一方、捜査本部はこの日の現場検証で信号系統などの安全システム面を中心に調べた。同鉄道の信号系統を製作した日本信号(本社・東京)によると、赤信号で出発した場合、対向列車に向けて赤信号を出す「誤出発検知装置」は、見切り発車を正常に感知していたことが確認された。この場合、途中の配線に異状がなければ、対向のJR列車に向けた小野谷信号所の信号は赤になっていたはず。しかし、JRの運転士は「青だった」と証言しており、捜査本部は、安全システムのかなめである同装置についても配線部分を中心に調べる。
・世界陶芸祭は中止
 列車同士の正面衝突事故の起きた滋賀県甲賀郡信楽町で開催中の世界陶芸祭が会期を11日間残して中止されることが15日、決まった。同祭の実行委員長をつとめる稲葉稔・滋賀県知事が記者会見で明らかにした。地域の活性化を目指して自治体が参画した博覧会などイベントが中止になるのは極めて異例だ。
 同祭は、同県と地元信楽町など21団体でつくる実行委員会が主催し、信楽町の県立陶芸の森を主会場に、4月20日に開会。実行委員会は5月26日までの37日間の入場者を35万人と見込んでいた。
 中止の理由について稲葉知事は「亡くなったり、負傷した方々のほとんどが鉄道を利用して祭りにお越しいただく方々だった。遺族やけがをされた方々の心情を思うとこれ以上続けることは出来ないと判断した」と語った。(朝日新聞)
■信楽列車惨事 保安情報 徹底せず トラブル時訓練もなし
 滋賀県信楽町で起きた列車正面衝突事故で、信楽高原鉄道はJR直通乗り入れにあたって、JR西日本と3月末に「直通乗入運転に関する協定書」を締結したが、保安設備や信号設備などの情報交換が不十分で、乗務員にまで徹底していなかったことが15日、分かった。同様の協定は第三セクターで広島県と鳥取県に2ヵ所あるが、JRは今回の事故を教訓に内容を点検することにした。
 協定は3月27日付で日高秀登・JR西日本運輸部長と杉森一夫・信楽高原鉄道社長の2人が調印。これをもとに3月末、信号所では下り列車(信楽行き)を優先して通過させる原則などを決めたほか、JR側の運転士8人を4月3日から12日まで、貴生川−信楽間を実際に各4往復する訓練をさせた。しかしトラブル時の対応については、実地訓練はなく「信号が故障の際は『指導通信方式』で代用する」などと口頭で確認しただけだった。
 また、JR本社には、信楽−貴生川間の保安設備、信号設備の詳しい図面さえなく、事故発生後問い合わせる始末だった。JR側は「そうした設備は駅務に関するもので貴生川、信楽両駅で協議しておけばよいもの」と釈明しているが、安全管理の基本的情報が乗務員などには周知されていなかった。
 JR草津線の駅でもある貴生川駅についてはJR亀山駐在指令所でCTCの集中制御をしているが、貴生川−信楽間にJRの列車が入ったあとは、JRにとってはコントロール方法はなかった。
 快速列車に無線電話機を備えており、指令所員と列車との通話は技術的には可能だった。しかし、JR側は「急病や忘れ物などの連絡には使うが、運行や安全に関する保安装置としては位置づけをしていない」(安全対策室)と説明。快速の林運転士も信号所にすれ違い列車がいないことを気付いていながら「信楽駅で何かトラブルがあり(列車は出発せず)自分の列車を先行させるため青信号にしているのだろうと思って通過した」と話しており、無線電話で問い合わせることはマニュアルにはなかった。
・単線路線の点検を指示 運輸省
 運輸省は15日夕、全国すべての単線路線の事業者に対し、安全確保のための自主点検をするよう緊急に指示して、その報告を求めることなどを柱にした5項目の事故再発防止対策を決めた。
・補償問題 思惑からみ曲折か
 42人もの死者を出した信楽高原鉄道とJRの列車事故をめぐり、死傷者への補償の問題が浮上してきた。しかし、まだ事故原因や、責任の所在は解明されきっていない。運輸省は15日、補償に誠意をもってあたるよう両社に指示することを決めたが、それぞれの思惑がからまって、曲折がありそうだ。
 信楽高原鉄道の最大の出資者である滋賀県の稲葉稔知事は同日、「原因調査がはっきりするまでは」と慎重な姿勢を表明した。また、同社の社長である杉森一夫・信楽町長もこの日、ほぼ同じ態度を明らかにした。
 同社は人命にかかわる列車事故に備えて保険をかけていた。鉄道事業者が通常加入する施設賠償責任保険などで、同社は1事故につき最高3億円という条件だった。42人の死者につき、単純計算で714万円にしかならない。
 列車事故での犠牲者への補償額は、47年に福井県で起きた北陸トンネル列車火災の場合、最高約3500万円が支払われている。そうなったらどうするのか。関係者はますます慎重にならざるを得ない。
 これに対し、事故のもう一方の当事者であるJR西日本は「貴任の度合いを協議してから、考え方を整理し対応したい」(日高秀登運輸部長)という。つまり、事故の責任がJR側になければ、補償の章任も負わないという態度。
 JRは現地周辺に社員470人を派遣、犠牲者の遺族の作業の手伝いや、入院した重傷者の世話をさせるなどしている。しかし、同部長は「補償とお見舞いとは別」と強調する。(朝日新聞)
■陶芸祭中止 「村おこし」中途で幕 住民「仕方ないが…」
 陶芸の里の村おこしを狙ったイベントが15日、中止に追い込まれた。滋賀県甲賀郡信楽町で開催された世界陶芸祭。予想を上回る入場者を記録し、順風のさ中、会場への足となる信楽高原鉄道で起きた列車同士の正面衝突事故は、会場を訪れる多くの人々を犠牲に巻き込み、祭りの続行を不可能にした。予期せぬ大事故と中途での幕引き。地元町民の表情にはあきらめの中にも無念さがのぞいた。
 信楽焼の産地として知られる同町は、この歴史を生かして「世界に羽ばたく国際工芸都市」として売り出そうと計画。今度の陶芸祭をその起爆剤にしたい、と期待していた。しかし、37日の期間を11日も残しての閉幕決定。「やむを得ない」と語る杉森一夫町長は、いかにも残念そうだった。
 陶芸祭の会場で陶器市を開いていた信楽陶器卸商業協同組合にはこの日午後5時半、滋賀県から中止の連絡が入った。陶器市も取りやめることになり、組合員に伝えた。上西正信理事長は「あれだけの大事故があった以上、お客さんに『いらっしゃい』と声をかけるのは、心情的にもできません」。
 陶芸祭会場では午後5時、事務局スタッフ約50人に中止が知らされた。そろいの赤いジャンパー姿のスタッフたちはこの日、そでに黒の喪章をつけていた。田村重明・実行委事務局長(57)は「ご遺族の気持ちを考えると、やはり中止は当然というしかない。私個人としてもこれが最善だと思う」と言葉少なに語った。
・4者で合同慰霊祭
 信楽高原鉄道の事故で、JR西日本、同高原鉄道、滋賀県、地元信楽町は15日、同町内で連絡会議を開き、事故で死亡した42人の合同慰霊祭を4者で行うことを決めた。日時、場所は未定。
・町長が議会で陳謝
 滋賀県甲賀郡信楽町議会は15日、統一選後初の町議会を開き、議員らが列車衝突事故の犠牲者らに対して黙とうをささげたあと、第三セクターの信楽高原鉄道の社長でもある杉森一夫町長が、「42人という死者を出し、400余人に大きなけがを負わせてしまった。申し訳ない、すまない、ではとても足りないが、今の心境はそれのみでございます」と述べた。また自らの責任について、「いまは進退については答えられない。信楽高原鉄道は町民の足であり、可能な限り、原形復帰に努めたい」などと話した。
・私でも中止と判断
 一村一品運動で知られる平松守彦大分県知事の話 世界陶芸祭の主催者にミスはなかったので、主催者側の立場に立てば、中止は実に気の毒に思う。しかし、開催期間も後半に入っており、交通機関が強制捜査を受けたことなどから考えると、私が滋賀県知事だったとしても、中止にしたと思う。大分県も長期的には、地域の特色を生かした博覧会を開きたいと考えており、他山の石として、安全を第一に物事を考えていきたい。
・社会動向見通せず
 国立民族学博物館の石森秀三助教授(観光人類学)の話 中年女性やシルバー世代などを中心に、趣味や遊びを通じ自己実現をめざす『自由時間革命』が起きつつある。そんな社会的動向に支えられ、世界陶芸祭は、遠隔地でもかなりの集客力が期待できることを実証した。そういう意味では成功だったといえ、会期半ばでの閉幕もやむを得ないだろう。あっさり中止したのは、主催者側がこのような社会的動向を把握できず、施設計画やアクセスの規模などの見通しが甘かったことを逆に示したともいえる。確たる目的意識を持った催しではなかった、といわれても仕方ない面があるのではないだろうか。(朝日新聞)
■高原鉄道信楽駅 4月にも信号異常 乗り入れ試験で赤 県警 故障との因果究明
 滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道でJR臨時列車と信楽高原鉄道列車が正面衝突した事故で、県警捜査本部(水口署)は16日朝から原形をとどめているJR先頭車両の運転室を中心に現場検証を再開するとともに、同鉄道で過去に起きた信号異常と今回事故との因果関係の有無に重点を置いて調べている。
 捜査本部は、これまでの調べで、JR乗り入れの試験運行期間中の4月8日に、信楽高原鉄道信楽駅で出発信号が「赤」になる信号異常があったことをつかんだ。この時は間もなく回復したため、原因の徹底究明が行われなかったと見られ、信号系統が完全に正常化していたかどうか解明を急いでいる。
 また、現場検証は、衝突現場や信楽駅などで引き続き行われた。信楽高原鉄道列車は先頭車両が折れ曲がってつぶれているため、辛うじて原形をとどめているJR先頭車両から検証を開始。運転室の速度表示やATS(自動列車停止装置)の状況などを入念に検分、JR運転士が所属京都電車区の上司に事故後、話した「52、3`のスピードで走っていた。非常ブレーキをかけると同時に衝突した。その後は分からず、報道ヘリコプターの音で気がついた」との証言と照合している。
・補償は難航か「原因究明が先決」
 死傷者約500人を出した信楽鉄道事故は原因の究明とともに今後、遺族や負傷者への補償が大きな問題となる。
 事故翌日の15日、滋賀県、信楽町、JR西日本、信楽高原鉄道の関係4者が集まり連絡会議を結成、4者が誠意を持って遺族、負傷者に対応していくことを決めた。
 しかし補償問題についてはJR側も鉄道側も「原因究明が先決」として負担の基本的な方向すら出しておらず、お互いが顔を見合わせている形だ。
 JR西日本と信楽高原鉄道はJRの乗り入れに際し「車両直通運転契約書」(3月27日付)を交わしている。その契約の損害負担の項で「損害が発生した場合、損害を与えた方が負担し、損害の原因の所在が不明だったり、原因が競合して発生し損害を区分し難い場合、両者で協議する」となっている。
 過失責任問題について、JR(西日本)側は「今、ここで申し上げることはできないが、もう少し待てば分かる」と暗に信楽高原鉄道側の補償責任をにおわせる。
 もし同鉄道側がその補償の大半を負担するとなると事態は深刻。同鉄道の平成元年度の営業収入は1億3000万円ほど。施設賠償、車両保険は1件の事故で最高3億円までしか支払われない。
 同鉄道社長の杉森一夫信楽町長は、社長名で犠牲者に香料を送ることを決めたものの、補購問題には「賠償しなければいけないが、現荘は原因究明中」と明言を避けている。
 同鉄道は自治体、企業など14者が経営に参加。出資比率49%の県の対応が注目されるが、稲葉稔知事は「原因が調査中なので、結果を待って検討したい」という姿勢。
 JR西日本によると、見舞金については「当たり障りがあるので額は明らかにできないが、既に4者で話し合い各の大まかな額も決まっている」という。
・県幹部がお見舞い 遺族宅、病院を訪れ陳謝
 滋賀県・信楽高原鉄道列車事故対策本部(本部長、岩波忠夫副知事)は16日、事故の犠牲となった42人の自宅など39ヵ所に県幹部職員を一斉に派遣、遺族らに弔慰金を手渡すとともに、事故のおわびをした。また負傷者が入院している14病院(約70人)を訪れ、頭を下げた。
 このうち、16人が入院する同町の国立療養所紫香楽病院には岩波本部長らが訪れ「せっかく滋賀県にまでおこしいただいたのに、事故に遭われ、地元として言葉もありません。1日も早い回復をお祈りします」と言葉をかけ、見舞金を手渡した。重傷の負傷者は、ベッドに寝たままの状態で「ありがとう」と答えていた。
 県側では、弔慰金、お見舞金の総額は約1000万円になる、としている。
 また、信楽町も、信楽高原鉄道社長でもある杉森一夫町長や西川和好収入役ら幹部職員が4組に分かれて信楽中央病院など13ヵ所に入院中の負傷者を見舞った。
 このほか、県議会の伊夫貴直彰議長、桑野忠副議長も滋賀、京都の7病院、60人を見舞った。
・無念の払い戻し スタッフ喪章つけ応対 陶芸祭中止
 15日夕に開催中止を決めた世界陶芸祭のメーン会場、信楽町の県立陶芸の森では16日朝、重苦しい空気の中、入場券の払い戻しを始めた。午前10時半ごろまでに約20人が正面ゲート前の発券所で払い戻しを受けた。陶芸祭実行委では同10時半ずぎから会場内で担当班長以上の打合会議を開き、中止後の対応策を話し合った。
 この朝、喪章を着けた実行委のスタッフやコンパニオン約300人が、早々と顔をそろえて応対。
 会場メーンゲートの「開催中止」を知らせる張り紙の前にスタッフ約30人が並び、払い戻しをする発券所まで誘導した。9時半からの払い戻しを待っていた大阪府堺市草尾の会社員荻田勲さん(42)は「1ヵ月前から予定していた。中止は分かっていたが、会社も休みをとっていたので、ほかでも観光しようかと友人7人で来た」と、開催中止を残念がっていた。
 前売り券は約2万枚残っているとみられ、6月30日まで同発券所で払い戻しをする。
 一方、打合会議にはスタッフ15人が出席。犠牲者のめい福を祈って1分間の黙とうをしたあと、同祭総合プロデューサーの上原一恵美・陶芸の森館長が「祭りをこういう形で終息しなければならないが、犠牲者のことを思えば残念とはいえない。森の将来にとって大きなイベントであっただけに、今後の運営を大事な形にしたい」と最後は涙で声を震わせた。(京都新聞 夕刊)
■廃線やめて「おらが足」 信楽惨事、住民ら訴え 山の暮らしの支え
 JR臨時快速列車との正面衝突事故で、運転士3人を含む役員ら社員5人を失い存亡の危機に立たされた滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道をめぐって、地域住民の間で「廃線に追い込まれる可能性もあるのでは」という不安が高まっている。同鉄道の社長を務める杉森一夫・信楽町長は「廃止しない」と言明しているが、最大の出資者である滋賀県の稲葉稔知事は「会社から具体的な状況を聞かないことには…」と慎重な態度。今後の補償問題の行方もからみ、存続と再建を望む住民は気をもんでいる。
 信楽高原鉄道の設立・運営には、地元の熱い思い入れがあった。前身の旧国鉄信楽線は1933年開業。第2次大戦中にレールやまくら木を供出し、一時は廃線になった。戦後、住民らが近くの山から木を切り出して2万3000本のまくら木をつくり、47年、再開にこぎつけた。町内の学校や幼稚園などの遠足、老人会の小旅行など、出来る限りの利用を町が中心になって呼びかけてきた。
 同鉄道の初代社長で前信楽町長の宮脇武市さん(81)は「まさしく『おらが鉄道』です。国鉄再建法施行で第一次廃止路線に指定された時、みんなが立ち上がった。もうからなけれは切り捨てるという国のやり方に対する過疎地の意地だった」と振り返る。
 再建へかける地域住民の期待は大きい。無職谷豊吉さん(77)は「廃止になってはいかんと思い、老人クラブで年に1、2度集まり、わざわざ貴生川まで往復したり、駅周辺を掃除したりしている。皆で守ってきた駅とレール存続の努力なら、惜しまない」という。陶器卸販売業の上島一之さん(74)も「ここは山間地で、冬には雪も降る。車が動けなくなったら学生も勤め人も通えません。何としても鉄道だけは残さないと」と訴える。
 だが、今回の事故で、信楽高原鉄道は保有する4両のうち2両が大破、あとの2両も走行テストをした後でなければ実際の運行には使えないという。
 同鉄道参事の古川六洋・信楽町生活環境課長は「まだ補償問題が手つかずの状態。車両は1台で約1億円かかるし、何より死亡した運転士3人を早急に補充するめが難しい」−と話し、当面の運行再開のめどは立っていない。(朝日新聞 夕刊)
17日■社説 信楽惨事をどう乗り越えるか
 滋賀県・信楽町の「世界陶芸祭」は15日、会期を12日残して中止となった。陶芸祭へ向かう客らを乗せた列車が衝突し、多数の死傷者を出した信楽高原鉄道事故に伴い、同祭実行委員会が決定した。
 中止決定は、県の事故対第本部、議会を含めて長時間にわたって協議した結論だ。実行委会長の稲葉知事は「中止で遺族らの心はいやせるわけではないが、これ以上続けることはできない」と語った。死者42人、重軽傷者は400人を超すという大惨事である。もちろん、会場への大量輸送を担う同高原鉄道の車両が壊れ、物理的にも続行は不可能だ。しかし、それ以上に遺族らの心情を思えば、祭りを続けることは到底できず、中止は当然の措置だ。
 主催者側の苦渋のほどは想像できる。だが、亡くなった人たちの遺族、負傷者は無念の気持ちでいっぱいだろう。県警捜査本部はじめ、運輸省、JR西日本など関係機関は徹底約に原因究明し、捜査、調査結果を公表することが大切だ。事故の再発防止につながることである。
 事故原因の解明とは別に、遺族らとの補償問題がたちまち現実の問題となる。補償責任は、原因が同高原鉄道にあったか、JR側にあったか、あるいは双方か、など捜査の結果次第で異なる。県と地元の信楽町らが出資した第三セクターの同鉄道は営業収入1億3000万円(平成元年度)と経営基盤は弱い。同鉄道がかけている保険は、1件の事故で最高3億円までしか支払われない。犠牲者が多いため、この額では処理できそうにない。県は同鉄道の筆頭出資者の立場からも、補償問題では調整役を買って出て、誠意ある対応をしてもらいたい。
 また、車両4両のほとんどが壊れ、しかも役員、運転士ら職員5人を一挙に失った同鉄道は第三セクター会社の存立の危機に陥っている。地域住民の日常生活の足として、欠かすことのできない鉄道だ。地元では「廃線となるのでないか」といった不安が高まっている。旧国鉄の赤字ローカル線(特定地方交通線)に指定された際、熱心な存続運動を展開し、鉄路を守った経過がある。事故の犠牲は確かに大きかったが、だからといって地域の公共輸送機関を無くしてしまうのは問題だ。沿線自治体だけでなく、滋賀県全体の課題と受け止め、経営立て直しの方策を探るべきだ。
 今回の惨事はさまざまな課題を残したといえる。陶芸祭は、地方の活性化を狙ったユニークなイベントと高く評価された。予想以上の反響も呼んだが、会場へアクセスする鉄道で「まさか」の事故が起きた。鉄道輸送の長い歴史と安全運行ノウハウに対する信頼を裏切る大惨事だ。
 信頼を回復するためには、まず一刻も早く原因を解明することだろう。運輸省はただちに同事故対策本部を設置し、全国の第三セクター鉄道や乗り入れJR各社に対して設備総点検を開始した。同様の路線を抱える自治体もこの際、チェックを徹底的に行うよう要望したい。
 県は、陶芸祭の客輪送体制で手落ちがなかったかどうか、鉄道会社へ任せきりにしたことはなかったかどうか、事後とはいえ綿密に分析し、問題点を洗い直すことが大切だ。事故の後遺症から、地域活性化策に過度なブレーキがかかることは避けたい。いかにこの難しい局面を克服していくか、県をはじめとする関係機関は総力をあげてほしい。信楽のダメージは決して小さくなかろう。が、陶芸祭も今回の事故さえなかったら、大成功の地域おこし、産業振興策となっただろう。
 近江商人は「誠実」「進取」の精神が特徴だ。再生に期待したい。(京都新聞)
■信楽高原になにが起きた 惨事に即座の中止決断 陶芸祭
 「あのような大事故が起き、亡くなられた人やけがをされた人たちのことを思うと中止せざるをえない。よくがんばってくれました」。16日午後、世界陶芸祭のメーン会場となった滋賀県・信楽町の県立陶芸の森を訪れた同祭実行委員会長の稲葉稔知事が、実行委スタッフ約50人を前にあいさつ。これまでの労をねぎらうと、前日夕に陶芸祭中止の決定を知らされていたスタッフらの目に熱いものがこみ上げた。
 開幕以来、予想をはるかに上回る人出でにぎわった世界陶芸祭。そのアクセスの一つとなっていた鉄路に突然”悪夢”が襲った。14日朝の信楽高原鉄道での列車正面衝突事故。死者42人、負傷者416人という目をおおう大惨事に、陶芸祭の盛況で連日、うれしい悲鳴が聞こえていた信楽の里は一転、阿鼻叫喚(あびきょうかん)がこだまする地獄絵図と化した。
 同町文化協会の上田宗寿会長は「多くの人に来てもらうのだから、もう少し道路網の整備をしてからやってほしかった」と、今回の事故を振り返る。会場へのアクセスとなる国道307号、県道大津信楽線はいずれも上下各1車線。県道に至っては乗用車同士の離合が困難な個所もあり、「地場産業があり、観光の町としてはあまりにもお粗末」と、嘆く。
 同祭実行委員会でも会期中の交通混雑については、開幕前から最大の問題点として認識。このため、信楽高原鉄道の利用を促そうと、約2億円を投じて水口町年飼に上り、下りのスレ違いができる待避所を設けて増便したり、JRの臨時便乗り入れなどで対応していた。
 が、利用者は予想をはるかに超え、事故に遭ったJR臨時便の乗車率は約240%の超過密状態で、事故の被害を一層拡大。せっかくの交通混雑緩和対策が裏目に出たといえる。加えて、乗客のほとんどが陶芸祭入場客とあって、同祭実行委員会は陶芸祭を続けるか、打ち切るかの選択を迫られた。
 14日夜、記者会見に臨んだ稲葉知事が「とりあえず、15日は亡くなった人に弔意を表すために陶芸祭を閉場し、16日以降の開催についても検討したい」と、中止をほのめかす発言。現場の惨状を見た知事は側近に「やめようと思う」と胸の内を見せていた。
 それだけに、翌15日夕の記者会見では、冒頭から「本日をもって陶芸祭を中止します」ときっぱり。この日は、朝から陶芸祭の中止か続行かについて、県幹部が意見交換したほか、実行委員会スタッフが電話で各委員から意見聴取。いずれも中止すべきとの意見が大勢を占めた。このあと、稲葉知事が同祭総合プロデューサーの上原恵美政策監とともに県議会代表者会議に出席し、同意を得たうえで最終決断した。
 一夜明けた16日の陶芸の森は、祭りの後始末で慌ただしい動きを見せた。午前10時半から、上原政策監がスタッフ約30人と今後の対応についての打ち合わせ会議をし、事故の犠牲者に対し1分間の黙とう。同午後5時半には、事務所前にスタッフはじめコンパニオン、警備員ら関係者約150人を集めて「みなさんが一生懸命取り組んだ陶芸祭は内容的にもすばらしく、滋賀県を十分世界ヘアピールできたと思う」と、締めくくりのあいさつ。言い終わって目頭を押さえる姿に、無念さがにじみ出た。
 県が地場産業の振興と村おこしの拠点として昨年6月に完成した陶芸の森。館長でもある上原政策監は「森は町の一員なので、ともにもり立てていきたい。森を知ってもらうという陶芸祭の目的は半ば達したと思うし、このアクシデントが致命的にならないようがんばりたい」と、新たな意欲をみせた。来年6月には陶工を育成する創作研修館も始動。陶芸の情報発信基地として十分機能するために交通網の整備が大きな課題として残った。(京都新聞)
■信号装置など押収 信楽鉄道惨事 きょう走行テスト 両列車 位置、進行を把握
 約460人の死傷者を出した信楽高原鉄道列車とJR臨時列車の正面衝突事故で、滋賀県警捜査本部(水口署)は16日午後、信楽駅の制御盤や小野谷信号所の信号装置を押収した。捜査本部などによると、制御盤は信楽駅構内の信号表示や列車の位置などが把握でき、出発信号野が赤になった原因の特定を急いでいる。制御盤や小野谷信号所の機器はシステムの一部のため、運び出さず、封印し、さらに検証を続ける。
 また、捜査本部は、同高原鉄道列車が信楽駅を、JR列車が貴生川駅を出発した時刻や速度、衝突点の特定を急いでいる。これは同列車の線路上の位置と進行状況をつかむことで、信号が正常に作動していたかの重要なキメ手を得られるためで、17日に両社の列車のテスト走行を実施し、制動距離などを調べる。
 一方、撤去作業は16日午後から本格化。信楽高原鉄道列車(4両)とJR列車(3両)双方をそれぞれ先頭車両の車両連結部分から切り離したあと、クレーン車で、まず「くの字」形に折れ曲がった高原鉄道列車の先頭車両をつり上げて、線路わきの国道307号のトレーラーに載せた。JRの先頭車両はガスバーナーで真っ2つに切断した後、線路わきののり面に並べられた。作業は、夜まで続けられたが、午後8時40分でいったん打ち切り、17日も引き続き行う。
 また同日夜、滋賀県警の佐々木俊雄本部長は、捜査本部で事故後初めて記者会見し「社会に多大の衝撃を与えた大事故。怒りと悲しみを胸に捜査にあたりたい」と述べた。
 この中で佐々木本部長は、事故原因の判断ポイントとして▽信号▽列車の運行実態の2点を挙げるとともに「検証、事情聴取の結果を一つ一つ検討し、原因と刑事責任を明らかにしたい」と決意を示した。
・貴生川でも2度 試験運行中に信号機が故障
 JR西日本の日高秀登事故対第本部副本部長は16日の記者会見で、4月上旬から実施した信楽高原鉄道への相互乗り入れ試験運行期間中に、JR貴生川駅を列車が出発する直前に出発信号が赤信号を表示する故障が2回発生していたことを明らかにした。
 新設した信号装置の場合、使用開始の初期段階に故障はみられるが、これまでの一般的ケースからは「多すぎるし、故障時間が長すぎると思う」と、語った。
 信号が故障したのは4月8日午後4時37分と12日午後1時40分の2回。いずれもJR貴生川駅信楽線の出発信号が赤を表示。同駅の信号を自動的にコントロールする亀山CTCセンター(三重県)で出発信号を青に変えようとしたが変わらず、方向テコも解錠不能となった。このため同センターではCTCを解除。信楽高原鉄道の信楽駅と連絡をとり、対向列車が単線上に入り込まない防御措置を代用閉そく方式で運行した。
 故障時間は8日が1時間38分、12日が7時間50分。2回とも故障の原因報告は信楽高原鉄道側からはなかった、という。(京都新聞)
■JR西日本も保安監査へ きょう運輸省
 信楽鉄道事故で、運輸省の事故対策本部は16日、事故を起こした信楽高原鉄道とJR西日本に対して、17日から2日間にわたって保安監査を実施することを決めた。
 保安監査の場所は信楽高原鉄道が滋賀県甲賀郡信楽町の本社や小野谷信号場など。JR西日本は本社をはじめ京都電車区、信楽高原鉄道と接続している貴生川駅など。
 運輸省地域交通局の溝口正仁保安・車両課長らが2班に分かれて、両社関係者から事故当時の状況について事情聴取するほか、信号システムの点検や車両の整備状況などを調査し、安全管理に手落ちがなかったか調べる。(京都新聞)
■涙誘う無邪気な遺影 中島さん葬儀
 信楽高原鉄道の列車衝突事故で亡くなった犠牲者の葬儀が、16日午後から滋賀県内などの遺族宅で相次ぎしめやかに営まれた。事故現場近くで、2歳の長男と父親を同時に失った信楽町黄瀬、会社員中島三木男さん(30)方でも、この日、2人の葬儀があり、多数の参列者の涙を誘った。
 父親の治三郎さん(63)と長男未晴ちゃん(2つ)の肉親2人を一度に失った中島さん宅の葬儀は午後2時から営まれ、近所の人や関係者ら約 200人が参列した。信楽高原鉄道社長の杉森一夫信楽町長も弔問し、霊前に向かって深々と頭を下げた。
 中島さんは親しい人に声を掛けられる度に目頭を押さえ、「思いがけない事故で今でも信じられない。悲しいです、悔しいです」とあいさつ、悲しみに打ちひしがれていた。出棺のころには、小雨も降りしきり、長女の未和ちゃん(8つ)が抱いた未晴ちゃんのかわいらしい遺影の後に小さなヒツギが続き、見送る参列者は悲しみを募らせていた。(京都新聞)
■現場を衆院委視察 稲葉知事 路線存続を要請
 死傷者458人を出した信楽鉄道事故を重く見た衆院交通安全対策特別委(長田武士委員長)のメンバー8人が16日午後、信楽入りし事故現場などを視察した。
 これより先に、事故対策本部が置かれている信楽町役場では、衆院交通対策特別委の議員を前に稲葉知事が「今回の事故は多数の犠牲者を出し、申し訳ない限りです。県としても事態を重く見て陶芸祭を中止した。事故の責任問題は別にして、苦しい状況のなかで精いっぱい頑張って運営している地方鉄道に対してご配慮いただきたい」と、県も出資している第三セクター信楽高原鉄道の存続に理解を求めた。
・78人なお入院
 滋賀県とJR西日本が16日発表したところによると、信楽高原鉄道事故で入院している負傷者は15日現在、滋賀、京都、大阪3府県の病院13ヵ所に78人(男性27人、女性51人)に上ることがわかった。集中治療室にいる重体者も2人おり、骨折などの重傷患者も多い。
 入院先と入院者数は次の通り。
 ▽大津日赤(8人)▽滋賀医大(4人)▽水口市民病院(1人)▽国立療養所紫香楽病院(28人)▽公立甲賀病院(17人)▽信楽中央病院(5人)▽済生会滋賀県病院(1人)▽京都南病院(1人)▽国立京都病院(6人)▽京都大森柄院(1人)▽京都蘇生会病院(1人)▽京都第二日赤(1人)▽生田病院(4人)(京都新聞)
■だれだ 地下鉄のごみ箱に捨てるのは 5分の1が”家庭ごみ” 野菜くず紙おむつ 張り紙も効果なし 駅、対策に苦慮
 京都市営地下鉄の駅や構内のごみ箱に、野菜くずや魚のあらなど家庭から出る生ごみが、捨てられている。夏場を迎え腐臭が周囲に充満するだけに、駅では張り紙をして利用者のモラルに訴えているが、効果は今一つ、対策に頭を痛めている。
 同地下鉄の北山−竹田間には13駅があり、コンコースや地下通路に、それぞれ10−30個のごみ箱を設置。構内の清掃は、市交通局の委託を受けた市内の2業者が分担して、毎日実施している。
 清掃会社の話では、ごみの量や内容は季節や曜日によって変化するが、13駅を合わせて毎日45リットル入りごみ袋に100袋前後という。このうち家庭ごみは約5分の1に達する。
 ごみは、黒や青の着色ごみ袋やスーパーの買い物袋に入っており、野菜くずなどの生ごみのほか過去おむつ、家具を壊した木片…と中身はさまざま。生ごみは腐臭がしたり、水分が床にたれコンコースを汚す−といったことも多く業者を困らせる。
 家庭ごみが多く投げ込まれるのは、無人改札口の周囲で、人通りが少なく死角になっている場所のごみ箱。投棄は午前中に集中、「朝のごみ回収に間に合わなかった人が、捨てていくのでは」と、清掃会社では推測している。
 「家庭のごみを捨てないで」と北大路駅や鞍馬口駅、御池駅では張り紙をしたり、巡回や収集の回数を増やす−といった対策を実施しているが、効き目はなく、市交通局は「地下鉄だけでなく、私鉄の各駅でも同様の悩みを抱えており、対策を話し合っている。妙案はなく、結局は利用者のモラルの問題だ」とごみの対策には苦慮する。(京都新聞)
■窓 応対ひどいバスの運転手 八幡市・柳舘宏実(主婦・26)
 初夏のような陽気に誘われて、先日、動物園へ行きました.仲良しママグループ3人が、それぞれ1人ずつ子供をつれて、ちょっとした遠足気分でした。京阪電車では、子供たちは喜んで他人に迷惑をおかけするようなこともなく、無事三条駅へ。そのあとバスに乗ったのですが満席で、私たちは子供をしっかり支えて乗っていくことにしました。しかし、次々と停留所で乗客はふえる一方。3歳の子供なので、抱っこすることにしました。
 それだけなら、よくある話です。ひどいのは、バスの運転。単なる右左折なのに、すごいスピードで曲がるのです。乗客は将棋倒しです。体勢をたてなおす間もあたえず、また急ブレーキです。驚いた子供のうち一人が、泣きだしました。座席にいらした紳士風の男性と、もう一人の女性が席をゆずってくださいました。
 目的地へつきましたが、なかなか前へ通してもらえません。そのとき運転席から「はようせんかい。泣いてうるさい子やホンマに」と一言。料金支払いの時に「おつりは出ますか。200円入れていいのですか」ときくと「チッ。さっさと入れろや、このーう」と、どなり声。
 ショックをうけたのは、私よりも他の2人です。地方から嫁いでこられているので「京都は観光客も多い。まして、こんな市内であんな態度じゃ、京都のイメージが悪くなる一方」と、怒っていました。
 京都の人間として、なぜか私がはずかしい思いをしてしまった一日でした。(京都新聞)
■信楽高原鉄道 4月前半、訓練中に 信号トラブル
 死者42人負傷者400人以上の列車事故を起こした滋賀・信楽高原鉄道で、JR西日本の列車が同鉄道に乗り入れるための訓練をしていた4月前半に、貴生川駅−小野谷信号所間の信号系統で今回の事故のきっかけと同じトラブルが2回発生し、列車の大幅な遅れや運休が出ていたことが16日、JR西日本事故対策本部の調べでわかった。同鉄道はトラブルが回復するまで、同区間内を赤信号にしたまま、腕章を着けた職員がタブレット(通票)の役をして運転席に添乗する方式で運転していた。
 同対策本部によると、最初のトラブルは4月8日午後4時40分ごろ、貴生川発信楽行きの列車の出発信号機が赤のままになり、出発できなくなった。信号係が調べたところ、貴生川駅構内にある信号制御盤の、小野谷−貴生川間の列車方向を決める「方向てこ」がロック状態になっていた。ただちに、同駅は信楽駅に電話連絡、小野谷−貴生川間を職員がタブレットの代わりになって乗り込み、自然回復する約2時間、運行した。
 その4日後の12日午後1時40分ごろにも貴生川駅で同じトラブルがあり、同じ方式で約8時間後に自然回復するまで運行したが、運休も2本出た。12日の場合、”人間タブレット”で運行した列車14本のうち3本は乗り入れ訓練のため、JR運転士も乗っていた。
 4月中の2回のトラブルは場所が今回の衝突事故の信楽駅側とは異なっているが、簡単な報告がJRの運行管理の指令室にあっただけ。JR本社の信号システムの専門家に報告されておらず、日高秀登JR事故対策本部副本部長は「他社のトラブルと思って、十分な報告も対策もとっていなかった。安全への関心が徹底していなかったと言われてもやむを得ない」と話している。
 信楽高原鉄道の衝突事故で、滋賀県警捜査本部は、信号系統の何らかの異常があったとの見方を強め16日、信楽駅構内と小野谷信号所の信号システムを中心に捜索と現場検証を行い、信号系統の制御盤、配電盤などの機器を押収した。事故当時の信号の表示について、同鉄道とJR西日本側の話が食い違っており、この解明を捜査の重点としている。
・衆院の調査団現場調査に
 衆議院交通安全対策特別委員会(長田武士委員長)の委員8人が16日午後、滋賀県甲賀郡信楽町で起きた信楽高原鉄道列車衝突事故現場の調査に訪れた。(朝日新聞)
■大阪各地でも犠牲者の葬儀 信楽の鉄道事故
 大阪府の各地でも、信楽高原鉄道の犠牲者の葬儀がしめやかに営まれた。
 藤目幸子さん(78)の三島郡島本町桜井四丁目の自宅では午後3時、読経の声が流れた。
 藤目さんは、京都府乙訓郡大山崎町内に住む次女(50)といっしょに世界陶器祭に出ける途中だった。次女はけがを負っただけで一命は取りとめたが、入院中で、参列できなかったという。親類の一人(60)は「親の葬式に出られない娘は、無念だとおもう。2本の列車が走っていたのが分かっていながら、あんな事故になるのか。ずさんだ」と怒りをあらわにしていた。
 高槻市奥天神町二丁目の樽井言致さん(76)、美代子さん(69)夫妻の葬儀も午後2時から自宅で営まれた。長男敏彦さん(44)は、喪主あいさつの中で「どこに行くのも一緒だった父と母。死ぬときも一緒だったのが救いだった」と話していた。(朝日新聞)
■朝鮮人学校のJR定期 「格差は差別」認める 運輸大臣
 JRを利用する朝鮮学校の児童、生徒に日本人並みの割引定期が認められていない問題で、在日朝鮮人教育団体などが16日、村岡運輸相に会見し改善を求めた。同運輸相は「これは差別だ」と明言し、改善の必要性を認めた。ただ時期については「次回の運賃改定の時までに結論を出したい」と述べるにとどまった。
 要望したのは在日朝鮮人中央教育会などの代表と、首都圏の朝鮮学校の教師、生徒、父母ら。(朝日新聞)
■JR西労組、分裂へ 臨時大会流会
 JRグループの最大労組、JR総連(16万人)との関係を断絶する方針を話し合う西日本旅客鉄道労組(大松益生委員長、3万4000人)の臨時大会が16日、大阪市西区の大阪科学技術センターで開かれる予定だったが、断絶反対派の役員が出席せず流会した。一方、断絶反対派はこの日、別の「JR西日本労組」の結成準備会(奥島彰代表)を開き、18日に吹田市で総決起集会を催すことを決めた。これにより、4年前の国鉄の分割・民営化に際して旧勤労、鉄労が結集し、発足した西日本旅客鉄道労組は再び分裂する見通しとなった。(朝日新聞)
■トピック 冷や汗ものの実演
 あっ、危ないっ。時速約40`で走る列車と、踏切を渡ろうとした乗用車が衝突。ショックでゆがむ車体。
 でも、ご安心ください。これは実際の事故ではありません。アメリカのバージニア州アレクサンドリアで開かれた「人命救助運動の日」のひとコマ。列車事故の怖さを知ってもらうための実演でした。(AP)(朝日新聞)
■神泉苑「跡地」全面発掘へ 保存 実質断念か 現状変更を申請 地下鉄東西線 研究者らに懸念 京都市文化庁へ
 京都市交通局が3年後の平安建都1200年完成を目指している地下鉄東西線の事前発掘調査で、二条城の史跡地内から平安京の神泉苑の遺構が出土、工事強行か保存かで論議となっているが、京都市はこのほど、神泉苑の推定跡地に該当する全工事区間を発掘調査するため、現状変更の許可を文化庁に申請した。
 問題の工事区間は二条城南の約600bで、二条城(旧二条離宮)の史跡に指定されている。東西線工事では堀川駅と押小路工区にあたり、京都市交通局は地上から掘り進むオープンカット工法の採用を計画。着工に先立ち、京都市埋蔵文化財研究所に委託、昨年8月から幅5b、長さ15−25bの調査折を8ヵ所にあけ、発掘調査を実施。ことし2月、平安初期の天皇の遊宴の地「神泉苑」の遺構が初めて確認され、平安京造営時の姿を伝える貴重な遺跡として注目を集めた。
 文化庁は「史跡内は現状保存が原則」と遺構の保存を求めたが、京都市側は▽調査前に深さ21bのくいを壁状に打ち込んでおり、オープンカット以外の工法は経費、工期の面で困難▽地下鉄のルート変更はできない▽遺構は道路の路面下にあり、保存しても活用が難しい−などの理由で難色を示している。
 京都市では今回の調査について「前回の調査で不明な部分を解明したい」としているが、実質的には遺構の全面的な保存を断念、重要部分に限り遺構を下から支えるパイプルーフ工法の採用などで保存し、それ以外は記録による保存とするための調査との見方もある。しかし「調査により、神泉苑の東西の範囲を示す遺構などさらに重要な資料が見つかれば、保存を求める声は現在以上に高まるはず」とする研究者の意見もあり、調査の結果次第では、京都市は苦しい立場に追い込まれそう。(京都新聞 夕刊)
■全盲の医師 転落し死亡 ホーム事故防止研究者
 17日午前零時16分ごろ、東京都杉並区浜田山、京王井の頭線浜田山駅で、同区成田西1ノ14ノ1、国立身体障害者リハビリテーションセンター非常勤研究員田中一郎さん(62)がホームから転落、吉祥寺発渋谷行き上り最終電車にはねられた。田中さんは車体とホームの間に挟まれ内臓破裂などで間もなく死亡した。
 高井戸署の調べによると、転落後線路上でホームの方を向いて立っている田中さんを電車の運転士が発見、急ブレーキをかけたが、間に合わなかった。同署は、目が不自由な田中さんが誤ってホームから転落、高さ約1.4bのホームに上がり切れなかったとみている。当時、ホーム上には乗客数人がいたが、転落に気付いたのは事故直前だったという。ホームには点字ブロックが設置されていたが、非常ベルや待避所はなかった。
 田中さんは東京医大卒の医師。病気のため約40年前から視力が低下して失明。東京女子医大助教授を経た後、昭和59年から平成元年3月まで同センター研究所感覚機能系障害研究部長を務めた。視覚障害者のホーム転落事故の防止など交通機関利用時の安全対策研究の先駆者の一人で、事故原因の分析などに情熱を燃やしていたという。(京都新聞 夕刊)
■悲しみ漂う祭りのあと 世界陶芸祭 出店、スタッフら 看板、ノポリ撤去
 世界陶芸祭閉幕後、2日目を迎えた17日、メーン会場の滋賀県・信楽町の県立陶芸の森では、通路ぎわに並んだ「世界の陶器市」などで出店業者らによる撤去作業が始まった。一方、スタッフらも町内に張りめぐらした広告看板やノボリの撤収など、祭りの後始末が一気に加速した。
 会境内の撤去件業は午前9時から始まり、出店業者らがライトバンや軽トラックで次々と乗り込み、店内の商品を整理、車に積み込んでいた。「世界の陶器市」会場で中国陶器を販売していた藤尾博さん(41)は「残り10日間の追い込み用の商品を仕入れたが、あんな事故があった以上、中止しなければならんでしょう」と、残念そうに話していた。
 また、野外ステージで照明設備などの取りはずしが行われたほか、実行委スタッフ約30人が2班に分かれて、町内の沿道などに張り出されている看板やノボリを取りはずして回った。
 一方、メーンゲートわきの前売り券払戻所も午前9時から受け付け。この日から県庁でも受け付けを始めたため、訪れる人は少なく、午前10時半までに23人に122枚を払い戻した。(京都新聞 夕刊)
■全車両撤去し走行テストへ
 滋賀県甲賀郡信楽町で14日起きた信楽高原鉄道の普通列車(4両)とJR臨時快速列車(3両)の衝突事故で、滋賀県警の捜査本部は衝突現場での検証を17日午前10時から始めた。午前中に全車両を撤去し、午後には同鉄道の車両を実際に走らせ、自動列車停止装置(ATS)の作動状況の確認、ブレーキテストなどをする。
 運輸省による保安監査も午後からで、溝口正仁・保安車両課長ら7人が事故現場、小野谷信号所など同鉄道関係、高重尚文・国有鉄道改革推進部保安課長ら4人が貴生川駅などJR関係を監査する。(朝日新聞 夕刊)
■新幹線にはねられ 中年の男性が死亡
 16日午後8時ごろ、東海道新幹線の滋賀県愛知郡愛知川町石橋付近を走っていた下り「ひかり123号」と、すれ違った上り「ひかり272号」がともに衝突音に気づいた。連絡を受けたJR東海米原施設係員が線路を点検したところ人体の一部を発見、滋賀県警に届けた。「ひかり272号」が米原駅付近で急停車して車両点検するなどして新幹線上下32本が3−13分遅れ、約2万7000人に影響した。
 調べによると、白髪交じりの中年男性がはねられたらしい。現場には高さ約3bの防音フェシスがあり、立ち入りは難しい。(京都新聞)
■信楽鉄道の衝突地点 貴生川駅から9.1` 捜査本部特定
 信楽高原鉄道列車とJR臨時列車の正面衝突事故で、滋賀県警捜査本部(水口署)は、17日朝も引き続き現場検証を行い、両列車の衝突地点を貴生川駅から9.1`付近とほぼ特定した。
 捜査本部や同高原鉄道によると、同鉄道(貴生川−信楽駅間14.7`)は、線路わきに100b間隔で鉄製表示板を設け、貴生川駅から距離を示している。両列車の先頭車両がぶつかった状態で止まっていた場所は、9.1`ポストの表示板の至近、県警は衝突地点の特定が列車の進行状況と信号機作動の異常の有無を判断するのに手がかりとなることから、両列車の重量や速度券考慮してメートル単位の詰めの作業を行っている。
 一方、運輸省は17日午後から同鉄道とJR西日本双方の保安監査を実施する。両社が運行の安全についてどんな対策をとっていたかを調べるためで、同鉄道では事故現壊や信楽駅、小野各信号所などを溝口正仁運輸省保安車両課長ら7人のメンバーが監査する。
 JR西日本では、大阪市北区の本社のほか、京都電車区などを監査、他社乗り入れの際の協定や安全体制などについて調査する。JR西日本が事故による運輸省の保安監査を受けるのは民営化後初めて。
・前売り券払い戻し
 前売り券払い戻し場所は、陶芸祭会場のほか、県庁西玄関窓口(17、18日)、滋賀銀行全支店と信楽町・信楽伝統産業会館(20日から来月30日)でも受け付ける。また、野焼き参加者の参加料(1000円)も振り込みで返還する。(京都新聞 夕刊)
18日■事故の2社に保安監査実施 信楽惨事で運輸省
 信楽高原鉄道の正面衝突事故で運輸省は17日午後、同鉄道とJR西日本双方の保安監査を実施した。
 この監査は鉄道事業法の立ち入り権に基づき「施設、車両管理など規定通り行われていたかどうか」などについて調査するもので、18日も引き続き行われる。
 信楽高原鉄道へは溝口正仁保安・車両課長らスタッフ7人が行き、信楽町長野の同鉄道本社や事故現場など3ヵ所で保安監査をした。
 溝口課長らは、本社内で広岡実総務課長ら鉄道側から運行管理や施設などの説明を受けたあと、社内の関係書類や制御盤などを念入りにチェック。続いて走行テストが行われている事故現場へ。大破した事故車両の様子などについて説明を受けたあと現場から約2.5`離れた小野谷信号所(待避所)へ向かった。
 同信号所では信号機の見通しなどを重点約にチェック。溝口課長は「事故の直接約な原因解明だけでなく、従来からの運行、教育、施設面などで事故につながる遠因はなかったか調査する」と話していた。
 一方、大阪市北区のJR西日本本社へは、同省の高重同文保安課長ら4人が訪れ、JR西日本の日高秀登事故対策副本部長らから1時間20分にわたって、運転業務内容、指揮、指令系統の実態や今回、信楽高原鉄道と取り交わした直通運転契約の内容など詳しく調べた。(京都新聞)
■信楽高原になにが起きた 列車衝突事故 理解越えた? 信号システム 3セクの合理化 脅かされる安全
 「国道307号を車で走っていたら、事故現場が見えてアッと…。後は夢中で乗客を救出していた」。事故の起きた14日午後。信楽駅の信楽高原鉄道本社で、社員の神山昇さん(55)は、上半身を負傷者の返り血で染め、放心した表情を見せた。
 この日、信楽駅では出発信号が、赤のまま変わらないトラブルが発生。神山さんは、連動している小野谷信号所の信号の確認に向かう途中で、事故現場へ行き遭う羽目となった。
 神山さんの車が出発するのとほぼ同時に、列車は赤信号のまま、ATS(列車自動停止装置)を解除して信楽駅を出た。対向のJR列車の状況を確認せずに見切り発車信楽鉄道側は事故直後、「信楽駅の出発信号が故障すれば、フェール・セーフの原則で小野谷信号所の出発信号も自動的に赤になり、JR列車は信号所内で待避していると考えていた」と、説明した。
 しかし、同鉄道の自動閉そくシステムを納入した信栄電業(本社・東京)などは「信楽駅の信号が赤のまま動かなくなっても、小野谷側の信号が青を出すことは、機器トラブルの種類によってはありうる」という。鉄道側がシステムを十分に理解していなかったことは否めない。
 一方、JR列車の運転士(48)は「信号所の信号は青だった」と証言。信号が赤なら閉じていたはずのポイント切り替え部分に無理やり通った形跡は無く、ATSも働いていないとみられることから、青信号だった可能性は高い。もし、信楽駅を列車が出たあとも小野谷側の信号が青だったとしたら、自動閉そく装置そのものの重大故障といえる。
 装置の故障説については、JR西日本が16日、「先月上旬から行った高原鉄道への乗り入れ訓練の際、二度に渡って信号故障が起きていた」と公表し、信号装置に当初から問題があったことを指摘した。また、メーカー側では人為ミスをにおわせる。
 「でも、JRの小野谷通過が信楽側の出発より早かった可能性も、まだ捨てきれない」と話す専門学者もいる。
 というのは滋賀県警が事故直後に発表したデータでは、貴生川を定刻より2分遅れの午前10時19分に出発したJR列車は、信楽側が発車したとされる10時25分にはまだ、小野谷のかなり手前にいる計算だ。ところが、線路わきに100b置きに設けられた距離標識によると、小野谷信号所は貴生川から6.5`地点で警察の発表した距離より1.5`も貴生川寄り。JR列車が高原鉄道内での平均速度(時速40`)で走れば、10時28分過ぎには小野谷へ到着する。一方、信楽側の出発時刻については「ダイヤより14分遅れの10時28分ごろ」(広岡実総務課長)との証言もある。もし、JR列車の小野谷通過の方が早ければ、青信号は当然で信号トラブルは信楽駅に限定された軽いものだった可能性がある、とその学者はいう。
 運輸省が保安監査に入った17日、あの事故で逝った信楽高原鉄道常務、奥村清一さん(61)の葬儀が信楽町多羅尾の自宅で営まれた。高原鉄道社長を務める杉森一夫・信楽町長が霊前に頭を垂れ席に戻る。その姿をテレビカメラが追った。
 資本金2億円、従業員20人の第三セクター・高原鉄道に、今回の事故は途方もない重石だ。被害者補償、亡くなった社員5人のあとの人材確保、保有車両4両のうち使えなくなった2両の手当てをどうするか…。「まず被害者対応。しかし、存続か廃止かの話は早晩出てこよう」杉森町長の表情は暗く、重い。
 高原鉄道はJR信楽線を引き継ぎ、県や地元自治体、民間が出資して昭和62年に営業開始した。旧国鉄時代は100円の収入を上げるのに500円以上の経費がかかる赤字路線。それが三セク転換後はわずかながら黒字を計上するようになったのだ。
 「さらなる飛躍を」の起爆剤のひとつが世界陶芸祭だった。事故で耳目を集める小野谷信号所(待避所)も、陶芸祭の「足」確保の一方、「輸送力増強のための施設。将来は駅舎建設を構想していた」と杉森町長。小野谷の近くには真鍮(しんちゅう)の本尊で知られる広徳寺=水口町=、「三上・田上・信楽県立自然公園」がある。従来の1日・往復31本運行から36本(陶芸祭期間中は50本)へのパワーアップの背景には「観光資源活用で地域起こし」の夢があった。
 しかし、その一方で合理化もすさまじく進められた。職員数は国鉄時代から半減、中間4駅はすべて無人化、信号系統の保守管理は外注まかせだった。そこに事故の遠因を見る人も少なくない。
 三セク鉄道問題に詳しい立命大の土居靖範教授(交通論)は「三セクはコスト削減のため極端な小人数で経営され安全面がおびやかされている。国は安全投資の補助金を設けるなど、もっと手厚い助成を考えるべきだ」と話す。(京都新聞)
■事故車両走らせ検証 県警捜査本部 双方の構造確認 ブレーキ痕 二十数b手前
 信楽高原鉄道の列車衝突事故で、現場検証を続ける滋賀県警捜査本部(水口署)は17日午後、事故の一部車両を使って走行テストを行い、車両の構造を確認した。また、ブレーキ痕から衝突した高原鉄道とJR双方の列車は、ともに衝突地点の二十数b手前でブレーキをかけていたことが分かった。
 テストは午後1時半すぎから、損傷の少ない信楽高原鉄道とJR西日本の後部車両2両ずつを使って行われ、両社の関係者も立ち会った。
 テストでは、まず、信楽高原鉄道の車両をカーブに沿って30bほど後方に移動させたうえ、小刻みに前進・後退を繰り返し、車両の構造を確認。また、双方の車両の運転席にあたる部分に捜査員が立ち、カーブを曲がって接近してくる相手がどの位置で確認できるかも繰り返し調べた。
 捜査本部では、この日のテストで、現場のカーブはかなり急で、双方が相手を確認できるのはともに100b手前になる▽事故車両のブレーキ痕は、衝突地点から、信楽高原鉄道が25b、JRが21bそれぞれ手前から認められる−などの事実をつかんだ。
 同本部は事故当時の速度については検証結果をもとに専門機関に鑑定を依頼するほか、20日すぎには運輸省の専門家を呼び、全線でレールの点検などを行うことにしている。
 現場検証がほぼ終了したのに伴い、14日の事故発生以来、通行止めとなっていた現場付近の国道307号は、17日夜に通行止めが全面解除された。
・適切な対応したい JR西日本角田社長
 17日午後、信楽町黄瀬の事故現場を訪れたJR西日本の角田達郎社長は、記者団の質問に対し「原因については警察が捜査中で詳しいことは言えないが、当面はけが人など被災者のお世話をできる範囲でさせてもらっている。今後、責任をはっきりさせ、適切な対応をしたい」と語った。
・「誠意こめ補償」滋賀県知事運輸相に陳謝
 稲葉稔滋賀県知事は17日、運輸省で村岡運輸相に会い、信楽高原鉄道の列車事故について、陳謝と今後の対策について協力を要望した。運輸相が遺族、被害者に対する補償に万全を期すよう、鉄道の最大の出資者である県に求めたのに対し、知事は「県議会とも相談し誠意をもって対応したい」と話し、鉄道存続問題については「地元と話し合って早急に決めたい」と述べた。
 冒頭、稲葉知事は「大変な事故を起こし、ご心配をかけました」と、沈痛な表情で陳謝。事故当日に現地視察した運輸相は、省内の事故対策本部で決めた緊急対策を説明、「事故原因は究明中で、信楽高原鉄道側も人的、物的に大きな損喜を出し大変だが、補償問題などよろしくお願いしたい」と、要請した。
 鉄道路線内での事故については、乗り入れ列車であっても第一義的に信楽高原鉄道側が補償責任を負うことになっており、運輸相の要請は支払い能力が不足する同鉄道への支援を県側に求めたもの。これに対し、知事は「弱小鉄道にとって大変な事態だが、誠意をもって対応したい」と答え「いろいろな問題があり、鉄道のみでは人的にも対応しづらい状況のため、関係者の支援をお願いしたい」と述べた。
 大臣室から出た知事は「人的、技術的などいろいろ力を貸してほしいとお願いした。鉄道を在続させたいが、経営上の問題とかいろいろ考えなければならない」と、運転再開への道には厳しいものがあることを示した。(京都新聞)
■乗客に愛された鉄道マン 信楽高原鉄道殉職運転士ら5人 しめやかに葬儀
 「毎日の通勤にお世話になった運転士さん。おはよう、お帰りと声を掛けていただいたのに…」。16、17日に行われた信楽高原鉄道関係者の葬儀に利用客の1人の女性から弔電が寄せられた。同鉄道は延長15`足らず、所有車両わずかに4両の松林を走る小さな鉄道。列車事故で亡くなった5人は、住民のレール在続の願いを胸に、国鉄や町役場などからそれぞれ転身、高原鉄道を支えてきた鉄道マンだった。
 列車を運転していた渕本繁さん(51)=滋賀県甲賀郡水口町三大寺=は、事故当日の14日は本来は休みだったが、出社して事故に遭った。
 高校卒業後、20歳の時に国鉄に入り、蒸気機関車、ディーゼルカー、電車と一貫して運転を担当した。昭和62年に国鉄がJRに変わる際に、別部門出向の可能性もあり、自分が走った国鉄信楽線(後の信楽高原鉄道)で運転士としての残された人生をと、同高原鉄道の開業と同時に入社した。
 昨年、JRから同鉄道に移った同僚の運転士は「彼は事故のJR車両と同タイプのディーゼルにも乗ったことがあるはず。衝突の危険を感じて非常プレーキを操作した数秒間を思うとたまらない」と、やりきれなさを語った。
 渕本さんと、旧国鉄から移った吉沢彦一さん(55)=同郡甲南町葛木=に弔電を送った同郡信楽町長野の病院検査技師中村照代さん(28)は「出勤途中に出会うと、元気よく”おはよう”と声を掛けてくれました。とてもやさしいおじさんでした。みんなで残してきた高原鉄道が、どうしてこんなことに…」と、悲しんだ。
 業務課長の中村裕昭さん(54)=三重県阿山郡伊賀町柘植=も第三セクター設立時に、旧国鉄から転身した一人。
 国鉄時代は技術畑一筋に近畿の機関区を転々とし、運転士から亀山駅助役に昇進、その技量を買われて、高原鉄道では運行責任者のポストに就き、鉄道マンの人生を歩んだ。
 「まじめな男だった。運転の腕も良かった。高原鉄道に移ったときは、張り切っていたなあ」。国鉄時代の上司(73)は「ただ、鉄道会社とは言え、わずか20人足らずの職員で、あれだけ大勢の乗客を積んだ列車を運行していたんでしょう。気まじめだっただけに、心労の重さが今でも伝わってくるようだ」と往時を懐かしんだ。
 同社常務の奥村清一さん(62)=信楽町多羅尾=は、信楽線が高原鉄道に移行する際、町役揚の信楽線対策室長を務めた。第三セクター・高原鉄道の生き字引で、その手腕を買われ同社に。社長、専務が非常勤の社内では事実上の切り回し役だった。
 役場入りのきっかけになったのは昭和28年、京都・南山城地方を飲み込み、多羅尾でも死者44人を数えた大水害だった。奥村さんは青年団長として復旧に活躍、行動力が認められたから、と地元の人はいう。
 16日の葬儀、弟の木田守さん(60)が親族代表で声を震わせた。「いくつも苦労を乗り越えた兄だった。高原鉄道も順調になってきたと喜んでいたのに…」。
 中島春男さん(54)=蒲生郡蒲生町木村=は、近江鉄道の合理化で、開業1年後の昭和63年に転職した。(京都新聞)
■窓 二重、三重に安全施策して 左京区・宮本直美(主婦・58)
 まさかと思うような信楽鉄道事故は、死者42人、負傷者449人と言う大惨事になってしまった。あめのように折り曲がった車体の中にとじ込められ、顔中血だらけになった痛々しい人、もうすでに息絶えて動かなかった人、テレビを見ていて、事故のすさまじさに、どうしてこんな恐ろしい事が起きたのか、やりきれない気持ちでいっばいであった。
 ゴールデンウイークも終わり、平日にゆっくりと家族で陶芸祭を楽しむ人々が、暗転して本当に気の毒でならない。
 事故の原因は、信号ミスによる対応の不備のように思われるが、今後の現場検証ではっきりされると思う。今まで、のんびりピストン輸送していた高原列車が、信楽陶芸祭というイベントのため、人がどっと押し寄せ、大量輸送システムに早変わりし、事故防止を図る安全指導の徹底がなされていなかったのではないか。
 人間、明日なにがあるかわからないと言うが、これでは常に住所と名前を身につけて歩かなければなるまい。明日はわが身である。なにはともあれ、このような事故はもうたくさんである。このような事故が起きないよう、二重、三重の安全対策を施すことを、JRや信楽高原鉄道に切にお願いしたい。(京都新聞)
■信楽列車事故 誤出発検知前に信号通過か 信号系に時間的すき間
 死者42人、負傷者400人以上を出した信楽高原鉄道の事故で、信号システムの構造を調べている滋賀県警の捜査本部は17日、信楽高原鉄道列車の誤出発検知が正常に作動していたとしても、JR列車がその検知直前に小野谷信号所を通過していた可能性が高いとの見方を強めた。捜査本部は、信号システムの瞬間的なすき問をつかれたことも考えられるとして、両列車の運行速度などを詰める。
 捜査本部の調べによると、信楽鉄道の信号システムは、信楽駅の出発信号A が赤のまま出発した場合、同駅から数十メートル離れた誤出発検知装置を列車が通過すれば、対向のJR列車が小野谷信号所に近づいたとき、B信号が赤に、C信号が黄色に変わり、衝突を回避する仕組み。ところが、衝突したJR列車運転士の証言では、Cは初め黄色でその後、青に変わり、Bも青だったので「変だなと思いながら信号通り進んだ」という。
 信号システムの専門家によると、信楽駅で出発信号Aの制御盤に誤って触れるなどして一瞬でも青にしたり、車両入れ替え作業のための信号系統に切り替えたりした場合、Cは黄色になる。その後、Aを赤に戻したり入れ替え信号を解除すると、BとCは青になってしまうことが分かった。しかも小野谷のB、Cの両信号が青になった後ではAは二度と青に変わらない仕組み。信楽駅ではこの状態を「出発信号故障」と誤解し、列車を手動で見切り発車させた疑いがもたれている。
 JR列車の信号所通過と、信楽駅の信号操作の混乱が偶然同時だったため、信号システムに瞬間的すき間ができた形になる。
 ただ、Bから衝突現場までは約2.5`、信楽駅から現場までは約5.7`で、JR列車の信号所通過後、信楽駅から列車が出発したにしては、衝突現場が信号所寄りすぎるとの指摘がある。しかし、JR列車は乗客が定員の2.4倍で、車両が長くて重く、上り坂だったのに対し、信楽列車は車両が軽く馬力があり、乗客も少なかったうえに、ダイヤの遅れを取り戻すためかなりスピードを出していたことが分かった。(朝日新聞)
■信楽高原鉄道 速度も出しすぎか 激しい損傷 遅れに焦り?
 信楽高原鉄道とJRの衝突事故で、滋賀県警捜査本部は17日までの調べから、事故を起こした同鉄道の普通列車が、信楽駅を赤信号なのに見切り発車しただけでなく、いつもより速度も上げて走っていたとの見方を強めた。こうしたことが大惨事につながったとみて、同日始めた走行テストなどで裏付け作業を始めた。同捜査本部は、同鉄道が急いだ理由、指示したのがだれなのかについて関係者からの事情聴取で解明する。
 信楽駅から衝突地点までの約5`にある4つの駅は、いずれも2.2`から1`と間隔がせまく、速度を上げることは無理だが、事故が起きた紫香楽宮跡−貴生川間は9.6`の最長区間になっており、スピードが出せる。
 信楽高原鉄道は通常、時速50`弱で走行するが、事故車両の先頭車がスクラップ同然になるほど激しく損傷していることや、乗客の証言などから、同鉄道は紫香楽宮跡駅を出た後はかなりの速度で走っていた可能性が強まっている。
 このため、捜査本部は、走行テストの結果や押収した運転席の機器類を分析。また、現場検証と走行テストなども合わせ、衝突時の速度の割り出しを進めている。
 事故に遭ったJR臨時快速列車は超満員となり、京都駅や大津駅などでかなりの乗客を積み残した。うち約600人が後続列車で貴生川駅まできて、信楽高原鉄道の列車を待っていた。
 捜査本部は、この乗客らを待たせまいと急いだとも考えられる、としている。
・ブレーキは正常 滋賀県警検証
 信楽高原鉄道の事故で、滋賀県警の捜査本部は17日午後1時半から、走行可能な車両それぞれ2両ずつを現場付近で実際に動かし、ブレーキやATS(自動列車停止装置)の作動状況、初めて互いの姿が見えたときの間隔などを検証した。
 捜査本部によると、ブレーキ関係は、どちらの車両も正常に作動していた。
 この日の検証では、信楽高原鉄道の運転士が相手を初めて認めたとみられる位置は、衝突現場の53b手前で、JR側からは同48b手前と、それぞれが相手に気づいた時の間隔は約100bだったことがわかった。また初めてのブレーキ痕が線路に残っているのは、同鉄道が衝突現場の25b手前、JRが21b手前だった。
・「遺族へ補償しっかりと」 運輸相が県に要請
 滋賀県・信楽高原鉄道の列車衝突事故で村岡運輸相は17日、事情説明などのため上京した稲葉稔・同県知事に、「信楽高原鉄道の筆頭株主である県として、遺族らへの補償問題にしっかり対応してほしい」と要請した。稲葉知事は「議会とも相談して誠意をもって対処する」と約束した。
・鉄道無線の運用実態 郵政省が総点検へ
 関谷郵政相は17日の閣議で、信楽高原鉄道とJR西日本列車の衝突事故を契機にして、複数の鉄道会社が相互乗り入れしている区間で鉄道無線の運用実態を総点検する、と報告した。今回の事故で、列車に搭載された無線機の使用周波数がそれぞれ異なり、お互いの列車が交信できない状態になっていたことを重大視した。(朝日新聞)
■JR京都駅改築案 こうなります 南北分断 京大建築科山崎助手が完成予想写真 「行政自ら都計を」
 JR京都駅の設計競技で最優秀作品に選ばれた東大生産技術研究所の原広司教授(54)のデザインは、実際にはどう見えるかを知るため、朝日新聞京都支局は、京都大学工学部建築学科の山崎正史助手(44)にコンピューターグラフィックスの手法を使って完成時の予想写真を作成してもらった。景観の調査と保存が専門の山崎助手は「長大な壁となって京都の南北を切り離してしまう公算が大きい」と指摘している。
 JR京都駅の南西にある新都ホテル(地上31b、10階建て)の屋上から、遠くに東山の山並みが見えるような角度で駅を撮影。この写真の上に、原さんの模型や設計図に基づいて、新しい駅ビルをコンピューターで合成した。この結果、京都タワーの展望室(地上約100b)より高い部分を除いて、北側への視界はさえぎられた。
 山崎助手は「今、京都で最大級の建物である大丸京都店より4倍以上大きい。しかも長さが東西460bに渡って延びているため、長大な印象を与えることになろう」と推測している。
 その上で、改築の問題点として@駅ビルを境にして京都の景観が南北に分断されるA新幹線ホームのある八条口は改築の対象外であるため、北が保全で南は開発、という市の構想とは逆に、北側に開発の顔が向くことになる−と指摘する。
 山崎助手は、この予想写真をもとに「このまま建設が認められれば、行政が自ら都市計画を否定することになる。建物の9割以上が商業施設なのに公共性を強調し、建都1200年記念事業と銘打つことには疑問を感じる」と話している。(朝日新聞)
■読者プラザ 客を乗せずに市バスは発車 上京区 村上 明(会社員 57歳)
 先週の金曜日(5月10日)帰宅のため、いつもの四条河原町のバス停Hで37系統上賀茂車庫行のバスを待っていました。バスは20時15分、ほぼ定刻通りに来ましたが、前に別のバスが止まっていたため、バス停の手前で客を降ろしました。どうしたことか、そのまま客を乗せずに、出てしまいました。
 そのバスは蛸薬師の信号が赤になったため、先のバスの後に並んで止まりました。数人の人と一緒にバスまで走って追いつきました。外からバスのドアをたたき乗せてくれるように頼んだが、運転手は「乗る所が違っています」といって走り去ったのです。私たちは憤慨しました。
 私は所轄の営業所(西賀茂)を調べ、電話で事情を説明しました。日ごろ、時間が遅れているためか、客が走り寄っても乗せようともせずに行ってしまう光景も何度も見ています。中には親切で丁寧な運転手さんもいますが、民間に比べて、応対もぞんざいな場合が多いように思います。交通局の運転手に対する指導はどうなっているのでしょうか。
 市バス西賀茂営業所の話 当日のバス乗務員に事情を聴いたところ、客は乗せたといっています。しかし、苦情は男性からだけでなく、女性からもありました。これでは客を乗せたことにはならないと、乗務員に厳しく注意しました。乗降客の確認を徹底するよう指導します。(朝日新聞)
■JR西日本 安全綱領変更していた 遅れたら処罰 民営化で効率優先 信楽鉄道事故 青信号で停車 運転士には判断余地なし
 信楽鉄道事故で、JR快速列車の運転士が擦れ違い列車が来ないことを疑問に思いながらもそのまま運転したことが事故の一因になったが、JR西日本が4年前の民営化の際に、運転士が自分の判断で列車を止めることができないように安全綱領の条文を変えていたことが18日分かった。信号が青なのに安全確認のため停車し列車が遅れると、運転士は処罰されることになり、こうしたJRの定時運転優先の姿勢が事故の背景にあるといえそうだ。
 同社などによると、輸送の安全を守るための安全綱領は、国鉄時代には5つの条文から成っていた。その中には「疑わしいときは、手落ちなく考えて、最も安全と認められるみちを採らなければならない」とあり、運転士は安全に疑問を持ったら停車することが許されていた。
 今回の事故では、快速列車の運転士が擦れ違い区間に来た時「対向列車が待避線にいないためトラブルかと思ったが、そのまま行った」と話している。その時点で停車し、沿線に500bごとに設置されている電話で貴生川駅などに問い合わせていれば、対向列車が来ていることが分かり、惨事は防げた。
 ところがJR西日本になって綱領の条文は3つに減り、この条文はなくなった。運転士は信号に従って進まなければならず、電話をかけたりして列車を遅らせると乗務停止などの処分を受ける可能性が高いことから、疑問を残したまま運転を続けることになる。
 安全綱領は、国鉄時代は定期約に職員に唱和させるなど徹底していたが、JRになってからは新たにできた「経営理念」の文章が強調され、社員手帳にもない綱領の存在さえ知らない職員も多くなっている。
 国労西日本の人見美喜男委員長は「国鉄時代だったら停車して安全を確認しただろう。JRの経営方針から起こるべくして起きた事故だ」と話している。(京都新聞 夕刊)
■新たに検知器2基を押収
 信楽高原鉄道で起きた列車の正面衝突事故で、滋賀県警捜査本部(水口署)は17日深夜、小野谷信号所近くに設置されている接近検知器2基を新たに押収した。
 捜査本部によると、接近検知器は、同信号所から貴生川駅寄り680b、信楽駅寄り740bの2地点に設置。列車の進行をキャッチすると、小野谷信号所内の継電設備(リレー室)に情報を送り、同信号所両側の単線区間内にある場内信号と信号所内の複線部分にある上り下り列車の出発信号が作動する仕組み。
 県警の今回の押収は信号系統の異常の有無を解明する捜査の一環として行った。(京都新聞 夕刊)
■来月16日に合同慰霊祭 県が意向 信楽町民体育館で
 滋賀県議会(伊夫貴直彰議長)は、18日午前9時半から県庁議員室で、緊急の全員協議会を開き、死傷者470人を出した信楽高原鉄道の列車事故について県事故対策本部の報告を受けた。この中で県は、42人の犠牲者の合同慰霊祭を6月16日に信楽町民体育館で開く意向を明らかにした。
 協議会では冒頭、全員起立して1分間の黙とう、42人の犠牲者のめい福を祈った。また、協議会に先立って信楽高原鉄道社長の杉森一夫信楽町長が「県民、ご遺族、負傷者のみなさんに心かららおわびします。高原鉄道も職員20人中5人の犠牲者を出し、仮死状態にあるが、率先して対応していくので、ご協力をお願いします」と改めて陳謝した。稲葉稔知事も「ご遺族の方に万全の誠意をもって臨みたい」とあいさつ。
 このあと、列車事故の概要について岩波忠夫事故対策本部長(副知事)らが報告、県、信楽町、信楽高原鉄道、JR西日本4者による合同慰霊祭と6月16日に信楽町民体育館で開く予定であることを明らかにした。時間など詳細は今後、4者で詰めていきたいとしている。また、岩波本部長は「信楽高原鉄道や信楽町に対する具体的な支援策を急いで詰めていきたい」と述べた。(京都新聞 夕刊)
■夕刊ひろば 乗り合わせ軽傷、補償は 「全容把握へ 連絡をすぐ」
 今月14日に起こった滋賀県・信楽高原鉄道の列車衝突事故で、JR快速の3両目に乗り合わせていました。
 事故の衝撃はものすごく、倒れたあと、何人もの人が乗りかかってきました。幸い、足などに軽いけがをしただけで、とりあえず友達と近くの国立療養所紫香楽病院へ行きましたが、人数が多く、軽傷者の診察は無理、とのこと。カルテに名前などを記入し、そのコピーを持って別の病院へ行ってほしい、と言われました。
 私たちは、陶芸祭見物も取りやめ、タクシーに乗って京都まで帰り、市内の病院で診察、治療をしてもらいました。タクシーの運転手は「けがの補償やタクシー代の返還もしてくれるでしょう」と教えてくださり、領収書も出してもらいました。
 果たしてタクシー代の返還や補償はしてもらえるのでしょうか。鉄道関係者に事故にあったことをしらせず、現場近くで治繚を受けていない人も多いのでは(京都市上京区、主婦・森脇悦子さん・52)
 信楽町の事故対策本部、JR西日本ともに「何らかの申告のある方には対応させてもらいます。事故にあわれて、何の連絡もしていない人は、すぐに連絡してください」と言っています。連絡先は、信楽町の事故対策本部は町役場 0748(82)1121へ。JRは最寄りの駅に申告してもらえれば、本社に伝える、と説明していました。
 森脇さんの場合、紫香楽病院で名前などを書いておられるので、町もJRも事故に遭遇したことは把握しているはずですから、その点は問題ないでしょう、ということです。
 補償関係について、町は「治療費や交通費は、できるだけ調べて支払います。領収書などを残しておいていただき、後日、届けてくだされば結構です。場合によっては、お宅までよせてもらいます」と答えていますし、JRも「とりあえずは立て替えておいていただき、あとから対応させていただきます」とのこと。JRの話では、事故にあった人の把握はかなりできているようで、見舞いも始めているそうです。
 これとは別に、滋賀県警も事故の状況を把握する必要から「水口署内の捜査本部へ届け出てください」と話していました。(京都新聞 夕刊)
■合同葬来月16日 信楽惨事
 死者42人、負傷者428人を出した信楽高原鉄道列車事故に関連して、滋賀県議会は18日、全員協議会を開き、稲葉稔県知事がJR西日本、同鉄道、信楽町、県の4者で6月16日に合同葬儀を信楽町民体育館で営む予定を明らかにした。
 また、知事は「信楽高原鉄道は社員20人のうち5人が犠牲になり、人的、物的に壊滅的な被害を受けている。県としてしっかり支える必要がある」と、補償問題について積極的に支援することを初めて発言した。
 出席した同鉄道社長の杉森一夫・同県甲賀郡信楽町長は「町は遺族や負傷者への対応に当たっており、後のことを考える余地はない。信楽鉄道は仮死状態であり、県や議会の協力を得たい」と話した。
・多重安全装置取り入れず 信楽高原鉄道
 信楽高原鉄道事故で、信楽駅の誤出発検知装置の作動状態が原因調査の焦点になっているが、同装置が作動しない場合に備えて、フエイルセーフ(多重安全装置)としてJRが昨年秋に提案していたシステムを、信楽高原鉄道側が採用していなかったことが、18日わかった。同駅でこのシステムを操作すれば、対向列車への信号が赤になる仕組みで、事故を回避できた可能性も高く、見切り発車した事故責任に加えて、同鉄道会社の安全責任が問われそうだ。
・乗客を中心に聞き込み捜査
 死者42人、負傷者400人以上を出した滋賀県甲賀郡信楽町、信楽高原鉄道の事故を調べている同県警捜査本部は17日までにほぼ現場検証を終え、18日朝から約200人の捜査員を動員し、事故当時の状況確認のため、けがの程度の軽い乗客約400人を中心に本格的な聞き込み捜査を始めた。捜査本部によると、事故当時、JRの車両は超満員の状態で、正確な乗客数もっかみきれていない。ほとんどが県外からの乗客だったこともあって要所ごとの通過時間の確認がかなり難しいという。
・貴生川駅を保安監査
 信楽高原鉄道列車事故で、運輸省と近畿運輸管理局は18日も朝から、JR草津線から信楽高原鉄道への乗り入れ口となる貴生川駅を新たに保安監査した。(朝日新聞 夕刊)
19日■当分バス代行続行 信楽高原鉄道 臨時取締役会 初の顧問制導入
 14日の大惨事で会社幹部と運転士ら5人を失った信楽高原鉄道は18日、滋賀県・信楽町役場で臨時取締役会と株主総会を開き、役員改選を行ったあと、役員会で列車運休に伴う代行バス運行や社内体制の立て直しなど、当面する課題などについて協議した。
 この結果、新たに顧問3人を決めたほか、当分の間、現在の代行バス体制を続行することなどを決めた。
 この日の取締役会で、地元の岩永峯一(信楽町)、丸山省三(水口町)の両県議と今井恵之助信楽町会議長を顧問に委嘱した。同社が顧問制度を導入するのは初めて。続いて開かれた総会では、県の人事異動に伴う役員改選で、花房県生活環境郡長を選任した。
 現在、同社の役員は、先の事故で奥村清一常務が亡くなっており、社長の杉森一夫町長、副社長の林田久一水口町長、専務、取締役ら8人と監査役3人の計11人となっている。
 このあと、役員会を開き、常務と運転士3人を含む計5人を失って、17人体制となった職員の補充と、鉄道の代行バスについて、当分の間、JRなどのバス8台を確保。鉄道ダイヤ通り、1日往復36便の運行をしていくことを決めた。
 役員会のあと、記者会見にのぞんだ杉森社長は「会社が仮死状態にあるので、心機一転して安全管理を十分考えて新会社をつくる気でがんばりたい」と再建に意欲をみせた。(京都新聞)
■JR西労組が分裂へ 総連脱退反対派 23日に新労組を結成
 JR総連からの脱退問題で揺れているJR西労組(大松益生委員長、3万4000人)のうち脱退反対派が18日、「JR総連に結集するJR西労結成総決起集会」を大阪府吹田市で開き、23日に新労組を結成することを決めた。これでJR西労組の分裂が事実上決まった。JR労組の分裂は、国鉄の金利、民営化後全国で初めて。
 同労組ではこの1年、スト権論議などを通じて大松委員長らの旧鉄労系と旧動労系が対立。今年2月、動労系が主導権を握るとされるJR総連からの脱退を提起して以来、亀裂、中央委や大会が成立しない状態が続いていた。
 この日の集会には全国からの支援も含め2000人が参加。新労組結成準備会の代表が、会社による組合活動への介入の例を挙げながら「JR西労組は大松委員長らによって御用組合に変質させられた」と脱退派を批判。「ほうっておけば一にも二にも効率化最優先の会社に対して、きっちりと安全第一の姿勢を貫かせるのは労組しかない。JR西労組を当たり前の労組として再建しよう」と呼びかけた。
 新労組名は「JR西日本労働組合(略称・JR西労)」となる予定。当面、組合員5000人の獲得を目指す。(京都新聞)
■「安全意識やや欠けた」運輸省が保安監査 信楽鉄道の甘さ指摘
 信楽高原鉄道の列車衝突事故で運輸省は18日、前日に引き続いて同鉄道の保安監査を実施。同日午後1時までに監査の全日程を終えた溝口正仁保安・車両課長は記者団の質問に答え「残された資料から、安全意識に欠けている点が若干みられた」と、信楽高原鉄道の管理運営の甘さを指摘。「しかし、書類などの資料が不足しているため、講評できなかった」と、述べた。
 この日は午前10時から溝口課長らスタッフ7人が同鉄道の貴生川駅と信楽駅の2ヵ所で保安監査。関係書類などを入念にチェックした。途中、信楽町役場に立ち寄り、町長室を監査し、社長の杉森一夫野長から事情聴取。「同鉄道の幹部社員が死亡しているうえ、関係書類が県警に押収され、十分な監査ができなかったため講評は保留する」と、伝えた。
 信楽高原鉄道本社の保安監査のあと、溝口課長は信楽駅前で「代用閉そくの取り扱いで、過去にも基本が守られていない例があり、安全意識に欠ける点があったようだ」と指摘。「(信楽高原鉄道)JRとの関係がもっと密接だったらなあ」と、語った。また、JR西日本に対する監査もこの日終了したが、講評はなかった。同鉄道とJR西日本の今後の監査は、近畿運輸局を中心に調査を進める方針。(京都新聞)
■犠牲者悼み現場に祭壇
 死者42人を出した信楽高原鉄道の列車衝突事故現場(滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬)近くに18日、仮設祭壇が設けられ、遺族や近くの人らが訪れ、悲しみを新たにしていた。
 祭壇は、木製で高さ1.5b、幅1.0b、奥行き0.5b。信楽町事故対策本部が亡くなった犠牲者のめい福を祈り設けた。
 午前11時すぎ、同町宮町、法性寺の桶田善弘住職の読経が響くなか、宴に居合わせた町職員ら関係者が焼香。このあとも遺族や現場を通りかかったドライバーが車を止め祭壇前で合掌していた。祭壇は1ヵ月くらい設けられる。(京都新聞)
■見舞金用の銀行口座開設 信楽町の事故対策本部
 信楽町信楽高原鉄道列車事故対策太部(本部長・杉森一夫町長)は、事故後、全国から寄せられる見舞金などの善意に対処するため、滋賀銀行信楽支店に普通預金口座を開設した。
 惨事以降、同町役場には見舞金などの問い合わせが相次ぎ、これまでに5件約5万6000円が寄せられている。
 寄せられた見舞金などは今後、死傷者への弔慰金や見舞金、高原鉄道のために使っていく予定。振り込み先は▽口座番号=普通預金257569▽住所=〒529-18滋賀県甲賀郡信楽町長野1203▽あて名=信楽町信楽高原鉄道列車事故対策本部 本部長杉森一夫。(京都新聞)
■見舞金総額1000万円 JR西日本が支払う
 JR西日本の角田達郎社長は18日、記者会見し、信楽高原鉄道事故の被害者に対して総額1000万円程度の見舞金を同日までに支払ったことを明らかにした。
 見舞金として死者10万円、負傷者(入院中)3万円、その他の負傷者に1万円が支払われた。また、同社長は、「入院中の負債者の治寮費など必要な諸経貴についても用立てる」などと述べた。(京都新聞)
■信楽高原になにが起きた 列車衝突事故 13人中11人犠牲 その時、乗客ら先頭車に 高原鉄道列車 負傷の車掌彗代行証言
 信楽高原鉄道列車とJR列車の正面衝突事故で、滋賀県捜査本部(水口署)は18日までに、高原鉄道列車に乗っていた鉄道関係者6人(うち5人死亡)の中で、負傷して入院中の同鉄道旅行センター勤務田原稲生さん(26)から詳細な事情聴取を行った。その結果、乗っていたのは乗客八人と運転士ら6人の計14人で、2両目にいた田原さんを除く13人は先頭車両に乗車し、その座席位置が分かった。
 捜査本部などによると、田原さんは本来、信楽駅構内の旅行センターの担当。同鉄道列車は本来、運転士1人だけのワンマン車だが、3両以上の編成の時は、雲井駅や紫香楽宮跡駅など貴生川駅までの途中4駅のホームが2両目までしかないため、時折、田原さんが車掌代行として乗務し、途中駅で3、4両目のドアが開かないよう操作したり、車丙で料金を徴収していた。
 事故当日の14日は午前10時14分発の列車に乗務。車内にいたが、駅の出発信号が赤で出発しないため、いったん旅行センターに戻り、発車間際に車内に入った。駅構内の指令室などで社員があわただしく動いているのは感じたが、どんな経緯で発車したかは分からない、という。
 信楽駅を発車した時は、乗客は4人、乗務員は渕本繋運転士、奥村清一常務、中村裕昭業務課長、中島春男社員、吉沢彦一社員、それに田原さんの6人の計10人。玉桂寺、勅旨駅は停車したが乗る人がなく、雲井駅で中島治三郎さん=当時(63)、死亡=と妻のイトさん(66)=入院中=、孫の未晴ちゃん=当時(2つ)、死亡=ら4人の乗客が乗車し、計14人となった。
 雲井駅で、中島治三郎さんは「今日は列車が遅れたから(料金は)安くなるのか」と冗談を言いながら乗車。田原さんは4人の乗客から料金をもらい、運転室横の料金箱に入れた。紫香楽宮跡駅では新たに乗る人はなく、貴生川駅で3、4両目のドアも一斉に開くよう操作するために、先頭車両から2両目に移って10歩ほど歩いた時に、けたたましい警笛が2度鳴り、列車が衝突した、という。
 田原さんは「1両目から2両目に移る時、1両目の後部に座っていた中島未晴ちゃんに『今日はおじいちゃん、おばあちゃんにどこかへ連れて行ってもらうのか』と声をかけた時、ニコニコ笑った表情がまぶたに焼きついている。車掌代行として40回ぐらい乗務したが、列車のスピードはふだんと変わらず40`ぐらいの感じだった。乗客のなかった途中駅ではドアの開閉が少し早いかなと思った」と話している。(京都新聞)
■走れニュートレイン〈6〉 スーパーホワイトアロー JR北海道 ゆったり、風景一望
 札幌と旭川間のJR函館線は北海道の幹線で、多くの通勤通学列車や特急列車が走り、交流電化されている。
 この区間はエル特急「ライラック」「ホワイトアロー」などの特急電車がビジネス客などに利用されてきた。そして平成2年秋、道央自動車道が旭川まで開通すると、JR北海道はスピードアップとサービス向上のために、新型特急783系「スーパーホワイトアロー」をエル特急で走らせた。
 この電車はインバーター制御のハイテク電車で、最高時速は北海道初の130`運転。札幌−旭川間約136`を1時間20分で結び、JR特急の中でも俊足を誇る。
 外観はステンレス製で最近の特急電車のスタイルとしてはシンプルだが、前面の下郡がふっくらした特徴ある形をしている。そのためか北海道の子供たちからアンパンマン電車として親しまれている。
 ヘッドマークはLED表示で、JR北海道のマークと列車名が交互に表示される。車内はすべて普通車座席のみだが、座席間隔が広いのでゆったり座れる。JR北海道の開発コンセプトは「落ち着き、清潔感」という。車内は明るい色で統一され、窓も大きくなり北海道の風景が楽しめる。
 「スーパーホワイトアロー」はほぼ一時間間隔で運転され、札幌、旭川発車は毎時ジャストの発車時間である。
 停車駅は岩見沢、滝川、深川で、その間をエル特急「ライラック」が停車駅をさらに増やして走る。(鉄道写真家・南 正時)
 〈メモ〉指定席特急料金とも片道4410円。しかし、往復割引切符(指定席用R 切符5420円、自由席用S切符4420円)が格安。(京都新聞)
■JR西労組 分裂状態に
 JR西日本の最大労組、西日本旅客鉄道労組(略称・JR西労組、3万4000人)の大松益生委員長が、上部団体のJR総連(16万人)との関係断絶を提起したことに始まるJR西労組の内部対立問題で、断絶反対派は18日午後、吹田市のメイシアターで「JR総連に結集するJR西労結成総決起集会」を開いた。
 約2000人(主催者発表)が参加。JR西労組とは別の「JR西日本労組」(略称・JR西労)の結成大会を23日に開くことを確認した。これにより旧動労、鉄労が集まって発足した西日本旅客鉄道労組は、結成後4年で事実上、分裂した。
 断絶反対派のJR西労結成準備会(奥島彰代表)によると、JR西労には現在、約5000人が参加する見通しだという。結成大会は23日午後1時から、大阪市浪速区の部落解放センターである。(朝日新聞)
■ワールドビュー 韓国 新幹線の来年着工固まる 日独仏で受注合戦へ
 ソウルと釜山を約1時間半で走る韓国版新幹線計画が来年6月、試験線着工することになり、1998年の開通めざして本格的に動き出す。
 この「京釜高速電鉄」は総延長400`余り。ソウル、天安、大田、大邱、国際観光地の慶州、そして釜山を時速300`の高速列車で結ぶ。天安と忠清北道の清州間に支線も敷設する。
 昨年6月、韓国交通省が路線を決定。年末までに高速鉄道技術を持つ日本、仏、独のいずれから技術を導入するか、決める予定だった。が、輸出の鈍化など韓国経済に影がさすなかで、総額5兆8000余億ウォン(1兆1000余億円)もの大事業に経済界から「時期尚早」との声も出た。政府部内でも財源難を理由に「延期やむなし」の意見が強まり、計画は一時スピードダウンの様相を見せた。
 しかし、韓国としてはソウル五輪に次ぐ国家的な大プロジェクトだけに、慮泰愚大統領は先月、「来年初めに着工するよう」指示した。これを受けて、韓国鉄道庁の高速電鉄事業企画団は16日、来年6月に天安−大田間60`の試験線の工事を始めて、95年末までに完成させ、これと並行して他の区間の工事も計画通り98年内に終えると発表した。
 同事業企画団は、各国への入札要請書(BFP )を7月に送り、遅くとも92年末までには技術導入先を決める方針だ。
 日本は日韓閣僚会議などを通じて「協力」を約束。今月初めに訪韓したロカール仏首相(当時)は「財源確保の方策を韓国側に提案した」(韓国紙)という。ドイツはワイツゼッカー大統領が2月に韓国を訪れた際は、独ハイテク展示会をソウルで開き、技術力を誇示した。
 韓国側は、建設費の3割程度の資金協力を「技術供与国から受けることが、発注先決定の条件だ」と表明している。同企画団の金鍾球団長は「各国とも口では協力を申し出るが、具体化はこれから」という。が、試験線着工が決まり、各国の受注競争に拍車がかかりそうだ。
 林寅沢交通相は「21世紀へ向けて、京釜高速電鉄は中ソ、欧州と結ぶ大陸鉄道網の一環をなす」点を強調。仁川沖に計画している新国際空港とも連結して、アジア・太平洋の交通の中心地を築くと、大きな夢を描いている。(ソウル・小田川 興)(朝日新聞)
■運輸局職員出迎え 「遅れ取り戻せ」速度アップ 信楽事故 ”臨時乗務員”が証言
 滋賀県甲賀郡信楽町で起きた信楽高原鉄道の衝突事故で、同鉄道の普通列車には、近畿運輸局職員を貴生川駅まで迎えに行くために鉄道幹部が乗り込み、出発時間の遅れを取り戻すため、スピードを上げていたことが16日、”臨時乗務員”として乗り合わせた同鉄道旅行センター職員(25)の証言で裏付けられた。
 この職員は事故で頭や両手、首などに3週間のけがを負い、信楽町内の病院で入院治療中。証言によると、事故前日の13日夕、奥村清一同社常務ら上司3人から「あすは近畿運輸局の人たちが来られ、忙しいので、人手が足りない。(乗務員として)2、3回乗ってくれ」との指示を受けた。
 同鉄道は、通常はワンマンの1両編成だが、「3両以上連結する場合は後部に運転士をもう1人乗せて運行してきた」(広岡実総務課長)。ところが、この日は出迎えの中に運転士2人が含まれていたため、手が足りなくなり、この職員が引っ張りだされたらしい。
 ふだんは旅行あっせん業務を担当していた。「世界陶芸祭」が開催されてからは、車両が増結され、運転士以外に乗員が必要な場合、列車に乗務。ホームが短く、後部の3、4両目がはみ出す中間駅では、運転室で操作しても後部2両のドアが開かないよう開閉装置をロックする仕事までしていた。
 証言によると、出発が遅れたのに気づいた。ホームから「もう出るぞ」との声が聞こえ、列車が動き出した。列車はふだんの「時速約50`未満」を超えた約60`の速度で進行、遅れを取り戻すのに躍起だった。紫香楽宮跡駅に到着直後、この職員は乗客から1人300円の運賃を徴収した。
 この後、3、4両目のドア開閉装置のロックを外すため1両目から2両目に移り、10歩ほど歩いたところで激しい衝撃を受け、通路に倒れ座席下の支柱にしがみついた、という。
 運輸省によると、ドアの開閉や運賃の徴収だけなら鉄道運転規則にも触れないが、旅行センター職員を動員してまでの「無理な運行」が事故の背景にあったことは間違いないようだ。
・「人為ミス」重なる 運輸省の監査終了
 運輸省は17、18両日、信楽高原鉄道とJR双方の保安監査をした結果、信楽鉄道側に安全意識の欠如があり、人為的なミスも重なって事故が起きた、との見方を強めた。
 18日は運輸省の高重尚文保安課長ら11人が貴生川駅を訪れ、乗り入れをめぐっての運行取り決めなどについて説明を求めた。貴生川駅構内の信号機を集中制御している三重県亀山市のJR西日本運行管理部亀山指令所も監査し、信号トラブルと同指令所の信号操作との関係などを調べた。
 信楽高原鉄道側の保安監査を担当した溝口正仁・保安・車両課長は「関係者が警察の事情聴取中で、設備や書類も押収しており、原因解明は困難」としながらも、「運行マニュアル通りやっておれは事故は防げた」との見方を示した。
・入院費用などJR立て替え 西日本社長会見
 JR西日本の角田達郎社長は18日、大阪市の同本社内で信楽高原鉄道事故後、初めて記者会見し、事故の被災者に入院費など当面の諸経費をすべてJR側で立て替えるよう社員に指示したことを明らかにした。しかし、運行責任は信楽高原鉄道側にあり、原因と事故責任の確定後、原因者に請求するとしている。
 角田社長は「現にJRの車両に乗ったお客様が大変な被害を受けたのだから、病院の経費や自動車代、電話代などもろもろの必要経費はJRが立て替える」と説明した。(朝日新聞)
20日■遺族ら次々供養 怒りと悲しみ、交錯させ 事故後初の日曜
 滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬の列車衝突現場は19日、悲惨な事故後の初めての日曜日となり、多くの遺族らが花束などを手に供養に訪れた。
 現場近くに設けられた祭壇には、朝から遺族や親せきの人たち約200人が次々と足を運び、線香をたむけ、花束や果物、ビールを供え、手を合わせていた。
 現場の線路わきには、無残にこわれた事故車両がまだ置かれており、遺族らはやり場のない怒りと悲しみの気持ちを交錯させていた。
・現場を視察 参院運輸常任委調査団
 死傷者458人を出す大惨事となった信楽高原鉄道の列車事故を重視した参議院運輸常任委(中川嘉美委員長、9人)の調査団が19日午後、信楽町入りし、事故現場などを視察した。
 町役場を訪れた一行は、稲葉稔知事や杉森一夫信楽町長らから事故の概要説明を聞いた後、引き続きJR西日本の角田達郎社長らから事故の説明、JRの対応などを聞いた。
 この後、同町黄瀬の事故現場を訪れた一行は、つぶれた事故車両を前に、衝突のすさまじさを改めて認識した。
 視察を終えた中川委員長は「緊急時の応対のまずさ、(双方の)連絡システムの不備や、営業利益を優先した時にこういう事故が起こる」と指摘。今月30日に開く常任委で、原因をただし、今後の安全対策の確立を図りたい、とした。また、信楽高原鉄道の存続問題については、同社の社員5人が死亡、保有車両も4両のうち2両が使用不能になった点をあげ「人的、物理的にも現実には在続には困難なものがある」と話した。
・指令室などを検証 警察庁の鑑識係員ら
 信楽高原鉄道の列車衝突事故で19日、警察庁と近畿管区警察局の鑑識係員らが現地入りし、滋賀県警の捜査員とともに事故現場や信楽駅の指令室などの検証を行った。
 電気系統に詳しい鑑識係員ら約15人は、信号設備や同鉄道とJR列車のATS (自動列車停止装置)などを念入りにチェックした。(京都新聞)
■信楽高原になにが起きた 列車衝突事故 すでに1週間 人為的か機器の故障か 検証重ね究明急ぐ
 滋賀県甲賀郡の信楽高原鉄道(真生川−信楽間、14.75`)で、京都発信楽行きJR臨時列車と信楽発貴生川行き同高原鉄道列車が正面衝突し、死者42人、負傷者416人を出した大惨事は、20日で発生から1週間となる。滋賀県警捜査本部(水口署)の調べや同鉄道、JR関係者らの証言をもとに、事故原因につながるいくつかのポイントに追ってみた。
 これまでの捜査や現場検証の結果、判明したのは▽同鉄道は信楽駅を午前10時14分発だったが、駅構内の出発信号Aは赤の表示。赤のままだとATS(自動列車停止装置)が作動して発車できないため、ATSを解除して手旗信号で出発した▽同列車の衝突地点は、貴生川駅から9.03`、信楽駅からは5.72`で、貴生川−紫香楽宮跡駅間にある行き違い設備(複線部分)の」小野谷信号所からは2.5`の場所▽高原鉄道列車とJR列車の無線の互換性がないこと−など。
 事故原因を探る前提となるのは、同列車の衝突時刻と発車時刻。時刻を特定し、推定速度が明らかになれば、列車の進行状況が把握できて、原因分析の手がかりが得られる。
 JR西日本の説明では、JR臨時列車は貴生川駅を午前10時16分発だったが、満員状態で乗り降りに混雑したこともあり、定刻より2分遅れの同10時18分に発車した。また、信楽高原鉄道から、貴生川駅のJR助役に「(同鉄道列車は)10分遅れで信楽駅を出発した」との電話があり、助役はJR草津線(草津−柘植駅)などを管轄する三重県亀山市の運行管理部亀山指令所へ「(草津線の)列車の接続を調整してほしい」という内容の連絡をした、という。
 また衝突時刻はJR先頭車両に乗っていた枚方市内の会社員(30)が「信楽駅にダイヤ通りなら10時38分に着くと知っていたので、もう間もなく着くのかなと時計を見たら10時35分を指しており、その直後に衝突した」と証言。また、県警が一般人から 110番受理したのは午前10時40分となっており、捜査本部も衝突時刻を午前10時35分ごろと推定している。
 仮に説明や推定が正しいとすれば、JR列車は貴生川駅を午前10時18分に出発。衝突時刻の10時35分までは17分間、衝突地点9.03`までを平均1分間当たり約531bのペースで進む計算。小野谷信号所を出て単線になる地点は貴生川駅から約6.6`で、このペースで進むと午前10時30分数十秒前後には、小野谷信号所を通過することになる。
 ところで、信楽駅には、ホームから数十bのところに出発検知機があり、列車がここを通過すれば、小野谷信号所のJR列車の出発信号Bは赤になる仕組み。同高原鉄道列車の発車は午前10時25分までには行われており、検知機とリレー装置が正常に作動していれば、同高原鉄道列車が発車した10時25分すぎには、信号所の出発信号Bは赤にならなければならない。
 しかし、JR列車の運転士は「信号所の出発信号(B)は青だった」と証言。今後、鑑定の結果、JR列車のATSが解除されていなければ、「青」の可能性は高まり、信楽駅の出発検知機やリレー装置が故障したか、信楽駅で係員らが点検作業中に異常が発生した可能性が強まる。
 入念に現場検証を続ける捜査本部は「一つ一つ事実を積み上げて、専門機関の鑑定を得て、原因を突き止めたい」としており、最終約に原因が特定されるまでには、時間がかかりそうだ。(京都新聞)
■京阪と乗用車衝突 東山の京津線 バスまきぞえ
 19日午後3時半ごろ、京都市東山区三条通東大路西入ルで、京阪電鉄京津線の三条行き準急電車=渡辺晃運転士(37)、2両編成=と、豊岡市加広町、自営業小川昌孝さん(48)の乗用車が衝突した。はずみで、乗用車は、バス停に停車中の市バスに追突し、大破した。乗用車の助手席で母親に抱かれていた小川さんの長男啓輔ちゃん(3つ)が顔に軽いけがをした。
 松原署は、三条通の路面軌道上へ入った乗用車が、電車の警笛に驚いて急停車したところへ電車が追突した、とみて、当事者らから事情を聴いている。
 電車には約150人の乗客があり、間もなく運行を再開。市バスは乗客約50人を、後続バスなどに移して対応した。三条通の西行車線が約1時間通行止めとなり、日曜の午後ともあいまって、周辺道路はふだん以上に渋滞した。(京都新聞)
■東京駅発着指定券 きょう発売 東北・上越新幹線
 東北・上越新幹線東京−上野間3.6`の開業まで1ヵ月となった20日、東京発着の同新幹線指定席券の発売が全国で始まる。上野駅に代わり「北の玄関口」ともなる東京駅では、ホームや改札口などの設備工事に加え、新しくお目見えするJR初の”女性車掌”らの訓練などが続けられ、開業準備が進んでいる。
 東北・上越新幹線が乗り入れるのは、東海道・山陽新幹線ホームの丸の内側に隣接する12、13番ホーム。定期列車約200本のうち96%が東京発着となり、1日の利用客は約8万人。上野駅で乗り換えるよりも東京駅着が約20分短縮される一方で、東京駅の混雑に拍車が掛かりそうだ。
 12、13番ホームからは階段、エスカレーターを一階分昇り降りすると、東海道・山陽新幹線ホームに出られる。(京都新聞)
■列車双方、警笛なし 信楽事故現場 見通し悪い急カーブ
 信楽高原鉄道衝突事故で、事故を起こした同鉄道の普通列車とJRの快速列車が事故当時、ふだん現場付近で鳴らしている注意警笛を、ともに鳴らしていなかったことが19日までに、乗客らの証言でわかった。滋賀県警捜査本部の調べでは、両列車が、相手に気付いたときの距離は約100b。警笛でお互いの存在により早く気づいていれば、大惨事は防げたのではないか、との見方もある。
 事故現場は、半径400bの急カーブのほぼ中央。西側は切り通し、東側には樹木が茂り、見通しは極めて悪く、貴生川側からカーブに入る地点に「見通し不良」の標識が立てられている。列車は高原鉄道側から行くと、紫香楽宮跡駅を出て約600b、JR側からは「見通し不良標識」から約150b進んだ所で衝突している。
 運輸省の「鉄道運転規則」によると、このような急カーブを含め、危険を警告するとき▽注意を促す必要があるとき▽接近を知らせる必要があるときなどには、警笛合図を行わなければならない、としている。危険警告の警笛は「短急数声」、接近の場合は「長緩一声」など、長さや回数も指定している。
 この規則を受け、同鉄道の普通列車は、ふだん各駅を出発する際や現場近くの急カーブに入る時、「長緩一声」の警笛合図を鳴らしていた。JR側も貴生川−信楽間をノンストップで走るため、これまで駅や踏切の手前、見通しの悪いところなどでは、接近を知らせる警笛を鳴らしながら走っていた。
 だが、紫香楽宮跡駅近くに住む住民(50)は「ふだんは駆け込み乗車の乗客たちを急がせるため、警笛を数回鳴らし、さらに出発するときも鳴らしているのに、事故列車は警笛なしにすーっと発車した。しばらくして衝突のごう音が聞こえてきた」と話している。
 JRの2両目の後部デッキに乗っていた夫婦も「貴生川を出てから一度も警笛を聞かなかった」と話す。
・「利益優先の姿勢、問題」 参院運輸委ら現場視察
 滋賀県甲賀郡信楽町で14日起きた信楽高原鉄道衝突事故で、参議院運輸委員会(中川嘉美委員長)の9人が19日、事故現場などを視察した。中川委員長は視察後、「信楽高原鉄道の営業利益優先の姿勢が事故に結びついた可能性がある」と厳しく指摘。30日には運輸委員会を開き、事故原因の徹底究明や今後の事故防止対策、遺族への補償問題などの検討を始める考えを明らかにした。
 この日の午後、警察庁科学警察研究所の技官らも現地を視察した。滋賀県警の捜査員のほか、信号機を製作した日本信号(本社・東京)の技術者らも同行、信楽駅構内にある信号操作盤の繰作、線路内のポイントやATS(自動列車停止装置)の位置を確認した。(朝日新聞)
■人プリズム 旧国鉄・私鉄全線完乗の佐々木彦三さん 壮大なムダだけど
 もともと旅と汽車が好きだった。ある日、元中央公論編集長で作家宮脇俊三氏の「時刻表二万キロ」を読んで「こういう旅行の仕方があるのか」と思って挑戦したという。宮脇氏は国鉄全線だったが、佐々木さんは私鉄も面倒見ることになった。完乗記念の駅は国鉄が新潟県の佐々木駅、私鉄が石川県の佐々木駅(現在廃止)だった。
 「国鉄完乗は昭和57年7月26日、当時265線2万922.3`。私鉄5300`完乗は59年2月29日でした。5割ぐらいのころはまあボチボチやなと思いましたが8割、9割となるともうまったく止まらない。ものすごく興奮しました」と語る。国鉄完乗は全国で300人ぐらいいるらしいが、私鉄も含めた完乗は珍しい。
 中京区西洞院通三条下ルの3室のマンション。1室は200冊のスクラップが占領していた。歌手加藤登紀子さんで知られるロシアレストラン「キエフ」に勤務する。翌日が休みの時、夜行列車に飛び乗る。それまで時刻表をみっちり調べ最短で最も費用がかからないコースを選ぶ。行くまでもワクワクするが、次の駅にどんな風景が開けるのかと胸がおどるという。
 春日小、鋼舵中で同級生だった中京区間之町通竹屋町下ル、レストラン「竹かん」の村田圭子さんは「佐々木さんは頭がよくて優しい力持ち。彦三をもじって象さんというアダ名でみんなから慕われていました」と横顔を語る。
 記者は北海道室蘭市母恋南町に実家があるが、佐々木さんはJR母恋駅が母の日にちなんで売っている母恋−東室蘭駅間120円のPRパンフレットもちゃんと持っていた。みぞおちのあたりがチクチクするほど懐かしかった。
 佐々木さんは国鉄、私鉄ばかりでなくケーブル、モノレール、路面電車もみんなこなした。上野動物園のモノレールはさすがに恥ずかしくて「大人1枚、こども1枚ください」と。完乗して何が残りましたかと聞くと「ぞくぞくするほどの満足感でしょうか。ま、壮大なムダですけどね」と笑う。全線を乗って一番、気にいっているのが湖西線。比叡山と琵琶湖の眺めが何ともいえないという。
 近く開通する新幹線上野−東京間が気になっている。旧国鉄総裁から完乗記念にもらったD51の模型が応接間に。48歳の独身。「ひとりだからこんなことができたんでしょうな」(文 三浦隆夫)(京都新聞 夕刊)
■信楽惨事1週間 途方に暮れる遺族 補償…考える余裕なく
 滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道の衝突事故は21日、1週間を迎える。滋賀県警の捜査本部などによる原因究明が長期化の様相を見せる中で、JR、信楽高原鉄道両者の責任は依然はっきりせず、亡くなった42人の遺族や400人を超す負傷者らへの補償問題は話し合いの糸口さえ見つかっていない。「この怒りをどこにぶつけたらいいのか」。遺族らは悲しみに暮れ、1日も早い事故原因の究明を望んでいる。
 京都市上京区にある西陣織の帯のメーカー「渡文」は、研修として陶芸祭見学に向かった社員9人が事故に遭い、意匠部主任、森上修さん(35)、商品開発課長、松林達雄さん(43)の中堅社員2人が死亡したうえ、経営首脳の渡辺健次専務をはじめ7人が負傷する打撃を受けた。
 本社勤務者は50人。その2割近くを欠いた状態で、残された社員は家族の対応や葬儀のためにかけずり回り、会社の機能は、事故以来マヒ状態。
 大黒柱の夫を、支えだった妻を、母を失った家族たちは、悲しみとショックから立ち直れないまま。
 夫正利さん(51)を失った茨木市玉櫛、後藤泰子さん(48)は「私と27歳の娘が残されました。私も働き、娘もパートで働いているが、生活が苦しくなるのは明らか。お悔やみに来たJRの職員が、わが家を出たばかりのところで笑っていた。夫を返して下さい」。
 妻美代子さん(48)を失った尼崎市東難波町四丁目、自営業都田勇二さん(53)は「葬儀を出すだけでやっと。補償問題など考えることもできない」と話す。
 県警捜査本部は近く実際に車両を使って、全線の走行テストを行い、事故当時の状況を再現して、データを分析する。しかし、捜査を指揮する山本武治・県警刑事部長は「今後の責任問題や補償交渉にも影響するので、捜査はあくまでも慎重に進めたい」としている。(朝日新聞 夕刊)
21日■信楽鉄道事故 県会が特別委設置へ 30日に臨時議会 補償、再建など対応
 信楽町の列車衝突現場を視察した滋賀県議会の伊夫貴直彰議長は20日、列車事故に議会として対応するため、正式に「信楽高原鉄道列車事故特別対策委員会」の設置を決める臨時県議会を30日開くことを明らかにした。
 同県議会では、事故発生翌日の15日に、緊急事態に対応するため事故対策委員会(西阿政之委員長、7人)を発足させた。しかし、同対策委が本会議の議決を経ない非公式の機関であることから、正式に審議し、議決できないため、特別委の設置を臨時議会で決めることにした。
 伊夫貴議長によると、23日に開く各派代表者会議で30日の臨時県議会開催を決めるが、議員(4分の1以上)の請求による県議会招集は前例がない、という。
 伊夫貴議長は「事故犠牲者の補償問題や第三セクターの信楽高原鉄道の再建などについて、現在の緊急的な対策委員会では権限がないので正式な特別委員会を設けて対応していきたい」と語った。(京都新聞)
■全労連調査団現地聞き取り 信楽鉄道事故で
 反連合の全労連・国鉄闘争本部(本部長・大江洸全労連議長)は20日、信楽高原鉄道列車衝突事故の調査団を信楽町の現地に派遣。技術約な原因の究明とともに、事故発生の背景に国鉄の分割民営化に伴うJRの合理化問題があるとして本格約な調査に乗り出した。
 調査団は同本郡の寺間誠治事務局長を団長とする8人で、同日正午前に現地入り。事故現場はじめ信楽町役場や負傷者の収容された病院などを訪れ、慰霊や見舞いを行うとともに、沿線住民らからも聞き取り調査を実施した。
 調査の実施について大江議長は「分割民営化後、徹底した営利追及で安全輸送を軽視したJRの合理化が、事故の背景にあり、このサイドから事故の問題を解明したい」と強調。
 今後、加盟する国労を通じてJR側に事故原因の説明を求めていく方針で、現地調査の結果と合わせて、来月15日に吹田市のホテルで開く国鉄闘争フォーラムで報告する。(京都新聞)
■信楽高原でなにが起きた 列車衝突事故 苦闘続く町役場 ”小世帯”を直撃 行政機能まひ寸前
 信楽高原鉄道の列車衝突事故から20日で1週間。「世界陶芸祭の町」から「事故の町」に暗転した信楽町役場が苦闘を続けている。町の災害対策マニュアルを超えた事故対応、陶芸祭の参加自治体で町長が第三セクター・高原鉄道の社長であるという”痛み”…。職員183人の小さな役揚は「職員一丸」を合言葉に惨事と向き合っている。
 信楽町役場は20日の幹部会議で、一般業務に就く職員をこれまでの27人から61人に戻すことを決めた。この1週間、稼働していたのは住民課など窓口業務が中心で、各課は保安要員を確保、大半を事故対策本部に出していたのだ。
 「しかし、出納閉鎖も近づき、本年度事業の国、県への補助手続きも追ってきたから」と服部桂太郎・総務課長。前年度事業の決済が出納閉鎖(今月31日)に間に合わなければ業者に多大の迷惑がかかるし、補助申請ができなければそれこそ行政はマヒ状態に陥る。
 信楽町は本年度予算が約43億円(普通会計)で県内50市町村中19番目、職員数183人で同23番目の小さな役場だ。このうち現業職や病院関係者、保母さんらを除く115人の中から88人が事故対策本部員となった。事故翌日の15日に470人を動員したJR西日本は職員約4万9000人、30-40人が信楽町に詰めている県は職員約4000人。これだけでも町への重圧が分かる。加えて、事故発生時に霊きゅう車を遠く静岡にまで手配したり、遺族渉外班を設けるなど、手持ちの災害対策計画にない対応も余儀なくされただけに、庁内の慌ただしさは想像以上だ。
 遺族らの事故現場慰霊が相次いだ18、19日の土・日曜日は保母さん20人にも出勤命令を出した。警察から引き渡された約340点の遺留品の汚れをぬぐう作業だった。「アンパンマンが描かれた黒の子供靴を見つけた時は胸が詰まりました」と信楽保育園の保母さん(34)。「管理職は交代で徹夜体制。みんな頑張っているのだから、また休日出勤をと言われれば、出ます」。
 職員らの支えは町民らからの激励電話、電報、20日で35件・約66万円になった義援金などだが、一方で怒声、バ声の電話も少なくない。「遺族の方の心情は痛いほど分かるのですが…。それだけに町の対応は大変なのでは」と県対策本部員。しかし、町の服部課長はその詳細には触れず「そういう電話があっても当然だと思います」。本部に詰める職員(30)も「私たちには謝るしかありませんから」と言葉少なだ。
・「想像絶する状況」 衆院運輸委が現場視察
 信楽高原鉄道の列車衝突事故で、衆議院運輸委員会(亀井善之委員長=自民党=)の調査団8人が20日、信楽町入りして事故現場などを視察した。
 一行はまず同町黄瀬の衝突現場を訪れ、線路わきに設けられた祭壇で犠牲者のめい福を祈った。大破した事故車両を目の当たりにした委員らは、事故の大きさを痛感した様子で、JR職員らに衝突時の列車のスピード、ATSの作動状況など矢継ぎ早に質問を浴びせていた。
 このあと、稲葉稔県知事、杉森一夫信楽町長(信楽高原鉄道社長)ら行政・信楽鉄道サイドと、角田達郎JR西日本社長らから個別に事情聴取を行った。
 視察を終えた亀井委員長は「想像を絶する状況で、原因究明と再発防止に、なお一層の努力が必要と痛感した。23日に委員会を開き具体策をまとめていきたい」と所感を述べた。
 また、左近正男委員=社会党=は「今回の事故でJR側の運転士が小野谷待避所の信号が『青』だったと証言しているが、それを科学的に裏づける答弁はJR側からなかった。また信号が青だったとしても、JR側が事前に運行ダイヤを徹底していれば、待避所に相手の列車がいないことを疑問に思い、信楽鉄道側と連絡を取って、事故は回避できたはず」など、JR側の安全対策に疑問を投げかけていた。
 一方、この日は滋賀県議会も伊夫貴直彰議長ら議員23人が現場などを視察した。
・捜査方針など警察庁と協議 県警刑事部長が上京
 信楽高原鉄道とJR列車の正面衝突事故について、滋賀県警の山本武治刑事部長(捜査本部長)は20日午後、警察庁と捜査の進め方などを協議するため、上京した。
 県警によると、山本刑事部長は警察庁捜査一課や科学警察研究所などを訪れ、事故状況などを説明した後、今後の捜査方針についての打ち合わせを行う。
 一方、衝突現場での現場検証はこの日も引き続き実施された。検証は数日かかる見込みで、線路上やのり面の事故車両の撤去件業は週末になるとみられる。その後は、専門機関の鑑定に移り、県警は鑑定先の選定を進めている。(京都新聞)
■1日からダイヤ改正 京阪・特急など増発
 京阪電鉄は20日、6月1日実施のダイヤ改正を発表した。早朝ラッシュの混雑緩和のため、鴨東線・出町柳の初発5時00分を新設するほか、本線、宇治線などで増発、増結を行う。
 増発は▽特急=出町柳(7時44分)発淀屋橋行き▽準急=淀(6時53分、7時03分)発出町柳行き、出町柳(23時40分)発淀行きなど。増結は急行出町柳(7時04分、7時24分)発淀屋橋行きなど3本を8両編成にするのをはじめ、宇治線の午前7、8時台で上り4本、下り3本を5両編成に増強する。(京都新聞)
■「都市計画の変更ノー」 JR駅改築で市民団体 京都市へ申し入れ
 京都市内の建築の高層化に反対している市民団体「のっぽビル反対市民連合」(代表=西山夘三・京大名誉教授)が20日、市役所を訪れ、JR京都駅の改築設計原案に従って都市計画を変更しないよう申し入れた。
 申し入れによると、このほど決まった高さ59.8bの設計原案は現行の高さ規制(原則31b)を越えている。設計競技の審査結果に従って市が都市計画を変更すれは、その遵守(じゅんしゅ)を指導・監督すべき立場を自ら放棄し、都市計画法に違反するとしている。
 これに対し、応対に出た小山選一都市計画部長は「京都の玄関口にふさわしい駅を造りたいと思っている。高さ規制には、緩和規定や例外規定も含まれているので、すぐに違反とはならない」などと答えた。(朝日新聞)
■JR内の連絡も不完全 信楽鉄道事故 駅−列車 大部分、無線届かず
 信楽高原鉄道事故で、JR西日本は信楽高原鉄道との乗り入れ協定に基づいた駅−列車間の緊急連絡手段を講じていなかったことが、20日わかった。事故直後、列車無線の周波数が両列車で異なり、通じなかったことが判明しているが、実際はJR列車とJR駅間も無線の通じない地域がほとんどだった。それにもかかわらず、代替手段をとっておらず、JR側の安全対策が問題視されそうだ。
 今年3月、JR西日本が高原鉄道側と乗り入れ協定を結んだ時に、事故時などの対策として高原鉄道側の「異常時取扱基準規程」を準用することを双方で確認、明文化している。
 その七条で、「事故または災害が発生した時に、駅長は運行中の列車にその発生を緊急連絡しなければならない」としている。高原鉄道側は一応、自社の無線電話を列車の運転席に置いているが、JR列車の無線は周波数が違うだけでなく、貴生川駅周辺約1`までしか交信できない。このため、たとえ貴生川駅に信楽駅からの誤出発が伝えられていたとしても、JR列車が貴生川駅を約1`以上離れていれば、知らせることができない。無線機がない場合、普通は途中の駅で駅員が発炎筒をたいたり、旗を撮るなどの対応をするが、信楽駅までの途中の4駅はすべて無人。この実態を知りながら、JR側は「信号システムがあるから大丈夫」と緊急連絡態勢を取っていなかった。
・高原鉄道技術責任者、空席だった
 死者42人を出す事故を起こした滋賀県・信楽高原鉄道で、鉄道事業法で定められている運行技術の総括責任者である「鉄道主任技術者」が病気のため、長期にわたって事実上空席になっていたことが、運輸省の保安監査で20日までにわかった。
 運輸省によると、同鉄道の鉄道主任技術者は近江鉄道OBの専務が務めていたが、昨年ごろから病気のため常勤しておらず、代理の主任技術者も選ばれていなかった。このため、同鉄道は技術面を統括する責任者がいないまま、JR列車の乗り入れを開始したとみられる、という。
 主任技術者が常勤できないこと自体は法令違反ではないが、同省は「小規模鉄道の場合は大手と違い、主任技術者以外はシステムのことなどがよく分かっていないことが多い」として、安全管理に甘さがあったと判断。この問題が事故の遠因になっていないかなどについて、今後さらに調査を進める。(朝日新聞)
■「徹底合理化が要因」信楽鉄道事故 全労連が独自調査
 信楽高原鉄道の衝突事故で、全労連の国鉄闘争本部は20日、JR西日本の国労組合員ら8人による独自の調査団を信楽町などへ派遣した。「事故の要因には分割民営化による徹底した合理化と安全軽視の営利追求がある」としている。
 この日は一次調査として事故現場を視察し、信楽町などの関係者からの事情を聴いた。また6月15日に吹田市内のホテルで開く国鉄闘争フォーラムでもこの問題を議題に取り上げる。
 一方、京都府庁で記者会見した永江武雄・国労近畿地本委員長は「JRの快速列車は当初2分遅れて貴生川駅を発車したとされていたが、後に近畿運輸局は6分遅れとした。JRと信楽高原鉄道の協定では5分以上の遅れがあると相互連絡を義務づけており、JRに過失がないといえない」などと話した。(朝日新聞)
■信楽町 1年間「喪」に服す 町長、鉄道存続を強調
 信楽高原鉄道の列車事故があった滋賀県信楽町で21日、臨時町議会が開かれ、同鉄道の社長でもある杉森一夫町長ら町側は、町最大の伝統イベント「陶器まつり」の中止をはじめ、秋まつり、運動会などを自粛して、この1年間「喪」に服することを明らかにした。また「同鉄道の存続、再建に取り組む。事故原因が100%同鉄道にあると思わない」などと述べた。
 杉森町長をはじめ、多くの町職員が、事故以来、作業服に喪章をつけて死傷者の慰問に回り、国会などからの調査団の対応などに追われている。午前9時からの同町議会にも同町長らは作業服姿で出席した。
 信楽高原鉄道の存続について「前途には大変厳しいものがあるが、まくら木搬出から、住民が自分たちの鉄道として、つくってきたものであり、何としても再建に努めたいと思っている」と強調。
 また、原因究明と再発防止については、「信楽高原鉄道が100%悪いとは思っていない。汚名を着て死なねばならないのでは、社員は死んでも死に切れない」などと語った。(朝日新聞 夕刊)
■まず4両を貴生川駅へ
 滋賀県信楽町で起きた信楽高原鉄道の列車正面衝突事故で、同県警の捜査本部は全線を使っての走行テストをするため、21日、同町黄瀬の事故現場に置かれたままになっていた同鉄道の普通列車(4両編成)とJRの臨時快速列車(3両編成)のうち、まず走行可能な各列車の2両計4両を、JR貴生川駅構内へ移動させる方針を決めた。同日午後にも完了。現場の線路からは1週間ぶりに事故車両が取り除かれる。(朝日新聞 夕刊)
22日■信楽高原鉄道 県幹部OB2人を派遣 稲葉知事 補償交渉と再建で
 死傷者458人を出す列車衝突事故を起こした信楽高原鉄道に対する支援を検討していた滋賀県の稲葉稔知事は21日、定例記者会見で、今週中にも部長経験の県職員OB2人を同鉄道の副社長と専務として派遣し、被害者との補償交渉や事故で壊滅約な打撃を受けた同鉄道の再建に当たらせることを明らかにした。
 稲葉知事は、事故発生直後の記者会見などを通じ、高原鉄道、信楽町への全面約な支援の意向を表明していたが、この日の会見で知事は「高原鉄道は常勤の役員がいないので県が人材を派遣しないと会社が動かない」とし、派遣する人材については「信楽町長が社長を兼ねているため動けず、外に向かって全面的にモノが言える副社長、会社の中をしっかりまとめられる専務を置く必要がある。部長経験の県職員OBの中から人選を急いでおり、今週中には決めたい」と述べた。
 また、高原鉄道がもともと従業員20人と小人数の上、事故で常務ら5人の社員を失って手薄になっていることから、知事は課長級、課長補佐級の県職員複数も出向させ、補償問題を担当させる方針を明らかにした。
 さらに知事は補償問題に言及し、「事故原因の究明を待っていると、時間がかかり被害者に迷惑がかかる。JRが表に出られないのなら、高原鉄道が前に立って対応できるよう県として支えていきたい」と、補償交渉を長引かせないことを強調した。
 このほか、高原鉄道の運転再開について「再開するには安全の再点検が必要で、いまはメドも立っていない。いつまでも代替バスを続けるわけにはいかないので、会社として懸勢を立て直し、早く再開のメドを立ててほしい」と語った。(京都新聞)
■再建、可能な限り協力 JR西
 JR西日本の井手正敬副社長は21日の記者会見で、事故を起こした信楽高原鉄道の存続問題について、「地元の要請や運輸省の指示があれば、前向きに協議に応じ、できる限り協力したい」と述べ、信楽高原鉄道の再建に前向きの姿勢を示した。
 井手副社長は、21日時点で、信楽高原鉄道の筆頭株主である滋賀県や周辺自治体からの要請はないとしながらも「会社(信楽高原鉄道)や滋賀県、周辺自治体が、存続することで総意がまとまり、運輸省の指導があれば前向きに要請に応じたい」と語った。
 今回の事故で信楽高原鉄道は、運転士6人のうち3人が死亡し、保有車両4両も2両は完全に損傷、残る2両のうち1両もかなり手を入れないと使用できないとみられている。
 また、損害賠償の支払い問題もあり、鉄道存続が危ぶまれている。
 JR西日本が信楽線について、運転再開、存続に協力姿勢を明らかにしたことで、運輸省、地売側の対応が注目される。(京都新聞)
■信楽事故 つかめぬ負傷者数 県・県警・消防・JRの各発表 最大72人の開き
 死者42人、負傷者400人以上となった信楽高原鉄道の列車衝突事故は21日で事故後1週間を迎えたが、負傷者数が滋賀県、同県警、地元消防本部、JRの間で大きく食い違っており、いまだに正確な人数がつかめないでいる。県、JR西日本、信楽高原鉄道は三者連名で見舞金を贈り始めたが、その漏れのチェックができないうえ、今後の補償交渉にも影響しかねない。県の対策本部は関係機関と名簿をすり合わせ、確定作業を急いでいる。
 関係機関がこれまでに発表している負傷者数は、県428人(16日現在)▽県警416人(17日現在)▽甲賀郡消防本部478人(15日現在)▽JR西日本488人(19日現在)。最大で72人もの開きがある。関係機関はいずれも、これ以上の混乱を避けるため、数字の手直しを控えている。
 混乱の発端は、地元2病院にベッド数の2倍近いけが人が殺到した結果、同県下はじめ京都府下の計9病院に搬送、転送されるなど負傷者が広範囲に散らばったことだ。
 事故当日、甲賀郡消防本部職員約150人が各病院で調べた人数が基本となっているが、転送した同一負傷者の重複記載があったり、いったん帰宅した軽傷者が数日後「けがをしていた」と届け出るなど、計算を難しくした。
 一方、重傷者の入院は20日現在、近畿5府県の38病院に広がっており、その数も退院、再入院、転院などで70-80人の間を連日行ったり来たり。県は被災者対応班をおいて、そのチェックに追われている。
 いまも「事故でけがをした」と最寄りのJR駅に届け出る人がおり、県の対策本部は「当分、正確な数字は出せそうもない」という。
・「鉄道存続に協力したい」 JR西日本副社長
 JR西日本の井手正敬・副社長は21日、大阪市北区の同本社で会見し、信楽高原鉄道の存続問題について「地元の総意が出てきて、運輸省から話があれは、できるだけのことは要請に応じたい」と協力する姿勢を明らかにした。
 一方、この日の信楽町議会で、杉森一夫町長が「信楽高原鉄道が100パーセント悪いとは思っていない」と発言したことに触れ、井手副社長は「今の時点でそういうことを軽々しく言うべきでないと思う」と反発した。(朝日新聞)
■JR京都駅 改築積極的に推進 田辺市長 従来の方針強調
 京都市の田辺朋之市長は、22日の5月定例市会最終本会議で、JR京都駅改築計画について、「都市計画上の必要な手続きの中で市民の意見を聞きながら、適切に対処したい」と、従来の方針を改めて強調した。設計コンペの最優秀作品の決定後、田辺市長が公の場で改築計画について立場を表明したのは、これが初めて。
 山中渡議員(共産)の一般質問に答えたもので、田辺市長は、改築計画そのものに対して、「市民生活の向上と市の発展につながる事業であり、京都府、京都商工会議所とともに市も推進してきた」と、改築計画を積極的に推進する姿勢を示した。
 また、山中議員が、新しい駅ビルの95%はデパート、ホテル施設が占めている点をとらえ、「営利主義の施設」と計画撤回を求めたことについては、「商業施設も京都の商業全体の活性化につながるよう要請している。地元関係者とは十分誠意をもって話し合うよう(JR西日本を)強く指導する」と答えた。
 京都駅改築計画では、JR西日本や府、市、地元経済界でつくる京都駅ビル開発会社が設計コンペを実施。今月8日、開発会社の審査会が原廣司東京大学教授の作品を最優秀に選んでいる。(京都新聞 夕刊)
■JR奈良線「六地蔵駅」新設を申請 来年8月に完成
 JR西日本は22日、奈良線「六地蔵駅」(仮称)の新設に伴い新駅申請を近畿運輸局に出した。完成予定は来年8月。
 六地蔵駅は、桃山駅と木幡駅(3.4`)の間、桃山駅から2.4`の地点、宇治市六地蔵奈良町に新設する。行き違い設備を備え、ホームは幅4.8bから6b、長さ125b。ホームと線路下の盛り土部分をくり抜く形で駅舎を建設する。総工費10億900万円。
 JR奈良線は、京都−奈良を結ぶ、基幹鉄道。学研都市建設など沿線開発が急速に進んでいる。このため昭和59年に電化後、昨年秋、京都駅ホームを改良、城陽駅など3駅にすれ違い設備を設けるなど輸送力アップに力を入れている。今回の新駅は、地域活性化を望む地元要請にこたえた。
 新駅は、京阪電鉄宇治線六地蔵駅から東へ約500bのところ。普通電車の停車駅。1日乗車人数は2400人程度を見込んでいる。(京都新聞 夕刊)
23日■信楽事故 衝突時刻など特定 JR出発信号手前にいた?
 信楽高原鉄道とJR列車の正面衝突事故で、滋賀県警捜査本部(水口署)は22日、同高原鉄道が信楽駅を出発した時刻と衝突時刻をほぼ特定した。この結果、高原鉄道列車が信楽駅を出発した時には、JR列車は行き違い設備の小野谷信号所(待避所)の出発信号より手前にいたことが極めて濃厚になった。JR運転士は「小野谷信号所の出発信号は青だった」と証言しており、信号システムが正常に作動した揚合、高原鉄道が同駅を出発した時点で、小野谷信号所の出発信号は本来、赤表示になるため、県警は機器のトラブルを中心に調べている。
 捜査本部は、世界陶芸祭期間中に信楽駅−貴生川駅間の途中の4駅(通常、無人)に配置されていた臨時駅務員や、高原鉄道から出発遅れの通報を受けた貴生川駅のJR職員の証言などから、高原鉄道が信楽駅を出発した時刻を定刻より11分遅れの午前10時25分とほぼ断定した。
 また、衝突時刻をJRの多数の乗客の証言などから、午前10時35分とほぼ特定した。JR列車の貴生川駅の出発時刻は定刻より2分遅れの午前10時18分と5分遅れの10時21分とする2つの証言があり、今後の捜査で詰めたいとしている。
 JR西日本の話では、高原鉄道とJR列車は定刻通り両駅を出発すると、貴生川駅から約6.5`、信楽駅から約8.2`にある小野谷信号所の複線部分の出発信号付近を、JRは約12分後の午前10時28分10秒に通過。高原鉄道はその直前の10時27分50秒に着いて待避線で停止、30秒後に再出発するダイヤ編成になっている。
 捜査本部が信楽駅出発時刻を午前10時25分とほぼ特定した結果、JR列車が2説のうち早い方の定刻2分遅れの午前10時18分に貴生川駅を出発したとしても、小野谷信号所までは約12分かかり、信号所通過は午前10時30分すぎになる。同高原鉄道が信楽駅を10時25分に出発した直後に、通常は誤発車検知回路が作動して、小野谷信号所のJR側の出発信号が赤にならなければならず、JR列車が信号所に入る時には赤が視認出来る。
 県警は、JR運転士の証言から小野谷信号所の信号がなぜ青になっていたのかを解明するために信号系統のシステムを中心に捜査している。(京都新聞)
■近畿運輸局へ存続指導要請 稲葉知事
 稲葉稔滋賀県知事は22日午後、近畿運輸局に尾松伸正局長を訪ね、信楽高原鉄道存続のための具体的方策などについて同局の指導を要請した。
 同知事は「地元住民の生活の足としてどうしても鉄道は必要と思っている。存続のための具体約な方法、再建に向けての手順などの指導をしてほしい」と要請した。これに対し尾松局長からは「まず、信楽高原鉄道の組織を立て直し、鉄道会社自体が再建を決め、具体的計画を立てる必要がある、といった内容の指導を受けた」(同知事)と語り、存続についても「鉄道会社から要請があれば、指導に応じる、と前向きの答えをいただいた」(同)と語った。(京都新聞)
■町に激励、見舞金相次ぐ 信楽鉄道事故 陶芸祭前売り券払戻辞退も馳
 「信楽高原鉄道の再建に私が役立てるなら、ご一報を」。死傷者458人を出す大惨事となった信楽高原鉄道の列車衝突事故の対策に追われる地元、滋賀県甲賀郡信楽町の町役場には、杉森一夫町長あてに励ましや協力の申し出の手紙、見舞金が県内をはじめ、京都など各地から次々と舞い込んでいる。また、事故で中止になった世界陶芸祭の実行委員会にも、「犠牲者の供養に」と、前売り券の払い戻しを辞退する申し出が相次いでおり、悲しみの淵に沈んでいた町の人々は、温かな人情に心をやわらげ、勇気づけられている。
 町対策本部に22日まで届いた見舞金は、窓口受け付け36件171万1784円、郵送17件25万4000円、振り込み141件150万9397円の総計194件347万5181円に上っている。見舞金などの電話での問い合わせは1日平均10本以上あり、励ましの手紙なども連日、舞い込んでいる。同日までに電報28通、手紙23通、はがき5通、現金書留封書6通の62通。
 家族全員が”信楽ファン”だという京都市山科区の主婦前川芙美江さん(53)からの手紙には「信楽高原鉄道を復帰させて、あの美しい自然の中で走らせて下さい」と鉄道再建と職員の心労をねぎらう気持ちがつづられていた。
 また、JR運転士経験のある福井県内の男性(40)=旅行代理店勤務=の手紙には「報道で(鉄道再開には)乗務員の確保が必要なことを知りました。再建に私が役に立てる場があったら、知らせてほしい」との申し出があった。
 一方、世界陶芸祭の前売り券払い戻しを受け付けている同祭実行委にも22日までに、払い戻し金の受け取りを辞退し、線香代など供養に用いてほしい、という申し出が、郵送や窓口で計22件あった。金額にして7万8800円。京都市山科区の「花を愛する一市民」と名乗る人からは「犠牲者の方々には、心よりお悔やみ申し上げます。前売り券10枚はお返します」との手紙が添えられていた。
 同委事務局の一坪徹夫次長は「めい福を祈る気持ちが一層深まった」と、スタッフらと残務整理に当たっている。
 町事故対策本部では、滋賀銀行信楽支店に、見舞金を受け付ける銀行口座を開設。番号は普通257569。また町事故対策本部では全国各地からの善意に対処するため、22日、新たに信楽郵便局内に振替口座を開設した。□座は「信楽高原鉄道事故対策本部」、京都5-72322 。問い合わせは同町役場内の同本部 0748(82)1121へ。(京都新聞)
■JR側にも過失強まる 信楽惨事 5分以上の遅れ 複数証言 連絡義務に違反?
 滋賀県信楽町の信楽高原鉄道の衝突事故で、これまでJR側が一貫して「2分遅れで貴生川駅を出発した」と説明していたJR臨時快速列車が、実は5分以上遅れて出発していた可能性が強いことが22日、目撃者の証言から分かった。両社が結んだ「直通乗り入れ運転に関する協定書」には、列車に5分以上の遅れが出た場合、相互に連絡し合う義務がある。JR側が5分以上の遅れを連絡していなかったことで、滋賀県警の捜査本部は赤信号を見切り発車した信楽高原鉄道だけでなく、JR側にも安全運行義務に重大な過失があった、との見方を強めている。
 JR西日本によると、臨時快速列車「世界陶芸祭号」は、京都を6分遅れで出発し、草津を経て貴生川駅に4分遅れの10時17分に到着。遅れを取り戻すため、3分の停車時間を1分に短縮し、定刻の10時16分より2分遅れの10時18分に発車した、としてきた。
 ところが、貴生川駅に接続する別の私鉄の近江鉄道の職員が「発車は5分以上遅れていた」と証言。それによると、当時、JRのホームでは10時13分発草津行きの普通列車が発車を待っていた。草津線は単線で、陶芸祭号が着かないと発車できない。大幅な遅れのため、隣接する近江鉄道のホームにいた職員も「うちのダイヤにも影響が出るのでは」と気をもんでいた。
 結局、草津行きは陶芸祭号が17分に到着した後、2、3分して出発。この職員は、陶芸祭号の発車はそれよりさらに2、3分あとだったと証言していることから、少なくとも定刻より5分遅れていた可能性が強い。
 さらに、陶芸祭号に乗っていた京都府亀岡市の会社員(37)も「午前10時25分に風景が田園から新緑の山に変わった」と証言。田園地帯から山間部に入る地点は貴生川駅から約2.5`で、JRが主張する通り貴生川発10時18分なら時速21`と不自然だ。時速50`なら約3分で山間部にさしかかり、貴生川発10時21、2分ごろとなり、定刻より5、6分の遅れになる。
 この日の会見で同県警捜査本部の山本武治刑事部長も「複数の乗客からもJR側の説明と異なる証言を得た」と話した。
 同本部のこれまでの調べでは、信楽高原鉄道側の出発時間は、11分遅れの午前10時25分。JR列車が貴生川駅を出た時、信楽駅では事故を起こした同高原鉄道の列車がまだホームにいたことになり、JRが遅れを連絡していれば、信楽駅側からも信号故障を伝えるなどの情報が交換でき、惨事を防げた可能性もある、とみている。
 JR西日本の守屋実・安全対策室長(事故対策本部副本部長)は「貴生川駅には記録がないが、JR臨時快速の運転士と信号系統を管理している亀山指令所の双方が発車時刻を2分遅れと確認している。間違いないと思う」と話している。(朝日新聞)
■高層例外措置、波及せぬ JR京都駅改築で市長
 22日の京都市議会本会議で、JR京都駅の改築高層化問題が取り上げられ、田辺市長は「高さ規制の緩和措置が他の建物に波及することはない」とあらためて強調した。
 質問したのは山中渡議員(共産)。今月8日に決まった同駅の設計原案について「駅施設はわずか4.3%しかなく、商業施設とホテルが大半を占め、大資本の営利主義が前面に出ている」と指摘、理事者側に公聴会、公開討論会の開催や、改築のアセスメントの実施などを迫った。
 これに対し、田辺市長は「国際文化観光都市の顔としてふさわしいターミナル」と設計案を積極的に評価。「にぎわい空間の形成や市域外からの集客効果などを考えながら、市内全体の商業活性化につながるよう関係者に要請してきた。今後、都市計画上の必要な手続きをとる中で、市民の声を聞き、適切に対処していきたい」と答えた。特例でも45bに建物の高さを制限している駅周辺地域で、駅ビルに関しては例外扱いで臨むことについても「他に波及することはない」との考えを繰り返した。(朝日新聞)
■「六地蔵駅」を申請 JR奈良線
 JR西日本は22日、奈良線に「六地蔵駅」(仮称・京都府宇治市六地蔵奈良町)の設置を求める申請を、近畿運輸局に出した。来年夏の開業を目指している。
 新駅の位置は桃山駅と木幡駅の間になる。ホームは1面で長さ125b。駅舎は高架下になる。1日当たりの乗車人員見込みは約2400人。建設費10億900万円のうち、JRが1割強、残りを宇治市が負担する。(朝日新聞)
■信楽駅ATS作動せず ホーム増設で構造欠陥
 信楽高原鉄道とJR列車の正面衝突事故を調べている滋賀県警捜査本部(水口署)は23日までに、信楽駅構内を現場検証した結果、1番ホームから列車が4両編成で発車する場合、ATS(自動列車停止装置)の列車検知機が線路内の地上子より前にくるためATSが作動しない駅構造になっていることをつかんだ。
 出発信号が赤の場合に、発車を強行すると、本来かかるはずの非常ブレーキが働かないわけで、安全面の甘さが浮き彫りになった。
 捜査本部などによると、信楽駅は1番、2番の2つのホームがある。3両までは発着できる構造になっていたが、世界陶芸祭の開催で4両編成の列車を発着させるため、1番ホームの貴生川方面側を約6b延長した。
 ATSは、信号が赤の場合、強行して進行すれば5秒後に列車の非常ブレーキが自動的にかかり、急停車させる仕組み。運転士が5秒以内に解除動作をすれば、ブレーキがかからず、進行できる。
 1番ホームの場合、赤信号をキャッチして列車に情報を伝える線路内のATS地上子は、3両編成であれば先頭車両より前にくるが、4両編成の場合は先頭車両の後輪付近に位置する。このため列車検知機は、先頭車両の前輪付近にあり、作動しないという。
 捜査本部は、ホームを延長する際に、ATSの地上子を十分考慮していなかったのではないかとみて同鉄道関係者から詳しい事情を聴いている。
 また、事故当日、同鉄道側が「出発信号が赤だったので、ATSを解除して発車した」と話していることについて、事故車両は4両編成で1番ホームから発車していることから、ATS解除の動作は必要ではなかったとの見方を強めている。(京都新聞 夕刊)
■信楽事故の究明担当 運輸局調整官が自殺 枚方の官舎
 42人の死者を出した信楽鉄道事故で、事故調査に当たっていた近畿運輸局鉄道部調整官吉岡秀治さん(39)が22日夜、大阪府枚方市の官舎で自殺しているのが見つかった。
 吉岡さんは事故後、滋賀県・信楽町の現場と大阪の近畿運輸局の間を往復、機械、技術系のまとめ役として原因究明に当たっていた。遺書など見つかっていないが、大阪府警枚方署や同運輸局などでは、事故の原因調査に絡んで自殺したとみて動機など調べている。
 同事故に関連し自殺者が出たのは初めて。事故原因の究明作業が本格的に行われている矢先だけに同運輸局は衝撃を受けている。
 調べによると、22日午後9時45分ごろ、枚方市香里ケ丘九ノ八、香里合同宿舎3階の自室で、吉岡さんが布団の上で首2ヵ所を包丁で刺し、死んでいるのを訪ねて来た同僚が見つけ、119番した。
 枚方署の調べでは、吉岡さんは出血多量で死んでおり、そばに文化包丁があった。左手首にためらい傷があり、何者かが侵入した跡もないことから、同署は自殺とみている。
 死亡推定時刻は同日午後4時ごろ。これまでの調べで吉岡さんは事故発生から19日まで連日6日間同運輸局に泊まり込み。20日に帰宅したが22日は出勤しなかった。同僚が電話したが、応対の様子がややおかしかったので同僚が官舎を訪ねて発見した。
 近畿運輸局鉄道部調整官は同部部長に次ぐポストで、機械、電気など技術系の業務のまとめ役。吉岡さんは、今月14日の信楽鉄道事故後、深夜まで役所に詰めるなど激務が続いており、職場の人は、「かなり神経がピリピリしているようだった」と話している。
・車両3両をつり上げ検証
 滋賀県警捜査本部(水口署)は23日午前9時から、現場検証を再開した。国道307号牧交差点から衝突現場までを通行止めにし、破損の激しい信楽高原鉄道とJRの先頭車両など3両をクレーンでつり上げ、鑑識課員らが車体底部や運転室の状況を詳細に図示するとともに写真撮影を行った。
 検証は夕方までかかる見込みで、県警は終了後、数日中にトレーラーに車両を積んで信楽駅車庫に運び、鑑定したいとしている。(京都新聞 夕刊)
■信楽列車事故 信号機のナゾ解明へ 走行テストの準備入り
 滋賀県信楽町の信楽高原鉄道の衝突事故で、滋賀県警捜査本部は惨事から10日目の23日、事故車両を実際に線路に走らせる走行テストの準備作業に入った。事故原因の全容解明までにはまだ時間がかかりそうだが、これまでに、捜査のポイントはいくつかに絞られた。同捜査本部は、走行テストで、こうしたポイントの分析に大きな手がかりを得たいとしており、捜査は大きなヤマ場を迎える。
 《青か赤か》原因解明のカギを握るのは、双方の列車が行き交う小野谷信号所(待避線)のJR側の信号機が、信楽側から高原鉄道列車が接近していれば、赤になるはずなのに、なぜ青だったのか、という点。JR列車の林光昭運転士(48)は「信号所出口の信号は青だった」と証言。JR列車が赤信号を無視して単線区間に進入すれば、信号と連動して閉鎖状態となるポイントに突っ込むことになり、ポイントはJR列車側に開通していたことなどから、捜査本部はこの証言は裏付けられた、とみている。
 しかし、信号機の専門家らは「システム上、青にはなりえない」と首をかしげる。事故当時、信楽駅の出発信号機は故障で赤のまま。信号システムは、1ヵ所でも故障した場合、他の信号機すべてが赤になるよう設計されている。さらに、信号機が正常でも、同鉄道の列車が赤信号を無視して出発すれば、同駅を出た時点で「誤出発検知装置」が働き、対向するJR列車側の信号機を赤に切り替える。県警が信楽駅内にある信号制御盤を検証した際、誤出発の検知を示す赤ランプは点灯していた。
 このナゾを説明できるのは、誤出発を検知したあと、小野谷の信号機を赤に変える部分に何らかのトラブルがあったか、「誤出発」を検知する前に、JRがすでに信号所を通過して単線区間に進入していたケース。
 《認識のずれ》信楽高原鉄道はJRが乗り入れるまで、1編成だけがピストン運転する単純な運行方式。このため同鉄道側は「単線で2編成が行き交うためには、待避線で相手列車を待つのが当然」と思っていた、という。
 待避線に対向の列車がいないことに、JRの林運転士は「おかしいな」と思ったが、青信号に従って、待避線を出た。信楽高原鉄道に接続するJR草津線には、1ヵ所で全線の信号を集中して遠隔操作できる列車集中制御装置(CTC)が導入されている。JRの運転士は「信号の指示がすベてで絶対」と考えて運転している。
 捜査本部は事故の背景には、こうした両者の認識のずれがあったとみている。
・調査の責任者 運輸局調整官が自殺
 大阪府枚方市香里ケ丘九丁目、香里合同宿舎、近畿運輸局鉄道部調整官、吉岡秀治さん(39)方で、22日午後9時40分ごろ、吉岡さんが奥の6畳間の布団の上で首から血を流して仰向けで死んでいるのを、訪ねてきた同僚2人が見つけた。
 枚方署の調べによると、吉岡さんの手には文化包丁(刃渡り18a)が握られており、左手首に2、3ヵ所のためらい傷があったことから同署は自殺したとみている。22日は出勤して来なかったので、午前11時半ごろ鉄道部の職員が電話をしたところ、長い呼び出し音のあと本人が出たが、かなり疲れた声だったという。
 近畿運輸局によると、吉岡さんは信楽鉄道事故のあった今月14日以降は同局事故対策本部の中心的な「本部員」として、事故の技術的な側面からの調査全般の事実上の責任者を務めていた。20日まで庁舎内に泊まり込んでいた。(朝日新聞 夕刊)
24日■信楽鉄道事故 補償は全面支援 衆院委で運輸相「マニュアル総点検」
 衆議院運輸委員会が23日午後開かれ、信楽高原鉄道事故について緊急質疑、社会党の山元勉(滋賀)、山中末治(京都二区)両氏をはじめ、二階俊博(自民、和歌山)、春田重昭(公明、大阪)、草川昭三(同、愛知)、佐藤祐弘(共産、東京)、高木義明(民社、長崎)の各氏が事故原因の究明、補償問題などについてただした。答弁の中で、村岡運輸相は「補償や鉄道再建に絡んで滋賀県からいずれ財政支援の要請など出てくると思うが、その段階で、私からも自治大臣にお願いしたい」と全面的バックアップする姿勢を示した。
 事故原因の解明について松波運輪省陸上技術安全部長は「列車が出発したのに小野谷信号所の出発信号が青になったのかなど不可解な点が多く、今後とも調査したい」と答弁。「旧国鉄の赤字ローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道として採算重視せざるをえないことが事故につながったのでは」という質問に、同相は「要員確保は第三セクターの免許条件だ。運転ワンマン化など業務運営の効率化は安全に支障がない範囲で認められたもの」と否定しながらも、「三セクを総点検する際、採算性重視で安全軽視していないかも含め総点検する」との態度を明らかにした。
 JR西日本の乗り人れ列車が貴生川駅を出発した時間が定時の2分遅れか6分遅れかで信楽高原鉄道とJRとの間で食い違いがあることについての質問に、同相は「5分以上遅れた場合、両者が結んだ直接乗り入れ運転に関する協定書では相互に連絡を取るようになっている。仮に5分以上遅れたとすれば、協定書違反、不法行為になると思う」と「6分遅れ」が事実ならばJR側にも責任があるとの考えを示唆した。さらにJRが事故後、早々と「JR側に責任がない」と発言していることについて、大塚運輸省国鉄改革推進総括審議官は「原因究明中に、責任の有無を軽率に発言するのは極めて問題。厳しく注意した」と答えた。
 補償問題について中里自治省指導課長は「地元で原因究明、遺族も負傷者に対する対応がなされている最中だが、今後県から財政支援など含め相談があれば、関係省庁と協議の上、検討したい」の見解を明らかにした。さらに同相は「県などで具体策を確定した段階で自治大臣にお願いし、遺族らのためにも遺漏のないようにしたい」と答えた。
 また、信楽高原鉄道再建問題について同相は「滋賀県副知事らが22日やってきて、なんとか鉄道を存続する方向でお願いしたい、と要請があった。補償問題などについて県からも人を派遣して対応に当たるが、JRにも協力をお願いしたい、ということなのでJRに相談に乗るよう指示した」と答弁した。さらにJR列車の運転士が待避所に列車が入っていないのを不審に思いながら青信号なので進行したことについて「旧国鉄時代の安全綱領をJRが変更し、運転士が自分の判断で列車を止めることが出来なくなっていることも事故原因では」と委員が指摘したのに対し、松波部長は「今回の事故にかんがみ、乗務員が何らかの異常を感じたとき、運転指令と連絡する業務について検討したい」と答えた。国鉄時代の安全重視の観点を取り入れるべきでは、との指摘について、同相は「従来の運転マニュアルが十分と思っていたのがそうでなかった。マニュアルについても総点検しなければいけない。安全問題についても、指摘の件も含め検討したい」と意向を示した。
・3セクに新保険制度 運輸省検討
 村岡運輸相は23日、信楽鉄道事故の集中審議があった衆院運輸委員会で、第三セクターの信楽高原鉄道の被害者補償能力が低い問題に関連して、全国の第三セクターが保険料を出し合って加入する保険制度の導入を検討していることを明らかにした。
 運輸省によると、信楽高原鉄道の加入している賠償責任保険の支払い限度額は3億円。今回の事故の補償には数十億円が必要とみられ、同鉄道だけでは補償が不可能だ。
 旧国鉄の赤字ローカル線を引き継いだ他の第三セクターについても同省が調査したところ、信楽高原鉄道と同じように補償能力が低いことが判明新しい保険制度の導入を検討することになった。
 村岡運輸相は「第三セクターの意見がそろわないとできないが、早急に参加を呼び掛けて、万一の場合の補償を手厚くしていきたい」と述べた。(京都新聞)
■信楽高原になにが起きた 列車衝突事故 誤出発検知装置の作動時 伝達正常なら信号所「赤」 回路のトラブル? 県警究明
 信楽高原鉄道とJR列車の正面衝突事故で、滋賀県警捜査本部(水口署)は23日までに同鉄道の信号システムの全容をほぼ解明した。これまでの捜査で、事故は人為約ミスと機器のトラブルが絡んだ複合的要因によるとの見方強めているが、最後の安全確保手段の誤出発検知装置の伝達回路が正常に作動したのかどうかが、原因究明の一つのポイントとみて究明を急いでいる。
 〈信号の連動〉 同高原鉄道は全線(14.7`)を信楽−小野谷信号所、貴生川−小野谷信号所の2つの閉そく区間に分け、1閉そく区間内には1車両しか入れないのが基本原則。運転士は両駅や信号所の起点にある出発信号を見て進行、停止する。信号は1→C、A→3と連動し、たとえば信楽駅の出発信号1が青の時、対面列車の信号所の信号Cは赤になるようプログラムされており、対面列車との正面衝突を防いでいる。さらに、信号所には3、Cの出発信号と連動する場内信号があり、Cが青ならばBも青、赤ならば黄が点灯し、徐行して進まなければならない。
 〈表示の優先順位〉信号所の両端から約600-800bに「接近点」と呼ばれる列車接近検知機があり、列車が通過すると同時に、前方の信号所の出発、場内信号が青になる。また、信楽、貴生川両駅には単線区間に入ってすぐのところに誤出発検知装置があり、出発信号が赤の場合に発車を強行すると作動し、連動する対面信号を赤に変える。たとえば、信楽駅の出発信号1が赤で列車が出た時、Cが仮に青であっても赤を表示し、衝突を防ぐ。この誤出発検知を知らせる信号は接近点の通過など他のどの信号よりも優先約に作動する。さらに停電などシステム全体に何らかのトラブルがあれば、フェールセーフの原則ですべての信号が赤になる。
 〈線路の切り替え〉ポイントは基本的には直近の信号と連動して作動する仕組みだが、信楽、貴生川両駅構内のポイントは、駅内にある制御盤と近くの継電室(リレー室)で変えることが可能。信号所内のポイントは、所内の継電室などで変えることができる。ただし、ポイント操作によって信号は変わらない。また、信号所を列車が通過した場合、次の列車が来るまで、ポイントはそのままで、たとえば今回のケースでは、JR列車より1本早い下り列車が小野谷信号所を通っているため、ポイントは下りの順行に向いており、レールの傷が見当たらないことが「青」信号を裏付けるキメ手にはならない。
 〈原因解明の手がかり〉捜査本部の調べでは、JR列車の時刻は、定刻より2−5分遅れの午前10時18分−21分。所定の速度で走れば、信号所の通過時刻は午前10時30分−33分までの間となる。高原鉄道の発車時間は午前10時25分であることから、JRがかなりスピードアップしたとしても、信号所を通過して単線区間に入っている可能性は極めて少ない。信号システムが正常に作動していれば、同鉄道が赤信号で発車した際に、誤出発検知装置が機能。向かってくるJR下り列車の出発信号Cは、同列車が接近点を通過して青になっていても赤に変わって鎖錠(固定)される。
 事故直後の信楽駅の制御盤には、同高原鉄道列車は出発信号1が赤のまま駅を発車したことを示す誤出発の赤ランプが点灯しており、作為が加えられていなければ本来は、JR列車の出発信号Cは赤にならなければならない。しかし、JR運転士は「信号は青だった」と証言しており、誤出発検知装置から出発信号Cに情報を伝達する回路が何らかのトラブルで機能せず、正常に働かなかった可能性がクローズアップされている。(京都新聞)
■海へ直行便マリン列車 JR西日本
 JRグループは23日、夏休み(7月−9月)を中心にした夏の臨時ダイヤを発表した。JR西日本は主要9線区で前年より1%多い1097万人の利用を予想、新幹線で1383本、在来線で3444本、合計4827本の臨時列車を走らせる。
 マリンレジャー用には、京阪神から日本海などへの直行便「マリントレイン」を運転する。いずれも車体が広く、窓の大きな人気車両を投入する。このほか、京都から南紀・白浜への直行便、金沢など北陸への直行がそれぞれ1日1往復増える。
 山のリゾートへは、京都、大阪から宇奈月温泉まで直通で乗り人れる「リゾート宇奈月」が1日1往復。また、帰省などでも利用の多い「雷鳥」を1日8本増発する。(京都新聞)
■臨時列車581本運転 JR福知山支社 夏のダイヤ発表
 JR福知山支社は23日、海水浴とお盆帰省を中心とするこの夏(7月−9月)の臨時ダイヤを発表した。人出増を見込み、昨年より4.6%多い延べ581本の臨時列車を期間中、山陰、福知山など管内各線に運転する。
 海水浴関係では、7月20日から8月9日までの間、昨シーズンを2%上回る261万6000人が管内の海辺を訪れると見込んで、臨時列車280本(対前年50本増)を運転する。
 一方、お盆帰省関係では、8月10日から18日の間に昨年を7%上回る104万8000人の乗客を予想、昨シーズン並みの117本を走らせる。帰省のピークは11日の6万3000人、Uターンは16日の6万2000人と見ている。
 海水浴、お盆以外でも、会員制企画列車「保津峡トロッコ体験」(豊岡・馬堀、嵯峨)など、夏の間に臨時列車184本を運転する。(京都新聞)
■京都−鹿児島間の高速バス認可申請
 京都交通バス(本社・亀岡市)は23日、京都−鹿児島間の高速バス運行を、運輸省に認可申請した。同社は、鹿児島県内の鹿児島交通、南国交通、林田産業交通の3社と共同で、8月にも運行を始めたいとしている。
 計画では、運行区間は京都市西京区の京都(洛西)停留所−鹿児島市大黒町の鹿児島(いづろ)停留所間の956`。名神高速、中国、関門、九州自動車道を経由する。
 運行回数は1日1往復で、所要時間は13時間20分。京都発は午後7時、鹿児島発は午後7時10分で翌朝到着する。運賃は京都(洛西)−鹿児島(いづろ)間で1万2600円、全席指定席。(京都新聞)
■「JR西労」が発足 民営化後初の分裂
 JR総連(福原福太郎委員長、16万5000人)との関係断絶を主張するJR西労組の大松益生委員長らに反発していた運転職場を中心とする労働者が23日、大阪市で新組合「JR西日本労働組合(略称・JR西労)」の結成大会を開いた。円紛の続いていたJR西労組はこれで完全に分裂した。国鉄の分割民営化後、JR関係労組の分裂は全国で初めて。
 約500人が参加した結成大会は@JR総連に結集するA会社の御用組合化路線に反対するB安全輪送の取り組みについて、見せしめ的な責任追及型から原因究明型に変える−などの運動方針が採択された。スト権については「確立に向け意見を早急に集約する」こととした。
 初代委員長には奥島彰氏、書記長には岸本隆雄氏が選出された。同労組の組合員数は4240人。当面6000人を目指す。
 奥島委員長は、あいさつの中で「言うべきことははっきり言う労働組合をつくっていこう」と訴えた。(京都新聞)
■JR株、今年度上場せず 運輸省、市場低迷で決断
 運輸省は23日、JR株式の今年度上場を断念することを明らかにした。株式市場が低迷を続けているため、発行株式数の多いJR株を無理に上場すれば市場に混乱を招きかねないのと、最初の売却価格が低い水準にとどまると、売却の最終段階まで尾を引き、旧国鉄債務の返済に悪影響を及ぼしかねない、と判断したため。上場断念の方針を大蔵省に正式に伝え調整を図るほか、「遅くとも平成3年度(91年度)にはJR株式の処分を開始する方向で準備を行う」とした89年の閣議決定の実行延期について了解を取り付ける。今回の運輸省の上場断念により、今年度中の上場か延期かで揺れ動いてきたJR株式上場問題はひとまず沈静化する。
 JR7社の株式は、旧国鉄債務を継承した日本国有鉄道清算事業団が全株を所有し、JR株式の上場による売却益を、26兆2000億円といわれる債務の返済に充てるため運輸省や清算事業団が準備を進めてきた。運輸省は今年度の清算事業団予算に、JR株式200万株分の売却収入を計上している。JR7社の中では上場に積極的なJR東日本、JR東海、JR西日本の3社が、株主の安定化工作、社員持ち株会の結成などの準備を進めてきた。
 しかし、最近の株式市場の低迷で、機関投資家や証券会社は、「現在の相場環境を考えれば、大量のJR株式上場が市場の需給関係を悪化させかねない」として、相場への悪影響を危惧(きぐ)していた。
 89年の閣議決定について運輸省は、「株式市場の動向を見極めた適切な処分方法」がうたわれていることから、上場断念が閣議決定に抵触するものではない、とみている。大蔵省との調整がつき次第、遅くとも8月までには閣議に報告し了解を得る方針だ。
 運輸省が5月末の早い時点で今年度の上場を断念したのは、今のうちに機関投資家に方針を示すことで無用な心配や資金手当てをしなくて済むように、という配慮に基づくもの。
・「致命的影響ない」JR東海副社長
 運輸省がJR株式の今年度中の上場を見送ったことについて、JR東海の葛西敬之副社長は23日、「上場が(1年)遅れても致命的な影響にはならない、と思う。ある1社だけが上場を終わってほかは未上場、ということになれば(早期上場を望んでいる本州にある)JR旅客3社間に格差が生じて問題が出る」と述べている。(朝日新聞)
■補償へ財政支援 自治省に要請へ 運輸相が答弁
 死者42人を出す大惨事となった信楽高原鉄道事故が23日の衆院選輸委員会で取り上げられ、村岡運輸相は犠牲者の遺族らへの補償問題について、運輸省としても地元自治体に対する財政援助を自治省に働きかける考えを明らかにした。(朝日新聞)
■職員・OBら7人 信楽鉄道へ派遣 株主の滋賀県など
 滋賀県甲賀郡信楽町の列車衝突事故で、社員21人のうち5人が死亡した信楽高原鉄道(社長、杉森一夫・信楽町長)に対し、株主の同県、同町、近江鉄道は23日、同鉄道の役員や社員として職員やOB7人を24日付で派遣すると発表した。(朝日新聞)
■現場の検証ほぼ終える 走行テスト実施へ
 滋賀県甲賀郡信楽町で起きた列車正面衝突事故で、滋賀県警捜査本部は23日、線路わきに置いたままになっていた信楽高原鉄道の2両と、2つに切断したJRの先頭車両をクレーンで吊(つ)り上げ、車体下部などを検証し、写真撮影などをした。事故現場での検証はこれではぼ終わった。(朝日新聞)
■JR西労組が分裂 JR西労が結成大会
 JRグループの最大労組、JR総連(16万人)との関係断絶をめぐり内部対立が続いていた西日本旅客鉄道労組(略称・JR西労組、3万4000人)で、断絶反対派は23日午後、大阪市浪速区の部落解放センターで、JR西労組とは別の「JR西日本労組」(略称・JR西労)の結成大会を開いた。これにより、4年前の国鉄の分割・民営化に際して、旧鉄労、動労を中心に結成した西日本旅客鉄道労組は分裂した。全国のJR各社で、JR総連傘下の労組が大きく分裂するのは初めて。
 結成大会には、代議員ら約500人が参加し、奥島彰委員長ら執行部を選出。結成時の組合員総数は約4200人としている。
 JR西労はJR総達の下部組織として活動していく。一方、JR西労組は7月4日から金沢市で開く定期大会で、JR総連からの脱退を正式に決める方針。(朝日新聞)
■JR株式 本年度の上場は困難 運輸省検討 市場混乱を懸念
 運輸省は24日、1991年度中に予定していたJR株式の上場を全面約に見送る方向を含め検討していることを明らかにした。株式市場の低迷に今後も本格回復の兆しが見られず、JR株式の売却で市揚が混乱することが予想されるため、本年度中の上場は困難と判断した。同省は市場動向をさらに見極めた上で、早ければ6月にも最終的な結論を出す。
 JR株式は旧国鉄債務を引き継いだ国鉄清算事業団が全株所有し、売却益は債務返済に充てることになっている。政府は89年に「91年度中の上場」を閣議決定。清算事業団は91年度予算に株式の売却益(200万株分)を計上していた。
 昨年来の株式市場低迷の中で運輸省はこれまで、上場準備の進んでいるJR東日本、東海、西日本の3社のうち、本年度以降1社ずつ上場させる方向で作業を進めてきた。
 しかし、東京証券取引所の長岡実理事長が「現在のような出来高や株価が続く中では上場は難しい」との見解を示すなど、証券界を中心に慎重論が強まっていた。
 今後、運輸省は最終約に見送りを決める場合は、大蔵省と調整の上、閣議に報告し89年の閣議決定延期の了解を得る。(京都新聞 夕刊)
■信楽鉄道事故の教訓
 40dもある先頭車両の最前部が、めり込み合って宙に浮き、紙のようにへしゃげた車内から次々に血に染まった乗客が救出されていく。
 14日、信楽高原鉄道で起こった列車事故直後の惨状が脳裏に焼きついて消えない。死者42人、重軽傷者400人以上。「なぜ、こんな大事故が…」。遺族の慟哭(どうこく)に言葉を失った。
 単線での正面衝突という常識では考えられない事故の原因究明が、いま進められている。信号機の故障、人為約なミス、運行システムの欠陥などいくつもの推測が乱れ飛んでいるが、最終約に原因が特定されるには、まだ時間がかかりそうだ。
 ただ安全システムに対する信楽鉄道側の「不慣れ」とJR側の運行マニュアル「偏重」が、事故の引き金になったことは間違いないようだ。
 信楽鉄道は「信楽駅の信号が故障して赤ならば、行き違い設備のある小野谷待避所のJR側信号も赤になる」と見切り発車。JR列車の運転士は「待避所に対向列車がいないので、おかしいと思ったが、信号が青だった」ので単線内に進入。数分後の惨事にブレーキがかからなかった。
 その背景には60万人もの入場者を集めた世界陶芸祭の交通アクセスとしてダイヤの遅れを出したくない、という双方の「焦り」も見え隠れする。わずか10分間、どちらかが駅か待避所で待っていれば、の思いが残る。
 昭和41年、133人が死亡した羽田沖・全日空機墜落など一連の航空機事故の原因究明過程を描いた「マッハの恐怖」の著者柳田邦男氏は、あとがきのなかで「原点の事故をきちんと解析し、その教訓を生かそうとしなかったから、その後も事故が次々に起きたのだ」と断じている。
 「見切り」ではなく科学的に裏付けられた原因の解明を望む。再発防止が、犠牲者へのせめてもの供養になるはずだから。(草津支局 柳原弘行)(京都新聞 夕刊)
■「お待ちどうさん」はダサい? 南海電鉄の車内放送 新空港…”国際化”へ泉州言葉見直し
 「長らくお待ちどおさんでした」−こんな大阪・泉州弁の車内アナウンスの見直し運動に南海電鉄(本社・大阪市中央区)が取り組んでいる。発端は「国際化」。3年後に開港予定の関西新空港に乗り入れる同電鉄の説明は「方言ではあまりにもダサすぎるから」。「土地の言葉で旅情があってええんやないの」という利用者らの声もある中で、プロのアナウンサーに吹き込んでもらった「模範テープ」を作り、講習会を開催してもいる。「方言まるだしではいかにも田舎電車」という一通の投書がきっかけだった。
 例えば、「お待ちどおさんでした」は「お待たせしました」。「お忘れもんのないよう」は「お忘れ物のないよう」に。ほかにも「毎度ご乗車ありがとうございました」の「毎度」は「大阪商人的でちょつと軽い」と、「本日もご乗車ありがとうございました」に統一した。
 また、言葉は標準語でも、泉州特有のイントネーションやアクセントで話す人も多く、これをいかに「克服」するかが、課題だという。
 見直しの下、車掌仲間がプロのアナウンサーを呼んで勉強会を開催し、自分の放送をテープに吹き込む人も。会社も去年夏、「案内放送用語例」を記したマニュアルを改訂、約500人の車掌を対象に、半年に1回の割合で講習会を開き、30分間の標準テープを30本作って各車掌区に配った。
 同電鉄の路線は、大阪・「ミナミの難波を拠点に堺、岸和田、関西新空港のおひざ元・泉佐野など府南部や和歌山を結ぶ。従業員、利用者とも沿線の住民が多く、中には標準語に対して「すましてる」「ええかっこしてる」といった反応もあるという。
 同社の正木薫営業課長は「見直しの結果、駅や車内のアナウンスは確実に変わってきました。しかし、個々のお客さんとの応対では、方言をはじめぶっきらぼうだったり、詰問調だったり、まだまだ改善の余地は多いようでして。今後、なお努力するつもりです」と話す。
 随筆家藤本統紀子さんの話 長く堺に住んでいたので南海電車をよく利用しました。でも泉州弁に違和感なんて感じませんでしたよ。国際化ねぇ。標準語にすればそうなるとは、とても思えないけど。変なコンプレックスの裏返しみたい。
 落語家の林家染三さんの話 何や味気ない感じもしまんなあ。土地の言葉にはそこに住む人の肌に添うよう在情感がおます。「南海」という社名一つにも、大阪と和歌山をつなぐ感じが出てますわな。まあ、そうはいうても将来、国際的なお客さんが増えるんやったら、標準語に近づけること自体、悪いことやないとは思いますけど。(朝日新聞 夕刊)
25日■「超高層化への恐れ」JR京都駅ビル改築考える集会 原氏の案を批判
 京都駅の高層化に反対する市民連合主催の「JR京都駅前ビル改築問題を考える緊急集会」が24日夜、京都市左京区の京都教育文化センターで開かれた。
 今月8日のJR京都駅の設計コンペの審査発表で都市計画法に定める31bを超える高さ60bの原広司東京大学生産技術研究所教授のデザインが選ばれた。
 これを受け、この集会では「のっぽビル反対市民連合」の代表・西山卯三京都大学名誉教授が、「選ばれたデザインは高さが現行の制限を超えているだけでなく、400b以上にわたって高層ビルが立ち並ぶ。これでは、京都の南と北が分断され、京都の超高層化ビル建設の足がかりとなる恐れがある」と、この案に強く反対を表明した。
 このほか、今回のコンペは市民の意見を無視した、商業主義に傾いたものであると批判。
 引き続き、京都駅市民設計委員会(メンバー・片方信也京都大学助手ら)が、市民と駅を利用する人らの意見を入れた新しい駅の改築案を考案中であることを明らかにした。(京都新聞)
■叡山電鉄株 京阪が6割取得 再建支援と沿線開発も
 京阪電気鉄道と京福電気鉄道は24日の取締役会で、京福の100パーセント出資子会社である叡山電鉄(京都市左京区、社長・岩田次男京福電鉄社長)の発行済株式の6割を京阪に売却することを決めた。譲渡時期は平成3年度中を予定しており、価格は未定。
 叡山電鉄は昭和60年、京福が赤字路線切り離しのため資本金1億円で設立。出町柳−鞍馬、八瀬遊園間の14.4`などを運行している。
 平成元年秋の京阪鴨東線三条−出町柳間開通後の平成2年度は輸送人員が年間700万人と前年の40%増となり、約10億円の営業収益をあげた。しかし、一部区間の複線化投資5億円、長期債務の金利負担などが響き、最終損失3億円を計上する見通しで、累損が19億3600万円に達することから、京福単独での再建支援は困難と判断。京福の筆頭株主で、叡山線と出町柳駅で接続する京阪に株式を譲渡、3社による再建を図ることにした。また京阪にとっては鴨東線開通で洛北地域が大阪と直結したことから、叡山線沿線開発を図る狙いもあるとみられる。
 発行済株式2000株(1株額面5万円)のうち60%にあたる1200株を京阪が取得、800株は京福が引き続き所有する。譲渡価格は第三者の評価券参考に今後、決定する、としている。(京都新聞)
■JR西日本 常設訓練センターを建設 信楽鉄道事故再発防止 緊急会議で決定
 JR西日本は24日、信楽高原鉄道列車事故の再発防止のため、角田達郎社長を委員長とする特別安全対策委員会を開催、30日までに保安施設や運転取り扱い操作など書ハード、ソフト両面での総点検の実施と技術、技能を向上するため常設の訓練センターの建設を決めた。
 同委員会は、幹部と支社長、主要駅長など現場責任者40人で構成。事故後開いた初の緊急委員会。角田委員長が「安全輪送が信頼の原点。安全確保の徹底を図ってほしい」と改めて強調。このあと、すでに運輸省から指示のあった保安施設の点検や教育体制の点検の実施を指示。特に単線区間や他社への乗り入れ区間については、重点的に点検することにして、北近畿タンゴ鉄道など他社線に乗り人れている7杜については、合同訓練を実施すること確認した。また、同委員長は、乗務員など運行に携わる社員の技術、技能を向上するため、実施訓練のできる研修センターを、福知山支社など管内7支社に最低1ヵ所ずつ常設することを指示した。同センターには、事故後の連絡システムや保線作業など実践できる設備を整えるほか、保安訓練については、シュミレーションなどの導入も検討していく、としている。(京都新聞)
■信楽高原鉄道「補償」「運行再開」へ体制 北川社長らを正式選任 会見で信頼関係強調
 列車事故で存続できるかどうかの危機に立つ信楽高原鉄道(社長・杉森一夫信楽町長)は24日午前、町役場議員控室で臨時の取締役会と株主総会を開き、北川啓一元県厚生部長の代表取締役副社長、井上春絹前信楽町助役の専務取締役への選任などを正式に決めた。同鉄道は、常勤の新役員を中心に今後、犠牲者への補償問題や列車の運行再開など再建へ向けて体制を整えた。
 取締役会などでは、新役員の選任を決めた後、村西俊雄総務郡長(県生活環境部主監)ら県、町から出向した新社員に辞令が交付された。同社は、JR西日本からの技術担当役員や同鉄道出資会社からの社員派遣を含め29人体制(事故当時20人)に拡充。補償問題、監督官庁との折衝などに当たる「事故対策課」(7人)を新設することを決め、同鉄道本社分室を町伝統産業会館内に設けた。
 このほか、同鉄道は現在、3社のバスで続けている代替バスを6月から4社(各2台)に増やして輸送することを明らかにした。
 幹部会後、記者会見した杉森一夫社長は「今回、県などの迅速な対応で経験豊かな人材を派遣していただき心強い。一刻も早く体制を整え、当面する課題に取り組みたい」と語った。また北川新副社長も「一日も早く解決に当たりたい。補購問題の進め方はまだ何も考えていないが、信頼関係をつくって進めていきたい」と述べ、事故の責任問題については「状況を十分把握していないが、今はだれの責任かということより痛手を受けた方々への対応が急務」との認識を示した。(京都新聞)
■信楽惨事 代替バス、鉄道と同じ料金 運行再開のメドなく
 列車衝突事故で42人の死者を出した信楽高原鉄道(滋賀県甲賀郡信楽町)は事故以来、無料バスで代行輸送をしてきたが、6月1日から鉄道と同じ料金を徴収して運行を続けることを24日決めた。事故から10日以上がたっても補償や会社再建などのめどが立たず、運行再開には時間がかかることから、利用者の要望で踏み切る。
 代替バスはJR、近江鉄道、帝産の3社が、事故のあった14日から8台をピストン運行。信楽−貴生川間(14.7`)を午前6時15分から午後10時20分まで、1日27往復し、約1200人を輸送してきた。6月からは滋賀交通を加えた4社で代行運転する計画で、近く近畿運輸局に届ける。
 バスは貸し切り1台当たり1時間で約1万円、1日計約50万円−60万円の経費になる。信楽−貴生川間をバス路線として設定すれば、500円以上と試算されるが、鉄道と同額の340円で運行する努力を続ける。
 第三セクターの信楽高原鉄道は社員21人中、5人が事故で死亡、残った社員の大半も捜査本部の事情聴取を受けており、事実上、機能がマヒしている。代わって、町職員らがバスの誘導に当たるなど、何とかして住民の足を守ろうとしている。(朝日新聞)
■京都観光・2日乗車券 交通局 来月1日から発売
 市交通局は、2日間連続で地下鉄や市バスなどを自由に利用できる「京都観光・2日乗車券」を6月1日から発売する。交通局はすでに1日乗車券を販売しているが、「京都の良さをさらにじっくり味わえます」とPRに努めている。
 1日乗車券(大人1050円、子ども530円)は1974年の発売以来、人気を集めて、昨年度は約30万部を販売。しかし、地下鉄、バスを利用する修学旅行生が増えるにつれて、「有効期間を延ばしてほしい」との要望が相次いで寄せられ、局内で検討していた。
 2日乗車券は大人2000円、子ども1000円。1日券と同様、「太平記」ゆかりの史跡を紹介するコースガイド付きの冊子型で、地下鉄全線と、市バス、京都バスの均一区間、嵐山、大原方面系統を何度でも自由に乗り降りできる。同局はとりあえず1万部を作製、地下鉄、市バスの案内所や営業所、旅館などで売り出す。(朝日新聞)
■信楽鉄道事故 車両撤去始まる
 滋賀県甲賀郡信楽町黄瀬の信楽高原鉄道列車事故現場で25日朝、大破し現場に残されていた信楽高原鉄道とJRの事故車両(計3両)の撤去作業が始った。
 作業は、午前9時過ぎから警察官や業者ら約50人が出て現場周辺の道路を一部通行規制して行われた。
 まず、前部が破損したまま軌道上に残されていた信楽高原鉄道の2両目と、検証のため切断され、線路わきのり面に置かれていたJRの先頭車両の後部シートをそれぞれ取り除き、滋賀県警鑑識課員が車体の下などを入念に点検した。
 このあと大型クレーン2台を使い、切断したJRの後部車両からつり上げ、トレーラーに積み込んだ。
 積み込まれた車両は国道307号バイパスを通り、この日夕方までに蒲生郡日野町北脇の県警機動警察隊に運び込まれる。
 撤去作業は26日も行われ、残りの破損のひどいJR先頭部分と信楽高原鉄道の先頭車両が、それぞれ現場から撤去される。(京都新聞 夕刊)
■事故車両の移動を開始 信楽現場に残った3両
 滋賀県甲賀郡信楽町で14日起きた信楽高原鉄道の列車正面衝突事故で、現場に置かれたままだった同鉄道の2両とJRの1両をトレーラーで移動する作業が25日午前9時から始まった。
 同県警捜査本部は26日までに約30b離れた同県蒲生郡日野町北脇の滋賀県警機動警察隊の敷地に運ぶ予定で、無残な姿をさらしていた車両は、発生から12日後、事故現場を離れる。(朝日新聞 夕刊)
26日■走れニュートレイン〈7〉アーバンライナー 近鉄 私鉄のスピード王
 名古屋と大阪難波間は近鉄がノンストップ特急を走らせて、旧国鉄、JRと激しく乗客獲得競争をしてきた。料金、車内サービス、大阪市内中心部に乗り入れるなどの特徴を持ち、利用者も多い。
 車両も近鉄ご自慢の2階建てビスタカーなどを使用してきたが、昭和63年3月から新型特急を投入しスピードアップと車内サービスを強化した。「アーバンライナー」といわれる21000系電車(6両縞成)で、外観は流れるようなヨーロピアン流線形。色はクリスタルホワイトを基調に、オレンジの帯がアクセントになっている。最高時速はJRグループを除く私鉄では初の120`運転で、大阪難波と近鉄名古屋間を2時間5分、鶴橋と名古屋間は1時間59分。ノンストップ運転で結び、平均時速は94.1`で私鉄一速い。
 私鉄では初めての特別車両2両を連結し、車内はデラックスシートを配置。座席は横3列のゆったりサイズでJR新幹線のグリーン車とほぼ同じものになっている。4 チャンネルのオーディオサービスのほかに近鉄特急のおしぼりサービスも全乗客に行われている。
 このデラックスシートにはカード電話、週刊誌のマガジンラックなど私鉄独特のきめの細かいサービスもあり、利用料金は280円の格安でお乗り得といったところである。普通座席も居住性が良くなり、オーディオサービスは手持ちのFMラジオで楽しめる。
 新幹線も2階建て車両などで乗客獲得に対抗しているが、運賃と所要蒔間の差を比べても「アーバンライナー」は新幹線の強力なライバルになった。(鉄道写真家・南正時)
 〈メモ〉近鉄難波−近鉄名古屋を2時間4分。特急料金とも3340円、デラックスシート280円。全車指定席。7時から21時までほぼ1時間ごとに運転。(京都新聞)
■信楽事故 補償交渉へ動き出す 遺族らちかく弁護団結成
 死者42人、負傷者400人以上の犠牲者を出した滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道の列車衝突事故で、多数の遺族と負傷者を抱え込んだ会社や組合は25日、組織的な補償交渉に向けて動き始めた。
 死者6人、負傷者17人を出した京都府相楽郡木津町、関西文化学術研究都市にある協同組合ハイタッチ・リサーチパーク(代表理事・西村保孝京都科学会長)は、組合として補償交渉を探っていることを25日、明らかにした。 同組合は事故の14日、世界陶芸祭の見学研修を実施、同組合13社のうち9社の22人と事務局1人の計23人が参加し、黒井電機の高橋宗人さん(47)ら計6人が亡くなり、残る17人全員が負傷した。同組合は、事故対策委員会を設置、補償問題について顧問弁護士に協力要請しており、近く弁護団を結成する。
 このうち、2人の中堅社員を失った京都市上京区の西陣織メーカー「渡文」は、入院中の4人を含め7人が負傷し、一時営業がマヒ状態になった。会社の営業損失をめぐる補償交渉についても組合を通すことを検討している。
 滋賀県職員が42人の犠牲者の遺族を弔問した際、遺族からは「早く補償交渉を」の声が相次いだ。けが人からも「治療費の負担はどこか」などの問い合わせが信楽町役場に25日までに20数件あった。
 これに対し、マヒ状態だった信楽高原鉄道は24日、新たに本社分室に事故対策課を設け、補償交渉にあたることを決めた。しかし、交歩窓口の決定やJRとの話し合いは27日以降になる。遺焼からは「高原鉄道、JR、県、町と責任を押しつけあうことないよう」と訴えている。
・JR社員の派遣要請
 滋賀県甲賀郡信楽町で起きた列車正面衝突事故で社員21人のうち5人が死亡するなど機能がマヒ状態の信楽高原鉄道の再建に向けて、同県は25日、JR西日本に対し、同鉄道の常勤役員などにJR社員の派遣を要請したことを明らかにした。常勤の業務担当常務と業務部長のほか運転士など、技術社員の派遣も打診している。(朝日新聞)
27日■払い戻しを義援金に 陶芸祭の未使用券 信楽町民ら申し出
 滋賀県甲賀郡信楽町で起きた信楽高原鉄道の列車衝突事故で、同町の区長連絡会(西尾千秋会長、19区)は26日、中止になった世界陶芸祭の未使用入場券(前売り券)を回収し、義援金にあてることを決めた。
 14日の事故以後、町内の各区長宅に、町民から「私たちが育ててきた鉄道で、しかも町内で行われた陶芸祭行きの人たちを犠牲にしたのは申し訳ない。償いの気持ちを示したい」との申し出が相次いだ。陶芸祭の未使用入場券(1300円)を区を通じて集め、県庁などで払い戻しを受けて義援金にする考え。27日には、町の有線放送を通じて協力を呼びかける。町内約3900世帯に約1万枚の前売り券が出回っており、かなりの未使用券があるという。
 信楽焼で知られる同町は人口約1万4000人。同鉄道の前身は1933年開通の旧国鉄信楽線。第二次世界大戦中の43年、軍用鉄材としてレールがはがされ廃線になった。しかし、戦後、町民らは食糧難の中で山の木を切り、まくら木2万3000本を供出して四七年に再開させた。
 赤字ローカル線廃止問題が起きた70年代からは「信楽線を守る会」が中心になって「乗って残そう」を合言葉に存続運動を繰り広げ、4年前、第三セクター方式で再生にこぎつけた。(朝日新聞)
■衝突現場から全車両を撤去
 42人の死者と400人以上の負傷者を出した滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道列車事故現場で26日、大破して線路わきに置かれていた信楽高原鉄道とJRの先頭車両が撤去された。25日に1両を撤去しており、これで惨状を伝える事故車両はすべて姿を消した。
 撤去された2両は白バイに先導されて現場から約30`離れた同県蒲生郡日野町の県警機動警察隊の敷地に運ばれた。
 今後は押収した機器類の鑑定や車両を使った走行テストをする。(朝日新聞)
■信楽高原鉄道 新体制スタート
 滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道列車事故から2週間目の27日、同鉄道分室がある同町長野の信楽伝統産業会館で、新体制後初の顔合わせが行われた。
 社員21人のうち5人が死亡し、残る社員らも連日警察の事情聴取を受けるなどマヒ状態だった同鉄道に対する人的支援として県や町などが役員に2人、社員に5人を派遣。新たに事故対策課が設けられ、補償交渉やJRとの話し合いなどを進めていく。
 県職員OBで、新しく副社長になった北川啓一氏(66)は「一日も早く、精いっぱい問題の解決を図らなけれはならない。強い意志で難局を乗り越える、と自分に言い聞かせ頑張るように」と訓示した。また新専務の同町前助役、井上春網氏(63)が「誠意ある努力で、町民の願いである高原鉄道の一日も早い再開を目指したい」と話した。(朝日新聞 夕刊)
28日■負傷者は576人信楽列車事故
 信楽高原鉄道の列車衝突事故で負傷した人の数は、関係機関によって発表する人数が食い違っていたが、滋賀県警捜査本部を除く県事故対策本部など関係機関三者で名簿の点検を行った結果、27日現在、負傷者は576人に上ることが分かった。(京都新聞)
■駅周辺整備は不可欠 京都駅改築で商店主ら市民集会
 京都駅周辺を考える市民集会(崇仁協議会主催)が27日、京都市東山区のホテルで開かれ「これでいいのか、JR京都駅改築問題」をテーマに、京都の活性化の観点から駅周辺の開発を考えた。
 JR京都駅の東部一帯については環環整備が遅れ、ポルタやアバンティなど大型商業施設のオープンのたびに大きな打撃を受け、一帯の商店、旅館などはひん死の状態に陥っているという。さらに百貨店、ホテルを含む新しい駅ができると死活問題になるとして「新駅改築にあわせて、この一帯の整備が欠かせない」との立場から、地元の住民団体「崇仁協議会」が開催した。
 集会には商店主ら約200人が参加した。建築設計事務所社長の太田伝一郎氏は「京都駅改築については建物の高さが問題になっているが、京都らしいといわれる木造の高層建物も建てられた当時は異様なものだった。高さだけを問題視するのは京都の将来を見誤ってしまう」といい、元京都市議の山田善一氏は「この一帯には同和地区指定の地域があるが、これからの時代に対応した開発が必要ではないか」と述べた。
 最後に同協議会の藤井鉄雄委員長が「これまでから京都駅周辺が変わっても、七条通から九条通にかけては見捨てられてきた。この一帯を開発することが京都の活性化につながる」と語った。(京都新聞)
■地方都市はバスを基幹に 運輸省部会が報告
 今後10年間の地域交通政策の在り方を審議している運輸政策審議会(運輸相の諮問機関、斎藤英四郎会長)の地域交通部会は27日、@大都市の鉄道整備準備金制度の改善A地方都市はバスを基幹に新バスシステムの導入促進−などを柱とした報告書をまとめ、杉浦喬也部会長(全日空顧問)が村岡運輸相に答申した。
 報告書によると、地方中核都市と中小都市ではバス路線を基幹約な輸送手段と改めて位置付け、需要動向のきめ細かな把握、運行状況を案内板で電気表示する都市新バスシステムの積極的な導入、地域ぐるみの需要の呼び起こし−などを提言している。(京都新聞)
■「九条山駅をぜひ」 地下鉄で地元が要望
 京都市の地下鉄東西線の建設をめぐって、山科区内で九条山駅の設置を求めている「九条山の住環境を守る会」(白方英子代表、約500人)が27日、市議会の高橋泰一朗議長に、現地の実情調査などを訴える要望書を提出した。その後、四条河原町など繁華街でビラを配り、市民に理解と支援を求めた。
 東西線建設に伴って、京阪電鉄京津線の御陵−三条駅間が廃止され、九条山、日ノ岡両駅がなくなることから、1988年10月、地元住民らが同会を結成。「九条山付近での地下鉄駅設置は技術的に困難」と主張する市交通局と交渉を重ねる一方、市議会へ請願を繰り返してきた。白万代表は「高台の住宅地から駅を取り上げることがどんなにひどいことか、議員のみなさんに知ってもらいたい」と話している。同会は近く、1万人以上の署名を添えて請願書を提出することにしている。(朝日新聞)
■駅東部の再開発を JR駅ビル問題で 崇仁協藷会が集会
 JR京都駅の改築を機に、環境整備が立ち遅れている駅東部の再開発を進めようと、地元住民らでつくる崇仁協議会が27日、東山区のホテルで「京都駅周辺を考える市民集会」を開いた。
 駅の改築について、同協議会は「京都の活性化のきっかけになれば」との条件付きで賛成の立場をとっており、これまでに約2万人の賛同署名を集めている。
 集会には約250人が参加。藤井鉄雄委員長(42)が「景観を守るにしても、京都が経済力をつけることが前提になる。しかし、現在の駅ビル計画では、観光客の落とす金は結局、東京資本にもって行かれることになる」と問題提起。人口の減少が進む崇仁地区に企業を誘致することが「同和問題の解決にも、京都市全体の利害にも、かなうはず」と持論を述べた。(朝日新聞)
■信楽事故でJR側信号 県警が「青」裏付け 待避所の制御盤ランプ 誤出発痕跡なし
 信楽高原鉄道とJR列車の正面衝突事故で、行き違い設備の小野谷信号所(待避所)の付属建物内にある制御盤には、誤出発を表示するランプが点灯していなかったことが、滋賀県警捜査本部(水口署)の調べで28日までに明らかになった。誤出発ランプは、列車が出発信号が赤のまま発車した場合に点灯するもので、県警は、JR運転士が「信号は青だった」とする証言を裏付ける証拠として注目している。
 同鉄道は全線(14.7`)を信楽駅−小野谷信号所、貴生川駅−小野谷信号所の2つの閉そく区間に分け、1閉そく区間内には1車両しか入れないのが原則。運転士は、両駅や信号所にある出発信号を見て進行、停止する。
 部分的に列車の進行状況を把握したり、信号操作可能な制御盤は信楽、貴生川両駅や小野谷信号所にあり、出発信号が赤のまま発車を強行した場合は、出発信号近くの線路上の誤出発検知機が作動して、制御盤の誤出発表示のランプが点灯する。
 捜査本部のこれまでの調べで、信楽駅の制御盤には、同鉄道列車が駅の出発信号が赤のまま発車したことを示すランプが点灯していることが判明、高原鉄道関係者も赤での発車を認めた。一方、小野谷信号所の出発信号については、JR運転士が「青だった」と証言。JR列車の直前の列車は下りだったことから、信号所の線路切り替えポイントはJR列車に順行で、レールに傷が見当たらないことが、「青」のキメ手にはならず、信号所の制御盤の誤出発ランプの表示の有無が焦点になっていた。
 捜査本部は、鉄道の信号機器とともに各制御盤を押収して、検証を行ってきた。小野谷信号所の出発信号が青と断定するには、最終的な鑑定が不可欠としているものの、誤出発表示ランプが点灯していなかったことが、JR運転士の証言を機械的に裏付ける証拠になるとして重要視している。(京都新聞 夕刊)
29日■信楽・陶芸の森 再オープンの日程、白紙に
 JR列車と信楽鉄道列車の正面衝突事故により会期半ばで中止となった世界陶芸祭。メーン会場の信楽町勅旨、県立陶芸の森は、突発的な事故が起こらなければ7月20日に、装いも新たにして再オープンする予定だった。ところが、今回の事故に対し弔意を表すため、同森で開催予定だった恒例の陶器まつりが中止になるなどの影響から、再オープンの日取りは白紙の状態になっている。
 同森によると、予定では、仮説パビリオンの撤去後の跡地整備をした上で再オープン。陶芸館で同森収蔵の現代陶芸収蔵品展を開催。信楽産業展示館では、世界陶芸祭から引き続き信楽焼産業総合展を開く手はずだった。
 しかし、21日に陶器まつりを主催する町、町商工会、信楽陶器工業共同組合など関係六団体が協議。犠牲者の「喪に服す」として開催の見送りを決定したため、再オープンの時期を白紙に戻した、という。
 同森では、町や各種団体の意見を聞いた上で「地元の意向を尊重し、森の運営にあたりたい」とし、再オープの時期などを検討する方針。(京都新聞)
■衝撃広がる信楽事故 第3セクターに苦悩の色 安全対策模索も厚い”赤字の壁”
 死者42人を出した信楽高原鉄道事故は、同じ旧国鉄の赤字路線などから転換した全国の第三セクター鉄道に大きな衝撃を与えた。旧国鉄から転換の第三セクターは、現在全国に35社。いずれも今回の事故に「ひとごととは思えない」「考えられない事故だ」とショックを隠しきれない。事故後、一斉に設備の総点検を実施するなど安全対策に懸命だが、ほとんどの社が慢性的な赤字を抱えており、高い安全性を確保するのは簡単ではないようだ。対応ぶりを追ってみた。
 事故直後の運輸省通達を受け、各社は信号機、自動列車停止装置(ATS)などの一斉点検や運転マニュアルの見直しを実施。「新たに列車火災対策マニュアルを作成した」(兵庫・三木鉄道)など工夫を凝らしながら、特に信号故障など異常時の対応に中心を置いて安全対策を進めている。
 既に茨城・鹿島臨海鉄道では、JR東日本が今夏予定されていた海水浴客向け臨時特急の乗り入れ中止を早々と決定。高知・土佐くろしお鉄道は、相互乗り入れをしているJR四国との間で、年数回定期約に「輸送保安連絡会議」(仮称)を開くことを決めるなど、事故の波紋はあちこちに広がっている。
 具体約な安全対策として、緊急連絡用の列車無線についても数社が導入を検討中。事故以前から検討していた鹿島臨海鉄道は、「今回の事故が導入の必要性に拍車を掛けた」という。
 しかし、導入には沿線の工事費など億単位の経費が必要で、毎年黒字を出し、第三セクターの中でも優良企業の同社でさえ、巨額の設備投資には慎重にならざるを得ないのが実情。
 今回の事故には、赤字解消のための徹底した合理化経営が、最も大切なはずの安全管理をむしばんでいた背景があった。各社とも旧国鉄時代の人員を大幅に削減、極力人件費を抑える努力を続けてきた。
 岐阜、富山・神岡鉄道、兵庫・北条鉄道、三木鉄道、鳥取・若桜鉄道、熊本・南阿蘇鉄道などは、全スタッフを合わせてもわずか十数人。それだけに、最新の安全システムを導入しても、補修、点検できるだけのエキスパートの確保は、人材難や高い人件費がネックとなり難しく、外注に頼らざるを得ない。
 ある第三セクター社の幹部は「信楽高原鉄道が、そこまで手が回らなかった事情は理解できる」と赤字の壁の厚さを嘆いている。
・ATSなど最新システム 設備点検を緊急指示 北近畿タンゴ鉄道 府も9社に要請
 京都府北部を走る第三セクター鉄道最大規模の北近畿タンゴ鉄道(宮津線、宮福線計114`)は、特急あさしおなどJR列車が1日9往復も乗り入れているだけに、CTC(列車集中制御装置)ATS(自動列車停止装置)など最新の安全システムを導入。
 信楽高原鉄道事故置後の14、15の両日、安全設備の徹底した再点検を実施し、安全を確認する一方、改めて基本ルールの完全励行や異常時の連絡徹底もJR併行区間(2`)の併発事故防止など安全対策を緊急指示した。
 また、府防災行政無線を利用した緊急連絡システムを確立するため、今年1月から駅舎や列車の受発信磯の設置準備や実験を続けており、今秋にも稼働する予定だ。
 一方、府は21日、府内で運行する北近畿タンゴ鉄道を含む民鉄九社に対し、安全確保に向け運行体制、施設の点検を促す異例の要請を行っている。(京都新聞)
■南北動脈 きょう10周年 地下鉄 赤字が常態化 問題点探ると 建設費が財政圧迫 市バスは乗客離れ 東西線の建設難航
 京都市の地下鉄は29日、開業10周年を迎える。北大路−京都駅間6.5`でスタートした古都の地下の足はいま11.1`。南北を貫く大動脈としての役割を果たすまでに発展した。しかし一方では、はく大な建設費による財政の圧迫や、3年後の平安建都1200年の完成を目指す東西線の工事の遅れなど、越えるべきハードルも多い。10年の歩みを振り返りながら、地下鉄が抱える問題点を探った。
・十字形構想 京都市の地下鉄計画は1968年、急激な車の増加でマヒ状態になった路面電車やバスなどに代わる新しい公共交通網として、市交通対策審議会が打ち出した十字形地下鉄ネット構想に沿って進められてきた。北山−三栖間南北15`、六地蔵−長岡京間東西30`を85年度までに完成させるという雄大な構想だった。
 しかし、用地買収の遅れや石油ショックなどの影響で計画は大幅に延びた。ようやく81年に北大路−京都駅間6.5`が開通。7年後に竹田−京都駅間、さらに90年10月、北山−北大路間が開通。74年の着工以来、16年ぶりに烏丸線全線が完成した。
 一方、烏丸線と交差する東西線は89年11月、JR二条駅−醍醐間12.7`の着工に、ようやくこぎつけた。3年後の平安建都1200年の完成を目指し、工事が進んでいる。北山−京都国際会館間の延伸計画もあり、今年度中の事業免許取得を目指している。
・明暗 北大路−京都駅間開通当時の乗客数は1日平均11万7800人。その後毎年約4000人ずつ増え、京都駅−竹田間が開通した88年度には、近鉄との相互乗り入れも手伝って、2万5000人も増加した。89年度は17万8000人に達した。
 現在、北山−竹田間は22分で結ばれている。朝夕のラッシュ時には4−6分、昼間も6−7分半間隔で運転しており、使い勝手はよい。交通局は今年度の1日平均乗客数を19万5000人と予想し「1`当たり2万人の乗客目標は、あと数年でクリアできる」と見込んでいる。
 しかし、地下鉄人気のあおりで、市内交通の主役を担ってきた市バスは乗客離れが進んでいる。1日平均乗客数は地下鉄開業前の80年度(59万8000人)をピークに減少の一途。89年度は48万5000人まで落ち込んだ。再建計画の実施で、85年度以降黒字に転じた経常収支も、89年度には再び5億円の赤字決算となり、不採算路線の廃止話も持ち上がっている。
・赤字 順調に乗客が増えても、地下鉄の財政事情は苦しい。黒字だったのは開業年度だけ。以後は赤字が常態化している。
 89年度は、前年比10億4000万円増の88億6000万円の運賃収入を上げたのに、烏丸線建設費の支払い利息が104億円、減価償却費も61億円に増加して、経常収支は29億円の赤字となった。
 烏丸線の建設費は2600億円。うち、国、市からの補助金を除いた交通局分780億円の企業債の償還も重くのしかかっている。
 「償還は最高30年。北大路−京都駅間の分だけでも、返済にはあと20年かかる」と同局。台所の厳しさはまだ当分続きそうだ。
・東西線 東西線醍醐−二条間の工事は総工費2450億円で、25工区のうちすでに23工区を発注済み。ルートの大半が道路下を通るため、買収の負担が少なく、車両の小型化でトンネルも小さくでき、工期と工費の節約が可能と、同交通局は主張するが、議会などでは見通しの甘さを指摘する声も多い。
 工期4年、建設費約600億円の計画でスタートした烏丸線の完成には16年の歳月と3000億円近い費用が必要だった。東西線の場合は、建設と一体的に進める二条駅周辺整備、山科駅前再開発などの事業が住民の根強い反対で難航しており、田辺市長も2月の議会で「目標通りの完成は厳しいと認識している」と答弁したほど。新しい地下鉄網が建都1200年を飾れるかどうかは、微妙な情勢だ。(朝日新聞)
■広島・橋げた事故 犠牲者15人に 入院中の主婦死亡
 広島市安佐南区の新交通システム橋げた落下事故で胸を打ち、両足にやけどを負い、広島市の広島市民病院に入院中だった広島県安芸郡江田島町の主婦小島正子さん(78)が28日午前11時5分、脳こうそくのため死亡した。事故の犠牲者は15人になった。(朝日新聞)
■信楽鉄道事故 補償問題で四者協設置 被害者を早期救済
 JR西日本、信楽高原鉄道、滋賀県、信楽町の4者は29日、それぞれ記者会見し、信楽高原鉄道での列車衝突事故による死傷者の補償問題に対応するため「信楽高原鉄道事故四者協議会」を設置することを明らかにした。4者では、補償問題の早期解決を図りたい考えで、来月早々に1回目の協議会を滋賀県庁で開き、被害者への補償基準づくりなどを急ぐことにしている。
 JR西日本、滋賀県などの調べ(27日現在)によると、14日の信楽高原鉄道列車とJR西日本の臨時快速列車の衝突事故で、乗員、乗客42人が死亡したのをはじめ、576人が重軽傷を負い、このうち77人がいまも入院しており、被害者への補償が大きな問題になる。
 4者協議会は、JR西日本の木部義人総務部長、信楽高原鉄道の井上春絹専務取締役、滋賀県の花房義彰生活環境部長、信楽町の森島慎一郎助役で構成する。
 協議会では、捜査本部による事故原因が究明できるまでにかなり時間がかかるとして、死亡者の遺族や負傷者に対する補償交渉など被害者救済の基本約な方針について協議することにしている。また、同協議会では事故の当事者である信楽高原鉄道とJR西日本から、それぞれ社員を派遣してもらい、補償交渉に直接タッチする実働の組織を発足させたいとしている。
 今後の補償交渉の進め方について、花房県生活環境部長は「補償総額がどのくらいになるか見当もつかないが、死亡者・入院者と軽傷者の二つのグループに分けて対応することになるだろうが、できるだけ早い機会に交渉の実働部隊をつくり、早期解決につとめたい」と述べた。
 また補償額の分担については「原因がはっきりした段階で過失責任の度合いによって費用負担の割合を決めることになるだろう」と話した。
 一方、JR西日本では補償問題に当面は、同社総務部法務課の社員15人が当たるが、近く人事異動を実施、数十人規模の態勢を整え、遺族や負傷者の補償交渉に当たりたいとしている。
 また、補償金などについては当面JR西日本が立て替える形にし、事故原因などの結論が出た時点で精算する。
・乗客・乗務員は 724人 両列車総数で滋賀県警
 信楽高原鉄道とJR列車の衝突事故で、滋賀県警捜査本部(水口署)は29日、両列車の乗客、乗務員総数は724人(男189人、女535人)とほぼ特定した。それによると、同鉄道には乗客15人が乗車し、死者12人、重傷3人。また、JRには709人が乗り、死者30人、重軽傷者485人となっている。
 負傷者数については、県事故対策本部やJR西日本、信楽町が576人(27日現在)としているが、県警は488人としている。
 捜査本部は「負傷者は医師の診断書で判断している。まだ確定には至っておらず、若干増えそう」と話している。
・早急に具体策
 北川啓一・信楽高原鉄道副社長の話 補償について4者協議会という形で合意を得ることができた。今後、4者が同一歩調で、遺族、負傷者に対し、どのように接していくか、具体策を早急に決めさせてもらいたい。
・全面的に支援する
 角田達郎・JR西日本社長の話 被害者救済のため、補償交渉に当たる人員、補償に必要な経費の立て替えなども含め、全面約に協力する。人員については近く人事異動を実施、数十人規模の体制を整え、被害者の方々の態勢についての不安解消に努めたい。(京都新聞 夕刊)
■信楽事故 「四者協」を設立 JRと県など 補償交渉の窓口に
 死者42人を出した滋賀県信楽町の信楽高原鉄道列車衝突事故で、JR西日本と滋賀県、信楽町、信楽高原鉄道は、被害者への補償交渉への窓口となる協議会を設立することを29日、決めた。JRと第三セクターの相互乗り入れで起きた事故で、事故の法的責任が確定するには時間がかかるため、関係ある4者で窓口を一本化し被害者救済にあたることに合意したもの。しかし、資金面、人材面からJR西日本本社が本格的な交渉の中心になるとみられる。
 名称は「信楽高原鉄道事故対策四者協議会」で、メンバーは本部義人・JR西日本総務部長、花房義彰・滋賀県生活環境部長、森島慎一郎・信楽町助役、井上春絹・信楽高原鉄道専務の4人。目的は「本格的な被害者救済等に的確に対応するため」とあり、具体的にはJR西日本が、事故原因の確定を待たずに、補償交渉の中心になるという。
 今回の事故の補償は、死者だけでも数十億円に上ると見られ、信鉄加入の保険金額が最高3億円しかなく、どこが交渉の窓口となるか被害者や遺族から不安や不満の声が出ていた。JR西日本はこれまで病院の入院費など諸経費約3000万円を立て替え払いしていたが、今回初めて・補償金についても立て替え払いする方針を示した。
 JR西日本によると、被害者の住所は近畿各地に広がっており、JR側が大阪、兵庫両府県を中心に、滋賀県側が京都、滋賀両府県を中心に分担するが、実際に交渉をする職員は京都、滋賀にもJR側から相当数派遣することになる、という。
 JR西日本・角田達郎社長の話 事故原因の捜査にはまだ時間がかかる見込みなので、一日も早く被害者の救済、補償に対応することで合意した。人員的にも金銭的にも、JR西日本がいちばん融通のきく立場なので、捜査の結果、最終的な責任分担はどうなるか別にして、当面の金銭立て替えなどできる限り積極的に協力していきたい。(朝日新聞 夕刊)
■乗員乗客の総計は724人 信楽事故捜査本部
 死者42人を出した滋賀県甲賀郡信楽町の信楽高原鉄道列車事故を調べている滋賀県警の捜査本部は29日、これまでにわかった乗員乗客数を、724人と発表した。内訳はJR列車側が709人、信楽高原鉄道側が15人。
 さらに、同県警として初めて負傷者の数もまとめ、488人とした。内訳はJR側が485人で高原鉄道側は3人。この結果は、けがが無かった、または確認中は194人となった。負傷者数は、医師の診断書がある人だけを対象にしており、県の事故対策本部が27日に発表した負傷者576人より88人少ない。(朝日新聞 夕刊)
30日■負傷者、京は最多266人 信楽高原鉄道事故 都道府県別の内訳
 信楽高原鉄道列車事故の滋賀県対策本部は29日、事故による576人の負傷者の都道府県別内訳を発表した。それによると、最も多かったのは京都府の266人で、次いで大阪府の151人、兵庫県の79人だった。また、オランダ2人、イギリス1人の外国人も負傷者の中にいたことが分かった。
 衝突したJR列車は、当時開かれていた世界陶芸祭を見物する乗客が大半だったため、負傷者は北は北海道から南は愛媛県まで19都道府県にまたがっていた。近畿だけで546人になり、負傷者全体の約95%を占めている。地元の滋賀県は30人だった。男女別では、男性131人、女性445人。
 このほかの都道府県別負傷者数は次の通り。
 北海道2▽青森2▽新潟1▽東京都3▽神奈川1▽石川1▽静岡4▽愛知5▽三重1▽奈良18▽和歌山2▽岡山3▽広島2▽愛媛2▽国外3(京都新聞)
■観光バス2社 値上げを申請 「帝産」と「京阪国際」
 帝産観光バス京都支社と京阪国際観光自動車は29日、近畿運輸局京都陸運支局へ観光バスなどの運賃値上げを申請した。アップ率は帝産バスが平均11%、京阪国際が同13%で、今秋までに実面を目指している。
 両社は申請の理由として、修学旅行形態の多様化や出発地から直接入洛するケースの増加などにより、年々、バス利用者が減少。さらに、車両のグレードアップによる価格上昇や修繕費の値上がり、時短・休日増などに伴う人件費増で収支バランスが悪化、健全経営が困難になったことなどをあげている。
 府内では、この日までに西日本JRバスが平均9%、京都滋賀交通が同9.9%の値上げを申請。今回の申請が認められれば、昭和63年6月以来の運賃改定になる。(京都新聞)
■信楽高原鉄道の再開 JRへ協力要請 衆院特別委 運輸相答弁
 衆院交通安全対策特別委員会は29日、信楽高原鉄道事故について集中審議、竹内勝彦氏(公明、京都一区)はじめ、久野統一郎(自民、愛知)土野健一(社会、千葉)山下八洲夫(同、岐阜)辻第一(共産、奈良)の各氏が事故原因などただした。答弁の中で、村岡運輸相は「JR西日本に信楽高原鉄道の再開に協力するよう伝えた。JRも協力する意向と聞いている」と述べるとともに、経営基盤が弱体な第三セクター鉄道の総点検の中で、財政援助も含めて検討する考えを明らかにした。
 同相は、滋賀県など地元の要望に沿ってJRへ同鉄道再開に向け協力要請したことを明らかにし、「原因がはっきりしてから、自治省にも(財政援助などを)お願いしたい」と答弁。大塚運輸省国鉄改革推進総括審議官も「責任の有無にかかわらず事故対策、救済措置その他について全面約に協力するよう、JRに強く指導している」と答弁した。
 さらに、全国35ある第三セクター鉄道の実態を問われた同相は、「安全運行が鉄道事業の条件であり、事業免許の時点で要員も含め条件を満たしていたし、その後も適切指導してきた。しかし、今度の事故にかんがみ、総点検の中で人員状況や信号の問題、苦しい経営の問題などチェックしたい」と答えた。また「経営基盤の弱い第三セクター鉄道の総点検に絡む指導・援助に財政面も含めよ」との質問に同相は「指摘(財政面)の点も含め検討したい」と、積極姿勢を示した。(京都新聞)
■JR西日本904人を異動 京都駅ビルなど 関係会社に223人出向
 JR西日本は29日、管理職197人を含む904人の人事異動を6月1日付で実施すると発表した。京都駅ビル開発など関係会社55社へ223人が出向、グループ企業の連携を深め、経営強化を図ったのが特色。信楽高原鉄道事故に関連して現在、事故処理や被害者救援にあたっている鉄道本部関係については、今回異動を保留した。
 京滋関係者を含む主な異動は次の通り。
 福岡支社長(鉄道本部運行管理部長)山崎正夫▽鉄道本部運行管理部長(同大阪管理部長)竹田清▽同大阪管理部長(同車両部管理課長)平倉泰助▽事業本部勤務・倉敷ステーション開発出向(ジェイアール西日本ホテル開発出向)湯浅善夫▽地域開発本部調査企画課勤務・京都駅ビル開発出向予定(地域開発本部開発一課長)椎名信義▽事業本部勤務・京都ステーションセンター出向予定(広島支社運輸部長)松尾浩二郎▽京都保線区長(鉄道本部運行管理部東京指令所副課長)細川敬▽京都信号通信区長(吹田信号通信区長)本田正夫▽神足駅長(総務部総務課主席)影井清判▽園部駅長(大津駅首席助役)西垣隆男▽近江今津駅長(野洲駅長)岡田実▽野洲駅長(園部駅長)川瀬貞夫(京都新聞)
■私鉄13社 値上げへ 実施は11月 15%弱の見込み
 関西と関東の大手私鉄13社が、6月28日に運賃値上げを運輸省に申請する見通しとなった。運輸省は値上げを認める方針で、申請する値上げ幅は普通と定期の平均で17-18%になる情勢だが、運輸審議会の討議などを経て最終的には15%弱の値上げになる見込み。実施は11月初めの予定だ。
 値上げ申請するのは、関西の近畿日本鉄道、南海電気鉄道、京阪電気鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道の5社と、関東の東武鉄道、西武鉄道、京成電鉄、京王帝都電鉄、小田急電鉄、東京急行電鉄、京浜急行電鉄、相模鉄道の8社の計13社。大手のうち、昨年値上げをした名古屋鉄道と、鉄道部門が好調な西日本鉄道は値上げ申請をしない。
 消費税の導入に伴う値上げを除くと、京成と関西5社が87年5月に9.7%、京成と相鉄を除く関東6社が88年5月に10.1%、それぞれ値上げして以来になる。関東と関西の各社がそろって上げるのは84年1月以来。(朝日新聞)
■開通1ヵ月 トロッコ列車 人気は超特急 7万6000人利用 年間予想の過半数 保津川下り乗客倍増 5月
 開業したのは4月27日。JR西日本管内で初のトロッコ列車とあってデビュー前から話題を集めた。
 開業直後のゴールデンウイークは、初日の下り第1便(卜ロッコ嵯峨発亀岡行き)が満席となったのをはじめ、期間中、午前中の下りがほぼ満席。ゴールデンウイークが終わってからも、とくに土、日曜は満席状態が続いている。
 一方、終着駅の亀岡市でも、列車の乗り入れによる波及効果が一気に広がっている。開業前、市は、トロッコ列車乗客数のうち、亀岡に降りる乗客を2、3割と見込んでいた.が、フタを開けてみると「9割以上の人が亀岡で降りている」(西村邦雄・市商工観光課長)とホクホク顔。大半が保津川下りなどに流れている、とみる。
 保津川下りブームにトロッコ列車運行が拍車をかけたかっこうで、5月は約5万3500人(同月28日まで)が乗船、前年同月に比べほば倍増。
 保津川遊船企業組合の春木芳夫代表理事は「忙しくて船頭たちは体がもたんというとりますわ」とうれしい悲鳴。開業後、同乗船場では、船に乗り切れない観光客が2時間も3時間もひたすら待つ光景が見られた。
 思わぬ人気ぶりだが、嵯峨野観光鉄道(長谷川一彦社長)では喜んでばかりおられず、信楽高原鉄道事故に「他人事ではない」と気を引き締め、連日、安全運行に8人のスタッフが神経をとがらせる。山陰本線との乗り入れ区間のチェックや地震、豪雨、強風時の運行基準の徹底などに努める毎日という。(京都新聞 夕刊)
■JR京都駅高層化問題 住民案は高さ24b 駅の機能を最優先
 古都の景観を壊すなどとして、JR京都駅を高層ビルに改築する計画に反対している住民グループが、独自の「市民のための設計計画案」をまとめた。問題の高さは、国際コンペ(設計競技)で決まった設計原案(59.8b)の半分以下で、現在の駅舎よりも低い。「どちらが古都にふさわしいか、市民の判断を仰ぎたい」と6月3日から模型を一般公開する。
 この住民グループは地元・下京区の旅館や小売業者を中心に3000人が参加する「京都駅建て替え問題対策協議会」。JR西日本などの計画では、新駅ビルに京都最大のホテルとデパートが入り、景観問題ばかりか、地元業者にとっては死活問題となる恐れがあるという。
 設計図を引いたのは都市計画が専門の片方信也・京大工学部助手(48)を中心に、建築士や建築学を専攻する大学院生ら20人の専門家でつくる「市民設計委員会」。駅前の地場産業である仏壇、仏具業者らも協力、プロの腕を生かし、1000分の1の模型を完成させた。
 住民案の特徴はまず、ホームを高架にしたこと。乗り換えの際の階段の上り下りを繰り返す労力を減らすことができるほか、地上の南北交通をふさがずにすむ。
 駅ビルの高さも現行の都市計画で定められた原則31b(特例でも45b)を下回る24b。ホテルやデパートを除いた結果だが、土産物店や飲食店の床面積は現在の駅舎よりやや広くしている。
 このほか、駅前広場に木を植え、東山から近くの東本願寺まで延びている琵琶湖疏水の分流を1階コンコースの南北に流して通行客に潤いを与えるなどのアイデアも提案している。
 公開は6月8日まで、下京区七条通堀川西入ルの興正会館で。無料。(朝日新聞 夕刊)
■貸し切りバス 料金アップへ 南海観光まず9%申請
 南海電鉄グループの南海観光バス(本社・大阪市住之江区)は30日、貸し切りバスの運賃と料金を平均9%値上げする改定案を近畿運輸局に申請した。88年5月に5.2%アップして以来3年ぶり。同じく観光バスや貸し切りバスを走らせている近畿2府4県のバス会社163社のうち、京都の2社が29日に値上げ申請したほか、各社とも値上げ申請を準備中。
 改定案は大型車1時間当たり1万1200円(現行1万300円)にするなどで、たとえば大阪中心部から京都市内日帰り観光の場合、11万6000円(同10万7000円)になる。燃料費などの高騰と、花の万博後の観光客の落ち込みを理由にしている。(朝日新聞 夕刊)
31日■保津峡トロッコ体験列車も JR福知山が夏の臨時列車 「マリン号」新設
 JR西日本福知山支社はこのほど、海水浴客や帰省客のための夏の臨時列車運行計画を発表した。特急やイベントカーを使用した「マリン号」を新設し、スピードアップを図る。さらに、人気の保津峡トロッコ体験列車などを走らせる。7月1日から9月30日までの期間中、臨時列車の運行本数は計581本。昨シーズンより26本、4.6%増える。
 主な臨時列車はつぎの通り。
 快速「マリン但馬」(大阪−浜坂間)に、360度回転するソファのついた「サロンカーなにわ」を使い、鳥取まで延長する。大阪−浜坂間は20分前後短縮される▽最新型電車を使った急行「マリン城崎221」を大阪−城崎間に、特急「マリン高浜」を大阪−若狭高浜間にそれぞれ新設、1日1往復運転する▽昨年は京都−小浜間を走った急行「マリン小浜」を、大阪から東海道、山陰線経由で走らせる。京都−小浜間は行きが16分、帰りが46分短縮される(以上、7月20日から8月11日まで)。
 さらに、7月20日から8月18日まで、特急「あさしお5号、12号」(京都−城崎間)を竹野まで延長する。快速「保津峡トロッコ体験列車」は8月25日と9月15日、22日、29日の4日間、豊岡−馬堀間、嵯峨−豊岡間を1往復する。料金は夕食、片道のトロッコ列車代( 600円)つきで、往復7100円(福知山からは5800円)。1回の定員は 150人で、事前申し込み制になる。(朝日新聞)
■JR7社とも増収増益 本州3社 1割配当、役員に賞与 3月期決算
 JRグループ7社は30日、91年3月期決算を発表した。各社とも運賃収入の順調な伸びに支えられ、経常利益ではそろって増益となった。7社がそろって増収増益となったのは87年の国鉄分割民営化後初めて。業績が特に好調な東日本、東海、西日本の本州3社は1割配当と役員賞与金を初めて計上した。
 JR貨物を除く6社とも旅客輸送量が増え、6社合計で対前年度比 6.7%増の順調な伸びを示した。特にJR東海は10.3%の高い伸びとなった。このため、営業利益で本州3社がそろって増益になったほか、JR貨物も物資輸送の活発な動きを受けて二けたの伸び。赤字線を抱え経営基盤が弱い北海道、四国、九州の三島会社も赤字幅が縮まった。しかし、好調ぶりが目立つ本州3社との格差は開いたままだ。
 経常利益は借入金返済による支払金利の減少などで西日本が2.2倍になるなど本州3社が好調なうえ、前年度は1社だけ減益だったJR貨物が増益に転じたのが目立った。三島会社も経営安定基金の運用収益で営業損失を補った。
 業績好調で資金的に余裕が出たため、社員の退職給与引当金を繰り入れる会社が多かった。そのため当期利益は、東海、九州、JR貨物の3社で減益となった。
JR7社の3月期決算
(単位億円、カッコ内は前期比伸び率%
▼は損失、減少、−は前期が損失)
 北海道東日本東 海西日本四 国九 州貨 物
売上高1,05018,51611,0138,9234801,5072,049
 (5.2)(6.7)(9.8)(7.0)(9.3)(4.7)(6.6)
営業利益▼4902,9221,3321,224▼87▼287113
 ( -)(4.0)(17.2)(34.7)( -)( -)(14.5)
経常利益161,4961,292875843974
 (500.0)(44.6)(19.3)(117.4)(38.0)(2.9)(16.1)
当期利益557553229836628
 (140.3)( 0.4)(▼20.2)(15.6)(0.1)(▼82.2)(▼5.5)
 好業績を反映して、本州3社は1割配当することを決めた。この結果、東京証券取引所の上場基準を昨年3月期の決算で経常利益、純資産面で達成していた東日本、東海は配当実施で基準をすべて達成した。西日本はこの3月期で純資産で基準を達成したが、88年度の経常利益が基準より足りなかったため、来年3月期に持ち越しとなった。(朝日新聞)
■花博効果で最高の収益 JR西日本
 JR西日本の91年3月期決算は、順調な輸送量の伸びと昨年、大阪で開催された国際花と緑の博覧会(花博)の効果が重なって過去最高の収益を記録した。
 売上高は前期より580億円増えたが、うち530億円が運輸収入の増収分。昨年3月のダイヤ改正による列車増発や新型車両の投入に加え、花博関連の売り上げ約160億円が大きく寄与したという。
 好決算の結果、同社の純資産額は2172億円と東証の株式上場基準(資本金の2倍)を初めて達成、1割の株主配当も決めることができた。角田達郎JR西日本社長は「できるだけ早い時期に上場できるよう(運輸省などに)お願いしたい」としている。(朝日新聞)
■京都駅改築訴訟 「高層ビルは景観破壊」 第1回口頭弁論 西山氏ら意見陳述
 JR京都駅の改築計画をめぐって住民が「改築をすすめる京都駅ビル開発会社への京都市、府の出資は、違法な公金支出だ」として、荒巻禎一府知事、田辺朋之市長、同駅ビル開発会社(井手正敬社長)を相手に、公金の支出差し止めと、すでに出資した公金の返還などを求めた住民訴訟の第1回口頭弁論が31日午前、京都地裁(吉川義春裁判長)で開かれた。
 口頭弁論では、訴状陳述の後、原告を代表して京都大名誉教授の西山夘三さん(80)と地元商店街で文具店を経営する伊藤督太郎さん(73)が意見陳述した。
 西山さんは、建築学者の立場から、今回のコンペ(指名設計競技)で選ばれた京都駅ビルについて「応募案のうち最も高さが低かったが、それでも従来の高さの倍近い超高層ビルになり、しかも南北の通りを閉ざす万里の長城のような壁を築くことになる。従来のスカイライン破る高層建築を建てることは、京都の歴史約景観を根本的に破壊する」と批判し「ホテル、デパートなどの商業施設が大半を占める駅に、公金を支出するのは違法だ」などと述べた。
 伊藤さんは「駅の建て替えに反対ではない」としながらも、現在の計画については「デパート、ホテルを中心にしており、大企業やJRの営利のためだけのもの。地域の人々の暮らしや営業にさしつかえない配慮と京都の景観を壊さないものにしてほしい」と主張した。(京都新聞 夕刊)
■ソ連で列車が爆発、多数死傷
 【モスクワ30日共同】タス通信によると、ソ連ロシア共和国南部のカスピ海西岸に面したダゲスタン自給共和国で30日夕(日本時間同日深夜)、駅を通過中の旅客列車で爆発があり、多数の死傷者が出た。
 独立系通信社ポストファクトムは、11人が死亡し、8人が負傷したと伝えた。
 タスによると、爆発はモスクワからアゼルバイジャン共和国の首都バクーに向かう列車で起きたことから、同共和国で続いているナゴルノカラバフ自治州帰属をめぐる民族紛争が関係している可能性もある。(京都新聞 夕刊)